コーヒーは乳がん発症を抑制するか~大規模メンデルランダム化研究

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 コーヒーの摂取と乳がんリスクの関連がない、または弱いことが観察研究で報告されている。そこで、英国・Imperial College LondonのMerete Ellingjord-Dale氏らが、大規模なメンデルランダム化(MR)研究を実施した。その結果、遺伝的に予測されるコーヒー摂取と乳がんリスクとの関連は認められなかったが、弱い関連の存在は除外できないとしている。PLoS One誌2021年1月19日号に掲載。

 著者らは、UKバイオバンクに参加しているホワイトブリティッシュ系の女性21万2,119人に関するゲノムワイド関連研究からコーヒー摂取に関連する33の一塩基多型(SNP)を使用して、コーヒー摂取と乳がんリスクとの関係を2サンプルMR法で検討した。症例は12万2,977例(うちER陽性が6万9,501例、ER陰性が2万1,468例)、対照はヨーロッパ系の10万5,974例。乳がんリスク推定値は、Breast Cancer Association Consortium(BCAC)で公開されているゲノムワイド関連の要約統計量から取得した。感度分析と一緒に変量効果逆分散加重(IVW)MR分析を行い、潜在的なMR仮定違反の影響を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・女性において遺伝的に予測されるコーヒー摂取量の1日1杯の増加は、乳がん全体(IVW変量効果におけるオッズ比[OR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.80~1.02、p=0.12)、ER陽性乳がん(OR:0.90、95%CI:0.79~1.02、p=0.09)、ER陰性乳がん(OR:0.88、95%CI:0.75~1.03、p=0.12)のリスクと関連していなかった。
・MR-Egger(乳がん全体におけるOR:1.00、95%CI:0.80~1.25)、加重中央値(OR:0.97、95%CI:0.89~1.05)、加重モード(OR:1.00、95%CI:0.93~1.07)を用いた感度分析においても関連が認められなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Ellingjord-Dale M, et al. PLoS One. 2021;16:e0236904.

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日本のがん遺伝子パネル検査、初回評価の結果は?/Int J Clin Oncol

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 日本では2019年6月にがん遺伝子パネル検査が保険収載され、専門家で構成されるmolecular tumor board(エキスパートパネル)を備えた施設が検査実施施設として当局より指定されている。その実績に関する評価の結果が報告された。エキスパートパネルの標準化は、臨床現場でのがんゲノム医療の実装に重要な課題である。国立がん研究センター中央病院の角南 久仁子氏らは、中核病院でのエキスパートパネルの実績について初期評価を行い、臨床的意義付けの標準化についてさらに調査が必要であることを示した。International Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2021年1月1日号掲載の報告。

 研究グループは、2019年6月~2020年1月に中核病院11施設においてがん遺伝子パネル検査を実施した連続症例のデータを収集し、検査結果に基づいて治験薬を含む遺伝子異常に合致する治療を行った症例、および遺伝カウンセリングが推奨された症例の割合を調査。また、模擬症例2例について各エキスパートパネルがアノテーションを実施。そのレポートについて中央評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・エキスパートパネルの主要メンバーが事前に結果レポートをレビューしておくことによって、エキスパートパネル会議が双方向かつ効率的となり、時間を節約できたと報告された。
・がん遺伝子パネル検査の実施数は計747例で、このうち28例(3.7%)が遺伝子異常に合致する治療を受けた。
・遺伝カウンセリングの紹介に至った症例は17例(2.3%)であった。
・模擬症例に関するアノテーションレポートは各エキスパートパネルで異なっており、とくに、推奨される治験数は、臨床試験への実際の参加者数に関連していると考えられた。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Sunami K, et al. Int J Clin Oncol. 2021 Jan 1. [Epub ahead of print]

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がんに存在する異常なmRNAの全長構造を同定/国立がん研究センター

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 東京大学大学院新領域創成科学研究科の関 真秀特任助教と鈴木 穣教授らのグループは、国立がん研究センター先端医療開発センター免疫療法開発分野・中面哲也分野長らとの共同研究により、ナノポアシークエンサーで肺がんに存在する異常なmRNAの網羅的な同定をして、異常なmRNAから生じるペプチドが免疫細胞に認識されることを示した。

 従来のシークエンサーは、RNAをばらばらに短くしてから配列を読み取っていたため、mRNAの全長配列を読み取ることはできなかった。それに対して、長い配列を読み取れるナノポアシークエンサーは、mRNAの全長配列を読み取ることができる。

 今回、肺がんにナノポアシークエンサーを用いて、正常な組織に存在しない異常なmRNAの全長構造をカタログ化した。さらに、異常なmRNAから生じるペプチド配列が免疫細胞によって認識されることを示した。異常mRNAの蓄積が、がん免疫療法が効くかどうかの新たな指標となる可能性がある。

 同研究成果は、2021年1月4日(月)に英国科学雑誌「Genome Biology」のオンライン版で掲載された。

■参考
国立がん研究センタープレスリリース

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Oka M,et al. Genome Biol. 2021 Jan 4.

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30歳以下の早期乳がんの予後、高齢患者と比較

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 30歳以下で乳がんと診断された患者のデータを後ろ向きに収集し、高齢患者を対照として症例対照研究を実施したところ、若年患者は高齢患者よりも無病生存率(DFS)が短い傾向にあったことを、台湾・National Cheng Kung UniversityのWei-Pang Chung氏らが報告した。全生存期間(OS)には差がみられなかった。Medicine(Baltimore)誌2021年1月8日号に掲載。

 本研究は、手術方法・病期・サブタイプをマッチさせた、症例(若年患者)と対照(高齢患者)が1:3の症例対照研究。主要評価項目はDFS、副次評価項目はOSで、単変量および多変量解析で予後因子を検討した。分析対象は若年群(年齢中央値:28.5歳)18例と高齢者群(同:71歳)54例。

 主な結果は以下のとおり。

・5年DFS率は若年群で68.8%、高齢者群で84.6%だった(p=0.080)。
・5年OS率は若年群87.1%、高齢者群91.2%だった(p=0.483)。
・多変量解析から「腫瘍径が大」「トリプルネガティブ乳がん」が、若年患者のDFS不良となる主な予後因子であることが示された。

 著者らは「乳がん初期段階にある若年患者への積極的な治療が予後を改善するだろう」と述べている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Chung WP, et al. Medicine (Baltimore). 2021;100:e24076.

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若手研究者に国際的がん教育を「国際がん研究シンポジウム」開催/近畿大学

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 近畿大学医学部を主幹とする「7大学連携個別化がん医療実践者養成プラン」は、2021年1月18日~2月17日、オンラインにて「第4回国際がん研究シンポジウム」を開催する。同シンポジウムは、2013年3月に「第2期がんプロ」の取組の中で開催し、これまでに8回の開催実績がある。

 国際がん研究シンポジウムは「教育講演」と「一般演題」の2部構成。「教育講演」では国内外の著名な研究者が各分野の最新の話題をわかりやすく伝える。「一般演題」では若手研究者がそれぞれのデータを持ち寄り発表すると共に、各分野の精鋭コメンテーターからの質問が待ち受ける。若手研究者はこれらの質問に英語で対応。質疑応答を含め、全体として優秀であると評価された演題にはセッションごとにアワードが贈られる。

 ライブ配信(教育講演と一般口演)は、平日の19〜21時と各研究機関の医療従事者が参加しやすい時間帯としている。優秀演題選出の投票については視聴者も行う。

 開催担当者は、「このシンポジウムの目的は『教育』。国際学会において英語がハードルとならないようにするには、普段から英語で発表し、英語で自分の意見を述べるというトレーニングが欠かせません。このシンポジウムがそういった機会になることを期待しています。」と述べている。

 同シンポジウムへの参加は無料。視聴には事前登録が必要。

【オンライン開催】
・期間:2021年1月18日~2月17日
・ライブ配信:2021年1月25日~27日、2月1日~3日の19:00〜21:00
 ・Educational Lecture 1~10(ゲノム、肺、消化器、血液など)
 ・一般口演Session1~6 若手研究者の発表 16演題(TR、ゲノム、消化器、放射線、肺、血液)
・オンデマンド配信:1月18日~ 2月17日(ホームページ上で閲覧可能)
 ・若手研究者の発表 21演題(放射線、肺、ゲノムなど)
・対象:医療従事者
・参加費:無料
・参加方法:ホームページより参加登録
・問い合わせ:第4回国際がん研究シンポジウム事務局
 ・近畿大学医学部がんプロ事務局 ganpro@med.kindai.ac.jp
 ・特定非営利活動法人 近畿がん診療推進ネットワーク k-ccnet@med.kindai.ac.jp

■参考
第4回国際がん研究シンポジウム ホームページ
第4回国際がん研究シンポジウム プログラム
参加登録

(ケアネット)


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BRCA1/2変異女性の乳がんリスク、60歳以降は?

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 BRCA1もしくはBRCA2変異キャリアの60~80歳の乳がんリスクについて、カナダ・Toronto-Sunnybrook Regional Cancer CenterのNeda Stjepanovic氏らの遺伝性乳がん臨床研究グループが大規模前向き研究を実施した結果、どちらの変異キャリアにおいても60歳以降も乳がん発症リスクは高いままであることが示された。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2021年1月10日号に掲載。

 本研究の被験者は、60歳時にがん既往歴がなく両側とも乳房の手術をしていない女性699人。乳がんの診断、予防的な両側乳房切除術、もしくは死亡するまで追跡し、60~80歳における乳がん(浸潤性およびin situ)の年発生率と累積発生率を計算した。また、ホルモン補充療法、乳がん家族歴、両側卵巣摘出術と乳がんリスクとの関連を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・平均追跡期間7.9年間に、61例が浸潤性乳がん、20例がin situ乳がんと診断された。
・浸潤性乳がんの平均年発生率は、BRCA1変異キャリアで1.8%、BRCA2変異キャリアで1.7%だった。
・60~80歳の浸潤性乳がんの累積リスクは、BRCA1変異キャリアで20.1%、BRCA2変異キャリアで17.3%であった。
・ホルモン補充療法、家族歴および卵巣摘出術は、乳がんリスクとは関連していなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Stjepanovic N, et al. Breast Cancer Res Treat. 2021 Jan 10. [Epub ahead of print]

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BRCA1/2変異女性の乳がんリスク、60歳以降は?

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 BRCA1もしくはBRCA2変異キャリアの60~80歳の乳がんリスクについて、カナダ・Toronto-Sunnybrook Regional Cancer CenterのNeda Stjepanovic氏らの遺伝性乳がん臨床研究グループが大規模前向き研究を実施した結果、どちらの変異キャリアにおいても60歳以降も乳がん発症リスクは高いままであることが示された。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2021年1月10日号に掲載。

 本研究の被験者は、60歳時にがん既往歴がなく両側とも乳房の手術をしていない女性699人。乳がんの診断、予防的な両側乳房切除術、もしくは死亡するまで追跡し、60~80歳における乳がん(浸潤性およびin situ)の年発生率と累積発生率を計算した。また、ホルモン補充療法、乳がん家族歴、両側卵巣摘出術と乳がんリスクとの関連を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・平均追跡期間7.9年間に、61例が浸潤性乳がん、20例がin situ乳がんと診断された。
・浸潤性乳がんの平均年発生率は、BRCA1変異キャリアで1.8%、BRCA2変異キャリアで1.7%だった。
・60~80歳の浸潤性乳がんの累積リスクは、BRCA1変異キャリアで20.1%、BRCA2変異キャリアで17.3%であった。
・ホルモン補充療法、家族歴および卵巣摘出術は、乳がんリスクとは関連していなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Stjepanovic N, et al. Breast Cancer Res Treat. 2021 Jan 10. [Epub ahead of print]

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ゾレドロン酸の顎骨壊死発生率とリスク因子/JAMA Oncol

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 ゾレドロン酸は、骨転移のあるがん患者において骨修飾薬(BMA)として用いられている。米国の多施設共同前向き観察コホート試験(SWOG Cancer Research Network S0702)の結果、投与後累積3年の顎骨壊死の発生率は2.8%であることが明らかにされた。JAMA Oncology誌オンライン版2020年12月17日号掲載の報告。

 試験は、BMA治療が限定的または治療歴がなく、試験登録から30日以内、ゾレドロン酸の使用などの治療計画があり、骨転移のあるがん患者を対象とした。ベースラインおよび6ヵ月ごとに提出された医学的、歯科学的および患者によるアウトカム報告に基づき、顎骨壊死(確立された基準で定義)の発生を3年間にわたり追跡評価した。
 主要評価項目は、確認された顎骨壊死の累積発生率で、頭蓋領域への同時放射線療法が行われていない状態で8週間以上、顎領域に骨の露出領域が認められた場合と定義した。

 主な結果は以下のとおり。

・SWOG S0702試験には、3,491例が登録された(女性1,806例[51.7%]、年齢中央値63.1歳)。1,120例が乳がん、580例が骨髄腫、702例が前立腺がん、666例が肺がん、423例がその他の悪性腫瘍であった。
・ベースラインの歯科学的検査が行われたのは2,263例(64.8%)であった。
・全体で、顎骨壊死の確定発生は90例であった。累積発生率は1年時0.8%(95%信頼区間[CI]:0.5~1.1)、2年時2.0%(1.5~2.5)、3年時2.8%(2.3~3.5)であった。
・3年累積発生率は、骨髄腫の患者で最も高率だった(4.3%、95%CI:2.8~6.4)。
・ゾレドロン酸の投与計画間隔が5週間未満だった患者は、5週間以上だった患者と比べて顎骨壊死の発生が有意に多かった(ハザード比[HR]:4.65、95%CI:1.46~14.81、p=0.009)。
・顎骨壊死の発生率の高さは、歯の総数が少ないこと(HR:0.51、95%CI:0.31~0.83、p=0.006)、義歯(入れ歯)があること(1.83、1.10~3.03、p=0.02)、現在喫煙(2.12、1.12~4.02、p=0.02)と関連していた。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Van Poznak CH, et al. JAMA Oncol. Dec 17. [Epub ahead of print]

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HR+閉経後乳がんへのAI追加投与、至適治療期間は?~メタ解析

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 5年間の内分泌療法終了後、ホルモン受容体陽性(HR+)の閉経後早期乳がん患者に対するアロマターゼ阻害薬(AI)追加投与の至適治療期間を検討したメタ解析結果が報告された。中国・北京協和医学院のJuan Chen氏らが、Breast Cancer誌オンライン版2021年1月2日号で発表した。

 著者らは、適格基準を満たした無作為化比較試験を、内分泌療法の全期間に応じて3つのカテゴリーに分類(10年 vs.5年/7~8年 vs.5年/10年 vs.7~8年)。各カテゴリーについて、無増悪生存期間(DFS)と全生存期間(OS)のハザード比(HR)、および有害事象の発生率のリスク比(RR)のプール解析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・計9件のRCT、HR陽性乳がんの閉経後女性計2万2,313例が対象とされた。
・内分泌療法の治療期間を5年から7~8年に延長すると、DFSの改善がみられた(HR:0.79 [0.69~0.91])。この傾向は特にタモキシフェンのみの投与(HR:0.40 [0.22~0.73])、タモキシフェン後のAI投与(HR:0.82 [0.71~0.95])、リンパ節転移陽性(HR:0.72 [0.56~0.93])、エストロゲン受容体(ER)陽性およびプロゲステロン受容体(PR)陽性(HR:0.61 [0.47~0.78])、および腫瘍径≧2cm(HR:0.72 [0.51~0.98])の患者でみられた。
・一方、内分泌療法の治療期間を7~8年から10年に延長しても、DFSの改善はみられなかった(HR:0.79 [0.69~0.91])。
・内分泌療法の延長はOSの改善とは関連しなかったが、骨折と骨減少症/骨粗鬆症リスクの増加と関連した。

 著者らは、AIによる5年間の治療後、リンパ節転移陰性、ER+/PR-またはER-/PR+、腫瘍径2 cm未満の患者は、長期のAI追加投与を実施する必要はなく、タモキシフェンのみあるいはタモキシフェン後AIによる計5年間の治療後、リンパ節転移陽性、ER+/PR+、腫瘍径2 cm以上の患者では、2~3年のAI追加投与が必要で、期間はそれで十分である可能性が示されたと結論づけている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Chen J, et al. Breast Cancer. 2021 Jan 2. [Epub ahead of print]

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早期TNBC、低用量カペシタビン維持療法で転帰が改善/JAMA

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 標準的な術後補助療法を受けた早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)女性において、低用量カペシタビンによる1年間の維持療法は経過観察と比較して、5年無病生存率を有意に改善し、有害事象の多くは軽度~中等度であることが、中国・中山大学がんセンター(SYSUCC)のXi Wang氏らが行った「SYSUCC-001試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2020年12月10日号で報告された。乳がんのサブタイプの中でも、TNBCは相対的に再発率が高く、標準治療後の転帰は不良であり、再発および死亡のリスクを低減する効果的な維持療法が求められている。低用量カペシタビンによる化学療法は、2つの転移の機序(血管新生、免疫逃避)を標的とすることでTNBC女性の再発を抑制する可能性が示唆されているが、再発抑制に要する長期の治療の有効性と受容性については不確実性が残るという。

中国の13施設が参加した非盲検無作為化第III相試験

 研究グループは、早期TNBC女性において、標準的な術後補助療法後の低用量カペシタビンによる維持療法の有効性と有害事象を評価する目的で、非盲検無作為化第III相試験を実施した(Sun Yat-sen University Clinical Research 5010 Programなどの助成による)。中国の13施設が参加し、2010年4月~2016年12月の期間に患者登録が行われ、最終フォローアップ日は2020年4月30日だった。

 対象は、病理学的に確定された浸潤性乳管がんで、ホルモン受容体とERBB2が陰性であり、鎖骨上リンパ節・内胸リンパ節に転移がなく、ステージがT1b-3N0-3cM0の早期の腫瘍を有し、標準治療として胸筋温存乳房切除術または乳房温存術が施行され、術前または術後に化学療法と放射線治療を受けた患者であった。

 被験者は、標準的な術後補助療法終了後に、カペシタビン(650mg/m2、1日2回、経口)を1年間投与する群または経過観察群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは5年無病生存率とした。無病生存は、無作為化の時点から局所再発、遠隔転移、対側乳がん、全死因死亡の初回発生までの期間と定義された。副次エンドポイントは、遠隔無病生存(無作為化から遠隔再発、対側乳房の浸潤性乳がん、全死因死亡までの期間)、全生存(無作為化から全死因死亡までの期間)、局所領域無再発生存(無作為化から局所領域の浸潤性乳がん再発または死亡までの期間)、有害事象であった。

再発・死亡リスクが36%低減、Grade 3手足症候群は7.7%

 443例が無作為化の対象となり、434例が最大の解析対象集団(FAS)とされた。年齢中央値は46歳(範囲:24~70)で、閉経前が66.8%であった。86.4%が乳房切除術を受けた。アントラサイクリン系またはタキサン系薬剤ベースのレジメンによる術前化学療法を受けた患者が5.8%、同レジメンによる術後化学療法を受けた患者は78.8%であり、T1/T2が93.1%、リンパ節転移陰性が61.8%、Grade3が72.8%だった。

 フォローアップ期間中央値61ヵ月(IQR:44~82)の時点で、無病生存に関するイベントは94件観察された。カペシタビン群は38件(再発37件、死亡32件)、観察群は56件(56件、40件)であった。推定5年無病生存率は、カペシタビン群が82.8%と、観察群の73.0%と比較して有意に優れた(再発または死亡のリスクのハザード比[HR]:0.64、95%信頼区間[CI]:0.42~0.95、p=0.03)。事前に規定されたサブグループのすべてで、無病生存率はカペシタビン群で良好な傾向がみられた。

 また、推定5年遠隔無病生存率(カペシタビン群85.8% vs.観察群75.8%、遠隔転移または死亡のリスクのHR:0.60、95%CI:0.38~0.92、p=0.02)はカペシタビン群で有意に良好であったのに対し、推定5年全生存率(85.5% vs.81.3%、死亡リスクのHR:0.75、95%CI:0.47~1.19、p=0.22)および推定5年局所領域無再発生存率(85.0% vs.80.8%、局所領域再発および死亡のリスクのHR:0.72、95%CI:0.46~1.13、p=0.15)には、両群間に有意な差は認められなかった。

 カペシタビン群で最も頻度の高い有害事象は手足症候群(45.2%)で、このうちGrade3は7.7%であった。このほか、白血球減少(23.5%)、ビリルビン値上昇(12.7%)、腹痛/下痢(6.8%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値・アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)値上昇(5.0%)の頻度が高かったが、いずれもGrade1または2であった。

 著者は、「カペシタビンの1年間の投与は、多くの女性にとって忍容可能であり、毒性による投与中止はほとんどなかった。80%以上の参加者が1年間の投与を完了し、何らかの理由で投与の中断を要したのは4分の1未満であった」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Wang X, et al. JAMA. 2020 Dec 10. [Epub ahead of print]

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(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)