ペグフィルグラスチムの自動投与デバイス発売、患者の通院負担軽減に期待/協和キリン

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 協和キリンは、持続型G-CSFペグフィルグラスチム(商品名:ジーラスタ)の自動投与デバイスであるジーラスタ皮下注3.6mgボディーポッド(以下、同剤)を12月6日より発売すると発表した。

 ペグフィルグラスチムは、がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制を適応症として2014年から日本で販売している。通常、がん化学療法剤投与終了後の翌日以降に投与されるが、同剤は約27時間後に薬剤が自動投与される機能を搭載する。

 がん化学療法と同日に使用することでペグフィルグラスチム投与のための通院が不要となる。この機能により、化学療法を実施する患者の通院負担の軽減に寄与するという。

 同剤はテルモと共同で開発を行い、協和キリンが実施した第I相臨床試験の結果に基づき、2022年7月に承認を取得、2022年11月に薬価収載された。

(ケアネット 細田 雅之)


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HR0.58、camizestrantがER+HER2-進行乳がんでフルベストラントに対しPFS延長(SERENA-2)/SABCS2022

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 ホルモン受容体(ER)陽性/HER2陰性の閉経後進行乳がん(ABC)患者において、次世代経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であるcamizestrantが、フルベストラントと比較して無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に改善した。第II相SERENA-2試験の結果を、スペイン・Vall d’Hebron University HospitalのMafalda Oliveira氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表した。

・対象:ER陽性/ HER2陰性の閉経後進行乳がん患者(1ライン以上の内分泌療法後の再発または進行で、ABCに対するフルベストラントまたは経口SERD治療歴はなく、内分泌療法・化学療法は1ライン以下)
・試験群:
camizestrant75mg(C75)群 74例
camizestrant150mg(C150)群 73例
・対照群:フルベストラント(F)群 73例
・評価項目:
[主要評価項目]PFS
[副次評価項目]24週における臨床的ベネフィット率(CBR24)、奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、安全性
[層別化因子]CDK4/6阻害薬による治療歴、肺/肝転移

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時点での年齢中央値は60.0(35~89)歳、ECOG 0が58.8%、肺/肝転移ありが58.3%、ESR1変異ありが36.7%だった。
・術後内分泌療法歴ありが66.7%、ABCに対しては化学療法ありが19.2%、内分泌療法ありが68.8%。CDK4/6阻害薬による治療歴ありは49.6%だった。
・PFS中央値は、F群3.7ヵ月に対しC75群7.2ヵ月(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.41~0.81、p=0.0124)、C150群7.7ヵ月(HR:0.67、95%CI:0.48~0.92、p=0.0161)となり、camizestrantの両用量群で有意に改善した。
・PFSのサブグループ解析の結果、CDK4/6阻害薬による治療歴ありおよび肺/肝転移あり、ベースライン時点でESR1変異を有する患者とER-driven disease(5th ESO-ESMO ABCにより定義)の患者において、camizestrantの両用量はフルベストラントと比較し臨床的に意義のある改善を示した。
・camizestrantの両用量での治療により、ctDNAにおけるESR1変異のレベルがサイクル 2の1日目までに検出不能または検出不能に近いレベルまで低下し、これをサイクル7の 1日目まで維持した。フルベストラントも低下させたが、camizestrantほどの低下はみられなかった。
・ORRはF群11.5%に対しC75群15.7%(オッズ比[OR]:1.43、95%CI:0.63~3.33、両側p=0.4789)、C150群20.3%(OR:1.96、95%CI:0.88~4.51、両側p=0.1675)だった。
・CBR24はF群39.1%に対しC75群48.8%(OR:1.48、95%CI:0.84~2.64、両側p=0.2554)、C150群51.0%(OR:1.62、95%CI:0.91~2.89、両側p=0.1658)だった。
・Grade3以上のTRAEはC75群1.4%、C150群2.7%、F群1.4%で発生。TRAEによる投与中断はC75群14.9%、C150群21.9%で発生したが(F群4.1%)、短期間であった。
・Grade3以上のTEAEとしては、C75群では血圧上昇、C150群では倦怠感・貧血・関節痛・ALT上昇・四肢痛・低ナトリウム血症が報告されている。

 Oliveira氏は「SERENA-2試験は主要評価項目を達成し、camizestrantは75mgと150mg の両用量で、同患者においてフルベストラントと比較してPFSを改善し、またアンメットメディカルニーズとして事前に設定された各サブグループにおいても臨床的に意義のあるPFS改善効果を示した」とまとめた。また、稀にGrade3以上のTRAEが発生し、減量や中断が行われたものの、両用量ともに忍容性は高いとしている。

 SERENA-4およびSERENA-6の2つの第III相試験が進行中となっている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

SERENA-2試験(ClinicalTrials.gov)

SERENA-4試験(ClinicalTrials.gov)

SERENA-6試験(ClinicalTrials.gov)

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AIで乳がん病変の良悪性鑑別を~非侵襲的かつ鑑別精度の高い手法の開発目指す

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 GEヘルスケア・ジャパン株式会社(以下、GEヘルスケア)と愛媛大学は、乳がんの早期発見・診断精度向上に向けた非侵襲的な検査方法を開発するべく2021年より共同研究を開始している。本研究では同医学部附属病院で得られた乳腺病変のデータに人工知能技術を使用した解析を行っており、その結果、画像データから乳腺病変の良悪性を鑑別できる可能性が示唆された。本結果は、12月6日の記者会見で発表されたもので、将来的に乳がんの診断や治療に伴う身体的負担や心理的不安、検査コストの低減につながる可能性がある。

 乳がん領域において、検診のマンモグラフィ画像から病変検出や良悪性判定するためにCAD(Computer-aided diagnosis)が活用されるなど、人工知能による乳がん発症予測の実現化が期待され、実際に陰性のマンモグラフィ検査後5年以内の乳がん発症リスクを推定できることも報告されている1)。一方、精密検査では超音波検査や乳腺MRIを実施した後、米国放射線専門医会(ACR)が中心となって作成したガイドラインBreast imaging reporting and data system(BI-RADS)を用いて良悪性診断を行うが、人間による腫瘤の形・辺縁の評価や判別には限界があることから、診断方法の確立が望まれている。

 そこで、GEヘルスケアと愛媛大学は「MRIによる各種定量値のマッピング画像を用いた人工知能による新たな乳腺病変の良悪性判定方法」の開発に着手。本研究に当たっている松田 卓也氏(同大学大学院医学系研究科医療情報学講座)らは、Synthetic MRIの“1回の撮像から複数種類の定量値マップが取得できる”という利点を用い、造影前後の乳腺Synthetic MRIのマッピング画像から得たRadiomics特徴量(ヒストグラム特徴量とテクスチャー特徴量)を用いて、機械学習手法による乳腺腫瘤の良悪性鑑別に対する有用性を検討した。造影前後に行った水平断像のSynthetic MRIのsource imageからPD map、T1 map、T2 mapを作成し、それぞれからRadiomics特徴量88種類を抽出させる(88×3×2=528種類)。ただし、機械学習の性能維持のために計528特徴量から100種類の特徴量を選択(次元削減)するなどの処理を行った。

*Radiomics=Radiology(放射線医学)+Omics(すべて+学問)の意。医用画像の(多数の)特徴量を統計解析や機械学習に用いる手法のこと。

 本研究の初期検討結果について、松田 卓也氏は「今後の性能向上(特徴量の追加[そのほかのMRI画像特徴量・臨床的因子]やカテゴリー判定と組み合わせた総合的アルゴリズム)を検討している。臨床応用のためにエビデンスを構築し、更なる検討を重ねていく」とコメント。松田 恵氏(同大学医学部附属病院 放射線部)は「今後、精度を上げていくことで生検が不要になり、医療コスト面からも貢献できる可能性がある」と話した。

(ケアネット 土井 舞子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1)Yala A, et al. Radiology. 2019;292:60-66.

愛媛大学:人工知能(AI)で、乳腺病変の良悪性鑑別の精度を向上、非侵襲的かつ早期の発見を目指す

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T-DM1既治療のHER2+進行乳がん、T-DXdがPFSとOSを改善(DESTINY-Breast02)/SABCS2022

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 トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)治療歴のあるHER2+の切除不能または転移を有する乳がん患者に対する、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択の化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast02試験において、T-DXd群では無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が有意に改善したことを、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのIan Krop氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表した。

・対象:T-DM1治療歴のあるHER2+(IHCスコア3+、またはIHCスコア2+かつISH+)の切除不能または転移を有する乳がん
・試験群(T-DXd群):T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 406例
・対照群(TPC群):TPC(トラスツズマブ+カペシタビンまたはラパチニブ+カペシタビン)202例
・評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会(BICR)によるPFS
[副次評価項目]OS、BICRによる奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)、治験医師などの判定によるPFS、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値は、T-DXd群で21.5ヵ月(0.1~45.6ヵ月)、TPC群で18.6ヵ月(0~45.7ヵ月)であった(データカットオフ:2022年6月30日)。
・T-DXd群の年齢中央値は54.2歳、HR+が58.6%であった。TPC群の年齢中央値は54.7歳、HR+が58.4%であった。両群ともに、過去に中央値2ラインの化学療法歴を有していた。
・BICRによるPFS中央値は、T-DXd群17.8ヵ月vs.TPC群6.9ヵ月(ハザード比[HR]:0.3589、95%信頼区間[CI]:0.2840~0.4535、p<0.000001)であった。
・OS中央値は、T-DXd群39.2ヵ月vs.TPC群26.5ヵ月(HR:0.6575、95%CI:0.5023~0.8605、p=0.0021)であった。
・ORRは、T-DXd群で69.7%、TPC群で29.2%であった。
・DORは、T-DXd群で19.6ヵ月、TPC群で8.3ヵ月であった。
・臨床的ベネフィット率(CBR)は、T-DXd群で82.3%、TPC群で46.0%であった。
・治験医師などの判定によるPFSは、T-DXd群で16.7ヵ月、TPC群で5.5ヵ月であった。
・Grade3以上の治療関連有害事象は、T-DXd群で52.7%、TPC群で44.1%であった。
・間質性肺疾患は、T-DXd群で10.4%(Grade1:2.7%、Grade2:6.4%、Grade3:0.7%、Grade4:0%、Grade5:0.5%)、TPC群で0.5%(Grade3のみ)であった。

 Krop氏は「DESTINY-Breast02試験の結果は、T-DM1治療歴のあるHER2+の切除不能または転移を有する乳がん患者において、T-DXd群では、TPC群と比較して、統計学的にも臨床的にも有意なPFSおよびOSの改善がみられた。安全性はこれまでのT-DXdの報告と一致しており、新たな有害事象は観察されなかった」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

DESTINY-Breast02(ClinicalTrials.gov)

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高リスク早期乳がんへの術後内分泌療法+アベマシクリブ、OS中間解析結果(monarchE)/SABCS2022

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 HR+/HER2-リンパ節転移陽性の高リスク早期乳がんにおける術後内分泌療法へのアベマシクリブの追加を検討するmonarchE試験では、すでに主要評価項目の無浸潤疾患生存期間(IDFS)と副次評価項目である遠隔無転移生存期間(DRFS)を改善することが示されている。今回、主要評価項目の解析から2年後に予定されていた全生存期間(OS)中間解析(IA2)の結果を、英国・The Royal Marsden HospitalのStephen R.D. Johnston氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表した。なお、この結果はThe Lancet Oncology誌オンライン版2022年12月6日号に同時掲載された。

・対象:再発リスクの高いHR+/HER2-の早期乳がん
[コホート1]リンパ節転移4個以上、リンパ節転移1~3個の場合はグレード3もしくは腫瘍径5cm以上
[コホート2]リンパ節転移1~3個かつKi-67値20%以上かつグレード1~2で腫瘍径5cm未満
・試験群:術後療法として、標準的内分泌療法(タモキシフェンもしくはアロマターゼ阻害薬)+アベマシクリブ150mg1日2回。アベマシクリブは最長2年投与(ET+アベマシクリブ群:2,808例)
・対照群:術後療法として、標準的内分泌療法を5年以上施行(ET群:2,829例)
・評価項目:
[主要評価項目]IDFS
[副次評価項目]Ki-67高値集団におけるIDFS、DRFS、OS、安全性、薬物動態、患者報告アウトカム

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値42ヵ月(データカットオフ:2022年7月1日)時点で、すべての患者がアベマシクリブ投与を終了していた。
・ITT集団におけるIDFSのハザード比(HR)は0.664(95%信頼区間[CI]:0.578~0.762、p<0.0001)で、IDFS率の絶対的ベネフィットは、2年時の2.8%、3年時の4.8%に比べ4年時は6.4%に増加した。
・ITT集団におけるDRFSのHRは0.659(95%CI:0.567~0.767、p<0.0001)で、DRFS率の絶対的ベネフィットは、2年時の2.5%、3年時の4.1%に比べ4年時は5.9%に増加した。
・ITT集団におけるOSはimmatureであった(HR:0.929、95%CI:0.748~1.153、p=0.5027)が、死亡例数はET+アベマシクリブ群(157例)がET群(173例)より少なかった。
・コホート1において、Ki-67高値のほうが低値より予後不良だったが、Ki-67値にかかわらずアベマシクリブの治療効果が認められた。
・アベマシクリブの安全性プロファイルは管理可能で、高リスク集団にも忍容可能と考えられた。

 Johnston氏は「今回の追加解析で、術後アベマシクリブのベネフィットは増大し、4年時のIDFSとDRFSの絶対的ベネフィットは2年時、3年時と比べて増加した。OSは現時点ではimmatureだったが、ET群に比べET+アベマシクリブ群で死亡例数が少なかった」とまとめた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

monarchE(ClinicalTrials.gov)

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術前化療で完全奏効のTN or HER2+乳がん、手術省略できるか/Lancet Oncol

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 トリプルネガティブ(TN)およびHER2陽性乳がん患者において、術前化学療法により病理学的完全奏効を達成した場合は予後良好とされ、経皮的画像ガイド下吸引補助式乳房組織生検(VACB)により正確に判断することが可能である。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのHenry M. Kuerer氏らは、術前化学療法を受けたTNまたはHER2陽性の早期乳がん患者において、画像ガイド下VACBにより病理学的完全奏効と判定された場合に、手術を省略し放射線治療のみにできるかどうか検討した。The Lancet Oncology誌2022年12月号に掲載。

 本試験は米国の7施設による多施設共同単群第II相試験で、対象はcT1-2N0-1M0のTNまたはHER2陽性乳がんの妊娠していない40歳以上の女性で、標準的な術前化学療法後、残存病変が画像上2cm未満の患者とした。画像ガイド下VACBで浸潤性・潜在性がんが確認されなかった場合、手術を省略し、標準的な全乳房放射線治療を行った。主要評価項目は、生検による同側乳がん再発率、安全性はVACBを受けた全患者を対象に評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・2017年3月6日~2021年11月9日に50例が登録され、年齢中央値は62歳(四分位範囲:55~77)、TN乳がん21例(42%)、HER2陽性乳がん29例(58%)であった。
・VACBにより31例(62%、95%信頼区間:47.2~75.4)に病理学的完全奏効を確認した。
・これらの31例について、観察期間中央値26.4ヵ月(四分位範囲:15.2~39.6)時点で、同側乳がん再発は認められなかった。
・生検関連の重篤な有害事象や治療関連死亡は発生しなかった。

 この第II相試験の結果から、著者らは、術前化学療法後に画像ガイド下VACBで病理学的完全奏効が判定された患者には手術省略が可能と考察している。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Kuerer HM, et al. Lancet Oncol. 2022;23:1517-1524.

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中程度の運動で乳がん患者の死亡リスクが60%減!?

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 乳がん患者における日常動作以上の身体活動レベルと全死因死亡リスクの関連を評価した結果、中程度の身体活動であっても死亡リスクが60%低いことを、米国・カイザーパーマネンテ南カリフォルニアのLie Hong Chen氏らが明らかにした。身体活動による乳がんの発症リスク低減効果は知られているが、乳がんと診断された後の身体活動の効果に関する評価はまだ不十分であった。JAMA Netw Open誌2022年11月17日リサーチレター掲載の報告。

 研究グループは、2年以上前に乳がんの診断を受け(生存期間中央値6年)、カリフォルニア州のヘルスケアプランのメンバーであった閉経後乳がん患者のコホート研究を実施した。対象は、1996~2012年に初期の乳がん(TNM分類0~II期)と診断された患者で、調査は2013年8月1日~2015年3月31日に行われ、2022年4月30日または患者死亡まで追跡された。

 身体活動レベルと疲労度は、ゴーディン式余暇運動調査票(GSLTPAQ)およびFatigue Severity Inventory(簡易倦怠感尺度)の2つのアンケートによって聞き取った。身体活動レベルと全死因死亡リスクの関連を、年齢、乳がんの病期、疲労度、併存疾患、診断からの年数、人種・民族、不眠症とうつ病の既往、がん治療の種類(内分泌療法、化学療法、放射線治療)によって調整し、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・参加者315例の平均年齢は71歳(57~86歳)で、68.9%が非ヒスパニック系白人であった。
・最長追跡期間8.7年(中央値7.8年[四分位範囲:7.3~8.3年])において、45例(14.3%)が死亡した。うち5例が乳がんによる死亡であった。
・死亡率は、身体活動レベルが高い群(高強度[ランニング、ジョギングなど]または高頻度)では12.9/1,000人年、身体活動レベルが中程度の群(中強度[早歩き、ゆっくりとしたサイクリングなど])では13.4/1,000人年、身体活動レベルが低い群(低強度[ヨガ、アーチェリーなど]または低頻度)では32.9/1,000人年であった。
・多変量解析において、身体活動レベルが低い群と比較して、身体活動レベルが高い群の死亡のハザード比(HR)は0.42(95%信頼区間[CI]:0.21~0.85)、身体活動レベルが中程度の死亡のHRは0.40(同:0.17~0.95)であった。

 これらの結果より、研究グループは「本研究は食事情報と客観的な身体活動の評価を欠いているという限界がある」としたうえで、「身体活動レベルが高い参加者と中程度の参加者の死亡リスクは同程度であり、がん患者のケアにおいて身体活動の取り組みを検討する必要がある」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Chen LH, et al. JAMA Netw Open. 2022;5:e2242660.

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乳がん内分泌療法中のホットフラッシュに有効な新規薬剤/Lancet

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 新規非ホルモン性小分子化合物Q-122は、乳がん後に経口内分泌療法中の女性患者において、ホットフラッシュや発汗など血管運動神経症状の改善に有効で忍容性は良好であることが、オーストラリア・QUE OncologyのAmanda Vrselja氏らが、オーストラリア、ニュージーランド、米国の18施設で実施した第II相無作為化二重盲検プラセボ対照概念実証試験の結果、示された。血管運動神経症状は、経口内分泌療法中の乳がん女性の3分の2以上にみられるが、安全で有効な治療法はない。Q-122は、視床下部にあるエストロゲンに反応するKNDyニューロンの活性化を減少することにより、血管運動神経症状を抑制する可能性が示唆されていた。著者は、「今回の結果は、Q-122の大規模かつ長期的な試験の実施を支持するものであり、更年期のホルモン療法に代わる治療を必要としている閉経後女性にも使用できる可能性もある」とまとめている。Lancet誌2022年11月12日号掲載の報告。

中等度~重度の血管運動神経症状に対するQ-122の有効性と安全性をプラセボと比較

 研究グループは、乳がん後にタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬を30日以上服用しており、中等度~重度の血管運動神経症状(ホットフラッシュおよび発汗)が週50回以上発現している18~70歳の女性患者を、Q-122群(100mgを1日2回)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け(BMI値[≦30または>30]、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、ガバペンチン、プレガバリンのいずれかの使用で層別化)、28日間経口投与した。

 血管運動神経症状の重症度は、血管運動神経症状重症度スコア(VMS-SS、スコア1[軽度:発汗を伴わない熱感]、スコア2[中等度:発汗を伴う熱感があるが、活動を継続できる]、スコア3[重度:発汗を伴う熱感があり、活動が停止])で患者に評価してもらった。

 主要評価項目は、中等度および重度VMS-SS(msVMS-SS)のベースラインから28日目までの平均変化率であった。msVMS-SSは、(2×中等度血管運動神経症状数)+(3×重度血管運動神経症状数)として算出した。

 少なくとも1回試験薬を服用し、試験開始後に1回以上有効性の評価を行った修正intention-to-treat集団を有効性解析対象集団とし、少なくとも1回試験薬を服用した全患者を安全性解析対象集団とした。

Q-122群でmsVMS-SSが有意に改善

 2018年10月24日~2020年9月9日の期間に、243例がスクリーニングされ、そのうち131例が無作為化された(Q-122群65例、プラセボ群66例)。

 msVMS-SSのベースラインから投与28日目までの平均変化率(最小二乗平均値)は、Q-122群が-39%(95%信頼区間[CI]:-46~-31)、プラセボ群が-26%(95%CI:-33~-18)であり、プラセボ群と比較してQ-122群で有意に低下した(p=0.018)。

 試験薬投与下で発現した有害事象は多くが軽症から中等症であり、両群間で類似していた。治療関連有害事象の発現率は、Q-122群17%(11/65例)、プラセボ群14%(9/66例)で、重篤な有害事象はQ-122群ではみられず、プラセボ群でのみ2例に認められた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Vrselja A, et al. Lancet. 2022;400:1704-1711.

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ドキソルビシン、乳がん併用療法での休薬期間短縮可能に/サンドファーマ

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 サンドファーマ株式会社は2022年11月24日、ドキソルビシン(一般名:アドリアシン注用10、同注用50)について、乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍薬との併用療法の場合、シクロホスファミド水和物との併用において、用法及び用量の医薬品製造販売承認事項一部変更承認を受けたことを発表した。

<製品概要>
・販売名:
アドリアシン注用10
アドリアシン注用50
・一般名:ドキソルビシン塩酸塩
・効能・効果:変更なし
・用法及び用量:
<乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法>
シクロホスファミド水和物との併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、1日量、ドキソルビシン塩酸塩として60mg(力価)/m2(体表面積)を日局注射用水又は日局生理食塩液に溶解し、1日1回静脈内投与後、13日間又は20日間休薬する。
この方法を1クールとし、4クール繰り返す。
なお、年齢、症状により適宜減量する。またドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。
・用法及び用量に関連する注意:
<乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法>
本剤の投与スケジュールの選択、G-CSF製剤の使用等について、国内外の最新のガイドライン等を参考にすること。
・承認取得日:2022年11月24日

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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TS-1、ER+HER2-乳がん術後療法に適応拡大/大鵬

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 大鵬薬品工業は2022年11月24日、経口抗がん薬TS-1(一般名:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、商品名:ティーエスワン配合カプセルT20・T25/ティーエスワン配合顆粒T20・T25/ティーエスワン配合OD錠T20・T25)について、新たな適応として「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術後薬物療法」の承認を、厚生労働省より取得したことを発表した。

 今回の承認は、医師主導臨床試験である「エストロゲン受容体陽性HER2陰性乳癌に対するTS-1術後療法」(POTENT試験)の結果に基づく。同試験では、エストロゲン受容体陽性HER2陰性乳がんに対する術後補助療法において、標準的な治療法である内分泌療法(5年間)を対照群とし、この内分泌療法(5年間)とTS-1(1年間)を併用する治療法を試験群として、再発抑制効果が高まることを無作為化比較第III相試験により検証することが目的とされた。主な評価項目は、浸潤性疾患のない生存期間、全生存期間および安全性などで、2012年2月~2016年2月の症例登録期間中に全国の乳がん専門施設139施設から1,959例が登録された。

 POTENT試験の結果より、TS-1と内分泌療法の併用は、再発中間リスク以上のエストロゲン受容体陽性かつHER2陰性の原発性乳がん患者に対し、臨床的に意義のある浸潤性疾患のない生存期間(Invasive Disease Free Survival:iDFS)の延長を認めた。また、安全性はこれまでにTS-1で報告されているプロファイルと同様であり、POTENT試験で新たな懸念は確認されなかった。

<製品概要>
・販売名:
ティーエスワン配合カプセルT20・T25
ティーエスワン配合顆粒T20・T25
ティーエスワン配合OD錠T20・T25
・一般名:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム
・効能・効果:
胃癌、結腸・直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌、手術不能又は再発乳癌、膵癌、胆道癌、ホルモン受容体陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術後薬物療法
・用法・用量:
<ホルモン受容体陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術後薬物療法>
内分泌療法剤との併用において、通常、成人には次の投与量を朝食後および夕食後の1日2回、14日間連日経口投与し、その後7日間休薬する。これを1クールとして最長1年間、投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜増減する。初回基準量を超える増量は行わないこと。
体表面積1.25m2未満:40mg/回*
体表面積1.25m2以上1.5m2未満:50mg/回
体表面積1.5m2以上:60mg/回
*初回基準量(テガフール相当量)
・承認取得日:2022年11月24日

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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