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本連載は、臨床研究のノウハウを身につけたいけれど、メンター不在の臨床現場で悩める医療者のための、「実践的」臨床研究入門講座です。臨床研究の実践や論文執筆に必要な臨床疫学や生物統計の基本について、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや、実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、解説していきます。
前回、学術誌の影響力の指標としてインパクトファクター(Impact factor: IF)やCiteScore、JCR Quartileを紹介し、その解釈の注意点についても解説しました。結構、勘違いされている方も多いので、もう一度記しますが、
学術誌の影響力 ≠ 個別の論文や論文著者の影響力や評価
です。今回は、個別の論文の影響力の指標について解説します。
論文の影響力の指標
個別の論文自体の影響力の指標は、学術誌のそれと同じく被引用回数で示されます。前回と同様に、われわれのリサーチ・クエスチョン(RQ)の「Key論文」のひとつであるコクラン・フル・レビュー論文1)の最新版をPubMedで検索してみましょう(連載第18回参照)。すると、リンクのように被引用回数はAbstractの下をスクロールすると、“Cited by”という小見出しの横に示されています。連載第19回執筆時点(2022年4月)では、MEDLINE(PubMed)収載学術誌に掲載された38論文で引用されたことがわかります。このコクラン・フル・レビュー論文1)を引用した論文のリストとそのリンクも“Cited by”以下に列記されています。
被引用回数はその論文の出版年や研究分野、論文タイプなどによって影響されます。被引用回数は経年的に蓄積されるので、出版年が古いほど増える可能性があります。学術誌や研究者の多いメジャーな研究分野の論文も、より多く引用される傾向があります。論文タイプ別にみると、原著論文よりレビュー(総説論文)のほうが平均引用回数が多いことが、ScopusやWeb of Scienceなどの検索データベース(連載第17回参照)の解析結果から示されています。
そこで、Scopusでは被引用回数の絶対値とは別に、個別の論文の影響力の指標として、Field-Weighted Citation Index(FWCI)や被引用ベンチマークが提案されています。FWCIは、当該論文の被引用数と類似の論文の平均被引用数との比で表される指標で、出版年、研究分野、論文タイプを考慮し補正して計算されています。FWCIの値が1以上の論文は、類似論文の平均よりも多く引用されていることを示します。被引用ベンチマークも、やはり出版年、研究分野、論文タイプを加味した類似論文グループにおけるランキングを表しています。
実際に上記のコクラン・フル・レビュー論文1)を例にして、この論文のFWCIと被引用ベンチマークをScopusで調べてみましょう。Scopusは有料機関契約で使用できる検索データベースですが、大学病院などの研究教育施設では導入しているところも多いと思います。ScopusでもPubMedと同様に論文タイトルやDOIを用いて個別の論文を検索することができます(連載第18回参照)。
すると、当該論文1)のFWCIは3.37と表示され、類似論文と比較して平均より多く引用されていることがわかります。また、この論文の被引用ベンチマークは94パーセンタイルであり、上述した類似論文グループで上位6%に位置するということになります。
関連研究レビューの際に、当該論文の(総)被引用数の絶対値だけでなく、今回解説したFWCIや被引用ベンチマークも、その論文の影響力や信頼性、妥当性の評価指標として参考にされると良いかと思います。
【 引用文献 】
講師紹介

長谷川 毅 ( はせがわ たけし ) 氏
昭和大学統括研究推進センター研究推進部門 教授
昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門/衛生学公衆衛生学講座 兼担教授
福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター 特任教授
[略歴]
1996年昭和大学医学部卒業。
2007年京都大学大学院医学研究科臨床情報疫学分野(臨床研究者養成コース)修了。
都市型および地方型の地域中核病院で一般内科から腎臓内科専門診療、三次救急から亜急性期リハビリテーション診療まで臨床経験を積む。その臨床経験の中で生じた「臨床上の疑問」を科学的に可視化したいという思いが募り、京都の公衆衛生大学院で臨床疫学を学び、米国留学を経て現在に至る。
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