再発/転移乳がんへのHER3-DXd、HER2低発現/ゼロでの有効性と日本人での安全性~第I/II相試験サブ解析/日本臨床腫瘍学会

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 HER3は乳がんの30~50%に発現しており、HER3を標的とした抗体薬物複合体(ADC)のpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)が開発されている。HER3陽性再発/転移乳がんに対する第I/II相U31402-A-J101試験において、本剤の有望な有効性と管理可能な安全性プロファイルを示したことはASCO2022で報告されている。今回、HER2ゼロ(IHC 0)とHER2低発現(IHC 1+、もしくはIHC 2+かつISH-)患者での探索的サブグループ解析と、日本人における安全性について、第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で愛知県がんセンターの岩田 広治氏が発表した。

 本試験の対象は、HER3陽性の再発/転移乳がん(HR+/HER2-もしくはHR-/HER2-)182例。HER3-DXd(1.6、3.2、4.8、6.4、8.0mg/kg)を3週間ごとに静脈内投与し、dose expansion phaseでは4.8mg/kgまたは6.4mg/kgを投与した。有効性についてはHR(+/-)とHER2(低発現/ゼロ)によるサブグループ別に奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)などを評価し、安全性については実施国別(日本142例、米国40例)および用量別に解析した。

 今回のサブグループ解析における主な結果は以下のとおり。

・サブグループごとのORR、DOR中央値、PFS中央値(95%信頼区間)は以下のとおりで、多くの治療歴がある再発/転移乳がん患者に対して、HER2発現(低発現/ゼロ)にかかわらず有効性が示された。
<HR+>
 HER2低発現(58例):36.2%、7.2ヵ月、5.8ヵ月(4.1~8.5)
 HER2ゼロ(39例):28.2%、7.0ヵ月、8.2ヵ月(5.8~9.1)
<HR-> 
 HER2低発現(29例):20.7%、4.1ヵ月、4.4ヵ月(2.6~5.6)
 HER2ゼロ(19例):26.3%、8.4ヵ月、8.4ヵ月(3.9~13.9)
・有害事象は、間質性肺炎(ILD)が日本でのみ12例(8.5%)に認められた。Grade5が1例、それ以外の11例はGrade3以下だった。ILD以外の有害事象は日米で同様だった。

 これらの結果について、岩田氏は「これらのデータは、再発/転移乳がん治療のオプションとして、またHER2+およびHER2低発現乳がんに対する他のADCを含む新たな治療とのシーケンスアプローチにおいて、HER3-DXdのさらなる研究を支持する」とまとめた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

U31402-A-J101試験(Clinical Trials.gov)

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治療前の抗菌薬で免疫チェックポイント阻害薬の有効性が低下/JCO

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 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療前の抗菌薬曝露は、腸内細菌叢の変化を通じて転帰に悪影響を及ぼす可能性があるが、大規模な評価は不足している。ICI開始前の抗菌薬が全生存期間(OS)に与える影響を評価したカナダ・プリンセスマーガレットがんセンターのLawson Eng氏らによるレトロスペクティブ・コホート研究の結果が、 Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年2月24日号に掲載された。

 著者らは、カナダのオンタリオ州で2012年6月~2018年10月にICIによる治療を開始した65歳以上のがん患者を、全身療法投与データを用いて特定した。このコホートをICI治療の1年前と60日前の両方における抗菌薬の処方請求データを得るためにほかの医療データベースとリンクし、多変量Coxモデルにより曝露とOSの関連性を評価した。患者のがん種は肺がんが最多(53%)、メラノーマ(34%)、腎臓がん、膀胱がんがそれに続いた。ICIはニボルマブとペムブロリズマブが一般的だった。

 主な結果は以下のとおり。

・ICIを投与されたがん患者2,737例のうち、ICI治療の1年前に59%、60日前に19%が抗菌薬を投与されていた。
・OSの中央値は306日であった。ICI投与前1年以内のあらゆる抗菌薬への曝露はOSの悪化と関連していた(調整ハザード比[aHR]:1.12、95%信頼区間[CI]:1.12~1.23、p=0.03)。
・抗菌薬のクラス解析では、ICI投与前1年以内(aHR:1.26、95%CI:1.13~1.40、p<0.001)または60日以内のフルオロキノロン系抗菌薬への曝露(aHR:1.20、95%CI:0.99~1.45、p=0.06)はOSの悪化と関連しており、1年間の総被曝週数(aHR:1.07/週、95%CI:1.03~1.11、p<0.001)および60日(aHR:1.12/週、95%CI:1.03~1.23、p=0.01)に基づいて用量効果がみられた。

 著者らは「ICI治療前の抗菌薬、とくにフルオロキノロン系抗菌薬への曝露が高齢のがん患者のOS悪化と関連していた。ICI治療前の抗菌薬への曝露の制限、もしくは腸内細菌叢を変化させ免疫原性を高めることを目的とした介入が、ICIを受ける患者の転帰を改善するのに役立つ可能性がある」としている。

(ケアネット 杉崎 真名)


【原著論文はこちら】

Eng L, et al. J Clin Oncol. 2023 Feb 24. [Epub ahead of print]

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肺がん減少の一方で乳がん・前立腺がんは増加/全米がん統計

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 米国がん協会は、毎年米国における新たながんの罹患数と死亡数を推定して発表している。2023年の最新データがCA Cancer Journal for Clinicians誌2023年1/2月号に掲載された。発表されたデータによると、2023年に米国で新たにがんと診断される人は195万8,310人、がんによる死亡者は60万9,820人と予測されている。死亡者数が最も多いがん種は、男性は肺がん、前立腺がん、大腸がんの順で、女性は肺がん、乳がん、大腸がんの順であった。

 がん罹患率は、がんリスクに関連する行動パターンと、がんスクリーニング検査の使用などの医療行為の変化の両方を反映する。たとえば、1990年代初頭の前立腺がんの罹患率(人口10万人当たり)の急増は、それ以前に検査を受けていなかった男性の間で前立腺特異抗原(PSA)検査が急速に広まった結果、無症候性前立腺がんの検出が急増したことを反映している。その後、高齢男性に対するPSA検査が推奨されなくなったことから罹患数は20年間減少を続けていたが、2014~19年には再度増加に転じ、2023年には9万9,000人の新規罹患者が予測されている。また、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種推進によって20代前半の女性の子宮頸がん発症率は2012年から2019年にかけて65%低下した。

 全体としては、女性に比べて男性のほうが罹患率の傾向は良好だった。2015から2019年にかけての女性の肺がん罹患率の減少は男性の2分の1のペース(年1.1%対2.6%)であり、乳がんや子宮体がんの罹患率は増加を続けている。肝臓がんやメラノーマの罹患率は50歳以上の男性では安定、若年男性では減少した。結果として、性差は徐々に縮小し、がん全体の男女の罹患率比は1992年の1.59(95%信頼区間[CI]:1.57~1.61)から2019年には1.14(95%CI:1.14~1.15)まで低下した。ただし、この比率は年齢によって大きく異なり、20~49歳では女性が男性よりも約80%高い一方で、75歳以上では男性が約50%高かった。

 2020年からはCOVID-19感染流行があったにもかかわらず、また他の主要な死因とは対照的に、がん死亡率は2000年代には年1.5%、2015~20年には年2%と減少を続け、1991~2020年までに33%減少し、推定380万人の死亡が回避された。この進歩は喫煙の減少、乳がん・大腸がん・前立腺がん検査の普及、そして治療の進歩を反映したもので、とくに白血病、メラノーマ、腎臓がんの死亡率が急速に減少(2016~20年には年約2%)したことや、肺がんの死亡率減少が加速したことに表れている。すべてのがんを合わせた5年相対生存率は、1970年代半ばに診断された49%から2012~18年に診断された68%に増加した。しかし、死亡率における人種格差が最も大きい乳がん、前立腺がん、子宮体がんの罹患率上昇により、今後の減少の進展は弱まる可能性があるという。

(ケアネット 杉崎 真名)


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Siegel RL, et al. CA Cancer J Clin. 2023;73:17-48.

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リンパ節転移のないHER2+乳がん、術後PTX+トラスツズマブでの10年生存率/Lancet Oncol

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 リンパ節転移のないHER2陽性(HER2+)乳がんに対するパクリタキセル+トラスツズマブでの術後補助療法の長期アウトカムを調査した非盲検単群第II相試験の10年間の解析結果について、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのSara M. Tolaney氏らがLancet Oncology誌2023年3月号で報告した。著者らはこの結果から、「腫瘍サイズが小さくリンパ節転移のないHER2+乳がんの術後補助療法の標準治療として、パクリタキセル+トラスツズマブが妥当である」としている。

 本試験は、米国13都市16施設から、腫瘍の大きさが3cm以下でリンパ節転移のない18歳以上のHER2+乳がんでPS 0~1の患者を対象とした。適格患者には、パクリタキセル(80mg/m2)+トラスツズマブ(負荷量4mg/kg、維持量2mg/kg)の静脈内投与を12週、その後トラスツズマブ(毎週2mg/kgもしくは3週ごとに6mg/kg)を40週投与した。主要評価項目は3年無浸潤疾患生存(iDFS)率で、今回はプロトコールで規定された治療を受けた患者すべてを対象とした10年生存率と、HER2DXゲノムツールを用いた探索的解析の結果を報告した。

 主な結果は以下のとおり。

・2007年10月29日~2010年9月3日に登録された410例中406例がパクリタキセル+トラスツズマブの術後補助療法を受けた。
・登録時の平均年齢は55歳(標準偏差:10.5)、406例中女性が405例(99.8%)、白人が350例(86.2%)、ホルモン受容体陽性が272例(67.0%)だった。
・追跡期間中央値10.8年(四分位範囲:7.1~11.4)で、解析集団406例においてiDFSイベントが31例に観察され、局所同側再発6例(19.4%)、新規の対側乳がん9例(29.0%)、遠隔再発6例(19.4%)、死亡10例(32.3%)であった。
・10年iDFS率は91.3%(95%信頼区間[CI]:88.3~94.4)、10年無再発率は96.3%(95%CI:94.3~98.3)、10年全生存率は94.3%(95%CI:91.8~96.8)、10年乳がん特異的生存率は98.8%(95%CI:97.6~100)であった。
・HER2DXリスクスコアは、iDFS率(10単位増加当たりのハザード比[HR]:1.24、95%CI:1.00~1.52、p=0.047) および無再発期間(HR:1.45、95%CI:1.09~1.93、p=0.011)と有意に関連していた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Tolaney SM, et al. Lancet Oncol. 2023;24:273-285.

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HER2低発現とHER2陰性乳がんの予後比較~米国114万人の調査/JAMA Oncol

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 HER2低発現乳がんの疫学的特徴や予後の観点から、HER2陰性(ゼロ)乳がんと臨床的に異なるサブタイプと言えるのだろうか。今回、米国・シカゴ大学のDaniel S. Peiffer氏らが米国がんデータベースを用いて約114万人の大規模コホート研究を実施したところ、HER2低発現の割合は、ヒスパニック系患者および非ヒスパニック系黒人患者が、非ヒスパニック系白人患者と比べてわずかに低く、また、全生存期間(OS)はHER2低発現乳がんのほうがHER2陰性乳がんよりわずかに良好だった。これらの結果から、HER2低発現乳がんとHER2陰性乳がんの治療反応性と長期予後が類似している可能性が示唆された。JAMA Oncology誌オンライン版2023年2月23日号に掲載。

 この後ろ向きコホート研究は、米国がんデータベースから、2010年1月1日~2019年12月31日に浸潤性乳がんと診断され、HER2-乳がんでIHC結果が得られた米国内の患者113万16例を対象に実施された。HER2低発現は、IHCスコア1+、またはIHCスコア2+かつISH陰性とし、HER2陰性はIHCスコア0と定義した。2021年11月1日~2022年11月30日のデータを解析した。主要評価項目は、HER2低発現乳がんに対するHER2陰性乳がんのOSと病理学的完全奏効とした(年齢、性別、人種および民族、Charlson-Deyo Comorbidity Indexスコア、治療施設の種類、腫瘍グレード、腫瘍組織型、ホルモン受容体の状態、がんの病期について調整)。

 主な結果は以下のとおり。

・113万16例(平均年齢:62.4歳、女性99.1%、非ヒスパニック系白人78.6%)のうち、HER2陰性乳がんが39万2,246例(34.5%)、HER2低発現乳がんが74万3,770例(65.5%)だった。
・エストロゲン受容体高発現は、HER2低発現の割合の増加と関連していた(調整オッズ比[aOR]:10%増加当たり1.15)。
・HER2低発現乳がんと診断された割合は、非ヒスパニック系白人患者(66.1%)と比較して、非ヒスパニック系黒人患者(62.8%)およびヒスパニック系患者(61.0%)では少なかったが、非ヒスパニック系黒人患者ではトリプルネガティブ乳がんの割合の違いやほかの交絡因子が介在していた。
・多変量解析では、病理学的完全奏効率がHER2低発現乳がんではHER2陰性乳がんと比べてわずかに低かった(aOR:0.89、95%信頼区間[CI]:0.86~0.92、p<0.001)。
・HER2低発現はまた、StageIII(調整ハザード比:0.92、95%CI:0.89~0.96、p<0.001)およびStageIV(同:0.91、95%CI:0.87~0.96、p<0.001)トリプルネガティブ乳がんでのわずかなOS改善と関連していたが、これは5年OSのわずかな増加(StageIII:2.0%、StageIV:0.4%)にしかならなかった。

 この大規模後ろ向きコホート研究では、HER2低発現とHER2陰性の乳がんの予後の差はわずかだった。著者らは「これらの結果は、今後HER2低発現乳がんの予後がHER2低発現に関連する生物学的特性の本質的な違いではなく、HER2を標的とした抗体薬物複合体によって左右されることを示唆する」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Peiffer DS, et al. JAMA Oncol. 2023 Feb 23;e227476. [Online ahead of print]

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性的マイノリティーの乳がん患者は再発リスクが3倍

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 性的マイノリティー(レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー)の乳がん患者では、シスジェンダー(性自認と生まれ持った性別が一致している人)で異性愛者の乳がん患者と比較して、症状発現から診断までの期間が長く、再発リスクが3倍であることが、米国・スタンフォード大学のErik Eckhert氏らの研究により明らかになった。JAMA Oncology誌オンライン版2023年2月2日号掲載の報告。

 多くの医療機関では患者の性的指向や性自認に関するデータは収集していないため、性的マイノリティーにおける乳がんの診断、治療、予後などの医療格差はあまり知られていない。そこで研究グループは、シスジェンダーの異性愛者と比較して、性的マイノリティーの乳がん治療の質と再発率を調査した。

 対象は、2008年1月1日~2022年1月1日に治療を受けた性的マイノリティーの乳がん患者92例と、診断年、年齢、病期、ホルモン受容体およびHER2発現でマッチさせたシスジェンダーで異性愛者の乳がん患者92例(対照群)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・参加者の診断時の年齢中央値は49歳(範囲:43~56歳)で、性的マイノリティー群はレズビアンが80%(74例)、バイセクシャルが13%(12例)、トランスジェンダーが6%(6例)であった。
・対照群と比較して、性的マイノリティー群では症状発現から診断までの期間が長かった(診断までの期間の中央値:性的マイノリティー群64日vs.対照群34日、補正後ハザード比[aHR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.42~0.99、p=0.04)。
・性的マイノリティー群では、がん専門医が推奨する治療を拒否する割合が高かった(補正後オッズ比[aOR]:2.27、95%CI:1.09~4.74、p=0.03)。
・性的マイノリティー群では、乳がんの再発率が高かった(aHR:3.07、95%CI:1.56~6.03、p=0.001)。

 これらの結果より、研究グループは「シスジェンダーで異性愛者の乳がん患者と比較して、性的マイノリティーの乳がん患者では診断が遅れており、再発リスクが3倍であることが明らかになった。性的マイノリティーでは医療格差があり、さらなる調査が必要である」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Erik E, et al. JAMA Oncol. 2023 Feb 2. [Epub ahead of print]

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65歳以上低リスク早期乳がん、乳房温存術後の放射線療法は省略可/NEJM

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 65歳以上の再発リスクが低いホルモン受容体陽性早期乳がん女性患者において、乳房温存術後の放射線療法非施行は、局所再発率の増加と関連していたものの初回イベントとしての遠隔再発や全生存には影響しないことが、英国など4ヵ国76施設で実施された第III相無作為化比較試験「PRIME II試験」の10年時解析で示され、英国・エディンバラ大学のIan H. Kunkler氏らが報告した。著者は、「今回の試験は、乳房温存術を受けたGrade1または2でエストロゲン受容体(ER)高発現の65歳以上の女性では、5年間の術後内分泌療法を受けることを条件に放射線療法を省略できることを示す確かなエビデンスを提供している」とまとめている。NEJM誌2023年2月16日号掲載の報告。

放射線療法なし群とあり群に無作為化、両群とも術後内分泌療法は実施

 研究グループは、T1またはT2の原発性乳がん(最大腫瘍径3cm以下の腫瘍)で乳房温存術を受け、腋窩リンパ節転移陰性、ER陽性またはプロゲステロン受容体陽性、切除断端陰性(1mm以上)で、術前または術後内分泌療法を受けている65歳以上の女性患者(Grade3またはリンパ管浸潤のいずれかを有する患者は除外)を、総線量40~50Gyの全乳房照射を行う群(RTあり群)と行わない群(RTなし群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。標準的な術後内分泌療法として、タモキシフェン1日20mgの5年間投与が推奨された。

 主要評価項目は局所再発、副次評価項目は領域再発、遠隔再発、全生存、乳がん特異的生存などであった。

10年時局所再発率はRTなし群9.5% vs.あり群0.9%、10年OSは80.8% vs.80.7%

 2003年4月16日~2009年12月22日の期間に、計1,326例がRTあり群(658例)とRTなし群(668例)に無作為に割り付けられた。

 10年間の追跡(中央値9.1年)において、累積局所再発率はRTなし群9.5%(95%信頼区間[CI]:6.8~12.3)に対してRTあり群0.9%(95%CI:0.1~1.7)で、局所再発のハザード比(HR)は10.4(95%CI:4.1~26.1、p<0.001)であった。局所再発はRTなし群で多かったが、初回イベントとしての遠隔再発の10年累積発生率は、RTなし群1.6%(95%CI:0.4~2.8)、RTあり群3.0%(1.4~4.5)であり、RTなし群で低頻度であった。

 10年全生存率は、RTなし群80.8%(95%CI:77.2~84.3)、RTあり群80.7%(76.9~84.3)で、両群で類似していた。領域再発率、乳がん特異的生存率についても、両群で大きな差はなかった。

 サブグループ解析の結果、ER高発現集団の10年累積局所再発率はRTなし群で8.6%であり、全体集団より低かった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Kunkler IH, et al. N Engl J Med. 2023;388:585-594.

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乳がんサバイバーの2次原発がん、部位別リスク

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 乳がんサバイバーの2次原発がん(SPC)の発生率が上昇している。そこで、英国・ケンブリッジ大学のIsaac Allen氏らは、乳房以外のSPCリスクについて部位別に系統的レビューとメタ解析を実施した。その結果、多くの部位でSPCリスクが有意に上昇しており、50歳未満で乳がんと診断された女性や、アジア人でよりリスクが高いことが示された。Breast Cancer Research誌2023年2月10日号に掲載。

 著者らは、PubMed、Embase、Web of Scienceで2022年3月までに公表された研究について系統的検索を行った。乳がん後に乳房以外のSPCを発生する複合リスクを評価し標準化発生率比(SIR)を報告した研究を対象とした。年齢、追跡期間、地域を層別化し、複合SPCリスクのメタ解析を行い、また年代ごとに特定部位におけるSPCリスクも評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・前向きコホート研究1件、後ろ向きコホート研究27件を同定した。
・乳房以外のSPCのSIRは0.84~1.84の範囲で、SIR推定値のサマリーは1.24(95%信頼区間[CI]:1.14~1.36、I2:99%)だった。50歳未満で乳がんと診断された場合の推定値は1.59(95%CI:1.36~1.85)で、50歳以上で診断された女性(SIR:1.13、95%CI:1.01~1.36)に比べて有意に高かった(差のp<0.001)。
・SPCリスクはアジア人のレジストリで有意に高かった(アジアにおけるSIR:1.47、95%CI:1.29~1.67、欧州におけるSIR:1.16、95%CI:1.04~1.28)。
・SPCリスクは、甲状腺(SIR:1.89、95%CI:1.49~2.38)、子宮体部(SIR:1.84、95%CI:1.53~2.23)、卵巣(SIR:1.53、95%CI:1.35~1.73)、腎臓(SIR:1.43、95%CI:1.17~1.73)、食道(SIR:1.39、95%CI:1.26~1.55)、皮膚(メラノーマ)(SIR:1.34、95%CI:1.18~1.52)、血液(白血病)(SIR:1.30、95%CI:1.17~1.45)、肺(SIR:1.25、95%CI:1.03~1.51)、胃(SIR:1.23、95%CI:1.12~1.36)、膀胱(SIR:1.15、95%CI:1.05~1.26)で有意に増加した。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Allen I, et al. Breast Cancer Res. 2023;25:18.

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BRCA変異陽性転移乳がんへのオラパリブ、1次治療で高い効果(OlympiAD)

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 生殖細胞系列BRCA変異陽性(gBRCAm)HER2陰性転移乳がんにおいて、オラパリブは医師選択の化学療法(TPC)に対し主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、全生存期間(OS)中央値はオラパリブ群19.3ヵ月vs.TPC群17.1ヵ月(p=0.513)と報告されている。今回、従来の報告より25.7ヵ月長いOSの延長フォローアップ解析結果を、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのMark E. Robson氏らがEuropean Journal of Cancer誌オンライン版2023年2月14日号に報告した。

 OlympiAD試験では、gBRCAmかつHER2陰性で、アントラサイクリン系およびタキサン系薬剤の治療歴を有し、転移疾患に対する化学療法歴≦2ラインの患者を、オラパリブ群またはTPC群(医師の選択によりカペシタビン、エリブリンまたはビノレルビンのいずれかを使用)に2:1の割合で無作為に割り付けて比較検討している。延長フォローアップ期間中、OSは層別log-rank検定(全体集団)およびCox比例ハザードモデル(事前に指定されたサブグループ)を用いて6ヵ月ごとに分析された。

 今回報告された主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値はオラパリブ群18.9ヵ月vs.TPC群15.5ヵ月だった。
・全体集団(302例)におけるOS中央値はオラパリブ群19.3ヵ月vs.TPC群17.1ヵ月だった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.67~1.18)。
・3年生存率は、オラパリブ群27.9% vs.TPC群21.2%だった。
・3年以上試験治療を受けた患者はオラパリブ群で8.8%だったのに対し、TPC群では0%だった。
・転移疾患に対する1次治療(1L)の患者において、OS中央値はオラパリブ群でTPC群よりも長く(22.6ヵ月vs.14.7ヵ月、HR:0.55、95%CI:0.33~0.95)、3年生存率はオラパリブ群40.8% vs.TPC群12.8%となった。オラパリブに関連する新たな重篤な有害事象は認められていない。

 著者らは、今回の追加解析でのOS結果はOlympiAD試験の過去の解析結果と一致していたとし、とくに1Lにおけるオラパリブによる長期生存ベネフィットの可能性を支持するものだとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Robson ME, et al. Eur J Cancer. 2023 Feb 14. [Epub ahead of print]

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転移を有する乳がんでタキサン再投与が有効な患者は?

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 推奨される抗がん剤をすべて投与された転移乳がん患者において、全身状態が良好であるにもかかわらず病勢進行に苦しむ患者は少なくない。この状況で、タキサンなどの忍容性の高い抗がん剤の再投与が選択肢の1つになる場合がある。そこで、フランス・Centre Georges Francois Leclerc Cancer CenterのManon Reda氏らは、タキサン投与歴のある転移乳がん患者におけるタキサン再投与の有用性について検討した。その結果、とくにタキサンが乳がん経過の早期に効果を示した場合や病勢進行以外の理由で中止された場合に、タキサン再投与が現実的方法として支持された。Breast誌オンライン版2023年2月4日号に掲載。

 本研究では、フランスのがんセンターの地域データベースから、2008~21年に転移を有するER+/HER2-またはトリプルネガティブ乳がんの診断・治療を受けた756例を後ろ向きに調べた。そのうち58例(7.8%)がタキサンを再投与されていた。臨床的特徴、奏効率、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を評価し、タキサン再投与を受けなかった患者と比較した。なお、以前のタキサン治療におけるPFSをPFS1、タキサン再投与におけるPFSをPFS2とし、PFS2/PFS1が1.3を超えた場合に治療ベネフィットがあるとした。

 主な結果は以下のとおり。

・タキサン再投与群は再投与を受けなかった患者群と比較して、有意に年齢が低く、全身状態も良好で、多くの治療を受けていた。
・タキサン再投与群は再投与を受けなかった患者群と比較して、投与1回目の反応が良好で、病勢進行以外の理由による中止割合が高かった。
・タキサン再投与群における客観的奏効率は27.6%、クリニカルベネフィット率は46.6%、PFS中央値は5.7ヵ月、OS中央値は11.6ヵ月だった。
・タキサン再投与群のうち55.2%においてPFS2/PFS1比が1.3を超えた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Reda M, et al. Breast. 2023;68:149-156.[Epub ahead of print]

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