非浸潤性乳がん、浸潤性がんへの進展リスク因子は?日本人患者の分析から

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 乳房の非浸潤性乳がん(DCIS)は、浸潤性乳がん(IDC)の前駆病変と臨床的には位置づけられ、DCISが見つかった場合、現在では一様に切除手術が行われている。しかしこのDCIS集団中には、真に浸潤性がんに進展するDCIS(真のDCIS 群)だけでなく、浸潤性がんには進展しない症例が含まれることが明らかになってきており、両群を区別する因子の同定が求められている。東京大学学大学院新領域創成科学研究科の永澤 慧氏らは、DCISの進展に関係する候補因子として、臨床病理学的因子に加え、遺伝子因子としてGATA3遺伝子の機能異常を同定した。Communications biology誌オンライン版2021年4月1日号の報告より。

 主な結果は以下のとおり。

・2007~2012年に聖マリアンナ医科大学で手術を受けたDCIS患者431例(年齢中央値:48歳、追跡期間中央値:6.1年、ER陽性:87.0%/HER2陽性:18.8%、4.6%が追跡期間中にIDCに進行)のデータが分析された。その結果、年齢(45歳未満)とHER2陽性が浸潤性がん再発と関連するリスク因子であると示された。
・21症例のDCIS原発病変と再発前後のペア検体を用いた全エクソンシークエンスを実施した結果、GATA3遺伝子変異が浸潤性がんへの進展に関与する遺伝子候補とされた。
・この結果を、全エクソンシークエンスの結果より作成した180遺伝子ターゲットパネルを用いて、72例のターゲットシークエンスを行い確認した(オッズ比[OR]:7.8、95%信頼区間[CI]:1.17~88.4)。
GATA3遺伝子変異をもつDCIS症例の空間トランスクリプトーム解析を行った結果、GATA3遺伝子変異をもつDCIS細胞では、異常を持たない細胞に比べて上皮間葉転換(EMT)や血管新生などのがん悪性化関連遺伝子の活性化を認め、浸潤能を獲得していることが明らかとなった。
GATA3遺伝子変異をもつDCIS細胞におけるPgR(プロゲステロンレセプター)の発現量を確認したところ、有意にその発現が低下していることがわかった。
・ER陽性症例をPgRの発現レベルで2群にわけて再発予後を検討したところ、ER陽性かつPgR陰性のDCISでは有意に予後が悪いことが明らかになった(ハザード比[HR]:3.26、95%CI:1.25~8.56、p=0.01)。
・これらの結果から、ER陽性DCISにおけるGATA3遺伝子変異は、PgR発現がそのサロゲートマーカーになる可能性が示唆された。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Nagasawa S, et al. Commun Biol. 2021 Apr 1;4:438. [Epub ahead of print]

【参考文献・参考サイトはこちら】

国立がん研究センタープレスリリース:非浸潤性乳がんの進展に関わるゲノム科学的リスク因子を同定―治療層別化のための新たな診断基準になる可能性―(2021年4月1日)

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オマリズマブ、免疫チェックポイント阻害薬および抗HER2薬のそう痒症を改善/Ann Oncol

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 IgE阻害薬オマリズマブ(商品名:ゾレア)はアトピー性皮膚炎、蕁麻疹などのそう痒症に有効である。がん領域におけるそう痒関連皮膚有害事象(paCAE)は、免疫チェックポイント阻害薬や抗HER2薬で多くみられる。これらの薬剤による難治性paCAEを伴うがん患者に対してオマリズマブを評価する多施設後ろ向き研究の結果が発表された。

・対象:免疫チェックポイント阻害薬または抗HER2薬によるGrade2〜3の掻痒を有し、局所ステロイドと1つ以上の全身療法に抵抗性の患者
・介入:オマリズマブを月1回投与
・主要評価項目:paCAEのGrade0〜1への改善

 主な結果は以下のとおり。

・34例(女性50%、年齢中央値67.5歳)、がん治療関連paCAE(免疫チェックポイント阻害薬71%、抗HER2薬29%)に対するオマリズマブ投与を受けた。
・対象は、すべて固形腫瘍(乳房29%、泌尿生殖器29%、肺15%、その他26%)で、64%に蕁麻疹が認められた。
・オマリズマブの奏効は34例中28例(82%)に認められた。
・paCAEの支持療法として経口コルチコステロイドを投与された患者の割合は、50%から9%に減少した(P<0.001)。
・皮膚毒性のために腫瘍治療を中断した患者は31%(32例中10例)であった。
・オマリズマブに関連するアナフィラキシーまたは過敏反応の報告は認められなかった。

(ケアネット 細田 雅之)


【原著論文はこちら】

Barrios DM, et al. Ann Oncol. 2021 Mar 3.[Epub ahead of print]

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非浸潤性乳がん患者における浸潤性がんのリスク

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 非浸潤性乳がん(BCIS)患者は浸潤性乳がんリスクが高いという報告があるが、乳がんを除く浸潤性がんの潜在リスクに関する報告は一致していない。今回、スイス・チューリッヒ大学のNena Karavasiloglou氏らが、組織的なマンモグラフィ検診プログラムのないチューリッヒ州におけるBCIS患者のデータを調査したところ、BCIS患者は一般集団に比べ、浸潤性乳がんは6.85倍、乳がんを除く浸潤性がんは1.57倍、リスクが高いことが示された。また、70歳以上でのBCIS診断が乳がんを除く浸潤性がんのリスクと関連していたが、浸潤性乳がんとは関連していなかった。Frontiers in Oncology誌2021年3月18日号に掲載。

 2003~15年に初めてのがんの診断が原発性のBCISであったチューリッヒ州在住の女性1,082例のデータを調査した。原発性のBCIS患者における浸潤性乳がんまたは乳がんを除く浸潤性がんのリスクを、成人女性集団の対応リスクと比較するため、標準化罹患比(SIR)を計算した。SIRは全体および患者と腫瘍の特徴ごとに計算した。Cox比例ハザード回帰モデルを使用し、その後の浸潤性乳がんまたは乳がんを除く浸潤性がんの潜在的な危険因子(診断時の年齢、治療など)を調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・BCIS患者は一般集団と比較して、浸潤性乳がんと診断されるリスクが6.85倍(95%CI:5.52~8.41)高かった。また、乳がんを除く浸潤性がんのリスクは1.57倍(同:1.12~2.12)高かった。
・SIRは、浸潤性乳がんおよび乳がんを除く浸潤性がんのどちらも、BCIS診断時50歳未満の患者で高かった。
・70歳以上でのBCIS診断は、その後の乳がんを除く浸潤性がん診断と有意に関連していた。

 これらの結果は、これまで報告されているBCIS患者のがんリスク増加を裏付けている。著者らは、「今後の研究が、BCISに続く浸潤性がんの危険因子を確立し、この集団における集中的なモニタリングの必要性を強調し、遠隔転移を全身療法で予防可能なBCIS患者を区別するのに役立つだろう」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Karavasiloglou N, et al. Front Oncol. 2021;11:606747.

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非浸潤性乳がん患者、乳がん以外の浸潤性がんリスクが1.6倍

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 非浸潤性乳がん(BCIS)患者は浸潤性乳がんリスクが高いという報告があるが、乳がんを除く浸潤性がんの潜在リスクに関する報告は一致していない。今回、スイス・チューリッヒ大学のNena Karavasiloglou氏らが、組織的なマンモグラフィ検診プログラムのないチューリッヒ州におけるBCIS患者のデータを調査したところ、BCIS患者は一般集団に比べ、浸潤性乳がんは6.85倍、乳がんを除く浸潤性がんは1.57倍、リスクが高いことが示された。また、70歳以上でのBCIS診断が乳がんを除く浸潤性がんのリスクと関連していたが、浸潤性乳がんとは関連していなかった。Frontiers in Oncology誌2021年3月18日号に掲載。

 2003~15年に初めてのがんの診断が原発性のBCISであったチューリッヒ州在住の女性1,082例のデータを調査した。原発性のBCIS患者における浸潤性乳がんまたは乳がんを除く浸潤性がんのリスクを、成人女性集団の対応リスクと比較するため、標準化罹患比(SIR)を計算した。SIRは全体および患者と腫瘍の特徴ごとに計算した。Cox比例ハザード回帰モデルを使用し、その後の浸潤性乳がんまたは乳がんを除く浸潤性がんの潜在的な危険因子(診断時の年齢、治療など)を調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・BCIS患者は一般集団と比較して、浸潤性乳がんと診断されるリスクが6.85倍(95%CI:5.52~8.41)高かった。また、乳がんを除く浸潤性がんのリスクは1.57倍(同:1.12~2.12)高かった。
・SIRは、浸潤性乳がんおよび乳がんを除く浸潤性がんのどちらも、BCIS診断時50歳未満の患者で高かった。
・70歳以上でのBCIS診断は、その後の乳がんを除く浸潤性がん診断と有意に関連していた。

 これらの結果は、これまで報告されているBCIS患者のがんリスク増加を裏付けている。著者らは、「今後の研究が、BCISに続く浸潤性がんの危険因子を確立し、この集団における集中的なモニタリングの必要性を強調し、遠隔転移を全身療法で予防可能なBCIS患者を区別するのに役立つだろう」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Karavasiloglou N, et al. Front Oncol. 2021;11:606747.

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転移乳がんにおけるBRCA1/2変異、予後への影響は?/JCO

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 転移を有する乳がん患者において、がん感受性遺伝子の生殖細胞系列変異の頻度や、これらの変異の臨床的関連性は不明である。今回、ドイツ・University Hospital ErlangenのPeter A. Fasching氏らは、転移を有する乳がん患者の前向きコホートで、BRCA1BRCA2を含む乳がん素因遺伝子変異の頻度と変異患者の臨床的特徴を調べ、変異が転帰に及ぼす影響を検討した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2021年3月29日号に掲載。

 本研究の対象は、PRAEGNANTレジストリに登録された転移を有する乳がん患者2,595例。生殖細胞系列DNAのがん素因遺伝子変異を評価し、乳がん素因遺伝子変異の頻度を転移のない乳がん患者の前向きレジストリの結果と比較した。変異の状況について腫瘍の特徴、無増悪生存期間、全生存期間との関連を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・12の乳がん素因遺伝子の生殖細胞系列変異が271例(10.4%)に認められ、BRCA1もしくはBRCA2の変異が129例(5.0%)に認められた。
・脳転移の割合は、BRCA1変異キャリア(27.1%)のほうが非キャリア(12.8%)より高かった。
・本レジストリの患者(転移のある乳がん患者)は、転移のない乳がん患者に比べて変異の割合が有意に高かった(10.4% vs.6.6%、p<0.01)。
・転移のある乳がん患者の無増悪生存期間や全生存期間に、変異による有意な変化はなかった。

 著者らは、「転移のある乳がん患者において、変異キャリアと非キャリアの予後は類似していたが、腫瘍の特徴でみられた違いは治療および今後の分子標的療法の研究に影響する」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Fasching PA, et al. J Clin Oncol. 2021 Mar 29;JCO2001200. [Epub ahead of print]

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転移乳がんにおけるBRCA1/2変異、予後への影響は?/JCO

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 転移を有する乳がん患者において、がん感受性遺伝子の生殖細胞系列変異の頻度や、これらの変異の臨床的関連性は不明である。今回、ドイツ・University Hospital ErlangenのPeter A. Fasching氏らは、転移を有する乳がん患者の前向きコホートで、BRCA1BRCA2を含む乳がん素因遺伝子変異の頻度と変異患者の臨床的特徴を調べ、変異が転帰に及ぼす影響を検討した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2021年3月29日号に掲載。

 本研究の対象は、PRAEGNANTレジストリに登録された転移を有する乳がん患者2,595例。生殖細胞系列DNAのがん素因遺伝子変異を評価し、乳がん素因遺伝子変異の頻度を転移のない乳がん患者の前向きレジストリの結果と比較した。変異の状況について腫瘍の特徴、無増悪生存期間、全生存期間との関連を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・12の乳がん素因遺伝子の生殖細胞系列変異が271例(10.4%)に認められ、BRCA1もしくはBRCA2の変異が129例(5.0%)に認められた。
・脳転移の割合は、BRCA1変異キャリア(27.1%)のほうが非キャリア(12.8%)より高かった。
・本レジストリの患者(転移のある乳がん患者)は、転移のない乳がん患者に比べて変異の割合が有意に高かった(10.4% vs.6.6%、p<0.01)。
・転移のある乳がん患者の無増悪生存期間や全生存期間に、変異による有意な変化はなかった。

 著者らは、「転移のある乳がん患者において、変異キャリアと非キャリアの予後は類似していたが、腫瘍の特徴でみられた違いは治療および今後の分子標的療法の研究に影響する」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Fasching PA, et al. J Clin Oncol. 2021 Mar 29;JCO2001200. [Epub ahead of print]

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がん関連3学会、がん患者への新型コロナワクチン接種のQ&A公開

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 2021年3月29日、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)は合同で「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療についてQ&A―患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版―」を公開した。昨年に公開された新型コロナとがん診療に関するQ&Aに付随した「ワクチン版」となる。

 「Q1:がん患者はワクチンを受けた方がよいのですか」
 「A:前向きに検討しましょう。ベネフィットとリスクを理解し、主治医の先生と相談して判断することが大切です」


 ワクチン開発段階の臨床試験では、がん患者が対象に組み入れられることは少なかったが、世界各国で接種が進み、がん患者に関するエビデンスが集まりつつある現状を紹介。現状国内で承認された唯一のワクチンであるファイザー製のワクチン(BNT162b2)について、「イスラエルで実際に多くの人にBNT162b2が接種され、60万人と非接種者60万人と比較し報告されていますが、両群にはがん患者さんが2%、約12,000人が含まれています1)。全体として90%以上の発症予防効果示され、併存疾患に関する検討では、がん患者さんだけのデータは示されていませんが、3つ以上の併存疾患を有する場合の予防効果は86~89%でありその差はごくわずかです」と解説している。

 「COVID-19ワクチンには予防効果というベネフィットと様々な副反応が生じるかもしれないというリスクがあります。がん患者さんのワクチン接種のベネフィットとして、発症や重症化の予防、検査やがん治療を遅滞なくより安全に進められることがあります」としたうえで、「がん患者さんにおける副反応についての調査や報告はありませんが、がん患者さんにおける重症化の可能性を考慮すると、ベネフィットがリスクを上回ると思われ接種が推奨されます。がん患者さん一人一人がそのベネフィットとリスクを正しく理解して、主治医の先生と相談して、接種するかどうかを自分で判断することが必要です」としている。

 その他、放射線や薬物など治療ごとに考慮すべき点や、接種後の注意点などがまとめられている。

(ケアネット 杉崎 真名)


【参考文献・参考サイトはこちら】

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療についてQ&A―患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版―

1)Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021 Feb 24. [Epub ahead of print]

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タモキシフェン、低用量でも乳腺濃度は減少するか?/JCO

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 乳がん術後補助療法としてのタモキシフェン標準用量20mgと比較して、1~10mgの低用量は非劣性であるか、また服用による副作用はどう変化するのか。スウェーデン・カロリンスカ研究所のMikael Eriksson氏らは、タモキシフェン療法による反応の指標としてマンモグラフィにおける乳腺濃度の変化を用い、用量別の効果と副作用について検討した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2021年3月18日号掲載の報告。

 研究者らは、スウェーデンのマンモグラフィスクリーニングプログラムに参加している40~74歳の女性を対象に、閉経状態によって層別化された6ヵ月の二重盲検6アーム無作為化プラセボ対照非劣性用量決定第II相試験(KARISMA試験)を実施。参加者はプラセボ、1、2.5、5、10、20mg投与群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、標準用量である20mg群におけるマンモグラフィによる乳腺濃度減少の中央値と同等の減少がみられた患者の割合。非劣性マージンは17%であった。副次評価項目は症状軽減、事後解析は閉経状態に応じて行われた。

 主な結果は以下のとおり。

・2016年10月1日から2019年9月30日までの間に全体で1,439例(閉経前:566例、閉経後:873例)の女性が登録され、ITT解析は1,230例が対象とされた。
・20mg投与群で観察されたマンモグラフィ乳腺濃度の10.1%減少(中央値)と比較して、2.5、5、および10mg投与群で非劣性が確認された。ただし、この減少は閉経前女性に限定された。
・投与用量別に有害事象の発現状況をみると、重度の血管運動神経症状(ほてり、冷汗、寝汗)は、20mg投与群と比較して、2.5、5、および10mg投与群で約50%減少した。

 著者らはこの結果を受けて、今後はタモキシフェン2.5mg投与が原発性乳がんのリスクを低下させるかどうかを研究する必要があるとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Eriksson M, et al. J Clin Oncol. 2021 Mar 18:JCO2002598. [Epub ahead of print]

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早期乳がんアジュバントでCDK4/6阻害薬は有用か/ESMO Open

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 HR+/HER2-の進行乳がんにおいてはCDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用は標準治療だが、アジュバントにおけるCDK4/6阻害薬の評価は一定していない。イタリア・Hunimed UniversityのElisa Agostinetto氏らは、系統的レビューとメタ解析により、HR+/HER2-早期乳がんのアジュバントにおける内分泌療法へのCDK4/6阻害薬追加による生存および安全性アウトカムへの影響を評価した。その結果、無浸潤疾患生存(IDFS)におけるベネフィットの傾向と、毒性(全Grade)および投与中止リスクの増加がみられた。ESMO Open誌2021年3月17日号に掲載。

 本研究では、2020年12月15日までPubMed、Cochrane、EMBASEデータベースおよび主要な学会抄録集の系統的レビューを行った。HR+/HER2-の早期乳がんのアジュバントでCDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用および内分泌療法単独で治療されたすべての無作為化比較試験について、ランダム効果モデルを用いて生存および安全性アウトカムの各統合ハザード比(HR)またはオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・3件の研究から入手可能なデータ(1万2,647例)において、内分泌療法へのCDK4/6阻害薬の追加は、IDFSでのベネフィットを有する傾向がみられた(HR:0.85、95%CI:0.71~1.01、p=0.071)。
・遠隔無再発生存の有意な改善は見られなかった(HR:0.83、95%CI:0.58~1.19、p=0.311)。
・内分泌療法へのCDK4/6阻害薬の追加により、全Gradeの毒性(OR:9.36、95%CI:3.46~25.33、p<0.001)および早期投与中止リスク(OR:22.11、95%CI:9.45~51.69、p<0.001)が大きく増加した。

 著者らは、「アジュバントでのCDK4/6阻害薬の役割については議論の余地があり、臨床診療の直接的な変化を支持する前にこれらの無作為化比較試験の長期のフォローアップが必要」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Agostinetto E, et al. ESMO Open. 2021;6:100091.

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HER2陽性早期乳がんへの術後トラスツズマブ、半年 vs.1年~メタ解析

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 HER2陽性早期乳がん患者における術後トラスツズマブ投与が生存転帰を改善することが示されているが、標準とされる12ヵ月の投与と比較し6ヵ月の投与が非劣性であるかについては議論がある。中国・華中科技大学同済医学院のBi-Cheng Wang氏らは術後トラスツズマブの投与期間についてメタ解析を実施。Medicine誌オンライン版2021年3月12日号にその結果が掲載された。

 2020年1月14日まで、PubMed、Cochrane Library、Web of Science、およびEMBASEで関連研究が検索された。無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)について、プールされたハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)のメタ解析が行われた。

 主要評価項目はDFS(非劣性マージン:1.2)、副次評価項目はOS(同:1.43)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・3つの無作為化臨床研究が選択基準を満たし、6ヵ月投与群3,974例、12ヵ月投与群3,976例が対象とされた。
・DFSのHRは1.18(95%CI:0.97~1.44、p=0.09)で、95%CIの上限は非劣性マージン(1.25)を上回った。
・OSのHRは1.14(95%CI:0.98~1.32、p=0.08)で、95%CIの上限は非劣性マージン(1.43)を下回った。

 著者らは、今回の分析ではDFSの改善において6ヵ月投与の非劣性を示すことができなかったとし、OSの改善については非劣性が示されたが、乳がん患者では疾患の進行または再発がみられた場合に追加の全身療法を受ける必要があることを考慮すると、12ヵ月投与を標準的治療として提案するとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Wang BC, et al. Medicine (Baltimore). 2021 Mar 12;100:e24995. [Epub ahead of print]

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