乳がん患者への予後情報の開示は効果的か/Cancer

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 がん患者へ明確な予後を知らせる効果に関する知見が示された。聖隷三方原病院 緩和ケアチームの森 雅紀氏らは、日本人乳がん女性患者に対して、予後の明確な開示の有無という点で異なる2つのビデオ(患者と医師のコミュニケーション場面を撮影したもの)を見せ、患者が抱く不確実性や不安、満足感などに変化が認められるかを無作為化試験により調べた。その結果、明確な予後の開示はそれらのアウトカムを改善することが示されたという。結果を踏まえて著者は、「がん患者に予後について質問をされたら、医療従事者は、その要望を尊重すべきであり、適切であれば明快に話し合うことが推奨されるだろう」と述べている。Cancer誌オンライン版2019年6月17日号掲載の報告。

 研究グループは、「アジアでは臨床において、進行がん患者への予後は、非開示が典型的なままである。予後を伝える重要性が世界的にますます認識されるようになっているが、アジア人の進行がん患者に対する、明確な予後の開示が及ぼす影響については、ほとんどわかっていない」として、がん再発を伴う患者に対する、明確な予後の伝達効果を、無作為化ビデオ描写試験にて調べた。

 根治手術を受けた日本人乳がん女性に対して、再発難治乳がんを有する患者と患者のがん担当医との予後に関するコミュニケーションを撮影したビデオを見せた。ビデオは、明確な予後の開示の有無のみが異なる2つのパターンが用意された。

 主要評価項目は、被験者が抱く不確実性(Uncertainty、範囲:0~10)である。副次評価項目は、不安(State-Trait Anxiety Inventory-Stateで測定、範囲:20~80)、満足度(Patient Satisfaction Questionnaire、範囲:0~10)、自己効力感(Self efficacy、範囲:0~10)、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)について話し合う意欲(範囲:1~4)などであった。

 主な結果は以下のとおり。

・合計105例の女性が参加した(平均年齢53.8歳)。
・被験者の不確実性のスコアは、予後の開示が多いビデオを見た後のほうが、少ないビデオを見た後よりも有意に低下した(それぞれの平均スコアは5.3 vs.5.7、p=0.032)。
・同様に、満足度は上昇し(それぞれ5.6 vs.5.2、p=0.010)、不安は増加しなかった(State-Trait Anxiety Inventory-Stateスコアの変化はそれぞれ0.06 vs.0.6、p=0.198)。
・一方で、自己効力感(それぞれ5.2 vs.5.0、p=0.277)、ACPについて話し合う意欲(それぞれ2.7 vs.2.7、p=0.240)については、有意な変化はみられなかった。

(ケアネット)


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Mori M, et al. Cancer. 2019 Jun 17. [Epub ahead of print]

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FoundationOne CDx、エヌトレクチニブのコンパニオン診断として承認/中外

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 中外製薬は、2019年6月27日、遺伝子変異解析プログラムFoundationOne CDx がんゲノムプロファイルに関し、ROS1/TRK阻害剤エヌトレクチニブ(商品名:ロズリートレク)のNTRK融合遺伝子陽性の固形がんに対するコンパニオン診断としての使用目的の追加について、6月26日に厚生労働省より承認を取得したと発表。FoundationOne CDx がんゲノムプロファイルは、NTRK融合遺伝子(NTRK1NTRK2NTRK3遺伝子と他の遺伝子の融合遺伝子)を検出することにより、エヌトレクチニブの適応判定補助を行う。 エヌトレクチニブ は、成人および小児の NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がんに対する治療薬として本年6月18日に承認を取得している。

 本プログラムは、米国のファウンデーション・メディシン社 により開発された、次世代シークエンサーを用いた包括的ながん関連遺伝子解析システムである。患者の固形がん組織から得られたDNAを用いて、324の遺伝子における置換、挿入、欠失、コピー数異常および再編成などの変異等の検出および解析、ならびにバイオマーカーとして、マイクロサテライト不安定性の判定や腫瘍の遺伝子変異量の算出を行う。また、国内既承認の複数の分子標的薬のコンパニオン診断として、適応判定の補助に用いることが可能である。

FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル、コンパニオン診断の適応
 [EGFRエクソン19 欠失変異及びエクソン21 L858R変異]
  がん種:非小細胞肺がん
  関連する医薬品:アファチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ

 [EGFRエクソン 20 T790M変異]
  がん種:非小細胞肺がん
  関連する医薬品:オシメルチニブ

 [ALK融合遺伝子]
  がん種:非小細胞肺がん
  関連する医薬品:アレクチニブ、クリゾチニブ、セリチニブ

 [BRAF V600Eおよび V600K変異]
  がん種:悪性黒色腫
  関連する医薬品:ダブラフェニブ、トラメチニブ、ベムラフェニブ

 [ERBB2コピー数異常(HER2遺伝子増幅陽性)
  がん種:乳がん トラスツズマブ

 [KRAS/NRAS野生型]
  がん種:直腸・結腸がん
  関連する医薬品:セツキシマブ(遺伝子組換え)、パニツムマブ(遺伝子組換え)

 [NTRK1/2/3融合遺伝子]
  がん種:固形がん
  関連する医薬品:エヌトレクチニブ

(ケアネット)


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早期乳がんへの術後トラスツズマブ投与、PHERE試験の最終解析/Lancet

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 早期乳がんの術後トラスツズマブ治療において、6ヵ月投与は12ヵ月投与に対し非劣性ではないことが、フランス・Centre Paul StraussのXavier Pivot氏らが行った「PHARE試験」の最終解析で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年6月6日号に掲載された。本試験の2013年の中間解析では非劣性が確認できず、今回は、事前に規定されたイベント発生数に基づき、予定された最終解析の結果が報告された。

無病生存を評価するフランスの無作為化非劣性試験

 PHAREは、フランスの156施設が参加した非盲検無作為化第III相非劣性試験であり、2006年5月~2010年7月の期間に患者登録が行われた(フランス国立がん研究所の助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、転移がなく、HER2陽性の切除可能な腺がんで、腋窩リンパ節転移の有無は問わず、腫瘍径が10mm以上であり、化学療法を4サイクル以上受け、術後トラスツズマブ治療を開始した患者であった。

 被験者は、術後トラスツズマブ治療開始後3~6ヵ月の治療期間中に、6ヵ月または12ヵ月投与の群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要評価項目は、intention-to-treat(ITT)集団における無病生存の、6ヵ月投与群の12ヵ月投与群に対する非劣性とした。事前に規定されたハザード比(HR)のマージンは1.15であった。

標準投与期間は12ヵ月のままに

 3,380例(ITT集団)が登録され、6ヵ月投与群に1,690例(年齢中央値55歳[範囲23~85]、リンパ節転移陰性54.7%、ホルモン受容体陰性38.5%)、12ヵ月投与群にも1,690例(54歳[21~86]、55.4%、39.6%)が割り付けられた。化学療法は、タキサン系薬+アンスラサイクリン系薬剤が、それぞれ72.7%、73.9%で施行された。

 フォローアップ期間中央値7.5年(IQR:5.3~8.8)の時点で、無病生存関連イベントが704件認められた(6ヵ月投与群359件[21.2%]、12ヵ月投与群(345件[20.4%])。層別因子で補正したHRは1.08(95%信頼区間[CI]:0.93~1.25、p=0.39)であった。事前に規定された非劣性マージン(1.15)が95%CI内に含まれたため、非劣性仮説は証明されなかった。

 サブグループ解析(年齢、リンパ節転移、腫瘍サイズ、ホルモン受容体など)では、トラスツズマブの投与期間の違いで無病生存率に差はみられなかった。

 6ヵ月投与群の186例(11.0%)、12ヵ月投与群の170例(10.1%)が死亡した(HR:1.13、95%CI:0.92~1.39、p=0.26)。3年生存率は、6ヵ月投与群が89.3%、12ヵ月投与群は92.2%であり、5年生存率はそれぞれ84.2%、86.2%、7年生存率は80.6%、82.3%であった。

 また、遠隔再発は6ヵ月投与群が249例(14.7%)、12ヵ月投与群は224例(13.3%)に認められ、無転移生存率のHRは1.15(95%CI:0.96~1.37、p=0.14)であった。

 トラスツズマブ投与終了後に、安全性関連のイベントはほとんど発現しなかった。前回の報告以降、心不全は発現せず、12ヵ月投与群で新たに3例に左室駆出率50%未満を認めたのみだった。

 著者は、「治療曝露の削減には疑問が残るため、術後トラスツズマブ治療の標準投与期間は12ヵ月のままとすべきと考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)


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Pivot X, et al. Lancet. 2019 Jun 6. [Epub ahead of print]

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HER2陽性早期乳がん、トラスツズマブ投与期間短縮で効果は?/Lancet

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 HER2陽性早期乳がんの治療において、トラスツズマブの6ヵ月投与は、12ヵ月投与に対し非劣性であることが、英国・ケンブリッジ大学のHelena M. Earl氏らが行った「PERSEPHONE試験」で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2019年6月6日号に掲載された。術後のトラスツズマブ治療は、HER2陽性早期乳がん患者のアウトカムを有意に改善する。標準的な投与期間は12ヵ月だが、より短い期間でも有効性はほぼ同様で、毒性は軽減し、費用は削減される可能性が示唆されている。

英国の152施設が参加した無作為化非劣性試験

 PERSEPHONE試験は、英国の152施設が参加した非盲検無作為化第III相非劣性試験であり、2007年10月~2015年7月の期間に患者登録が行われた(英国国立衛生研究所[NIHR]の助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、HER2陽性で、化学療法の明確な適応がある浸潤性早期乳がん患者であった。被験者は、化学療法との併用(同時または逐次投与)で、3週ごとにトラスツズマブを静脈内投与(負荷用量8mg/kgののち、維持用量6mg/kg)または皮下投与(600mg)され、これを6ヵ月間または12ヵ月間施行する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要評価項目は無病生存期間とした。非劣性マージンは4年無病生存率の3%であった。

4年無病生存率:89.4% vs.89.8%、全生存率:93.8% vs.94.8%

 4,088例が登録され、6ヵ月投与群に2,043例(年齢中央値56歳[範囲23~83])、12ヵ月投与群には2,045例(56歳[23~82])が割り付けられた。

 全体の69%がエストロゲン受容体陽性であった。術前化学療法を受けた620例では、89%がアンスラサイクリン系薬剤とタキサン系薬、9%がアンスラサイクリン系薬のみ、2%がタキサン系薬のみを投与され、術後化学療法を受けた3,468例では、それぞれ41%、47%、11%の投与であった。

 フォローアップ期間中央値5.4年(IQR:3.6~6.7)の時点で、無病生存イベントは6ヵ月投与群が265例(13%)、12ヵ月投与群は247例(12%)に認められた。4年無病生存率は、それぞれ89.4%、89.8%で、ハザード比(HR)は1.07(90%信頼区間[CI]:0.93~1.24、非劣性のp=0.011)であり、6ヵ月投与群の非劣性が示された。

 全生存率は、6ヵ月投与群が93.8%、12ヵ月投与群は94.8%であり、非劣性が確認された(HR:1.14、90%CI:0.95~1.37、非劣性のp=0.0010)。

 6ヵ月投与群は、12ヵ月投与群に比べ重篤な有害事象(19%[373/1,939例] vs.24%[459/1,894例]、p=0.0002)が少なく、心毒性による早期治療中止(3%[61/1,939例] vs. 8%[146/1,894例]、p<0.0001)も少なかった。

 著者は、「これらの結果は、再発リスクが本試験の患者と同程度の女性における、トラスツズマブ投与期間の短縮の検討を支持する」としている。

(医学ライター 菅野 守)


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Earl HM, et al. Lancet. 2019 Jun 6. [Epub ahead of print]

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終末期14日間の化学療法、5%未満に減少/JCO

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 終末期(end of life、以下EOL)がん患者の積極的治療について、わが国でも高齢者においては中止を支持する機運が醸成されつつあるのではないだろうか。米国ではEOL化学療法は、最も広く行われている、不経済で、不必要な診療行為として、ベンチマーキングで医師のEOL14日間の化学療法使用を減らす取り組みが行われている。その結果、同施行は2007年の6.7%から2013年は4.9%に減少したことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPenny Fang氏らによる調査の結果、明らかになった。著者は、「首尾よく5%未満に減少した。この結果を現行のEOLオンコロジー戦略に反映することで、さらに高レベルのEOLの実践が期待できるだろう」と述べている。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年5月29日号の掲載報告。

 研究グループは全米のEOL化学療法と標的療法の最近の傾向を評価するため、SEER-Medicareデータベースを用いて、2007~13年に乳がん(1万9,887例)、肺がん(7万9,613例)、大腸がん(2万9,844例)、前立腺がん(1万7,910例)で死亡した65歳以上の患者について、EOL14日間の化学療法の使用に関するガイドラインベンチマーク指標を評価した。

 EOL6ヵ月間の各タイムポイントでの化学・標的療法の非ベンチマーク指標を比較アウトカムとし、Cochran-Armitage検定法で時間的傾向を評価。また、医師レベルによるEOL化学療法の使用のばらつきを、マルチレベル・ロジスティックモデルおよび級内相関係数(ICC)を用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・EOL14日間の化学療法は、2007年6.7%から2013年は4.9%まで減少した(傾向のp<0.001、Δ=-1.8%)。
・同様の減少傾向は、EOL1ヵ月間(傾向のp<0.001、Δ=-1.8%)および同2ヵ月間(傾向のp<0.001、Δ=-1.3%)にも認められた。
・対象的に、EOL4~6ヵ月間の化学療法使用は増加していた(傾向のp≦0.04、Δ=0.7→1.7%)。
・EOL6ヵ月間で化学療法を受けた患者は、全体の43.0%であった。
・EOL6ヵ月間のすべてのタイムポイントの標的療法の頻度は、2007~13年にわずかだが安定的に上昇していた(傾向のp=0.09~0.82、Δ=-0.2→1.8%)
・標的療法を受けた患者は、EOL14日間で1.2%、同1ヵ月間で3.6%であった。同6ヵ月間では13.2%であった。
・マルチレベルモデルの評価(ICC法による)において、医師レベルに起因すると考えられるEOL14日間の化学療法のばらつきは5.19%であった。

(ケアネット)


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Fang P, J Clin Oncol. 2019 May 29. [Epub ahead of print]

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ROS1/TRK阻害薬エヌトレクチニブ、国内承認/中外

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 中外製薬は、2019年6月18日、ROS1/TRK阻害薬エヌトレクチニブ(商品名:ロズリートレク)について、「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌」を効能・効果とした製造販売承認を厚生労働省より取得したと発表。エヌトレクチニブは、先駆け審査指定制度対象品目、希少疾病用医薬品の指定を受けていた。

 今回の承認は、主にオープンラベル多施設国際共同第II相臨床試験(STARTRK-2試験)の成績に基づいている。有効性評価は、NTRK融合遺伝子陽性の固形がんの成人患者51例を対象として行った。また、小児の有効性評価は海外第I/Ib相臨床試験(STARTRK-NG試験)に登録されたNTRK融合遺伝子陽性の固形がんの患児5例で行った。一方、安全性評価はSTARTRK-2試験に加え、2つの海外第I相臨床試験(STARTRK-1試験およびALKA試験)の3つの試験に登録された339例を中心に行った。

有効性評価
・STARTRK-2試験において、RECIST ver.1.1に基づく独立評価委員判定による奏効率は56.9%(95%CI:42.3~70.7%)であった。
・STARTRK-NG試験において、RECIST ver.1.1およびRANO規準に基づく主治医判定では、5例中4例に奏効が認められた。

安全性の概要
・最も一般的な有害事象は、疲労、便秘、味覚異常、浮腫、めまい、下痢、吐き気、知覚異常、呼吸困難、痛み、貧血、認知障害、体重増加、嘔吐、咳、血中クレアチニン増加、関節痛、発熱、および筋肉痛であった。

 エヌトレクチニブは、ROS1およびTRKファミリーを強力かつ選択的に阻害する経口投与可能なチロシンキナーゼ阻害薬であり、ROS1またはNTRK融合遺伝子を有するがん細胞の増殖を抑制する。エヌトレクチニブは、前治療後に病勢進行した、または許容可能な標準治療がないNTRK融合遺伝子陽性の局所進行または遠隔転移を有する成人および小児の固形がんに対し、米国食品医薬品局(FDA)よりBreakthrough Therapyに、欧州医薬品庁(EMA)よりPRIME(PRIority MEdicines)に指定されている。国内では2019年3月に「ROS1融合遺伝子陽性の局所進行又は転移性非小細胞肺癌」を対象とした承認申請を行っている。

(ケアネット 細田 雅之)


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CDK4/6阻害薬ribociclib、進行乳がんのOS延長/NEJM

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 HER2陰性ホルモン受容体陽性進行乳がんの治療において、標準的な内分泌療法にサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)阻害薬ribociclibを併用すると、内分泌療法単独に比べ、全生存(OS)期間が有意に延長することが、韓国・ソウル大学校病院のSeock-Ah Im氏らが実施したMONALEESA-7試験で示された。研究の成果はNEJM誌オンライン版2019年6月4日号に掲載された。本試験の早期解析では、ribociclib追加によって、主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間の延長が確認されており、今回は、プロトコルで規定された主要な副次評価項目であるOSの中間解析の結果が報告された。

上乗せ効果を検証するプラセボ対照無作為化試験

 MONALEESA-7は、国際的な二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験で、2014年12月~2016年8月に患者登録が行われた(Novartisの助成による)。

 対象は、年齢18~59歳、HER2陰性、ホルモン受容体陽性で、局所領域再発または転移を有する進行乳がんであり、全身状態(ECOG PS)が0~1の患者であった。

 被験者は、ribociclib(28日を1サイクルとし、1日1回600mgを21日間経口投与、7日間休薬)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。両群とも、内分泌療法として、ゴセレリン(3.6mgを各サイクルの1日目に皮下注)の投与を受け、非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(レトロゾール2.5mgまたはアナストロゾール1mg)もしくはタモキシフェン(20mg)を1~28日目に1日1回経口投与された。

 672例が登録され、ribociclib群に335例、プラセボ群には337例が割り付けられた。

死亡リスクが29%低減、後治療中のPFSも良好

 OS解析のカットオフ日の時点で、ribociclib群は116例(34.6%)、プラセボ群は57例(16.9%)が治療を受けていた。フォローアップ期間中央値は34.6ヵ月であった。ribociclib群は83例(24.8%)、プラセボ群は109例(32.3%)が死亡した。

 ITT解析では、ribociclib群はプラセボ群に比べOS期間が有意に延長し(評価不能vs.40.9ヵ月)、42ヵ月時の推定OS率はそれぞれ70.2%および46.0%と、ribociclib群で死亡リスクが29%有意に低減した(死亡のハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.54~0.95、log-rank検定のp=0.00973)。

 アロマターゼ阻害薬の投与を受けたサブグループ(495例)における42ヵ月時の推定OS率は、ribociclib群が69.7%と、プラセボ群の43.0%に比べ有意に良好で、ITT集団の結果と一致していた(HR:0.70、95%CI:0.50~0.98)。タモキシフェンのサブグループ(177例)では、両群間に42ヵ月時の推定OS率の差は認めなかった(71.2% vs.54.5%、0.79、0.45~1.38)。

 ribociclib群の219例と、プラセボ群の280例が試験治療を中止し、それぞれ151例(68.9%)および205例(73.2%)が後治療を受けた。後治療レジメンは、化学療法単独(ribociclib群22.4%、プラセボ群28.6%)および内分泌療法単独(22.4%、20.4%)が多かった。42ヵ月時に、化学療法による後治療を開始していなかった患者の割合は、ribociclib群がプラセボ群よりも高かった(65.8% vs.49.0%、HR:0.60、95%CI:0.46~0.77)。

 42ヵ月時に生存または2次治療中に病勢が進行しなかった患者の割合(後治療中のPFS率)は、ribociclib群がプラセボ群に比し有意に高かった(54.6% vs.37.8%、HR:0.69、95%CI:0.55~0.87)。

 有害事象の発現状況は、初回解析時と一致していた。主なGrade3/4のとくに注目すべき有害事象は、好中球減少(ribociclib群63.5%、プラセボ群4.5%)、肝胆道毒性作用(11%、6.8%)、QT間隔延長(1.8%、1.2%)だった。

 著者は、「全生存および病勢進行後のアウトカムは、臨床的意思決定において重要な要因であるため、今回の早期治療ラインの結果は患者にとってきわめて重要である。後治療中のPFS解析では、1次治療と2次治療を通じたribociclibの有益性が示された」としている。

(医学ライター 菅野 守)


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Im SA, et al. N Engl J Med. 2019 Jun 4. [Epub ahead of print]

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適切な乳がん補助化学療法のためのガイド情報が明らかに/NEJM

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 乳がん患者において、21遺伝子アッセイに基づく再発スコアに臨床的な再発リスク層別化の予後情報を加味すると、治療による恩恵効果が高い閉経前女性の特定が可能であることが示された。米国・アルベルト・アインシュタイン医学校のJoseph A. Sparano氏らが、21遺伝子アッセイの有用性を検証したTrial Assigning Individualized Options for Treatment(TAILORx試験)の副次的解析結果を報告した。乳がん患者への補助化学療法の必要性は、臨床病理学的因子とオンコタイプDXによる再発リスクを確定するための21遺伝子アッセイに基づく再発スコアによって判断できる可能性が示されていたが、再発スコアに臨床的な再発リスクのレベル情報を追加する意義については明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2019年6月3日号掲載の報告。

腫瘍径とグレードに基づき臨床リスクを層別化、遺伝子再発スコアと併用して評価

 研究グループは、TAILORx試験に参加したリンパ節転移陰性のER陽性かつHER2陰性乳がん患者9,427例を対象に、臨床的な再発リスクを腫瘍の大きさ・組織学的悪性度(グレード)に基づき、低臨床リスク(腫瘍径3cm以下・Grade I、2cm以下・Grade II、1cm以下・Grade III)と高臨床リスク(低臨床リスクに該当しない場合)に分類。これら臨床リスクの影響について、Cox比例ハザードモデルを用いて遠隔再発のハザード比を算出して評価した。

 遺伝子再発スコア(スコア範囲0~100:高値ほど予後不良もしくは化学療法の潜在的ベネフィットが大きいことを示す)は、低リスク(0~10)、中間リスク(11~25)、高リスク(26~100)で評価した。

  被験者9,427例のうち、低臨床リスクは70.2%、高臨床リスクは29.8%。年齢分布の比率も類似していた(50歳超は68.6%、50歳以下は31.4%)。なお、初回ホルモン療法について、50歳未満の閉経前女性患者の大部分がタモキシフェン単独療法を受けていた。

臨床リスク分類の併用は有用

 再発スコアが中間リスクでホルモン療法単独症例の場合、低臨床リスクに対する高臨床リスクの遠隔再発ハザード比は2.73(95%信頼区間[CI]:1.93~3.87)であり、中間リスクでホルモン療法+化学療法例の場合は、同遠隔再発ハザード比は2.41(95% CI:1.66~3.48)であった。また、再発スコアが高リスクでホルモン療法+化学療法例の場合、同遠隔再発ハザード比は3.17(95%CI:1.94~5.19)であり、再発スコアが中間リスクまたは高リスクのいずれにおいても、臨床リスク分類が遠隔再発の予後因子であることが示された。

 50歳未満のホルモン療法単独症例では、9年遠隔再発率(推定)は、再発スコア低リスク症例では臨床リスクにかかわらず5%未満(≦1.8±0.9%)であったが、再発スコア中間リスクで低臨床リスク症例では4.7±1.0%であった。また、高臨床リスクの場合は再発スコアが中間リスク以上において、9年遠隔再発率が10%を超えた(再発スコア中間リスクのホルモン療法単独症例で12.3±2.4%、再発スコア高リスクの化学療法併用例で15.2±3.3%)。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


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Sparano JA, et al. N Engl J Med. 2019 Jun 3. [Epub ahead of print]

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乳がん化学療法、望ましいアントラサイクリンは?

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 アントラサイクリン系抗がん剤の心毒性は古くから知られており、抗腫瘍効果との兼ね合いがよく話題に上る。中国・上海中医薬大学のZhujun Mao氏らは、乳がんに対するアントラサイクリン系薬の有用性はなお議論の的であり結論が得られていないとして、無作為化臨床試験のネットワークメタ解析を行った。その結果、心毒性と抗腫瘍効果を考慮すると乳がんの化学療法に適したアントラサイクリン系薬は、ドキソルビシンリポソームまたはエピルビシン+デクスラゾキサンであることが示されたという。Oncology Research and Treatment誌オンライン版2019年5月17日号掲載の報告。

 研究グループは、乳がんに対するアントラサイクリン系薬の心毒性と有効性を評価する目的でネットワークメタ解析を行った。PubMed、Embaseおよびコクラン・データベースを用い、2018年8月までに発表された論文を検索し、アントラサイクリン系薬の心毒性と有効性を検討した無作為化臨床試験19件(乳がん患者計3,484例)を特定した。

 ドキソルビシン、エピルビシン、ドキソルビシンリポソーム、ドキソルビシン+デクスラゾキサン(DD)およびエピルビシン+デクスラゾキサン(ED)の5つの治療戦略に関する研究を適格として解析した。

  主な結果は以下のとおり。

・直接比較のメタ解析では、エピルビシン、ドキソルビシンリポソーム、DDおよびEDは、ドキソルビシンと比較して心保護作用が有意に優れており、オッズ比はそれぞれ1.64、3.75、2.88および3.66であった。
・奏効率は、ドキソルビシンリポソームが最も高く、次いでドキソルビシン、エピルビシン、EDおよびDDの順であった。
・ベネフィットとリスクのバランスが最も好ましいのはEDで、次いでドキソルビシンリポソーム、DD、エピルビシン、ドキソルビシンの順であった。

(ケアネット)


【参考文献・参考サイトはこちら】
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Mao Z, et al. Oncol Res Treat. 2019 May 17. [Epub ahead of print]

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日本のAYA世代がん患者が終末期ケアに望むこと

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  2018年3月に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(厚生労働省)が改訂され、本人が望むエンドオブライフ・ケア(EOLケア)がいっそう推進されているが、国立がん研究センター 中央病院の平野 秀和氏らは、日本のAYA世代(思春期・若年成人、15~39歳)のがん患者が、どのようなEOLケアを選好するのか、初となる調査を行った。同センターによれば、日本のAYA世代では、年間約2万人ががんの診断を受けているという。Journal of Pain and Symptom Management誌オンライン版2019年5月8日号掲載の報告。

 研究グループは、多施設共同で行っているAYA世代がん患者に対する総合的ながん対策の在り方に関する研究調査(経験やニードの実態をアンケート等で調査)の一環として、EOLケアの選好について評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・AYAがん患者計349例(AYAがん患者213例、AYAがんサバイバー136例)について、評価した。有効回答率は86%(296/344例)であった。
・「予後を知りたい」との選好が53%(180/338例)、「治癒不能ながんで、かなりの毒性があり効果は限定的だが対症療法的な化学療法を受けたい」との選好が88%(301/341例)、「EOL期には自宅で積極的な緩和ケアを受けたい」との選好が61%(207/342例)であった。
・多変量解析で、「予後を知りたい」という選好は、小児世代以外で正の関連が認められた(OR:3.05、p=0.003)。また、化学療法既往とは負の関連が認められた(OR:0.23、p=0.009)。
・「治癒不能ながんで、かなりの毒性があり効果は限定的だが対症療法的な化学療法を受けたい」という選好は、積極的ながん治療を受けている状態と正の関連がみられた(OR:1.74、p=0.03)。
・「EOL期には自宅で積極的な緩和ケアを受けたい」という選好は、不安と正の関連がみられた(OR:1.72、p=0.04)。
・著者は、「これらの所見は、医療従事者が日本のAYA世代がん集団のEOLケアに関する選好を、よりよく理解するのに役立つだろう」とまとめている。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】
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Hirano H, et al. J Pain Symptom Manage. 2019 May 8. [Epub ahead of print]

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