HER2低発現とHER2陰性乳がん、予後に違いはあるか?

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 HER2低発現(ERBB2-low)乳がんについて、HER2陰性(ERBB2-0)乳がんと比較してその予後や従来の治療法への反応にどのような違いがあるかはほとんどわかっていない。フランス・Institut de Cancerologie de l’OuestのOmbline de Calbiac氏らは、両者の転帰を比較することを目的にコホート研究を行い、JAMA Network Open誌2022年9月15日号に報告した。

 本研究では、2008~16年にフランスの18の総合がんセンターで治療を受けた転移乳がん(MBC)患者を対象とし、データ解析は2020年7月16日~2022年4月1日に実施された。主要評価項目はHER2低発現(IHCスコアが1+もしくは2+でISH陰性)およびHER2陰性(IHCスコア0)の患者における全生存期間(OS)、副次評価項目は一次治療下での無増悪生存期間(PFS1)とされた。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象とされたMBC患者1万5,054例のうち、4,671例(31%)はHER2低発現、1万383例(69%)はHER2陰性だった。
・年齢中央値は60.0(22.0~103.0)歳。
・ホルモン受容体陽性患者(1万2,271例)のうち4,083例(33.0%)がHER2低発現だったのに対し、トリプルネガティブ乳がん患者(2,783例)では588例(21.0%)だった。
・追跡期間中央値49.5ヵ月におけるOS中央値は、HER2低発現群38.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:36.4~40.5ヵ月)vs.HER2陰性群33.9ヵ月(95%CI:32.9~34.9ヵ月)だった(p<0.001)。
・年齢、内臓転移、転移部位の数、de novo疾患、治療期間、およびホルモン受容体の状態で調整後、HER2低発現群では、HER2陰性群と比較してOSがわずかに良好だった(調整ハザード比[HR]:0.95、95%CI:0.91~0.99、p=0.02)。
・一方、PFS1はHER2の発現状態によって違いはみられなかった(調整HR:0.99、95% CI:0.95~1.02、p=0.45)。
・ホルモン受容体の状態と一次治療の種類による多変量解析では、OSとPFS1に有意差はみられなかった。

 著者らは、HER2低発現MBC患者ではHER2陰性MBC患者と比較してOSがわずかに良好だったが、PFS1に差はみられなかったとし、治療選択の助けとなる可能性があるとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

de Calbiac O, et al. JAMA Netw Open. 2022;5:e2231170.

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高齢乳がんサバイバー、CRP高値が認知機能障害に関連/JCO

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 高齢の乳がんサバイバーと非がん対照者のC反応性蛋白(CRP)値とその後の認知機能を調査した大規模前向き全国コホート研究の結果、サバイバーは対照群と比べて長期にわたりCRPが高く、CRPが高かったサバイバーは認知機能障害を発症する可能性が高かった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJudith E. Carroll氏らが、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年9月30日号で報告した。

 本研究は、2010年9月~2020年3月、60歳以上で乳がん(Stage0~III)と診断された女性と、がんではない対照者を登録した(認知症、神経障害、他のがんを有する女性は除外)。評価は全身療法前(対照群では登録前)および年1回の来院時に行い、60ヵ月まで追跡した。認知機能は、Functional Assessment of Cancer Therapy-Cognitive Function(FACT-Cog)および神経心理学的検査を用いて測定した。各訪問時におけるCRPを自然対数(ln-CRP)に変換し、サバイバーと対照者の差を混合線形効果モデルで検定した。その後の認知機能に対するln-CRPの方向性効果をランダム効果-遅延変動モデルで検証した。すべてのモデルで年齢、人種、研究施設、認知予備能、肥満、併存疾患について調整し、2次解析ではうつ病や不安障害が結果に影響を与えるかどうかを評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象となったのはCRP検体と追跡データを有する乳がんサバイバー400人と対照者329人で、平均年齢67.7歳(範囲:60~90歳)だった。サバイバーのうちStageIが60.9%、エストロゲン受容体陽性が87.6%だった。
・ベースライン、12ヵ月時点、24ヵ月時点、60ヵ月時点の調整後ln-CRPの平均は、サバイバーが対照群より有意に高かった(すべてp<0.05)。
・サバイバーでは、調整後ln-CRPが高いほどその後の来院時の自己報告の認知能力が低かったが、対照者ではそうではなかった(相互作用のp=0.008)。また、その影響はうつ病や不安障害によって変わらなかった。
・調整後FACT-Cogスコアは、CRPが3.0mg/Lおよび10.0mg/Lの場合、サバイバーは対照群よりそれぞれ9.5および14.2ポイント低かった。
・神経心理学的検査の成績はサバイバーが対照群より悪く、Trails B検査のみCRPとの有意な相互作用がみられた。

 今回の高齢の乳がんサバイバーにおけるCRPとその後の認知機能の関連から、慢性炎症が認知機能障害の発症に関与している可能性が示唆される。著者らは「CRP検査はサバイバーのケアにおいて臨床的に有用かもしれない」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Carroll JE, et al. J Clin Oncol. 2022 Sep 30. [Epub ahead of print]

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遺族にNGな声かけとは…「遺族ケアガイドライン」発刊

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 2022年6月、日本サイコオンコロジー学会と日本がんサポーティブケア学会の合同編集により「遺族ケアガイドライン」が発刊された。本ガイドラインには“がん等の身体疾患によって重要他者を失った遺族が経験する精神心理的苦痛の診療とケアに関するガイドライン”とあるが、がんにかかわらず死別を経験した誰もが必要とするケアについて書かれているため、ぜひ医療者も自身の経験を照らし合わせながら、自分ごととして読んで欲しい一冊である。

 だが、本邦初となるこのガイドラインをどのように読み解けばいいのか、非専門医にとっては難しい。そこで、なぜこのガイドラインが必要なのか、とくに読んでおくべき項目や臨床での実践の仕方などを伺うため、日本サイコオンコロジー学会ガイドライン策定委員会の遺族ケア小委員会委員長を務めた松岡 弘道氏(国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科/支持療法開発センター)を取材した。

ガイドラインの概要

 本書は4つに章立てられ、II章は医療者全般向けで、たとえば、「遺族とのコミュニケーション」(p29)には、役に立たない援助遺族に対して慎みたい言葉の一例が掲載されている。III章は専門医向けになっており、臨床疑問(いわゆるClinical questionのような疑問)2点として、非薬物療法に関する「複雑性悲嘆の認知行動療法」と薬物療法に関する「一般的な薬物療法、特に向精神薬の使い方について」が盛り込まれている。第IV章は今後の検討課題や用語集などの資料が集約されている。

遺族の心、喪失と回復を行ったり来たり

 人の死というは“家族”という単位だけではなく、友人、恋人や同性愛者のパートナーのように社会的に公認されていない間柄でも生じ(公認されない悲嘆)、生きている限り誰もが必ず経験する。そして皮肉なことに、患者家族という言葉は患者が生存している時点の表現であり、亡くなった瞬間から“遺族”になる。そんな遺族の心のケアは緩和ケアの主たる要素として位置付けられるが、多くの場合は自分自身の力で死別後の悲しみから回復していく。ところが、死別の急性期にみられる強い悲嘆反応が長期的に持続し、社会生活や精神健康など重要な機能の障害をきたす『複雑性悲嘆(CG:complicated grief)』という状態になる方もいる。CGの特徴である“6ヵ月以上の期間を経ても強度に症状が継続していること、故人への強い思慕やとらわれなど複雑性悲嘆特有の症状が非常に苦痛で圧倒されるほど極度に激しいこと、それらにより日常生活に支障をきたしていること”の3点が重要視されるが、この場合は「薬物治療の必要性はない」と説明した。

 一方でうつ病と診断される場合には、専門医による治療が必要になる。これを踏まえ松岡氏は「非専門医であっても通常の悲嘆反応なのかCGなのか、はたまた精神疾患なのかを見極めるためにも、CG・大うつ病性障害(MDD)・心的外傷後ストレス障害(PTSD)の併存と相違(p54図1)、悲嘆のプロセス(p15図1:死別へのコーピングの二重過程モデル)を踏まえ、通常の悲嘆反応がどのようなものなのかを理解しておいて欲しい」と強調した。

医師ができる援助と“役に立たない”援助

 死別後の遺族の支援は「ビリーブメントケア(日本ではグリーフケア)」と呼ばれる。その担い手には医師も含まれ、遺族の辛さをなんとかするために言葉かけをする場面もあるだろう。そんな時に慎みたい言葉が『寿命だったのよ』『いつまでも悲しまないで』などのフレーズで、遺族が傷つく言葉の代表例である。言葉かけしたくも言葉が見つからないときは、正直にその旨を伝えることが良いとされる。一方、遺族から見て有用とされるのは、話し合いや感情を出す機会を持つことである。

 そのような機会を提供する施設が国内でも設立されつつあるが、現時点で約50施設
(と、まだまだ多くの遺族が頼るには程遠い数である。この状況を踏まえ、同氏は「医師や医療者には患者の心理社会的背景を意識したうえで診療や支援にあたって欲しいが、実際には多忙を極める医師がここまで介入することは難しい」と話し、「遺族の状況によってソーシャルワーカーなどに任せる」ことも必要であると話した。

 なお、メンタルヘルスの専門家(精神科医、心療内科医、公認心理師など)に紹介すべき遺族もいる。それらをハイリスク群とし、特徴を以下のように示す。

<強い死別反応に関連する遺族のリスク因子>(p62 表4より)
(1)遺族の個人的背景
・うつ病などの精神疾患の既往、虐待やネグレクト
・アルコール、物質使用障害
・死別後の睡眠障害
・近親者(とくに配偶者や子供の死)
・生前の患者に対する強い依存、不安定な愛着関係や葛藤
・低い教育歴、経済的困窮
・ソーシャルサポートの乏しさや社会的孤立

(2)治療に関連した要因
・治療に対する負担感や葛藤
・副介護者の不在など、介護者のサポート不足
・治療やケアに関する医療者への不満や怒り
・治療や関わりに関する後悔
・積極的治療介入(集中治療、心肺蘇生術、気管内挿管)の実施の有無

(3)死に関連した要因
・病院での死
・ホスピス在院日数が短い
・予測よりも早い死、突然の死
・死への準備や受容が不十分
・「望ましい死」であったかどうか
・緩和ケアや終末期の患者のQOLに対する遺族の評価

 上記を踏まえたうえで、遺族をサポートする必要がある。

不定愁訴を訴える患者、実は誰かを亡くしているかも

 一般内科には不定愁訴で来院される方も多いだろうが、「遺族になって不定愁訴を訴える」ケースがあるそうで、それを医療者が把握するためにも、原因不明の症状を訴える患者には、問診時に問いかけることも重要だと話した。

<表5 遺族の心身症の代表例>(p64より一部抜粋)
1.呼吸器系(気管支喘息、過換気症候群など)
2.循環器系(本態性高血圧症など)
3.消化器系(胃・十二指腸潰瘍、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群など)
4.内分泌・代謝系(神経性過食症、単純性肥満症など)
5.神経・筋肉系(緊張型頭痛、片頭痛など)
6.その他(線維筋痛症、慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎など)

 最後に同氏は高齢化社会特有の問題である『別れのないさよなら』について言及し、「これは死別のような確実な喪失とは異なり、あいまいで終結をみることのない喪失に対して提唱されたもの。高齢化が進み認知症患者の割合が高くなると『別れのないさよなら』も増える。そのような家族へのケアも今後の課題として取り上げていきたい」と締めくくった。

書籍紹介『遺族ケアガイドライン』

(ケアネット 土井 舞子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

日本サイコオンコロジー学会/日本がんサポーティブケア学会編. 遺族ケアガイドライン.金原出版;2022.

遺族外来・家族ケア外来・グリーフケア外来・遺族会のある病院リスト

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男性乳がんの予後予測因子

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 毎年診断される乳がんのうち、男性が0.5~1%を占めている。今回、男性乳がんの予後予測因子について、米国・MedStar Georgetown University HospitalのOlutayo A. Sogunro氏らが後ろ向きチャートレビューを実施したところ、死亡リスクが高かったのは、高齢、糖尿病、心房細動、末期腎不全、PS 3、低分化腺がん、転移ありだった。なお、男性の乳がん患者では女性の乳がんと比べ、全生存率が低かった。Journal of Surgical Research誌オンライン版2022年9月28日号に掲載。

 本研究は、2010~21年における男性乳がんの後ろ向きチャートレビューで、人口統計、併存疾患、がんの特性、再発、死亡を収集した。Cox比例ハザード回帰モデルを使用して予後因子を決定し、カプランマイヤー曲線を用いて生存率を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・男性乳がん患者47例が特定された。受診時の平均年齢は64.1歳、アフリカ系米国人28例(59.6%)、白人が14例(29.8%)だった。
・大多数(89.4%)が浸潤性乳管がんで、T1が40.4%、T2が38.3%だった。3例(6.4%)が再発、8例(17%)が死亡した。
・エンドポイントとして死亡率を用いると、死亡リスクが高かったのは、76.1歳以上(ハザード比:1.13、p=0.004)、糖尿病(同:5.45、p=0.023)、心房細動(同:8.0、p=0.009)、末期腎不全(同:6.47、p=0.023)、ECOG PS 3(同:7.92、p=0.024)、低分化腺がん(同:7.21、p=0.033)、転移あり(HR:30.94、p=0.015)だった。
・3年全生存率は79.2%だった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Sogunro OA, et al. J Surg Res. 2022 Sep 28.[Epub ahead of print]

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乳房温存手術後の遠隔再発と局所再発を最小にするマージンを検討/BMJ

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 早期浸潤性乳がんの乳房温存手術においてマージン状態が遠隔再発と関連するかどうか、また局所再発リスクと遠隔再発リスクの両方を最小にするために必要なマージンについて、英国・リーズ大学のJames R. Bundred氏らが系統的レビューとメタ解析により検討し報告した。BMJ誌2022年9月21日号に掲載。

 本研究では、Medline(PubMed)、Embase、Proquestのデータベースから、乳房温存手術(StageI~III)を受けた乳がん患者を対象にマージン状況との関連でアウトカムを推定可能な追跡期間60ヵ月以上の研究を検索した。非浸潤性乳管がん(DCIS)の患者、術前化学療法を受けた患者、乳房切除術を受けた患者を除外し、断端陽性(tumour on ink)、断端近接(no tumour on inkだが2mm未満)、断端陰性(2mm以上)に分類した。

 主な結果は以下のとおり。

・1980年1月1日~2021年12月31日の68研究、11万2,140例の乳がん患者が適格とされた。
・これらの研究全体では、患者の9.4%(95%信頼区間[CI]:6.8~12.8)が断端陽性、17.8%(同:13.0~23.9)が断端陽性または断端近接であった。
・遠隔再発率は、断端陽性で25.4%(同:14.5~40.6)、断端陽性または断端近接で8.4%(同:4.4~15.5)、断端陰性で7.4%(同:3.9~13.6)であった。
・断端陽性は断端陰性と比較して、遠隔再発リスク(ハザード比[HR]:2.10、95%CI:1.65~2.69、p<0.001)および局所再発リスク(HR:1.98、95%CI:1.66~2.36、p<0.001)とも高かった。
・術後化学療法および放射線療法の調整後、断端近接は断端陰性と比較して遠隔再発リスク(HR:1.38、95%CI:1.13~1.69、p<0.001)および局所再発リスク(HR:2.09、95%CI:1.39~3.13、p<0.001)とも高かった。
・2010年以降に発表された5研究では、遠隔再発リスクは断端陰性と比べて、断端陽性(HR:2.41、95%CI:1.81~3.21、p<0.001)および断端陽性または断端近接(HR:1.44、95%CI:1.22~1.71、p<0.001)で高かった。

 今回のメタ解析の結果、早期浸潤性乳がんの乳房温存術後の患者において、断端陽性または断端近接の場合は遠隔再発リスクおよび局所再発リスクが高かった。著者らは「外科医は、1mm以上で最小のクリアマージンを達成することを目指すべき」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Bundred JR, et al. BMJ. 2022;378:e070346.

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ペムブロリズマブ、高リスク早期TN乳がんへの術前・術後療法に適応拡大/MSD

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 MSD株式会社は2022年9月26日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、「ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術前・術後薬物療法」の効能または効果で、国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。

 今回の承認は、ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスクの周術期の乳がん患者1,174例(日本人76例を含む)を対象とし、術前薬物療法としてのペムブロリズマブと化学療法との併用療法、および術後薬物療法としてのペムブロリズマブ単独療法の有効性と安全性を、術前薬物療法としてのプラセボと化学療法との併用療法、および術後薬物療法としてのプラセボ投与を対照として評価した国際共同第III相試験(KEYNOTE-522試験)の結果に基づいている。

 本試験において、術前のペムブロリズマブと化学療法との併用療法および術後のペムブロリズマブ単独投与は、術前のプラセボと化学療法との併用療法および術後のプラセボ投与と比較して主要評価項目の1つである無イベント生存期間(EFS)を有意に延長した(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.48~0.82、p=0.00031)。安全性については、安全性解析対象例783例中774例(98.9%)(日本人45例中45例を含む)に副作用が認められた。主な副作用(20%以上)は、悪心495例(63.2%)、脱毛症471例(60.2%)、貧血429例(54.8%)、好中球減少症367例(46.9%)、疲労330例(42.1%)、下痢238例(30.4%)、ALT増加204例(26.1%)、嘔吐200例(25.5%)、無力症198例(25.3%)、発疹196例(25.0%)、便秘188例(24.0%)、好中球数減少185例(23.6%)、AST増加157例(20.1%)だった。

<製品概要>
・販売名:キイトルーダ点滴静注100mg
・一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)
・効能・効果:ホルモン受容体陰性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術前・術後薬物療法
・用法・用量:
通常、成人にはペムブロリズマブ(遺伝子組換え)として1回200mgを3週間間隔または1回400mgを6週間間隔で30分間かけて点滴静注する。投与回数は、3週間間隔投与の場合、術前薬物療法は8回まで、術後薬物療法は9回まで、6週間間隔投与の場合、術前薬物療法は4回まで、術後薬物療法は5回までとする。
・承認取得日:2022年9月26日

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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閉経後乳がん術後内分泌療法の延長、6年vs.3年(DATA)/ESMO2022

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 術後に2~3年のタモキシフェン投与を受け、無病状態にあったホルモン受容体(HR)陽性の閉経後乳がん患者において、続いてアナストロゾールを投与した場合の効果を複数の期間で検討した結果が報告された。オランダ・マーストリヒト大学病院のVivianne Tjan-Heijnen氏が、第III相非盲検無作為化比較試験(DATA試験)の最終解析結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。

・対象:ER+および/またはPR+、2~3年の術後タモキシフェン投与を受け、再発のない閉経後乳がん患者1,660例
・試験群:
アナストロゾール(1mg/日)を6年間投与 827例
アナストロゾール(1mg/日)を3年間投与 833例
・評価項目:
[主要評価項目]無作為化後3年以降の調整無病生存率(aDFS)
[副次評価項目]調整全生存期間(aOS)
[層別化因子]リンパ節転移の状態、ホルモン受容体・HER2の発現状況、タモキシフェンの投与期間

 主な結果は以下のとおり。

・2006年6月~2009年8月にオランダの79施設から1,660例が登録され、6年群(827例)または3年群(833例)に無作為に割り付けられた。
・調整追跡期間中央値は10.1年であった。
・ベースライン時の特性は両群でバランスがとれており、ER+およびPR+が6年群75.8% vs.3年群76.0%、pN1が52.5% vs.54.9%だった。
・10年aDFSは6年群で69.1% vs.3年群で66.0%となり、統計学的に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.72~1.01、p=0.073)。
・10年aDFSのサブグループ解析の結果、ER+およびPR+の患者において、6年群で70.8% vs.3年群で64.4%(HR:0.77、95%CI:0.63~0.93)だったのに対し、ER+またはPR+の患者では、63.7% vs.70.9%(HR:1.22、95%CI:0.86~1.73)だった(相互作用のp=0.018)。さらに、ER+およびPR+かつリンパ節転移陽性の患者では68.7% vs.60.7%(HR:0.74、95%CI:0.59~0.93、p=0.011)、ER+およびPR+かつリンパ節転移陽性かつ腫瘍サイズ≧2cmの患者では70.0% vs.56.4%(HR:0.64、95%CI:0.47~0.88、p=0.005)だった。
・aOSは6年群で80.9% vs.3年群で79.2%となり、統計学的に有意な差は認められなかった(HR:0.93、95%CI:0.75~1.16、p=0.53)。
・aOSのサブグループ解析の結果、ER+およびPR+の患者においては6年群で82.7% vs.3年群で78.7%(HR:0.83、95%CI:0.65~1.07)、ER+またはPR+の患者では、75.2% vs.81.0%(HR:1.33、95%CI:0.86~2.05)だった(相互作用のp=0.051)。

 Tjan-Heijnen氏は結論として、ホルモン受容体陽性乳がんのすべての閉経後女性において、アロマターゼ阻害薬による5年以上の延長治療を行うことは推奨できないとした。ただし、ホルモン受容体の状態(ER+およびPR+)、リンパ節転移の状態(リンパ節転移陽性)については、延長治療を行うにあたっての予測因子となる可能性があるとしている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

DATA試験(Clinical Trials.gov)

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医師のがん検診受診状況は?/1,000人アンケート

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 定番ものから自費で受ける最先端のものまで、検査の選択肢が多様化しているがん検診。CareNet.comが行った『がん検診、医師はどの検査を受けている?/医師1,000人アンケート』では、40~60代の会員医師1,000人を対象に、男女別、年代別にがん検診の受診状況や、検査に関する意見を聞いた。その結果、主ながん種別に受ける割合の多い検査が明らかとなったほか、今後受けたい検査、がん検診に感じる負担など、さまざまな角度から意見が寄せられた(2022年8月26~31日実施)。

40代男性医師の約半数、がん検診を受けていない

 Q1「直近の健康診断や人間ドックで、どのがん検査を受けましたか?(複数選択)」では、男性ではどの年代でも、胃がん(40代41%、50代52%、60代59%)、大腸がん(同28%、同41%、同50%)の順に検査を受けた割合が多かった。「がん検診を受けていない」と回答した人は年代で大きく差があり、40代が47%、50代が31%、60代が23%となっており、40代男性の約半数が、がん検診を受けていないことが明らかになった。

 女性では、40代と50代では、ともに乳がん(40代53%、50代47%)の検査を受けた割合が最も多く、次いで40代では子宮頸がん(52%)、胃がん(45%)、50 代では胃がん(45%)、子宮頸がん(44%)の順に多かった。60代は、胃がんが最多(64%)で、次いで乳がん(52%)、子宮頸がん(42%)の順となっている。「がん検診を受けていない」と回答した人は、どの年代も20%台で大きな差はなかった。女性の場合、乳がんや子宮頸がんといった若年層でも比較的リスクが高いとされるがんが多いことが、この結果に影響しているかもしれない。

胃がん検診で最も多いのは経口内視鏡検査

 Q2「胃がん検診の際に受けた検査はどれですか?(複数選択)」では、男女どの年代も経口内視鏡検査を受けた割合が最も多かった(男性29%、女性31%)。自由回答で、胃がん検診に対して寄せられたコメントとして、バリウムX線検査や内視鏡検査について、以下のようなものがあった。

・バリウムではなくて内視鏡をファーストチョイスにしてほしい。(心臓血管外科、40代、女性)
・胃のバリウム造影はあまり意味がないのではないでしょうか。(泌尿器科、40代、男性)
・経口内視鏡の苦痛の軽減方法は鎮静以外にないものか、今後の技術の進歩に期待。(内科、60代、女性)
・胃カメラは経鼻が入らないので、さらに細径の内視鏡開発を望みます。(泌尿器科、50代、男性)

コメントが多く寄せられた「乳がん検診の痛み」

 Q3では、男女で別の質問項目を設けた。男性に対しては前立腺がんについて聞いたところ、年代が上がるにつれて検査を受けた割合が増加し、40代ではわずか9%だが、50代では33%、60代では48%がPSA検査を受けていた。

 女性に対しては乳がんについて聞いた。マンモグラフィ検査を受けた割合は各年代とも50%を超えており、超音波検査は30%前後であった。乳がん検診の痛みに対する以下のようなコメントが10件ほど寄せられた。

・マンモグラフィはもっと痛みの少ない撮影法が開発されてほしい。毎回憂うつです。(眼科、40代、女性)
・乳がん検診はMRIが最適だろうに、なぜ広がらないのかわかりません。そもそもマンモグラフィは非常に痛みが強く、その割に感度特異度とも不十分で改善点ありまくりなのに、まったく改善する見込みなし。(内科、50代、女性)
・マンモグラフィが痛すぎるので、それに代わる痛くない検査がいい。(精神科、50代、女性)

自費で受けた検査、今後受けたい検査

 Q5では、自費で受けたことがある検査について聞いた。最も多かったのは腫瘍マーカー検査で、男女ともにどの年代も10%以上あり、最多の60代男性では24%だった。続いて脳ドックが男女ともに各年代10%前後であった。

 Q6の自由回答のコメントでは、今まで受けたことはないが今後積極的に受けたい検査として、下部消化管内視鏡検査を挙げた人が14人、がん遺伝子検査が11人、がん線虫検査が10人、PET検査が9人、腫瘍マーカー検査が3人だった。ただし、線虫検査や腫瘍マーカー検査については、検査の精度に対して以下のような懐疑的な意見もいくつか寄せられた。

・線虫検査などは偽陰性が問題だと思う。(泌尿器科、40代、女性)
・腫瘍マーカーで早期発見は無理で、普段偽陽性ばかり見ているので、しっかりと有用性の評価をしないといけないと思う。(呼吸器内科、50代、男性)

コロナ禍で検診を受けにくい状況も

 がん検診を受けにくい理由として、忙しくて受ける余裕がないという意見が多数寄せられた。具体的には、内視鏡検査や婦人科がんの検診は予約が取りづらいといったことや、週末に受診できる施設が少ないといった理由のほか、コロナ禍で検診を受けにくくなったという声も複数上がった。

アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。
がん検診、医師はどの検査を受けている?/医師1,000人アンケート

(ケアネット 古賀 公子)


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がん患者は血圧140/90未満でも心不全リスク増/東京大学ほか

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 がん患者では、国内における正常域血圧の範囲内であっても心不全などの心血管疾患の発症リスクが上昇し、さらに血圧が高くなるほどそれらの発症リスクも高くなることを、東京大学の小室 一成氏、金子 英弘氏、佐賀大学の野出 孝一氏、香川大学の西山 成氏、滋賀医科大学の矢野 裕一朗氏らの研究グループが発表した。これまで、がん患者における高血圧と心血管疾患発症の関係や、どの程度の血圧値が疾患発症と関連するのか明らかではなかった。Journal of clinical oncology誌オンライン版2022年9月8日号掲載の報告。

 本研究では、2005年1月~2020年4月までに健診・レセプトデータベースのJMDC Claims Databaseに登録され、乳がん、大腸・直腸がん、胃がんの既往を有する3万3,991例(年齢中央値53歳、34%が男性)を解析対象とした。血圧降下薬を服用中の患者や、心不全を含む心血管疾患の既往がある患者は除外された。主要アウトカムは、心不全の発症であった。

 主な結果は以下のとおり。

・平均観察期間2.6年(±2.2年)の間に、779例で心不全の発症が認められた。
・米国ガイドラインに準じて分類した正常血圧(収縮期血圧120mmHg未満/拡張期血圧80mmHg未満)と比較した心不全のハザード比は、ステージ1高血圧(130~139mmHg/ 80~89mmHg)が1.24(95%信頼区間:1.03~1.49)、ステージ2 高血圧(140mmHg以上/ 90mmHg以上)が1.99(同:1.63~2.43)と血圧が上がるほど上昇した。
・心不全以外の心血管疾患(心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心房細動)においても、血圧上昇に伴う発症リスクの上昇が認められた。
・この影響は、化学療法などの積極的ながん治療を行っている患者においても認められた。

 高血圧は、がん患者においても高頻度に認められる併存症であるが、臨床においては血圧低下(食欲不振に伴う脱水など)が問題となることも多いため、高血圧については積極的な治療が行われない場面もあったと考えられる。それを踏まえて、研究グループは、「本研究において、がん患者では、降圧治療を受けていないステージ1高血圧やステージ2高血圧においても、心不全や他の心血管疾患のリスクが高かった。がん患者においても、適切な血圧コントロールが重要である」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Kaneko H, et al. J Clin Oncol. 2022 Sep 8. [Epub ahead of print]

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T-DXdの作用機序と耐性機序をバイオマーカー解析で検討(DAISY)/ESMO2022

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 転移を有する乳がんに対するトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の有効性をHER2高発現、HER2低発現、HER2陰性の3群で評価したDAISY試験において、T-DXdの作用機序と耐性機序を検討した結果を、フランス・Gustave RoussyのMaria Fernanda Mosele氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。

 DAISY試験は多施設共同非盲検第II相試験で、転移を有する乳がんにおけるT-DXdの有効性をHER2高発現群(IHC 3+またはIHC 2+/ISH+)、HER2低発現群(IHC 2+/ISH-またはIHC 1+)、HER2陰性群(IHC 0)の3群に分けて評価し、バイオマーカー解析を実施した。有効性についてはSABCS 2021、バイオマーカー解析についてはESMO BREAST 2022ですでに報告されている。

 今回、T-DXdの作用機序をさらに探るために、ベースライン時およびT-DXd 1サイクル終了後2~4日目における生検(8ペア)でのHER2発現量に応じた空間ゲノム応答をGeoMxで評価した。ベースライン時の生検(88例)とマッチさせた血液検体(83例)、病勢進行時の生検(20例)とマッチさせたベースライン時の検体(10例)を全エクソームシーケンスで解析し、1次および2次耐性を調べた。病勢進行時のHER2高発現患者の生検(6例)のT-DXd分布をIHCで評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・T-DXdに対するトランスクリプトノーム反応はHER2発現レベルにより異なっていた。
・ベースライン検体における再発ドライバー変異には耐性と関連しているものはなかった。ただし、ベースライン時の88例中5例(6%)にERBB2ヘミ接合型欠失が検出され、そのうち4例はT-DXdに反応がなかった。
・病勢進行時の検体で20例中4例(20%)にSLX4変異が検出された。2例がベースライン検体で検出されておらず、2例はベースライン時のサンプルがなかった。2つの乳がん細胞株で、SLX4欠失がDXdに対する耐性を媒介した。
・病勢進行時に6例中4例でT-DXdの取り込みがみられ、4例中2例でHER2発現が減少していた。

 これらの結果からMosele氏は、「ERBB2ヘミ接合型欠失はT-DXdの耐性と関連している可能性があり、SLX4はDXd耐性を誘発する可能性がある」と推察した。また、「HER2発現はT-DXd投与における病勢進行時に減少するが、T-DXdの取り込みが主要な耐性メカニズムであるという確固たるエビデンスはない」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

DAISY試験(Clinical Trials.gov)

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