センチネルリンパ節転移乳がん、腋窩リンパ節郭清は省略可?/NEJM

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 臨床的リンパ節転移陰性乳がんで、センチネルリンパ節に肉眼的転移を有する患者では、センチネルリンパ節生検のみを行い、完全腋窩リンパ節郭清を省略した場合、センチネルリンパ節生検+完全腋窩リンパ節郭清に対して、5年無再発生存(RFS)率が非劣性であることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJana de Bonifaceらが実施した「SENOMAC試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年4月4日号で報告された。

5ヵ国の第III相無作為化非劣性試験

 SENOMAC試験は、5ヵ国(スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、イタリア)から67病院が参加した第III相無作為化非劣性試験であり、2015年1月~2021年12月に患者の登録を行った(Swedish Research Councilなどの助成を受けた)。

 臨床的リンパ節転移陰性の原発性T1~T3乳がん(T1:腫瘍最大径≦20mm、T2:同 21~50mm、T3:同>50mm)で、センチネルリンパ節に肉眼的転移(転移巣の最大径>2mm)を1または2個有する患者を、センチネルリンパ節生検を行った後、完全腋窩リンパ節郭清を行う群(郭清群)、またはこれを省略する群(センチネルリンパ節生検単独群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。術後補助療法と放射線療法は、各国のガイドラインに準拠して実施した。

 主要評価項目は全生存期間(OS)とした。今回の解析では、副次評価項目であるRFSのper-protocol解析と修正ITT解析のデータが提示された。再発または死亡のハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)の上限値が1.44未満の場合に、センチネルリンパ節生検単独群は非劣性と判定することとした。

多くの患者が放射線療法と全身療法を受けた

 登録患者2,766例のうち2,540例がper-protocol集団であり、センチネルリンパ節生検単独群が1,335例(年齢中央値61歳[範囲:20~94])、郭清群が1,205例(61歳[34~90])であった。リンパ節標的体積を含む領域の放射線療法は、センチネルリンパ節生検単独群の1,326例中1,192例(89.9%)、郭清群の1,197例中1,058例(88.4%)で行った。全体で、26例を除きいくつかの全身療法を受けていた。

 追跡期間中央値は46.8ヵ月(範囲:1.5~94.5)であり、全体で191例(センチネルリンパ節生検単独群95例[7.1%]、郭清群96例[8.0%])が再発または死亡した。

 per-protocol集団における推定5年RFS率は、センチネルリンパ節生検単独群が89.7%(95%CI:87.5~91.9)、郭清群は88.7%(86.3~91.1)であり、参加国を補正した再発または死亡のHRは0.89(0.66~1.19)と、95%CIの上限値が非劣性マージンを下回り、非劣性が示された(非劣性のp<0.001)。

修正ITT集団でもほぼ同様の結果

 修正ITT集団における5年RFS率の結果はper-protocol集団とほぼ同様であった(HR:0.89、95%CI:0.67~1.19)。

 ほとんどのサブグループ(per-protocol集団)で、再発または死亡のHRはセンチネルリンパ節生検単独群で良好な傾向を認め、エストロゲン受容体陽性/HER2陽性の患者でとくに良好な傾向にあった(HR:0.26、95%CI:0.07~0.96)。男性は10例(0.4%)と少な過ぎたため、サブグループ解析はできなかった。

 著者は、「本試験の結果は、この患者集団においては、完全腋窩リンパ節郭清を安全に省略できることを示す強固なエビデンスをもたらす」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

de Boniface J, et al. N Engl J Med. 2024;390:1163-1175.

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早期TN乳がん、TIL高値ほど予後良好/JAMA

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 術前または術後補助化学療法歴のない早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者において、乳がん組織中の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)量が高値ほど、有意に生存率が良好であることを、米国・メイヨー・クリニックのRoberto A. Leon-Ferre氏らが後ろ向きプール解析で明らかにした。乳がん組織中のTIL量と早期TNBC患者のがん再発および死亡との関連は不明であった。著者は、「今回の結果は、乳がん組織中のTIL量が早期TNBC患者の予後因子であることを示すものである」とまとめている。JAMA誌2024年4月2日号掲載の報告。

術前・術後化学療法未実施TNBC患者1,966例の検体で、TIL量と予後の関連を解析

 研究グループは、北米(米国・ミネソタ州ロチェスター、カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバー)、欧州(フランス・パリ、リヨン、ビルジュイフ、オランダ・アムステルダム、ロッテルダム、イタリア・ミラノ、パドバ、ジェノバ、スウェーデン・ヨーテボリ)、アジア(日本・東京、韓国・ソウル)の13施設において、1979~2017年にTNBCと診断され、外科手術を受けたが術前または術後補助化学療法を受けなかった(放射線療法の有無は問わない)早期TNBC患者を対象に、切除された乳房の原発腫瘍組織中のTIL量と予後との関連について、個々の患者のデータを後ろ向きにプール解析した(最終追跡調査日は2021年9月27日)。

 主要評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)、副次評価項目は無再発生存期間(RFS)、無遠隔再発生存期間(DRFS)、および全生存期間(OS)とし、施設で層別化した多変量Coxモデルを用いて関連性を評価した。

 合計2,211例のデータが得られ、このうち適格基準を満たした1,966例を解析に組み込んだ。

TIL量が多いほど、iDFS率、RFS率、DRFS率、OS率が改善

 1,966例の患者背景は、年齢中央値56歳(四分位範囲[IQR]:39~71)、StageIが55%、TIL量(間質専有面積比率)の中央値は15%(IQR:5~40)であった。1,966例中417例(21%)がTIL量50%以上(年齢中央値41歳[IQR:36~63])、1,300例(66%)が30%未満(59歳[41~72])であった。追跡期間中央値は18年(95%信頼区間[CI]:15~20)であった。

 全体において、各アウトカムに関するイベント数は、iDFSが1,074例(55%)、RFSが940例(48%)、DRFSが832例(42%)、OS(死亡)は803例(41%)であった。

 StageIのTNBCにおいて、5年DRFS率は、TIL量が50%以上の患者では94%(95%CI:91~96)、30%未満の患者では78%(75~80)、5年OS率はそれぞれ95%(92~97)、82%(79~84)であった。

 追跡期間中央値18年時点で、年齢、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、組織学的悪性度および放射線治療歴を補正後、TIL量が10%増加するごとに、iDFSイベントリスクは8%(ハザード比[HR]:0.92、95%CI:0.89~0.94)、RFSイベントリスクは10%(0.90、0.87~0.92)、DRFSイベントリスクは13%(0.87、0.84~0.90)、死亡リスクは12%(0.88、0.85~0.91)それぞれ低下し、TIL量の増加とiDFS、RFS、DRFSおよびOSの改善との関連が認められた(尤度比検定のp<10-6)。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Leon-Ferre RA, et al. JAMA. 2024;331:1135-1144.

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HER2+早期乳がん、PET pCR例の化学療法は省略可?(PHERGain)/Lancet

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 HER2陽性の早期乳がん患者において、18F-FDGを用いたPET検査に基づく病理学的完全奏効(pCR)を評価指標とする、化学療法を追加しないトラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法でのde-escalation戦略は、3年無浸潤疾患生存(iDFS)率に優れることが示された。スペイン・International Breast Cancer CenterのJose Manuel Perez-Garcia氏らが、第II相の無作為化非盲検試験「PHERGain試験」の結果を報告した。PHERGain試験は、HER2陽性の早期乳がん患者において、化学療法を追加しないトラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法での治療の実現可能性、安全性、有効性を評価するための試験。結果を踏まえて著者は、「この戦略により、HER2陽性の早期乳がん患者の約3分の1が、化学療法を安全に省略可能であることが示された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年4月3日号掲載の報告。

PET実施はベースラインと治療2サイクル後

 PHERGain試験は、欧州7ヵ国の45病院を通じて行われ、HER2陽性、StageI~IIIAの手術可能な浸潤性乳がんで、PETで評価可能な病変が1つ以上ある患者を、1対4の割合でA群とB群に無作為に割り付けた。

 A群では、ドセタキセル(75mg/m2、静脈内投与)、カルボプラチン(AUC 6、静脈内投与)、トラスツズマブ(600mg固定用量、皮下投与)、およびペルツズマブ(初回投与840mg、その後420mgの維持用量、静脈内投与)(TCHPレジメン)を投与した。

 B群では、トラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を3週ごと投与した。

 無作為化は、ホルモン受容体の状態で層別化。PETはベースラインと治療2サイクル後に実施し、中央判定で評価した。B群の患者は、治療中のPETの結果に従って治療を変更。2サイクル後のPET反応例は、トラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を6サイクル継続し、PET無反応例にはTCHPを6サイクル投与した。術後、B群でpCRを達成した患者は、トラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を10サイクル投与し、pCRを達成しなかった患者は、TCHPを6サイクル、トラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を4サイクル投与した。PET無反応例は、トラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を10サイクル投与した。

 主要評価項目は、治療2サイクル後のB群のpCR(結果は既報[37.9%]1))と、B群の3年iDFS率だった。本論では、後者の結果が報告されている。

有害事象の発現はグループBで低率に

 2017年6月26日~2019年4月24日に、356例が無作為化された(A群71例、B群285例)。手術を受けた患者の割合は、A群が89%(63例)、B群が94%(267例)。2回目の解析時までの追跡期間中央値は43.3ヵ月だった。

 主要評価項目であるB群の3年iDFS率は、94.8%(95%信頼区間[CI]:91.4~97.1)だった(p=0.001)。

 治療関連有害事象(TRAE)および重篤な有害事象(SAE)は、A群がB群より高率だった(Grade3以上発現率:62% vs.33%、SAE:28% vs.14%)。B群のPET反応例でpCRが認められた患者は、Grade3以上のTRAEの発現率は1%と最も低く、SAEはみられなかった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)


【原著論文はこちら】

1)Perez-Garcia JM, et al. Lancet Oncol. 2021;22:858-871.

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乳がん免疫療法中の抗菌薬投与が予後に影響?

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 ペムブロリズマブによる術前治療中のHER2陰性高リスク早期乳がん患者において、抗菌薬の投与と高い残存腫瘍量(RCB)との関連が示唆された。これまで、免疫療法中の抗菌薬への曝露が、さまざまな種類のがんにおいて臨床転帰に悪影響を与えることが報告されている。米国・ミネソタ大学のAmit A. Kulkarni氏らは、ISPY-2試験でペムブロリズマブが投与された4群について、抗菌薬への曝露がRCBおよび病理学的完全奏効(pCR)へ与える影響について評価した2次解析の結果を、NPJ Breast Cancer誌2024年3月26日号に報告した。

 ISPY-2試験では、ペムブロリズマブの4サイクル投与と同時にパクリタキセルを12週間投与し、その後ドキソルビシンとシクロホスファミドを2~3週間ごとに4サイクル投与した。免疫療法(IO)と同時に少なくとも1回の抗菌薬の全身投与を受けた患者が抗菌薬曝露群に、それ以外のすべての患者が対照群に割り付けられた。

 RCBインデックスとpCR率は、t検定とカイ二乗検定、線形回帰モデルとロジスティック回帰モデルを使用してそれぞれ両群間で比較された。

 主な結果は以下のとおり。

・66例が解析に含まれ、うち18例(27%)が抗菌薬投与を受けていた。
・免疫療法中の抗菌薬の投与は、より高い平均RCBスコア(1.80±1.43 vs.1.08±1.41)および低いpCR率(27.8% vs.52.1%)と関連していた。
・抗菌薬の投与とRCBスコアについて、多変量線形回帰分析においても有意な関連がみられた(RCBインデックス係数:0.86、95%信頼区間:0.20~1.53、p=0.01)。

 著者らは、より大規模なコホートでの検証が必要としている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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Kulkarni AA, et al. NPJ Breast Cancer. 2024;10:24.

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トルカプ、フェソロデックスと併用でHR+進行乳がんに対し承認取得(CAPItello-291)/AZ

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 アストラゼネカは2024年3月27日付のプレスリリースにて、トルカプ(一般名:カピバセルチブ)について、フェソロデックス(同:フルベストラント)との併用療法で「内分泌療法後に増悪したPIK3CAAKT1またはPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん」を効能または効果として、3月26日に厚生労働省より承認を取得したと発表した。

 本承認は、昨年NEJM誌で発表された第III相CAPItello-291試験の結果に基づくものである。本試験では、PI3K/AKT経路の遺伝子変異を有する乳がん患者において、トルカプとフェソロデックスの併用療法が、フェソロデックス単剤療法と比較し、病勢進行または死亡のリスクを50%低下させることが示された(ハザード比:0.50、95%信頼区間:0.38~0.65、p<0.001、無増悪生存期間(PFS)中央値:7.3ヵ月vs.3.1ヵ月)。

 東京都立病院機構 がん・感染症センター 都立駒込病院 院長の戸井 雅和氏は、「このたびのトルカプとフェソロデックスの併用療法の承認によって、ホルモン受容体(HR)陽性進行乳がんの半数となるPIK3CAAKT1またはPTENの変異を有する患者さんに待ち望まれていた新たな治療選択肢を提供できるようになり、日本におけるHR陽性進行乳がん治療が進展しました。これらの遺伝子変異の検索は、内分泌療法をベースとする治療の効果を拡大し病勢進行を遅らせる併用療法の恩恵を患者さんにもたらすことになり、臨床現場においてきわめて重要です」と述べている。

<製品概要>

販売名:トルカプ錠160mg、トルカプ錠200mg
一般名:カピバセルチブ
効能又は効果:
内分泌療法後に増悪したPIK3CAAKT1又はPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
用法及び用量:
フルベストラントとの併用において、通常、成人にはカピバセルチブとして1回400mgを1日2回、4日間連続して経口投与し、その後3日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
製造販売承認年月日:2024年3月26日

(ケアネット 石原 菜保子)


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高リスク早期乳がんの術後内分泌療法、ribociclib上乗せでiDFS延長/NEJM

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 再発リスクの高いStageII/IIIのHR+/HER2-早期乳がんの術後療法において、CDK4/6阻害薬ribociclibと非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(NSAI)の併用療法は、NSAI単独療法と比較し無浸潤疾患生存期間(iDFS)を有意に改善した。米国・カリフォルニア大学デビッド・ゲフィン医科大学院のDennis Slamon氏が、国際共同無作為化非盲検第III相試験「NATALEE試験」の中間解析結果を報告した。ribociclibは、HR+/HER2-進行乳がん患者において全生存期間(OS)を有意に延長することが示されていた。NEJM誌2024年3月21・28日号掲載の報告。

ribociclib(3年)+NSAI(5年)併用の有効性をiDFSで評価

 研究グループは、2019年1月10日~2021年4月20日に、18歳以上の男性または女性で、再発リスクの高いStageII/IIIのHR+/HER2-早期乳がん(StageIIAはN1、またはN0かつグレード2かつ高リスク、またはN0かつグレード3、StageIIBはN0~1、StageIIIはN0~3)患者計5,101例を、ribociclib(1日1回400mgを3週間投与、その後1週間休薬、36ヵ月)+NSAI(レトロゾール1日1回2.5mgまたはアナストロゾール1日1回1mg、60ヵ月)併用群(2,549例)、またはNSAI単独群(2,552例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。男性および閉経前の女性には、ゴセレリン(3.6mg、28日に1回)を皮下投与した。

 主要評価項目はiDFS、副次評価項目は遠隔無病生存期間(DDFS)、無再発生存期間(RFS)、OS、安全性であった。

 本報告では、事前に規定した中間解析(データカットオフ日:2023年1月11日)の結果が示されている。iDFSはKaplan-Meier法で評価し、群間比較は層別log-rank検定が用いられた(中間解析における有意水準:両側のp=0.0256)。

浸潤性病変、再発または死亡のリスクはribociclib併用で25.2%低減

 主要評価項目のイベント(浸潤性病変、再発または死亡)が426例発生した時点で中間解析が実施された。ribociclib併用群が189例(7.4%)、NSAI単独群が237例(9.3%)であった。

 iDFSの追跡期間中央値は28ヵ月で、浸潤性病変、再発または死亡のリスクはribociclib併用群がNSAI単独群よりも有意に25.2%低かった。3年iDFS率はribociclib併用群で90.4%、NSAI単独群で87.1%であった(浸潤性疾患、再発、または死亡のハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.62~0.91、両側のp=0.003)。

 副次評価項目についても一貫してribociclib併用群が良好であった。3年DDFS率はribociclib併用群90.8%、NSAI単独群88.6%(HR:0.74、95%CI:0.60~0.91)、3年RFS率はそれぞれ91.7%、88.6%(0.72、0.58~0.88)であった。

 データカットオフ時点においてribociclib併用群で61例(2.4%)、NSAI単独群で73例(2.9%)が死亡し、死亡のHRは0.76(95%CI:0.54~1.07)であった。

 有害事象の発現率はribociclib併用群97.9%(2,470/2,524例)、NSAI単独群87.1%(2,128/2,444例)で、ribociclib 400mgとNSAI併用の3年レジメンで新たな安全性シグナルは認められなかった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Slamon D, et al. N Engl J Med. 2024;390:1080-1091.

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早期乳がん術前・術後化療にペルツズマブ上乗せ、長期有効性は?(PEONY試験)

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 HER2陽性の早期または局所進行を有するアジア人乳がん患者に対して、術前および術後化学療法にペルツズマブを上乗せした第III相PEONY試験の最終解析の結果、5年間の長期有効性が認められたことを、中国・Fudan University Shanghai Cancer CenterのLiang Huang氏らが明らかにした。Nature Communications誌2024年3月9日号掲載の報告。

・対象:早期または局所進行乳がんのアジア人女性329例
・試験群:ドセタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブ(4サイクル)→手術→FEC療法(3サイクル)→トラスツズマブ+ペルツズマブ(13サイクル)【ペルツズマブ群:219例】
・対照群:ドセタキセル+トラスツズマブ+プラセボ(4サイクル)→手術→FEC療法(3サイクル)→トラスツズマブ+プラセボ(13サイクル)【プラセボ群:110例】

 これまでの本試験の解析では、主要評価項目である盲検下独立中央判定(BICR)による病理学的完全奏効(pCR)は、ペルツズマブ群39.3%、プラセボ群21.8%であり、群間差は17.5%(95%信頼区間[CI]:6.9~28.0%、p=0.001)で、統計学的に有意な差を示したことが報告されている。今回は、副次評価項目である最終的な長期有効性(無イベント生存期間[EFS]、無病生存期間[DFS]、全生存期間[OS])および安全性が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・5年EFS率は、ペルツズマブ群84.8%、プラセボ群73.7%で有意差を認めた(群間差:11.1%、95%CI:1.2~21.0、p=0.027)。
・5年DFS率はそれぞれ86.0%と75.0%、群間差は11.0%(95%CI:1.2~20.7、p=0.028)で有意差を認めた。
・5年OS率では有意差が認められなかった(ペルツズマブ群93.9%、プラセボ群90.0%、群間差3.9%[95%CI:2.9~10.7、p=0.262])。
・術後の抗HER2療法中に発現したGrade3以上の有害事象(AE)の割合は、ペルツズマブ群11.3%、プラセボ群13.1%であった。AEによる死亡はそれぞれ0.9%、1.8%であった。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Huang L, et al. Nat Commun. 2024;15:2153.

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がん罹患数が著増、がん死は減少~英国の25年/BMJ

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 英国の年齢35~69歳の集団では、1993~2018年の25年間にがん罹患数が大きく増加したのに対し、がんによる死亡率は減少しており、この減少にはがんの予防(喫煙防止策、禁煙プログラムなど)と早期発見(検診プログラムなど)の成功とともに、診断検査の改善やより有効性の高い治療法の開発が寄与している可能性があることが、英国・Cancer Research UKのJon Shelton氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2024年3月13日号に掲載された。

23部位のがんの後ろ向き調査

 研究グループは、1993~2018年の英国の年齢35~69歳の集団における、23の部位のがんの診断数および死亡数を後ろ向きに調査した(特定の研究助成は受けていない)。

 解析には、国家統計局、ウェールズ公衆衛生局、スコットランド公衆衛生局、Northern Ireland Cancer Registry、イングランド国民保健サービスなどのデータを用いた。

 主要アウトカムは、がんの年齢調整罹患率と年齢調整死亡率の経時的変化とした。

前立腺がんと乳がんが増加、ほかは安定的に推移

 35~69歳の年齢層におけるがん罹患数は、男性では1993年の5万5,014例から2018年には8万6,297例へと57%増加し、女性では6万187例から8万8,970例へと48%増加しており、年齢調整罹患率は男女とも年平均で0.8%上昇していた。

 この罹患数の増加は、主に前立腺がん(男性)と乳がん(女性)の増加によるものだった。これら2つの部位を除けば、他のすべてのがんを合わせた年齢調整罹患率は比較的安定的に推移していた。

 肺や喉頭など多くの部位のがんの罹患率が低下しており、これは英国全体の喫煙率の低下に牽引されている可能性が高いと推察された。一方、子宮や腎臓などのがんの罹患率の増加を認めたが、これは過体重/肥満などのリスク因子の保有率が上昇した結果と考えられた。

 また、罹患数の少ない一般的でないがんの傾向については、たとえば悪性黒色腫(年齢調整年間変化率:男性4.15%、女性3.48%)、肝がん(4.68%、3.87%)、口腔がん(3.37%、3.29%)、腎がん(2.65%、2.87%)などの罹患率の増加が顕著であった。

男女とも胃がん死が著明に減少

 25年間のがんによる死亡数は、男性では1993年の3万2,878例から2018年には2万6,322例へと20%減少し、女性では2万8,516例から2万3,719例へと17%減少しており、年齢調整死亡率はすべてのがんを合わせて、男性で37%(年平均で-2.0%)低下し、女性で33%(-1.6%)低下していた。

 死亡率が最も低下したのは、男性では胃がん(年齢調整年間変化率:-5.13%)、中皮腫(-4.17%)、膀胱がん(-3.24%)であり、女性では胃がん(-4.23%)、子宮頸がん(-3.58%)、非ホジキンリンパ腫(-3.24%)だった。罹患率と死亡率の変化の多くは、変化の大きさが比較的小さい場合でも統計学的に有意であった。

 著者は、「喫煙以外のリスク因子の増加が、罹患数の少ない特定のがんの罹患率増加の原因と考えられる」「組織的な集団検診プログラムは、がん罹患率の増加をもたらしたが、英国全体のがん死亡率の減少にも寄与した可能性がある」「この解析の結果は、新型コロナウイルス感染症の影響を含めて、がんの罹患率およびアウトカムの今後10年間の評価基準となるだろう」としている。

(医学ライター 菅野 守)


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Shelton J, et al. BMJ. 2024;384:e076962.

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男性乳がん患者、乳がん特異的死亡リスクは?

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 StageI~IIIのホルモン受容体(HR)陽性の男性乳がん患者における乳がん特異的死亡リスクを調査した結果、そのリスクは少なくとも20年間持続することを、アルゼンチン・Grupo Oncologico Cooperativo del SurのJulieta Leone氏らが明らかにした。JAMA Oncology誌オンライン版2024年2月29日号掲載の報告。

 研究グループは、米国国立がん研究所(NCI)のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)の集団ベースのデータを用いて、1990~2008年に乳がんと診断された男性を対象とした観察コホート研究を実施した。累積発生関数を用いて、乳がん特異的死亡および乳がん非特異的死亡の累積リスクに関するベースライン時の変数を推定した。Fine-Gray回帰を用いてあらかじめ選択した変数と乳がん特異的死亡との関連を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析にはStageI~III、HR陽性の男性乳がん患者2,836例が組み込まれた。診断時の年齢中央値は67歳(四分位範囲:57~76)、追跡期間中央値は15.41年(同:12.08~18.67)であった。
・乳がん特異的死亡の20年間の累積リスクは、StageIで12.4%、StageIIで26.2%、StageIIIで46.0%であった。
・乳がん特異的死亡リスクのピークは二峰性で、N3で4年後、StageIIIで11年後に認められた。
・診断から5年生存した患者において、乳がん特異的死亡リスクが高かったのは、64歳以上よりも50歳未満、グレード1よりもグレード2または3/4、StageIよりもIIまたはIIIであった。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Leone J, et al. JAMA Oncol. 2024 Feb 29. [Epub ahead of print]

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de novo転移乳がん、治療を受けない場合の生存期間

提供元:CareNet.com

 新規に転移のある乳がん(dnMBC)と診断され、その後治療を受けなかった患者の全生存期間(OS)中央値は2.5ヵ月と、1回以上治療を受けた患者の36.4ヵ月に比べて有意に短かったことが、米国・Duke University Medical CenterのJennifer K. Plichta氏らの研究でわかった。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2024年3月5日号に掲載。

 本研究では、2010~16年における成人dnMBC患者を米国・National Cancer Databaseから抽出し、1回以上治療受けた患者(治療あり群)と理由にかかわらず治療を受けなかった患者(治療なし群)に層別化した。OSはKaplan-Meier法を用いて推定し、OSに関連する因子はCox比例ハザードモデルを用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・5万3,240例のdnMBC患者のうち、治療ありが92.1%、治療なしが7.9%だった。
・治療なし群は、年齢が高く(中央値:68歳vs.61歳、p<0.001)、合併症スコアが高く(p<0.001)、トリプルネガティブの割合が高く(17.8% vs.12.6%)、疾病負荷が高かった(転移部位2ヵ所以上:未治療38.2% vs.既治療29.2%、p<0.001)。
・OS中央値は治療あり群が36.4ヵ月、治療なし群が2.5ヵ月であった(p<0.001)。
・治療なし群のOS悪化に関連する因子は調整後、高齢、高い合併症スコア、高い腫瘍悪性度、トリプルネガティブ(vs.HR+/HER2-)が挙げられた(すべてp<0.05)。

 本研究の結果、治療を受けなかったdnMBC患者は、高齢で、合併症があり、臨床的にアグレッシブながんが多く、治療なし患者の予後は治療あり患者と同様、選択された患者および疾患特性と関連していた。著者らは「治療しなかったdnMBCの予後は悲惨」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Plichta JK, et al. Breast Cancer Res Treat. 2024 Mar 5. [Epub ahead of print]

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