HER3-DXd、複数治療歴のあるHER3+乳がんでサブタイプによらず良好な結果/ASCO2022

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 既治療のHER3陽性、転移を有する乳がん(mBC)患者を対象とした、HER3標的抗体薬物複合体(ADC)patritumab deruxtecan(HER3-DXd)の日米多施設共同非盲検第I/II相試験(U31402-A-J101)の結果、HR+/HER2-およびHER2+、そしてTNBC患者において、HER3-DXdの有効性と安全性が示された。米国・ダナファーバーがん研究所のIan E. Krop氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。

 本試験では用量漸増フェーズ(HER3-DXd 1.6~8.0mg/kgを3週に1回静脈内投与)と用量設定フェーズを順に実施(HER2+12例を含む66例)。続いて行った用量拡大フェーズでは、HER3-high(膜陽性率≧75%)とHER3-low(膜陽性率25~75%)を定義し、サブタイプ別にそれぞれ用量が決められた。HER3-highのHR+/HER2-(6.4mg/kg:31例、4.8mg/kg:33例)、TNBC(6.4mg/kg:31例)、HER3-lowのHR+/HER2-(6.4mg/kg:21例)として、それぞれ3週に1回静脈内投与した。有効性および安全性は3つのフェーズのプール解析により評価された。

・対象:進行/切除不能または転移を有するHER3陽性乳がん患者(用量漸増&用量設定フェーズでは2~6ラインの化学療法歴および≧2の進行病変、用量拡大フェーズでは進行病変に対する1~2ラインの化学療法歴)
・有効性の評価:サブタイプ別に実施(HR+/HER2-:113例、TNBC:53例、HER2+:14例)
・安全性の評価:HER3-DXd4.8mg/kg投与群(48例)、6.4mg/kg投与群(98例)、全例(182例)について実施

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時点の年齢中央値はHR+/HER2-:55歳、TNBC:59歳、HER2+:58歳、日本からの参加は71%、87%、100%、進行病変への治療歴数中央値は6.0(2~13)、2.0(1~13)、5.5(2~11)と濃厚な治療歴を有していた。
・2021年8月16日のデータカットオフ時点で、追跡期間中央値は31.9ヵ月、治療期間中央値は5.9ヵ月だった。
・サブタイプ別の確定奏効率(ORR)は、HR+/HER2-:30.1%(95%信頼区間[CI]:21.8~39.4)、TNBC:22.6%(95%CI:12.3~36.2)、HER2+:42.9%(95%CI:17.7~71.1)だった。
・サブタイプ別の奏効持続期間(DOR)中央値は、7.2ヵ月(95%CI:5.3~NE)、5.9ヵ月(95%CI:3.0~8.4)、8.3ヵ月(95%CI:2.8~26.4)だった。
・サブタイプ別の無増悪生存期間(PFS)中央値は、7.4ヵ月(95%CI:4.7~8.4)、5.5ヵ月(95%CI:3.9~6.8)、11.0ヵ月(95%CI:4.4~16.4)だった。
・治療中止に関連したTEAEは、4.8mg/kg投与群で10.4%、6.4mg/kg投与群で8.2%、全例で9.9%だった。
・治療関連のILDは、4.8mg/kg投与群で2.1%、6.4mg/kg投与群で7.1%、全例で6.6%で発生したが、多くがGrade1~2(4.4%)だった。
・≧Grade3の好中球減少症、血小板減少症、白血球減少症は4.8mg/kg投与群に比べ6.4mg/kg投与群で多くみられたが、用量調整により管理可能であり、治療中止には関連しなかった。

 ディスカッサントを務めたフランス・Eugene Marquis CenterのVeronique C. Dieras氏は、予後不良の濃厚な治療歴を有する患者群においてHER3-DXdはサブタイプによらず有望な活性を示したとし、最適用量やHER3発現状況の影響等について、さらなる研究が必要とコメントした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

U31402-A-J101試験(Clinical Trials.gov)

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内分泌療法+CDK4/6阻害薬で増悪したHR+乳がん、内分泌療法切り替え+ribociclibが有用(MAINTAIN)/ASCO2022

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 転移を有するHR+/HER2-乳がんにおいて、CDK4/6阻害薬による治療で増悪した後、内分泌療法を別の薬剤に切り替えてribociclibを投与することにより、無増悪生存(PFS)に有意なベネフィットが得られたことが、無作為化試験で示された。米国・エモリー大学Winship Cancer InstituteのKevin Kalinsky氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。

 HR+/HER2-転移乳がんの標準療法であるCDK4/6阻害薬と内分泌療法との併用で増悪した患者において、内分泌療法を切り替えてCDK4/6阻害薬を継続する治療が有用である可能性が観察研究で示唆されているが、前向き無作為化試験は報告されていない。今回、多施設無作為化第II相試験であるMAINTAIN試験の結果が報告された。

・対象: CDK4/6阻害薬+内分泌療法で増悪したHR+/HER2-転移乳がんの男性もしくは閉経後女性
・試験群(ribociclib併用群):ribociclib+増悪前と異なる内分泌療法※60例
・対照群(プラセボ群):プラセボ+増悪前と異なる内分泌療法※59例
※アロマターゼ阻害薬を投与しフルベストラントを投与していなかった患者にはフルベストラント、フルベストラントを投与していた患者にはエキセメスタン
・評価項目:
[主要評価項目]PFS(無作為化から増悪または死亡までの期間)
[副次評価項目]全奏効率、クリニカルベネフィット率、安全性、腫瘍および血液マーカー

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフ時点(2022年1月4日)での追跡期間中央値は18.2ヵ月だった。
・評価可能例は119例で、プラセボ群の1例以外は女性、増悪前に投与されていたCDK4/6阻害薬は、パルボシクリブ103例(87%)、ribociclib 14例(12%)、アベマシクリブ2例(2%)だった。
・PFS中央値は、ribociclib併用群が5.29ヵ月(95%CI:3.02~8.12)で、プラセボ群2.76ヵ月(95%CI:2.66~3.25)に対して有意に延長した(HR:0.57、95%CI:0.39~0.95、p=0.006)。
・PFS率は、6ヵ月時点でribociclib併用群41.2%、プラセボ群23.9%、12ヵ月時点でribociclib併用群24.6%、プラセボ群7.4%だった。
・内分泌療法別のPFS中央値は、フルベストラント投与患者(99例)ではribociclib併用群が5.29ヵ月とプラセボ群2.76ヵ月に対して有意に改善した(HR:0.60、95%CI:0.39~0.94)。エキセメスタン投与患者(20例)では、ribociclib併用群5.36ヵ月、プラセボ群3.06ヵ月(HR:0.41、95%CI:0.14~1.24)だった。
・全奏効率は、ribociclib併用群20%、プラセボ群11%(p=0.51)、クリニカルベネフィット率はribociclib併用群43%、プラセボ群25%(p=0.06)だった。
・ribociclib併用群におけるGrade3以上の主な治療関連有害事象は好中球減少症(40%)で、管理可能な安全性プロファイルを示した。

 最後にKalinsky氏は、探索的解析として、フルベストラント投与患者ではESR1野生型のみにribociclib併用群のPFSベネフィットがみられたという結果を提示したが、「ESR1変異型の症例が少なく、またCCND1およびFGFR1の増幅を示す患者の割合が高く、これらのデータは仮説を生み出すものだ」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

MAINTAIN試験(ClinicalTrials.gov)

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ER+進行乳がん1次治療、パルボシクリブ+レトロゾールのOSの結果は?(PALOMA-2)/ASCO2022

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 ER+/HER2-進行乳がんの1次治療として、パルボシクリブ+レトロゾールをプラセボ+レトロゾールと比較した第III相PALOMA-2試験において、副次評価項目である全生存期間(OS)は有意な改善が示されなかったことが報告された。米国・David Geffen School of Medicine at UCLAのRichard S. Finn氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。

 PALOMA-2試験では、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が示されている(追跡期間中央値23ヵ月でのPFS中央値:24.8ヵ月vs.14.5ヵ月、ハザード比[HR]:0.58、p<0.001)。PFSの最終解析時、OSデータは必要なイベント数(層別log-rank検定で0.74未満のHR検出に390イベント必要)に達しておらず、2021年11月に必要イベント数に達したことからOSの最終解析を実施した。

・対象:進行がんに対する治療歴のないER+/HER2-進行乳がんの閉経後女性 666例
・試験群(パルボシクリブ群):パルボシクリブ+レトロゾール 444例
・対照群(プラセボ群):プラセボ+レトロゾール 222例
・評価項目:
[主要評価項目]PFS
[副次評価項目]OS、奏効率、安全性、バイオマーカー、患者報告アウトカム

 主な結果は以下のとおり。

・OS中央値は、パルボシクリブ群53.9ヵ月(95%CI:49.8~60.8)、プラセボ群51.2ヵ月(95%CI:43.7~58.9)だった(HR:0.956、95% CI:0.777~1.177、片側p=0.3378)。
・同意撤回/追跡不能により生存データが得られなかった患者(パルボシクリブ群13%、プラセボ群21%)を除外した事後感度分析では、OS中央値はパルボシクリブ群51.6ヵ月(95%CI:46.9~57.1)、プラセボ群44.6ヵ月(95%CI:37.0~52.3)だった(HR:0.869、95%CI:0.706~1.069)。
・化学療法までの期間の中央値は、パルボシクリブ群38.1ヵ月(95%CI:34.1~42.2)、プラセボ群29.8ヵ月(95%CI:24.7~34.8)だった(HR:0.730、95%CI:0.607~0.879)。
・PALOMA-1試験とPALOMA-2試験を合わせたOS中央値(追跡期間中央値90ヵ月)は、パルボシクリブ群51.8ヵ月、プラセボ群46.8ヵ月で、HRは0.934(95%CI:0.780~1.120)だったが、無病生存期間12ヵ月超のサブグループでは、パルボシクリブ群64.0ヵ月、プラセボ群44.6ヵ月で、HRは0.736(95%CI:0.551~0.982)であった。

 Finn氏は、「OSは数値的には改善したが、統計学的に有意ではなかった。しかしながら、この集団におけるOS中央値が50ヵ月以上であることはHR+乳がんの臨床経過において意味のある改善を示すものであり、それは無病生存期間12ヵ月超の患者で強調される」と述べた。さらに、「PALOMA-2試験では生存データが得られなかった患者の割合が大きく、また2つの群に偏りがあったことで、OSの解釈は限られる」と考察した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

PALOMA-2試験(ClinicalTrials.gov)

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進行乳がん治療のパラダイムシフト、HER2低発現患者でT-DXdがPFSを大きく改善(DESTINY-Breast04)/ASCO2022

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 HER2低発現で既治療の進行乳がん患者に対し、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が治験医師選択の化学療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。従来HER2陰性に分類されてきた転移を有する乳がん(mBC)患者の約55%がHER2低発現に該当すると報告されている1)。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのShanu Modi氏が第III相DESTINY-Breast04試験の結果を米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。なお同結果は6月5日、New England Journal of Medicine誌に掲載された2)。

・対象:HER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)、1~2ラインの化学療法歴のある切除不能および/または転移を有する乳がん患者(ホルモン受容体陽性[HR+]の場合は内分泌療法抵抗性) 557例
 以下の2群に2対1の割合で無作為に割り付け
・試験群(T-DXd群):T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 373例
・対照群(TPC群):治験医師選択の化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ナブパクリタキセルのいずれか) 184例
・層別化因子:HER2発現状態(IHC 1+ vs.IHC 2+/ISH-)、化学療法歴、ホルモン受容体の状態、CDK4/6阻害薬による治療歴
・評価項目:
[主要評価項目]HR+患者における盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)
[主要副次評価項目]全例におけるBICRによるPFS、HR+患者および全例における全生存期間(OS)
[その他の評価項目]客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性、HR-患者の探索的解析
 
 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時点での患者特性は、年齢中央値:T-DXd群58歳vs.TPC群56歳、アジアからの参加:39% vs.36%、IHC 1+:両群で58%、HR+:89% vs.90%、化学療法歴(1ライン):59% vs.54%、CDK4/6阻害薬による治療歴:64% vs.65%だった。
・データカットオフ(2022年1月11日)時点での追跡期間中央値は18.4ヵ月。
・HR+患者におけるPFS中央値は、T-Dxd群10.1ヵ月vs.TPC群5.4ヵ月、ハザード比[HR]:0.51(95%信頼区間[CI]:0.40~0.64、p<0.0001)でT-Dxd群で有意に改善した。
・全例におけるPFS中央値は、9.9ヵ月vs.5.1ヵ月、HR:0.50(95%CI:0.40~0.63、p<0.0001)でT-Dxd群で有意に改善した。
・HR+患者におけるOS中央値は、23.9ヵ月vs.17.5ヵ月、HR:0.64(95%CI:0.48~0.86、p=0.0028)でT-Dxd群で有意に改善した。
・全例におけるOS中央値は、23.4ヵ月vs.16.8ヵ月、HR:0.64(95%CI:0.49~0.84、p=0.0010)でT-Dxd群で有意に改善した。
・探索的評価項目であるHR-患者におけるPFS中央値は8.5ヵ月vs.2.9ヵ月でHR:0.46(95%CI:0.24~0.89)、OS中央値は18.2ヵ月vs.8.3ヵ月でHR:0.48(95%CI:0.24~0.95)だった。
・HER2発現状態、CDK4/6阻害薬治療歴の有無を含むすべてのサブグループで、T-Dxdによるベネフィットが観察された。
・HR+患者におけるORRはT-Dxd群52.6% vs.TPC群16.3%、DORは10.7ヵ月vs.6.8ヵ月。HR-患者におけるORRは50.0% vs.16.7%、DORは8.6ヵ月vs.4.9ヵ月だった。
・Grade3以上のTEAEはT-Dxd群53% vs.TPC群67%で発生した。
・治療期間中央値はT-Dxd群8.2ヵ月vs.TPC群3.5ヵ月、治療中止と関連したTEAEで最も一般的だったのはT-Dxd群がILD/肺炎(8.2%)、TPC群が末梢感覚神経障害(2.3%)だった。
・T-Dxd群におけるILD/肺炎はGrade1が3.5%、Grade2が6.5%、Grade3が1.3%、Grade5が0.8%だった。

 Modi氏は、mBC患者全体の最大約50%がHER2低発現に該当すると考えられるとし、今回の結果は新たな治療標的となる患者群を明らかにするとともに、T-DXdがその標準治療となることを示したと結論付けている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1)Tarantino P,et al. J Clin Oncol. 2020 Jun 10;38:1951-1962.

2)Modi S, et al. N Engl J Med. 2022 Jun 5. [Epub ahead of Print]

DESTINY-Breast04試験(Clinical Trials.gov)

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抗体薬物複合体SG、複数治療歴のあるHR+転移乳がんでもPFS改善(TROPiCS-02)/ASCO2022

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 内分泌療法、CDK4/6阻害薬、化学療法による複数の治療歴があるHR+/HER2-転移乳がん患者に対して、抗TROP2抗体薬物複合体sacituzumab govitecan(SG)が、医師選択治療(TPC)に比べ有意に無増悪生存期間(PFS)を改善したことが、第III相TROPiCS-02試験で示された。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)で発表した。

 欧米では、SGは2種類以上の前治療歴を有する転移のあるトリプルネガティブ乳がんに対して承認されている。HR+/HER2-進行乳がんに対しては、第I/II相IMMU-132-01試験において、客観的奏効率(ORR)31.5%、PFS中央値5.5ヵ月、全生存期間(OS)中央値12ヵ月、管理可能な安全性プロファイルが確認されている。今回、HR+/HER2-転移乳がんに対する第III相TROPiCS-02試験の結果が報告された。

・対象:HR+/HER2-の転移または局所進行した切除不能の乳がんで、転移後に内分泌療法またはタキサンまたはCDK4/6阻害薬による治療歴が1ライン以上、化学療法による治療歴が2~4ラインの成人患者
・試験群:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静注
・対照群:TPC(カペシタビン、エリブリン、ビノレルビン、ゲムシタビンから選択)
・評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会によるPFS
[副次評価項目]OS、ORR、奏効持続期間(DOR)、クリニカルベネフィット率(CBR)、患者報告アウトカム、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフ時点(2022年1月3日)で、SG群272例、TPC群271例であった。内臓転移例は両群共に95%、転移後の6ヵ月以上の内分泌療法歴は両群共に86%、CDK4/6阻害薬治療歴は12ヵ月以下ではSG群59%、TPC群61%、12ヵ月超ではSG群39%、TPC群38%、化学療法歴の中央値は両群共に3ラインだった。
・PFS中央値はSG群5.5ヵ月、TPC群4.0ヵ月とSG群で改善し(HR:0.66、95%CI:0.53~0.83、p=0.0003)、6ヵ月PFS率は順に46.1%、30.3%、12ヵ月PFS率は21.3%、7.1%であった。サブグループ解析では、化学療法歴3ライン以上、内臓転移あり、65歳以上を含めて、SG群のPFSベネフィットが示された。
・OSは、SG群13.9ヵ月、TPC群12.3ヵ月で有意差はなかったが(HR:0.84、95%CI:0.67~1.06、p=0.14)、今回は1回目の中間解析(全3回予定)であり、まだデータがmatureではなく現在フォローアップ中である。
・ORRはSG群21%、TPC群14%(オッズ比:1.63、p=0.03)、CBRはSG群34%、TPC群22%(オッズ比:1.84、p=0.002)とどちらもSG群で高く、DOR中央値はSG群7.4ヵ月、TPC群5.6ヵ月であった。
・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は全体でSG群74%、TPC群60%で、最も多かったのは好中球減少症(SG群51%、TPC群38%)と下痢(9%、1%)だった。SGの安全性プロファイルはこれまでの試験と同様であった。間質性肺疾患はSG群ではみられず(TPC群1%)、心機能不全および左室機能不全は両群共にみられなかった。

 今回の結果から、Rugo氏は「複数の治療歴があり治療選択肢が限られている乳がん患者において、SGは統計学的に有意で臨床的に意味のあるベネフィットを示し、可能な治療選択肢として考慮されるべき」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

TROPiCS-02試験(ClinicalTrials.gov)

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メトホルミン、非糖尿病の浸潤性乳がんに無効-MA.32試験/JAMA

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 糖尿病のない高リスクの切除可能な乳がん患者の術後補助療法において、ビグアナイド系経口血糖降下薬メトホルミンはプラセボと比較して、無浸潤疾患生存率を改善せず、全生存や遠隔無再発生存、乳がん無再発期間にも差はなく、Grade3以上の非血液毒性の頻度が高いことが、カナダ・トロント大学のPamela J. Goodwin氏らが実施した「MA.32試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年5月24・31日号に掲載された。

4ヵ国の医師主導型無作為化第III相試験

 MA.32試験は、非糖尿病の浸潤性乳がん患者における術後補助療法へのメトホルミン追加の有効性の評価を目的とする、医師主導の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2010年8月~2013年3月の期間に、4ヵ国(カナダ、スイス、米国、英国)の施設で参加者の登録が行われた(Canadian Cancer Society Research Institute[CCSRI]などの助成を受けた)。

 対象は、年齢18~74歳、過去1年以内に診断されたT1~T3/N0~N3/M0(T1aN0とT1bN0を除く)の乳がんで、切除術後に標準的な術後補助療法を受けており、空腹時血糖値≦126mg/dLの患者であった。被験者は、メトホルミン(850mg、1日2回)またはプラセボを5年間経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要アウトカムは、ホルモン受容体陽性(エストロゲン受容体[ER]またはプロゲステロン受容体[PgR]、あるいはこれら双方が陽性)例における無浸潤疾患生存とされた。無浸潤疾患生存は、無作為化の時点から、局所、領域、遠隔での浸潤性病変の再発、新規の原発性浸潤性病変(乳房または乳房以外)、死亡(乳がん、乳がん以外のがん、不明な原因)のうち、最も早く発現したイベントまでの期間と定義された。

 また、8つの副次アウトカムのうち、3つ(全生存、遠隔無再発生存、乳がん無再発期間)の評価が行われた。

中間解析で、ER/PgR陰性例での無益性を確認

 3,649例(平均年齢52.4歳、女性3,643例[99.8%])が登録され、全例が解析に含まれた。2回目の中間解析で、ER/PgR陰性例における無益性が示されたため、主解析はER/PgR陽性例(2,533例)で行われた。ER/PgR陽性例の追跡期間中央値は96.2ヵ月(範囲:0.2~121)であった。

 無浸潤疾患生存のイベントは、ER/PgR陽性例のうち465例で発現した。イベント発生率は、100人年当たりメトホルミン群が2.78と、プラセボ群の2.74と比較して有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.01、95%信頼区間[CI]:0.84~1.21、p=0.93)。また、死亡の発生率は、100人年当たりメトホルミン群が1.46、プラセボ群は1.32であり、全生存率にも両群間に差はなかった(1.10、0.86~1.41、p=0.47)。

 一方、ER/PgR陰性例の追跡期間中央値94.1ヵ月の時点における無浸潤疾患生存イベントの発生率は、100人年当たりメトホルミン群が3.58、プラセボ群は3.60であった(HR:1.01、95%CI:0.79~1.30、p=0.92)。全生存率にも差はなかった(0.89、0.64~1.23、p=0.46)。

 また、ER/PgR陽性例における遠隔無再発生存率(HR:0.99、95%CI:0.80~1.23、p=0.94)、乳がん無再発期間(0.98、0.80~1.20、p=0.87)にも統計学的に有意な差はみられなかった。

 なお、探索的解析では、ERBB2(以前はHER2またはHER2/neuと呼ばれた)陽性例で、無浸潤疾患生存率(HR:0.64、95%CI:0.43~0.95、p=0.03)および全生存率(0.54、0.30~0.98、p=0.04)が、メトホルミン群で有意に良好であった。

 Grade3以上の非血液毒性が、メトホルミン群で高頻度に認められた(21.5% vs.17.5%、p=0.003)。最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、高血圧(2.4% vs.1.9%)、月経不順(1.5% vs.1.4%)、下痢(1.9% vs.0.8%)であった。

 著者は、「これらの知見を糖尿病患者へ外挿する際は、糖尿病と非糖尿病で代謝状態(たとえば、血糖コントロール、インスリン抵抗性、肥満)が異なるため注意を要する。また、メトホルミンは2型糖尿病に有効であるため、今回の結果は、乳がん患者における糖尿病治療薬としてのメトホルミンの使用には影響を与えないと考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Goodwin PJ, et al. JAMA. 2022;327:1963-1973.

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F1CDx、非小細胞肺がんと悪性黒色腫の4薬剤のコンパニオン診断追加承認/中外

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 中外製薬は2022年6月3日、遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」について、チロシンキナーゼ阻害薬ダコミチニブ(製品名:ビジンプロ)およびブリグチニブ(製品名:アルンブリグ)の非小細胞肺がん、ならびにBRAF阻害薬エンコラフェニブ(製品名:ビラフトビ)およびMEK阻害薬ビニメチニブ(製品名:メクトビ)の悪性黒色腫の適応に対するコンパニオン診断として、6月2日に厚生労働省より承認を取得した。

 下線部が今回の追加適応

活性型EGFR遺伝子変異非小細胞肺がん:アファチニブマレイン酸塩、エルロチニブ
塩酸塩、ゲフィチニブ、オシメルチニブメシル酸塩、ダコミチニブ水和物
EGFRエクソン20 T790M 変異:オシメルチニブメシル酸塩
ALK融合遺伝子:アレクチニブ塩酸塩、クリゾチニブ、セリチニブ、ブリグチニブ
ROS1融合遺伝子:エヌトレクチニブ
METエクソン14スキッピング変異:カプマチニブ塩酸塩水和物
BRAF V600Eおよび V600K変異:悪性黒色腫 ダブラフェニブメシル酸塩、トラメチニブ
ジメチルスルホキシド付加物、ベムラフェニブ、エンコラフェニブビニメチニブ
HER2遺伝子増幅陽性乳がん:トラスツズマブ
KRAS/NRAS野生型結腸・直腸がん:セツキシマブ、パニツムマブ
・高頻度マイクロサテライト不安定性結腸・直腸がん:ニボルマブ
・高頻度マイクロサテライト不安定性固形がん:ペムブロリズマブ
・腫瘍遺伝子変異量高スコア固形がん:ペムブロリズマブ
NTRK1/2/3融合遺伝子固形がん:エヌトレクチニブ、ラロトレクチニブ硫酸塩
BRCA1/2遺伝子変異卵巣がん:オラパリブ
BRCA1/2遺伝子変異 前立腺がん:オラパリブ
FGFR2融合遺伝子 胆道がん:ペミガチニブ

(ケアネット)


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「がんゲノム医療の現状と未来」国際WEBカンファレンス開催/日本乳がん情報ネットワーク

提供元:CareNet.com

 日本乳がん情報ネットワーク(JCCNB)では2022年6月25日、「Cancer genome medicineの現状と将来展望」と題した国際WEBカンファレンスを開催する。米国臨床腫瘍学会(ASCO)CEOのClifford A. Hudis氏による基調講演のほか、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)のWilliam Gradisher氏による「NCCN ガイドラインの最新情報」などのミニレクチャー、米国・欧州・アジア・オセアニアを繋いだライブでのパネルディスカッションが予定されている。

<JCCNB Conference 2022 開催概要>
主催:日本乳がん情報ネットワーク(JCCNB)
テーマ:Cancer genome medicineの現状と将来展望
開催日:2022年6月25日(土)17:00~21:30
会議形式:WEB配信(録画・ライブ)
参加費:10,000円
プログラム:
17:00~17:05 「開会」 Dr.中村 清吾(昭和大学臨床ゲノム研究所)
17:05~18:00 「基調講演」 Dr. Clifford Hudis(ASCO)
18:00~18:05 「Introduction」Dr. Robert Carlson(NCCN)
18:05~18:20 「NCCN ガイドラインの最新情報」Dr. William Gradisher(Northwestern University)
18:20~18:35 「トリプルネガティブ乳がんにおける最近の話題」Dr. Mellinda Telli(Stanford University School of Medicine)
18:35~18:50 「外科医の視点」Dr. Emiel Rutgers(EBC council)
18:50~19:05 「腫瘍内科医の視点」Dr. Barbara Pistilli(Gustave Roussy Cancer Center)
19:05~19:20 「がん治療における免疫療法の新パラダイム」Dr. Gianpaolo Biancini(Ospedale San Raffaele)
19:20~20:00 休憩
20:00~21:30 パネルディスカッション(座長:Dr. Clifford Hudis・Dr. 中村清吾)
パネルディスカッション参加予定者:Dr. Robert Carlson、Dr. William Gradisher、Dr. Mellinda Telli、Dr. Emiel Rutgers、Dr. Barbara Pistilli、Dr. Gianpaolo Biancini、Dr. Wonshik Han(Seoul National University Hospital)、Dr. Tan Puay Hoon(Singapore General Hospital)、Dr. Bruce Mann(Victorian Comprehensive Cancer Centre)

 詳細、ならびに事前参加登録はこちら

(ケアネット)


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ASCO2022スタート!注目演題を特設サイトでチェック

提供元:CareNet.com

 6月3日~7日(現地時間)まで、世界最大の腫瘍学会であるASCO2022(米国臨床腫瘍学会年次総会)が、米国シカゴとオンラインのハイブリッド形式で開催される。新型コロナ感染拡大の影響でにより、2年間オンラインのみの開催だったが、今年は久しぶりに現地に世界のオンコロジストが集うこととなり、各種カンファレンスや交流会なども多く企画されている。

 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors’Picks」(医師会員限定)では、ASCO2022のスタートにあわせ、数千を超す演題の中から、複数のエキスパートが選定した「注目演題」をピックアップ。学会期間中にオープンする特設サイトにおいて、「肺がん」「消化器がん」「乳がん」「泌尿器がん」「血液がん」のがん種別に、コメントとともに紹介している。

 学会終了後は、視聴レポートやまとめ記事なども続々アップしていく予定だ。

Doctors’Picks ASCO2022特設サイト
Doctors’Picks【医師会員限定】

(ケアネット 杉崎 真名)


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HR+/HER2-乳がんへの術前ニボルマブ+パルボシクリブ+アナストロゾール、安全性データを発表(CheckMate 7A8)/ESMO BREAST 2022

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 ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)乳がん患者に対する術前療法としての、ニボルマブ+パルボシクリブ+アナストロゾールの3剤併用は、主に肝毒性による安全性上の懸念から組み入れが停止され、無作為化試験には進まないことが報告された。前臨床試験では免疫チェックポイント阻害薬とCDK4/6阻害薬の相乗効果の可能性が示唆されていた。米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で第Ib/II相CheckMate 7A8試験の安全性確認期間における安全性データおよび予備的有効性データを報告した。

[CheckMate 7A8試験]
・対象:新たにHR+/HER2−乳がんと診断された閉経後女性あるいは男性(腫瘍径≧2cm、ECOG PS 0~1)
・試験群1(9例):ニボルマブ480mgを4週間間隔で静脈内投与+パルボシクリブ125mgを1日1回経口投与(3週間)後1週間休薬+アナストロゾール1mgを1日1回経口投与×5サイクル
・試験群2(12例):ニボルマブ480mgを4週間間隔で静脈内投与+パルボシクリブ100mgを1日1回経口投与(3週間)後1週間休薬+アナストロゾール1mgを1日1回経口投与×5サイクル
・評価項目:
[主要評価項目]用量制限毒性(DLT:治療開始後最初の4週間に発生した治療に起因する有害事象)
[副次評価項目]安全性、病理学的完全奏効(pCR)、奏効率(ORR)

 主な結果は以下のとおり。

・主なGrade≧3の治療関連AE(TRAE)は、試験群1ではALT上昇(33.3%)、AST上昇(33.3%)、好中球減少症(22.2%)、白血球数減少(22.2%)、試験群2では好中球数減少(41.7%)、好中球減少症(16.7%)だった。両群で治療関連の死亡は報告されていない。
・DLTは、試験群1では9例中2例で報告され(22.2%)、1例は肝炎、もう1例は発熱性好中球減少症だった。試験群2では報告されていない。
・両群の全21例中9例で毒性により治療が中止された。6例(29%)はGrade≧3の肝臓のAE(ALT上昇とAST上昇:2例、ALT上昇:1例、トランスアミナーゼ上昇:2例、高トランスアミナーゼ血症:1例)、Grade≧3の発疹とGrade2の免疫介在性肺障害、Grade1の肺臓炎、Grade3の発熱性好中球減少症が1例ずつだった。
・pCRが得られたのは試験群2の1例で、全体としてpCR率は4.8%。CRは1例、PRは14例で、放射線画像評価によるORRは、71.4%だった。

 Tolaney氏は、今回の結果と文献上の他データに基づくと、抗PD-1薬とCDK4/6阻害薬の併用は、肝毒性および肺毒性のリスク増加のため、安全な使用は難しい可能性があるとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

CheckMate 7A8試験(Clinical Trials.gov)

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