がん診断後の禁煙、6ヵ月内のスタートで予後改善

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 喫煙・禁煙ががんの罹患や予後に関連するとの報告は多いが、がん診断後の禁煙治療の開始時期は予後にどの程度関連するのかについて検討した、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPaul M. Cinciripini氏らによる研究がJAMA Oncology誌オンライン版2024年10月31日号に掲載された。

 研究者らは、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターのたばこ研究・治療プログラムの参加者を対象とした前向きコホート研究を行った。参加者は、がん診断後に6~8回の個別カウンセリングと10~12週間の薬物療法からなる禁煙治療を受けた。禁煙治療開始から3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月後に自己申告により禁煙の継続を報告した。がん診断から禁煙治療登録までの期間(6ヵ月以内、6ヵ月~5年、5年以上)に基づいて3つのサブグループに分けて解析を行った。治療は2006年1月1日~2022年3月3日、データ分析は2023年9月~24年5月に実施された。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象は、当時喫煙しており、がん診断後に禁煙治療を受けた患者4,526例(女性2,254例[49.8%]、年齢中央値55[SD 47~62]歳)で、がん種で多かったのは乳がん(17.5%)、肺がん(17.3%)、頭頸部がん(13.0%)、血液がん(8.3%)だった。追跡期間中央値は7.9(SD 3.3~11.8)年だった。
・禁煙継続率は、3ヵ月時点で42%(1,900/4,526例)、6ヵ月時点で40%(1,811/4,526例)、9ヵ月時点で36%(1,635/4,526例)であった。
・3ヵ月時点の禁煙者は喫煙者(=禁煙に失敗)と比較して、5年および10年時点での生存率が改善した(65%対61%、77%対73%)。
・全コホートの生存率の最低百分位数は56%であったため、生存期間中央値は推定できなかった。75パーセンタイルでの生存期間を推定すると、死亡までの期間は、3ヵ月時点の喫煙者では4.4年だったのに対し、禁煙者では5.7年だった。
・3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月時点のいずれでも、禁煙者は15年間の生存率が上昇した(3ヵ月時点の調整ハザード比[aHR]:0.75[95%信頼区間[CI]:0.67~0.83]、6ヵ月時点のaHR:0.79[95%CI:0.71~0.88]、9ヵ月時点のaHR:0.85[95%CI:0.76~0.95])。
・診断から禁煙治療開始までの期間と生存転帰との関連では、診断から6ヵ月以内に開始した患者では、3ヵ月後の禁煙の有無が5年および10年時点での生存率の改善と関連していた(それぞれ61%対71%、52%対58%)。この有益性は15年まで持続した。同様の関連性は診断から6ヵ月~5年内に開始した患者でも観察されたがその有益性は減少し、5年以上経過して開始した患者では有意な関連性は認められなかった。

 著者らは、「治療開始から3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月時点の禁煙継続が、生存率の改善と関連していた。がん診断後早期に禁煙治療を開始することも重要で、6ヵ月以内に治療を開始した患者では生存率が最も良好であった」とし、がん診断後早期にエビデンスに基づく禁煙治療を開始し、継続することの重要性を強調した。

(ケアネット 杉崎 真名)


【原著論文はこちら】

Cinciripini PM, et al. JAMA Oncol. 2024 Oct 31. [Epub ahead of print]

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HER2+乳がん術前補助療法のde-escalation、トラスツズマブ+ペルツズマブ+nab-パクリタキセルが有望(HELEN-006)/Lancet Oncol

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 HER2+早期乳がんに対する術前補助療法において、トラスツズマブ+ペルツズマブにドセタキセル+カルボプラチンを併用した標準レジメンより、トラスツズマブ+ペルツズマブにnab-パクリタキセルを併用したde-escalation治療のほうが有用な可能性が示唆された。中国・The Affiliated Cancer Hospital of Zhengzhou University and Henan Cancer HospitalのXiu-Chun Chen氏らが、多施設共同無作為化第III相HELEN-006試験において主要評価項目である病理学的完全奏効(pCR)の最終解析結果を報告した。The Lancet Oncology誌オンライン版2024年11月26日号に掲載。

・対象: 18~70歳、StageII/IIIの未治療浸潤性HER2+乳がん患者
・試験群:nab-パクリタキセル(125mg/m2、1、8、15日目)+トラスツズマブ(負荷量8mg/kg、維持量6mg/kg)+ペルツズマブ(負荷量840mg、維持量420mg)を3週ごと6サイクル投与
・対照群:ドセタキセル(75mg/m2、1日目)+カルボプラチン(AUC6、1日目)+トラスツズマブ(負荷量8mg/kg、維持量6mg/kg)+ペルツズマブ(負荷量840mg、維持量420mg)を3週ごと6サイクル投与
・主要評価項目:pCR(ypT0/is ypN0)(modified ITT)

 主な結果は以下のとおり。

・2020年9月20日~2023年3月1日に689例を無作為に割り付けた(nab-パクリタキセル群343例、ドセタキセル+カルボプラチン群346例)。689例全例がアジア人女性で、 669例(nab-パクリタキセル群332例、ドセタキセル+カルボプラチン群337例)が1回以上の試験治療を受けた。年齢中央値は50歳(四分位範囲:43~55)、追跡期間中央値は26ヵ月(同:19~32)だった。
・pCR例は、nab-パクリタキセル群が220例(66.3%、95%信頼区間[CI]:61.2~71.4)、ドセタキセル+カルボプラチン群が194例(57.6%、95%CI:52.3~62.9)だった(複合オッズ比:1.54、95%CI:1.10~2.14)。
・Grade3/4の有害事象は、nab-パクリタキセル群で100例(30%)、ドセタキセル+カルボプラチン群で128例(38%)に認められ、多かったGrade3/4の有害事象は悪心(nab-パクリタキセル群、ドセタキセル+カルボプラチン群の順に22例、76例)、下痢(25例、55例)、神経障害(43例、8例)であった。
・重篤な薬剤関連有害事象は、nab-パクリタキセル群で3例、ドセタキセル+カルボプラチン群で5例に報告され、両群とも治療関連死亡は報告されなかった。

 著者らは、「この結果は、HER2+早期乳がんに対する術前補助療法において、トラスツズマブおよびペルツズマブとnab-パクリタキセルの併用が標準レジメンより利点がある可能性を示唆するものであり、この新しい併用療法がこの患者集団における術前補助療法の新たな標準療法を確立する可能性を示唆する」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Chen XC, et al. Lancet Oncol. 2024 Nov 26. [Epub ahead of print]

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アベマシクリブによるILD、実臨床でのリスク因子は?/昭和大

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 日本の進行乳がん患者を対象とした、アベマシクリブ関連間質性肺疾患(ILD)の実臨床におけるリスク因子などを調査した研究により、アベマシクリブ関連ILDの発現率は5.0%、死亡率は0.7%であり、リスク因子としてECOG PS≧2と間質性肺炎の既往歴が特定されたことを、昭和大学の中山 紗由香氏らが明らかにした。Breast Cancer誌オンライン版2024年11月18日掲載の報告。

 2018年11月30日~2019年12月31日に国内77施設でアベマシクリブによる治療を開始した進行乳がん患者1,189例のカルテのデータを用いて、ネステッドケースコントロール研究を実施した。多変量Cox回帰分析でアベマシクリブ関連ILDの独立したリスク因子を特定した。なお、本研究の中間報告として、アベマシクリブ関連ILDの発現率と好発時期が2021年の第29回日本乳癌学会学術総会で報告されている。

 主な結果は以下のとおり。

●中央評価委員会の判定によるアベマシクリブ関連ILDの発現率は5.0%(59例)、死亡率は0.7%(8例)であった。
●アベマシクリブ関連ILDの発現時期はさまざまであったが、アベマシクリブ治療開始後180日以内が最も多かった(64.4%)。
●アベマシクリブ関連ILDは、ECOG PS≧2の患者、間質性肺炎の既往がある患者で有意に多かった。
 ・ECOG PS≧2のハザード比(HR):5.03、95%信頼区間(CI):2.26~11.11
 ・間質性肺炎既往のHR:6.49、95%CI:3.09~13.70

 これらの結果より、研究グループは「本研究は、日本で初めて実臨床におけるアベマシクリブ関連ILDの発現率とリスク因子を明らかにした。アベマシクリブ関連ILDは重篤であるが、ECOG PS不良および/または間質性肺炎の既往歴のある患者を慎重に選択して綿密にモニタリングすることで、ILDリスクを最小限に抑えることができる可能性がある」とまとめた。

(ケアネット 森)


【原著論文はこちら】

Nakayama S, et al. Breast Cancer. 2024 Nov 18. [Epub ahead of print]

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進行乳がん1次内分泌療法、フルベストラント+CDK4/6iの有用性は?/日本癌治療学会

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 HR+/HER2-の進行・再発乳がんに対する1次内分泌療法としてのフルベストラント+CDK4/6阻害薬は、アロマターゼ阻害薬+CDK4/6阻害薬と同等の有効性であり、リンパ球数(ALC)は独立した予後予測因子ではなかったことを、市立四日市病院の豊田 千裕氏が第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。

 ガイドラインでは、HR+/HER2-の進行・再発乳がんに対する1次内分泌療法は、アロマターゼ阻害薬+CDK4/6阻害薬が推奨されている。内分泌療法歴のない進行・再発乳がんにおいてアロマターゼ阻害薬とフルベストラントを比較したFALCON試験の結果から、1次内分泌療法としてのフルベストラント+CDK4/6阻害薬の有効性が期待されている。また、CDK4/6阻害薬で治療したHR+/HER2-の転移・再発乳がんでは、ALCが独立した予後予測因子であることも報告されている。そこで研究グループは、進行・再発乳がんの1次内分泌療法としてフルベストラント+CDK4/6阻害薬を投与した場合の無増悪生存期間(PFS)と安全性を評価することを目的として前向き研究を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・2021年4月~2024年4月に、HR+/HER2-の進行・再発乳がん患者23例が登録された。年齢中央値は64.0(範囲:38~83)歳、de novo StageIVが13例、再発が10例、ベースライン時のALC中央値は1,667(範囲:541~5,176)μLであった。CDK4/6阻害薬は、パルボシクリブが16例、アベマシクリブが7例に用いられた。観察期間中央値は20(範囲:7~36)ヵ月であった。
・全奏効率は91.3%(PR:21例[91.3%]、SD:2例[8.7%])、病勢コントロール率および臨床的有用率は100%であった。
・PFSは未到達であるが、データカットオフ時点の中央値は19(範囲:7~36)ヵ月であった。
・ベースライン時のALCが1,500μL以上の群でも1,500μL未満の群でもPFSに有意差は認められなかった(p=0.721)。
・ALCの変化率が高い群(36%以上)と低い群(36%未満)でもPFSは同等であった(p=0.878)。
・23例中3例に薬剤性間質性肺疾患が発現した。

 これらの結果より、豊田氏は「フルベストラント+CDK4/6阻害薬によるHR+/HER2-の進行・再発乳がんの1次内分泌療法の有効性は、アロマターゼ阻害薬+CDK4/6阻害薬と同等の結果であることが示された。しかし、ベースライン時のALCおよびALC変化率は、フルベストラント+CDK4/6阻害薬による治療の予後予測因子とはならなかった」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


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BRCA1/2病的バリアント保持者における乳がん後の二次原発がんリスク/JCO

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 乳がんと診断された男女2万5千例以上を対象とした研究で、BRCA1/2病的バリアント保持者における二次原発がんリスクの高さが明らかになった。英国・ケンブリッジ大学のIsaac Allen氏らによるJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年10月29日号掲載の報告より。

 本研究では、1995~2019年に英国国民保健サービス(NHS)臨床遺伝学センターで乳がんと診断され、生殖細胞系列のBRCA遺伝子検査を受けた女性2万5,811例と男性480例について、二次原発がん診断、死亡、国外移住、対側乳房/卵巣手術の1年後または2020年12月31日まで追跡調査が行われた。

 英国の一般人口における罹患率を使用した標準化罹患比(SIR)、Cox回帰法によりBRCA1/2病的バリアント保持者と非保持者を比較したハザード比(HR)、およびKaplan-Meier法による10年累積リスクが推定された。

 主な結果は以下のとおり。

・女性のBRCA1病的バリアント保持者は1,840例、BRCA2病的バリアント保持者は1,750例であった。
・一般人口と比較すると、BRCA1病的バリアント保持者は対側乳房(SIR:15.6、95%信頼区間[CI]:11.8~20.2)、卵巣(44.0、31.4~59.9)、非乳房/卵巣の複合(2.18、1.59~2.92)、大腸(4.80、2.62~8.05)、および子宮内膜(2.92、1.07~6.35)における二次原発がんリスクが高かった。
BRCA2病的バリアント保持者は対側乳房(SIR:7.70、95%CI:5.45〜10.6)、卵巣(16.8、10.3〜26.0)、膵臓(5.42、2.09〜12.5)、および非乳房/卵巣の複合(1.68、1.24〜2.23)における二次原発がんリスクが高かった。
・検査でBRCA1/2病的バリアントが認められなかった女性と比較すると、BRCA1病的バリアント保持者は対側乳房(HR:3.60、95%CI:2.65〜4.90)、卵巣(33.0、19.1〜57.1)、非乳房/卵巣の複合(1.45、1.05〜2.01)、および大腸(2.93、1.53〜5.62)における二次原発がんリスクが高かった。
BRCA2病的バリアント保持者は、対側乳房(HR:2.40、95%CI:1.70〜3.40)、卵巣(12.0、6.70〜21.5)、および膵臓(3.56、1.34〜9.48)における二次原発がんリスクが高かった。
・10年累積リスクは、対側乳房、卵巣、および非乳房/卵巣の複合について、BRCA1病的バリアント保持者では16%/6.3%/7.8%であり、BRCA2病的バリアント保持者では12%/3.0%/6.2%、非保持者では3.6%/0.4%/4.9%であった。
・男性では、BRCA2病的バリアント保持者は非保持者と比較して、対側乳房(HR:13.1、95%CI:1.19〜146)、および前立腺(5.61、1.96〜16.0)における二次原発がんリスクが高かった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Allen I, et al. J Clin Oncol. 2024 Oct 29. [Epub ahead of print]

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TN乳がんへのサシツズマブ ゴビテカン、販売開始/ギリアド

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 ギリアド・サイエンシズは2024年11月20日、化学療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性/HER2陰性(トリプルネガティブ)乳がんの治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるサシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)の日本における販売開始を発表した。

 サシツズマブ ゴビテカンは、2024年9月24日に国内製造販売承認を取得。この承認は、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象に、サシツズマブ ゴビテカンと医師が選択した治療の有効性と安全性を比較した海外での第III相臨床試験(ASCENT)と、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンの有効性と安全性を評価した国内の第II相臨床試験(ASCENT-J02)の結果に基づくものである。

<製品概要>
商品名:トロデルビ点滴静注用200mg
一般名:サシツズマブ ゴビテカン
剤形:注射剤(バイアル)
効能又は効果:化学療法歴のあるホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌
用法及び用量:通常、成人には、サシツズマブ ゴビテカン(遺伝子組換え)として1回10mg/kg(体重)を、21日間を1サイクルとし、各サイクルの1日目及び8日目に点滴静注する。投与時間は3時間とし、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降は1~2時間に短縮できる。なお、患者の状態により適宜減量する。
製造販売承認日:2024年9月24日
製造販売元:ギリアド・サイエンシズ株式会社

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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アジア人女性のBMIと乳がんの関連、欧米人との違い~32万人のデータ解析

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 BMIと乳がんリスクの関連は、アジア人女性と欧米人女性で異なることが示唆されている。アジア人においては、閉経後女性でBMIと乳がんの正の相関が線形か非線形か、また閉経前女性でBMIと乳がんの相関が正か負かについて、以前の研究で矛盾した結果が報告されている。今回、岐阜大学の和田 恵子氏らは、複数のコホート研究から集められた約32万人のデータを使用して、閉経前および閉経後の日本人を含む東アジア人女性におけるBMIと乳がん発症率との関連を調べた。その結果、閉経後女性ではBMIと乳がんリスクに正の相関がみられたが、BMIが高くなると傾きが緩やかになった。また、閉経前女性で逆相関はみられなかった。Breast Cancer Research誌2024年11月14日号に掲載。

 本研究は、日本、韓国、中国の13のコホート研究から得られた31万9,189人の女性のデータを用いたプール解析。 参加者の身長および体重はベースライン時に測定または自己申告によって得られた。 BMIにより7つのカテゴリー(18.5未満、18.5以上21未満、21以上23未満、23以上25未満、25以上27.5未満、27.5以上30未満、30以上)に分け、Cox比例ハザードモデルを用いて、21以上23未満を基準群とした乳がんのハザード比を推定した。またBMIが5上昇した場合のハザード比も算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・平均16.6年の追跡期間中に、4,819人が乳がんを発症した。
・閉経後女性では、欧米人と同様、BMI増加に伴う乳がんリスクの一定の増加がみられたが、26以上28未満からリスクの増加の傾きが緩やかになった。
・閉経前女性では、欧米人でみられた逆相関はみられず、50歳以上ではBMIの増加とともに乳がん発症リスクがわずかに増加し、高齢の出生コホートで顕著であった。50歳未満ではBMIと乳がん発症リスクに有意な関連は認められなかったが、出生コホートが若くなるにつれてリスク推定値が正から負に変化した。

 著者らは「東アジアでは、肥満と乳がんの増加に伴い、閉経前女性の乳がん発症におけるBMIの役割が変化している可能性がある」と考察している。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Wada K, et al. Breast Cancer Res. 2024;26:158.

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乳がんと肺がんの関連~双方向のメンデルランダム化解析

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 乳がんサバイバーの生存期間の延長に伴い、2次がん発症リスクが上昇している。2次がんの部位は、米国・Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベース(2010~15年)によると、乳房(30.0%)に次いで肺・気管支(13.4%)が多かった。今回、乳がんと肺がんの双方向の因果関係について、中国・The First Affiliated Hospital of Xi’an Jiaotong UniversityのXiaoqian Li氏らがメンデルランダム化(MR)解析で調査したところ、乳がんサバイバーにおいて2次肺腺がんリスクが上昇することが示唆された。Scientific Reports誌2024年11月6日号に掲載。

 本研究では、Breast Cancer Association Consortium(BCAC)における22万8,951例のゲノムワイド関連研究データと、Transdisciplinary Research in Cancer of the Lung(TRICL)における11万2,781例のゲノムワイド関連研究の要約統計を用いて、双方向2サンプルMR解析を実施した。MR解析は逆分散加重(IVW)法のほか、補完的に加重中央値法、MR-RAPS法、MR-Egger 法を用いた。乳がんはエストロゲン受容体発現の有無別、肺がんは肺腺がん、扁平上皮肺がん、小細胞肺がんに分け、関連を調べた。

 主な結果は以下のとおり。

・乳がん全体における肺腺がんとの因果関係がIVW法(オッズ比[OR]:1.060、95%信頼区間[CI]:1.008~1.116、p=0.024)およびMR-RAPS法(OR:1.059、95%CI:1.005~1.116、p=0.033)で認められ、乳がん患者において肺腺がんリスクが上昇することが示唆された。
・肺腺がんの乳がんに対する有意な因果関係は認められなかった。

 著者らは「乳がんサバイバーの死亡率を下げるために、2次肺がんのスクリーニングの強化、早期介入と治療が必要」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Li X, et al. Sci Rep. 2024;14:26942.

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乳がん患者の妊娠・出産のためのタモキシフェン中断についてステートメント公表/日本がん・生殖医療学会

 日本がん・生殖医療学会では10月30日、「乳癌患者の妊娠・出産のためのタモキシフェン内服中断、そして最終投与からの望ましい避妊期間についてのステートメント」を公表した。2023年に初回報告されたPOSITIVE試験の結果に基づき、「一定期間タモキシフェンを内服したのちに、最長2年として内服を中断して妊娠・出産を試みる場合、短期的な予後への影響はないものと考えられる」とし、最終投与からの望ましい避妊期間について以下のように推奨をまとめている。

 「本学会としては、タモキシフェンの内服を中断し自然妊娠を試みたり採卵したりする場合、最終投与からの望ましい避妊期間を、添付文書に従い9ヵ月とすることを推奨する。しかし、タモキシフェン内服前に妊孕性温存療法として採卵され、体外で凍結保存された胚や未受精卵を用いて妊娠を試みる場合は、すでに遺伝毒性は回避されているため、最終投与からの望ましい避妊期間は発生毒性のみを考慮し、3ヵ月とすることは許容されると考える。また妊娠・出産後や中断が2年を超えた場合には、速やかにタモキシフェンの内服を再開することを強く推奨する」

 ステートメントでは、POSITIVE試験の主な結果および2023年3月に厚生労働省から発出された「医薬品投与に関する避妊の必要性等に関するガイダンス」、タモキシフェンの添付文書改訂についての概要も示されている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

日本がん・生殖医療学会「乳癌患者の妊娠・出産のためのタモキシフェン内服中断、そして最終投与からの望ましい避妊期間についてのステートメント」

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早期TN乳がん、多遺伝子シグネチャー活用で予後改善/BMJ

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 切除可能なトリプルネガティブ(TN)乳がんの予後は満足のいくものではなく、術後補助化学療法の最適化が必要とされている。中国・復旦大学上海がんセンターのMin He氏らは、開発した多遺伝子シグネチャーを用いてリスク層別化を行い、それに基づく高リスク患者に対してアントラサイクリン/タキサンベースの治療にゲムシタビン+シスプラチンを組み合わせた強化レジメンが、無病生存期間(DFS)を改善し毒性は管理可能であったことを示した。BMJ誌2024年10月23日号掲載の報告。

統合mRNA-lncRNAシグネチャーを用いてリスク層別化、DFSを評価

 研究グループは2016年1月3日~2023年7月17日に、中国の7つのがんセンターで、切除可能なTN乳がん患者に対して多遺伝子シグネチャーを用いることで、最適な個別化補助療法の提供が実現可能かを評価する多施設共同第III相無作為化試験を行った。

 被験者は、早期TN乳がんで根治手術を受けた18~70歳の女性。研究グループが開発した、統合されたmRNA-lncRNAシグネチャー(3つのmRNA[FCGR1ARSAD2CHRDL1]、2つのlncRNA[HIF1A-AS2AK124454])を用いてリスク層別化を行い、高リスク患者を強化補助化学療法(ドセタキセル+エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル後、ゲムシタビン+シスプラチンを4サイクル)を受ける群(A群)、または標準療法(エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル後、ドセタキセルを4サイクル)を受ける群(B群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。低リスクの患者はB群と同様の補助化学療法を受けた(C群)。

 主要評価項目は、A群vs.B群についてITT解析で評価したDFS。副次評価項目は、B群vs.C群のDFS、無再発生存期間(RFS)、全生存期間(OS)および安全性などであった。

強化補助化学療法vs.標準療法、3年DFS率のHRは0.51

 504例が登録され(A群166例、B群170例、C群168例)、498例が試験の治療を受けた。追跡期間中央値45.1ヵ月の時点で、3年DFS率はA群90.9%、B群80.6%であった(ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.28~0.95、p=0.03)。

 3年RFS率は、A群92.6%、B群83.2%(HR:0.50、95%CI:0.25~0.98、p=0.04)。3年OS率は、A群98.2%、B群91.3%(0.58、0.22~1.54、p=0.27)であった。

 同様の化学補助療法を受けたB群vs.C群の評価では、C群のほうがDFS率が有意に高率であり(3年DFS率:C群90.1% vs.B群80.6%、HR:0.57[95%CI:0.33~0.98]、p=0.04)、RFS率(3年RFS率:94.5% vs.83.2%、0.42[0.22~0.81]、p=0.007)、OS率(3年OS率:100% vs.91.3%、0.14[0.03~0.61]、p=0.002)もC群が有意に高率であった。

 Grade3/4の治療関連有害事象の発現率は、A群で64%(105/163例)、B群で51%(86/169例)、C群で54%(90/166例)であった。治療に関連した死亡は報告されなかった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

He M, et al. BMJ. 2024;387:e079603.

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