進行TN乳がんへのペムブロリズマブ+化療、臨床的有用性が得られ化療中止した例やimAE発現例でも有効(KEYNOTE-355)/ESMO BREAST 2023

提供元:CareNet.com

 手術不能な局所再発または転移・再発トリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療においてペムブロリズマブ+化学療法をプラセボ+化学療法と比較した第III相KEYNOTE-355試験の探索的解析の結果、ペムブロリズマブ+化学療法により臨床的有用性が得られた患者でペムブロリズマブの最終投与前に化学療法を中止した患者、また免疫介在性有害事象(imAE)発現患者において、CPSにかかわらず、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が改善したことが示された。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer Center のHope S. Rugo氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。

 本試験では、PD-L1 CPS 10以上の患者において、ペムブロリズマブ+化学療法により統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるPFSとOSの改善が示されたことが報告されている。今回は、ペムブロリズマブ+化学療法を受け完全奏効(CR)もしくは部分奏効(PR)を達成または病勢安定(SD)を24週以上持続した患者、すなわち臨床的有用性が得られた患者のうちペムブロリズマブ最終投与前21日より前に化学療法を中止した患者におけるPFSとOSを評価した。さらに、ペムブロリズマブ+化学療法を受けた患者でimAEが1件以上発現した患者においても評価した。

・対象:PD-L1陽性の手術不能な局所再発もしくは転移・再発TN乳がん(ECOG PS 0/1)
・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンのうちいずれか)
・対照群:プラセボ+化学療法

 今回の探索的解析における主な結果は以下のとおり。

・2021年6月15日のデータカットオフ時点で、ペムブロリズマブ+化学療法の治療を受け臨床的有用性が得られた患者において、ペムブロリズマブ投与中止前に化学療法を中止した患者および全体でのペムブロリズマブ投与期間中央値、化学療法期間中央値、PFS中央値、OS中央値は、順に以下のとおりで、CPSに関係なくPFS、OSとも上回っていた。
– 治療を受けた全患者
 化学療法中止例(92例):14.1ヵ月 6.0ヵ月 14.5ヵ月 32.9ヵ月
 全体(317例)     : 9.4ヵ月 7.9ヵ月 11.6ヵ月 26.4ヵ月
– CPS 1以上の患者
 化学療法中止例(70例):15.3ヵ月 5.9ヵ月 18.7ヵ月 34.5ヵ月
 全体(249例)     : 9.4ヵ月 8.2ヵ月 11.7ヵ月 26.6ヵ月
– CPS 10以上の患者
 化学療法中止例(46例):20.8ヵ月 6.8ヵ月 36.7ヵ月 未到達
 全体(143例)     :11.1ヵ月 8.5ヵ月 14.4ヵ月 34.4ヵ月

・imAE発現患者および全体におけるペムブロリズマブ投与期間中央値、化学療法期間中央値、PFS中央値、OS中央値は、順に以下のとおりで、imAE発現患者でPFS、OSとも上回っていた。
– 治療を受けた全患者
 imAE発現例(149例):8.8ヵ月 7.2ヵ月 9.7ヵ月 23.9ヵ月
 全体(562例)    :5.6ヵ月 5.1ヵ月 7.5ヵ月 17.2ヵ月
– CPS 1以上の患者
 imAE発現例(109例):8.8ヵ月 7.3ヵ月 9.8ヵ月 26.3ヵ月
 全体(421例)    :5.9ヵ月 5.1ヵ月 7.6ヵ月 17.6ヵ月
– CPS 10以上の患者
 imAE発現例(64例):10.4ヵ月 8.4ヵ月 11.8ヵ月 35.6ヵ月
 全体(219例)   : 7.6ヵ月 5.8ヵ月  9.7ヵ月 22.8ヵ月

 今回の解析から、ペムブロリズマブ+化学療法で臨床的有用性が得られた患者において、PD-L1発現レベルにかかわらず、化学療法中止後もペムブロリズマブは有用であることが示唆された。この結果から、Rugo氏は「臨床的有用性が得られて化学療法を中止した患者において、ペムブロリズマブ継続が適している」とした。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

KEYNOTE-355試験(ClinicalTrials.gov)

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

乳がん術後妊娠希望で内分泌療法を一時中断、再発リスクは?/NEJM

提供元:CareNet.com

 ホルモン受容体陽性の早期乳がん既往患者(42歳以下等の条件あり)において、妊娠を試みるための内分泌療法の一時的な中断は、乳がんイベントの短期リスクを増大しなかったことを、米国・ダナファーバーがん研究所のAnn H. Partridge氏らが報告した。これまで乳がん後に妊娠を試みるために内分泌療法を一時中断した女性の、再発リスクに関する前向きデータは不足していた。今回の結果を踏まえて著者は、「長期安全性の情報を確認するために、さらなる追跡調査が必要である」とまとめている。NEJM誌2023年5月4日号掲載の報告。

妊娠希望で内分泌療法を一時中断、乳がんイベント発生数を評価

 研究グループは、国際多施設共同研究者主導の単群試験で、乳がんを有した若い女性で妊娠を試みるために術後補助内分泌療法の一時中断を評価した。

 42歳以下、乳がんStageI、IIまたはIIIで、術後補助内分泌療法期間が18~30ヵ月の妊娠を希望する女性を適格とした。

 主要評価項目は、追跡期間中の乳がんイベント(同側または局所の浸潤性乳がん、遠隔再発、対側浸潤性乳がんの発生と定義)発生数であった。主要解析は、追跡期間1,600患者年後に実施することが計画された。事前に規定した安全性の閾値は、同一期間中の乳がんイベント発生数が46件とした。

 一時中断群の乳がんアウトカムを、本試験の組み入れ基準に該当すると思われた外部の女性コホート(対照群)と比較した。

63.8%が出産、乳がん再発リスクは事前規定の安全性閾値内

 2014年12月~2019年12月に、516例が有効性に関する主要解析に包含された。年齢中央値は37歳、乳がん診断から試験登録までの期間中央値は29ヵ月であり、93.4%が乳がんStageIまたはIIであった。

 妊娠について追跡した497例において、368例(74.0%)が1回以上妊娠し、317例(63.8%)が1人以上の生児を出産した。

 追跡期間1,638患者年(追跡期間中央値41ヵ月)において、乳がんイベントを発生した患者は44例で、安全性閾値を上回らなかった。

 乳がんイベント3年発生率は、一時中断群8.9%(95%信頼区間[CI]:6.3~11.6)、対照群9.2%(7.6~10.8)であった。絶対群間差は-0.2ポイント(95%CI:-3.1~2.8)、補正後ハザード比は0.81(95%CI:0.57~1.15)であった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】
(ご覧いただくには [ CareNet.com ]の会員登録が必要です)

Partridge AH, et al. N Engl J Med. 2023;388:1645-1656.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

海外研修留学便り 【米国留学記(久保田 祐太郎氏)】第2回

[ レポーター紹介 ]
久保田 祐太郎くぼた ゆうたろう

2003年   3月 昭和大学医学部医学科卒業
2003年   4月 昭和大学病院 内科学講座消化器内科学部門 員外助教
2009年   7月 国立がん研究センター東病院 消化管内科 研修医
2010年   7月 昭和大学病院 内科学講座消化器内科学部門 助教
2014年   1月 昭和大学病院 内科学講座腫瘍内科学部門 助教
2016年   4月 昭和大学病院 内科学講座腫瘍内科学部門 講師
2021年 10月   University of California San Diego, Department of Surgery, Visiting Scholar

 

所属する研究室について

 私の所属する研究室は、University of California San Diego(UCSD)の外科学部門に所属していますが、同時にAntiCancer Inc.というマウスを用いた受託研究を行う会社という側面もあります。教授のRobert M. Hoffman先生の専門は、がんにおけるメチオニン代謝異常、GFP(Green fluorescent protein)などの蛍光タンパクを用いた生体内イメージング、患者由来組織同所移植(Patient derived orthotopic xenograft: PDOX)モデル、独自の遺伝子改変サルモネラ菌を用いた細菌療法など多岐にわたり、いずれの分野でも数多くの論文を発表しています。1984年から続く歴史のある研究室で、毎年20~30本の論文を出していてとても活気があります。

 現在、私はがんにおけるメチオニン代謝異常を基とした治療の研究を進めているので、まず簡単に説明します。

がんにおけるメチオニン代謝異常

 がんのグルコース依存はWarburg効果として有名ですが、メチオニン依存については知らない方も多いと思います。私は腫瘍内科医ですが、正直なところ、こちらに来るまでまったく知りませんでした。メチオニンをコードするmRNA配列はAUGで、これは開始コドンとして機能するため、基本的に生体内でのタンパク合成はメチオニンから始まります。また、メチオニンはメチオニンアデノシルトランスフェラーゼ2A(MAT2A)という酵素でs-アデノシルメチオニン(SAM)に代謝されますが、このSAMは体内における唯一のメチル基供与体です。すなわちDNA、RNA、ヒストンのメチル化にメチオニンは必須であり、さまざまな遺伝子発現の調節に関わっています。

 このようにメチオニンはわれわれの体内においてとても重要な役割を果たしており、必須アミノ酸に分類されていますが、体内でホモシステインから合成が可能なアミノ酸です。正常細胞はメチオニンが不足しても、この合成経路からの補充によって生存が可能ですが、メチオニンおよびメチル基の消費量の多いがん細胞は、この内因性のメチオニン合成では供給が追いつかず、アポトーシスを起こします。このため、がんは外因性のメチオニン供給に依存しています。この性質は身近なところだと、脳腫瘍や脳転移の評価に用いるメチオニンPET(保険未収載)で利用されています。実際、メチオニン制限のがんに対する有効性はin vitroin vivoともに数多く報告されていて、近年徐々に注目されてきています。

実際の研究内容

 メチオニンは多くの動物性、植物性タンパクに含まれているため、食事のみによる制限が難しいという問題点があります。このため、Hoffman教授は、メチオニン分解酵素(recombinant methioninase)を開発し、この酵素と食事によるメチオニン制限とを組み合わせた治療を提案しています。しかし、現状ではまだ課題も多く、実用化には至っていません。

 この主な理由として、前述のとおりメチオニン制限は正常細胞への影響が少ないものの、やはり極度のメチオニン制限を長期間続けると体内でのタンパク合成に支障が出ることや、メチオニンが枯渇するとがんを攻撃するCD8陽性T細胞の活性も低下してしまうことなどが挙げられます。

 このため、私はがんの局所でのみメチオニンを枯渇させることができないかと考え、細菌療法やメチオニン分解酵素の投与方法の工夫などで、その実現を目指した研究を進めています。またその他にも、メチオニン制限と抗がん剤の併用による相乗効果や、メチオニン制限が具体的にヒストンやDNAのメチル化にどのような影響を及ぼすのかについても調べています。

米国で研究することの利点

 最後に、アメリカで研究することの利点についてです。第1の利点は、やはり臨床の仕事がない分、研究に没頭できることです。一部の最先端の研究所は別として、アメリカだからといって研究の内容や質が日本と大きく異なるわけではありません。与えられたテーマについて自分で科学的に考えて、実験を組み、結果を出す。当然、毎回思いどおりの結果が得られるわけではなく、その結果をもとに実験を再考する。その過程で私の研究室のHoffman教授と議論し、助言をもらうこともできます。研究者としては当たり前のことですが、この過程こそが臨床の合間ではなかなかできなかったことなので、毎日とても楽しく充実しています。

 また、論文を執筆する際に、米国人の教授から直接指導を受けられるのも、利点の1つです。とくにHoffman教授は、論文数約1,900本を誇る百戦錬磨の研究者で、われわれ研究員が書いた論文に対して一つひとつ丁寧に指導してくれます。論文を作成して提出すると、早いと数時間、遅くとも翌日には内容が修正されて戻ってきます。その後、直接内容について話し合うのですが、その際に私の書いた論文の良い点と悪い点を指摘したうえで、どのように改善するべきかを細かく指導してくれます。悪い点としてとくによく指摘されるのは、最も大切な論文の題名にインパクトがないということと、考察で余分なことを書き過ぎていて逆にわかり難くなっているということです。これはわれわれ日本人の論文に一般的に言える特徴だと思います。

 また、当然ですが、英文校正を同時にしてもらえるのもありがたいです。内容が意図していたものと変わってしまうことはないですし、私の書いた英文を生かしながらよりよい表現に直してくれます。日本では英語論文の書き方についてしっかりとした指導を受けたことがなかったので、大変貴重な経験になっています。

 次回は留学中の米国での生活について紹介します。

サンディエゴ ラ・ホーヤの海岸

サンディエゴ ホテル・デル・コロナド

  


リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その6【「実践的」臨床研究入門】第31回

提供元:CareNet.com

本連載は、臨床研究のノウハウを身につけたいけれど、メンター不在の臨床現場で悩める医療者のための、「実践的」臨床研究入門講座です。臨床研究の実践や論文執筆に必要な臨床疫学や生物統計の基本について、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや、実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、解説していきます。

 

検索式で研究デザインを限定する

 これまで解説してきたように、検索式作成のポイントは、P(対象)とI(介入)またはE(曝露)の構成要素で構築する、ということでした。実際には、さらに「研究デザイン」を限定する検索式を加えることがよくあります(「研究デザイン」については連載第6回で簡単に説明しましたので、ご参照ください)。たとえば、システマティック・レビュー(SR:systematic review)では、「研究デザイン」としてランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)のみを対象とすることがよくあります。今回は、「研究デザイン」をRCTに限定する検索式について解説します。

 MEDLINE(PubMed)では、すべてのRCTが”Randomized Controlled Trial as Topic”というMeSH terms(連載第21回参照)が付与されるなどして、RCTとしてインデックス化されているわけではありません。そこで、コクラン・ハンドブックでは「研究デザイン」をRCTに限定する検索式(PubMedで検証済み)を、下記およびリンクのとおり2種類公開しています。

Sensitivity-maximizing version (2008 revision); PubMed format
・(randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR drug therapy[sh] OR randomly[tiab] OR trial[tiab] OR groups[tiab] NOT (animals [mh] NOT humans [mh]))

Sensitivity- and precision-maximizing version (2008 revision); PubMed format
・(randomized controlled trial[pt] OR controlled clinical trial[pt] OR randomized[tiab] OR placebo[tiab] OR clinical trials as topic[mesh:noexp] OR randomly[tiab] OR trial[ti] NOT (animals[mh] NOT humans [mh]))

 それぞれの検索式のPubMedへのダイレクトリンク(Sensitivity-maximizing versionSensitivity- and precision-maximizing version)も公開されています。本稿執筆時点(2023年4月)では、Sensitivity-maximizing versionおよびSensitivity- and precision-maximizing versionのヒット論文数は、それぞれ498万2,019件と140万7,761件でしたので、その名のとおり、感度はSensitivity-maximizing versionのほうが高いことがわかります。

 それでは、この「研究デザイン」をRCTに限定する検索式を、これまで改訂を重ねてきた、われわれのResearch Question(RQ)の関連研究レビューの検索式に加えてみましょう。検索結果は下記の表1および2のようになりました(本稿執筆2023年4月時点)。

表1

表2

 「研究デザイン」をRCTに限定するとヒット論文数は、Sensitivity-maximizing version(表1)で834件から291件、Sensitivity- and precision-maximizing version(表2)では166件に減っていることがわかります。

 ちなみに、PubMedでは、「Filterサイドバー」から、Clinical trialやRandomized Controlled Trialなど”article type”で「絞り込み検索」を行うこともできます。「Filterサイドバー」は、検索窓に何らかのキーワードを入力し、”search”をクリックした後に表示されるメイン画面左側に表示されます。しかし、この「絞り込み検索」が機能するには、対象となる論文にPublication type[pt]の「タグ」情報が付与されていることが前提となり(連載第23回参照)、付与されていない場合は漏れてしまいます。したがって、今回解説した、「研究デザイン」を限定する検索式を使用したほうが、より網羅的に検索することができるのです。


講師紹介

harasense

長谷川 毅 ( はせがわ たけし ) 氏
昭和大学統括研究推進センター研究推進部門 教授
昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門/衛生学公衆衛生学講座 兼担教授
福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター 特任教授

[略歴]
1996年昭和大学医学部卒業。
2007年京都大学大学院医学研究科臨床情報疫学分野(臨床研究者養成コース)修了。
都市型および地方型の地域中核病院で一般内科から腎臓内科専門診療、三次救急から亜急性期リハビリテーション診療まで臨床経験を積む。その臨床経験の中で生じた「臨床上の疑問」を科学的に可視化したいという思いが募り、京都の公衆衛生大学院で臨床疫学を学び、米国留学を経て現在に至る。


バックナンバー

48. いよいよ多変量解析 その1

47. 何はさておき記述統計 その8

46. 何はさておき記述統計 その7

45. 何はさておき記述統計 その6

44. 何はさておき記述統計 その5

43. 何はさておき記述統計 その4

42. 何はさておき記述統計 その3

41. 何はさておき記述統計 その2

40. 何はさておき記述統計 その1

39. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐E(要因)およびC(比較対照)設定の要点と実際 その2

38. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐E(要因)およびC(比較対照)設定の要点と実際 その1

37. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐O(アウトカム)設定の要点と実際 その2

36. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐O(アウトカム)設定の要点と実際 その1

35. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップーP(対象)設定の要点と実際 その2

34. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップーP(対象)設定の要点と実際 その1

33. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その8

32. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その7

31. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その6

30. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その5

29. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その4

28. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その3

27. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その2

26. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その1

25. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その5

24. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その4

23. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その3

22. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その2

21. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その1

20. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 学術誌、論文、著者の影響力の指標 その3

19. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 学術誌、論文、著者の影響力の指標 その2

18. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 学術誌、論文、著者の影響力の指標 その1

17. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その3

16.リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その2

15. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その1

14. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用 その3

13. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用 その2

12. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用その1

11. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー UpToDateの活用その2

10. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー UpToDateの活用その1

9. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 文献管理その3

8. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 文献管理その2

7. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 文献管理その1

6. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その3

5. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その2

4. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その1

3. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビューその2

2. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー その1

1. 臨床上の疑問とリサーチ・クエスチョン

▼ 一覧をもっと見る

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

 

海外研修留学便り 【米国留学記(久保田 祐太郎氏)】第1回

[ レポーター紹介 ]
久保田 祐太郎くぼた ゆうたろう

2003年   3月 昭和大学医学部医学科卒業
2003年   4月 昭和大学病院 内科学講座消化器内科学部門 員外助教
2009年   7月 国立がん研究センター東病院 消化管内科 研修医
2010年   7月 昭和大学病院 内科学講座消化器内科学部門 助教
2014年   1月 昭和大学病院 内科学講座腫瘍内科学部門 助教
2016年   4月 昭和大学病院 内科学講座腫瘍内科学部門 講師
2021年 10月   University of California San Diego, Department of Surgery, Visiting Scholar

 

 私は2021年10月に渡米し、現在University of California San Diego(UCSD)外科学部門のRobert M. Hoffman教授の研究所に所属し、研究生活を過ごしています。

 渡米時の年齢は42歳で、とくに基礎研究で目立った実績があるわけでもありませんでした。このような状況の臨床医の研究留学に意味があるのか疑問に感じる方も多いかもしれません。しかしその一方で、私と同じように基礎研究に興味はあるものの、臨床に没頭するあまり留学の機会を逃してきた同世代の先生もいるかと思います。渡米して1年半が経過しましたが、私はこの留学生活でさまざまな事を学び、また臨床医のときとは少し異なる視点で物事を考えられるようになったという実感があります。今回の留学体験記では、それらの詳細を4回に分けて紹介します。若い先生はもちろん、私のように40歳前後で留学を考えている(または躊躇している)先生にも参考になれば幸いです。

自己紹介

 まずは簡単に私の経歴を紹介します。私は乳腺外科医ではなく腫瘍内科医です。学生時代からがんの臨床や研究に興味があり、卒後まずは昭和大学病院で消化器内科医としてがん診療に携わり始めました。2000年代初頭で、ちょうど新たな抗がん剤が続々と認可され始めたころでした。毎年何種類もの新たな抗がん剤が登場し、その効果を実感する中でがん薬物療法に魅了され、医師10年目に昭和大学に腫瘍内科学教室が新設された際に転科しました。

留学までの経緯

 私は元々、基礎医学者であった父親の影響もあり、医学生のころから基礎研究に興味がありました。幼少期に父親の留学のため、フィラデルフィア、ロサンゼルスで過ごした経験もあったので、若手のころはある程度臨床医として経験を積んだ後、基礎研究にも従事し、海外に留学したいと考えていました。

 しかし、現実はなかなか思いどおりには行かず…。同世代のがん薬物療法に携わってきた先生には共感していただけると思いますが、高齢化社会の到来によるがん患者の急激な増加、化学療法の急速な進歩による腫瘍内科医としての需要の増加により、日々の臨床業務に追われ、気が付けば20年の月日が経過していました。この間に学位を取得し、その後も基礎研究をしていた時期はありましたが、忙しさのあまりなかなか継続できませんでした。このため留学は半ば諦めかけていましたが、2020年の秋に当教室の角田 卓也教授から留学の話をいただきました。冒頭に述べたとおり、40歳を超えており、基礎研究での実績があるわけでもなかったので、何のための留学か考えましたが、以下の理由で留学を決意しました。

 まず、腫瘍内科医としてさまざまな抗がん剤を使う中で、その有効性を実感しつつも、治療効果には限界があることや副作用の問題に直面し、一度根本的な部分からがんと向き合ってみたいと考えました。また、良くも悪くもがん薬物療法に慣れ、日々の仕事がマンネリ化してきていたため、この先のキャリアを考えると一旦環境を変えてみることも必要だと思いました。こうして留学を決めたのですが、最後に留学準備に関しても少し触れておきます。

留学が決まってからの準備

 留学が決まるとまず留学先の大学からJ1ビザ適格証明書(DS-2019)を発行してもらう必要があります。この手続きはそれほど難しくはありませんが、英語能力の証明が必要で、UCSDではIELTS、TOEFLなどで一定以上の成績を示すか、受け入れ先の教室の教授との面談で許可をもらうかのいずれかが必要でした。私は留学が決まってからオンライン英会話を始め、毎日英語学習に費やす時間を何とか確保して準備し、2021年4月の教授との面談で許可をもらうことができました。DS-2019を取得後は、アメリカ大使館からJ1ビザを発行してもらう必要がありますが、私の場合はコロナ禍で申請者が少なかったこともあり、すぐに大使館の面談の予約が取れ、その2週間後にはビザを取得することができました。

現地での生活の準備

 現地での生活の準備に関しては、同じ研究所に医局の前任者がいたため、事前に情報をもらい準備を進めました。具体的には、日本にいるうちから現地の不動産エージェント(日本人)と連絡を取り、事前に住居を決めてから渡米しました。多少費用はかかりますが、渡米後すぐにアパートメントに入居でき、電気、水道、ガス、インターネットなどのライフラインの手配もサポートしてもらえたので有用でした。

 また、細かい点ですが、アメリカの銀行口座やクレジットカード、携帯電話のSIMなど日本で手配できるものは可能な限り事前に手配してから渡米しました。英語力に自信のある方は不要かもしれませんが、日常生活でのネイティブの英語は、慣れるまでは早すぎて何を言っているのか全然わからないので、事前に日本で手配出来ることはしていったほうがよいと思います。

 次回は、留学先での研究内容について紹介します。

研究所でRobert M. Hoffman教授と

UCSD構内

サンディエゴの街並み

  


バックナンバー

▼ 一覧をもっと見る

リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その5【「実践的」臨床研究入門】第30回

提供元:CareNet.com

本連載は、臨床研究のノウハウを身につけたいけれど、メンター不在の臨床現場で悩める医療者のための、「実践的」臨床研究入門講座です。臨床研究の実践や論文執筆に必要な臨床疫学や生物統計の基本について、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや、実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、解説していきます。

 

検索式を改訂する

 今回は前回からの続きで、検索式の能力を検証しながら改訂していきます。前回解説したとおり、P(対象)の構成要素ブロックにRenal Insufficiency[mh:noexp] OR(太字部分)を加え、E(曝露)のブロックとANDでかけ合わせ、再度「Key論文」のブロックとNOTでつなぐと、表1の結果になります(本稿執筆2023年3月時点)。

表1

 Pのブロックには、MeSH termsを加えた結果、ヒットした論文数が大幅に増えています(Search #1)。前回検索時から約1ヵ月経っているので、Eのブロックで検索された論文数もわずかに増加し(Search #2)、改訂検索式でのヒット論文数も数10編増えています(Search #3)。この改訂検索式と「Key論文」のブロックをかけ合わせた結果、ヒットする論文数は7編から6編と1つ減っています。当初ヒットしなかったコクラン・システマティックレビュー(SR:systematic review)論文1)が、改訂検索式ではヒットするようになったのです(お時間ある方は確認してみてください)。

 それでは同じ要領で、ヒットしなかった「Key論文」すべてが捕捉できるように、検索式をさらに改訂してみましょう。残りのヒットしなかった「Key論文」のMeSH termsなどの情報をチェックします(連載第29回参照)。たとえば、現時点の検索式に含まれるMeSH termsやテキストワードは、ヒットしなかった「Key論文」の1つである非コクランSR2)のMeSH termsやタイトルおよびアブストラクトに含まれていません。

 非コクランSR2)の書誌情報(リンク)から、この論文に付与されているMeSH terms”Diabetic Nephropathies”をPの構成要素ブロックに追加します。

・Diabetic Nephropathies[mh]

 同様に、ヒットしなかった非コクランSR3)の書誌情報(リンク)を見ると、この論文にはMeSH termsが付与されていません。そこで、論文タイトルに含まれている”diabetic nephropathy”をテキストワードとしてPのブロックに追加してみます。

・”diabetic nephropathy”[tiab]
※[mh]や[tiab]という「タグ」については、連載第24回で解説していますので、ご参照ください。

 すると、さらに改訂した検索式とその結果は表2のようになります。

表2

 「Key論文」4-6)は再改訂検索式でヒットするようになり、残りはとうとう非コクランSR1編7)になりました。この論文7)のMeSH termsを見てみると(リンク)、再改訂検索式のEのブロックに含まれている”Diet, Protein-restricted”は付与されています。しかし、再改訂検索式Pのブロックに含まれるMeSH termsはいずれも付与されていません。したがって、この論文7)のMeSH termsの中から、新たに”Kidney Disease”を検索式Pのブロックに加えることにします。

 MeSH terms”Kidney Disease”の階層構造はリンクのとおりですが、その下位概念は含まれないように、[mh: noexp]の「タグ」を付けます(連載第24回参照)。

・Kidney Disease[mh: noexp]

 再々改訂検索式の検索結果は表3となり、すべての「Key論文」がヒットするようになりました。

表3


【 引用文献 】

講師紹介

harasense

長谷川 毅 ( はせがわ たけし ) 氏
昭和大学統括研究推進センター研究推進部門 教授
昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門/衛生学公衆衛生学講座 兼担教授
福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター 特任教授

[略歴]
1996年昭和大学医学部卒業。
2007年京都大学大学院医学研究科臨床情報疫学分野(臨床研究者養成コース)修了。
都市型および地方型の地域中核病院で一般内科から腎臓内科専門診療、三次救急から亜急性期リハビリテーション診療まで臨床経験を積む。その臨床経験の中で生じた「臨床上の疑問」を科学的に可視化したいという思いが募り、京都の公衆衛生大学院で臨床疫学を学び、米国留学を経て現在に至る。


バックナンバー

48. いよいよ多変量解析 その1

47. 何はさておき記述統計 その8

46. 何はさておき記述統計 その7

45. 何はさておき記述統計 その6

44. 何はさておき記述統計 その5

43. 何はさておき記述統計 その4

42. 何はさておき記述統計 その3

41. 何はさておき記述統計 その2

40. 何はさておき記述統計 その1

39. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐E(要因)およびC(比較対照)設定の要点と実際 その2

38. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐E(要因)およびC(比較対照)設定の要点と実際 その1

37. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐O(アウトカム)設定の要点と実際 その2

36. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐O(アウトカム)設定の要点と実際 その1

35. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップーP(対象)設定の要点と実際 その2

34. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップーP(対象)設定の要点と実際 その1

33. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その8

32. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その7

31. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その6

30. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その5

29. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その4

28. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その3

27. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その2

26. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その1

25. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その5

24. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その4

23. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その3

22. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その2

21. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その1

20. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 学術誌、論文、著者の影響力の指標 その3

19. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 学術誌、論文、著者の影響力の指標 その2

18. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 学術誌、論文、著者の影響力の指標 その1

17. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その3

16.リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その2

15. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その1

14. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用 その3

13. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用 その2

12. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用その1

11. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー UpToDateの活用その2

10. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー UpToDateの活用その1

9. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 文献管理その3

8. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 文献管理その2

7. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 文献管理その1

6. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その3

5. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その2

4. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その1

3. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビューその2

2. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー その1

1. 臨床上の疑問とリサーチ・クエスチョン

▼ 一覧をもっと見る

 

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

 

治療前の抗菌薬で免疫チェックポイント阻害薬の有効性が低下/JCO

提供元:CareNet.com

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療前の抗菌薬曝露は、腸内細菌叢の変化を通じて転帰に悪影響を及ぼす可能性があるが、大規模な評価は不足している。ICI開始前の抗菌薬が全生存期間(OS)に与える影響を評価したカナダ・プリンセスマーガレットがんセンターのLawson Eng氏らによるレトロスペクティブ・コホート研究の結果が、 Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年2月24日号に掲載された。

 著者らは、カナダのオンタリオ州で2012年6月~2018年10月にICIによる治療を開始した65歳以上のがん患者を、全身療法投与データを用いて特定した。このコホートをICI治療の1年前と60日前の両方における抗菌薬の処方請求データを得るためにほかの医療データベースとリンクし、多変量Coxモデルにより曝露とOSの関連性を評価した。患者のがん種は肺がんが最多(53%)、メラノーマ(34%)、腎臓がん、膀胱がんがそれに続いた。ICIはニボルマブとペムブロリズマブが一般的だった。

 主な結果は以下のとおり。

・ICIを投与されたがん患者2,737例のうち、ICI治療の1年前に59%、60日前に19%が抗菌薬を投与されていた。
・OSの中央値は306日であった。ICI投与前1年以内のあらゆる抗菌薬への曝露はOSの悪化と関連していた(調整ハザード比[aHR]:1.12、95%信頼区間[CI]:1.12~1.23、p=0.03)。
・抗菌薬のクラス解析では、ICI投与前1年以内(aHR:1.26、95%CI:1.13~1.40、p<0.001)または60日以内のフルオロキノロン系抗菌薬への曝露(aHR:1.20、95%CI:0.99~1.45、p=0.06)はOSの悪化と関連しており、1年間の総被曝週数(aHR:1.07/週、95%CI:1.03~1.11、p<0.001)および60日(aHR:1.12/週、95%CI:1.03~1.23、p=0.01)に基づいて用量効果がみられた。

 著者らは「ICI治療前の抗菌薬、とくにフルオロキノロン系抗菌薬への曝露が高齢のがん患者のOS悪化と関連していた。ICI治療前の抗菌薬への曝露の制限、もしくは腸内細菌叢を変化させ免疫原性を高めることを目的とした介入が、ICIを受ける患者の転帰を改善するのに役立つ可能性がある」としている。

(ケアネット 杉崎 真名)


【原著論文はこちら】
(ご覧いただくには [ CareNet.com ]の会員登録が必要です)

Eng L, et al. J Clin Oncol. 2023 Feb 24. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その4【「実践的」臨床研究入門】第29回

提供元:CareNet.com

本連載は、臨床研究のノウハウを身につけたいけれど、メンター不在の臨床現場で悩める医療者のための、「実践的」臨床研究入門講座です。臨床研究の実践や論文執筆に必要な臨床疫学や生物統計の基本について、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや、実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、解説していきます。

 

 前回、われわれのResearch Question(RQ)の関連研究レビューのために暫定的に作成した検索式の検索能力を検証しました。以前に挙げていた、われわれのRQの「Key論文」(連載第16回参照)が、この仮の検索式によって漏れなくヒットするかを確かめました。その結果は、「Key論文」10本中3本しかヒットしなかったという、少し残念なものでした。今回からは、検索式を修正する方法について解説します。

検索式でヒットしなかった論文のMeSH termsをチェックする

 前回と同様に、PubMed Advanced Search BuilderでP(対象)とE(曝露)の検索式ブロックをANDでかけ合わせた後に、「Key論文」のブロックとNOTでつなぎます。すると、暫定検索式でヒットしなかった「Key論文」が、下の表のように7本であることがわかります。ちなみに、本稿執筆時点(2023年2月)では前回検索時から約1ヵ月経っているので、それぞれの検索式ブロックでヒットする論文数が増えていることに気が付きます。

 それはさておき、ヒットしなかった「Key論文」のMesH terms(連載第21回参照)などの情報をPubMed Advanced Search BuilderのResultsのリンクからチェックしてみましょう。7本の論文が表示されているはずなので、まずこれら7本の論文を、PubMedページ画面右上方の”Display options”を用いて出版日順に並べ替えてみます。7本の中で最も古く出版されたコクラン・システマティックレビュー(SR:systematic review)論文1)のMeSH termsは、リンク(右側「PAGE NAVIGATION」下の「MeSH terms」をクリック)および下記のとおりです。

・Diabetic Nephropathies / diet therapy
・Diet, Protein-Restricted
・Dietary Proteins / administration & dosage
・Humans
・Randomized Controlled Trials as Topic
・Renal Insufficiency / etiology
・Renal Insufficiency / prevention & control
※MeSH termsの後のスラッシュ(/)以下はサブヘディングという機能で、テーマの絞り込みに利用されます(リンク参照)。

 暫定検索式のEの構成要素ブロックに含まれるMeSH terms “Diet, Protein-Restricted”は、このコクランSR論文1)にも付与されています。ですので、Eのブロックの検索結果には、この論文も含まれています(お時間ある方は確認してみてください)。しかし、暫定検索式のPの構成要素ブロックのMeSH termsやテキストワード(連載第26回参照)は、この論文のタイトルやアブストラクト、付与されているMeSH termsに含まれていません。その結果、この論文は検索から漏れてしまったようです。

 前述のとおり、暫定検索式でヒットしなかったコクランSR論文1)に付与されているMeSH termsには”Renal Insufficiency”があります。これは、暫定検索式のPの構成要素ブロックに組み込まれているMeSH terms ”Renal Insufficiency, Chronic”の上位概念(連載第25回参照)にあたり、リンクおよび下記の階層構造となっています。

・Renal Insufficiency
 ○Acute Kidney Injury
  ■Kidney Tubular Necrosis, Acute
 ○Cardio-Renal Syndrome
 ○Renal Insufficiency, Chronic

 このコクランSR論文1)を捕捉するため、Pの構成要素ブロックにMeSH terms ”Renal Insufficiency”を加えたい。一方、その下位概念は”Renal Insufficiency, Chronic”以外は含まないようにしたいので、[mh: noexp]の「タグ」を指定します(連載第24回参照)。したがって、太字部分を追加して、以下のようにPのブロックの検索式を改変します。

Renal Insufficiency[mh:noexp] OR Renal Insufficiency, Chronic[mh:noexp] OR “chronic kidney disease*”[tiab] OR “chronic renal disease*”[tiab] OR CKD[tiab] OR predialysis[tiab] OR pre-dialysis[tiab]


【 引用文献 】

講師紹介

harasense

長谷川 毅 ( はせがわ たけし ) 氏
昭和大学統括研究推進センター研究推進部門 教授
昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門/衛生学公衆衛生学講座 兼担教授
福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター 特任教授

[略歴]
1996年昭和大学医学部卒業。
2007年京都大学大学院医学研究科臨床情報疫学分野(臨床研究者養成コース)修了。
都市型および地方型の地域中核病院で一般内科から腎臓内科専門診療、三次救急から亜急性期リハビリテーション診療まで臨床経験を積む。その臨床経験の中で生じた「臨床上の疑問」を科学的に可視化したいという思いが募り、京都の公衆衛生大学院で臨床疫学を学び、米国留学を経て現在に至る。


バックナンバー

48. いよいよ多変量解析 その1

47. 何はさておき記述統計 その8

46. 何はさておき記述統計 その7

45. 何はさておき記述統計 その6

44. 何はさておき記述統計 その5

43. 何はさておき記述統計 その4

42. 何はさておき記述統計 その3

41. 何はさておき記述統計 その2

40. 何はさておき記述統計 その1

39. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐E(要因)およびC(比較対照)設定の要点と実際 その2

38. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐E(要因)およびC(比較対照)設定の要点と実際 その1

37. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐O(アウトカム)設定の要点と実際 その2

36. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐O(アウトカム)設定の要点と実際 その1

35. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップーP(対象)設定の要点と実際 その2

34. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップーP(対象)設定の要点と実際 その1

33. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その8

32. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その7

31. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その6

30. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その5

29. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その4

28. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その3

27. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その2

26. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その1

25. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その5

24. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その4

23. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その3

22. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その2

21. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 PubMed検索 その1

20. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 学術誌、論文、著者の影響力の指標 その3

19. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 学術誌、論文、著者の影響力の指標 その2

18. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 学術誌、論文、著者の影響力の指標 その1

17. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その3

16.リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その2

15. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー CONNECTED PAPERSの活用 その1

14. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用 その3

13. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用 その2

12. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用その1

11. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー UpToDateの活用その2

10. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー UpToDateの活用その1

9. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 文献管理その3

8. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 文献管理その2

7. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 文献管理その1

6. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その3

5. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その2

4. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その1

3. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビューその2

2. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー その1

1. 臨床上の疑問とリサーチ・クエスチョン

▼ 一覧をもっと見る

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

 

乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~外科療法(九冨 五郎 氏)

4年ぶりに全面改訂された「乳癌診療ガイドライン 2022年版」の改訂ポイントを中心に、乳がん外科療法の最新の治療戦略を、同ガイドライン外科療法小委員会委員長を務めた九冨 五郎先生(札幌医科大学附属病院 消化器・総合、乳腺・内分泌外科)に解説いただきます。CQが8つ→4つに変更されたその背景と改訂内容とは?

[演者紹介]

九冨 五郎 (くとみ ごろう)

札幌医科大学附属病院 消化器・総合、乳腺・内分泌外科 講師



バックナンバー

4. 遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン2024年版―多診療科、多職種および当事者でのコンセンサスー「山内 英子氏」

3. 乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~外科療法「九冨 五郎氏」

2. 乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~薬物療法【Chap2】「遠山 竜也 氏」

1. 乳癌診療ガイドライン2022年版 改訂のポイント~薬物療法【Chap1】「遠山 竜也 氏」

デジタルパソロジーの現在と今後の展望【後編】(飯塚 統氏 / 中村 清吾氏)

 病理のデジタル化は現在どこまで進んでいるのか? 病理標本のデジタル化・環境構築のサポートや病理画像解析のAIモデルの開発を行っているメドメイン株式会社代表取締役の飯塚 統氏を迎え、現在の状況と今後の展望についてお聞きします(前編)。また昭和大学医学部乳腺外科の中村 清吾氏との対談で、がん診療の現場での活用についてお話いただきました(後編)。

 

 

[演者紹介]

飯塚 統 (いいづか おさむ)

メドメイン株式会社代表取締役


中村 清吾(なかむら せいご)

昭和大学医学部乳腺外科
昭和大学病院ブレストセンター長

 


 

バックナンバー

4 デジタルパソロジーの現在と今後の展望「飯塚 統 氏 / 中村 清吾 氏」【後編】

3 デジタルパソロジーの現在と今後の展望「飯塚 統 氏 / 中村 清吾 氏」【前編】

2 臨床応用近づく 乳房超音波診断へのAIの導入~展望と課題「林田 哲 氏 / 中村 清吾 氏」

1 乳がん診療における人工知能の活用について「中村 清吾 氏 / 高野 敦司 氏」