HR0.28、T-DXdがHER2+乳がん2次治療でT-DM1に対しPFS改善(DESTINY-Breast03)/ESMO2021

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 トラスツズマブとタキサンによる治療歴のあるHER2陽性の切除不能または転移を有する乳がん(mBC)患者に対し、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)がトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した。スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)でDESTINY-Breast03試験の中間解析結果を発表した。

 DESTINY-Breast03試験は、トラスツズマブとタキサンで以前に治療されたHER2+mBC患者におけるT-DXdとT-DM1の有効性と安全性を比較した多施設共同非盲検無作為化第III相試験。

・対象:トラスツズマブとタキサンによる治療歴のあるHER2+mBC患者
・試験群:以下の2群に1対1の割合で無作為に割り付け
T-DXd群:3週間間隔で5.4mg/kg投与 261例
T-DM1群:3週間間隔で3.6mg/kg投与 263例
・層別化因子:ホルモン受容体の状態、ペルツズマブ治療歴、内臓転移の有無
・評価項目:
[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]OS、BICRおよび治験実施医師評価による客観的奏効率(ORR)、BICR評価による奏効期間(DOR)、治験実施医師評価によるPFS、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・2021年5月21日までに15ヵ国から524例が無作為化された。
・年齢中央値はT-Dxd群54.3歳、T-DM1群54.2歳。両群ともアジア人が約6割を占め、HER2 Statusは3+が約9割、ホルモン受容体陽性の患者は約5割を占めていた。脳転移を有する患者はT-Dxd群23.8%、T-DM1群19.8%。内臓転移を有する患者はT-Dxd群70.5%、T-DM1群70.3%だった。
・治療歴については、1ラインがT-Dxd群49.8%、T-DM1群46.8%、2ラインがT-Dxd群21.5%、T-DM1群24.7%。トラスツズマブ治療歴を有する患者が両群とも99.6%、ペルツズマブ治療歴を有する患者がT-Dxd群62.1%、T-DM1群60.1%だった。
・観察期間中央値は、T-Dxd群が16.2ヵ月、T-DM1群が15.3ヵ月だった。
・主要評価項目のBICR評価によるPFS中央値は、T-Dxd群NR(95%信頼区間[CI]:18.5~NE) vs.T-DM1群6.8ヵ月(95%CI:5.6~8.2)、ハザード比(HR):0.28(95%CI:0.22~0.37、p=7.8×10-22)でT-Dxd群の有意な延長がみられた。12ヵ月時点でのPFS率はT-DM1群34.1%(95%CI:27.7~40.5)に対しT-Dxd群75.8%(95%CI:69.8~80.7)だった。
・PFSのサブグループ解析の結果、ホルモン受容体の状態、ペルツズマブ治療歴、治療ラインの数、内臓および脳転移の有無によらず、すべてのグループでT-Dxd群における有意な延長がみられた。
・副次評価項目の治験実施医師評価によるPFS中央値は、T-Dxd群25.1ヵ月(95%CI:22.1~NE)vs.T-DM1群7.2ヵ月(95%CI:6.8~8.3)、HR:0.26(95%CI:0.20~0.35、p=6.5×10-24)でT-Dxd群の有意な延長がみられた。
・OSデータは未成熟であり、中央値は両群でともにNE、HR:0.56(95%CI:0.36~0.86、p=0.007172)となり事前に設定された有意性水準(p<0.000265)を満たさなかった。
・ORRは、T-Dxd群79.7% vs.T-DM1群34.2%でT-Dxd群で有意に高かった(p<0.0001)。CRは16.1% vs.8.7%、PRは63.6% vs.25.5%だった。
・治療期間中央値はT-Dxd群14.3ヵ月 vs.T-DM1群6.9ヵ月。Grade3以上の治療関連有害事象はT-Dxd群45.1% vs.T-DM1群39.8%で発現した。T-Dxd群のGrade3以上の治療関連有害事象として多かったのは好中球減少症(19.1%)、血小板減少症(7.0%)、白血球減少症(6.6%)、吐き気(6.6%)だった。
・治療中止に関連した有害事象としてT-Dxd群で最も多かったのはILD/肺炎(8.2%)、T-DM1群では血小板減少症(2.7%)だった。ただし、T-Dxd群でGrade4あるいは5のILD/肺炎はみられなかった。Grade2の左室駆出率低下がT-Dxd群で2.3%、T-DM1群で0.4%みられたが、Grade3以上の報告はない。

 Cortes氏は、本結果はT-DxdがHER2陽性mBC患者の2次治療における標準治療となることを支持するものと結論付けている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

DESTINY-Breast03試験(Clinical Trials.gov)

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がん薬物療法時の制吐目的のデキサメタゾン使用に関する合同声明/日本癌治療学会・日本臨床腫瘍学会

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 新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、デキサメタゾン製剤の供給が不足している。2021年8月27日に厚生労働省から発出された「デキサメタゾン製剤の安定供給について」の通知を受け、新型コロナウイルス感染症患者およびがん患者の薬物療法に関して、9月9日、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本感染症学会、日本呼吸器学会が合同声明文を発出した。

 そのうち、がん患者の薬物療法に関する合同声明文では、がん患者の薬物療法に携わる医療関係者に対して、薬物療法によって発現する悪心・嘔吐(CINV)を制御するために使用されるデキサメタゾン製剤の適正使用およびデキサメタゾン内服薬の代替使用について、以下のように協力を呼びかけている。

1. 制吐薬適正使用ガイドライン等、関連ガイドラインに従い、個々の症例の催吐リスクに応じて適切な制吐療法の提供を継続ください。

2. 以下の例のように、経口デキサメタゾン等のステロイド製剤を減量できる、あるいは代替療法がある場合は、経口ステロイド製剤の使用量を可能な範囲で低減ください。
例1)高度催吐性リスクの抗がん薬を使用する場合に、第 2 日目、第 3 日目の経口デキサメタゾンを省略する。
例2)中等度催吐性リスクの抗がん薬を使用する場合に、5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬、多元受容体作用抗精神病薬を積極的に使用し、経口デキサメタゾンの使用を省略する。
例3)中等度催吐性リスクの抗がん薬を使用する場合の、遅発性の悪心・嘔吐の予防には、5-HT3受容体拮抗薬を優先する。
例4)軽度催吐性リスクの抗がん薬を投与する場合で制吐療法を行う場合は、経口デキサメタゾンの使用を避け、メトクロプラミドあるいはプロクロルペラジンを使用する。
例5)多元受容体作用抗精神病薬であるオランザピンは、糖尿病性昏睡/糖尿病性ケトアシドーシスによる害よりもCINV対策が優先されると考えられる場合は、コントロール可能な糖尿病患者に限り、患者より同意を得た上で主治医が注意深く使用する場合には考慮してよい。

3. 前サイクルのがん薬物療法で、CINVが認められなかった場合、経口デキサメタゾンの減量や省略を検討ください。

4. 患者が経口デキサメタゾンを保有している場合、新たな処方を行わず、持参の経口デキサメタゾンの有効活用にご協力ください。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

日本癌治療学会ホームページ:デキサメタゾン内服薬の供給不足下における新型コロナウイルス感染症患者およびがん患者の薬物療法に関する関連学会からの合同声明文 (2021.9.9)

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40代日本人女性、乳房構成ごとのマンモグラフィ+超音波の上乗せ効果

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 現在、わが国における乳がん検診は、40歳以上に対する2年に1度の乳房X線検査(マンモグラフィ)が推奨されているが、高濃度乳房ではマンモグラフィによる精度低下が指摘されている。一方、超音波検査は乳房濃度に依存せず安価であり、乳がん検診への導入が期待されるが、有効性評価に関する研究は報告されていない。今回、40代の日本人女性を対象に、乳房構成ごとのマンモグラフィ+超音波検査併用による発見率・感度・特異度等を調べた大規模無作為化試験(J-START)の二次解析結果が報告された。東北大学の原田 成美氏らによるJAMA Network Open誌8月18日号への報告より。

 J-START試験は、40代日本人女性を対象に、マンモグラフィ受診群を対照群、マンモグラフィ検診に超音波検査を加えた群を介入群として、両群に無作為に割り付け、初回とその2年後に同じ検診を受診する無作為化比較試験。第1報として初回検診における感度、特異度、がん発見率についてLancet誌に2016年1月に報告され1)、今回の第2報では「乳房濃度別の感度、特異度解析による超音波検査の評価」が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・2007~20年に宮城県のスクリーニングセンターから登録された1万9,213人の女性(平均年齢:44.5 [SD:2.8]歳)のデータが分析された。
・9,705人が介入群、9,508人が対照群に無作為に割り付けられた。
・1万1,390人(59.3%)が、不均一高濃度または極めて高濃度の乳房を有していた。
・全体で130のがんが発見され、感度は介入群の方が対照群よりも有意に高かった(93.2%[95%CI:87.4~99.0%] vs.66.7%[54.4~78.9%]、p<0.001)。
・乳房構成ごとに感度をみると、高濃度乳房(介入群93.2%[85.7~100.0%] vs.対照群70.6%[55.3~85.9%]、p<0.001) および非高濃度乳房(介入群93.1%[83.9~102.3%] vs.対照群60.9%[40.9~80.8%]、p<0.001)で同様の傾向が観察された。
・1,000回のスクリーニング当たりの中間期がん発生率は、対照群と比較して介入群で低かった(0.5 cancers [0.1~1.0] vs. 2.0 cancers [1.1~2.9]、p=0.004)。
・介入群において、超音波検査のみで検出された浸潤がんの割合は、高濃度乳房(82.4%[56.6~96.2%] vs.41.7%[15.2~72.3%]、p=0.02)および非高濃度乳房(85.7%[42.1~99.6%] vs. 25.0%[5.5~57.2%]、p=0.02)でマンモグラフィ単独の場合よりも有意に高かった。
・ただし、マンモグラフィまたは超音波検査のみの感度は、両群のすべての乳房密度で80%を超えなかった。
・対照群と比較して、特異度は介入群で有意に低かった(91.8%[91.2~92.3%] vs.86.8%[86.2~87.5%]、p<0.001)。
・対照群と比較して、要精検率(13.8%[13.1~14.5%] vs.8.6%[8.0~9.1%]、p<0.001)および生検率(5.5%[5.1~6.0%] vs.2.1%[1.8~2.4%]、p<0.001)は、介入群で有意に高かった。

 研究者らは、この結果は超音波検査の併用が、高濃度乳房と非高濃度乳房どちらにおいても初期段階および浸潤性のがんの検出を改善する可能性を示唆しているとし、乳腺濃度によらず、40〜49歳の女性の乳がんスクリーニング手法として考慮されるべきではないかとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Harada-Shoji N,et al. JAMA Netw Open. 2021;4:e2121505.

【参考文献・参考サイトはこちら】

1)Ohuchi N,et al. Lancet. 2016 Jan 23;387:341-348.

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日本人のがん患者の新型コロナウイルス抗体レベルは低いのか/JAMA Oncol

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 がん患者における新型コロナ抗体レベルは健康成人と比べて低いのか。わが国のがん患者と、非がん罹患者としての医療者のあいだで、血清SARS-CoV-2抗体の状態を比較した国立がんセンター中央病院 矢崎 秀氏らの前向き研究が発表された。

 対象は2020年8月3日~10月30日に、東京周辺の2つのがんセンターから、16歳以上のがん患者と医療者で前向きに登録された。

 評価項目は、がん患者と医療者の血清有病率と抗体レベル。血清陽性の定義は、ヌクレオカプシドIgG(N-IgG)および/またはスパイクIgG(S-IgG)の陽性であった。がん患者は、薬物療法、外科手術、放射線療法などのがん治療を受けている。

 主な結果は以下のとおり。

・がん患者500例(年齢中央値62.5歳、男性55.4%)と医療者1,190例(年齢中央値40歳、男性25.4%)が登録された。
・がん患者の97.8%は固形腫瘍で、1ヵ月以内に抗がん治療を受けていた患者は71.0%であった。
・血清有病率は、がん患者1.0%、医療者0.67%と同等であった(p=0.48)。
・抗体レベルは2種とも、医療者に比べがん患者で有意に低かった(N-IgG抗体:p<0.001、S-IgG抗体:p<0.0001)。
[がん患者における薬物療法と躯体レベルの関係]
・化学療法を受けた患者のN-IgGレベルは、化学療法を受けなかった患者より有意に低かった(p=0.04)。
・免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与を受けた患者の抗体レベルは2種ともICI投与を受けなかった患者より有意に高かった(N-IgGレベル:p=0.02、 S-IgGレベル:p=0.02)。

 この前向き研究では、SARS-CoV-2の血清有病率はがん患者と医療者で差はなかったが、抗体レベルはがん患者で有意に低かった。また、がん患者においては治療薬剤によって抗体レベルに差があった。

 筆者は、がんの合併は、SARS-CoV-2への免疫応答に影響を与える可能性があることを示唆している、と述べている。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Yazaki S,et.al. JAMA Oncol.2021;7:1141-1148.

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アントラサイクリンベース化療中の乳がん、心保護薬の併用でLVEF低下を予防

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 イタリア・フィレンツェ大学Lorenzo Livi氏らがアントラサイクリンベースの化学療法で治療を受けている乳がん患者の無症候性の心臓損傷を軽減できるかどうかを調査した結果、β遮断薬のビソプロロールやACE阻害薬のラミプリル(日本未承認)を投与することで、がん治療に関連するLVEF低下や心臓リモデリングから保護する可能性を示唆した。JAMA Oncology誌2021年8月26日号オンライン版ブリーフレポートでの報告。

 本研究であるSAFE試験は、イタリアの8施設の腫瘍科で実施された多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験で、12ヵ月で心臓評価を完了した最初の174例に関する中間分析。対象者の募集は2015年7月~2020年6月の期間で、中間分析は2020年に実施された。対象者はアントラサイクリンベースのレジメンを使用し、一次または術後の全身療法を受ける兆候があった患者で、事前に心血管疾患の診断を有していた患者は除外された。心臓保護薬としてビソプロロール、ラミプリル、ラミプリルとビソプロロール併用に割り付け、プラセボ群と比較。化学療法の開始から1年間、またはERBB2陽性者はトラスツズマブ療法の終了まで投与を行った。全グループの用量について、ビソプロロール(1日1回5mg)、ラミプリル(1日1回5mg)、プラセボを可能な範囲で体系的に漸増した。

 主要評価項目は、無症状(10%以上悪化)の心筋機能(左心室駆出率[LVEF])と歪み(長軸方向の歪み[GLS:global longitudinal strain])で、2Dおよび3Dの心エコー法で検出した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象者は174例の女性(年齢中央値48歳、範囲24〜75歳)だった。
・12ヵ月間の3D心エコーでLVEFの低下状況を確認したところ、プラセボ群で4.4%、ラミプリル群、ビソプロロール群、併用群でそれぞれ3.0%、1.9%、1.3%の低下だった(p=0.01)。
・全体的な長軸方向の歪みは、プラセボ群で6.0%、ラミプリル群とビソプロロール群でそれぞれ1.5%と0.6%悪化したが、併用群では変化しなかった(0.1%の改善、p<0.001)。
・3D心エコーでLVEFが10%以上低下した患者数は、プラセボ群で8例(19%)、ラミプリル群で5例(11.5%)、ビソプロロール群で5例(11.4%)、併用群で3例(6.8%)だった。
・プラセボ群15例(35.7%)は、ラミプリル群(7例:15.9%)、ビソプロロール(6例:13.6%)、および併用群(6例:13.6%)と比較して、GLSが10%以上も悪化を示した(p=0.03)。

(ケアネット 土井 舞子)


【原著論文はこちら】

Livi L, et al. JAMA Oncol. 2021 Aug 26.[Epub ahead of print]

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ペグフィルグラスチムの自動投与デバイスを国内申請/協和キリン

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 協和キリンは、2021年8月30日、テルモと共同開発中の持続型G-CSF製剤ペグフィルグラスチム(製品名:ジーラスタ)の自動投与デバイスについて、がん化学療法による発熱性好中球減少症注の発症抑制を適応症とした製造販売承認申請を厚生労働省に行った。

 今回の申請は、協和キリンが実施した、安全性の評価を目的とする第I相臨床試験の結果に基づくもの。

 ペグフィルグラスチムは、がん化学療法剤投与終了後の翌日以降に投与されるのが通常である。

 同デバイスは、ペグフィルグラスチムが一定時間後に自動で投与される機能を搭載している。そのため、がん化学療法と同日に使用することが可能となり、投与のための通院が不要となる。

 患者の通院負担と医療従事者の業務負担の軽減につながることが期待されている。

(ケアネット 細田 雅之)


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閉経前の進行乳がん1次治療、エベロリムス併用でPFS延長(MIRACLE)/JAMA Oncol

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 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)投与中に病勢進行したホルモン受容体(HR)陽性/HER2陰性の進行乳がんの閉経前女性を対象とした第II相無作為化試験(MIRACLE)で、レトロゾール単独に対して、エベロリムス併用で無増悪生存期間(PFS)延長が認められた。中国・Chinese Academy of Medical Sciences & Peking Union Medical CollegeのYing Fan氏らがJAMA Oncology誌オンライン版で報告。

 本試験は、2014年12月8日~2018年9月26日に1次治療を実施した対象患者において、レトロゾールとエベロリムス併用をレトロゾール単独と比較した多施設非盲検第II相無作為化試験。2015年1月5日~2019年12月30日にITT解析を実施した。

対象:SERM投与中に病勢進行したHR陽性/HER2陰性の進行乳がんの閉経前女性 199例
試験群:レトロゾール(2.5 mg1日1回経口)+エベロリムス(10 mg1日1回経口)101例
対照群:レトロゾール(2.5 mg1日1回経口)98例
両群とも28日サイクルの1日目にゴセレリン(3.6mg)を皮下投与。レトロゾール単独群の患者は、病勢進行時にエベロリムス併用群へのクロスオーバーが認められた。
主要評価項目:無増悪生存期間(PFS)

 主な結果は以下のとおり。

・対象患者の平均年齢(SD)は44.3歳(6.3歳)だった。
・エベロリムス併用群はレトロゾール単独群に比べ、PFS中央値が有意に延長した(19.4ヵ月[95%CI:16.3~22.0ヵ月]vs.12.9ヵ月[同:7.6~15.7ヵ月]、ハザード比:0.64[同:0.46~0.89]、p=0.008)。
・レトロゾール単独群98例中56例(57.1%)がエベロリムス併用群にクロスオーバーされ、クロスオーバー後のPFS中央値は5.5ヵ月(95%CI:3.8〜8.2ヵ月)だった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Fan Y, et al. JAMA Oncol. 2021 Aug 26.[Epub ahead of print]

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一部の抗がん剤の投与患者、新型コロナ感染率が低い/JAMA Oncol

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 アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を減少させる可能性のある抗がん剤(mTOR/PI3K阻害薬や代謝拮抗薬など)を投与している患者では、他の抗がん剤の投与患者と比べて有意にSARS-CoV-2感染率が低かったことが、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのMichael B. Foote氏らのコホート研究で示された。JAMA Oncology誌オンライン版2021年8月19日号に掲載。

 本研究ではまず、Library of Integrated Network-Based Cellular Signaturesのデータベースを使用し、細胞株全体でACE2遺伝子の発現低下に関連する抗がん剤を特定した。次に、COVID-19パンデミック中にMemorial Sloan Kettering Cancer Centerでがん治療を受けていた1,701例の後ろ向きコホートについて、ACE2を減少させる抗がん剤での治療がSARS-CoV-2感染のオッズ比(OR)と関連があるかどうかを検討した。対象は、がんの積極的治療を受け、2020年3月10日~5月28日にSARS-CoV-2検査を受けた患者で、主要アウトカムはACE2を減少させる可能性のある抗がん剤による治療とSARS-CoV-2検査陽性との関連とした。

 主な結果は以下のとおり。

・抗がん剤治療を受けているがん患者1,701例(平均年齢±SD:63.1±13.1歳、女性:949例、男性:752例)のSARS-CoV-2感染率を調べた。
・抗がん剤治療後の遺伝子発現シグネチャーのin silico解析により、細胞株全体でのACE2減少に関連する91の化合物が特定された。
・全コホートのうち215例(12.6%)が、mTOR/PI3K阻害薬(エベロリムス、テムシロリムス、alpelisib)、代謝拮抗薬(デシタビン、ゲムシタビン)、有糸分裂阻害薬(カバジタキセル)、その他のキナーゼ阻害薬(ダサチニブ、クリゾチニブ)の8つの薬剤で治療されていた。
・ACE2を減少させる抗がん剤を投与した患者の多変量解析(交絡因子を調整)では、215例中15例(7.0%)がSARS-CoV-2検査陽性、他の抗がん剤を投与した患者では1,486例中191例(12.9%)が陽性だった(OR:0.53、95%CI:0.29~0.88)。
・この関連は、がんの種類やステロイド使用を含んだ多変量解析や、複数の特徴に基づくペア患者を分析した傾向スコアマッチング多変量回帰感度分析でも確認された。
・ゲムシタビン投与はSARS-CoV-2感染の減少と関連していた(OR:0.42、95%CI:0.17~0.87)。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Foote MB, et al. JAMA Oncol. 2021 Aug 19.[Epub ahead of print]

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「遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)ガイドライン」刊行、ポイントは?

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 遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)の診療に関しては、2017年に「遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療の手引き」が刊行されている。HBOC既発症者へのリスク低減手術の保険収載や、膵がん・前立腺がんへのPARP阻害薬の承認など、遺伝子検査に基づく治療・マネジメントがいっそう求められる中、Minds「診療ガイドライン作成マニュアル2017」を遵守する形で、今回新たにガイドラインがまとめられた。2021年8月7日、webセミナー「遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン 2021年版の解説(主催:厚生労働科学研究費補助金[がん対策推進総合研究事業]「ゲノム情報を活用した遺伝性腫瘍の先制的医療提供体制の整備に関する研究」班)が開催され、各領域のポイントが解説された。

遺伝子診断・遺伝カウンセリング領域のポイント

 遺伝子診断・遺伝カウンセリング領域の最も重要なコンセプトは「がん未発症と既発症を区別せず、遺伝的な特性としてHBOCを捉えるという点」と平沢 晃氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科臨床遺伝子医療学)。BRCA遺伝情報を知ることのメリットは、(1)本人の治療法の選択、(2)本人のがん予防、(3)血縁者へのがん予防であると整理した。

 現在、手術や検査の対象によって、保険収載と未収載が混在している状況がある。遺伝BQ1ではこれらの状況について整理している。遺伝BQ2では、表「NCCNガイドラインの遺伝学的検査の基準」を掲載し、どのようなクライエントにBRCA遺伝学的検査を推奨するかがまとめられている。平沢氏はこの表のうち、
・乳がんの発症者で
・45歳以下の発症
・50歳以下の発症で条件に当てはまる場合
・60歳以下のトリプルネガティブ乳がん
・年齢を問わず1人以上の近親者が条件に当てはまる場合
・卵巣がん発症者
・男性乳がん
について、2020年よりBRCA遺伝学的検査が保険診療の対象となったことを解説。その他(既知のBRCA1/2の病的バリアントを保持する家系の個人、膵がん、高グレード前立腺がんで条件に当てはまる場合、腫瘍プロフィール検査でBRCA1/2の病的バリアントを認めた場合)は未収載となっている。

 また今回のガイドラインでは、「遺伝BQ10 生殖に関する遺伝カウンセリングにはどのように対応するべきか?」を新設。BRCA病的バリアント保持女性の妊孕性温存への対応フローが掲載されている。

乳がん領域のポイント

 領域リーダーを務めた有賀 智之氏(都立駒込病院乳腺外科)はまず、BRCA遺伝学的検査を推奨する乳がん患者について、従来からの血縁者に乳がんまたは卵巣がん患者がいる場合のほか、膵がん患者がいる場合が追加されたことが大きな変更点とした(乳癌BQ1)。

BRCA病的バリアントを有する乳がん患者に対する乳房温存療法については、2017年版の手引きでは「推奨されない」となっていたのに対し、今回は「条件付きで行わないことを推奨する」と変更された(乳癌CQ3)。背景について同氏は、ガイドライン作成にあたり独自に実施されたメタアナリシスの結果、残存乳房内再発率が散発性乳がん患者と比較して高いこと、この傾向は観察期間が長くなるほど明確になることから、温存乳房内の新規発症リスクは長期に継続するものと推察されたと解説。一方で、生存率の悪化についてのデータは認められなかったことから、上記リスクや継続的なスクリーニングの必要性などを理解したうえで選択する場合は、否定しないという位置づけとした。

 そのほか、RRMについては2020年4月に保険適応となり、乳がん既発症/未発症のいずれにおいても新規乳がんのリスク低減効果が示されている(乳癌CQ1、2)。造影乳房MRIについては、乳がん既発症/未発症のいずれも条件付きで推奨とされたが(乳癌CQ4、5)、乳がんも卵巣がんも未発症の場合BRCA病的バリアント保持者へのサーベイランスは保険未収載となっている。この点について同氏は、未発症者においてもMRIサーベイランスからのベネフィットは得られるので、早期に対応されることを期待したいと話した。

卵巣がん領域のポイント

 卵巣がん領域では、領域リーダーを務めた岡本 愛光氏(東京慈恵会医科大学産婦人科学講座)が登壇、解説を行った。BRCA病的バリアント保持者に対するRRSOについて、標準的な術式として低侵襲(腹腔鏡)手術が推奨され、術中播種を予防するための手術操作が箇条書きで示された(卵巣癌BQ2)。RRSOの際の卵管の病理検索については、SEE-FIMプロトコールに準じることが条件付きで推奨され、条件付きとされた理由として、「STIC検出の臨床的意義が現状不確実であること、標本作成等で病理医の負担が増加することがある」と説明した(卵巣癌CQ2)。

 卵巣がんに対する初回薬物療法としては、BRCA病的バリアント保持者においてもプラチナ製剤併用レジメンによるOSの有意な延長がRCT1報、症例対象研究5報で示されており、本ガイドラインでも推奨が示された(卵巣癌CQ3)。PARP阻害薬については、プラチナ製剤を含む初回化学療法後に奏効した同患者に対し、維持療法としての使用を条件付きで推奨するとされた。条件付きとされた理由は、薬剤費が高額なこと、二次がんを含めた長期合併症に関するデータが乏しいこと、至適投薬期間については不確実性が残ることが挙げられた。

前立腺がん領域のポイント

 「BRCAバリアント陽性前立腺がんの大きな特徴は、診断時からのリンパ節転移・遠隔転移症例が有意に多いこと」と小坂 威雄氏(慶應義塾大学医学部泌尿器科教室)。前立腺がんの早期限局がんでの発見例の予後は非常によいことから、転移前にできるだけ早く見つけることが何よりも重要と話した。現在継続中の試験ではあるものの、大規模コホート研究であるIMPACT研究を根拠として、本ガイドラインでは未発症BRCAバリアントの男性保持者に対して、より低いPSAカットオフ値(3.0ng/mL)を用いて40歳からのサーベイランスを実施することを条件付きで推奨している(前立腺癌CQ1)。

 また、前立腺がんにおいては生殖細胞系列だけでなく、体細胞系列のバリアントを有する症例が約半数いる。「家族歴が全くない転移前立腺がん患者さんの中にもBRCAバリアント保持者がいる可能性が指摘されている」と小坂氏は話し、BRCA遺伝学的検査の実施が推奨される前立腺がん患者の条件として、他のがん種で条件とされている家族歴のほか、「遠隔転移またはリンパ節転移を有する転移性前立腺がん患者」が加えられていることが大きな特徴とした(前立腺癌FQ1)。また治療については、2020年に新規内分泌療法後の転移を有する症例について、PARP阻害薬が保険収載された。同氏は、今後実臨床における有効性データが蓄積していくことが望まれると話した(前立腺癌FQ2)。

膵がん領域のポイント

 膵がんにおいて、BRCAバリアント陽性患者は4~7%と報告されている。BRCA遺伝学的検査の実施が推奨される膵がん患者の条件としては、家族歴のほか、「遠隔転移を有するまたは術後再発」であることが示されている(膵癌FQ1)。尾阪 将人氏(がん研有明病院肝胆膵内科)は、「膵がんの治療選択肢は非常に限られており、遺伝学検査を行うことで選択肢を広げることの意義は大きい」と話した。

BRCAバリアント保持者に対する膵がんのスクリーニングの考え方に関して、同氏は遺伝子変異+膵がん家族歴の聴取が非常に重要と指摘。第一度近親者内に膵がん患者が1人以上おりかつBRCA2陽性の場合SIR(標準化罹患比)が5倍以上、第一度近親者内に膵がん患者が2人以上おりかつBRCA2陽性の場合、SIR(標準化罹患比)が30倍以上というデータを紹介した。本ガイドラインでは、「少なくとも1人の第一度近親者に膵がん家族歴のあるBRCA1、2病的バリアント保持者に対し、MRIまたは超音波内視鏡を用いたスクリーニングを考慮する」とされている(膵癌FQ2)。

 治療については、POLO試験においてBRCA病的バリアントを有するプラチナ感受性切除不能膵がんに対する維持療法としてオラパリブがPFSを延長したことを根拠として、同患者に対する治療を条件付きで推奨している(膵癌CQ1)。同氏は留意点として、推奨文から下記を抜粋した:
・OSの延長効果を認めていないことを患者と共有したうえで投与することが望ましい
BRCA病的バリアントを有する膵がん患者の家系に対しても、継続的な遺伝カウンセリングを実施していくことが望ましい

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

JOHBOC「【Web版】遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン2021年版のご案内」

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ペムブロリズマブ、MSI-H大腸がんとTN乳がんに適応拡大/MSD

提供元:CareNet.com

 MSDは2021年8月25日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がん(大腸がん)およびPD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんに関する国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを発表した。

治癒切除不能な進行・再発MSI-H大腸がんに対する適応拡大について

 今回の承認は、化学療法歴のない治癒切除不能な進行・再発のミスマッチ修復(MMR)欠損またはMSI-Highを有する結腸・直腸がん患者307例(日本人22例を含む)を対象とする国際共同第III相試験KEYNOTE-177試験のデータ等に基づく。

 同試験において、ペムブロリズマブ群は化学療法群と比較して、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(HR:0.60、95%CI:0.45~0.80)。安全性については、安全性解析対象例153例中、ペムブロリズマブ群で高頻度(10%以上)に認められた有害事象は、下痢(24.8%)、疲労(20.9%)、そう痒症(13.7%)、悪心(12.4%)、AST増加(11.1%)、発疹(11.1%)、関節痛(10.5%)および甲状腺機能低下症(10.5%)であった。

PD-L1陽性のHR陰性/HER2陰性の手術不能または再発乳がんに対する適応拡大について

 今回の承認は、転移・再発乳がんに対する化学療法歴のない転移・再発または局所進行性のトリプルネガティブ乳がん患者847例(日本人87例を含む)を対象とした国際共同第III相試験KEYNOTE-355試験のデータ等に基づく。

 同試験において、ペムブロリズマブ+化学療法(ゲムシタビンおよびカルボプラチン、パクリタキセルまたはnab-パクリタキセル)併用群はプラセボ+化学療法併用群に対して、PD-L1陽性(CPS≧10)患者323例(日本人28例を含む)において、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(HR:0.65、95%CI:0.49~0.86)。安全性については、PD-L1陽性(CPS≧10)患者における安全性解析対象例219例中、ペムブロリズマブ併用群の主な副作用(20%以上)は、貧血(48.9%)、悪心(41.1%)、好中球減少症(39.7%)、脱毛症(34.7%)、疲労(29.2%)、好中球数減少(23.7%)、下痢(21.9%)、ALT増加(21.5%)および嘔吐(20.1%)であった。

 なお、PD-L1の発現状況を検査するための体外診断薬として、アジレント・テクノロジー株式会社のPD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」が承認されている。

(ケアネット)


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