LINEを用いた乳がんのePRO、副作用の効率的な収集に成功/慶應義塾大学

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 慶應義塾大学医学部は、2022年4月12日、同外科学教室の林田 哲氏、北川 雄光氏、同医療政策・管理学教室の宮田 裕章氏、帝京大学医学部外科学教室の神野 浩光氏らの研究グループが開発した、LINEを利用して乳がん患者の健康状態や薬物の副作用情報を収集するePRO(electronic Patient Reported Outcome:電子的な患者報告アウトカム)取得システムが、効率的な情報収集をしたことを明らかにした。

 このePROの取得システムでは、患者のLINEアプリケーションへメッセージが定期的に送信される。患者が簡単なタップ操作でメッセージに返答すると、管理者は、がん治療薬の副作用重症度を国際的指標(PRO-CTCAE)形式で把握することができる。

 同システムのフィージビリティ試験として、乳がんの薬物療法を受けている患者にシステムを提供し、利用の継続性や患者情報が良好に取得可能であるかを検討した。

 その結果、LINE経由での質問に対する利用者の回答数・回答率は、専用アプリケーションを用いた海外の同様の研究と比較してきわめて高く、また60歳を超える患者も良好な利用・継続が可能であった。

 LINEを用いたePROの取得システムは、抗がん剤による重篤な副作用を未然に把握するなど、より安全・安心な新しい形の医療を提供できる可能性が考えられる。

 同研究成果は、2022年3月12日にCancer Science誌オンライン版に掲載された。

(ケアネット 細田 雅之)


【参考文献・参考サイトはこちら】

Cancer Science誌記事

慶応義塾大学プレスリリース

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HR+/HER2-早期乳がん、21遺伝子アッセイと内分泌療法反応性による治療ガイドは有用か/JCO

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 ドイツ・West German Study Group(WGS)によるWSG-ADAPT HR+/HER2-試験において、再発スコアと内分泌療法への反応に基づく薬物療法のガイドが臨床で実行可能であり、リンパ節転移3個以下の閉経前および閉経後患者は化学療法なしですむことが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年4月11日号に掲載。

 本試験では、早期乳がんの薬物療法について、21遺伝子アッセイ(再発スコア)と3週間の術前内分泌療法への反応の組み合わせによるガイドを検討した。ベースラインと内分泌療法後のKi67については中央で評価した。

・対象:病理学的局所リンパ節転移(pN)0~1(リンパ節転移0~3個)の乳がん患者
・試験群:再発スコア12~25点で、内分泌療法に反応した(内分泌療法後のKi67が10%以下)患者
・対照群:再発スコア11点以下の患者
試験群、対照群とも内分泌療法のみ実施。上記以外の患者(内分泌療法に反応しなかったN0~1、再発スコア12~25点の患者を含む)は、dose-dense化学療法後、内分泌療法を受けた。
・評価項目
[主要評価項目]5年無浸潤疾患生存期間(iDFS)
[副次評価項目]遠隔DFS、全生存率(OS)など

 主な結果は以下のとおり。

・ITT集団は2,290例(試験群1,422例、対照群868例)、閉経前女性は試験群26.3%、対照群34.6%、pN1は試験群27.4%、対照群24.0%だった。
・5年iDFS差の片側95%下方信頼限界は-3.3%で、事前設定による非劣性が認められた(p=0.05)。
・5年iDFSは、試験群92.6%(95%CI:90.8〜94.0)、対照群93.9%(95%CI:91.8〜95.4)、5年遠隔DFSは、試験群95.6%、対照群96.3%、5年OSは、試験群97.3%、対照群98.0%だった。年齢とリンパ節転移別のサブグループにおいても結果は同様だった。
・N0~1、再発スコア12~25点の患者では、内分泌療法に反応した患者(内分泌療法のみ実施)の結果は、50歳超では内分泌療法に反応しなかった患者(化学療法実施)の結果と同等であり、50歳以下では優っていた。
・アロマターゼ阻害薬(主に閉経後女性)がタモキシフェン(主に閉経前女性)に比べて内分泌療法への反応が高かった(78.1% vs.41.1%、p<0.001)。
・内分泌療法に反応したのは、再発スコアが0~11点で78.8%、12~25点で62.2%、25点超で32.7%だった(4,203例、p<0.001)。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Nitz UA, et al. J Clin Oncol. 2022 Apr 11. [Epub ahead of print]

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乳がん術前・術後補助療法、乳がん死亡率とその他の死亡率への影響~系統的レビュー

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 乳がん治療における術前補助療法や術後補助療法は、乳がんによる死亡率を低下させる可能性がある一方、乳がん以外による死亡率を増加させる可能性がある。今回、英国・オックスフォード大学のAmanda J. Kerr氏らが系統的レビューを実施したところ、ほとんどの比較試験で、がんによる死亡率または再発率が10〜25%減少し、乳がん以外による死亡率の増加はみられなかったが、アントラサイクリンでの化学療法と放射線療法については乳がん以外による全死亡率が増加していた。Cancer Treatment Reviews誌オンライン版2022年3月4日号に掲載。

 本レビューでは、ガイドラインを検索し、早期浸潤性乳がんで推奨されている術前・術後補助療法を特定。各治療において最も高いレベルのエビデンスを、系統的に文献検索した。

 主な結果は以下のとおり。

・米国やその他の国において、化学療法(アントラサイクリン、タキサン、プラチナ、カペシタビン)、抗HER2療法(トラスツズマブ、ペルツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、ネラチニブ)、内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、卵巣摘出/卵巣機能抑制)、ビスホスホネートなどの治療が推奨されていた。
・放射線療法の選択肢として、乳房温存術後において全乳房照射・乳房部分照射・腫瘍床ブースト照射・局所リンパ節照射、乳房切除術後において胸壁照射・局所リンパ節照射があった。
・推奨されている治療選択は、無作為化比較試験(1万例超の試験が8件、1,000〜1万例の試験が15件、1,000人未満での試験が1件)で支持されていた。
・ほとんどの比較試験で、乳がんによる死亡率または再発率が10〜25%減少し、乳がん以外による死亡率は増加しなかった。
・アントラサイクリンでの化学療法と放射線療法は、乳がん以外による全死亡率を増加させた。アントラサイクリンリスクは心疾患と白血病によるものだった。
・放射線リスクは主に心疾患、肺がん、食道がんによるものであり、心臓、肺、食道の放射線量の増加に伴い、それぞれの疾患が増加した。
・タキサンは白血病リスクを上昇させた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Kerr AJ, et al. Cancer Treat Rev. 2022;105:102375.

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乳がん検診10年の偽陽性リスク、乳房トモシンセシスvs.デジタルマンモグラフィ

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 デジタル乳房トモシンセシスによる乳がん検診は、デジタルマンモグラフィより偽陽性率が低い可能性がある。米国・カリフォルニア大学デービス校のThao-Quyen H. Ho氏らは、デジタル乳房トモシンセシスまたはデジタルマンモグラフィによる10年間の検診で、偽陽性の累積リスクを推定した結果、デジタル乳房トモシンセシスのほうが低く、また、モダリティの違いよりも隔年検診・高齢・非高濃度乳房が偽陽性率の大幅な低下と関連することが示された。JAMA Network Open誌2022年3月1日号に掲載。

 本研究は、Breast Cancer Surveillance Consortiumの126の放射線施設において、2005年1月1日~2018年12月31日に前向きに収集したデータを用いた効果比較研究で、40~79歳の90万3,495人の結果を2021年2月9日から9月7日まで分析。乳がん診断と死亡の競合リスクを考慮し、年1回もしくは隔年でデジタル乳房トモシンセシスまたはデジタルマンモグラフィで10年間検診後、追加画像診断・短い間隔での経過観察の推奨・生検の推奨について1回以上の偽陽性リコールの累積リスクを評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・90万3,495人の女性における296万9,055回の検診(初回検診を除く)の画像を、放射線科医699人が読影した。
・検診時の平均年齢(SD)は57.6(9.9)歳、60歳未満での検診が58%、高濃度乳房は46%、トモシンセシスでの検診が15%だった。
・年1回の検診では、10年間における1回以上の偽陽性の累積確率はデジタルマンモグラフィに比べトモシンセシスで有意に低かった。全リコールは49.6% vs.56.3%(差:-6.7、95%CI:-7.4~-6.1)、短い間隔での経過観察の推奨で16.6% vs.17.8%(差:-1.1、95%CI:-1.7~-0.6)、生検の推奨で11.2% xs.11.7%(差:-0.5、95%CI:-1.0~-0.1)だった。
・隔年の検診でも、偽陽性の累積確率は、デジタルマンモグラフィに比べトモシンセシスで有意に低かった(35.7% vs.38.1%、差:-2.4、95%CI:-3.4~-1.5)が、短い間隔での経過観察の推奨(10.3% vs.10.5%、差:-0.1、95%CI:-0.7~0.5)、生検の推奨(6.6% vs.6.7%、差:-0.1、95%CI:-0.5~0.4)では有意な差はなかった。
・デジタルマンモグラフィに対するトモシンセシスでの偽陽性の累積確率の減少は、年1回検診した非高濃度乳房の女性で最も大きかった。
・モダリティにかかわらず、偽陽性の累積確率は、年1回の検診より隔年の検診、年齢が若い患者より高い患者、extremely dense breastの女性よりentirely fattyの女性で大幅に低かった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Ho TH, et al. JAMA Netw Open. 2022;5:e222440.

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HER2+乳がん2次治療、HR0.28でT-DXdがPFS延長(DESTINY-Breast03)/NEJM

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 トラスツズマブおよびタキサン系薬剤による治療歴のあるHER2陽性の切除不能または転移のある乳がん患者において、抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)はトラスツズマブ エムタンシン(同:カドサイラ)と比較し、病勢進行または死亡のリスクを有意に低下させることが認められた。スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏らが、世界15ヵ国169施設で実施された無作為化非盲検第III相試験「DESTINY-Breast03試験」の中間解析結果を報告した。本試験での発現率はこれまでの臨床試験に比べ数値的に低かったもののトラスツズマブ デルクステカンの投与は間質性肺疾患の発現と関連しており、著者は「臨床使用においては慎重なモニタリングが不可欠」と注意を促したうえで、「トラスツズマブ デルクステカンは、トラスツズマブとタキサン系薬剤、ならびにペルツズマブによる治療歴のあるHER2陽性転移性乳がん患者に対する有効な新しい治療薬である」とまとめている。NEJM誌2022年3月24日号掲載の報告。

主要評価項目はPFS、副次評価項目はOSとORR

 研究グループは、2018年7月20日~2020年6月23日に、トラスツズマブとタキサン系薬剤による治療歴のあるHER2陽性の切除不能または転移性乳がん患者524例を、トラスツズマブ デルクステカン(5.4mg/kg、3週間間隔で静脈内投与)群とトラスツズマブ エムタンシン(3.6mg/kg、3週間間隔で静脈内投与)群に、ホルモン受容体の状態(陽性または陰性)、ペルツズマブ治療歴、内臓転移の有無を層別因子として1対1の割合に無作為に割り付けた。

 主要評価項目は盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存(PFS)、主要な副次評価項目は全生存(OS)、その他の副次評価項目はBICRおよび治験担当医師判定による客観的奏効率(ORR)、治験担当医師判定によるPFS、および安全性であった。

トラスツズマブ デルクステカンは病勢進行または死亡のリスクを72%低下

 追跡期間中央値がトラスツズマブ デルクステカン群16.2ヵ月、トラスツズマブ エムタンシン群15.3ヵ月において、PFS期間中央値はトラスツズマブ デルクステカン群は未到達、トラスツズマブ エムタンシン群は6.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.6~8.2)であった。12ヵ月時点のPFS率はそれぞれ75.8%(95%CI:69.8~80.7)、34.1%(27.7~40.5)で、病勢進行または死亡のハザード比は0.28(95%CI:0.22~0.37、p<0.001)であった。

 また、12ヵ月時のOS率は、トラスツズマブ デルクステカン群94.1%(95%CI:90.3~96.4)、トラスツズマブ エムタンシン群85.9%(80.9~89.7)で、死亡に関するハザード比は0.55(95%CI:0.36~0.86、p=0.007)であり、事前に規定した有意水準(p<0.000265)を満たさなかった。

 ORRは、トラスツズマブ デルクステカン群79.7%(95%CI:74.3~84.4)、トラスツズマブ エムタンシン群34.2%(28.5~40.3)であった。

 全Gradeの副作用発現率は、トラスツズマブ デルクステカン群98.1%、トラスツズマブ エムタンシン群86.6%、Grade3/4の副作用発現率はそれぞれ45.1%、39.8%であった。間質性肺疾患はトラスツズマブ デルクステカン群で27例(10.5%)、トラスツズマブ エムタンシン群で5例(1.9%)に認められ、いずれもGrade3以下であった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Cortes J, et al. N Engl J Med. 2022;386:1143-1154.

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BRCA変異陽性高リスク早期乳がん患者への術後オラパリブ、OSも改善(OlympiA)

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 生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性(gBRCAm)かつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者に対する、オラパリブ(商品名:リムパーザ)の術後投与が、全生存期間(OS)を有意に延長した。本試験(第III相OlympiA試験)の主要評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)であり、主要解析結果は、2021年の米国臨床腫瘍学会年次総会で初めて発表され、NEJM誌に同時掲載されている。今回、2022年3月16日に行われた欧州臨床腫瘍学会のバーチャルプレナリーで、OSの最新の結果が発表された。

[OlympiA試験]
・対象:根治的局所療法および術前/術後薬物療法が完了したgBRCAmかつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者 1,836例
・試験群:オラパリブ(300mg、1日2回)を1年間投与 921例
・対照群:プラセボ(1日2回)を1年間投与 915例
・評価項目:
[主要評価項目]ITT集団におけるiDFS
[副次評価項目]遠隔無再発生存期間(DDFS)、OS、QOL、安全性など

 今回発表された主な結果は以下のとおり。

・OSにおいて、オラパリブはプラセボと比較し、死亡リスクを32%低下させた(ハザード比:0.68、98.5%信頼区間:0.47~0.97、p=0.009)。
・3年生存率は、プラセボ群89.1% vs.オラパリブ群92.8%であった。
・4年生存率は、プラセボ群86.4% vs.オラパリブ群89.8%であった。
・本試験におけるオラパリブの安全性および忍容性プロファイルは、過去の臨床試験のプロファイルと一貫していた。

 また、2022年3月11日、AstraZenecaおよびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米およびカナダ以外ではMSD)は、第III相OlympiA試験の結果に基づき、オラパリブがgBRCAmかつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者に対する術後薬物療法として、米国で承認を取得したことを発表した。

(ケアネット 新開 みのり)


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早期乳がんへの術前/術後カペシタビン追加、DFSとOS改善~メタ解析

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 早期乳がん(EBC)患者に対する術前/術後療法として、標準的な全身療法へのカペシタビンの追加投与が、無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)を改善した。ドイツ・German Breast Group(GBG)のMarion T van Mackelenbergh氏らは1万5,000例以上のEBC患者データのメタ解析結果を、European Journal of Cancer誌オンライン版3月16日号へ報告した。

 clinicaltrials.govおよびpubmedにおいて、EBCに対する術前または術後療法としてのカペシタビンの使用、患者数100人以上の多施設共同無作為化試験、募集完了、主要アウトカムの評価済であることを条件に検索され、13試験が該当した。本解析の主要目的は無病生存期間(DFS)に対するカペシタビンの効果を調べることであり、副次目的は、遠隔転移DFS(DDFS)、全生存期間(OS)、病理学的完全奏効(術前補助療法としての試験)、カペシタビン関連毒性と治療効果の相互作用を分析することだった。

 主な結果は以下のとおり。

・15,993例のEBC患者の個々のデータが収集された。
・解析対象患者全員を対象としたCox回帰分析では、カペシタビンを追加しても、カペシタビンなしの治療と比較してDFSに有意な変化は認められなかった(ハザード比[HR]:0.952、95%信頼区間[CI]0.895~1.012、p=0.115)。
・他の薬剤の代わりにカペシタビンを投与した研究のサブセットでは、DFSへの影響はみられなかった(HR:1.035、95% CI:0.945~1.134、p=0.455)。
・しかし、標準的な全身治療に加えてカペシタビンを投与した研究のサブセットでは、DFSが改善した(HR:0.888、95% CI:0.817~0.965、p=0.005)。
・OSの改善は、コホート全体(HR:0.892、95% CI:0.824~0.965、p=0.005)およびカペシタビン追加のサブセット(HR:0.837、95% CI:0.751~0.933、p=0.001)で確認された。
・サブグループ解析の結果、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の患者において、DFSおよびOSについて、カペシタビンによる治療すべて、また他の全身治療にカペシタビンを追加することの有効性が明らかになった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

van Mackelenbergh MT,et al.Eur J Cancer. 2022 Mar 16;166:185-201.

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HER2+乳がんへの術後化学療法+トラスツズマブへのペルツズマブ追加、リンパ節転移陰性でベネフィットのある患者群を検討(APHINITY)

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3d illustration shows breast cancer with lymphatics, medically 3D illustration on pink background

 APHINITY試験はHER2陽性乳がんの術後化学療法+トラスツズマブへのペルツズマブの上乗せを検証した第III相試験で、HER2陽性乳がん患者全体とリンパ節転移のある患者で無浸潤疾患生存(iDFS)が大幅に改善することが報告されている。今回、米国・ダナファーバーがん研究所のRichard D. Gelber氏らは、リンパ節転移陰性(N-)でペルツズマブ追加によるベネフィットが得られるサブグループ、リンパ節転移陽性(N+)でde-escalationを考慮すべきサブグループについて検討した。European Journal of Cancer誌オンライン版2022年3月18日号に掲載。

 著者らは、STEPP(subpopulation treatment effect pattern plot:サブグループ別治療効果パターンプロット)を用いて、臨床的複合リスクスコア、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の割合、HER2コピー数(FISH)によるサブグループについて、全体およびリンパ節転移の有無別に、6年iDFS率のカプラン-マイヤー差(ペルツズマブ群-プラセボ群:Δ±SE)を推定した。

 その結果、6年iDFS率の絶対増加の平均は、患者全体で2.8±0.9、N+患者で4.5±1.2、N-患者で0.1±1.1だった。増加が最大だったのは、臨床的複合リスクが中等度(全体:5.3±1.9、N+:6.9±2.3、N-:4.0±3.0)、TILの割合が最大(全体:6.3±1.7、N+:7.4±2.4、N-:3.2±1.7)、HER2コピー数が中等度(全体:2.8±1.9、N+:7.4±2.5、N-:-1.3±1.9)の患者だったが、サブグループ別治療効果の異なったパターンを示す明らかなエビデンスはなかった。

 今回の検討では、N-におけるSTEPPでペルツズマブ追加によって明らかにベネフィットがあるサブグループを特定できず、N+におけるSTEPPでde-escalationが妥当なサブグループを特定できなかった。臨床的複合リスクスコアよりTILの割合のほうが、ペルツズマブの治療効果を予測できるようであった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Gelber RD, et al. Eur J Cancer. 2022;166:219-228.

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乳がんサバイバーの倦怠感、長期的な経過の特徴/JCO

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 早期乳がん1次治療後の倦怠感の長期的な経過は個人差が大きい。フランス・Gustave RoussyのInes Vaz-Luis氏らが乳がんサバイバーにおける倦怠感の長期的な経過の特徴を調査した結果から、がん関連の倦怠感の多次元的な性質とその危険因子の複雑さが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年3月15日号に掲載。

 本研究は、2012~15年に治療を受けたStage I~IIIの乳がん患者を対象とした全国的な大規模前向き研究(CANcer TOxicity)を使用して、倦怠感に関する詳細な縦断的解析を実施した。倦怠感は、診断時、診断後1、2、4年に調査し、ベースラインでの臨床的、社会人口統計学的、行動的、腫瘍関連、治療関連の特徴を入手した。

 調査の結果、総合的倦怠感が重度だった4,173例において、その経過について3つの群が特定され、各群の重度の総合的倦怠感のリスク推定値は以下のとおりであった。

1)持続的にリスクが高い群:患者の21%
 診断時94.8%(95%CI:86.6〜100.0)、4年後64.6%(95%CI:59.2〜70.1)
2)リスクが悪化する群:患者の19%
 診断時13.8%(95%CI:6.7~20.9)、4年後64.5%(95%CI:57.3~71.8)
3)リスクが低いままの群:患者の60%
 診断時3.6%(95%CI:2.5~4.7)、4年後9.6%(95%CI:7.5~11.7)

 また、重度の身体的倦怠感、重度の精神的倦怠感、重度の認知疲労的倦怠感では、社会人口学的要因、臨床的要因、治療関連要因の影響は異なり、重度の総合的倦怠感とは分類が異なった。リスクが悪化する原因としては、うつ病などの感情的な苦痛、ホルモン療法などが示唆された。

 著者らは「本研究の結果は、重度の倦怠感のリスクが高い早期乳がん患者を特定し、個別の介入を促進することに役立つ」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Vaz-Luis I, et al. J Clin Oncol. 2022 Mar 15. [Epub ahead for print]

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閉経後進行乳がんの1次治療、ribociclib追加でOS延長(MONALEESA-2)/NEJM

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 ホルモン受容体陽性HER2陰性の閉経後進行乳がん女性の1次治療において、CDK4/6阻害薬ribociclibとアロマターゼ阻害薬レトロゾールの併用療法はプラセボ+レトロゾールと比較して、全生存期間が約1年延長し、新たな安全性シグナルの発現は認められないことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのGabriel N. Hortobagyi氏らが実施した「MONALEESA-2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年3月10日号に掲載された。

国際的な第III相試験の全生存最終解析

 本研究は、2014年1月~2015年3月の期間に参加者の登録が行われた国際的な無作為化第III相試験であり、今回は、主な副次エンドポイントである全生存期間の、プロトコールで規定された最終解析の結果が公表された(Novartisの助成を受けた)。

 本試験の主要エンドポイントである担当医評価による無増悪生存期間中央値は、先行解析によりribociclib+レトロゾールで優れることが、すでに報告されている(25.3ヵ月vs.16.0ヵ月、ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.46~0.70、p<0.001)。

 この試験の対象は、局所病変が確認され、ホルモン受容体が陽性で、HER2陰性の再発または転移を有する乳がんの閉経後女性で、進行病変に対する全身療法を受けていない患者であった。

 被験者は、ribociclib(600mg、1日1回、経口投与)を、1サイクル28日として21日連続投与後7日間休薬する群、またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。両群とも、レトロゾール(2.5mg、1日1回、経口投与)の連日投与を受けた。ribociclibまたはプラセボの投与、データ解析、アウトカム評価を行ったすべての研究者および患者には、割り付け情報が知らされなかった。

 全生存は層別化log-rank検定で評価され、死亡が400例に達した時点でKaplan-Meier法を用いて要約された。無増悪生存と全生存の解析には、結果の妥当性を確保するために、階層的検定法が用いられた。

死亡リスクが24%低減

 668例が登録され、ribociclib群に334例、プラセボ群に334例が割り付けられた。全体の追跡期間中央値は80ヵ月(最短75ヵ月)で、治療期間中央値はribociclib群が20.2ヵ月(四分位範囲:7.4~45.1)、プラセボ群は14.1ヵ月(7.1~28.9)であった。データカットオフ日(2021年6月10日)の時点で、ribociclib群181例(54.2%)、プラセボ群219例(65.6%)が死亡した。

 ribociclib群はプラセボ群に比べ、全生存の利益が有意に大きかった。すなわち、全生存期間中央値はribociclib群の63.9ヵ月(95%CI:52.4~71.0)に対し、プラセボ群は51.4ヵ月(47.2~59.7)であり(HR:0.76、95%CI:0.63~0.93、両側検定のp=0.008)、12.5ヵ月の差がみられた。

 ribociclibによる全生存の利益は、治療開始後約20ヵ月から認められ、その後は持続的に大きくなった。5年全生存率はribociclib群が52.3%(95%CI:46.5~57.7)、プラセボ群は43.9%(95%CI:38.3~49.4)であり、6年全生存率はそれぞれ44.2%(95%CI:38.5~49.8)および32.0%(95%CI:26.8~37.3)だった。

 後治療は、ribociclib群の304例中267例(87.8%)、プラセボ群の317例中286例(90.2%)が受けた。後治療として、初回化学療法を受けるまでの期間中央値は、ribociclib群が50.6ヵ月、プラセボ群は38.9ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.61~0.91)、無化学療法生存期間中央値はそれぞれ39.9ヵ月および30.1ヵ月であった(0.74、0.62~0.89)。

 有害事象プロファイルは既報の結果と一致しており、新たな安全性シグナルは観察されなかった。Grade3/4のとくに注目すべき有害事象のうち、最も頻度の高かったのは好中球減少であり、ribociclib群63.8%、プラセボ群1.2%で発現した。また、ribociclib群では、Grade3の間質性肺疾患または肺臓炎が2例(0.6%)で認められたが、間質性肺疾患または肺臓炎に関連するGrade4の有害事象や死亡はみられなかった。

 著者は、「これまでにMONALEESA試験で得られた知見と今回の結果を合わせると、ribociclibによる全生存の利益は、ホルモン療法の有無、治療ライン数、閉経の状態にかかわらず、一致して認められることが示された」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Hortobagyi GH, et al. N Engl J Med. 2022;386:942-950.

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