TN乳がん1次治療でのペムブロリズマブ+化学療法、日本人でのOSとPFS(KEYNOTE-355)/日本乳癌学会

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 手術不能の局所再発/転移を有するPD-L1陽性(CPS≧10)のトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療で、ペムブロリズマブ+化学療法をプラセボ+化学療法と比較した国際共同第III相KEYNOTE-355試験において、無増悪生存(PFS)および全生存(OS)を有意に改善したことはすでに報告されている。また、本試験の日本人患者のサブグループ解析は、2019年12月11日のデータカットオフ時点の中間解析でPFSが全体集団と大きな乖離がなかったことが2020年の日本乳癌学会で発表されている。今回、2021年6月15日のデータカットオフ時点における日本人患者での有効性と安全性の結果について、聖マリアンナ医科大学の津川 浩一郎氏が第30回日本乳癌学会学術総会で発表した。

・対象:未治療の手術不能な局所再発/転移を有するPD-L1陽性のTN乳がん患者(18歳以上、PS 0/1)847例(日本人87例)
・試験群:ペムブロリズマブ+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンのいずれか)566例(日本人61例、うち2例が治療中)
・対照群:プラセボ+化学療法 281例(日本人26例)
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)とITT集団におけるPFSとOS
[副次評価項目]奏効率、奏効期間、病勢コントロール率、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時の特性について、日本人集団では全体集団に比べてPS 0が多かった。また、併用する化学療法はゲムシタビン/カルボプラチンが多く、周術期(術前・術後)化学療法とは異なる患者が多かった。
・OSについては、ハザード比(HR)がCPS≧10の患者群で0.36(95%CI:0.14~0.89)と全体集団と同様に改善を示した。CPS≧1の患者群では、全体集団では有意な改善が示されなかったが、日本人集団では0.52(同:0.30~0.91)と改善を認め、ITT解析でも0.46(同:0.28~0.77)と改善が認められた(注:国内での保険適用はCPS≧10の患者)。
・PFSのHRは、CPS≧10の患者群で0.52(同:0.20~1.34)、CPS≧1の患者群で0.61(同:0.35~1.06)、ITT集団で0.64(同:0.39~1.05)だった。
・Grade3~4の治療関連有害事象(AE)は、日本人集団でペムブロリズマブ群85.2%、プラセボ群84.6%に発現し、全体集団よりやや多かったが、いずれも管理可能だった。ペムブロリズマブ群のほうが多かったAEは、味覚異常、食欲低下、口内炎、皮膚炎などであった。

 これらの結果から、津川氏は「手術不能の局所再発/転移を有するPD-L1陽性のTN乳がんの日本人患者におけるペムブロリズマブ+化学療法が支持される」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

KEYNOTE-355試験(Clinicaltrials.gov)

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gBRCA変異陽性HER2-早期乳がんへの術後オラパリブ、日本人解析結果(OlympiA)/日本乳癌学会

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 gBRCA変異陽性、HER2陰性、再発高リスクの早期乳がん患者に対する術後薬物療法としてのオラパリブをプラセボと比較した国際共同第III相OlympiA試験において、主要解析(データカットオフ:2020年3月)で無浸潤疾患生存期間(iDFS)および遠隔無再発生存期間(DDFS)の有意な延長が示され、さらに第2回中間解析(データカットオフ:2021年7月)で全生存期間(OS)の有意な延長が示されている。今回、主要解析(データカットオフ:2020年3月)における日本人患者集団の有効性と安全性について、聖路加国際病院の山内 英子氏が第30回日本乳癌学会学術総会で発表した。

・対象:局所治療および6サイクル以上の化学療法が終了したgBRCA変異陽性、HER2陰性 (HR陽性またはトリプルネガティブ)の再発高リスクの早期乳がん患者 1,836例(日本人140例)
・試験群:オラパリブ(300mg、1日2回)を1年間投与 921例(日本人64例)
・対照群:プラセボ(1日2回)を1年間投与 915例(日本人76例)
・評価項目:
[主要評価項目]iDFS
[副次評価項目]DDFS、OS、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・患者背景は、日本人集団と全体集団とも両群間でバランスがとれていた。ただし、白金製剤を含む化学療法による前治療は、国内で承認されていないため海外とは大きな差があった。
・オラパリブによるIDFSのベネフィットは、日本人集団(HR:0.50、95%CI:0.18~1.24)と全体集団(HR:0.58、95%CI:0.46~0.74、p<0.0001)とで同様だった。
・オラパリブによるDDFSのベネフィットも、日本人集団(HR:0.41、95% CI:0.11~1.16)と全体集団(HR:0.57、95%CI:0.44~0.74、p<0.0001)とで同様だった。
・主なGrade3以上の有害事象は、貧血、好中球減少、白血球減少で、貧血については本研究では輸血を必要とした症例はなかった。
・日本人集団における有害事象の発現状況は、オラパリブにおける既知の安全性情報、全体集団と同様だった。

 山内氏は、「OlympiA試験は国別のサブグループ解析に対する検出力を有してなかったが、今回の日本人集団における有効性および安全性の結果は、gBRCA変異陽性HER2陰性再発高リスク早期乳がんの日本人患者における術後薬物療法としてのオラパリブの臨床的ベネフィットを裏付けるものであった」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

OlympiA試験(Clinicaltrials.gov)

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乳がん術後放射線治療の皮膚障害予防に、カテキン剤塗布が有望

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 乳がん患者にとってアンメットニーズとされている術後放射線治療による放射線皮膚障害(RID)について、緑茶に多く含まれるカテキン(epigallocatechin-3-gallate:EGCG)を主成分とした溶剤の予防的塗布が有効であることが示された。中国・山東第一医科大学のHanxi Zhao氏らによる第II相無作為化試験の結果で、EGCG溶液の予防的塗布により、RIDの発生率と重症度が大幅に低下したという。安全性プロファイルの忍容性も高かった。結果を踏まえて著者は、「RIDリスクがある乳がん患者にとって、便利で忍容性が高い有効な選択肢となる可能性がある」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年6月1日号掲載の報告。

 研究グループは、乳がん術後に放射線治療を受ける患者における、EGCG溶液塗布が、RIDの発生を抑制するかを調べる第II相二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。2014年11月~2019年6月に山東がん病院研究所で術後放射線治療を受ける180例が試験に登録された。

 被験者は2対1の割合で、放射線治療1日目~同治療完了後2週間まで、放射線の全照射野にEGCG溶液(660μmol/L)塗布を受ける群またはプラセボ(0.9%塩化ナトリウム溶液)塗布を受ける群に割り付けられ、追跡を受けた。データ解析は、2019年9月~2020年1月に行われた。

 主要評価項目は、Grade2以上(Radiation Therapy Oncology Groupスケールによる定義で、数値が大きいほど悪化)のRIDの発生率。副次評価項目は、RID指数(RIDI)、症状指数、赤外線サーモグラフィーで測定した皮膚温および安全性などであった。

 主な結果は以下のとおり。

・全適格患者180例のうち、165例(EGCG溶液塗布群111例、プラセボ群54例、年齢中央値46歳[範囲:26~67])が有効性の評価を受けた。
・Grade2以上のRID発生率は、プラセボ群(72.2%、95%信頼区間[CI]:60.3~84.1)よりEGCG群(50.5%、41.2~59.8)で有意に低かった(p=0.008)。
・EGCG群の平均RIDIは、プラセボ群よりも有意に低かった。さらに、症状指数もEGCG群で有意に低かった。
・EGCG治療関連の有害事象は4例(3.6%)で報告された。3例(2.7%)がGrade1の刺すような痛み、1例(0.9%)はかゆみであった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Zhao H, et al. JAMA Dermatol. 2022 Jun 1. [Epub ahead of print]

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ASCO2022オンデマンド配信中、特設サイトで注目演題レビューを配信

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 6月3日~7日(現地時間)まで、世界最大の腫瘍学会であるASCO2022(米国臨床腫瘍学会年次総会)が、米国シカゴとオンラインのハイブリッド形式で開催された。会期終了後の現在も、プレナリーセッションを含むほぼすべての演題のスライドと動画がASCOサイトで公開されている。

 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors’Picks」では、ASCO2022のスタートにあわせた特設サイトを公開。会期前にエキスパートから寄せられた「注目演題」を紹介するほか、会期終了後には各演題の結果を受けた追加コメントや、臓器別に結果をまとめたレビュー、ASCOでの発表と同時掲載された論文を紹介する記事などが集まっている。

 現在までにアップされているエキスパート医師が解説する、臓器別の注目演題レビューはこちら(リンク先のDoctors’Picksは医師会員限定)。

肺がん/国立がん研究センター中央病院・大熊 裕介氏

肺がんエキスパート向け/埼玉医科大学国際医療センター・山口 央氏

乳がん/国立がん研究センター中央病院・下井 辰徳氏

下部消化管/高知大学・佐竹 悠良氏

上部消化管/国立がん研究センター中央病院・加藤 健氏

 ASCOは次回2023年6月も、シカゴとオンラインのハイブリッド開催が予定されている。

(ケアネット 杉崎 真名)


【参考文献・参考サイトはこちら】

Doctors’Picks ASCO2022特設サイト

Doctors’Picks

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乳がん検出の違い、3Dマンモvs.デジタルマンモ/JAMA

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 乳がんスクリーニングにおける、デジタル乳房トモシンセシス(DBT)とマンモグラフィの検出の違いを比較した結果、浸潤性中間期乳がんリスクについては有意差が認められなかったが、「きわめて高濃度乳房で乳がんリスクが高い」女性(試験集団の3.6%)の進行乳がんリスク低下については有意な関連が示された。一方で、試験集団の96.4%の女性(非高濃度乳房、不均一な高濃度乳房、またはきわめて高濃度乳房だがリスクが高くない)で、有意差は観察されなかった。米国・カリフォルニア大学のKarla Kerlikowske氏らが、コホート研究の結果を報告した。DBTは女性の高濃度乳房のがん検出を改善することを期待して開発されたものだが、浸潤性中間期乳がんおよび進行乳がん、乳がん死亡と関連する中間アウトカムについて、高濃度乳房および乳がんリスク別に評価する研究が必要とされていた。JAMA誌2022年6月14日号掲載の報告。

浸潤性中間期乳がんと進行乳がんの発生率を高濃度乳房と乳がんリスクで検討

 研究グループは、米国乳がんサーベイランス・コンソーシアム(BCSC)の44施設において、2011~18年にデジタルマンモグラフィまたはDBTによるスクリーニングを受け、2019年まで州または地域のがん登録との連携によりがん診断の追跡調査を受けた、乳がんまたは乳腺切除の既往がない40~79歳の女性50万4,427例について解析した。

 BI-RADS分類(ほぼ全体が脂肪性、散在性(線維腺)、不均一な高濃度乳房、きわめて高濃度乳房の4区分)とBCSC 5年乳がんリスク指標(1.67%未満[乳がん低~平均リスク]、1.67%以上[乳がん高リスク]の2区分)を用い、マンモグラフィ検査後12ヵ月以内の浸潤性中間期乳がんおよび進行乳がん(病理学的ステージがII以上)の発生頻度(スクリーニング1,000件当たり)を、いずれも逆確率重み付け法により推定した。

 解析対象の女性50万4,427例におけるスクリーニング件数は、デジタルマンモグラフィが100万3,900件、DBTが37万5,189件で、マンモグラフィ検査時の年齢中央値は58歳(IQR:50~65)であった。

DBTとマンモグラフィで有意差なし、一部でDBTは進行乳がんのリスク低下に有用

 スクリーニング件数1,000件当たりの浸潤性中間期乳がんの発生率は、DBT vs.デジタルマンモグラフィの比較において有意差は認められなかった(全体でそれぞれ0.57 vs.0.61、群間差:-0.04、95%信頼区間[CI]:-0.14~0.06、p=0.43)。また、高濃度乳房で乳がん低~平均リスクの83万6,250件すべて、または乳がん高リスクの41万3,061件すべてにおいても、有意差は認められなかった。

 進行乳がんの発生頻度は、BI-RADS分類の「ほぼ全体が脂肪性」「散在性(線維腺)」「不均一な高濃度乳房」に該当する女性では、乳がん低~平均リスクまたは高リスクを問わず、DBTとマンモグラフィで有意差は確認されなかった。しかし、「きわめて高濃度乳房」で乳がん高リスクの女性(試験集団の3.6%)では、DBTのほうがマンモグラフィより有意に低かった(DBT群1万3,291件vs.マンモグラフィ群3万1,300件、1,000件当たり0.27 vs.0.80、群間差:-0.53[95%CI:-0.97~-0.10])。「きわめて高濃度乳房」で乳がん低~平均リスクの女性では、有意差は確認されなかった(1万611件vs.3万7,796件、0.54 vs.0.42、0.12[-0.09~0.32])。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Kerlikowske K, et al. JAMA. 2022;327:2220-2230.

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Luminal Aの低リスク乳がん患者、術後放射線療法を省略できる可能性(LUMINA)/ASCO2022

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 乳房温存術後、内分泌療法のみで治療された55歳以上のLuminal A(Ki67低値)、T1N0の女性乳がん患者では、5年局所再発リスクが非常に低く、放射線療法を省略できる可能性が示唆された。通常、術後放射線療法は局所再発リスクを減らすために実施されるが、急性および晩期毒性が報告されている。カナダ・マクマスター大学のTimothy Joseph Whelan氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で前向き多施設共同コホート研究の結果を報告した。

・対象:Luminal A(ER≧1%、PR>20%、HER2陰性)、≧55歳、切除マージン≧1mm、組織学的グレード1~2、内分泌療法歴と乳房温存術歴のあるT1N0浸潤性乳管がん患者
・試験デザイン:International Ki67 Working Groupの推奨に従い、免疫組織染色法でKi67を検出、Ki67≦13.25%の患者を試験に登録し、放射線療法なしの群に割り当てた
・治療とフォローアップ:内分泌療法はアロマターゼ阻害薬あるいはタモキシフェンを5年以上投与。はじめの2年は半年に一度、以降は年に1回のフォローアップを実施、また年1回のマンモグラフィを実施した
・評価項目:
[主要評価項目]局所再発(LR:浸潤がんもしくは非浸潤がん)
[副次評価項目]対側乳がん、いずれかの再発、全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)

 主な結果は以下のとおり。

・2013年8月~2017年7月まで、カナダの26施設から500例が解析対象とされた。追跡期間中央値は5年。
・ベースライン特性は、年齢中央値が67歳、腫瘍径中央値は1.1cm、組織学的グレード1が66%、内分泌療法はアロマターゼ阻害薬が59%だった。
・5年時点のLR率は2.3%(95%信頼区間[CI]:1.3~3.8)で、事前に設定された境界値(<5%)を満たした。
・5年時点の対側乳がん率は1.9%(95%CI:1.1~3.2)、いずれかの再発率が2.7%(95%CI:1.6~4.1)だった。
・5年OS率は97.2%(95%CI:95.9~98.4)、5年DFS率は89.9%(95%CI:87.5~92.2)だった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

LUMINA試験(Clinical Trials.gov)

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HER2低発現進行乳がん、T-DXdでPFSとOSが延長(DESTINY-Breast04)/NEJM

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 HER2低発現の再発・転移のある乳がん患者において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は医師選択の化学療法と比較し、無増悪生存(PFS)期間および全生存(OS)期間を有意に延長させることが、第III相臨床試験「DESTINY-Breast04試験」で示された。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのShanu Modi氏らが報告した。HER2の増幅や過剰発現を伴わない乳がんの中には、治療の標的となる低レベルのHER2を発現しているものが多く存在するが、現在用いられているHER2療法はこれら「HER2低発現」のがん患者には効果がなかった。NEJM誌オンライン版2022年6月5日号掲載の報告。

T-DXdの有効性および安全性を医師選択化学療法と比較

 研究グループは、2018年12月27日~2021年12月31日の期間に、1~2ラインの化学療法歴があるHER2低発現(IHCスコア1+、またはIHCスコア2+かつISH-)の再発・転移のある乳がん患者を、T-DXd群または化学療法群(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ナブパクリタキセルのいずれかを医師が選択)に、2対1の割合で無作為に割り付けた。

 主要評価項目は、盲検化独立中央評価委員会(BICR)判定によるホルモン受容体(HR)陽性患者におけるPFS、主要な副次評価項目は全例におけるPFS、HR陽性患者および全例におけるOSであった。

HR陽性例でも全例でも、T-DXdでPFSが約1.9倍、OSが約1.4倍に

 無作為化された患者557例のうち、494例(88.7%)がHR陽性、63例(11.3%)がHR陰性であった。

 HR陽性患者におけるPFS期間中央値はT-DXd群10.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.5~11.5)、化学療法群5.4ヵ月(4.4~7.1)であり(ハザード比[HR]:0.51、95%CI:0.40~0.64、層別log-rank検定のp<0.001)、OS期間中央値はそれぞれ23.9ヵ月(95%CI:20.8~24.8)、17.5ヵ月(15.2~22.4)であった(HR:0.64、95%CI:0.48~0.86、p=0.003)。

 また、全例におけるPFS期間中央値はT-DXd群9.9ヵ月(95%CI:9.0~11.3)、化学療法群5.1ヵ月(4.2~6.8)であり(HR:0.50、95%CI:0.40~0.63、p<0.001)、OS期間中央値はそれぞれ23.4ヵ月(20.0~24.8)、16.8ヵ月(14.5~20.0)であった(HR:0.64、95%CI:0.49~0.84、p=0.001)。

 Grade3以上の有害事象の発現率はT-DXd群52.6%、化学療法群67.4%であり、T-DXd群では薬剤関連間質性肺疾患/肺炎が12.1%(Grade5が0.8%)に発現した。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Modi S, et al. N Engl J Med. 2022 Jun 5. [Epub ahead of print]

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日本人乳がん患者におけるワクチン接種後の中和抗体価/ASCO2022

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 日本人乳がん患者における新型コロナワクチン2回接種後の中和抗体価が調べられ、95.3%と高い抗体陽転化率が示されたものの、治療ごとにみると化学療法とCDK4/6阻害薬治療中の患者で中和抗体価の低下が示唆された。名古屋市立大学の寺田 満雄氏らによる多施設共同前向き観察研究の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表された。

・対象:2021年5~11月にSARS-CoV-2ワクチン接種予定の乳がん患者(Stage 0~IV)
・試験群と評価法:がん治療法ごとに5群に分け(無治療、内分泌療法、CDK4/6阻害薬、化学療法、抗HER2療法)、最初のワクチン接種前と2回目ワクチン接種後(4週後)に血清サンプルを採取、ELISA法で血清中IgG濃度および各変異株に対する中和抗体価を評価した。
・評価項目:
[主要評価項目]2回目ワクチン接種4週後のSARS-CoV-2 Sタンパクに対する血清中IgG濃度
[副次評価項目]各治療群ごとのIgG濃度および抗体陽転化率、野生株・α・δ・κ・ο株に対する中和抗体価、がん治療への影響(休薬および減薬)

 主な結果は以下のとおり。

・全体で85例(無治療5例、内分泌療法30例、CDK4/6阻害薬14例、化学療法21例、抗HER2療法15例)が評価対象とされた。
・年齢中央値は62.5(21~82)歳、55.3%が早期乳がん・44.7%が進行あるいは転移を有する乳がん患者だった。新型コロナワクチンの種類は、76.5%がファイザー製・3.5%がモデルナ製だった。
・抗体陽転化率は全体で95.3%。治療法別にみると、無治療・内分泌療法・CDK4/6阻害薬・抗HER2療法では100%、化学療法のみ81.8%だった。
・化学療法群では、無治療群と比較して有意に血清中IgG濃度が低下していた(p=0.02)。
・各変異体に対する中和抗体価は、野生株に対する中和抗体価と比較し有意に低下していた。とくにο株に対しその傾向が強く、低下は治療法によらずみられた。
・CDK4/6阻害薬群では、無治療群と比較して野生株に対する中和抗体価(p<0.01)およびα株に対する中和抗体価(p<0.01)が有意に低下していた。
・化学療法群では、無治療群と比較して野生株に対する中和抗体価(p=0.001)、α株に対する中和抗体価(p<0.001)、およびκ株に対する中和抗体価(p=0.03)が有意に低下していた。
・ワクチン接種による副反応と関連した乳がん治療の休薬または減量はみられず、1例のみ副反応への懸念での休薬があった。

筆頭著者 名古屋市立大学寺田 満雄氏へのインタビュー
今回の結果をどのように解釈されていますか?

 おおむね健常者と同等のワクチン効果が得られることがわかり、この点は海外の過去の報告とも一致しています。一方で、CDK4/6阻害薬など現在乳がんでしか使われない治療薬にワクチンの効果を妨げる可能性がある薬剤があることもわかりました。また、変異株ごとに大きく異なる点も注目に値します。実際の感染防御にどれほど影響するかは本研究からはわかりませんが、今後のワクチン接種を考える上で重要なデータとなったと考えています。

乳がん患者のワクチン接種や感染予防について、今回の結果から示唆されたことは?
 効果の面でも、安全面でも今回の結果は、乳がん患者さんへのワクチン接種を支持するものとなりました。しかし、CDK4/6阻害薬や化学療法中では抗体がついたとしても中和抗体の力価としては弱い場合もあり、ワクチン接種後だとしても引き続き予防行動は重要であると言えます。

今後の課題、研究の見通しなどがあればお教えください。
 なぜCDK4/6阻害薬や化学療法中でワクチン効果が弱まることがあるのかについてはわかっていないことも多くあります。第30回日本乳癌学会学術総会(2022/7/2・土 厳選口演10)では、一部の患者さんでワクチンの効果が十分に得られなかった原因をもう少し考察したデータを発表予定です。がん患者における免疫不全は、COVID-19に限らず重要な課題でありますので、私自身も今後も研究を続けていきたいと思います。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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乳癌患者におけるSARS-CoV-2ワクチンの有効性と治療への影響を評価する前向き観察研究(UMIN000045527)

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オリゴ転移乳がん1次治療、SBRT/外科的切除追加でPFS改善せず(NRG-BR002)/ASCO2022

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 オリゴ転移乳がんの1次治療で、標準薬物療法に定位放射線治療(SBRT)もしくは外科的切除によるmetastases directed treatment(MDT)を追加しても、生存ベネフィットを得られないことが、第IIR/III相NRG-BR002試験で示された。米国・シカゴ大学のSteven J. Chmura氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。

 オリゴ転移乳がんに対しては、アブレーションにより無増悪生存(PFS)および全生存(OS)が改善されることが後ろ向き研究で示されているが、第III相試験のエビデンスはほとんどない。このNRG-BR002試験は、オリゴ転移乳がんの1次治療として、標準薬物療法にSBRT/外科的切除でのMDTを追加することによる生存へのベネフィットを検討した無作為化第IIR/III相試験である。

・対象:標準的画像診断で頭蓋外転移が4つ以下で、原疾患がコントロールされているオリゴ転移乳がん
・試験群(併用群):標準薬物療法(化学療法、内分泌療法、抗HER2療法)+全転移巣へのMDT
・対照群(薬物療法群):標準薬物療法のみ
・主要評価項目:第IIR相 PFS、第III相 OS

 主な結果は以下のとおり。

・第IIR相への登録は129例、うち125例が適格だった(薬物療法群:65例、併用群:60例)。年齢中央値54歳、転移数は1つが60%、ERおよび/またはPR陽性かつHER2陰性が79%、トリプルネガティブが8%だった。無作為化後の治療について、併用群におけるMDTはSBRT93%、外科的切除2%、プロトコール外の治療5%、標準薬物療法は薬物療法群で化学療法28%、内分泌療法83%、併用群で化学療法27%、内分泌療法68%だった。追跡期間中央値は35ヵ月。
・PFS中央値は、薬物療法群23ヵ月、併用群19.5ヵ月で差は認められなかった(HR:0.92、70%CI:0.71~1.17、片側log-rank p=0.36)。
・OS中央値は両群とも未達で、36ヵ月OSは薬物療法群71.8%(95%CI:58.9~84.7)、併用群68.9%(同:55.1~82.6)だった(片側log-rank p=0.54)。
・治療失敗に関する解析では、薬物療法群でのindex領域/併用群での照射領域以外の新たな転移の発生率はどちらも40%程度だった。また、これらの領域内での新たな転移は、併用群(7%)のほうが薬物療法群(29%)より少なかった。
・ベースライン時の循環腫瘍細胞の有無別にみたPFSは同程度だった(HR:1.04、95% CI:0.54~2.02)。
・治療関連有害事象は、Grade4が薬物療法群で1例、Grade3が薬物療法群で6例(10%)、併用群で3例(5%)に発現した。

 本試験では、MDT追加によるPFS改善を示すことができなかったため、第III相試験は中止される予定である。Chmura氏は「本試験で定義されたオリゴ転移乳がん患者はPFSおよびOSが長く、SBRTは標準薬物療法群と同様に安全で、有害事象発現率も低かった」と追加した。

(ケアネット 金沢 浩子)


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NRG-BR002試験(ClinicalTrials.gov)

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AI抵抗性進行乳がんへのフルベストラント+capivasertibがOS改善(FAKTION)/ASCO2022

提供元:CareNet.com

 アロマターゼ阻害薬(AI)抵抗性のエスロトゲン受容体(ER)陽性/HER2陰性進行・再発乳がん患者を対象としたAKT阻害薬capivasertibの第II相FAKTION試験について、新たな解析結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で英国・Velindre Cancer CentreのRobert Hugh Jones氏が発表した。

 今回の発表では、全生存期間(OS)データと次世代シークエンス(NGS)などを用いたゲノムバイオマーカー解析の結果が報告された。

・対象:閉経後のER+/HER-の進行・再発の乳がん患者で、前治療としてのアロマターゼ阻害薬(AI)が無効となった患者
・試験群(Capi群):capivasertib 400mgを4日間投与3日間休薬で1日2回経口投与(28日を1サイクルとして1サイクル目の15日目から開始)+フルベストラント500mg(1サイクル目の15日目に負荷用量を追加) 69例
・対照群(プラセボ群):プラセボ+フルベストラント500mg  71例
・評価項目:
[主要評価項目]ITT集団における無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目」ITT集団における全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性、PI3K/AKT/PTENシグナル伝達経路の遺伝子変異の有無別のPFS、ORR、CBR

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフ(2021年11月)時点での追跡期間中央値はCapi群58.5ヵ月、プラセボ群62.3ヵ月だった。
・ITT集団におけるPFS中央値は、Capi群10.3ヵ月vs.プラセボ群4.8ヵ月、HR:0.56(95%信頼区間[CI]:0.38~0.81、p=0.002)だった。
・ITT集団におけるOS中央値は、Capi群29.3ヵ月vs.プラセボ群23.4ヵ月、HR:0.66(95%CI:0.45~0.97、p=0.035)だった。
・新たな安全性シグナルは報告されなかった。
・NGSまたはddPCR、パイロシークエンス法を用いたゲノム追加解析が実施され、PI3K変異、AKT1 E17KもしくはPTEN不活性化変異を有するサブグループ(76例)と、上記変異のないサブグループ(64例)に分けて副次評価解析が行われた。
・前回解析では上記の変異を有する患者はITT集団の42%だったの対し、追加解析の結果は54%となり、前回解析で変異なしとされた20の腫瘍(25%)で変異が確認された。
・シグナル伝達経路に変異を有するサブグループにおけるPFS中央値はCapi群12.8ヵ月vs.プラセボ群4.6ヵ月、HR:0.44(95%CI:0.26~0.72、p=0.0014)、OS中央値は38.9ヵ月vs.20.0ヵ月、HR:0.46(95%CI:0.27~0.79、p=0.005)だった。
・シグナル伝達経路に変異のないサブグループにおけるPFS中央値はCapi群7.7ヵ月vs.プラセボ群4.9ヵ月、HR:0.70(95%CI:0.40~1.25、p=0.23)、OS中央値は26.0ヵ月vs.25.2ヵ月、HR:0.86(95%CI:0.49~1.52、p=0.60)だった。

 ITT集団におけるフルベストラントへのcapivasertibの追加を支持するOSデータが示された。Jones氏は、サブグループ解析の結果、PI3K/AKT/PTENシグナル伝達経路に遺伝子変異を有する患者におけるcapivasertib追加のベネフィットが示されたが、800例以上を対象に進行中の第III相CAPItello-291試験での解析結果が待たれるとした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

FAKTION試験(Clinical Trials.gov)

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