高リスク早期TN乳がんへの術前・術後ペムブロリズマブ追加、日本のサブグループにおけるOS解析結果(KEYNOTE-522)/日本乳癌学会

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 高リスク早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者において、ペムブロリズマブ+化学療法による術前療法およびペムブロリズマブによる術後療法は、術前化学療法単独と比較して、病理学的完全奏効(pCR)割合および無イベント生存期間(EFS)を統計学的有意に改善し、7回目の中間解析報告(データカットオフ:2024年3月22日)において全生存期間(OS)についてもベネフィットが示されたことが報告されている(5年OS率:86.6%vs.81.7%、p=0.002)。今回、7回目の中間解析の日本におけるサブグループ解析結果を、がん研究会有明病院の高野 利実氏が第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。

・対象:T1c、N1~2またはT2~4、N0~2で、治療歴のないECOG PS 0/1の高リスク早期TNBC患者(18歳以上)
・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、週1回)+カルボプラチン(AUC 1.5、週1回またはAUC 5、3週ごと)を4サイクル投与後、ペムブロリズマブ+シクロホスファミド(600mg/m2)+ドキソルビシン(60mg/m2)またはエピルビシン(90mg/m2)を3週ごとに4サイクル投与し、術後療法としてペムブロリズマブを3週ごとに最長9サイクル投与(ペムブロリズマブ群)
・対照群:術前に化学療法+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群)
・評価項目:
[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・日本で登録されたのは76例で、ペムブロリズマブ群に45例、プラセボ群に31例が割り付けられた。
・ベースラインの患者特性は、全体集団と比較してPD-L1陽性の患者が若干少なく(日本:ペムブロリズマブ群71.1%vs.プラセボ群74.2%/全体集団:83.7%vs.81.3%)、毎週投与のカルボプラチンの使用割合が高かった(日本:80.0%vs.77.4%/全体集団:57.3%vs. 57.2%)。また日本では、T3/T4の症例(24.4%vs.16.1%)およびリンパ節転移陽性の症例(53.3%vs.41.9%)がペムブロリズマブ群で多い傾向がみられた。
・5年EFS率は、ペムブロリズマブ群84.4%vs.プラセボ群73.2%、ハザード比(HR):0.54、95%信頼区間(CI):0.20~1.50であった(全体集団では81.2%vs.72.2%、HR:0.65、95%CI:0.51~0.83)。
・5年OS率は、ペムブロリズマブ群88.9%vs.プラセボ群86.5%、HR:0.82、95%CI:0.22~3.04であった(全体集団では86.6%vs.81.7%、HR:0.66、95%CI:0.50~0.87)。
・5年EFS率について、pCRが得られた症例ではペムブロリズマブ群95.8%(24例)vs.プラセボ群100%(15例)、pCRが得られなかった症例では71.4%(21例)vs.46.7%(16例)であった。
・5年OS率について、pCRが得られた症例ではペムブロリズマブ群95.8%vs.プラセボ群100%、pCRが得られなかった症例では81.0%vs.73.7%であった。
・Grade3~4の治療関連有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ群82.2%vs.プラセボ群76.7%(全体集団では77.1%vs.73.3%)、うち治療中止に至ったのは24.4%vs.16.7%であった。プラセボ群と比較して多くみられたのは(全Grade)、貧血(75.6%vs.63.3%)、味覚障害(44.4%vs.23.3%)、皮疹(40.0%vs.10.0%)などであった。
・Grade3~4の免疫関連有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ群20.0%vs.プラセボ群3.3%であった(全体集団では13.0%vs.1.5%)。

 高野氏は、日本のサブグループ解析結果について、症例数が少ないためこの結果をもって統計学的な判断はできないが、OSはグローバルの全体集団と同様にペムブロリズマブ群で良好な傾向を示したとし、EFSについても6年以上のフォローアップで引き続き有効な傾向を示しているとまとめた。また安全性についても、既知のプロファイルと同様の結果が確認されたとしている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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ER+/HER2-進行乳がんへのimlunestrant、日本人サブグループ解析結果(EMBER-3)/日本乳癌学会

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 アロマターゼ阻害薬単剤またはCDK4/6阻害薬との併用による治療中もしくは治療後に病勢進行が認められた、ESR1変異陽性のエストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)進行乳がん患者において、経口選択的ER分解薬(SERD)imlunestrant単剤療法が、標準内分泌療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが第III相EMBER-3試験の結果として報告されている。今回、同試験の日本人サブグループ解析結果を、千葉県がんセンターの中村 力也氏が第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。

・対象:アロマターゼ阻害薬±CDK4/6阻害薬による治療中もしくは治療後(12ヵ月以内)に病勢進行が認められたER+/HER2-進行乳がん患者
・試験群(imlunestrant群):imlunestrant単剤療法(1日1回400mg)
・試験群(imlunestrant+アベマシクリブ群):imlunestrant(1日1回400mg)+アベマシクリブ(1日2回150mg)
・対照群(標準内分泌療法群):治験医師がエキセメスタンまたはフルベストラントから選択
・評価項目:
[主要評価項目]治験医師評価によるPFS(ESR1変異陽性患者および全患者におけるimlunestrant群vs.標準内分泌療法群、全患者におけるimlunestrant+アベマシクリブ群vs.imlunestrant群)
[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、安全性など
・データカットオフ:2024年6月24日

 主な結果は以下のとおり。

・79例が1:1:1の割合で無作為化され、imlunestrant群に31例、imlunestrant+アベマシクリブ群に24例、標準内分泌療法群に24例が割り付けられた。
・ベースラインの患者特性は3群でバランスがとれており、おおむねグローバルの全体集団と同様であったが、ESR1変異陽性患者の割合は若干低かった(imlunestrant群35%vs.imlunestrant+アベマシクリブ群17%vs.標準内分泌療法群25%)。また、CDK4/6阻害薬による治療歴を有する患者がグローバルでは6割程度だったのに対し、日本人集団では19%vs.29%vs.17%と少ない傾向であった。
ESR1変異陽性患者における治験医師評価によるPFS中央値は、imlunestrant群11.1ヵ月vs.標準内分泌療法群7.0ヵ月(ハザード比[HR]:0.26、95%信頼区間[CI]:0.05~1.31)であった。
・全患者における治験医師評価によるPFS中央値は、imlunestrant群11.1ヵ月vs.標準内分泌療法群7.6ヵ月(HR:1.22、95%CI:0.59~2.50)、imlunestrant+アベマシクリブ群11.2ヵ月vs.imlunestrant群11.1ヵ月(HR:0.75、95%CI:0.34~1.66)であった。
・測定可能病変を有する患者におけるORRは、全患者ではimlunestrant群13%(3/23例)vs.標準内分泌療法群5%(1/19例)、imlunestrant+アベマシクリブ群17%(3/18例)vs.imlunestrant群15%(3/20例)、ESR1変異陽性患者ではimlunestrant群29%(2/7例)vs.標準内分泌療法群0%(NA)であった。
・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現率は、imlunestrant群10%vs.imlunestrant+アベマシクリブ群61%vs.標準内分泌療法群13%であり、グローバルと比較してimlunestrant+アベマシクリブ群での発現が多い傾向がみられた。同群における有害事象による減量・治療中止も日本人集団で多く(それぞれ61%、17%)、主に下痢やALT上昇によるものであった。
・Grade3以上のTRAEでimlunestrant+アベマシクリブ群で多くみられたのは、ALT上昇(22%)、皮疹、白血球減少、好中球減少(いずれも13%)、下痢、AST上昇(いずれも9%)などであった。

 中村氏は、ESR1変異陽性のER+/HER2-進行乳がんに対するimlunestrant単剤療法はグローバルと同様に日本人集団でもPFSの改善が確認されたとし、良好な安全性プロファイルを示したとまとめている。なお、OS解析は進行中である。ESR1変異の有無を問わない全患者に対するimlunestrant単剤療法と比較したimlunestrant+アベマシクリブ併用療法についても、グローバルと同様にPFSの数値的な改善がみられたとし、安全性はこれまでのアベマシクリブ+内分泌療法併用でみられたプロファイルと同様で、imlunestrant併用による追加の毒性は示されていないとしている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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わが国の乳房部分切除術後の長期予後と局所再発のリスク因子~約9千例の後ろ向き研究/日本乳癌学会

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 近年の乳がん治療の進歩によって、乳房部分切除術後の局所再発率と生存率が変化していることが推測される。また、乳房部分切除術の手技は国や解剖学的な違いによって異なり、国や人種の違いが局所再発リスクのパターンに影響する可能性がある。今回、聖路加国際病院の喜多 久美子氏らは、日本のリアルワールドデータを用いた多施設共同コホート研究で、近年の日本における乳房部分切除術後の局所再発率と予後、局所再発のリスク因子を検討し、第33回日本乳癌学会学術総会で報告した。本研究より、発症時若年、腫瘍径2cm以上、高Ki-67、脈管侵襲、術後療法や放射線療法を受けていないことが局所再発のリスク因子であり、術後療法はすべてのサブタイプで局所再発リスク低減に寄与することが示唆されたという。

 本研究は多施設共同後ろ向きコホート研究で、2014~18年に国内25施設でStage0~III乳がんで乳房部分切除術を受けた患者を登録した。評価項目は、局所再発率、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・計8,897例を登録し、平均年齢は57.1歳、99.8%がアジア系であり、59.4%がT1、51.0%がStage I、70.2%がER+/HER2-であった。治療は化学療法が31.1%、放射線療法は86.7%で実施されていた。切除断端陽性は7.3%にみられた。
・追跡期間中央値は6.6年で、10年局所再発率は4.6%、DFS率は86.2%、OS率は94.1%であった。
・局所再発率はStage I、DCIS、II、IIIの順に良好で、最も良好なサブタイプはER+/HER2-であった。
・切除断端陽性と放射線治療なしは局所再発と有意に関連していた。
・多変量解析の結果、以下の因子で局所再発リスクとの関連がみられた。
 - 発症時40歳未満・腫瘍径2cm以上・高Ki-67:ER+/HER2-で高リスクと関連
 - ER+:全集団で低リスクと関連
 - 脈管侵襲:トリプルネガティブで高リスクと関連
 - 術後療法:すべてのサブタイプで低リスクと関連
 - 術前化学療法:ER+/HER2-で高リスクと関連
 - 放射線療法:すべてのサブタイプで低リスクと関連
 - 内分泌療法(ER+/HER2-のみ):低リスクと関連

 喜多氏は「直接比較はできないが、ヒストリカルデータと比較して局所再発率は改善しており、治療や放射線療法の進歩、術前画像診断技術の向上によるのではないか」と考察した。また、ER+/HER2-で術前化学療法を受けた患者で局所再発率が高かったことから、「EBCTCGメタ解析でも同様の傾向が観察されたため、とくにER+/HER2-において術前化学療法後の局所再発を減少させるため、慎重な手術計画が必要かもしれない」と指摘した。最後に喜多氏は、「近年におけるわれわれのデータはわが国の乳房部分切除術の予後が以前より改善していることを示しており、毎年多くの新規全身療法が導入されるなか、最適な手術戦略を検討する際には最新データを反映させる必要がある」と述べ講演を終えた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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早期手術を受けなかったDCIS、同側浸潤性乳がんの8年累積発生率/BMJ

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 診断後早期(6ヵ月以内)に手術を受けなかった非浸潤性乳管がん(DCIS)患者のコホートにおいて、同側乳房浸潤がんの8年累積発生率は8~14%の範囲であることが、米国・デューク大学医療センターのMarc D. Ryser氏らによる観察コホート研究の結果で示された。同国のDCISに対する現行ガイドラインのコンコーダントケア(concordant care、患者の意に即したケア)では、診断時に手術を行うことが義務付けられている。一方で、手術を受けなかった場合の長期予後については、ほとんど明らかになっていなかった。今回の検討では、将来の浸潤がんのリスクは、疾患(腫瘍)関連および患者関連の両方の因子と関連していたことも示され、著者は、「手術を受けなかったDCIS患者集団に対する、効果的なリスク層別化ツールと共同意思決定が不可欠である」とまとめている。BMJ誌2025年7月8日号掲載の報告。

診断時年齢中央値63歳1,780例を追跡

 研究グループは、初期手術を受けなかったDCISの女性患者における同側浸潤性乳がんリスクを明らかにするため、2008~15年に、原発性DCISと診断された患者の医療記録および全米がんレジストリーから直接抽出したデータを用いて、観察コホート研究を行った。

 米国外科学会と共同で行われた2018 Commission on Cancer Special Study on DCISの認定施設1,330ヵ所を対象とし、針生検で原発性DCISと診断され、診断後6ヵ月時点で生存しており、浸潤性乳管がんは認められず手術を受けていなかった女性患者1,780例についてデータが収集された。

 主要評価項目は同側浸潤性乳がん、副次評価項目は乳がん死であった。

 進行中のアクティブモニタリング試験の適格基準に基づくリスク群(低リスク群[画像診断検出時40歳以上、核グレード分類Grade1/2、HR陽性のDCIS]、高リスク群[その他の場合])別によるサブグループ解析も行った。

 1,780例の診断時年齢中央値は63歳、追跡期間中央値は53.3ヵ月であった。腫瘍グレードは898/1,533例(59%)が低~中グレードであり、HR陽性は1,342/1,530例(88%)であった。675/1,780例(38%)は6ヵ月以降に少なくとも1回の同側乳がん手術を受けていた。

8年累積発生率10.7%、低リスク群は8.5%、高リスク群は13.9%

 全1,780例において、同側浸潤性乳がんは115件(6.5%)、乳がん死は29例(1.6%)で発生した。同側浸潤性乳がんの8年累積発生率は10.7%(95%信頼区間[CI]:8.4~12.8)であった。

 浸潤性乳がんの発生率は、疾患関連および患者関連の因子によって異なっており、同側浸潤性乳がんの8年累積発生率は、低リスク群の女性(650例)では8.5%(95%CI:4.7~12.1)、高リスク群の女性(833例)では13.9%(10.5~17.2)であった。

 8年疾患特異的生存(DSS)率は、全集団では96.4%(95%CI:95.0~97.9)、低リスク群では98.1%(96.7~99.6)であった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Ryser MD, et al. BMJ. 2025;390:e083542.

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HR+/HER2-乳がんで術後S-1が本当に必要な再発リスク群は?/日本乳癌学会

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 経口フッ化ピリミジン系薬剤S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)は、POTENT試験によって、HR+/HER2-乳がんに対する標準的な術後内分泌療法に1年間併用することで再発抑制効果が高まることが示され、2022年11月に適応が拡大した。しかし、POTENT試験の適格基準はStageI~IIIBと幅広く、再発リスク群によっては追加利益が得られないという報告もあるため、S-1の追加投与が本当に必要な患者に関する検討が求められていた。名古屋大学医学部附属病院の豊田 千裕氏らの研究グループは、S-1適応拡大以前の症例によるPOTENT試験に準じた適格基準別の予後を比較してS-1追加投与の意義について検討し、その結果を第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 まず、名古屋大学医学部附属病院における、HR+/HER2-乳がんの術後補助療法としてのS-1併用の現状を報告した。

S-1併用の現状
・2022年9月~2024年9月に根治術を施行した原発性乳がんのうち、ER+/HER2-浸潤性乳がんのPOTENT適格(かつmonarchE不適格)で、術後補助療法として実際にS-1を併用したのは54例であった。
・年齢中央値は56歳、観察期間中央値は17ヵ月、周術期化学療法施行が22.2%であった。POTENT試験の適格が79.6%、一部適格(2)が11.1%、一部適格(1)が5.6%、その他3.7%であった。
・現在もS-1内服中が48.1%、減量なく完遂が24.1%、一段階減量で完遂が16.7%、中止が11.1%であった。中止理由は薬剤性肺炎または放射線肺臓炎疑い、肝機能異常(Grade2)、皮疹(Grade2)、悪心(Grade1/2)であり、Grade3以上の重篤な有害事象は認めなかった。
・現時点で再発症例は認めていない。

 小括として、S-1併用療法においてGrade3以上の重篤な副作用は認められなかったことや完遂率の高さについて触れたうえで、後半では名古屋大学医学部附属病院におけるS-1適応拡大前のHR+/HER2-乳がん症例(=S-1非併用症例)のPOTENT試験に準じた適格基準別の予後について報告した。

S-1適応拡大前の症例における予後比較
・2017年11月~2022年11月に根治術を施行したStageI~IIIBのHR+/HER2-浸潤性乳がんのうち、術後補助療法を施行して追跡可能であったのは520例であった。年齢中央値は54歳、観察期間中央値は53ヵ月であった。
・POTENT試験の適格基準に準じて分類した結果、適格群42.3%、一部適格(2)群7.1%、一部適格(1)群3.7%、適格なし群46.7%であった。そのうち周術期に経静脈的化学療法を施行した患者はそれぞれ45.5%、24.3%、0%、0.4%であった。
・5年全生存(OS)率は、適格群96.8%、一部適格群92.6%、適格なし群98.1%で有意差は認めなかった。一方、5年無病生存(DFS)率はそれぞれ90.2%、98.2%、98.9%と適格群では適格なし群よりも有意に不良であり(p<0.001)、適格群では再発抑制を目的とした術後補助療法の必要性が示唆された。
・全体集団をPOTENT試験の追加解析の複合リスク評価に応じてgroup1(低リスク群)、group2(中間リスク群)、group3(高リスク群)の3群に分類したサブグループ解析では、5年OS率はgroup1が97.8%、group2が96.9%、group3が97.9%で有意差は認めなかった。一方、5年DFS率はそれぞれ98.5%、89.2%、83.8%とgroup3では有意に不良であり、高リスク群では再発抑制を目的とした術後補助療法の必要性が示唆された。
・POTENT適格患者からmonarchE適格患者(腋窩リンパ節転移数が多いハイリスク患者)を除いたnon-monarchE群の5年OS率は、group1が97.7%、group2が87.8%、group3が78.8%であり、non-monarchE群でも中間および高リスク群で不良であった。
・non-monarchE群を複合リスク別に分類し、術後の点滴静注化学療法の有無で比較した場合のDFS率は、group1では化学療法ありのグループのほうが不良な傾向にあったが(p=0.07)、group2および3では差を認めなかった(p=0.349およびp=0.618)。
・non-monarchE群で術後の点滴静注化学療法を行わなかった場合は、group1のDFSが良好であった。

 これらの結果より、豊田氏は「本研究は観察期間が短く他病死も多かったことから、今後も長期フォローアップが望まれる」としたうえで、「HR+/HER2-乳がんにおける再発高リスク群では、術後補助療法にS-1を併用することで再発率を有意に低下させる可能性がある。患者背景やリスク評価を踏まえた適応選択が、S-1補助療法の最大の効果を引き出すために重要」とまとめた。

※POTENT試験の適格基準:以下の条件を満たすStageI~IIIBの症例

(ケアネット 森)


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オピオイド使用がん患者へのナルデメジン、便秘予防にも有用~日本のRCTで評価/JCO

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 オピオイドは、がん患者の疼痛管理に重要な役割を果たしているが、オピオイド誘発性便秘症を引き起こすことが多い。オピオイド誘発性便秘症に対し、ナルデメジンが有効であることが示されているが、オピオイド誘発性便秘症の予防方法は確立されていない。そこで、濵野 淳氏(筑波大学医学医療系 緩和医療学・総合診療医学 講師)らの研究グループは、ナルデメジンのオピオイド誘発性便秘症の予防効果を検討した。その結果、ナルデメジンはオピオイド誘発性便秘症に対する予防効果を示し、QOLの向上や悪心・嘔吐の予防効果もみられた。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌2024年12月号に掲載された。

試験デザイン:国内多施設共同二重盲検無作為化比較試験
対象:初めて強オピオイドを使用するがん患者99例
試験群:ナルデメジン(0.2mg、1日1回)を朝食後14日間内服(ナルデメジン群、49例)
対照群:プラセボを朝食後14日間内服(プラセボ群、50例)
評価項目:
[主要評価項目]14日目におけるBowel Function Index(BFI)28.8未満の患者割合
[副次評価項目]自発排便(SBM)の頻度、QOL(EORTC QLQ-C15-PAL、PAC-QOL、PAC-SYM)、オピオイド誘発性悪心・嘔吐(OINV)の頻度など
※:排便の困難さ、残便感、便秘の個人的評価について、VAS(0~100)で評価。28.8未満を便秘なしとする。

 主な結果は以下のとおり。

・ナルデメジン群、プラセボ群の年齢中央値はそれぞれ67.8歳、66.4歳であり、女性の割合はそれぞれ51.0%、68.0%であった。
・がん種の内訳は、肝がん・胆道がん・膵がん(35例)、消化管がん(18例)、婦人科がん(10例)、乳がん(8例)、泌尿器がん(8例)、肺がん(7例)などであった。
・主要評価項目の14日目におけるBFI 28.8未満の患者割合は、ナルデメジン群64.6%、プラセボ群17.0%であり、ナルデメジン群が有意に良好であった(p<0.0001)。
・14日目における1週間当たりのSBM回数が3回以上の割合は、ナルデメジン群87.5%、プラセボ群53.2%であり、ナルデメジン群が有意に多かった(p=0.0002)。14日目における1週間当たりの完全自発排便回数が3回以上の割合は、それぞれ70.8%、36.2%であり、ナルデメジン群が有意に多かった(p=0.0007)。
・14日目におけるQOLは、いずれの指標もナルデメジン群が有意に良好であった。
・3日目までの制吐薬の使用割合は、ナルデメジン群10.6%、プラセボ群51.1%であり、ナルデメジン群が有意に少なかった(p<0.0001)。
・1~3日目の悪心・嘔吐の発現は、いずれの日においてもナルデメジン群が有意に少なかった(いずれの日もp<0.0001)。
・有害事象の発現割合はナルデメジン群29.2%、プラセボ群61.7%であった。嘔吐の発現割合はナルデメジン群12.5%、プラセボ群40.4%であり、ナルデメジン群が有意に少なかった(p=0.0072)。

(ケアネット 佐藤 亮)


【原著論文はこちら】

Hamano J, et al. J Clin Oncol. 2024;42:4206-4217.

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両側乳がん、ホルモン受容体の有無でDFSに差~多施設後ろ向き研究

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 両側乳がんはきわめて少なく、臨床的特徴に関するデータは限られている。今回、トルコ・Dr. Abdurrahman Yurtaslan Ankara Oncology Training and Research HospitalのBerkan Karabuga氏らが、両側乳がんを同時性(SBBC)と異時性(MBBC)に分けて臨床病理学的特徴や生存アウトカムを検討したところ、無病生存期間(DFS)は2群間で有意差はなかったが、5年全生存(OS)率はMBBC群のほうが有意に高かった。また、両側乳がん全体として、ホルモン受容体(HR)陰性がDFS短縮の独立したリスク因子として特定された。Medicina誌2025年6月号に掲載。

 この多施設後ろ向き研究では、2015~24年に6施設で治療および追跡調査された125例をSBBCとMBBCに分け、臨床病理学的特徴、DFS、5年OS率などを評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・DFSはSBBC群で5.7年、MBBC群で5.6年であった(p=0.95)。
・5年OS率はMBBC群(95.2%)がSBBC群(80.7%)より高かった(p = 0.035)。
・コホート全体で、HR陰性がDFSを短縮する独立したリスク因子であった(ハザード比:0.55、95%信頼区間:0.31~0.98、p=0.04)。
・SBBC群とMBBC群において、HRの有無、浸潤性小葉がんの存在、再発/転移の状況、2つの原発腫瘍での分子サブタイプの不一致に関して有意差が認められた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Karabuga B, et al. Medicina (Kaunas). 2025;61:1029.

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TN乳がん術前ペムブロリズマブ併用化学療法、ddAC vs.AC

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 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対し、ペムブロリズマブ+化学療法による術前補助療法およびペムブロリズマブ単独による術後補助療法は、病理学的完全奏効(pCR)および無イベント生存期間(EFS)を有意に改善することがKEYNOTE-522試験で示された。しかし、同試験では術前化学療法のレジメンとしてdose-denseAC(ddAC)療法は使用されていなかった。カルボプラチン+パクリタキセルとペムブロリズマブにddAC療法を併用した術前補助療法の有効性と安全性を評価する目的で、ブラジル・Hospital do Cancer de LondrinaのVitor Teixeira Liutti氏らはメタ解析を実施。結果をBreast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2025年6月13日号で報告した。

 本解析では、AC療法(3週ごと)との比較の有無にかかわらず、TNBCを対象にカルボプラチン+パクリタキセルおよびペムブロリズマブとddAC併用術前補助療法を評価した研究を、システマティックレビューにより特定した。両レジメンを比較した研究にはランダム効果モデル、ddAC療法のエンドポイントの評価には単群比例メタアナリシスの手法を用いて、統計解析が実施された。

 主な結果は以下のとおり。

・535例(ddAC群329例、AC群206例)を対象とした4件の観察研究が、本解析の包含基準を満たした。うち3件は両レジメンの比較を行い、1件はddAC併用療法のみの評価であった。
・病理学的完全奏効(pCR)率に有意差は認められなかった(ddAC群66.1%vs.AC群61.6%、リスク比[RR]:1.10、95%信頼区間[CI]:0.94~1.28、p=0.25)。
・一方、Grade3以上の有害事象の発現率は、ddAC群で有意に高かった(43.7%vs.29.7%、RR:1.65、95%CI:1.15~2.37、p=0.007)。
・用量調整や治療遅延の発生率には、両レジメン間で有意差は認められなかった。
・ddAC併用療法を評価した研究の統合解析では、全体的なpCR率は63%で、治療遅延の発生率は40%であった。今回対象となった研究でddAC併用療法を受けた患者の生存データは報告されていない。

 著者らは、「ddAC療法を含む術前のペムブロリズマブ併用化学療法は、KEYNOTE-522試験で報告されたpCR率と同等の結果を示した。AC療法との比較において、pCR率に有意差は認められなかったものの、ddAC療法では有害事象の発現率が高いことが明らかとなった」とまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Liutti VT, et al. Breast Cancer Res Treat. 2025 Jun 13. [Epub ahead of print]

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術前療法でリンパ節転移陰転の乳がん、照射は省略できるか/NEJM

提供元:CareNet.com

 乳がん治療では、病理学的に腋窩リンパ節転移陽性の患者における領域リンパ節照射の有益性が確立しているが、術前補助化学療法後に病理学的にリンパ節転移なし(ypN0)の患者でも有益かは不明だという。米国・AdventHealth Cancer InstituteのEleftherios P. Mamounas氏らは、無作為化第III相試験「NSABP B-51-Radiation Therapy Oncology Group 1304試験」において、術前補助化学療法後に腋窩リンパ節転移陰性となった患者では、術後補助療法として領域リンパ節照射を追加しても、浸潤性乳がんの再発または乳がん死のリスクは低下しないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年6月5日号で報告された。

7ヵ国の無作為化第III相試験

 NSABP B-51-Radiation Therapy Oncology Group 1304試験は、日本を含む7ヵ国で実施され、2013年8月~2020年12月に参加者を登録した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。

 臨床病期T1~T3 N1 M0の切除可能な乳がんで、生検で病理学的に腋窩リンパ節転移陽性と確認され、標準的な術前補助化学療法(アントラサイクリン系またはタキサン系[あるいはこれら両方]をベースとするレジメン)を8週間以上受け、HER2陽性例は抗HER2療法も受けており、手術時に病理学的に腋窩リンパ節転移陰性(ypN0)であった患者を対象とした。

 被験者を、領域リンパ節照射(総線量50 Gy、25分割)を受ける群、またはこれを受けない群に無作為に割り付けた。

 主要評価項目は、浸潤性乳がんの再発または乳がん死のない期間(浸潤性乳がん無再発期間)であり、副次評価項目は、局所・領域リンパ節無再発期間、無遠隔再発期間、無病生存期間、全生存期間などとし、安全性の評価も行った。

副次評価項目にも有意差はない

 1,641例を登録し、照射群に820例、非照射群に821例を割り付けた。全体の年齢中央値は52歳(四分位範囲:44~60)で、40.3%が50歳未満であった。59.9%が臨床的T2腫瘍(腫瘍径2~5cm)、53.2%がホルモン受容体陽性、56.7%がHER2陽性で、79.0%がトリプルネガティブまたはHER2陽性のがんであった。78.2%で病理学的完全奏効(乳房とリンパ節)が得られ、57.7%が乳房の部分切除術、42.3%が全摘術を受け、55.4%でセンチネルリンパ節生検が行われた。

 1,556例(照射群772例、非照射群784例)を主解析の対象とした。追跡期間中央値59.5ヵ月の時点で、主要評価項目のイベントは109件発生した(照射群50件[6.5%]、非照射群59件[7.5%])。領域リンパ節照射は、浸潤性乳がん無再発期間の有意な延長をもたらさなかった(ハザード比[HR]:0.88[95%信頼区間[CI]:0.60~1.28、p=0.51])。

 また、主要評価項目のイベントのない生存率の点推定値は、照射群が92.7%、非照射群は91.8%であった。

 照射群では、局所・領域リンパ節無再発期間(HR:0.57[95%CI:0.21~1.54])、無遠隔再発期間(1.00[0.67~1.51])、無病生存期間(1.06[0.79~1.44])、全生存期間(1.12[0.75~1.68])についても、改善効果はみられなかった。

Grade3の放射線皮膚炎は5.7%

 プロトコールで規定された治療関連の死亡の報告はなく、予期せぬ有害事象は認めなかった。Grade4の有害事象は、照射群で0.5%、非照射群で0.1%に、Grade3はそれぞれ10.0%および6.5%に発現した。最も頻度の高いGrade3の有害事象は放射線皮膚炎で、照射群の5.7%、非照射群でも3.3%に発現した。

 著者は、「本試験は、生検で腋窩リンパ節転移が確認された患者では、術前補助化学療法でypN0に達した場合に、領域リンパ節照射を行っても、5年後の腫瘍学的なアウトカムは改善しないことを示している」「これらの結果は、術前補助化学療法を受けた患者ではリンパ節の病理学的な反応に基づいて領域リンパ節照射の実施を決められるという治療戦略への転換を支持するものである」「長期的なアウトカムの評価のために追跡調査を継続中である」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Mamounas EP, et al. N Engl J Med. 2025;392:2113-2124.

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術前化療後の乳房温存術、断端陽性で再発リスク3倍~日本人1,813例での研究

提供元:CareNet.com

 術前化学療法後に乳房温存療法(乳房温存手術および放射線療法)を受けた乳がん患者において、切除断端陽性例では温存乳房内再発リスクが3.1倍であったことが、1,813例を対象にした日本の多施設共同後ろ向き研究で示された。大阪はびきの医療センターの石飛 真人氏らがBreast Cancer誌オンライン版2025年6月9日号で発表した。

 本研究の対象は、新たにStageI~III乳がんと診断され、術前化学療法後に乳房温存療法を受けた1,813例で、切除断端の状態が温存乳房内再発に与える影響を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値8.0年(範囲:0.1~17.0)において、8年温存乳房内無再発生存率は95.9%であった。切除断端陽性例(87.6%)は陰性例(96.2%)と比べて有意に低かった(p=0.010)。
・多変量解析では、切除断端の状態が温存乳房内無再発生存率と有意に関連することが示された(ハザード比:3.1、95%信頼区間:1.3~7.2、p=0.0081)。

 今回の結果は、術前化学療法を受けずに最初から手術を行った症例での結果と一致する結果であった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Ishitobi M, et al. Breast Cancer. 2025 Jun 9. [Epub ahead of print]

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