喜島祐子|術式:下垂のない乳房B区域乳癌に対する乳房温存オンコプラスティックサージャリー:V-rotation mammoplasty【Chap10】

提供元:がん@魅せ技

診断名: 左BA区域浸潤性乳管癌(cT2N0M0 Stage2A, ycT1N0M0 Stage1A)
患者情報:40代 女性
執刀医師:喜島 祐子
領域:乳がん
術式:その他


Chapter 10:閉創

同症例のChapter一覧

Chapter 1 : 症例解説
Chapter 2 : 乳輪周囲皮膚の脱上皮
Chapter 3 : 表皮切開
Chapter 4 : 乳房下溝線部三日月型皮膚の脱上皮
Chapter 5 : 扇型皮膚全層切開
Chapter 6 : 円柱状乳腺切除
Chapter 7 : V字型皮膚乳腺弁作成
Chapter 8 : 皮膚乳腺弁の補填
Chapter 9 : 乳房下溝線作成
Chapter 10 : 閉創
Chapter 11 : 術後解説

乳がんのほか消化器がん、肺がん領域等の手術手技コンテンツが充実の「がん@魅せ技」はこちら

喜島祐子|術式:下垂のない乳房B区域乳癌に対する乳房温存オンコプラスティックサージャリー:V-rotation mammoplasty【Chap11】

提供元:がん@魅せ技

診断名: 左BA区域浸潤性乳管癌(cT2N0M0 Stage2A, ycT1N0M0 Stage1A)
患者情報:40代 女性
執刀医師:喜島 祐子
領域:乳がん
術式:その他


Chapter 11:術後解説

同症例のChapter一覧

Chapter 1 : 症例解説
Chapter 2 : 乳輪周囲皮膚の脱上皮
Chapter 3 : 表皮切開
Chapter 4 : 乳房下溝線部三日月型皮膚の脱上皮
Chapter 5 : 扇型皮膚全層切開
Chapter 6 : 円柱状乳腺切除
Chapter 7 : V字型皮膚乳腺弁作成
Chapter 8 : 皮膚乳腺弁の補填
Chapter 9 : 乳房下溝線作成
Chapter 10 : 閉創
Chapter 11 : 術後解説

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喜島祐子|術式:下垂のない乳房B区域乳癌に対する乳房温存オンコプラスティックサージャリー:V-rotation mammoplasty【Chap6】

提供元:がん@魅せ技

診断名: 左BA区域浸潤性乳管癌(cT2N0M0 Stage2A, ycT1N0M0 Stage1A)
患者情報:40代 女性
執刀医師:喜島 祐子
領域:乳がん
術式:その他


Chapter 6:円柱状乳腺切除

同症例のChapter一覧

Chapter 1 : 症例解説
Chapter 2 : 乳輪周囲皮膚の脱上皮
Chapter 3 : 表皮切開
Chapter 4 : 乳房下溝線部三日月型皮膚の脱上皮
Chapter 5 : 扇型皮膚全層切開
Chapter 6 : 円柱状乳腺切除
Chapter 7 : V字型皮膚乳腺弁作成
Chapter 8 : 皮膚乳腺弁の補填
Chapter 9 : 乳房下溝線作成
Chapter 10 : 閉創
Chapter 11 : 術後解説

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海外研修留学便り【米国留学記(矢崎 秀氏)】第1回

[レポーター紹介 ]
矢崎 秀(やざき しゅう)

2012年  3月 日本大学医学部 卒業
2012年  4月    聖路加国際病院 初期研修医
2014年  4月    聖路加国際病院 内科専門研修医
2015年  4月    聖路加国際病院 内科チーフレジデント
2016年  4月    聖路加国際病院 腫瘍内科フェロー                
2019年  4月    国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科・先端医療科 がん専門修練医
2021年  4月    国立がん研究センター中央病院 国際開発部門・腫瘍内科 研究員
2023年  6月    Memorial Sloan Kettering Cancer Center,
                       Department of Radiation Oncology, Research Fellow

 皆さま、はじめまして。私は2023年6月よりMemorial Sloan Kettering Cancer Center放射線治療科部門のNadeem Riazラボでリサーチフェローをしております。

市中病院でのキャリア開始から研究留学を決意するまで

 私は大学卒業後、市中病院でキャリアを開始しました。そのため臨床業務が中心であり、基礎研究には縁がない生活を送っていました。では、なぜ私が基礎研究やTR(トランスレーショナルリサーチ)で留学を決意するに至ったのでしょうか?

 腫瘍内科医として日々の診療を行う中で、同じがん種であっても個々の患者さんによってがん薬物療法の治療効果は大きく異なることを実感しました。乳がんではホルモン受容体やHER2発現を基にした個別化治療により治療成績は改善していますが、依然として十分ではありません。さらなる治療成績向上には、より個別化した治療の開発が重要になります。そのためには、なぜ個々の患者さんで治療効果が異なるのか、背景にあるがんのbiologyを理解する必要があり、基礎研究やTR研究に興味を持つようになりました。

 一般腫瘍内科研修を終え、異動した国立がん研究センターで病理診断部門や研究所に出入りし、患者さんの検体を用いたオミクス情報解析を学びました。オミクス情報とがんの病態や治療効果を結び付ける作業はとても面白く、技術も日々進歩していることからさらなるトレーニングを積みたいと思いました。海外留学には漠然とした憧れがあり、学位、専門医の取得後のキャリアを考えた際に、留学するなら今しかない、と思い研究留学を決意しました。

難航した留学先探し、頼りになったサイトとは

 最初は、過去に留学経験のある先生方に相談し、その人脈を頼り留学先の検討を始めました。複数のPIをご紹介いただき面談も行いましたが、研究テーマやオファー条件が決定打に欠け、なかなか進展しませんでした。そのほか、ツテはないものの興味のある研究室にメールで打診を行ったりしましたが、返事がないことも多く、留学先探しは難航していました。そんな中、偶然見たNature Careersで興味があった研究室からのポスドク募集を発見し(締め切り前日でした)、急いで応募したところ面談に進みオファーをいただきました。こうして現在の研究室に行くことが決まりました。

 留学先を探している方はNatureやScienceに出ている求人情報を一度はチェックすることをお勧めします。ポスドクの募集が出ているということは、その研究室がポストと研究費を確保しているタイミングであるためチャンスです(しかし、ビックラボから募集が出ることは少なく、頻繁に公募が出ているラボには注意する必要があります)。また、日本人としては複数の研究室に同時にアプローチすることに躊躇しがちですが、並行して進めるほうが効率的です。私は当初、1つずつ交渉していたため、時間を浪費してしまいました。 

注意したい「5 point letter」の発行と語学の準備

 留学までの準備に関して、私からはJ1ビザの注意点とよく聞かれる英語についてお伝えします。

・ビザ

 研究留学の場合はJ1ビザを所得することが一般的ですが、MDが研究留学する際には、臨床業務を行わないことを明記した「5 point letter」が必要となります。DS-2019に加えて、「5 point letter」の発行も依頼しましょう。受け入れ施設もこの書類の必要性を把握していないこともあるので、注意してください。

・英語

 私はとくに資格試験の結果などを求められることはありませんでした。しかし、渡米直後はまったく会話が聞き取れずとても苦労しました(今も大変ですが、少しマシになりました。東海岸はとくに英語が早いという噂もあります…)。英語力がないことで留学をあきらめる必要はないと思いますが、資格試験などを目安に英語のトレーニングをしておくことをお勧めします。

 私は上記の「5 point letter」が不足していたため初回の申請でビザが下りませんでした。受け入れ施設に書類の作成を依頼しましたが前例がなく対応に時間がかかり、出国予定日を過ぎても書類は届きませんでした。待てども書類は届かず、最終的には自分でひな形を作成し、書類を作成してもらいました。ビザ取得までの約1ヵ月間は、住居も引き払っていたため、義理の兄弟の家に家族で泊めていただきました(大感謝です)。留学前から波乱に巻き込まれましたが、何とか無事にアメリカに入国し留学生活を開始しました。


バックナンバー

2 海外研修留学便り【米国留学記(矢崎 秀氏)】第2回

1 海外研修留学便り【米国留学記(矢崎 秀氏)】第1回

ESMO2024 レポート 乳がん

提供元:CareNet.com

レポーター: 下村 昭彦氏
(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 乳腺・腫瘍内科/がん総合内科)

 2024年9月13日から17日まで5日間にわたり、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)がハイブリッド形式で開催された。COVID-19の流行以降、多くの国際学会がハイブリッド形式を維持しており、日本にいながら最新情報を得られるようになったのは非常に喜ばしい。その一方で、参加費は年々上がる一方で、今回はバーチャル参加のみの会員価格で1,160ユーロ(なんと日本円では18万円超え)。日本から参加された多くの先生方がいらっしゃったが、渡航費含めると相当の金額がかかったと思われる…。

 それはさておき、今年のESMOは「ガイドラインが書き換わる発表です」と前置きされる発表など、臨床に大きなインパクトを与えるものが多かった。日本からもオーラル、そしてAnnals of Oncology(ESMO/JSMOの機関誌)に同時掲載の演題があるなど、非常に充実していた。本稿では、日本からの演題も含めて5題を概説する。

KEYNOTE-522試験

 本試験は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を対象とした術前化学療法にペムブロリズマブを上乗せすることの効果を見た二重盲検化プラセボ対照第III相試験である。カルボプラチン+パクリタキセル4コースのち、ACまたはEC 4コースが行われ、ペムブロリズマブもしくはプラセボが併用された。病理学的完全奏効(pCR)と無イベント生存(EFS)でペムブロリズマブ群が有意に優れ、すでに標準治療となっている。今回は全生存(OS)の結果が発表された。

 アップデートされたEFSは、両群ともに中央値には到達せず、ハザード比(HR):0.75、95%信頼区間(CI):0.51~0.83、5年目のEFSがペムブロリズマブ群で81.2%、プラセボ群で72.2%であり、これまでの結果と変わりなかった。OSも中央値には到達せず、HR:0.66(95%CI:0.50~0.87、p=0.00150)、5年OSが86.6% vs.81.7%と、ペムブロリズマブ群で有意に良好であった(有意水準α=0.00503)。また、pCRの有無によるOSもこれまでに発表されたEFSと同様であり、non-pCRであってもペムブロリズマブ群で良好な結果であった。

 この結果から、StageII以上のTNBCに対してはペムブロリズマブを併用した術前化学療法を行うことが強固たるものとなった。

DESTINY-Breast12試験

 本試験は脳転移を有する/有さないHER2陽性転移乳がん患者に対するトラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd)の有効性を確認した第IIIb/IV相試験である。脳転移を有するアームと脳転移を有さないアームが独立して収集され、主に脳転移を有する症例におけるT-DXdの有効性の結果が発表された。脳転移アームには263例の患者が登録され、うち157例が安定した脳転移、106例が活動性の脳転移を有した。活動性の脳転移のうち治療歴のない患者が39例、治療歴があり増悪した患者が67例であった。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、その他の評価項目として脳転移のPFS(CNS PFS)などが含まれた。脳転移を有する症例のPFS中央値は17.3ヵ月(95%CI:13.7~22.1)、12ヵ月PFSは61.6%と非常に良好な成績であり、これまでの臨床試験と遜色なかった。活動性の脳転移を有するサブグループでも同等の成績であったが、治療歴のないグループでは12ヵ月PFSが47.0%とやや劣る可能性が示唆された。12ヵ月時点のCNS PFSは58.9%(95%CI:51.9~65.3)とこちらも良好な結果であった。安定した脳転移/活動性の脳転移の間で差は見られなかった。

 測定可能病変を有する症例における奏効率は64.1%(95%CI:57.5~70.8)、測定可能な脳転移を有する症例における奏効率は71.7%(95%CI:64.2~79.3)であった。OSは脳転移のある症例とない症例で差を認めなかった。

 この結果からT-DXdの脳転移に対する有効性は確立したものと言ってよいであろう。これまで(とくに活動性の)脳転移に対する治療は手術/放射線の局所治療が基本であったが、今後はT-DXdによる全身薬物療法が積極的な選択肢になりうる。

CAPItello-290試験

 カピバセルチブは、すでにPI3K-AKT経路の遺伝子変化を有するホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)転移乳がんに対して、フルベストラントとの併用において有効性が示され、実臨床下で使用されている。本試験は転移TNBCを対象として、1次治療としてパクリタキセルにカピバセルチブを併用することの有効性を検証した二重盲検化プラセボ対照第III相試験である。818例の患者が登録され、主要評価項目は全体集団におけるOSならびにPIK3CA/AKT1/PTEN変異のある集団におけるOSであった。結果はそれぞれ17.7ヵ月(カピバセルチブ群)vs. 18.0ヵ月(プラセボ群)(HR:0.92、95%CI:0.78~1.08、p=0.3239)、20.4ヵ月vs. 20.4ヵ月(HR:1.05、95%CI:0.77~1.43、p=0.7602)であった。PFSはそれぞれ5.6ヵ月vs. 5.1ヵ月(HR:0.72、95%CI:0.61~0.84)、7.5ヵ月vs. 5.6ヵ月(HR:0.70、95%CI:0.52~0.95)と、カピバセルチブ群で良好な傾向を認めた。奏効率もカピバセルチブ群で10%程度良好であった。しかしながら、主要評価項目を達成できなかったことで、IPATunity130試験(ipatasertibのTNBC1次治療における上乗せ効果を見た試験で、PFSを達成できなかった)と同様の結果となり、TNBCにおけるAKT阻害薬の開発は困難であることが再確認された。

ICARUS-BREAST01試験

 本試験は抗HER3抗体であるpatritumabにderuxtecanを結合した抗体医薬複合体(ADC)であるpatritumab deruxtecan(HER3-ADC)の有効性をHR+/HER2-転移乳がんを対象に検討した第II相試験である。本試験はCDK4/6阻害薬、1ラインの化学療法歴があり、T-DXdによる治療歴のないHR+/HER2-転移乳がんを対象として行われた単アームの試験であり、主治医判定の奏効率が主要評価項目とされた。99例の患者が登録され、HER2ステータスは約40%で0であった。HER3の発現が測定され、約50%の症例で75%以上の染色が認められた。主要評価項目の奏効率は53.5%(95%CI:43.2~63.6)であり、内訳はCR:2%(0.2~7.1)、PR:51.5%(41.3~61.7)、SD:37.4%(27.8~47.7)、PD:7.1%(2.9~14.0)であった。SDを含めた臨床的有用率は62.6%(52.3~72.1)と、高い有効性を認めた。

 有害事象は倦怠感、悪心、下痢、好中球減少が10%以上でG3となり、それなりの毒性を認めた。探索的な項目でHER3の発現との相関が検討されたが、HER3の発現とHER3-DXdの有効性の間に相関は認められなかった。肺がん、乳がんでの開発が進められており、目の離せない薬剤の1つである。

ERICA試験(WJOG14320B)

 最後に昭和大学先端がん治療研究所の酒井 瞳先生が発表した、T-DXdの悪心に対するオランザピンの有効性を証明した二重盲検化プラセボ対象第II相試験であるERICA試験を紹介する。T-DXdは悪心、嘔吐のコントロールに難渋することのある薬剤である(個人差が非常に大きいとは思うが…)。本試験では、5-HT3拮抗薬、デキサメタゾンをday1に投与し、オランザピン5mgまたはプラセボをday1から6まで投与するデザインとして、166例の患者が登録された。主要評価項目は遅発期(投与後24時間から120時間まで)におけるCR率(悪心・嘔吐ならびに制吐薬のレスキュー使用がない)とされた。両群で80%の症例が5-HT3拮抗薬としてパロノセトロンが使用され、残りはグラニセトロンが使用された。

 遅発期CR率はオランザピン70.0%、プラセボ56.1%で、その差は13.9%(95%CI:6.9~20.7、p=0.047)と、統計学的有意にオランザピン群で良好であった。有害事象として眠気、高血糖がオランザピン群で多かったが、G3以上は認めずコントロール可能と考えられる。

 制吐薬としてのオランザピンの使用はT-DXdの制吐療法における標準治療になったと言えるだろう。


レポーター紹介

下村 昭彦 ( しもむら あきひこ ) 氏
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 乳腺・腫瘍内科/がん総合内科

遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン2024年版―多診療科、多職種および当事者でのコンセンサスー(山内 英子 氏)

3年ぶりに改訂された「遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン」の改訂ポイントを中心に、エビデンスに基づくHBOC診療の最新の考え方を、同ガイドライン部会委員長を務めた山内 英子氏(ハワイ大学がんセンター)が解説します。



[演者紹介]

山内 英子 (やまうち ひでこ)

ハワイ大学がんセンター教授



バックナンバー

4. 遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン2024年版―多診療科、多職種および当事者でのコンセンサスー「山内 英子氏」

3. 乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~外科療法「九冨 五郎氏」

2. 乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~薬物療法【Chap2】「遠山 竜也 氏」

1. 乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~薬物療法【Chap1】「遠山 竜也 氏」

ESMO2024速報 乳がん

|企画・制作|ケアネット

2024年9月13~17日に開催されたESMO Congress2024の乳がんトピックを国立がん研究センター中央病院の下井 辰徳氏が速報レビュー。


レポーター紹介

下井 辰徳 ( しもい たつのり ) 氏
国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科


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未治療TN乳がんへのカピバセルチブ、化学療法への上乗せ効果示さず(CAPItello-290)/ESMO2024

提供元:CareNet.com

 切除不能な局所進行または転移を有する未治療のトリプルネガティブ(TN)乳がん患者を対象に、1次治療としてのカピバセルチブ+パクリタキセル併用療法の有効性および安全性を、プラセボ+パクリタキセルと比較した第III相CAPItello-290試験の結果、全生存期間(OS)は有意に改善しなかったものの、無増悪生存期間(PFS)の改善は認められたことを、米国・UT Southwestern Medical CenterのHeather L. McArthur氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表した。

・試験デザイン:第III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験
・対象:切除不能な局所進行または転移を有し、全身療法を受けていないTN乳がん患者。6ヵ月以内(タキサン系の場合は12ヵ月以内)の術前・術後化学療法歴がある患者は除外された。
・試験群(カピバセルチブ群):カピバセルチブ 400mgを1日2回(4週間サイクルの1~3週目の2~5日目)+パクリタキセル 80mg/m2(4週間サイクルの1~3週目の1日目) 404例
・対照群(プラセボ群):プラセボを1日2回(4週間サイクルの1~3週目の2~5日目)+パクリタキセル 80mg/m2(4週間サイクルの1~3週目の1日目) 408例
・評価項目:
[主要評価項目]全患者集団およびPIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異を有する患者集団におけるOS
[主要副次評価項目]全患者集団およびPIK3CA/AKT1/PTEN変異を有する患者集団におけるPFS、安全性
・層別化因子:内臓転移の有無、術前または術後化学療法歴の有無、地域
・データカットオフ:2024年3月18日

 主な結果は以下のとおり。

・2019年7月~2022年2月に812例がランダム化された。
・年齢中央値はカピバセルチブ群が54.0(範囲:26~85)歳、プラセボ群が53.0(範囲:25~87)歳、閉経後が65.1%および64.2%、内臓転移ありが70.3%および69.6%、de novoが39.9%および41.2%、術前または術後化学療法歴があったのは両群とも50.0%であった。
PIK3CA/AKT1/PTEN変異を認めたのは、カピバセルチブ群30.7%(124例)、プラセボ群30.6%(125例)であった。
・全患者集団におけるOS中央値は、カピバセルチブ群17.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:15.6~20.3)、プラセボ群18.0ヵ月(95%CI:15.3~20.3)であった(ハザード比[HR]:0.92[95%CI:0.78~1.08]、p=0.3239)。
PIK3CA/AKT1/PTEN変異を有する集団におけるOSは、カピバセルチブ群20.4ヵ月(95%CI:15.7~23.4)、プラセボ群20.4ヵ月(95%CI:14.6~26.9)であった(HR:1.05[95%CI:0.77~1.43]、p=0.7602)。
・全患者集団におけるPFS中央値は、カピバセルチブ群5.6ヵ月(95%CI:5.4~7.1)、プラセボ群5.1ヵ月(95%CI:3.9~5.4)であった(HR:0.72[95%CI:0.61~0.84])。
PIK3CA/AKT1/PTEN変異を有する集団におけるPFS中央値は、カピバセルチブ群7.5ヵ月(95%CI:5.6~9.3)、プラセボ群5.6ヵ月(95%CI:5.3~5.7)であった(HR:0.70[95%CI:0.52~0.95])。
・全患者集団における奏効率(ORR)は、カピバセルチブ群50.1%、プラセボ群37.6%であった(オッズ比[OR]:1.68[95%CI:1.27~2.23])。完全奏効(CR)は2.2%および1.2%、部分奏効(PR)は47.9%および36.3%であった。
PIK3CA/AKT1/PTEN変異を有する集団におけるORRは、カピバセルチブ群54.1%、プラセボ群41.9%であった(OR:1.63[95%CI:0.99~2.72])。CRは2.5%および1.6%、PRは51.6%および40.3%であった。
・全患者集団における有害事象は、カピバセルチブ群98.0%(うちGrade3以上が58.0%)、プラセボ群95.1%(うちGrade3以上が38.8%)に発現した。新たな安全シグナルは認められなかった。

(ケアネット 森)


【参考文献・参考サイトはこちら】

CAPItello-290試験(ClinicalTrials.gov)

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乳がん脳転移例へのT-DXd、安定/活動性によらず良好な結果(DESTINY-Breast12)/ESMO2024

提供元:CareNet.com

 脳転移の有無を問わず、前治療歴のあるHER2陽性(+)の転移を有する乳がん患者を対象とした第IIIb/IV相DESTINY-Breast12試験の結果、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は脳転移を伴う患者で全身および中枢神経系における良好な抗腫瘍活性を示し、その活性は持続的であったことを、米国・ダナファーバーがん研究所のNancy U. Lin氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表し、Nature Medicine誌オンライン版2024年9月13日号に同時掲載された。

 これまで、T-DXdのDESTINY-Breast01、02、03試験において、ベースライン時に脳転移があるHER2+乳がん患者の探索的プール解析の結果、既治療で安定した脳転移患者および未治療で活動性の脳転移患者で高い頭蓋内奏効率(ORR)が得られたことが報告されている。DESTINY-Breast12試験は、ベースライン時に脳転移がある患者とない患者の2つの別々のコホートによって、脳転移の有無を問わずにT-DXdの有効性と安全性を前向きに評価した非比較研究である。対象は、抗HER2療法の前治療歴があるHER2+の転移乳がん患者であった。脳転移を有するHER2+の転移乳がん患者を含めたT-DXdの前向き研究としては最大規模となる。最終データカットオフは2024年2月8日。

 主な結果は以下のとおり。

コホート1(脳転移例)
・既治療で安定状態、または即時の局所治療を必要としない活動性(未治療、既治療/増悪)の脳転移を有するHER2+の転移乳がん患者263例に、T-DXd 5.4mg/kgを3週ごとに投与した。データカットオフ時点の追跡期間中央値は15.4(範囲:0.1~33.0)ヵ月であった。
・年齢中央値は52(範囲:28~86)歳、HR+が62.7%、測定可能な病変が75.3%であった。転移に対する前治療のライン数中央値は1.0(範囲:0~4)で0ラインが7.6%、1ラインが50.2%、2ラインが41.4%、≧3ラインが0.8%であった。頭蓋内放射線治療歴のある患者において、最後の頭蓋内放射線治療から治療開始までの期間の中央値は164日であった。
・コホート1の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は17.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:13.7~22.1)であった。12ヵ月PFS率は全体が61.6%(54.9~67.6)、安定状態群が62.9%(54.0~70.5)、活動性群が59.6%(49.0~68.7)であった。活動性群のうち、未治療群は47.0%(29.6~62.7)、既治療/増悪群が66.7%(53.4~76.9)であった。
・12ヵ月中枢神経系PFS率は58.9%(95%CI:51.9~65.3)であった。安定状態群(57.8%[48.2~66.1])と活動性群(60.1%[49.2~69.4])は同等であった。
・ORRは51.7%(95%CI:45.7~57.8)で、完全奏効(CR)は4.2%、部分奏効(PR)は47.5%であった。安定状態群のORRは49.7%(41.9~57.5)、活動性群のORRは54.7%(45.2~64.2)であった。
・中枢神経系ORRは、全体が71.7%(95%CI:64.2~79.3)、安定状態群が79.2%(70.2~88.3)、活動性群が62.3%(50.1~74.5)であった。活動性群のうち、未治療群は82.6%(67.1~98.1)、既治療/増悪群は50.0%(34.1~65.9)であった。
・12ヵ月全生存(OS)率は90.3%(95%CI:85.9~93.4)であった。
・Grade3以上の有害事象は51.0%に発現した。治験責任医師が報告した間質性肺疾患/肺臓炎は16%(うちGrade3以上が3.0%)であった。

コホート2(非脳転移例)
・脳転移を有さないHER2+の転移乳がん患者241例に、T-DXd 5.4mg/kgを3週ごとに投与した。データカットオフ時点の追跡期間中央値は16.1(範囲:0.8~28.4)ヵ月であった。
・年齢中央値は54(範囲:24~87)歳、HR+が62.2%、測定可能な病変が89.2%であった。転移に対する前治療のライン数中央値は1.0(範囲:0~4)で0ラインが7.5%、1ラインが51.5%、2ラインが39.8%、≧3ラインが1.2%であった。
・コホート2の主要評価項目であるORRは62.7%(95%CI:56.5~68.8)で、CRが9.5%、PRが53.1%であった。
・12ヵ月OS率は90.6%(95%CI:86.0~93.8)であった。
・Grade3以上の有害事象は49.0%に発現した。治験責任医師が報告した間質性肺疾患/肺臓炎は12.9%(うちGrade3以上が1.2%)であった。

(ケアネット 森)


【参考文献・参考サイトはこちら】

Harbeck N, et al. Nat Med. 2024 Sep 13. [Epub ahead of print]

DESTINY-Breast12試験(ClinicalTrials.gov)

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この20年間、18~26歳で急増しているがんは?

提供元:CareNet.com

 過去20年間の生活習慣の変化により、若者ががんの危険因子にさらされる機会が増えている可能性があるが、データベースによる研究報告はない。今回、イタリア・Institute of Biochemistry and Cell Biology, National Council of ResearchのAlessandro Cavazzani氏らが、米国・国立がん研究所のがん登録データベース(SEER22)を用いて、部位別のがん罹患率の2000~20年の傾向を調べたところ、18~26歳の女性における膵がん罹患率の平均年変化率が最も高く、年に10%近く増加していた。BMC Medicine誌2024年9月4日号に掲載。

 本研究では、SEER22から2000~20年のがん罹患データ(1,018万3,928例)を収集し、膵がん、胃がん、肺/気管支がん、脳/その他の神経系のがん、骨髄腫、大腸がん、悪性黒色腫、子宮頸がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、精巣がんの罹患率の平均年変化率を、性別・年代別(18~34歳、35~54歳、55歳以上)に算出した。さらに18~34歳を18~26歳および27~34歳に分けて算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・すべてのがんの中で18~34歳の女性の膵がん罹患率の平均年変化率が6.22%(95%信頼区間[CI]:5.2~7.24、p<0.0001)と最も高かった。
・胃がん、多発性骨髄腫、大腸がんにおいても、18~34歳の女性が最も高かった。
・18~34歳の年代を18~26歳と27~34歳に分けて算出すると、18~26歳における膵がん罹患率の平均年変化率は、女性が9.37%(95%CI:7.36~11.41、p<0.0001)と、男性の4.43%(95%CI:2.36~6.53、p<0.0001)に比べて2倍以上だった。27~34歳の女性(4.46%、95%CI:3.62~5.31、p<0.0001)は男性と同様だった。

 著者らは、「致死率の高いがんにおける新たなリスク集団を知ることは、早期発見と効果的な疾患管理のためにきわめて重要」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Cavazzani A, et al. BMC Med. 2024;22:363.

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