新薬elacestrantがHR+進行乳がん2~3次治療でPFS改善、初の経口SERD(EMERALD)/SABCS2021

提供元:CareNet.com

 ホルモン受容体陽性/ HER2陰性の転移を有する閉経後乳がん患者への2次および3次治療において、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)elacestrantが、医師選択の標準治療と比較して死亡または疾患進行リスクを有意に減少させ、無増悪生存期間(PFS)を改善した。第III相EMERALD試験の中間解析結果を、米国・Mass General Cancer CenterのAditya Bardia氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2021)で発表した。

 現在、同患者に対しては主に内分泌療法とCDK4/6阻害薬による治療が行われているが、ほとんどの患者は最終的にこれらの治療に対する耐性を獲得し、その耐性機序の一つとしてESR1変異が考えられている。

 SERDとして乳がん治療で唯一承認されているフルベストラントは筋肉内注射による投与であり、経口SERDとして第III相試験が実施されたのは今回のelacestrantが初。Bardia氏はelacestrantはフルベストラントと比較して吸収が大きく、薬物動態が改善され、ERの阻害が強化されていると説明した。EMERALD試験は多施設共同無作為化比較試験で、北米・ヨーロッパの他アルゼンチン、韓国、オーストラリアなど17カ国228施設が参加。日本からの参加はない。

・対象:ホルモン受容体陽性/ HER2陰性の転移を有し、CDK4/6阻害薬治療後に進行した男性および女性の閉経後乳がん患者(1~2ラインの内分泌療法歴[うち1ラインはCDK4/6阻害薬との併用]と1ライン以下の化学療法歴有、ECOG PS 0/1) 477例
・elacestrant群:elacestrant(400mg/日) 239例
・標準治療群:治験担当医選択によるフルベストラントまたはアロマターゼ阻害薬 238例
・評価項目:
[主要評価項目]ITT集団およびESR1変異を有する患者におけるPFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時点での患者特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はelacestrant群63.0歳vs.標準治療群63.5歳、内臓転移を有する患者は68.2% vs.70.6%、1ラインの化学療法歴を有する患者は20.1% vs.24.4%だった。
・主要評価項目であるITT集団におけるPFS中央値は、elacestrant群2.79ヵ月に対し標準治療群1.91ヵ月となり、elacestrant群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.697、95%信頼区間[CI]:0.552~0.880、p=0.0018)。
ESR1変異を有する患者におけるPFS中央値は、elacestrant群3.78ヵ月に対し標準治療群1.87ヵ月となり、elacestrant群で有意に改善した(HR:0.546、95%CI:0.387~0.768、p=0.0005)。
・ITT集団における6ヵ月時点でのPFS率は34.3% vs.20.4%、12ヵ月時点では22.32% vs.9.42%だった。ESR1変異を有する患者においては6ヵ月時点でのPFS率は40.8% vs.19.1%、12ヵ月時点では26.76% vs.8.19%だった。
・elacestrantによるPFSのベネフィットは、フルベストラントによる治療歴(HR:0.679、 95%CI:0.438~1.029)および内臓転移を有する患者(HR:0.665、95%CI:0.607~0.869)を含む、事前に設定されたほとんどのサブグループにおいて観察された。 一方、アジア人(HR:1.091、95%CI:0.456~2.642)およびその他の人種(HR:1.075、95%CI:0.309~3.580)ではみられなかった。ただし、これらのサブグループは例数が少ない(32例、14例)。
・副次評価項目であるOS中央値は、未成熟なデータではあるが、ITT集団 (HR:0.751、 95%CI:0.542~1.038、p=0.0821) およびESR1変異を有する患者(HR:0.592、95%CI:0.361~0.958、p=0.0325)においてともにelacestrant群で良好な傾向がみられている。
・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)で多くみられたのは悪心(35.0% vs.18.8%)、倦怠感(19.0% vs.18.8%)、嘔吐(19.0% vs.8.3%)、食欲不振(14.8% vs.9.2%)、関節痛(14.3%vs.16.2%)。Grade3/4では、悪心(2.5% vs.0.9%)、背部痛(2.5% vs.0.4%)、ALT上昇(2.1% vs.0.4%)がみられた。TRAEによる治療中止はelacestrant群3.4%、標準治療群0.9%で報告され、両群とも治療関連の死亡は発生していない。

 Bardia氏は同患者に対するelacestrant単剤療法は新しい標準治療となる可能性があるとし、OSの最終結果は来年以降発表される見通しとした。また、より早期の治療ラインにおける有効性および他の治療薬と組み合わせたときの有効性を評価する必要があるとし、脳転移のある患者を対象に、アベマシクリブと組み合わせたelacestrantの有効性を評価する第II相試験が計画されているとした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

EMERALD試験(ClinicalTrials.gov)

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

TN乳がん1次治療でのペムブロリズマブ、適切なCPSカットオフ値は?(KEYNOTE-355)/SABCS2021

提供元:CareNet.com

 手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性のトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療において、ペムブロリズマブ+化学療法による治療ベネフィットが期待される患者の定義としてCPS 10以上が適切であることを示唆する、第III相KEYNOTE-355試験のサブグループ解析結果を、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2021)で発表した。

 本試験では、化学療法+ペムブロリズマブが、未治療のPD-L1陽性(CPS 10以上)の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん患者において、化学療法+プラセボと比べ、有意に全生存(OS)および無増悪生存(PFS)を改善したことがすでに報告されている。しかし、CPS 1以上の集団では有意なベネフィットは示されなかった。今回は、CPS 1未満、1~9、10~19、20以上のサブグループに分けてOSとPFSを解析した。

・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性のTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例
・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例
・対照群:プラセボ+化学療法 281例
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS 10以上、1以上)およびITT集団におけるPFSとOS
[副次評価項目]奏効率、奏効期間、病勢コントロール率、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・最終解析時点(データカットオフ:2021年6月15日)で、無作為化~データカットオフの期間の中央値は44ヵ月だった。
・OSについては、報告済みのハザード比(95%信頼区間)は、CPS 10以上で0.73(0.55~0.95)、CPS 1以上で0.86(0.72~1.04)、ITT集団で0.89(0.76~1.05)だった。今回のサブグループ解析では、CPS 1未満で0.97(0.72~1.32)、1~9で1.09(0.85~1.40)、10~19で0.71(0.46~1.09)、20以上で0.72(0.51~1.01)で、CPS 1~9ではペムブロリズマブ群とプラセボ群で変わらず、10~19と20以上ではペムブロリズマブの追加による治療ベネフィットが同等だった。
・PFSについては、報告済みのハザード比(95%信頼区間)は、CPS 10以上で0.66(0.50~0.88)、CPS 1以上で0.75(0.62~0.91)、ITT集団で0.82(0.70~0.98)だった。今回のサブグループ解析では、CPS 1未満で1.09(0.78~1.52)、1~9で0.85(0.65~1.11)、10~19で0.70(0.44~1.09)、20以上で0.62(0.44~0.88)だった。

(ケアネット 金沢 浩子)


KEYNOTE-355試験(ClinicalTrials.gov)

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

高齢がん患者への高齢者機能評価介入、治療毒性を低減/Lancet

提供元:CareNet.com

 進行がんの高齢患者への介入として、地域の腫瘍医(community oncology practice)に高齢者機能評価の要約を提供すると、これを提供しない場合に比べ、がん治療による重度の毒性作用の発現頻度が抑制され、用量強度の低いレジメンで治療を開始する腫瘍医が増えることが、米国・ロチェスター大学医療センターのSupriya G. Mohile氏らのクラスター無作為化試験「GAP70+試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年11月20日号で報告された。

米国の40施設のクラスター無作為化試験

 本研究は、患者管理上の推奨事項を含む高齢者機能評価の要約を地域の腫瘍医に提供することによる介入は、意思決定の改善をもたらし、高リスクのがん治療による重度の毒性を軽減するとの仮説の検証を目的とするクラスター無作為化試験であり、米国の40の地域腫瘍診療施設が参加し、2014年7月~2019年3月の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]の研究助成を受けた)。

 対象は、年齢70歳以上、高齢者機能評価のドメイン(8項目)のうち、ポリファーマシーを除く少なくとも1つの機能障害がみられ、非治癒性の進行固形がんまたはリンパ腫(StageIII/IV)に罹患しており、4週間以内に毒性作用のリスクが高い新たながん治療レジメンを開始する予定の患者であった。

 参加施設は、高齢者機能評価による介入群または通常治療群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。介入群の腫瘍医には、Webベースのプラットフォームを用いて作成された個別の高齢者機能評価の要約と患者管理上の推奨事項が提供され、通常治療群の腫瘍医には提供されなかった。

 主要アウトカムは、3ヵ月間にGrade3~5の毒性作用(NCIの有害事象共通用語規準[CTCAE]の第4版で判定)が発現した患者の割合とされた。

転倒の発生率も低下

 40施設(腫瘍医156人)のうち、16施設が介入群、24施設は通常治療群に割り付けられた。患者718例が登録され、349例が介入群、369例は通常治療群であった。全体の平均年齢は77.2(SD 5.4)歳、311例(43%)が女性であった。がん種は、消化器がんが34%、肺がんが25%、泌尿生殖器がんが15%、乳がんが8%で、リンパ腫は6%だった。

 ベースラインの高齢者機能評価で機能障害が認められた平均ドメイン数は4.5(SD 1.6)であり、両群間に差はなかった。介入群は通常治療群に比べ、黒人が多く(11%[40/349例]vs.3%[12/369例]、p<0.0001)、化学療法による既治療例の割合が高かった(30%[104/349例]vs.22%[81/369例]、p=0.016)。

 新たな治療レジメン開始から3ヵ月以内にGrade3~5の毒性作用が発現した患者の割合は全体で61%(440/718例)であった。このうちGrade5(死亡)は5例(1%)で認められた。

 Grade3~5の毒性作用が発現した患者の割合は、介入群が51%(177/349例)と、通常治療群の71%(263/369例)に比べて低く、高齢者機能評価による介入は毒性作用のリスクを有意に低減することが確認された(補正後リスク比[RR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.64~0.86、p=0.0001)。Grade3~5の毒性作用のうち、非血液毒性には有意差が認められたが(補正後RR:0.72、95%CI:0.52~0.99、p=0.045)、血液毒性には差がなかった(0.85、0.70~1.04、p=0.11)。

 化学療法は、タキサン系薬剤やプラチナ製剤を含むレジメンが多かった。化学療法のパターンには両群間に差がみられ(p=0.011)、介入群では用量強度の低い併用療法や単剤療法、化学療法+他の薬剤(モノクローナル抗体など)、化学療法以外のレジメンの割合が高い傾向が認められた。通常治療群では、2剤併用化学療法の使用頻度が高かった。

 また、介入群では、1サイクル目の用量強度が標準よりも低い治療を受けた患者が多く(49%[170/349例]vs.35%[129/369例]、補正後RR:1.38、95%CI:1.06~1.78、p=0.015)、3ヵ月間に毒性関連で減量が行われた患者は少なかったが有意差はなかった(43%[149/349]vs.58%[213/369例]、0.85、0.68~1.08、p=0.18)。6ヵ月生存率(補正後ハザード比[HR]:1.13、95%CI:0.85~1.50、p=0.39)と1年生存率(1.05、0.85~1.29、p=0.68)には差が認められなかった。

 さらに、介入群では、3ヵ月以内の転倒の発生率が低く(12%[35/298例]vs.21%[68/329例]、補正後RR:0.58、95%CI:0.40~0.84、p=0.0035)、がん治療レジメン開始前に中止された薬剤の数が多かった(平均群間差:0.14、95%CI:0.03~0.25、p=0.015)。

 著者は、「進行がんや加齢に伴う疾患を有する高齢患者に対し、毒性作用のリスクが高い治療レジメンを新たに開始する場合は、高齢者機能評価とこれに基づく患者管理を、標準治療として考慮すべきである」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Mohile SG, et al. Lancet. 2021;398:1894-1904.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

固形がん患者へのブースター接種、抗体価の変化は?/JAMA Oncol

提供元:CareNet.com

 積極的な治療を受けている固形がん患者では新型コロナウイルス感染症により予後が悪化するリスクが高く、また、化学療法を受けているがん患者ではBNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer/BioNTech)による体液性応答が低下することが報告されている。今回、イスラエル・Hadassah Medical CenterのYakir Rottenberg氏らが、主に化学療法を受けた固形がん患者でのBNT162b2ワクチンの3回目(ブースター)接種後30日未満の体液性応答を調査したところ、ほとんどの症例でブースター接種後早期に抗体反応がみられたことがわかった。JAMA Oncology誌オンライン版2021年11月23日号に掲載。

 本研究の対象は、Hadassah Medical Centerにおいて化学療法、生物学的製剤、免疫チェックポイント阻害薬、もしくはこれらの組み合わせで治療された固形がん患者で、BNT162b2ワクチンを2回接種していた患者。血液サンプルの採取日の中央値は、ブースター接種後13日(範囲:1~29)で、スパイクタンパク質結合抗体について分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・2021年8月15日~9月5日に37例がブースター接種後に血清学的検査を受けた。2回目接種とブースター接種との間隔の中央値は214日(範囲:172~229)、2回目接種と2回目接種後抗体測定の間隔の中央値は86日(範囲:30~203)だった。
・年齢中央値は67歳(範囲:43~88)で、11例(30%)は転移がなく、19例(51%)は化学療法を受けていた。
・1例(40代、dose-dense AC療法後パクリタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブによる術後補助療法中)を除いた患者が血清学的検査で陽性だった。さらに、化学療法の有無に関係なく、2回目接種後の反応が中程度または最小だった患者で、ほぼすべての患者が高い抗体価を示し、有意に抗体価が増加した。
・多重線形回帰の結果、2回目接種後の抗体価(p<0.001)と高齢者(p=0.03)がブースター接種後の高い抗体価と関連した。一方、性別、化学療法の有無、3回目接種と抗体検査の間隔との関連はみられなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Rottenberg Y, et al. JAMA Oncol. 2021 Nov 23.[Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

がん治療における遺伝子パネル検査、データ利活用の最前線/日本癌治療学会

提供元:CareNet.com

 実臨床で得られた診療データをその後の研究に活かしていくという、「データ利活用」の動きが世界中で活発になっている。第59回日本癌治療学会学術集会(10月21~23日)では会長企画シンポジウムとして「大規模データベースを活用したがん治療の新展開――医療データの臨床開発への利活用」と題した発表が行われた。

 冒頭に中島 直樹氏(九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター)が「データ駆動型の医療エビデンス構築の現在と未来」と題した講演を行い、日本の医療データの問題点として「収集後の名寄せが困難(マイナンバーの医療分野利用の遅れなど)」「医療情報の標準化の遅れ」「改正個人情報保護法によるハードル」を挙げた。そして、これらの問題の解決策として2018年に制定された次世代医療基盤法によるデータ収集と連携のプラットフォームに触れ、状況が変わりつつあることを紹介した。

 続いて、谷口 浩也(愛知県がんセンター病院 薬物療法部)が、「産学連携ゲノム解析研究SCRUM/CIRCULATE-Japan Registryの医薬品医療機器承認への活用」と題した発表で、 国立がんセンターを中心とした産学連携全国がんゲノムスクリーニングプロジェクト「SCRUM-Japan」内の「SCRUM-Japan Registry」プロジェクトにおける、臨床研究データを蓄積し、外部の医薬品メーカーに提供、主に希少疾病の新薬開発における比較対照として活用して承認申請に結びつける取り組みを紹介した。「データの質を保つために参加施設を本体研究より絞り、患者背景の均一化などを工夫してきた。悉皆性の確保、参加施設のモチベーションの維持、コスト負担などが今後の課題だ」とした。

 さらに、河野 隆志氏(国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター=C-CAT)が「保険診療で行われるがん遺伝子パネル検査のデータの診療・研究・開発への利活用」と題した演題でC-CATのデータ利活用の現状を紹介。C-CATには2019年6月~2021年8月までに2万1,030例の遺伝子パネル検査の結果が集積。がん種は男性では肺がんよりも膵臓がんが多く、女性では乳がんと卵巣/卵管がんがほぼ同数などとなっている。「遺伝子パネル検査を受けるのは標準治療終了後の患者さんに限られるため、一般的ながん種別の罹患率とは異なり、悪性度の高いがんが多くなる傾向がある」(河野氏)という。これまで、「診療検索ポータル」という検索サイトを立ち上げ、患者背景ごとに適合する進行中の治験を検索できるようにしてきた。

 さらに今年の10月から「利活用検索ポータル」として、研究・開発目的としてC-CATデータを提供するサイトをオープン。1万8,000例ほどから、がん種や遺伝子変異の種類、薬剤名、奏効率や有害事象などの条件で検索し、詳細なデータを閲覧できる。

 利用者はC-CATによる審査・登録後、がんゲノム医療中核拠点病院、大学等の研究機関であれば無償、製薬メーカーは有償で利用できるようになる。「特定の遺伝子変異の患者データ等の把握が容易になり、治験などが活発になることを期待している。登録は審査が必要となり時間がかかるため、最低限の情報を確認できる『登録件数検索』機能を用意しており、興味がある方はぜひ一度見ていただきたい」(河野氏)とした。

(ケアネット 杉崎 真名)


【参考文献・参考サイトはこちら】

国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター「利活用のページ」

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

ナッツ類の摂取と乳がんサバイバーの転帰の関係

提供元:CareNet.com

 ナッツ類の積極的な摂取が、全死亡や心血管疾患などの死因別死亡リスク低下と関連するという報告があるが、乳がんサバイバーにおけるがんの転帰との関連はみられるのだろうか。米国・ヴァンダービルト大学メディカルセンターのCong Wang氏らは、乳がんサバイバーを対象に、ナッツ類の消費量と全生存率(OS)および無病生存率(DFS)との関連を分析した。International Journal of Cancer誌オンライン版2021年10月19日号に掲載の報告より。

 本研究では、中国の大規模コホート研究・上海乳がん生存者調査のデータが用いられた。同調査では、乳がん診断後5年時点で、食事摂取頻度調査票を用いた過去1年間の包括的な食事評価が実施されている。ピーナッツ、クルミ、その他のナッツを含むナッツ類の消費量は、1週間当たりの摂取量をグラム数に換算して評価。ナッツ類の総消費量が0g/週を超える患者はナッツ類消費者、それ以外はナッツ類非消費者と定義され、さらにナッツ類消費者は≦中央値(17.32g/週)、>中央値に分類された。ナッツ類の消費量とOSおよびDFSの関連はCox回帰分析を用いて評価された。

 主な結果は以下のとおり。

・診断後5年時点で食事評価が実施された乳がんサバイバー3,449例が対象。食事評価実施後の追跡期間中央値は8.27年で、252例の乳がんによる死亡を含む374例の死亡があった。
・診断後5年の食事評価時点で再発のなかった3,274例のうち、209例で乳がんの再発、転移、または乳がんによる死亡が報告された。
・初回の食事評価からさらに5年後(診断10年後)の評価では、ナッツ類消費者は、非消費者と比較してOS(93.7% vs.89.0%)およびDFS(94.1% vs.86.2%)が有意に高かった(p<0.001)。
・多変量調整後、ナッツ類消費量は用量反応パターンにしたがってOS(傾向のp=0.022)およびDFS(傾向のp=0.003)と正の相関がみられた。ナッツ類消費量>中央値と非消費者の比較では、OSのハザード比(HR)は0.72(95%信頼区間[CI]:0.52~1.05)、DFSのHRは0.48(95%CI:0.31~0.73)だった。
・これらの関連は、ナッツの種類による違いはみられなかった。
・また層別化分析では、総エネルギー摂取量が多い患者とOS(交互作用のp=0.02)および、早期(StageI~II)乳がん患者とDFS(交互作用のp=0.04)において関連性がより明白であることが示された。
・ナッツ類消費とDFSの関連について、ホルモン受容体の状態およびその他既知の予後因子による変化はみられなかった。

 著者らは、長期の乳がんサバイバーにおけるナッツ類の摂取は、より良い生存、とくにDFSと関連していたと結論付けている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Wang C,et al.Int J Cancer. 2021 Oct 19. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

CDK4/6阻害薬、HER2低発現の進行乳がんでの有効性は?

提供元:CareNet.com

 CDK4/6阻害薬はホルモン受容体陽性(HR+)/HER2-進行・再発乳がん(MBC)の1次/2次治療において、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間を大幅に改善する。しかしながら、表現型および遺伝子解析では、有効性に関連する予測マーカーは特定されていない。今回、香港・クイーンエリザベス病院のKelvin K. H. Bao氏らは、CDK4/6阻害薬で治療されたHR+/HER2-MBC患者のHER2低発現と予後の関連を調査した結果、HER2低発現例ではCDK4/6阻害薬の有効性が低いことが示唆された。JAMA Network Open誌2021年11月1日号に掲載。

 本研究では、香港・クイーンエリザベス病院において、2017年3月~2020年6月にレトロゾールもしくはフルベストラントとの併用でCDK4/6阻害薬を投与されたHR+/HER2-MBCの患者について調べた。HER2-低発現はIHCスコア1+もしくは2+かつISH陰性とした。また、PFSはCDK4/6阻害薬投与開始日から病勢進行または死亡までの期間とした。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象のMBCの女性患者は106例で、治療時の年齢中央値(範囲)は58.0(23.0~91.4)歳、90例(84.9%)がパルボシクリブ、16例(15.1%)がリボシクリブを投与されていた。54例(50.9%)が1次治療で投与されていた。
・乳管組織型が88例(83.0%)、エストロゲン受容体Hスコア200以上が76例(71.7%)、プロゲステロン受容体陽性が81例(76.4%)だった。
・PFS中央値は、HER2低発現の82例(77.3%)では8.9ヵ月(95%CI:6.49~11.30)で、HER2 IHCスコア0の24例における18.8ヵ月(95%CI:9.44~28.16)より短かった(p=0.01)。
・多変量解析において、治療ライン(2次治療以降のラインに対する1次治療のHR:0.30、95%CI:0.18~0.53、p<0.001)、プロゲステロン受容体(陰性に対する陽性のHR:1.48、95%CI:0.62~3.50、p=0.38)、疾患範囲(骨外に対する骨のみのHR:0.50、95%CI:0.26~0.97、p=0.04)を調整後も、HER2低発現例でPFSが短かった(HR:1.96、95%CI:1.03~3.75、p=0.04)。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Bao KKH, et al. JAMA Netw Open. 2021;4:e2133132.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

2020年のがん診断数は前年比9%減、とくに早期での発見が減少/日本対がん協会

提供元:CareNet.com

 2020年のがん診断件数は8万660件で、2019年より8,154件(9.2%)少なく、治療数(外科的・鏡視下的)も減ったことがわかった。おおむね早期が減る一方、進行期は両年で差が少ない傾向となり、今後進行がんの発見が増えることが懸念される。日本対がん協会は11月4日、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)と共同実施したアンケート調査の結果を発表した。

 アンケートは今年7~8月、全がん協会加盟施設、がん診療連携拠点病院、がん診療病院、大学病院など486施設を対象として実施。5つのがん(胃、大腸、肺、乳、子宮頸)について診断数、臨床病期(1~4期、がん種によって0期も含む)、手術数、内視鏡治療数などを聞いた。大規模調査は全国初で、北海道東北、関東、中部北陸、近畿、中国四国、九州沖縄の各地域の計105施設から回答を得ている(回答率21.6%)。

 5がん種の診断数の減少幅は下記のとおり。

・胃がん:2019年1万9,470件→2020年1 万6,868件(-13.4%)
・大腸がん:2019年2 万1,975件→2020年1 万9,724件(-10.2%)
・乳がん:2019年1 万9,528件→2020年1 万7,919件(-8.2%)
・肺がん:2019年2 万3,010件→2020年2 万1,548件(-6.4%)
・子宮頸がん:2019年4,831件→2020年4,601件(-4.8%)

 がんに罹患する人の割合は2019年、2020年でほぼ変わらないと考えられるため、2019年と同じように検診や通院ができていれば発見できたがんが約9%あったと推測される。がん診断数の減少は早期が顕著なため、進行期の発見の増加が心配されるほか、予後の悪化や将来的にはがん死亡率が増加するおそれもある。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

がん種別5年・10年生存率、最新版を公表/全がん協調査

提供元:CareNet.com

 11月10日、全国がんセンター協議会加盟32施設の診断治療症例について、部位別5年生存率、10年生存率の最新データが公表され、全部位の5年生存率は68.9%、10年生存率は58.9%だった。部位別にみると、10年生存率が最も高かったのは前立腺がんで99.2%、最も低かったのは膵臓がんで6.6%だった。

 本調査は国立がん研究センターの「施設をベースとしたがん登録情報の収集から活用・情報発信までの効果と効率の最大化モデル構築のための研究」研究班が、全国がんセンター協議会の協力を得て、加盟32施設の診断治療症例について部位別5年生存率、10年生存率を集計したもの。同研究班は、1997年診断症例より部位別臨床病期別5年生存率、1999年診断症例より施設別5年生存率を公表し、2012年からはグラフを描画する生存率解析システム「KapWeb」を開設、2016年からはより長期にわたる生存率を把握するため10年生存率を公表している。

 がん診療連携拠点病院の中のがんセンターなど、限られた施設のデータではあるが、10年生存率を過去と比較できるのは現時点で本調査のみとなっている。また、がん種、病期、治療法などさまざまな条件設定での10年生存率、診断からの経過日数を指定したうえでのサバイバー生存率をグラフ描画できるのは現時点でKapWebのみとなっている。

<データベース概要>
対象施設:全国がんセンター協議会加盟32施設(2021年現在)
収集症例:1997~2013年までに全がん協加盟32施設で診断治療を行った87万6,679症例
集計対象:
[5年生存率]2011~13年に診断治療を行った症例のうち、集計基準を満たした15万1,568症例
[10年生存率]2005~08年に診断治療を行った症例のうち、集計基準を満たした12万649症例

<5年生存率>
全部位および部位別の5年相対生存率は以下のとおり。※( )内の数値は、前回2010~12年症例の5年相対生存率。
・全部位:68.9%(68.6%)
・食道:50.1%(48.9%)
・胃:75.4%(74.9%)
・大腸:76.8%(76.5%)
・肝:38.6%(38.1%)
・胆のう・胆管:28.7%(28.9%)
・膵臓:12.1%(11.1%)
・喉頭:80.4%(82.0%)
・肺:47.5%(46.5%)
・乳(女):93.2%(93.6%)
・子宮頸:75.9%(75.7%)
・子宮体:86.2%(86.3%)
・卵巣:64.3%(65.3%)
・前立腺:100.0%(100.0%)
・腎臓など:71.0%(69.9%)
・膀胱:67.7%(68.5%)
・甲状腺:93.0%(92.6%)

<10年生存率>
全部位および部位別の10年相対生存率は以下のとおり。※( )内の数値は、前回2004~07年症例の10年相対生存率。
・全部位:58.9%(58.3%)
・食道:34.4%(31.8%)
・胃:67.3%(66.8%)
・大腸:69.7%(68.7%)
・肝:17.6%(16.1%)
・胆のう・胆管:19.8%(19.1%)
・膵臓:6.6%(6.2%)
・喉頭:64.2%(63.3%)
・肺:33.6%(32.4%)
・乳(女):87.5%(86.8%)
・子宮頸:68.2(68.7%)
・子宮体:82.3%(81.6%)
・卵巣:51.0%(48.2%)
・前立腺:99.2%(98.8%)
・腎臓など:63.3%(62.8%)
・膀胱:63.0%(61.1%)
・甲状腺:86.8%(85.7%)

 5年生存率および10年生存率ともに、前回公表データと比較した場合多くの部位で生存率の上昇を認める一方、一部低下している部位も含めて、臨床的に意味のある変化は認められていない。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

国立がん研究センタープレスリリース

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

乳がん放射線治療中、デオドラントの使用を継続してよいか~メタ解析/日本癌治療学会

提供元:CareNet.com

 デオドラント製品を日常的に使用している日本人女性は多いが、放射線治療期間中に使用を継続した場合に放射線皮膚炎への影響はあるのだろうか? 齋藤 アンネ優子氏(順天堂大学)らは、放射線治療期間中のデオドラント使用に関連する放射線皮膚炎について調査した無作為化試験のメタ解析を実施し、第59回日本癌治療学会学術集会(10月21~23日)で報告した。なお、本解析は「がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版」のために実施された。

 2020年3月までに、PubMed、医中誌、Cochrane Library、CINAHLより、デオドラント使用が放射線皮膚炎に与える影響を検討した無作為化比較試験を中心に検索がされた。評価項目は腋窩の放射線皮膚炎の重症度(Grade2以上/ Grade3以上、NCI-CTC v5.0による評価)で、金属含有デオドラントと金属非含有デオドラントを別々に評価した。メタアナリシスの効果指標はリスク比(RR)とした。

 主な結果は以下のとおり。

・乳がん患者を対象とした前向き比較第III相試験が5編、アンケート調査1編の計6編の論文が特定され、定性的・定量的システマティックレビューが実施された。
・金属含有デオドラント使用群とデオドラント禁止群の比較では、Grade2以上の皮膚炎(RR:1.01、95%信頼区間[CI]:0.85~1.20)、Grade3以上の皮膚炎(RR:0.79、95%CI:0.22~2.84)のいずれも有意な差はみられなかった。
・金属非含有デオドラント使用群とデオドラント禁止群の比較では、Grade2以上の皮膚炎(RR:0.9、95%CI:0.5~1.6)、Grade3以上の皮膚炎(RR:0.76、95%CI:0.33~1.78)のいずれも有意な差はみられなかった。
・QOLの評価は2編の論文で行われた。デオドラント使用群で汗の量は有意に少なかったが、QOLについては使用群と対照群の間で有意な差はなかった。しかし、1編のアンケート調査では、習慣的にデオドラントを使用しているとした乳がん患者のうち64%は、デオドラントを使用できないことで体臭が気になったと回答していた。

 皮膚炎の評価にかかわる主な交絡因子としては、喫煙、化学療法、照射範囲・線量、体型などが考えられ、デオドラントの使用方法が規定されておらず、盲検化が行われていないため、エビデンスの強さとしては「非常に弱い」とされた。また金属非含有デオドラント使用群との比較については研究数が3~4編となった一方、金属含有デオドラント使用群との比較については研究数が2編のみとなり、さらにこの2編が類似のバイアスの影響を受けていると考えられるもので、エビデンスとしてはより脆弱と考えられた。

 以上より、害と益のバランスとしては、下記のように評価された:
・金属非含有のデオドラントによる放射線皮膚炎の増悪は、エビデンスは弱いが、認められなかった
・習慣的にデオドラントを使用している患者には益が害を上回る

 ガイドラインにおける推奨文としては、「放射線治療中のデオドラント使用の継続を弱く推奨する」とされた。ただし、金属含有のデオドラントについては皮膚炎への評価をした研究のエビデンスの確実性が非常に低く、注意をしながら使用を継続することが推奨される。

 実臨床で質問を受けたときに医療者が提供できる情報として、齋藤氏は、習慣的に使用している場合であれば金属非含有のものを使用するのがいいのではないかという点に加え、商品としてはアルミニウムフリーと明記されて販売されていることを挙げた。また、ミョウバン入りの商品について、ミョウバン=アルミニウムということを認識していない患者さんも多いため、補足して伝えることができればよいのではないかと話した。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1)日本がんサポーティブケア学会編.がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版 第2版.金原出版;2021.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)