HER2陽性早期乳がんへの術前トラスツズマブ+ラパチニブ併用、メタ解析で生存延長示す/ESMO2021

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 HER2陽性早期乳がんの術前補助療法としての化学療法とトラスツズマブ、ラパチニブの併用については、複数の試験で病理学的完全奏効(pCR)率の増加が確認されているが、生存に対する有効性については結果が一致していない。イタリア・パドヴァ大学のValentina Guarneri氏らは、同併用療法の生存に対するベネフィットについてメタ解析を実施し、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。

 Guarneri氏らは、4つの無作為化比較試験(CHER-LOB、NSABP-B41、NeoALTTO、CALGB40601)から1,410例を本解析の対象とした。4試験の主な違いとしては、CHER-LOB、NSABP-B41試験では術前にアントラサイクリン系・タキサン系薬剤が使用されており、NeoALTTO、CALGB40601試験では術前にタキサン系、術後にアントラサイクリン系薬剤が使用された。またNeoALTTO試験のみ術後に試験時の薬剤が投与され、その他3試験ではトラスツズマブが投与された。
 全試験でトラスツズマブ+ラパチニブ併用群のpCR率の増加がみられたが、生存に関する評価項目の有意な改善がみられたのはCALGB40601試験のみだった。

 メタ解析の主な結果は以下のとおり。

・無再発生存期間(RFS)は、トラスツズマブ単独と比較してトラスツズマブ+ラパチニブ併用群で改善した(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]0.46~0.85)。また全生存期間も併用群で改善がみられた(HR:0.65、95%CI:0.43~0.98)。
・組み合わせたすべての治療において、pCRを達成した患者は、手術時に残存病変を有する患者よりもRFS(HR:0.45、95%CI:0.34~0.60)およびOS(HR:0.32、95%CI:0.22~0.48)が良好だった。
・ホルモン受容体陰性の患者では、pCRは再発リスクの65%減少(HR:0.35、95%CI:0.23~0.53)および死亡リスクの73%減少(HR:0.27、95%CI:0.15~0.47)と関連していた。
・ホルモン受容体陽性の患者も、pCRを達成した患者はRFSが改善(HR:0.60、95%CI:0.37~0.97)したが、その効果はホルモン受容体陰性の患者よりも小さかった。

 Guarneri氏は、pCRが予後予測の強力なマーカーであることが確認され、この傾向はとくにホルモン受容体陰性の患者で強くみられるとした。さらにトラスツズマブ単独の場合と比較して、トラスツズマブ+ラパチニブの併用療法は生存に対するベネフィットを示し、pCRをサロゲートマーカーとして、ラパチニブの早期での使用を考慮すべきではないかとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

CHER-LOB試験(Clinical Trials.gov)
NSABP-B41試験(Clinical Trials.gov)
NeoALTTO試験(Clinical Trials.gov)
CALGB40601試験(Clinical Trials.gov)

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先生の大切な人に知らせませんか、乳がん啓発のクラウドファンディング開始

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 YouTubeを中心に、ブレスト・アウェアネスや乳がんに関する情報発信を行っている一般社団法人BC Tubeが、「あなたの手紙で、大切な人にもブレスト・アウェアネスを」と題したクラウドファンディングのプロジェクトを開始させた。プロジェクトを通して、参加者が大切な人への手紙を送ることで、“手紙を受け取った人が自分の健康へ目を向けるきっかけをつくる”ことを目指している。

 一般社団法人BC Tubeは、有志の乳腺科医が集まり、乳がんに関する理解しやすい適切な医療情報を広めることで、人々の乳がんに関する意識を高め、人々の健康と福祉に寄与することを目的として、2020年11月に設立。症状や検査、治療法等についての解説動画をYouTubeに投稿している。

 今回のプロジェクトでは支援者への返礼品として、
・「大切な人に送るための手紙とブレスト・アウェアネスカード」
もしくは
・医療機関、企業、団体等で使用可能な「ブレスト・アウェアネスに関するリーフレットやこれまでのBC Tube動画をまとめたDVD」
が送付される予定。

 このプロジェクトの背景には、いかにして“無関心層”へブレスト・アウェアネスや乳がんのことを知ってもらうかという課題認識があり、多くの人にとって関心の乏しい情報は心に響きにくい一方で、身近な人から言われた一言には、その人の行動を変える大きな力を持つのではないかという想いがある。

 プロジェクトで集まった資金はブレスト・アウェアネスをさらに広めるための活動に活用される予定で、下記の到達目標がそれぞれ設定されている。
1stゴール(100万円達成):リーフレット・DVD作成費用、全国の医療機関にリーフレット・DVD配布費用など
2ndゴール(300万円達成):全国の公共施設にリーフレット・DVD配布費用など
3rdゴール(500万円達成):BC Tubeの継続的な活動費、教育資材作成費(医療従事者向け・教諭向け・小中高生向け)など

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

「あなたの手紙で、大切な人にもブレスト・アウェアネスを」

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HR+/HER2+早期乳がん、de-escalateした術前補助療法に適した症例は?(ADAPT TP)/ESMO2021

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 ホルモン受容体陽性HER2陽性(HR+/HER2+)早期乳がんに対するT-DM1(トラスツズマブ エムタンシン)でのde-escalateした術前補助療法において、治療前の腫瘍免疫原性が高いほど病理学的奏効(pCR)率が高く予後良好なことが、ドイツ・West German Study Group(WSG)によるADAPT triple positive(TP)試験で示された。WSGのNadia Harbeck氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。

 ADAPT TP試験はWSGによる第II相試験で、ADAPTアンブレラ試験の一部である。すでに主要評価項目であるpCR率はT-DM1投与群で40%を超え、副次評価項目の生存アウトカムも良好だったことが報告されている。今回は、もう1つの副次評価項目であるトランスレーショナルリサーチについて、治療前の生検で分析されたバイオマーカーにより検討された。

・対象:HR+/HER2+早期乳がん 375例
・試験群A:T-DM1(3週ごと)12週 119例
・試験群B:T-DM1(3週ごと)+内分泌療法12週 127例
・試験群C:トラスツズマブ(3週ごと)+内分泌療法12週 129例
術後または12週の生検後(pCRが得られない場合)は標準化学療法が推奨され、pCRが得られた場合は化学療法の省略が許容された。
・評価項目
[主要評価項目]pCR率(ypT0/is/ypN0)
[副次評価項目]安全性、5年無浸潤疾患生存(iDFS)率、5年全生存率、トランスレーショナルリサーチ

 早期奏効は、3週時点の生検でKi67が治療前の30%以上減少または低細胞密度(腫瘍細胞数が500個未満)の場合とした。腫瘍浸潤リンパ球とIHCの免疫マーカー(CD8、PD1、PDL1)、PIK3CA変異の有無、遺伝子(RNA)発現を治療前の検体で評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・治療前におけるCD8発現やPD-L1発現が良好なpCRと関連し、また、良好なiDFSとより強い関連がみられた。iDFSのハザード比(HR)は、CD8A発現で0.61(95%信頼区間[CI]:0.36~1.01)、CD8 mRNA発現で0.66(95%CI:0.47~0.92)、免疫細胞PD-L1発現で0.32(95%CI:0.10~1.07)だった。
・PIK3CA変異は16.32%に認められ、pCR率および5年iDFS率の低下と関連していた。すべての患者で予後が悪化したが、とくにT-DM1投与患者では5年iDFS率に22%の差があった(野生型90.2%、変異型68.4%、p=0.007)。
・本試験における分子サブタイプは、luminal Aタイプが55.9%、luminal Bタイプが22.69%、HER2-enrichedタイプが21.3%、basal-likeタイプが0.93%であった。pCR率はHER2-enrichedタイプが最も高かったが、5年iDFS率はluminal Aタイプが89.8%と最も高く、HER2-enrichedタイプは80.9%と低かった。

 Harbeck氏は、「HR+/HER2+早期乳がんにおいて、治療前における腫瘍免疫原性はde-escalateした術前補助治療後の高いpCR率と予後良好に関連していた。PIK3CA変異がある患者は、T-DM1を投与し術後に化学療法とトラスツズマブを投与しても予後不良であった。luminal Aタイプの患者は、HER2標的治療後にpCR率が低くても最も予後が良好だった」と結果をまとめ、「今後のde-escalation戦略については、luminal AタイプではpCR率と生存率、HER2-enrichedタイプではpCRによるアプローチが有望」とした。

(ケアネット 金沢 浩子)


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ADAPT試験(Clinical Trials.gov)

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新規の抗HER2抗体薬物複合体、複数の治療歴のあるHER2+乳がんのPFSを延長(TULIP)/ESMO2021

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 複数の治療歴のある転移を有するHER2陽性乳がんに対し、新規の抗HER2抗体薬物複合体(ADC)であるtrastuzumab-duocarmazine (SYD985)は、従来の標準治療に比較し、有意に無増悪生存期間(PFS)を延長することが示唆された。これは国際共同第III相比較試験であるTULIP試験の結果で、スペイン・Hospital Universitari Vall d’HebronのCristina Saura Manich氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表された。SYD985はトラスツズマブにアルキル化剤であるduocarmazineを結合したADC薬である。

・対象:T-DM1または2レジメン以上の抗HER2の治療歴のあるHER2陽性の局所進行または転移を有する症例 437例
・試験群:SYD985(1.2mg/kg)を3週ごとに投与(SYD群 291例)
・対照群:主治医の選択治療(PC群 146例)
治療レジメンはラパチニブ+カペシタビン、トラスツズマブ+カペシタビン、トラスツズマブ+ビノレルビン、トラスツズマブ+エリブリンから選択
・評価項目
[主要評価項目]中央判定によるPFS
[副次評価項目]主治医評価による無イベント生存期間(EFS)と全生存期間(OS)、奏効率、QOL

 主な結果は以下のとおり。

・症例の前治療ライン数の中央値はSYD群が4、PC群が5であった。内訳は、86~89%がトラスツズマブかT-DM1、58~61%がペルツズマブ、1~7%がtucatinib、margetuximab、T-DXdであった。
・年齢中央値はSYD投与群が56歳、PC群は58歳であった。
・中央判定によるPFS中央値は、SYD群が7.0ヵ月、PC群が4.9ヵ月で、ハザード比(HR)は0.64(95%信頼区間[CI]:0.49~0.84)、p=0.002と統計学的に有意であった。
・主治医判定によるPFS中央値は、SYD群が6.9ヵ月、PC群が4.6ヵ月で、HRは0.60(95%CI:0.47~0.74)、p<0.001であった。
・初回中間解析でのOS中央値は、SYD群が20.4ヵ月、PC群が16.3ヵ月、HRは0.83(95%CI:0.62~1.09)、p=0.153であった。
・奏効率はSYD群27.8%、PC群29.5%と、両群間に有意な差はなかった。
・頻度の高い治療関連有害事象は、SYD群では結膜炎(全Grade:38.2%、Grade3以上:5.6%)、角膜炎(全Grade:38.2%、Grade3以上:12.2%)であった。PC群では、下痢(全Grade:35.8%、Grade3以上:2.2%)、好中球減少(全Grade:24.1%、Grade3以上:18.2%)であった。
・さらに、SYD群で間質性肺炎/肺臓炎が7.6%(Grade3以上:2.4%)に認められた。間質性肺炎/肺臓炎により治療中止となったのは5.2%、減量が行われたのは2.1%の症例であった。

 最後に演者は「SYD985は、複数の治療歴のある転移を有するHER2陽性乳がんに対する新しい治療オプションとなり得る」と結んだ。

(ケアネット)


【参考文献・参考サイトはこちら】

TULIP試験(ClinicalTrials.gov)

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ribociclib+レトロゾールが乳がん1次治療のOSを改善(MONALEESA-2)/ESMO2021

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 HR陽性HER2陰性の転移を有する乳がん(mHRBC)に対するCDK4/6阻害薬ribociclibとレトロゾールの併用療法による1次治療は、レトロゾール単独療法より全生存期間(OS)を延長することが示された。国際共同の大規模臨床試験であるMONALEESA-2試験の最終解析で、米国The University of Texas MD Anderson Cancer CenterのGabriel N. Hortobagyi氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)にて発表された。

 本試験は二重盲検無作為化第III相試験であり、ribociclibは本邦では未発売である。

・対象:閉経後のmHRBCで、転移・再発に対する治療歴のない症例 668例(ホルモン剤による術前または術後療法は許容)
・試験群:ribociclib+レトロゾール群 334例(Ribo群)
・対照群:プラセボ+レトロゾール群 334例(Pla群)
ribociclibは 600mg/日を3週間投与1週間休薬。レトロゾールは2.5mg/日を連日投与。
・評価項目
[主要評価項目]主治医評価による無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]OS、奏効率、クリニカルベネフィット率、安全性、QOL

 主な結果は以下のとおり。

・主要評価項目のPFSについては、すでにRibo群の有意な延長が報告されている(中央値25.3ヵ月vs.16.0ヵ月、ハザード比[HR]:0.568、p=9.63×10-8)。
・今回のOS最終解析のデータカットオフ時(2021年6月)の観察期間中央値は80ヵ月(最短75ヵ月)であり、この時点ではRibo群の30例(9.0%)、Pla群の17例(5.1%)が投薬継続中であった。
・OS中央値はRibo群63.9ヵ月、Pla群51.4ヵ月で、HRは0.76(95%信頼区間[CI]:0.63~0.93)、p=0.004と有意にRibo群で良好であった。
・4年OS率はRibo群が60.9%、Pla群が55.2%、5年OS率はRibo群が52.3%、Pla群が43.9%、6年OS率はRibo群が44.2%、Pla群が32.0%と、期間が延びるほど両群の差は大きくなっていた。
・試験投薬終了後に後治療を受けていたのはRibo群が87.8%、Pla群が90.2%で、何らかのCDK4/6阻害薬の投与を受けていたのは、Ribo群21.7%(パルボシクリブが16.1%)、Pla群34.4%(パルボシクリブが31.5%)であった。
・探索的解析である化学療法施行までの期間中央値は、Ribo群50.6ヵ月、Pla群38.9ヵ月で、HRは0.74(95%CI:0.61~0.91)であった。
・安全性に関する新たな徴候は見られなかった。Grade3/4の主な有害事象は好中球減少症(Ribo群63.8%、Pla群1.2%)、肝機能障害(14.4%、4.8%)、QT延長(4.5%、2.1%)などであった。

 Hortobagyi氏は最後に、「Ribo群のOS中央値は5年を超え、さらにPla群に比し臨床的にも意義のある12ヵ月のOS延長を示した本試験の結果と、これまでのribocilcibの試験(MONALEESA-3、MONALEESA-7)の結果から、ribociclibとホルモン剤の併用療法は、治療ラインを問わずmHRBC治療の重要な治療選択肢となり得る」と述べた。

(ケアネット)


【参考文献・参考サイトはこちら】

MONALEESA-2試験(ClinicalTrials.gov)

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カルボプラチン+パクリタキセルの術前療法がTN乳がんの予後を改善(BrighTNess)/ESMO2021

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 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する術前療法としてのカルボプラチン+パクリタキセル療法が、長期予後追跡の結果、無イベント生存期間(EFS)を改善することが示唆された。これは大規模臨床試験のBrighTNess試験の結果であり、ドイツ・German Breast Group(GBG)のSibylle Loibl氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表された。

 本試験は、国際共同の第III相比較試験であり、すでに主要評価項目である病理学的奏効率(pCR率)については2018年に報告済みである。今回は長期予後のEFSと全生存期間(OS)に関する報告。

・対象:gBRCAの判定結果を有するStage2/3のTNBC症例(634例)
・試験群:(1)カルボプラチン+パクリタキセル+veliparib(PARP阻害薬)の併用(CPV群)
(2)カルボプラチン+パクリタキセル+veliparibのプラセボ(CP群)
・対照群:パクリタキセル+カルボプラチンのプラセボ+veliparibのプラセボ(P群)
カルボプラチンはAUC 6mg/mL/分を3週ごとに、パクリタキセルは80mg/m2を1週ごとに投与し、共に16週間以内に投与完了。併用するveliparibは50mg/日(内服)。
この3群の投与後はすべての群で、ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)を4サイクル追加投与し、その2~8週間後に手術を施行。
・評価項目
[主要評価項目]pCR率
[副次評価項目]EFSとOS、安全性(2次発がんの検討含む)

 主な結果は以下のとおり。

・患者の年齢中央値は約50歳、gBRCA変異ありは約15%、N0症例は約58%であった。
・観察期間中央値4.5年時点で、3群ともに50%EFS期間に到達しておらず、CPV群のP群に対するEFSハザード比(HR)は0.63(95%信頼区間[CI]:0.43~0.92)、p=0.02であった。CP群のHRは0.57(95%CI:0.36~0.91)、p=0.02であった。CPV群とCP群間ではHRは1.12(95%CI:0.72~1.72)、p=0.62であった。
・pCRが得られた症例のEFSは、gBRCA変異状況に関係なく、pCRが得られなかった患者に比べて良好であった。HRは0.26(95%CI:0.18~0.38)、p<0.0001であった。
・OSに関しては、死亡はCPV群が38/316例で12%、CP群16/160例の10%、P群では22/158例で14%であった。CPV群のP群に対するHRは0.82(95%CI:0.48~1.38)、p=0.45で、CP群はHR 0.63(95%CI:0.33~1.21)、p=0.17、CPV群とCP群間ではHR 1.25(95%CI:0.70~2.24)、p=0.46であった。
・骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病を含む2次発がんの発生頻度は3群間で大きな差はなかった(0~4%)。

 演者は、「TNBCの術前療法としてのveliparibの追加は有用ではなかったが、従来のパクリタキセル+AC療法にカルボプラチンを追加する意義は大きかった。さらにこれはgBRCAステータスには無関係であった」と締めくくった。

(ケアネット)


【参考文献・参考サイトはこちら】

BrighTNess試験(Clinical Trials.gov)

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早期乳がんの術後トラスツズマブは6ヵ月で十分か?~メタ解析/ESMO2021

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 HER2陽性早期乳がん患者に対するトラスツズマブ単剤での術後補助療法の無浸潤疾患生存期間(iDFS)について、これまでの無作為化非劣性試験の個々の患者データを用いてメタ解析を実施した結果、標準である12ヵ月投与に対して6ヵ月投与での非劣性が示された。英国・Cambridge University Hospitals NHS Foundation TrustのHelena M. Earl氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。

 Earl氏らは、系統的レビューを用いて5つの無作為化非劣性試験を特定した。そのうち、PERSEPHONE、PHARE、HORGの3試験は12ヵ月と6ヵ月の比較、SOLDとShort-HERの2試験は12ヵ月と9週の比較。主要評価項目はiDFSとし、ITT解析を行った。事前に絶対的非劣性マージンを2%と設定、5年iDFS率をランダム効果モデルおよび固定効果モデルで推定した。絶対的マージン2%でのハザード比(HR)の非劣性限界値は、12ヵ月と12ヵ月未満を比較する5試験では1.19、12ヵ月と6ヵ月を比較する3試験では1.20、12ヵ月と9週を比較する2試験では1.25と計算された。

 主な結果は以下のとおり。

・12ヵ月と12ヵ月未満の比較(5試験を結合したランダム効果モデル)では、5年iDFS率はそれぞれ88.46%と86.87%だった。調整HRは1.14(95%信頼区間[CI]:0.88~1.47)で、上限値の1.47は非劣性限界値の1.19を大きく上回り、非劣性は示されなかった(非劣性のp=0.37)。
・12ヵ月と6ヵ月の比較(3試験を結合した固定効果モデル)では、5年iDFS率はそれぞれ89.26%と88.56%だった。調整HRは1.07(90%CI:0.98~1.17)で、上限値の1.17は非劣性限界値の1.2よりも小さく、非劣性が示された(非劣性のp=0.02)。
・12ヵ月と9週の比較(2試験を結合した固定効果モデル)では、5年iDFS率はそれぞれ91.40%と89.22%だった。調整HRは1.27(90%CI:1.07~1.49)で、上限値の1.49は非劣性限界値の1.25を大幅に超え、非劣性は示されなかった(非劣性のp=0.56)。

 Earl氏は、「個々の患者の選択を可能にするためにガイドラインの変更を検討すべきである。トラスツズマブ単剤での術後補助療法を6ヵ月実施後12ヵ月まで継続した場合、0.7%というわずかな上乗せベネフィットしか得られないというエビデンスを示すことができる。患者はオンコロジーチームと共に、12ヵ月まで継続するかどうかを選択可能」とした。

(ケアネット 金沢 浩子)


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迅速承認がん治療薬、確認試験が否定的でも推奨薬のまま?/BMJ

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 米国食品医薬品局(FDA)の迅速承認を受けたがん治療薬の適応症は、法令で定められた承認後確認試験で有効性の主要エンドポイントの改善が得られなかった場合であっても、3分の1が添付文書に正式なFDAの承認を得たものとして記載され、数年にわたり診療ガイドラインで推奨されたままの薬剤もあることが、カナダ・クイーンズ大学のBishal Gyawali氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2021年9月8日号で報告された。

承認後確認試験で否定的な迅速承認薬の後ろ向き観察研究

 研究グループは、FDAの迅速承認を受けたものの、承認後確認試験で主要エンドポイントの改善が得られなかったがん治療薬の規制上の取り扱いを調査し、承認後確認試験の否定的な結果が診療ガイドラインでの推奨にどの程度影響を及ぼしているかを評価する目的で、後ろ向き観察研究を実施した(米国・Arnold Venturesの助成を受けた)。

 FDAのDrugs@FDAデータベースを用いて、2020年12月までに迅速承認を受けたすべてのがん治療薬が系統的に検索された。また、FDAのPostmarketing Requirements and Commitmentsデータベースを検索し、これらの薬剤の適応症について、法令で定められた承認後確認試験の結果が調査された。

 規制措置や確認試験の否定的な結果が臨床現場に及ぼす影響を評価するために、迅速承認された各薬剤の適応症について、全米包括的がんネットワーク(NCCN)の診療ガイドラインにおける、2021年5月の時点での推奨状況の確認が行われた。

自主的に撤回は61%、1項目はFDAが承認を取り消し

 迅速承認を受けたが承認後確認試験で主要エンドポイントが改善されなかったがん治療薬とその適応症として、10剤の18項目(免疫チェックポイント阻害薬 11項目、モノクローナル抗体 4項目、分子標的薬、化学療法薬、抗体薬物複合体 各1項目)が特定された。

 18項目のうち、11項目(61%)が製薬会社によって自主的に撤回され、1項目(HER2陰性乳がんのベバシズマブ)はFDAにより承認を取り消されていた。11項目の自主的撤回のうち6項目は2021年に行われていた。また、18項目のうち残りの6項目(33%)は、添付文書に適応と記載された状態だった。

 一方、NCCNガイドラインでは、承認の自主的撤回および取り消し後も一定の頻度で、これらの薬剤が高いレベルで推奨されており、1項目(PD-L1陽性トリプルネガティブ乳がんのアテゾリズマブ)がカテゴリー1(高レベルのエビデンスに基づき、NCCNの統一したコンセンサスがある)、7項目はカテゴリー2A(比較的低レベルのエビデンスに基づき、NCCNの統一したコンセンサスがある)であった。

 著者は、「これらの知見は、迅速承認の行程を支える速度とエビデンスの妥結点が達成されていないことを表している。最近の規制措置の動きからは、FDAがこのような状況に多大な注意を払ってきたことがうかがわれるが、FDAが承認したすべての薬剤が患者にとって安全で有効であることを示すには、迅速承認の行程の新たなガイダンスと改革が求められる」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Gyawali B, et al. BMJ. 2021;374:n1959.

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TN乳がん1次治療におけるペムブロリズマブ上乗せ、CPS≧10でOS改善(KEYNOTE-355)/ESMO2021

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 未治療の手術不能または転移を有するPD-L1 CPS 10以上のトリプルネガティブ(TN)乳がん患者において、ペムブロリズマブ+化学療法はプラセボ+化学療法と比較して、全生存(OS)期間を有意に改善した。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)包括的がんセンターのHope S. Rugo氏が、第III相KEYNOTE-355試験におけるOSの最終解析結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。本邦では、PFSを有意に改善した同試験の中間解析結果を基に、2021年8月に承認されている。

・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性のTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例
・ペムブロリズマブ群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例
・プラセボ群:プラセボ+化学療法 281例
・層別化因子:化学療法の種類(タキサンかゲムシタビン/カルボプラチン)、PD-L1発現(CPS≧1かCPS<1)、術前/術後化学療法の有無
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS≧10およびCPS≧1)およびITT集団におけるPFSと全生存期間(OS)
[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフは2021年6月15日。観察期間中央値はペムブロリズマブ群が44.0ヵ月、プラセボ群が44.4ヵ月だった。
・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値が53歳、CPS≧1が約75%、CPS≧10が約38%だった。試験で投与されたのはタキサンが約45%、ゲムシタビン/カルボプラチンが約55%。de novo転移が約30%、無再発期間<12ヵ月が約20%だった。
・CPS≧10の患者におけるOS中央値は、ペムブロリズマブ群23.0ヵ月 vs.プラセボ群16.1ヵ月(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.55~0.95、p=0.0093)と有意な改善がみられた。OS率は18ヵ月時点でペムブロリズマブ群58.3% vs.プラセボ群44.7%、24ヵ月時点で48.2% vs.34.0%だった。
・CPS≧10の患者におけるOSのサブグループ解析では、化学療法の種類や治療歴などによらずペムブロリズマブ群におけるベネフィットがみられたが、無再発期間<12ヵ月の患者ではみられなかった。ただし、サンプルサイズが小さいことには留意が必要となる。
・CPS≧1の患者におけるOS中央値は、ペムブロリズマブ群17.6ヵ月 vs.プラセボ群16.0ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.72~1.04、p=0.0563)と事前に設定された有意性水準(p<0.0172)を満たさなかった。OS率は18ヵ月時点でペムブロリズマブ群48.4% vs.プラセボ群41.4%、24ヵ月時点で37.7% vs.29.5%だった。
・ITT集団におけるOS中央値は、ペムブロリズマブ群17.2ヵ月 vs.プラセボ群15.5ヵ月(HR:0.89、95%CI:0.76~1.05)。OS率は18ヵ月時点でペムブロリズマブ群47.8% vs.プラセボ群41.8%、24ヵ月時点で35.5% vs.30.4%だった。
・Grade3以上の治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群68.1%(死亡2例) vs.プラセボ群66.9%(死亡例なし)で報告された。
・Grade3以上の免疫関連有害事象は、ペムブロリズマブ群5.3% vs.プラセボ群0.0%で報告された。死亡例は報告されていない。多く報告されたのは甲状腺機能低下症・亢進症だった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

KEYNOTE-355試験(Clinical Trials.gov)

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閉経後乳がん術後療法、タモキシフェン後のレトロゾール延長の効果は?(GIM4)/ESMO2021

提供元:CareNet.com

 閉経後のホルモン受容体(HR)陽性乳がんの術後補助療法において、タモキシフェン2〜3年間投与後のレトロゾールの投与期間について、標準の2〜3年間に比べて5年間のほうが無浸潤疾患生存期間(DFS)と全生存期間(OS)を有意に改善したことが、イタリア・Gruppo Italiano Mammella(GIM)によるGIM4試験で示された。IRCCS Ospedale Policlinico San MartinoのLucia Del Mastro氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。なお、この結果はLancet Oncology誌オンライン版2021年9月17日号に同時掲載された。

 本試験は、イタリアの64施設で実施された多施設非盲検無作為化第III相試験で、2005~10年に2,056例が登録され、対照群と延長群に1:1に割り付けられた。

・対象:タモキシフェンを2~3年間投与され、再発していないStage I〜IIIの乳がん患者
・試験群(延長群): レトロゾール5年投与(内分泌療法7~8年まで)1,026例
・対照群:レトロゾール2~3年投与(内分泌療法5年まで)1,030例
・評価項目:
[主要評価項目]DFS
[副次評価項目]OS、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値11.7年(四分位範囲:9.5~13.1)において、DFSイベントは、対照群で262例(25%)、延長群で212例(21%)に発生した。
・12年推定DFS率は、対照群が62%(95%CI:57.5~66.5)、延長群が67%(95%CI:62.2~71.2)だった(ハザード比[HR]:0.78、95%CI:0.65~0.93、p=0.006)。
・サブグループ解析では、全体として延長群が有意に(p=0.014)良好だったが、リンパ節転移の有無で有意差がみられた。
・死亡は、対照群で147例、延長群で116例だった。
・12年推定OS率は、対照群が84%(95%CI:81.8~86.9)、延長群で88%(95CI:85.7~90.5)だった(HR:0.77、95%CI:0.60~0.98、p=0.036)。
・主な有害事象は関節痛(対照群29%、延長群35%)筋肉痛(対照群7%、延長群11%)だった。骨折(p=0.28)、高コレステロール血症(p=0.17)、心血管イベント(p=0.069)について、両群で有意な差はみられなかった。

 Mastro氏は「タモキシフェン2~3年間投与後レトロゾール5年間投与は、閉経後HR陽性乳がん患者における標準内分泌治療の1つとして考慮されるべき」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

GIM4試験(Clinical Trials.gov)

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