提供元:CareNet.com
喫煙・禁煙ががんの罹患や予後に関連するとの報告は多いが、がん診断後の禁煙治療の開始時期は予後にどの程度関連するのかについて検討した、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPaul M. Cinciripini氏らによる研究がJAMA Oncology誌オンライン版2024年10月31日号に掲載された。
研究者らは、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターのたばこ研究・治療プログラムの参加者を対象とした前向きコホート研究を行った。参加者は、がん診断後に6~8回の個別カウンセリングと10~12週間の薬物療法からなる禁煙治療を受けた。禁煙治療開始から3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月後に自己申告により禁煙の継続を報告した。がん診断から禁煙治療登録までの期間(6ヵ月以内、6ヵ月~5年、5年以上)に基づいて3つのサブグループに分けて解析を行った。治療は2006年1月1日~2022年3月3日、データ分析は2023年9月~24年5月に実施された。
主な結果は以下のとおり。
・解析対象は、当時喫煙しており、がん診断後に禁煙治療を受けた患者4,526例(女性2,254例[49.8%]、年齢中央値55[SD 47~62]歳)で、がん種で多かったのは乳がん(17.5%)、肺がん(17.3%)、頭頸部がん(13.0%)、血液がん(8.3%)だった。追跡期間中央値は7.9(SD 3.3~11.8)年だった。
・禁煙継続率は、3ヵ月時点で42%(1,900/4,526例)、6ヵ月時点で40%(1,811/4,526例)、9ヵ月時点で36%(1,635/4,526例)であった。
・3ヵ月時点の禁煙者は喫煙者(=禁煙に失敗)と比較して、5年および10年時点での生存率が改善した(65%対61%、77%対73%)。
・全コホートの生存率の最低百分位数は56%であったため、生存期間中央値は推定できなかった。75パーセンタイルでの生存期間を推定すると、死亡までの期間は、3ヵ月時点の喫煙者では4.4年だったのに対し、禁煙者では5.7年だった。
・3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月時点のいずれでも、禁煙者は15年間の生存率が上昇した(3ヵ月時点の調整ハザード比[aHR]:0.75[95%信頼区間[CI]:0.67~0.83]、6ヵ月時点のaHR:0.79[95%CI:0.71~0.88]、9ヵ月時点のaHR:0.85[95%CI:0.76~0.95])。
・診断から禁煙治療開始までの期間と生存転帰との関連では、診断から6ヵ月以内に開始した患者では、3ヵ月後の禁煙の有無が5年および10年時点での生存率の改善と関連していた(それぞれ61%対71%、52%対58%)。この有益性は15年まで持続した。同様の関連性は診断から6ヵ月~5年内に開始した患者でも観察されたがその有益性は減少し、5年以上経過して開始した患者では有意な関連性は認められなかった。
著者らは、「治療開始から3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月時点の禁煙継続が、生存率の改善と関連していた。がん診断後早期に禁煙治療を開始することも重要で、6ヵ月以内に治療を開始した患者では生存率が最も良好であった」とし、がん診断後早期にエビデンスに基づく禁煙治療を開始し、継続することの重要性を強調した。
(ケアネット 杉崎 真名)
【原著論文はこちら】
Cinciripini PM, et al. JAMA Oncol. 2024 Oct 31. [Epub ahead of print]