抗体薬物複合体SG、複数治療歴のあるHR+転移乳がんでもPFS改善(TROPiCS-02)/ASCO2022

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 内分泌療法、CDK4/6阻害薬、化学療法による複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対して、抗TROP2抗体薬物複合体sacituzumab govitecan(SG)が、医師選択治療(TPC)に比べ有意に無増悪生存期間(PFS)を改善したことが、第III相TROPiCS-02試験で示された。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。

 欧米では、SGは2種類以上の前治療歴を有する転移のあるトリプルネガティブ乳がんに対して承認されている。HR+/HER2-進行乳がんに対しては、第I/II相IMMU-132-01試験において、客観的奏効率(ORR)31.5%、PFS中央値5.5ヵ月、全生存期間(OS)中央値12ヵ月、管理可能な安全性プロファイルが確認されている。今回、HR+/HER2-転移乳がんに対する第III相TROPiCS-02試験の結果が報告された。

・対象:HR+/HER2-の転移または局所進行した切除不能の乳がんで、転移後に内分泌療法またはタキサンまたはCDK4/6阻害薬による治療歴が1ライン以上、化学療法による治療歴が2~4ラインの成人患者
・試験群:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静注
・対照群:TPC(カペシタビン、エリブリン、ビノレルビン、ゲムシタビンから選択)
・評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会によるPFS
[副次評価項目]OS、ORR、奏効持続期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、患者報告アウトカム、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフ時点(2022年1月3日)で、SG群272例、TPC群271例であった。内臓転移例は両群共に95%、転移後の6ヵ月以上の内分泌療法歴は両群共に86%、CDK4/6阻害薬治療歴は12ヵ月以下ではSG群59%、TPC群61%、12ヵ月超ではSG群39%、TPC群38%、化学療法歴の中央値は両群共に3ラインだった。
・PFS中央値はSG群5.5ヵ月、TPC群4.0ヵ月とSG群で改善し(HR:0.66、95%CI:0.53~0.83、p=0.0003)、6ヵ月PFS率は順に46.1%、30.3%、12ヵ月PFS率は21.3%、7.1%であった。サブグループ解析では、化学療法歴3ライン以上、内臓転移あり、65歳以上を含めて、SG群のPFSベネフィットが示された。
・OSは、SG群13.9ヵ月、TPC群12.3ヵ月で有意差はなかったが(HR:0.84、95%CI:0.67~1.06、p=0.14)、今回は1回目の中間解析(全3回予定)であり、まだデータがmatureではなく現在フォローアップ中である。
・ORRはSG群21%、TPC群14%(オッズ比:1.63、p=0.03)、CBRはSG群34%、TPC群22%(オッズ比:1.84、p=0.002)とどちらもSG群で高く、DOR中央値はSG群7.4ヵ月、TPC群5.6ヵ月であった。
・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は全体でSG群74%、TPC群60%で、最も多かったのは好中球減少症(SG群51%、TPC群38%)と下痢(9%、1%)だった。SGの安全性プロファイルはこれまでの試験と同様であった。間質性肺疾患はSG群ではみられず(TPC群1%)、心機能不全および左室機能不全は両群共にみられなかった。

 今回の結果から、Rugo氏は「複数の治療歴があり治療選択肢が限られている乳がん患者において、SGは統計学的に有意で臨床的に意味のあるベネフィットを示し、可能な治療選択肢として考慮されるべき」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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TROPiCS-02試験(ClinicalTrials.gov)

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F1CDx、非小細胞肺がんと悪性黒色腫の4薬剤のコンパニオン診断追加承認/中外

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 中外製薬は2022年6月3日、遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」について、チロシンキナーゼ阻害薬ダコミチニブ(製品名:ビジンプロ)およびブリグチニブ(製品名:アルンブリグ)の非小細胞肺がん、ならびにBRAF阻害薬エンコラフェニブ(製品名:ビラフトビ)およびMEK阻害薬ビニメチニブ(製品名:メクトビ)の悪性黒色腫の適応に対するコンパニオン診断として、6月2日に厚生労働省より承認を取得した。

 下線部が今回の追加適応

活性型EGFR遺伝子変異非小細胞肺がん:アファチニブマレイン酸塩、エルロチニブ
塩酸塩、ゲフィチニブ、オシメルチニブメシル酸塩、ダコミチニブ水和物
EGFRエクソン20 T790M 変異:オシメルチニブメシル酸塩
ALK融合遺伝子:アレクチニブ塩酸塩、クリゾチニブ、セリチニブ、ブリグチニブ
ROS1融合遺伝子:エヌトレクチニブ
METエクソン14スキッピング変異:カプマチニブ塩酸塩水和物
BRAF V600Eおよび V600K変異:悪性黒色腫 ダブラフェニブメシル酸塩、トラメチニブ
ジメチルスルホキシド付加物、ベムラフェニブ、エンコラフェニブビニメチニブ
HER2遺伝子増幅陽性乳がん:トラスツズマブ
KRAS/NRAS野生型結腸・直腸がん:セツキシマブ、パニツムマブ
・高頻度マイクロサテライト不安定性結腸・直腸がん:ニボルマブ
・高頻度マイクロサテライト不安定性固形がん:ペムブロリズマブ
・腫瘍遺伝子変異量高スコア固形がん:ペムブロリズマブ
NTRK1/2/3融合遺伝子固形がん:エヌトレクチニブ、ラロトレクチニブ硫酸塩
BRCA1/2遺伝子変異卵巣がん:オラパリブ
BRCA1/2遺伝子変異 前立腺がん:オラパリブ
FGFR2融合遺伝子 胆道がん:ペミガチニブ

(ケアネット)


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メトホルミン、非糖尿病の浸潤性乳がんに無効-MA.32試験/JAMA

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 糖尿病のない高リスクの切除可能な乳がん患者の術後補助療法において、ビグアナイド系経口血糖降下薬メトホルミンはプラセボと比較して、無浸潤疾患生存率を改善せず、全生存や遠隔無再発生存、乳がん無再発期間にも差はなく、Grade3以上の非血液毒性の頻度が高いことが、カナダ・トロント大学のPamela J. Goodwin氏らが実施した「MA.32試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年5月24・31日号に掲載された。

4ヵ国の医師主導型無作為化第III相試験

 MA.32試験は、非糖尿病の浸潤性乳がん患者における術後補助療法へのメトホルミン追加の有効性の評価を目的とする、医師主導の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2010年8月~2013年3月の期間に、4ヵ国(カナダ、スイス、米国、英国)の施設で参加者の登録が行われた(Canadian Cancer Society Research Institute[CCSRI]などの助成を受けた)。

 対象は、年齢18~74歳、過去1年以内に診断されたT1~T3/N0~N3/M0(T1aN0とT1bN0を除く)の乳がんで、切除術後に標準的な術後補助療法を受けており、空腹時血糖値≦126mg/dLの患者であった。被験者は、メトホルミン(850mg、1日2回)またはプラセボを5年間経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要アウトカムは、ホルモン受容体陽性(エストロゲン受容体[ER]またはプロゲステロン受容体[PgR]、あるいはこれら双方が陽性)例における無浸潤疾患生存とされた。無浸潤疾患生存は、無作為化の時点から、局所、領域、遠隔での浸潤性病変の再発、新規の原発性浸潤性病変(乳房または乳房以外)、死亡(乳がん、乳がん以外のがん、不明な原因)のうち、最も早く発現したイベントまでの期間と定義された。

 また、8つの副次アウトカムのうち、3つ(全生存、遠隔無再発生存、乳がん無再発期間)の評価が行われた。

中間解析で、ER/PgR陰性例での無益性を確認

 3,649例(平均年齢52.4歳、女性3,643例[99.8%])が登録され、全例が解析に含まれた。2回目の中間解析で、ER/PgR陰性例における無益性が示されたため、主解析はER/PgR陽性例(2,533例)で行われた。ER/PgR陽性例の追跡期間中央値は96.2ヵ月(範囲:0.2~121)であった。

 無浸潤疾患生存のイベントは、ER/PgR陽性例のうち465例で発現した。イベント発生率は、100人年当たりメトホルミン群が2.78と、プラセボ群の2.74と比較して有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.01、95%信頼区間[CI]:0.84~1.21、p=0.93)。また、死亡の発生率は、100人年当たりメトホルミン群が1.46、プラセボ群は1.32であり、全生存率にも両群間に差はなかった(1.10、0.86~1.41、p=0.47)。

 一方、ER/PgR陰性例の追跡期間中央値94.1ヵ月の時点における無浸潤疾患生存イベントの発生率は、100人年当たりメトホルミン群が3.58、プラセボ群は3.60であった(HR:1.01、95%CI:0.79~1.30、p=0.92)。全生存率にも差はなかった(0.89、0.64~1.23、p=0.46)。

 また、ER/PgR陽性例における遠隔無再発生存率(HR:0.99、95%CI:0.80~1.23、p=0.94)、乳がん無再発期間(0.98、0.80~1.20、p=0.87)にも統計学的に有意な差はみられなかった。

 なお、探索的解析では、ERBB2(以前はHER2またはHER2/neuと呼ばれた)陽性例で、無浸潤疾患生存率(HR:0.64、95%CI:0.43~0.95、p=0.03)および全生存率(0.54、0.30~0.98、p=0.04)が、メトホルミン群で有意に良好であった。

 Grade3以上の非血液毒性が、メトホルミン群で高頻度に認められた(21.5% vs.17.5%、p=0.003)。最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、高血圧(2.4% vs.1.9%)、月経不順(1.5% vs.1.4%)、下痢(1.9% vs.0.8%)であった。

 著者は、「これらの知見を糖尿病患者へ外挿する際は、糖尿病と非糖尿病で代謝状態(たとえば、血糖コントロール、インスリン抵抗性、肥満)が異なるため注意を要する。また、メトホルミンは2型糖尿病に有効であるため、今回の結果は、乳がん患者における糖尿病治療薬としてのメトホルミンの使用には影響を与えないと考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)


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Goodwin PJ, et al. JAMA. 2022;327:1963-1973.

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「がんゲノム医療の現状と未来」国際WEBカンファレンス開催/日本乳がん情報ネットワーク

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 日本乳がん情報ネットワーク(JCCNB)では2022年6月25日、「Cancer genome medicineの現状と将来展望」と題した国際WEBカンファレンスを開催する。米国臨床腫瘍学会(ASCO)CEOのClifford A. Hudis氏による基調講演のほか、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)のWilliam Gradisher氏による「NCCN ガイドラインの最新情報」などのミニレクチャー、米国・欧州・アジア・オセアニアを繋いだライブでのパネルディスカッションが予定されている。

<JCCNB Conference 2022 開催概要>
主催:日本乳がん情報ネットワーク(JCCNB)
テーマ:Cancer genome medicineの現状と将来展望
開催日:2022年6月25日(土)17:00~21:30
会議形式:WEB配信(録画・ライブ)
参加費:10,000円
プログラム:
17:00~17:05 「開会」 Dr.中村 清吾(昭和大学臨床ゲノム研究所)
17:05~18:00 「基調講演」 Dr. Clifford Hudis(ASCO)
18:00~18:05 「Introduction」Dr. Robert Carlson(NCCN)
18:05~18:20 「NCCN ガイドラインの最新情報」Dr. William Gradisher(Northwestern University)
18:20~18:35 「トリプルネガティブ乳がんにおける最近の話題」Dr. Mellinda Telli(Stanford University School of Medicine)
18:35~18:50 「外科医の視点」Dr. Emiel Rutgers(EBC council)
18:50~19:05 「腫瘍内科医の視点」Dr. Barbara Pistilli(Gustave Roussy Cancer Center)
19:05~19:20 「がん治療における免疫療法の新パラダイム」Dr. Gianpaolo Biancini(Ospedale San Raffaele)
19:20~20:00 休憩
20:00~21:30 パネルディスカッション(座長:Dr. Clifford Hudis・Dr. 中村清吾)
パネルディスカッション参加予定者:Dr. Robert Carlson、Dr. William Gradisher、Dr. Mellinda Telli、Dr. Emiel Rutgers、Dr. Barbara Pistilli、Dr. Gianpaolo Biancini、Dr. Wonshik Han(Seoul National University Hospital)、Dr. Tan Puay Hoon(Singapore General Hospital)、Dr. Bruce Mann(Victorian Comprehensive Cancer Centre)

 詳細、ならびに事前参加登録はこちら

(ケアネット)


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ASCO2022スタート!注目演題を特設サイトでチェック

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 6月3日~7日(現地時間)まで、世界最大の腫瘍学会であるASCO2022(米国臨床腫瘍学会年次総会)が、米国シカゴとオンラインのハイブリッド形式で開催される。新型コロナ感染拡大の影響でにより、2年間オンラインのみの開催だったが、今年は久しぶりに現地に世界のオンコロジストが集うこととなり、各種カンファレンスや交流会なども多く企画されている。

 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors’Picks」(医師会員限定)では、ASCO2022のスタートにあわせ、数千を超す演題の中から、複数のエキスパートが選定した「注目演題」をピックアップ。学会期間中にオープンする特設サイトにおいて、「肺がん」「消化器がん」「乳がん」「泌尿器がん」「血液がん」のがん種別に、コメントとともに紹介している。

 学会終了後は、視聴レポートやまとめ記事なども続々アップしていく予定だ。

Doctors’Picks ASCO2022特設サイト
Doctors’Picks【医師会員限定】

(ケアネット 杉崎 真名)


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HR+/HER2-乳がんへの術前ニボルマブ+パルボシクリブ+アナストロゾール、安全性データを発表(CheckMate 7A8)/ESMO BREAST 2022

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 ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)乳がん患者に対する術前療法としての、ニボルマブ+パルボシクリブ+アナストロゾールの3剤併用は、主に肝毒性による安全性上の懸念から組み入れが停止され、無作為化試験には進まないことが報告された。前臨床試験では免疫チェックポイント阻害薬とCDK4/6阻害薬の相乗効果の可能性が示唆されていた。米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で第Ib/II相CheckMate 7A8試験の安全性確認期間における安全性データおよび予備的有効性データを報告した。

[CheckMate 7A8試験]
・対象:新たにHR+/HER2−乳がんと診断された閉経後女性あるいは男性(腫瘍径≧2cm、ECOG PS 0~1)
・試験群1(9例):ニボルマブ480mgを4週間間隔で静脈内投与+パルボシクリブ125mgを1日1回経口投与(3週間)後1週間休薬+アナストロゾール1mgを1日1回経口投与×5サイクル
・試験群2(12例):ニボルマブ480mgを4週間間隔で静脈内投与+パルボシクリブ100mgを1日1回経口投与(3週間)後1週間休薬+アナストロゾール1mgを1日1回経口投与×5サイクル
・評価項目:
[主要評価項目]用量制限毒性(DLT:治療開始後最初の4週間に発生した治療に起因する有害事象)
[副次評価項目]安全性、病理学的完全奏効(pCR)、奏効率(ORR)

 主な結果は以下のとおり。

・主なGrade≧3の治療関連AE(TRAE)は、試験群1ではALT上昇(33.3%)、AST上昇(33.3%)、好中球減少症(22.2%)、白血球数減少(22.2%)、試験群2では好中球数減少(41.7%)、好中球減少症(16.7%)だった。両群で治療関連の死亡は報告されていない。
・DLTは、試験群1では9例中2例で報告され(22.2%)、1例は肝炎、もう1例は発熱性好中球減少症だった。試験群2では報告されていない。
・両群の全21例中9例で毒性により治療が中止された。6例(29%)はGrade≧3の肝臓のAE(ALT上昇とAST上昇:2例、ALT上昇:1例、トランスアミナーゼ上昇:2例、高トランスアミナーゼ血症:1例)、Grade≧3の発疹とGrade2の免疫介在性肺障害、Grade1の肺臓炎、Grade3の発熱性好中球減少症が1例ずつだった。
・pCRが得られたのは試験群2の1例で、全体としてpCR率は4.8%。CRは1例、PRは14例で、放射線画像評価によるORRは、71.4%だった。

 Tolaney氏は、今回の結果と文献上の他データに基づくと、抗PD-1薬とCDK4/6阻害薬の併用は、肝毒性および肺毒性のリスク増加のため、安全な使用は難しい可能性があるとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

CheckMate 7A8試験(Clinical Trials.gov)

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イルミナ、包括的がんゲノムプロファイリングテストを申請

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 イルミナは、2022年5月10日、厚生労働省にTruSight Oncology Comprehensiveパネルシステムの製造販売承認申請を行った。

 同パネルシステムは、固形悪性腫瘍患者のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍サンプルから抽出した核酸を検体として、NextSeq 550Dxシステムを用いたターゲットシーケンスにより517遺伝子の変異を検出する包括的がんゲノムプロファイリング検査キット。

 DNAからは塩基変異、多塩基変異、挿入、欠失および遺伝子増幅を、RNAからは遺伝子融合およびスプライスバリアントを検出する。コンパニオン診断薬(CDx)についても、順次追加される予定。

  同ゲノムプロファイリング検査は2022年3月の欧州での最初の発売に続き、日本で製造販売承認申請を行った。

(ケアネット  細田 雅之)


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進行/転移TN乳がんの1次治療、PD-L1発現によらずDato-DXd+デュルバルマブが奏効(BEGONIA)/ESMO BREAST 2022

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 進行/転移トリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療として、トポイソメラーゼI阻害薬を含むTROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)が、PD-L1発現の有無によらず高い奏効率を示し、安全性プロファイルも管理可能であったことがBEGONIA試験で示された。英国・Queen Mary University of LondonのPeter Schmid氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で報告した。

 BEGONIA試験は、2つのPartで構成された非盲検プラットフォーム試験で、進行/転移TNBCの1次治療として、抗PD-L1抗体のデュルバルマブと他の薬剤との併用を評価している。Part1について、すでにパクリタキセル+デュルバルマブ群での客観的奏効率(ORR)が58.3%、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)+デュルバルマブ群でのORRが66.7%であったことを報告している。今回はDato-DXd+デュルバルマブ群における結果を報告した。

・対象:StageIVに対する治療歴のない切除不能な進行/転移TN乳がん
・方法:Dato-DXd 6mg/kg+デュルバルマブ1,120mg(3週ごと、静脈内投与)を病勢進行もしくは許容できない毒性発現まで投与
・評価項目:
[主要評価項目]安全性、忍容性
[副次評価項目]ORR(RECIST v1.1)、奏効期間、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)

 主な結果は以下のとおり。

・29例がDato-DXd+デュルバルマブを投与され(24例が投与継続中)で、27例がベースライン後に2回評価を受けた。追跡期間中央値は3.9ヵ月(範囲:2~6ヵ月)。
・ORRは74%(20/27例、95%CI:54~89)で、完全奏効は2例(7%)、部分奏効は18例(67%)だった。奏効はPD-L1発現の有無によらず認められた。
・奏効までの期間の中央値は1.4ヵ月(95%CI:1.35~1.58)で、奏効例すべてがデータカットオフ時(2021年11月15日)も奏効を維持し、奏効期間中央値未到達である。
・用量制限毒性は認められていない。
・Dato-DXdの減量が4例(14%、すべて口内炎による)、Dato-DXdの投与延期が1例(3%)、デュルバルマブの投与延期が4例(14%)にみられた。
・頻度が高い有害事象は、口内炎(69%)、脱毛症(66%)、悪心(66%)であった。下痢は4例(14%、すべてGrade1)と少なく、間質性肺疾患/肺炎や好中球減少は報告されなかった。

 現在、本試験のPart2の Dato-DXd +デュルバルマブ群への登録が進行中であり、奏効期間、PFS、OSの評価のためのフォローアップを継続している。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

BEGONIA試験(Clinical Trials.gov)

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HR+/HER2-早期乳がんへの術前HER3-DXdが有望(SOLTI TOT-HER3)/ESMO BREAST 2022

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 未治療のホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)早期乳がん患者に対する、HER3を標的とした抗体薬物複合体(ADC)patritumab deruxtecan(HER3-DXd)の術前単回投与が、病理学的完全奏効(pCR)の予測スコアとして開発されたCelTILスコアの有意な増加と関連し、奏効率が45%であることが示された。スペイン・Hospital Clinic of BarcelonaのAleix Prat氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で多施設共同前向きSOLTI TOT-HER3試験(part A)1)の最終結果を報告した。

[SOLTI TOT-HER3試験(part A)]
・対象:未治療のHR+/HER2−、手術可能(超音波検査で腫瘍径≧1cm)、Ki67≧10%の閉経前/後女性および男性乳がん患者
・試験群:治療前のERBB3 mRNAレベルに基づき4分類され、HER3-DXd(6.4mg/kg)を単回投与(77例)
・評価項目:
[主要評価項目]治療前と治療後(サイクル1の21日目)のCelTILスコア(-0.8×tumor cellularity[%]+1.3×TILs[%]:pCRと相関)2)の変動
[副次評価項目]治療後(サイクル1の21日目)の奏効率(ORR)、治療前のERBB3 mRNAレベルおよびIHCでのHER3タンパク質発現状況とCelTILスコアの変化、PAM50サブタイプの変化、治療前後の67遺伝子の発現状況およびKi67の変化、安全性と忍容性

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン特性は、平均年齢53歳、腫瘍径中央値21mm、cN0:71%、平均Ki67:27%だった。
・治療前のERBB3 mRNAレベルは、high:21例、medium:21例、low:21例、ultralow:14例だった。
・治療前のIHCでのHER3タンパク質発現状況は、high:50例、low:10例、negative:1例だった(16例は測定中あるいは測定不可)。
・評価可能な62例において、治療後(サイクル1の21日目)のORRは45%(CR:23%、PR:23%)だった。
・CelTILスコアは治療前と比べ治療後有意に増加した(平均差+6.8、p<0.001)。この増加は、レスポンダーではみられたが(p<0.001)、非レスポンダーではみられなかった(p=0.135)。
・治療前のERBB3 mRNAレベルおよびIHCでのHER3タンパク質発現状況とCelTILスコアの変化に関連はみられなかった。
・PAM50サブタイプは、治療前がLuminal A:40例、Luminal B:32例、HER2-Enriched:2例、Basal-like:3例だったのに対し、治療後にはLuminal A:54例、Luminal B:13例、HER2-Enriched:1例、Basal-like:2例となり、Luminal Aの約10%がNormal-likeに、Luminal Bの50%超がLuminal Aに変化した。
・治療前の非Luminalサブタイプと高い再発リスクスコアは、CelTILスコア増加との関連がみられた。
・67遺伝子の発現状況は、治療前と比較して治療後にCD68やCD4といった免疫関連遺伝子が誘導され、MELKやMKI67などの細胞増殖関連遺伝子は抑制されていた。Ki67遺伝子の発現は治療後有意に減少した(平均差-8.9、p<0.001)。
・Grade3以上のTEAEは14%で発現し、主なTEAEは好中球減少症(8%)、ALT上昇(3%)、下痢(1%)だった。ILDおよび死亡例の報告はない。

 TOT-HER3試験ではpart Bとしてトリプルネガティブ乳がん患者の登録が進められているほか、SOLTI-VALENTINE試験ではHR+/HER2−乳がんに対する術前療法として、HER3-DXd単剤あるいは内分泌療法との併用が検証される予定。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1)TOT-HER3試験(Clinical Trials.gov)

2)Nuciforo P, et al. Ann Oncol. 2018;29:170-177.

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T-DXdの効果、HER2発現だけでなく腫瘍内の空間的分布も影響(DAISY)/ESMO BREAST 2022

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 転移乳がんへのトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の有効性を評価したDAISY試験における探索的評価項目のトランスレーショナル解析から、T-DXdの抗腫瘍効果は腫瘍細胞のHER2発現量だけでなく、空間的分布にも影響されることが示唆された。フランス・Gustave RoussyのMaria Fernanda Mosele氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で報告した。

 DAISY試験は、転移乳がんを対象にT-DXdの有効性をHER2発現量(高発現、低発現、陰性の3群)で評価した多施設非盲検第II相試験。主要評価項目である最良客観的奏効率はすでに報告されており、HER2高発現群(IHC 3+またはIHC 2+/ISH+、68例)で71%、HER2低発現群(IHC 2+/ISH-またはIHC 1+、72例)で37.5%、HER2陰性群(IHC 0、37例)で30%と、T-DXdの抗腫瘍効果はHER2発現量と関連していた(p=0.0001)。今回はT-DXdの作用機序と耐性機序を解明するため、腫瘍細胞への取り込み、免疫細胞のモジュレーション、HER2の空間的分布、耐性機序について検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・HER2陰性細胞ではT-DXdの取り込みが少なく(p=0.053)、T-DXdの取り込みとHER2発現量には中程度の相関が認められた(r=0.75)。
・HER2高発現の乳がんでPD-L1発現の減少がみられたが、HER2低発現や陰性ではみられなかった(p=0.02)。
・T-DXdによるT細胞やマクロファージの量的モジュレーションはみられなかった。
・HER2陰性細胞の割合が高い空間的分布がT-DXd無効と関連(p=0.0008)していた。すなわち、HER2発現細胞が空間的に遠い場合は効果が小さいことが示唆された。
・T-DXdで病勢進行した20例中13例(65%)にHER2発現の減少がみられた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

DAISY試験(Clinical Trials.gov)

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