monarchEの適格基準でも検討、POTENT試験の探索的解析結果

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 第III相POTENT試験では、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性乳がんにおける術後ホルモン療法へのS-1の上乗せ効果が示された。今回、同試験のリスク分類別の探索的解析結果を京都大学の高田 正泰氏らがBreast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年9月7日号に報告した。

 POTENT試験の対象は、StageI~IIIBのER陽性HER2陰性乳がん患者。S-1併用群(S-1[1日2回経口、3週ごと]+標準的ホルモン療法)と標準的ホルモン療法群に無作為に割り付けられた。

 再発リスク(複合リスク)は、年齢、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、グレード、ER発現、Ki-67発現レベルを組み込んだCoxモデルで決定した。複合リスクスコアにより低リスク群(下位四分位数以下、677例)、中リスク群(四分位範囲、767例)、高リスク群(上位四分位数超、453例)に分け、各群におけるS-1の上乗せ効果を評価した。また、monarchE試験の適格基準を満たした患者におけるS-1の上乗せ効果も推定された。

 主な結果は以下のとおり。

・内分泌療法にS-1を追加することで、無浸潤疾患生存(iDFS)イベントは、中リスク群では49%(ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.33~0.78)、高リスク群では29%(HR:0.71、95%CI:0.49~1.02)減少した。
・低リスク群では、S-1の上乗せ効果は確認できなかった。
・monarchEコホート1基準のうちリンパ節転移1~3個の患者(290例)において、S-1上乗せはiDFSの改善を示した(HR:0.47、95%CI:0.29~0.74)。

 著者らはS-1の上乗せ効果はとくに中リスク群で顕著だったとし、最適な使用法を探るため、さらなる研究が必要とまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Takada M, et al. Breast Cancer Res Treat. 2023 Sep 7. [Epub ahead of print]

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日本におけるSNS上のがん情報、4割超が誤情報

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 SNSの普及により、患者はがん情報に容易にアクセスできるようになった。しかし、患者の意思決定に悪影響を与えかねない誤情報や有害情報も大量に発信されている。日本のSNSにおけるがん情報はどの程度信頼できるものなのか。これについて調べた名古屋市立大学病院 乳腺外科の呉山 菜梨氏らによる研究結果がJMIR formative research誌オンライン版2023年9月6日号に掲載された。

 研究者らは、Twitter(現:X)上で2022年8~9月に投稿された、日本語の「がん」という言葉を含むツイートを抽出した。1)がんの発生や予後に関する言及、2)行動の推奨・非推奨、3)がん治療の経過や有害事象に関する言及、4)がん研究の成果、5)その他がんに関連する知識・情報、を含むがん関連ツイートを抽出対象とし、「いいね」の数が最も多かった上位100ツイートを選定した。それぞれのツイートについて、日本のがんセンターまたは大学病院で臨床に携わる医師である2名の独立したレビュアーが、情報が事実か誤情報か、有害か安全かを、誤情報と有害なツイートについてはその判断理由とともに評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・抽出されたツイートは計6万9,875件であった。上位ツイート100件のうち、誤情報が含まれていたのは44件(44%)、有害情報が含まれていたのは31件(31%)、誤情報と有害情報の両方が含まれていたのは30件(30%)であった。
・誤情報は、証明されていない(38/94、40.4%)、反証されている(19/94、20.2%)、不適切な適用(4/94、4.3%)、エビデンスの強度の誤り(14/94、14.9%)、誤解を招く(18/94、19.1%)、その他の誤情報(1/94、1.1%)に分類された。
・有害情報は安全情報よりも「いいね」される頻度が高く、誤情報がリツイートされる頻度は事実に基づいた情報よりも、有害情報がリツイートされる頻度は安全な情報よりも、それぞれ有意に高かった。
・正確性と有害性を合わせた分析では、「事実-安全」「事実-有害」「誤情報-安全」「誤情報-有害」と評価されたツイートの割合は、それぞれ55%、1%、14%、30%であった。
・「いいね」やリツイートの数が最も多かったのは、「日本では、米国から余った抗がん剤や廃棄される抗がん剤が輸入されているため、がんの死亡率が高い」という誤った情報であった。

 著者らは、「日本では、Twitter上でがんに関連する誤った情報や有害な情報が蔓延していることが明らかであり、この問題に関するヘルスリテラシーと意識を高めることが極めて重要である。さらに、行政機関や医療従事者は、患者やその家族が十分な情報を得たうえで意思決定できるよう、正確な医療情報を提供し続けることが重要である」と結論付けている。

(ケアネット 杉崎 真名)


【原著論文はこちら】

Kureyama N, et al. JMIR Form Res. 2023;7:e49452.

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9月から保険収載、オンコタイプDXを乳がん治療でどう活用するか

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 「オンコタイプDX 乳がん再発スコアプログラム」が、9月1日付で保険収載された。これを受けて9月6日、エグザクトサイエンスは「患者さん一人ひとりが納得のいく治療法を~シェアードディシジョンメイキングの時代へ~」と題したプレスセミナーを開催。坂東 裕子氏(筑波大学医学医療系 乳腺内分泌外科)らが登壇し、乳がん治療におけるオンコタイプDXの位置付けやシェアードディシジョンメイキングの重要性について解説・議論が行われた。

化学療法を省略しうる患者とは? 再発スコア結果に基づく考え方

 オンコタイプDX検査によって算出される再発スコア結果(RS)は、早期乳がんにおける術後化学療法の要否の判断材料とすることができる。TAILORx試験とRxPONDER試験の最新結果を基に、リンパ節転移が3個までのHR陽性/HER2陰性早期乳がん患者の治療選択の考え方を坂東氏は以下のように整理した。
N0、RS 0~25
50歳超:内分泌療法は化学内分泌療法に対して非劣性1)
50歳以下:化学内分泌療法の効果はRSが16~25の41~50歳の患者、もしくは臨床リスクの高い患者に限定される1)
N1、RS 0~25
閉経後:化学内分泌療法から得られる効果はない2)
閉経前:化学内分泌療法による5年DRFI(無遠隔再発期間)の上乗せ効果は2.4%であった2)
N0/N1、RS 26~100
実質的に化学療法の効果があると考えられる2)
 RSが0~25の患者は、リンパ節転移の有無によらず80~87%を占めると報告されている3)。このことから坂東氏は「リンパ節転移が陽性だから化学療法をするのではなく、再発スコアをみたうえで化学療法の必要性を判断することで、多くの患者さんが不要な化学療法を省略することができる」と話した。

オンコタイプDX検査によりわかること・わからないこと

 坂東氏はまた、この検査でわかること・わからないことを以下のようにまとめている。
オンコタイプDX検査でわかること
リンパ節転移陰性もしくはリンパ節転移1~3個陽性のHR陽性/HER2陰性乳がんにおける
・内服ホルモン治療のみを5年間行なった場合の9年時点での再発のリスク
・点滴の化学療法を追加することによるメリット(再発リスクがどのくらい減少するか)
オンコタイプDX検査でわからないこと
・リンパ節転移4個以上、HER2陽性、トリプルネガティブの場合の再発率
・内服ホルモン治療を5年以上/卵巣機能抑制治療を併用した場合の再発率
・経口抗がん剤や分子標的治療を追加した場合の再発率やメリット

乳がんの遺伝子検査=BRCA遺伝子検査と考える人が多い

 エグザクトサイエンスが実施した乳がん患者対象のアンケート調査の結果、遺伝子検査でわかるのは「遺伝性乳がんの情報(79%)」、「がんの発症のリスク(63%)」とBRCA遺伝子検査を示唆する回答をした人が多く、「より自分に合った治療を選択できる(35%)」、「再発リスクがわかる(28%)」とオンコタイプDXを含む多遺伝子検査を示唆する回答は少なかった。坂東氏は、「なかには自分で調べてとても詳しい患者さんもいるが、そうでない人のほうが多い。パンフレットなどを用いながら、何がわかる検査なのかをしっかり説明することが重要」とし、そのうえで「再発リスクがどのくらいなら治療をしたいと思うかは人によって異なる。オンコタイプDXはリスクが数字ではっきりと提示されるものなので、これらのデータを使いながら、私たちは今まで以上に患者さんと話をすることが求められている」とした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1) Sparano J, et al. N Engl J Med. 2018;379:111-121.

2) Kalinsky K, et al. Cancer Res. 2021;81:GS3-00.

3) Bello DM, et al. Ann Surg Oncol. 2018;25:2884-2889.

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がんサバイバーの心不全発症、医療者の知識不足も原因か/日本腫瘍循環器学会

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 9月30日(土)~10月1日(日)の2日間、神戸にて第6回日本腫瘍循環器学会学術集会が開催される(大会長:平田 健一氏[神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 循環器内科学分野])。それに先立ち、大会長による学会の見どころ紹介のほか、実際にがんサバイバーで心不全を発症した女性がつらい胸の内を語った。

がん治療を始める前に、病歴にもっと目を向けてほしかった

 今回のメディアセミナーに患者代表として参加した女性は、10代で悪性リンパ腫の治療のために抗がん剤を使用。それから十数年以上経過した後に健康診断で乳がんを指摘されて乳房温存手術を受けたが、その後にリンパ節転移を認めたため、抗がん剤(計8コース)を行うことになったという。しかし、あと2コースを残し重症心不全を発症した。幸いにも植込み型補助人工心臓(VAD)の臨床試験に参加し、現在に至る。

 この女性は医療機関にかかる際には必ず病歴を申告していたそうだが、治療の際に医療者から“抗がん剤の種類によっては生涯使用できる薬剤量の上限があること”を知らされず、「後になって知った」と話した。今回、過去の治療量が反映されなかったことが原因で心不全を発症したそうだが「乳がん治療のための抗がん剤を始める際は、むくみや動悸については説明があったものの、抗がん剤が心臓に与える影響や病歴について何も触れられなかったことはとても残念だった。5コース目の際に看護師に頻脈を指摘されたがそれ以上のことはなかった。VADは命を救ってくれたが私の人生の救いにはまったくなっていない。日常生活では制約だらけでやりたいことは何もできない」と悔しさをにじませた。「生きるために選択した治療が生きる希望を失う状況を作り出してしまったことは悔しく、残念でならない」とする一方で、「医療者や医療が進歩することを期待している」と医療現場の発展を切に願った。

 これに対し小室氏は、医療界における腫瘍循環器の認知度の低さ、がん治療医と循環器医の連携不足が根本原因とし「彼女の訴えは、治療歴の影響を鑑みて別の抗がん剤治療の選択はなかったのか、心保護薬投与の要否を検討したのかなど、われわれにさまざまな問題を提起してくださった。患者さんががん治療を完遂できるよう研究を進めていきたい」とコメントした。

 前述の女性のような苦しみを抱える患者を産み出さないために、がん治療医にも循環器医にも治療歴の聴取もさることながら、心毒性に注意が必要な薬剤やその対処法を患者と共有しておくことも求められる。そのような情報のアップデートのためにも4年ぶりの現地開催となる本学術集会が診療科の垣根を越え、多くの医療者の意見交換の場となることを期待する。

さまざまな学会と協働し、問題解決に立ち向かう

 大会長の平田氏は「今年3月に発刊されたOnco-cardiologyガイドラインについて、今回のガイドラインセッションにて現状のエビデンスや今後の課題について各執筆者による解説が行われる。これに関し、2022年に発表されたESCのCardio-Oncology Guidelineの筆頭著者であるAlexander Lyon氏(英国・Royal Brompton Hospital)にもお越しいただき、循環器のさまざまなお話を伺う予定」と説明した。また、代表理事の小室 一成氏が本学会の注力している活動内容やその将来展望について代表理事講演で触れることについても説明した。

 主な見どころは以下のとおり。

<代表理事講演>
10月1日(日)13:00~13:30
「日本腫瘍循環器学会の課題と将来展望」
座長:南 博信氏(神戸大学内科学講座 腫瘍・血液内科学分野)
演者:小室 一成氏(東京大学大学院医学系研究科 循環器内科学)

<ガイドラインセッション>
9月30日(土)
14:00~15:30
座長:向井 幹夫氏(大阪国際がんセンター)
   南 博信氏(神戸大学内科学講座 腫瘍・血液内科学分野)
演者:矢野 真吾氏(東京慈恵会医科大学 腫瘍血液内科)
   山田 博胤氏(徳島大学 循環器内科)
   郡司 匡弘氏(東京慈恵会医科大学 腫瘍血液内科)
   澤木 正孝氏(愛知県がんセンター 乳腺科)
   赤澤 宏氏(東京大学 循環器内科)
   朝井 洋晶氏
   (邑楽館林医療企業団 公立館林厚生病院 医療部 内科兼血液・腫瘍内科)
   庄司 正昭氏
   (国立がん研究センター中央病院 総合内科・がん救急科・循環器内科)

15:40~17:10
座長:泉 知里氏(国立循環器病研究センター)
   佐瀬 一洋氏(順天堂大学大学院医学研究科 臨床薬理学)
演者:窓岩 清治氏(東京都済生会中央病院 臨床検査科)
   山内 寛彦氏(がん研有明病院 血液腫瘍科)
   田村 祐大氏(国際医療福祉大学 循環器内科)
   坂東 泰子氏(三重大学大学院医学系研究科 基礎系講座分子生理学分野)
   下村 昭彦氏(国立国際医療研究センター 乳腺・腫瘍内科)

<シンポジウム>
9月30日(土)9:00~10:30
「腫瘍と循環器疾患を繋ぐ鍵:clonal hematopoiesis」

10月1日(日)
9:00~10:30
「がん患者に起こる心血管イベントの予防と早期発見-チーム医療の役割-」/日本がんサポーティブケア学会共同企画
10:40~11:50
「腫瘍循環器をメジャーにするために」/広報委員会企画
13:40~15:10
「免疫チェックポイント阻害薬関連有害事象として心筋炎の最新の理解と対応」
15:20~16:50
「小児・AYAがんサバイバーにおいてがん治療後出現する晩期心毒性への対応」/AYAがんの医療と支援のあり方研究会共同企画
15:20~16:50
「第4期がんプロにおける腫瘍循環器学教育」/学術委員会企画

<Keynote Lecture>
9月30日(土)11:20~12:10
「Onco-cardiology and echocardiography (GLS)」
Speaker:Eun Kyoung Kim氏(Samsung Medical Center)

<ストロークオンコロジー特別企画シンポジウム>
10月1日(日)10:50~11:50
「がん合併脳卒中の治療をどうするか」

 このほか、教育セッションでは双方が学び合い、コミュニケーションをとっていくために必要な知識として、「腫瘍循環器学の基本(1)~循環器専門医からがん専門医へ~」「腫瘍循環器学の基本(2)~がん専門医から循環器専門医へ~」「肺がん治療の現状」「放射線治療と心血管障害」などの講演が行われる。

(ケアネット 土井 舞子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

第6回日本腫瘍循環器学会学術集会

日本臨床腫瘍学会・日本腫瘍循環器学会編集. Onco-cardiologyガイドライン. 南江堂;2023.

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ER+/HER2-早期乳がんの細胞増殖抑制効果、giredestrant vs.アナストロゾール(coopERA BC)

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 エストロゲン受容体(ER)+、HER2-の早期乳がんの術前化学療法として、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)のgiredestrantまたはアロマターゼ阻害薬のアナストロゾールを投与した第II相coopERA BC試験の結果、giredestrantはより有意な細胞増殖抑制効果を示し、忍容性は良好であったことを、米国・David Geffen School of MedicineのSara A. Hurvitz氏らが報告した。Lancet Oncology誌2023年9月号の報告。

 coopERA BC試験は、2週間のgiredestrant治療がアナストロゾールよりも強い細胞増殖抑制効果を示すかどうかを検証するためにデザインされた非盲検無作為化対照第II相試験。世界11ヵ国59ヵ所の病院または診療所で実施された。2021年の欧州臨床腫瘍学会で中間解析が報告され、今回は主要解析と最終解析が報告された。

 対象は、cT1c~cT4a-c、閉経後、ER+、HER2-、未治療の早期乳がんで、ECOG PS 0/1、Ki67≧5%の患者であった。参加者は、window of opportunity phaseとして1~14日目にgiredestrant 30mgを1日1回経口投与する群と、アナストロゾール1mgを1日1回経口投与する群に無作為に1対1に割り付けられた。層別化はTステージ、ベースライン時のKi67値、プロゲステロン受容体の状態によって行われた。その後、16週間の術前化学療法として、同じレジメンに加えてパルボシクリブ125mgが1日1回、28日サイクルの1~21日目に経口投与された。主要評価項目は、ベースラインから2週間(window of opportunity phase)のKi67値の変化率であった。

 主な結果は以下のとおり。

・2020年9月4日~2021年6月22日の間に221例の患者が、giredestrant+パルボシクリブ群(112例、年齢中央値62.0歳)とアナストロゾール+パルボシクリブ群(109例、62.0歳)に無作為に割り付けられた。うち194例(88%)は白人であった。
・主要解析(データカットオフ:2021年7月19日)において、Ki67値の平均変化率はgiredestrant群で-75%(95%信頼区間:-80~-70)、アナストロゾール群で-67%(-73~-59)であり、主要評価項目を達成した(p=0.043)。
・最終解析(データカットオフ:2021年11月24日)において、最も多かったGrade3/4の有害事象は好中球減少症(giredestrant+パルボシクリブ群26%[29例]、アナストロゾール+パルボシクリブ群27%[29例])と好中球数の減少(15%[17例]、15%[16例])であった。
・重篤な有害事象はgiredestrant+パルボシクリブ群で4%(5例)、アナストロゾール+パルボシクリブ群で2%(2例)に発現した。治療関連死はなかった。

 これらの結果より、研究グループは「giredestrantは有望な抗増殖・抗腫瘍活性を示し、単剤でもパルボシクリブとの併用でも忍容性は良好であった。この結果は、現在進行中の試験でさらなる検討を行うことを正当化するものである」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Hurvitz SA, et al. Lancet Oncol. 2023;24:1029-1041.

【参考文献・参考サイトはこちら】

coopERA BC試験(ClinicalTrials.gov)

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各固形がんにおけるHER2低発現の割合は/Ann Oncol

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 新たに定義されたカテゴリーであるHER2低発現(IHC 2+/ISH-またはIHC 1+)は、多くの固形がんで認められることが明らかになった。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのBurak Uzunparmak氏らによるAnnals of Oncology誌オンライン版2023年8月22日号掲載の報告より。

 本研究では、進行または転移を有する固形がん患者4,701例を対象に、IHC法によるHER2発現状態を評価した。また乳房と胃/食道の原発および転移腫瘍のペアサンプルにおいて、IHC法およびISH法によるHER2発現状態を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・HER2発現(IHC 1~3+)は全体の半数(49.8%)で認められ、HER2低発現は多くのがん種で認められた:乳がん47.1%、胃/食道がん34.6%、唾液腺がん50.0%、肺がん46.9%、子宮内膜がん46.5%、尿路上皮がん46%、胆嚢がん45.5%。
・乳がん629例、胃/食道がん25例における原発腫瘍と転移腫瘍のペアサンプルが評価された。
・乳がん原発腫瘍でHER2陰性(IHC 0)の34.6%およびHER2低発現の38.1%が、転移腫瘍におけるHER2ステータスの不一致を示した。原発腫瘍でHER2陽性(IHC 3+および/またはISH+)の84.1%は転移腫瘍のHER2ステータスに変化がなかった。
・サンプル数が少ないものの、胃/食道がん原発腫瘍でHER2陰性の95.2%は転移腫瘍のHER2ステータスに変化がなかった。
・非乳がんおよび非胃/食道がんにおいて、HER2 IHC検査を受けた1,553例のNGSデータが解析され、ERBB2遺伝子増幅は117例(7.5%)で確認された。
ERBB2遺伝子増幅のない1,436例のうち、512例(35.7%)がIHC法でいずれかのレベルのHER2発現を示した。

 著者らは、HER2低発現が腫瘍の種類を問わず頻繁に認められることが明らかになったとし、HER2低発現固形がん患者の多くがHER2標的治療から利益を得られる可能性があると結論付けた。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Uzunparmak B, et al. Ann Oncol. 2023 Aug 22. [Epub ahead of print]

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ER+/HER2-乳がん、Ki-67と21遺伝子再発スコアの関連

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 エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)乳がんにおいて、21遺伝子再発スコア(RS)高値とKi-67高値はどちらも予後不良因子であるが、これらのバイオマーカーによる違いが指摘されている。今回、韓国・Hallym UniversityのJanghee Lee氏らは、ER+/HER2-乳がん患者におけるKi-67とRSとの関連、Ki-67と無再発生存期間(RFS)との関連を調べた。その結果、Ki-67とRSに中等度の相関が観察され、RSの低い患者においてKi-67高発現がsecondary endocrine resistanceリスク上昇と関連していた。JAMA Network Open誌2023年8月30日号に掲載。

 本コホート研究は、韓国の2つの病院で2010年3月~2020年12月に21遺伝子RS検査を受け、ER+/HER2-乳がんの治療を受けた女性を対象とした。Ki-67とRFSとの関連はCox比例ハザード回帰モデル、Ki-67とsecondary endocrine resistanceとの関連はバイナリロジスティック回帰モデルを用いて検討した。Ki-67は20%以上を高発現、RS 25以下を低リスクとした。secondary endocrine resistanceは、術後内分泌療法開始2年以降の再発および5年の術後内分泌療法終了後1年以内の再発と定義した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象患者2,295例(平均年齢:49.8歳、標準偏差:9.3歳)のうち、1,948例(84.9%)が低リスク、1,425例(62.1%)がKi-67低発現であった。追跡期間中央値は40ヵ月(範囲:0~140ヵ月)。
・RSとKi-67は中等度の相関を示した(R=0.455、p<0.001)。
・Ki-67低発現患者のうち94.1%は低リスクだったが、Ki-67高発現患者では低リスクは69.8%だった。
・低リスク患者では、Ki-67によってRFSが有意に異なっていた(低値98.5% vs.高値96.5%、p=0.002)。
・化学療法なしの低リスク患者1,807例では、Ki-67高値が再発と独立して関連していた(ハザード比:2.51、95%信頼区間[CI]:1.27~4.96、p=0.008)。
・3年以降の再発率はKi-67によって有意に差があった(低値98.7% vs.高値95.7%、p=0.003)が、3年以内の再発率は変わらなかった(低値99.3% vs.高値99.3%、p=0.90)。
・Ki-67は、化学療法なしの低リスク患者におけるsecondary endocrine resistanceと関連していた(オッズ比:2.49、95%CI:1.13~5.50、p=0.02)。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Lee J, et al. JAMA Netw Open. 2023;6:e2330961.

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検診で寿命が延びるがんは?

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 一般的に行われているがん検診により、寿命が延びるのかどうかは不明である。今回、ノルウェー・オスロ大学のMichael Bretthauer氏らが、乳がん検診のマンモグラフィ、大腸がん検診の大腸内視鏡検査・S状結腸鏡検査・便潜血検査、肺がん検診の肺CT検査、前立腺がん検診のPSA検査の6種類の検診について、検診を受けた群と受けなかった群で全生存率と推定寿命を比較した無作為化試験をメタ解析した結果、寿命が有意に増加したのはS状結腸鏡検査による大腸がん検診のみであったことがわかった。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2023年8月28日号に掲載。

 一般的に使用されている上記の6種類のがん検診について、検診を受けた群と受けなかった群を9年以上追跡し、全死亡率および推定寿命を比較した無作為化試験の系統的レビューおよびメタ解析を実施した。論文の検索はMEDLINEおよびCochrane libraryデータベースで2022年10月12日まで実施した。検診を受けた群と受けなかった群でみられた生存期間の差を検診による寿命の増加とし、各検診による寿命の増加日数と95%信頼区間(CI)をメタ解析または単一の無作為化試験から算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・計211万1,958人が対象となった。
・追跡期間中央値は、CT検査、PSA検査、大腸内視鏡検査で10年、マンモグラフィで13年、S状結腸鏡検査、便潜血検査で15年であった。
・検診で寿命に有意な増加がみられたのはS状結腸鏡検査のみであった(110日、95%CI:0~274日)。
・マンモグラフィ(0日、95%CI:-190~237日)、PSA検査(37日、95%CI:-37~73日)、大腸内視鏡検査(37日、95%CI:-146~146日)、毎年または隔年の便潜血検査(0日、95%CI:-70.7~70.7日)、肺CT検査(107日、95%CI:-286~430日)において有意差はみられなかった。

 著者らは「このメタ解析の結果から、現在のエビデンスでは、S状結腸鏡検査による大腸がん検診を除き、一般的ながん検診による寿命延長を証明できないことが示唆された」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Bretthauer M, et al. JAMA Intern Med. 2023 Aug 28. [Epub ahead of print]

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化療後の閉経前乳がんへのタモキシフェン+卵巣機能抑制、長期結果は(ASTRRA)

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 手術および術前または術後化学療法後の閉経前エストロゲン受容体(ER)陽性乳がん患者に対する、タモキシフェン(TAM)+卵巣機能抑制(OFS)併用の有効性を検討するASTRRA試験について、追跡期間中央値8年の長期解析結果を、韓国・Asan Medical CenterのSoo Yeon Baek氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年8月22日号に報告した。

 ASTRRA試験では、閉経前または化学療法後に卵巣機能が回復した45歳未満の女性1,483例が、5年間のTAM単独投与(TAM群)と、5年間のTAM投与と2年間のOFS併用(TAM+OFS群)に1:1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要評価項目は無病生存期間(DFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値106.4ヵ月の時点で、TAM+OFS群ではDFSイベントの発生率が連続的に有意に減少した。
・8年DFS率はTAM+OFS群で85.4%、TAM群で80.2%だった(ハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.51~0.87)。
・OS率はTAM+OFS群で96.5%、TAM群で95.3%と高く、両群間で有意差はなかった(HR:0.78、95%CI:0.49~1.25)。

 著者らはTAM+OFS併用による一貫性のあるDFSベネフィットが得られたとし、同患者集団に対するOFS追加を考慮すべきであることが示唆されたとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Baek SY, et al. J Clin Oncol. 2023 Aug 22. [Epub ahead of print]

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既治療のHR+/HER2-転移乳がんへのSG、OSを改善(TROPiCS-02)/Lancet

提供元:CareNet.com

 sacituzumab govitecan(SG)は、ヒト化抗Trop-2モノクローナル抗体と、トポイソメラーゼ阻害薬イリノテカンの活性代謝産物SN-38を結合した抗体薬物複合体。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のHope S. Rugo氏らは、「TROPiCS-02試験」において、既治療のホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)の切除不能な局所再発または転移のある乳がんの治療では、本薬は標準的な化学療法と比較して、全生存期間(OS)を有意に延長し、管理可能な安全性プロファイルを有することを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年8月23日号で報告された。

9ヵ国の非盲検無作為化第III相試験

 TROPiCS-02試験は、北米と欧州の9ヵ国91施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2019年5月~2021年4月に患者を登録した(Gilead Sciencesの助成を受けた)。

 対象は、HR+/HER2-の切除不能な局所再発または転移のある乳がんで、内分泌療法、タキサン系薬剤、CDK4/6阻害薬による治療を1つ以上受け、転移病変に対し2~4レジメンの化学療法を受けており、年齢18歳以上で全身状態が良好な(ECOG PS 0/1)患者であった。

 被験者を、sacituzumab govitecan(10mg/kg、21日ごとに1日目と8日目)または化学療法の静脈内投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。化学療法群は、担当医の選択でエリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビンのいずれかの単剤投与を受けた。

 主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS、すでに発表済みで、本論では報告がない)で、主な副次評価項目はOS、客観的奏効率(ORR)、患者報告アウトカムであった。

 543例を登録し、sacituzumab govitecan群に272例(年齢中央値57歳[四分位範囲[IQR]:49~65]、男性2例)、化学療法群に271例(55歳[48~63]、3例)を割り付けた。全体の進行病変に対する化学療法のレジメン数中央値は3(IQR:2~3)で、86%が6ヵ月以上にわたり転移病変に対する内分泌療法を受けていた。

ORR、全般的健康感/QOLも良好

 追跡期間中央値12.5ヵ月(IQR:6.4~18.8)の時点で390例が死亡した。OS中央値は、化学療法群が11.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.1~12.7)であったのに対し、sacituzumab govitecan群は14.4ヵ月(13.0~15.7)と有意に改善した(ハザード比[HR]:0.79、95%CI:0.65~0.96、p=0.020)。生存に関するsacituzumab govitecan群の有益性は、Trop-2の発現レベルに基づくサブグループのすべてで認められた。

 また、ORRは、化学療法群の14%(部分奏効38例)と比較して、sacituzumab govitecan群は21%(完全奏効2例、部分奏効55例)と有意に優れた(オッズ比[OR]:1.63、95%CI:1.03~2.56、p=0.035)。奏効期間中央値は、sacituzumab govitecan群が8.1ヵ月、化学療法群は5.6ヵ月だった。

 全般的健康感(global health status)/QOLが悪化するまでの期間は、化学療法群が3.0ヵ月であったのに対し、sacituzumab govitecan群は4.3ヵ月であり、有意に良好であった(HR:0.75、95%CI:0.61~0.92、p=0.0059)。また、倦怠感が悪化するまでの期間も、sacituzumab govitecan群で有意に長かった(2.2ヵ月 vs.1.4ヵ月、HR:0.73、95%CI:0.60~0.89、p=0.0021)。

 sacituzumab govitecanの安全性プロファイルは、先行研究との一貫性が認められた。sacituzumab govitecan群の1例で、治療関連の致死的有害事象(好中球減少性大腸炎に起因する敗血症性ショック)が発現した。

 著者は、「これらのデータは、前治療歴を有する内分泌療法抵抗性のHR+/HER2-の転移乳がんの新たな治療選択肢としてのsacituzumab govitecanを支持するものである」としている。なお、sacituzumab govitecanは、米国では2023年2月、EUでは2023年7月に、内分泌療法ベースの治療と転移病変に対する2つ以上の全身療法を受けたHR+/HER2-の切除不能な局所再発または転移のある乳がんの治療法として承認されている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Rugo HS, et al. Lancet. 2023 Aug 23. [Epub ahead of print]

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