HER2+乳がん2次治療、HR0.28でT-DXdがPFS延長(DESTINY-Breast03)/NEJM

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 トラスツズマブおよびタキサン系薬剤による治療歴のあるHER2陽性の切除不能または転移のある乳がん患者において、抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)はトラスツズマブ エムタンシン(同:カドサイラ)と比較し、病勢進行または死亡のリスクを有意に低下させることが認められた。スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏らが、世界15ヵ国169施設で実施された無作為化非盲検第III相試験「DESTINY-Breast03試験」の中間解析結果を報告した。本試験での発現率はこれまでの臨床試験に比べ数値的に低かったもののトラスツズマブ デルクステカンの投与は間質性肺疾患の発現と関連しており、著者は「臨床使用においては慎重なモニタリングが不可欠」と注意を促したうえで、「トラスツズマブ デルクステカンは、トラスツズマブとタキサン系薬剤、ならびにペルツズマブによる治療歴のあるHER2陽性転移性乳がん患者に対する有効な新しい治療薬である」とまとめている。NEJM誌2022年3月24日号掲載の報告。

主要評価項目はPFS、副次評価項目はOSとORR

 研究グループは、2018年7月20日~2020年6月23日に、トラスツズマブとタキサン系薬剤による治療歴のあるHER2陽性の切除不能または転移性乳がん患者524例を、トラスツズマブ デルクステカン(5.4mg/kg、3週間間隔で静脈内投与)群とトラスツズマブ エムタンシン(3.6mg/kg、3週間間隔で静脈内投与)群に、ホルモン受容体の状態(陽性または陰性)、ペルツズマブ治療歴、内臓転移の有無を層別因子として1対1の割合に無作為に割り付けた。

 主要評価項目は盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存(PFS)、主要な副次評価項目は全生存(OS)、その他の副次評価項目はBICRおよび治験担当医師判定による客観的奏効率(ORR)、治験担当医師判定によるPFS、および安全性であった。

トラスツズマブ デルクステカンは病勢進行または死亡のリスクを72%低下

 追跡期間中央値がトラスツズマブ デルクステカン群16.2ヵ月、トラスツズマブ エムタンシン群15.3ヵ月において、PFS期間中央値はトラスツズマブ デルクステカン群は未到達、トラスツズマブ エムタンシン群は6.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.6~8.2)であった。12ヵ月時点のPFS率はそれぞれ75.8%(95%CI:69.8~80.7)、34.1%(27.7~40.5)で、病勢進行または死亡のハザード比は0.28(95%CI:0.22~0.37、p<0.001)であった。

 また、12ヵ月時のOS率は、トラスツズマブ デルクステカン群94.1%(95%CI:90.3~96.4)、トラスツズマブ エムタンシン群85.9%(80.9~89.7)で、死亡に関するハザード比は0.55(95%CI:0.36~0.86、p=0.007)であり、事前に規定した有意水準(p<0.000265)を満たさなかった。

 ORRは、トラスツズマブ デルクステカン群79.7%(95%CI:74.3~84.4)、トラスツズマブ エムタンシン群34.2%(28.5~40.3)であった。

 全Gradeの副作用発現率は、トラスツズマブ デルクステカン群98.1%、トラスツズマブ エムタンシン群86.6%、Grade3/4の副作用発現率はそれぞれ45.1%、39.8%であった。間質性肺疾患はトラスツズマブ デルクステカン群で27例(10.5%)、トラスツズマブ エムタンシン群で5例(1.9%)に認められ、いずれもGrade3以下であった。

(ケアネット)


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Cortes J, et al. N Engl J Med. 2022;386:1143-1154.

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BRCA変異陽性高リスク早期乳がん患者への術後オラパリブ、OSも改善(OlympiA)

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 生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性(gBRCAm)かつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者に対する、オラパリブ(商品名:リムパーザ)の術後投与が、全生存期間(OS)を有意に延長した。本試験(第III相OlympiA試験)の主要評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)であり、主要解析結果は、2021年の米国臨床腫瘍学会年次総会で初めて発表され、NEJM誌に同時掲載されている。今回、2022年3月16日に行われた欧州臨床腫瘍学会のバーチャルプレナリーで、OSの最新の結果が発表された。

[OlympiA試験]
・対象:根治的局所療法および術前/術後薬物療法が完了したgBRCAmかつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者 1,836例
・試験群:オラパリブ(300mg、1日2回)を1年間投与 921例
・対照群:プラセボ(1日2回)を1年間投与 915例
・評価項目:
[主要評価項目]ITT集団におけるiDFS
[副次評価項目]遠隔無再発生存期間(DDFS)、OS、QOL、安全性など

 今回発表された主な結果は以下のとおり。

・OSにおいて、オラパリブはプラセボと比較し、死亡リスクを32%低下させた(ハザード比:0.68、98.5%信頼区間:0.47~0.97、p=0.009)。
・3年生存率は、プラセボ群89.1% vs.オラパリブ群92.8%であった。
・4年生存率は、プラセボ群86.4% vs.オラパリブ群89.8%であった。
・本試験におけるオラパリブの安全性および忍容性プロファイルは、過去の臨床試験のプロファイルと一貫していた。

 また、2022年3月11日、AstraZenecaおよびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米およびカナダ以外ではMSD)は、第III相OlympiA試験の結果に基づき、オラパリブがgBRCAmかつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者に対する術後薬物療法として、米国で承認を取得したことを発表した。

(ケアネット 新開 みのり)


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早期乳がんへの術前/術後カペシタビン追加、DFSとOS改善~メタ解析

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 早期乳がん(EBC)患者に対する術前/術後療法として、標準的な全身療法へのカペシタビンの追加投与が、無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)を改善した。ドイツ・German Breast Group(GBG)のMarion T van Mackelenbergh氏らは1万5,000例以上のEBC患者データのメタ解析結果を、European Journal of Cancer誌オンライン版3月16日号へ報告した。

 clinicaltrials.govおよびpubmedにおいて、EBCに対する術前または術後療法としてのカペシタビンの使用、患者数100人以上の多施設共同無作為化試験、募集完了、主要アウトカムの評価済であることを条件に検索され、13試験が該当した。本解析の主要目的は無病生存期間(DFS)に対するカペシタビンの効果を調べることであり、副次目的は、遠隔転移DFS(DDFS)、全生存期間(OS)、病理学的完全奏効(術前補助療法としての試験)、カペシタビン関連毒性と治療効果の相互作用を分析することだった。

 主な結果は以下のとおり。

・15,993例のEBC患者の個々のデータが収集された。
・解析対象患者全員を対象としたCox回帰分析では、カペシタビンを追加しても、カペシタビンなしの治療と比較してDFSに有意な変化は認められなかった(ハザード比[HR]:0.952、95%信頼区間[CI]0.895~1.012、p=0.115)。
・他の薬剤の代わりにカペシタビンを投与した研究のサブセットでは、DFSへの影響はみられなかった(HR:1.035、95% CI:0.945~1.134、p=0.455)。
・しかし、標準的な全身治療に加えてカペシタビンを投与した研究のサブセットでは、DFSが改善した(HR:0.888、95% CI:0.817~0.965、p=0.005)。
・OSの改善は、コホート全体(HR:0.892、95% CI:0.824~0.965、p=0.005)およびカペシタビン追加のサブセット(HR:0.837、95% CI:0.751~0.933、p=0.001)で確認された。
・サブグループ解析の結果、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の患者において、DFSおよびOSについて、カペシタビンによる治療すべて、また他の全身治療にカペシタビンを追加することの有効性が明らかになった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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van Mackelenbergh MT,et al.Eur J Cancer. 2022 Mar 16;166:185-201.

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HER2+乳がんへの術後化学療法+トラスツズマブへのペルツズマブ追加、リンパ節転移陰性でベネフィットのある患者群を検討(APHINITY)

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3d illustration shows breast cancer with lymphatics, medically 3D illustration on pink background

 APHINITY試験はHER2陽性乳がんの術後化学療法+トラスツズマブへのペルツズマブの上乗せを検証した第III相試験で、HER2陽性乳がん患者全体とリンパ節転移のある患者で無浸潤疾患生存(iDFS)が大幅に改善することが報告されている。今回、米国・ダナファーバーがん研究所のRichard D. Gelber氏らは、リンパ節転移陰性(N-)でペルツズマブ追加によるベネフィットが得られるサブグループ、リンパ節転移陽性(N+)でde-escalationを考慮すべきサブグループについて検討した。European Journal of Cancer誌オンライン版2022年3月18日号に掲載。

 著者らは、STEPP(subpopulation treatment effect pattern plot:サブグループ別治療効果パターンプロット)を用いて、臨床的複合リスクスコア、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の割合、HER2コピー数(FISH)によるサブグループについて、全体およびリンパ節転移の有無別に、6年iDFS率のカプラン-マイヤー差(ペルツズマブ群-プラセボ群:Δ±SE)を推定した。

 その結果、6年iDFS率の絶対増加の平均は、患者全体で2.8±0.9、N+患者で4.5±1.2、N-患者で0.1±1.1だった。増加が最大だったのは、臨床的複合リスクが中等度(全体:5.3±1.9、N+:6.9±2.3、N-:4.0±3.0)、TILの割合が最大(全体:6.3±1.7、N+:7.4±2.4、N-:3.2±1.7)、HER2コピー数が中等度(全体:2.8±1.9、N+:7.4±2.5、N-:-1.3±1.9)の患者だったが、サブグループ別治療効果の異なったパターンを示す明らかなエビデンスはなかった。

 今回の検討では、N-におけるSTEPPでペルツズマブ追加によって明らかにベネフィットがあるサブグループを特定できず、N+におけるSTEPPでde-escalationが妥当なサブグループを特定できなかった。臨床的複合リスクスコアよりTILの割合のほうが、ペルツズマブの治療効果を予測できるようであった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Gelber RD, et al. Eur J Cancer. 2022;166:219-228.

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乳がんサバイバーの倦怠感、長期的な経過の特徴/JCO

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 早期乳がん1次治療後の倦怠感の長期的な経過は個人差が大きい。フランス・Gustave RoussyのInes Vaz-Luis氏らが乳がんサバイバーにおける倦怠感の長期的な経過の特徴を調査した結果から、がん関連の倦怠感の多次元的な性質とその危険因子の複雑さが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年3月15日号に掲載。

 本研究は、2012~15年に治療を受けたStage I~IIIの乳がん患者を対象とした全国的な大規模前向き研究(CANcer TOxicity)を使用して、倦怠感に関する詳細な縦断的解析を実施した。倦怠感は、診断時、診断後1、2、4年に調査し、ベースラインでの臨床的、社会人口統計学的、行動的、腫瘍関連、治療関連の特徴を入手した。

 調査の結果、総合的倦怠感が重度だった4,173例において、その経過について3つの群が特定され、各群の重度の総合的倦怠感のリスク推定値は以下のとおりであった。

1)持続的にリスクが高い群:患者の21%
 診断時94.8%(95%CI:86.6〜100.0)、4年後64.6%(95%CI:59.2〜70.1)
2)リスクが悪化する群:患者の19%
 診断時13.8%(95%CI:6.7~20.9)、4年後64.5%(95%CI:57.3~71.8)
3)リスクが低いままの群:患者の60%
 診断時3.6%(95%CI:2.5~4.7)、4年後9.6%(95%CI:7.5~11.7)

 また、重度の身体的倦怠感、重度の精神的倦怠感、重度の認知疲労的倦怠感では、社会人口学的要因、臨床的要因、治療関連要因の影響は異なり、重度の総合的倦怠感とは分類が異なった。リスクが悪化する原因としては、うつ病などの感情的な苦痛、ホルモン療法などが示唆された。

 著者らは「本研究の結果は、重度の倦怠感のリスクが高い早期乳がん患者を特定し、個別の介入を促進することに役立つ」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Vaz-Luis I, et al. J Clin Oncol. 2022 Mar 15. [Epub ahead for print]

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閉経後進行乳がんの1次治療、ribociclib追加でOS延長(MONALEESA-2)/NEJM

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 ホルモン受容体陽性HER2陰性の閉経後進行乳がん女性の1次治療において、CDK4/6阻害薬ribociclibとアロマターゼ阻害薬レトロゾールの併用療法はプラセボ+レトロゾールと比較して、全生存期間が約1年延長し、新たな安全性シグナルの発現は認められないことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのGabriel N. Hortobagyi氏らが実施した「MONALEESA-2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年3月10日号に掲載された。

国際的な第III相試験の全生存最終解析

 本研究は、2014年1月~2015年3月の期間に参加者の登録が行われた国際的な無作為化第III相試験であり、今回は、主な副次エンドポイントである全生存期間の、プロトコールで規定された最終解析の結果が公表された(Novartisの助成を受けた)。

 本試験の主要エンドポイントである担当医評価による無増悪生存期間中央値は、先行解析によりribociclib+レトロゾールで優れることが、すでに報告されている(25.3ヵ月vs.16.0ヵ月、ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.46~0.70、p<0.001)。

 この試験の対象は、局所病変が確認され、ホルモン受容体が陽性で、HER2陰性の再発または転移を有する乳がんの閉経後女性で、進行病変に対する全身療法を受けていない患者であった。

 被験者は、ribociclib(600mg、1日1回、経口投与)を、1サイクル28日として21日連続投与後7日間休薬する群、またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。両群とも、レトロゾール(2.5mg、1日1回、経口投与)の連日投与を受けた。ribociclibまたはプラセボの投与、データ解析、アウトカム評価を行ったすべての研究者および患者には、割り付け情報が知らされなかった。

 全生存は層別化log-rank検定で評価され、死亡が400例に達した時点でKaplan-Meier法を用いて要約された。無増悪生存と全生存の解析には、結果の妥当性を確保するために、階層的検定法が用いられた。

死亡リスクが24%低減

 668例が登録され、ribociclib群に334例、プラセボ群に334例が割り付けられた。全体の追跡期間中央値は80ヵ月(最短75ヵ月)で、治療期間中央値はribociclib群が20.2ヵ月(四分位範囲:7.4~45.1)、プラセボ群は14.1ヵ月(7.1~28.9)であった。データカットオフ日(2021年6月10日)の時点で、ribociclib群181例(54.2%)、プラセボ群219例(65.6%)が死亡した。

 ribociclib群はプラセボ群に比べ、全生存の利益が有意に大きかった。すなわち、全生存期間中央値はribociclib群の63.9ヵ月(95%CI:52.4~71.0)に対し、プラセボ群は51.4ヵ月(47.2~59.7)であり(HR:0.76、95%CI:0.63~0.93、両側検定のp=0.008)、12.5ヵ月の差がみられた。

 ribociclibによる全生存の利益は、治療開始後約20ヵ月から認められ、その後は持続的に大きくなった。5年全生存率はribociclib群が52.3%(95%CI:46.5~57.7)、プラセボ群は43.9%(95%CI:38.3~49.4)であり、6年全生存率はそれぞれ44.2%(95%CI:38.5~49.8)および32.0%(95%CI:26.8~37.3)だった。

 後治療は、ribociclib群の304例中267例(87.8%)、プラセボ群の317例中286例(90.2%)が受けた。後治療として、初回化学療法を受けるまでの期間中央値は、ribociclib群が50.6ヵ月、プラセボ群は38.9ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.61~0.91)、無化学療法生存期間中央値はそれぞれ39.9ヵ月および30.1ヵ月であった(0.74、0.62~0.89)。

 有害事象プロファイルは既報の結果と一致しており、新たな安全性シグナルは観察されなかった。Grade3/4のとくに注目すべき有害事象のうち、最も頻度の高かったのは好中球減少であり、ribociclib群63.8%、プラセボ群1.2%で発現した。また、ribociclib群では、Grade3の間質性肺疾患または肺臓炎が2例(0.6%)で認められたが、間質性肺疾患または肺臓炎に関連するGrade4の有害事象や死亡はみられなかった。

 著者は、「これまでにMONALEESA試験で得られた知見と今回の結果を合わせると、ribociclibによる全生存の利益は、ホルモン療法の有無、治療ライン数、閉経の状態にかかわらず、一致して認められることが示された」としている。

(医学ライター 菅野 守)


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Hortobagyi GH, et al. N Engl J Med. 2022;386:942-950.

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がん患者でのブレークスルー感染リスクと転帰/JCO

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 米国で最大のCOVID-19症例と対照の全国コホートを運営するNational COVID Cohort Collaborative Consortiumが、ワクチン接種を受けたがん患者のブレークスルー感染リスクと転帰について調査した結果が、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年3月14日号で報告された。がん患者、とくに血液腫瘍患者はブレークスルー感染と重篤な転帰のリスクが高かったが、ワクチン接種患者ではブレークスルー感染リスクが著明に低下することが示唆された。

 本研究では、新型コロナウイルス感染の記録がなく、mRNAワクチンを1回もしくは2回接種し、2020年12月1日~2021年5月31日にブレークスルー感染した患者をNational COVID Cohort Collaborativeを用いて特定した。ブレークスルー感染リスクと転帰について、ロジスティック回帰を使用して分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・ワクチン接種集団においてブレークスルー感染を6,860例に認め、うち1,460例(21.3%)ががん患者だった。
・固形腫瘍および血液腫瘍患者は、がん患者以外と比較して、ブレークスルー感染(オッズ比[OR]:1.12、95%CI:1.01〜1.23およびOR:4.64、95%CI:3.98〜5.38)および重篤な転帰(OR:1.33、95%CI:1.09〜1.62およびOR:1.45、95%CI:1.08〜1.95)のリスクが有意に高かった(年齢、性別、人種/民族、喫煙状況、ワクチンの種類、ワクチン接種日を調整)。
・血液腫瘍患者は、固形腫瘍患者に比べてブレークスルー感染リスクが高かった(調整ORはリンパ腫の2.07からリンパ性白血病の7.25の間)。
・ブレークスルー感染リスクはワクチン2回目接種後、すべてのがん患者で低かった(OR:0.04、95%CI:0.04〜0.05)。また、BNT162b2ワクチン(ファイザー製)よりmRNA-1273ワクチン(モデルナ製)でリスクが低く(OR:0.66、95%CI:0.62〜0.70)、とくに多発性骨髄腫患者で低かった(OR:0.35、95%CI:0.15〜0.72)。
・免疫抑制が強く、骨髄移植を伴う薬物療法は、ワクチン接種集団のブレークスルー感染リスクと強く関連していた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Song Q. et al. J Clin Oncol. 2022 Mar 14;JCO2102419. [Epub ahead of print]

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日本人がん患者の心血管疾患、発生しやすいがん種などが明らかに/日本循環器学会

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 近年、がん患者の生存率向上により治療の副作用の1つである心毒性が問題視されている。ところが、アジア圏のなかでもとくに日本国内のそのような研究報告が乏しい。今回、村田 峻輔氏(国立循環器病センター予防医学・疫学情報部)らが、国内がん生存者における心血管疾患の全国的な発生率に関する後ろ向きコホート研究を行い、不整脈、心不全(HF)、および急性冠症候群(ASC)の100人年当たりの発生率(IR)は、それぞれ2.26、2.08、0.54 で不整脈とHFでは明らかに高く、一般集団と比較してもHFやACSのIRは非常に高いことが明らかになった。本結果は2022年3月11~13日に開催された第86回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies2で報告された。

 本研究では、がん患者の心血管疾患発症に関し「HBCR(Hospital-based cancer registry)を用いてがん患者における心血管疾患の発生状況を説明する」「年齢・性別による発症頻度の違いを比較」「がん患者の心不全予防調査」の3つを目的として、対象者を1年間追跡して各心血管疾患の年間発生率を調査した。2014~2015年のDPCデータから対象のがん患者(乳がん、子宮頸がん、結腸がん、肝臓がん、肺がん、前立腺がん、胃がん)の心血管疾患発生状況を、HBCRデータからがん種、病期、1次治療に関する情報を抽出し、不整脈、HF、ASC、脳梗塞(CI)、脳出血(ICH)、静脈血栓塞栓症(VTE)の6つの発生率を調査した。各心血管疾患について、全がん患者、がん種別、年齢・性別のサブグループで100人年当たりのIRと95%信頼区間を算出した。また、各がん種で各心血管疾患のIRを比較、HF発生に対する潜在的な予測因子を調べるためにロジスティクス回帰分析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・本研究の対象者は、2014~15年にがん診療連携拠点病院495施設でがん(乳がん、子宮頸がん、結腸がん、肝臓がん、肺がん、前立腺がん、胃がん)と診断された者から外来のみまたは18歳未満の患者を除外した54万1,956例だった。
・患者の構成は、乳がんと子宮頸がん患者では若年者が多く、いずれも1次治療には外科的治療の選択が多かった。一方、肝臓がんと肺がんはいずれも40%超が1次治療として化学療法を実施していた。
・不整脈、HF、およびACSの100人年当たりのIRは、それぞれ2.26、2.08、0.54で不整脈とHFでは明らかに高く、一般集団と比較してもHFやACSのIRは非常に高かった。これは年齢・性別で比較しても明らかであった。
・不整脈とHF、ACSの発生率を年齢・性別でみると、高齢者かつ男性で多かった。
・がん種ごとにIRをみたところ、肺がん、肝臓がん、結腸がん、そして胃がん患者では不整脈の頻度が高かった。
・肺がんと肝臓がん患者ではHFのIRも高く、化学療法や外科的治療が関連していた。その予測因子として、肺がんのオッズ比(OR)は、病期stage2で1.23(95 %信頼区間[CI]:1.08~1.40、p=0.001)、stage3で1.26(同:1.13~1.41、p<0.001)、化学療法で1.48(同:1.36~1.61、p<0.001)、外科的治療で1.15(同:1.02~1.29、p=0.017)、年齢で1.03(同:1.03~1.03、p<0.001)、女性で0.62(同:0.56~0.67、p<0.001)だった。一方の肝臓がんのORは化学療法で1.39(同:1.18~1.63、p<0.001)、放射線治療で0.51(同:0.25~0.92、p=0.041)、外科的治療で1.95(同:1.65~2.32、p<0.001)、年齢で1.03(1.02~1.04、p<0.001)、女性で0.85(同:0.72~1.00、p=0.046)だった。

(ケアネット 土井 舞子)


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早期乳がん診断から10年以降の再発率とリスク因子

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 早期乳がんの診断から10年以降に発生する晩期乳がん再発についてデンマーク・Aarhus UniversityのRikke Norgaard Pedersen氏らが追跡調査した結果、診断から32年後も再発例を認め、診断時にリンパ節転移4個以上、腫瘍径20mm超、エストロゲン受容体陽性の女性で晩期再発率が高いことが示された。Journal of the National Cancer Institute誌2022年3月号に掲載。

 本研究では、Danish Breast Cancer Groupのデータベースにおいて1987~2004年に早期乳がんと診断されたすべての女性のうち、再発・2次がん発生がなく10年生存した女性(10年無病生存例)について、診断から10年以降、晩期再発、死亡、海外移住、2次がん発生まで、もしくは2018年12月31日まで追跡した。患者特性および腫瘍特性で層別し、晩期再発について1,000人年当たり発生率および累積発生率を算出した。また、Cox回帰を用い、競合リスクを考慮して晩期再発の調整ハザード比を算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・早期乳がんと診断された3万6,924例のうち、10年無病生存例は2万315例だった。
・そのうち2,595例は、最初の診断から10~32年後に再発し、発生率は1,000人年当たり15.53(95%CI:14.94~16.14)、累積発生率は16.6%(95%CI:15.8~17.5%)だった。
・腫瘍径20mm超、リンパ節転移陽性、エストロゲン受容体陽性の女性では、累積発生率および晩期再発のハザードが高かった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Pedersen RN, et al. J Natl Cancer Inst. 2022;114:391-399.

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日本人女性における生殖細胞系列バリアントと乳がんリスク(HERPACC研究)

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 乳がんの約5~10%は遺伝性で、乳がんの易罹患性に関わる遺伝子における生殖細胞系列の病的バリアント(GPV)に起因する。関連研究の多くは欧米で行われており、日本人集団についての情報は少ない。またGPV評価において、環境因子とゲノムワイド関連研究(GWAS)で同定された一塩基多型(SNPs)による交絡を考慮した研究はない。愛知県がんセンターの春日井 由美子氏らは、9つの遺伝子におけるGPVと乳がんリスクとの関連を包括的に評価するためにケースコントロール研究を実施。Cancer Science誌オンライン版2月25日号に報告された。

 本研究は2001年1月~2005年12月に愛知県がんセンターにおける病院疫学研究プログラム(HERPACC)の参加者(日本人女性)が対象。乳がん症例とその対照者(がんの既往なし)は、年齢(±5歳)と閉経状態で1:2の割合でマッチングされた。9つの遺伝子(ATMBRCA1BRCA2CDH1CHEK2PALB2PTENSTK11、およびTP53)におけるGPVと乳がんリスクとの関連は、潜在的な交絡因子で調整したロジスティック回帰モデルを用いて、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)で評価された。

 主な結果は以下のとおり。

・乳がん症例629例、対照1,153例が評価対象とされた。
・乳がん症例では計25例でGPVを保有していた(4.0%、95%CI:2.6~5.9)のに対し、対照では計4例がGPVを保有していた(0.4%、95%CI:0.1~0.9)。
・乳がんに対するオッズ比は全GPVで12.2 (4.4~34.0、p=1.74E-06)、BRCA1/2では16.0 (4.2~60.9、p=5.03E-0.5)だった。
・GPVを有する乳がん症例の割合は、40歳未満で6.7%と最も多く、9遺伝子にGPVがある症例は、GPVがない症例(中央値52歳)よりも若年(中央値48歳、p=3.60E-02)で診断されていた。
・60歳未満の年齢層では、全GPVおよびBRCA1/2で乳がんリスクとの間に有意な関連が認められた。

 研究者らは、環境因子やGWASで同定されたSNPsに関係なく、GPVと日本人女性の乳がんリスクとの関連が認められたとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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Kasugai Y,et al. Cancer Sci. 2022 Feb 25. [Epub ahead of print]

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