化学療法誘発性末梢神経障害の克服に向けた包括的マネジメントの最前線/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 2025年3月6~8日に第22回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催され、8日の緩和ケアに関するシンポジウムでは、「化学療法誘発性末梢神経障害のマネジメント」をテーマに5つの講演が行われた。化学療法誘発性末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheral neuropathy:CIPN)は、抗がん剤投与中から投与終了後、長期にわたって患者のQOLに影響を及ぼすものの、いまだ有効な治療の確立に至っていない。そこで、司会の柳原 一広氏(関西電力病院 腫瘍内科)と乾 友浩氏(徳島大学病院 がん診療連携センター)の進行の下、患者のサバイバーシップ支援につなげることを目的としたトピックスが紹介された。

CIPN予防戦略の現状と今後の研究開発への期待

 まず、CIPNの予防に関する最新エビデンスが、華井 明子氏(千葉大学大学院 情報学研究院)より紹介された。『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン2023年版』には、CIPNを誘起する化学療法薬の使用に際し、予防として推奨できるものはないと記載されている。また、抗がん剤の種類によっては投与しないことを推奨する薬剤もあり、状況に応じて運動や冷却の実施が推奨されるものの、強く推奨できる治療法はない。そのため、多くの患者が苦しんでいる現状が指摘された。

 こうした中、手足を冷却または圧迫して局所の循環血流量を低下させることで、抗がん剤をがん細胞に到達させつつ、手足には到達させない戦略がCIPN予防に有効とのエビデンスが散見されており、冷却がやや優位との成績が最近示された。「ただし、冷却の効果は抗がん剤投与中に最大限発揮されるので、投与後数時間経過して出現する症状には効果がない」と、同氏は説明した。

 なお、がん治療中の運動は、心肺機能や筋力、患者報告アウトカムなどを改善するとのエビデンスが確立しているため、有酸素運動や筋力トレーニングが推奨されている。一方、CIPN予防における運動の実施は、本ガイドラインでは推奨の強さ・エビデンスの確実性ともに弱い。同氏は、「それでも治療前のプレハビリテーションにより体力・予備力を高めておくことは有効」とした。また、予防ではなく、CIPN発現例に対する治療であるが、バランス運動、筋力トレーニングおよびストレッチは、いずれも長期的には実施のメリットが大きいとの研究成果が紹介された。

 「CIPNの頻度は抗がん剤の種類はもちろん、評価の時期・指標によっても異なり、患者の生活状況や主観が大きく影響する。そのため、評価方法の標準化がCIPN予防/治療戦略の開発につながるだろう。また、運動プログラムのエビデンスは増え続けていることから、ガイドラインの次期改訂では推奨が変わる可能性もある」と、同氏は期待を示した。

CIPN治療戦略と実臨床への橋渡しに向けた取り組み

 次に、CIPNの治療に関する動向が吉田 陽一郎氏(福岡大学病院 医療情報・データサイエンスセンター 消化器外科)より解説された。『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン 2023年版』で薬物療法として推奨されている薬剤は1剤のみであり、予防ではなく治療のみでの使用が可能となっている。同氏はその根拠となった論文と共に、最新のシステマティックレビュー論文に触れ、「エビデンスが不十分で、本ガイドラインにおける推奨の強さは弱い。CIPNの予防や治療の領域では、プラセボが心理的な影響だけでなく、生理的な変化をもたらすことが知られているため、プラセボ効果を含めたデザインの下で臨床試験を実施することが望まれる」と述べた。

 こうした中、わが国ではCIPN症状が出現した際に投与する薬剤のアンケート調査が、『がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き 2017年版』の公表前後(2015年および2019年)に実施され、使用薬剤の変化が報告されている。近く再調査が行われる予定で、より現実的なマネジメントの理解につながるとのことである。さらに同氏は、わが国の臨床試験の状況や課題点などを説明するとともに、日本がんサポーティブケア学会 神経障害部会が取り組んでいるCIPNに関する教育動画について、「詳細は日本がんサポーティブケア学会のホームページに近日掲載予定で、2025年5月に開催される同学会の学術集会でも告知予定」と紹介した。

がんサバイバーのCIPNに対する鍼灸治療の可能性

 わが国では年間100万例ががんに罹患し、治療後も慢性疼痛、とくにCIPNを訴える患者が増えている。石木 寛人氏(国立がん研究センター中央病院 緩和医療科)は、「乳がんの場合、年間9万例の発症者のうち、5年生存率が90%で、その半数が痛みを抱えているとすれば、毎年約4万例の慢性疼痛患者が発生する。現状では各種鎮痛薬による薬物療法が推奨されているが、痛みの原因を根本的に解決する治療ではないため、非薬物療法のニーズは高まっている」と指摘。

 このような背景もあり、同氏が所属する診療科では1980年代から鍼灸治療を緩和ケアの一環として提供してきた。治療は刺入鍼、非刺入鍼、台座灸、ホットパックを組み合わせ、標治法(症状部位の循環改善を促す局所治療)と本治法(体力賦活を図る全身調整)により、CIPNでは週1回30分、3ヵ月間の施術を基本とし、施術後に患者が自宅で行うセルフケア指導も治療に含まれる。

 同院では、こうした鍼灸治療の乳がん患者における有用性を検証する前向き介入試験を2022年より実施しており、「結果は2025年6月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表予定」と、同氏は紹介した。さらに現在、多施設ランダム化比較試験を準備中で、乳がん診療科と鍼灸治療提供施設とのネットワーク作りとして、各施設や学会、企業などと月1回のオンラインミーティングを実施。「円滑な共同研究のためには、まずは互いの人となりや専門性を理解し、強固な連携体制を築いていくことが重要」と強調した。また、鍼灸師が医療機関に出向いて技術交流を行うなど、現場レベルでの連携も進んでいるという。

 これに加え、学会やWebセミナーでの交流会、学術団体同士の相互理解を深める取り組みなど、さまざまな普及活動を進めており、「CIPNに苦しむ患者への新たな治療選択肢を提供できる日は近づいている」と、同氏は意欲を示した。

CIPNマネジメントにおける医療機器の現状と課題

 久保 絵美氏(国立がんセンター東病院 緩和医療科)によると、CIPNのマネジメントには医療機器の活用が重要になるという。ただし、「日・米・欧のガイドラインでCIPN予防/治療における冷却療法や圧迫療法、その他治療法の推奨の強さやエビデンスの質は異なる」と指摘。米国食品医薬品局(FDA)に承認されている機器が紹介されるも一定の評価は得られず、今後も引き続き検証が必要とされた。

 一方、内因性疼痛抑制系の賦活や神経成長因子の調整、抗炎症作用などにより複合的に鎮痛をもたらす交番磁界治療器の有効性が、前臨床試験と共に、同氏が研究責任医師として担当した臨床試験で検討されている。それによると、CIPNの原因となる抗がん剤投与終了後1年以上経過した症状固定患者のtingling(ピリピリ・チクチク)やnumbness(感覚の低下)に関して、一定の効果が示唆され保険収載に至っている。

 同氏は、「医療機器によるCIPNマネジメントは発展途上で、エビデンス不足が課題である。そのため、前臨床データの拡充と共に、治療効果のさらなる検証は必須」と強調した。

脳の神経回路の変化に起因する“痛覚変調性疼痛”の理解と治療戦略

 痛みには侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛に加え、これまで心因性疼痛や非器質的疼痛と呼ばれていた痛覚変調性疼痛がある。川居 利有氏(がん研究会 有明病院 腫瘍精神科)は、「痛覚変調性疼痛はCIPNに付随するものである。たとえば、3ヵ月を超えるような抗がん剤投与後からの手足のしびれ、強い倦怠感、浅眠、めまい・耳鳴り、食欲低下や、抗がん剤投与終了後も症状が改善せずに遷延・悪化すること、また、不安が強くなり、症状に執着し訴えが執拗になることがある。このような患者に遭遇したことはないだろうか」と問い掛けた。

 これは脳神経の可塑的変化により発症、維持される慢性痛で、痛み過敏、睡眠障害、疲労、集中困難、破局思考などを伴う。神経可塑性とは、脳の神経が外部刺激により伝達効率を変化させる能力で、学習や記憶に深く関わる一方、慢性痛では脳の感覚-識別系が抑制され、情動-報酬系、認知-制御系が活性化する。この状態が進むと痛みに対する不安や苦痛が増すばかりか、痛みを軽減する下行性制御系、いわゆるプラセボ回路の機能が低下し、痛みへの自己調節が困難となる。これが不安症や強迫症、治療への期待感の喪失、医療への不信感などにつながるという。

 同氏は、「CIPNは長期間に持続し、そこに神経の可塑的変化による痛覚変調性疼痛が追加されることで、痛みはもとより、うつ病や不安症、自律神経症状も加わり、感情調節機能不全に陥る」と説明。また、「CIPNの慢性化では過敏症状の併発に注意し、急激な症状変化の有無についての詳細な問診が大切である。この状態は単なる“気のせい”ではなく、長期間の心理社会的問題などの蓄積による機能障害が原因」とし、「治療には患者との信頼関係の構築が不可欠で、とくに慢性化したケースでは患者の背景や過去の経験に配慮する必要がある。睡眠や心理的ケアは治療上重要なため、心療内科や精神科への適切な紹介が推奨される。CIPNそのものは治らないが、QOL改善には過敏症状のマネジメントが大切」と結んだ。

(ケアネット)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

HER2陽性転移乳がん、術後放射線療法でOS改善~SEERデータ

提供元:CareNet.com

 HER2陽性転移乳がん(MBC)において、抗HER2療法の下での術後放射線療法(PORT)の役割をリアルワールドデータで検討したところ、PORTが全生存期間(OS)をさらに改善していたことがわかった。また、サブグループ解析では、局所進行(T3~4、N2~3)、Grade3、ホルモン受容体(HR)陽性、骨・内臓転移あり、乳房切除を受けた患者において、有意にベネフィットがあることが示唆された。中国・The First Affiliated Hospital of Bengbu Medical UniversityのLing-Xiao Xie氏らがBreast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2025年3月14日号で報告した。

 本研究は、2016~20年のSEERデータベースからHER2陽性MBC女性の臨床データについて包含基準および除外基準に従って収集した。PORTが患者の生存に与える影響を評価し、サブグループ解析によりPORTからベネフィットが得られる可能性のある集団を特定した。

 主な結果は以下のとおり。

・SEERデータベースから計541例を解析に組み入れた。
・PORT群の3年OS率は86.7%と、非PORT群の80.2%より有意に高かった(p=0.011)。
・多変量解析では、黒人患者とPORTを受けた患者はOSが長く(p<0.05)、人種とPORTが独立した予後因子であることがわかった。
・サブグループ解析では、乳房切除、局所進行、高悪性度、HR陽性、多臓器転移ありの患者において、PORTがOSをさらに改善することが示唆された(p<0.05)。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Xie LX, et al. Breast Cancer Res Treat. 2025 Mar 14. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

進行乳がんでのT-DXdの効果と関連するゲノム異常/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の効果に関連するゲノム異常の影響については十分に解明されていない。今回、進行乳がん患者の組織検体における包括的ゲノムプロファイリング(CGP)検査データの後ろ向き解析により、CDK4およびCDK12異常がT-DXdへの1次耐性に寄与する可能性が示唆された。第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)にて、国立がん研究センター中央病院の山中 太郎氏が発表した。

 本研究では、2019年6月~2024年8月に組織検体のCGP検査を受け、国立がん研究センター・がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に登録された進行乳がん患者のデータを後ろ向きに解析した。CGP検査には、NCCオンコパネルシステム、FoundationOne CDx、GenMineTOPが含まれる。T-DXd投与前の検体を用いてCGP検査を受けた患者を対象とし、actionableな遺伝子異常はpathogenic/oncogenicバリアントまたはlikely pathogenic/likely oncogenicバリアントに分類された場合にカウントした。

 主な結果は以下のとおり。

・進行乳がん5,229例のうち、最終的に437例が抽出された。年齢中央値は54歳、HER2は陽性が35.7%、陰性が56.3%、不明が8.7%、エストロゲン受容体は、陽性が62.7%、陰性が32.5%、不明が4.8%であった。最も多かったCGP検査はFoundationOne CDxで89.7%であった。
・actionableな遺伝子異常の頻度が高かったのは、HER2陽性ではTP53異常(71.4%)、ERBB2増幅(70.1%)、PIK3CA異常(50.0%)、MYC異常(28.6%)、HER2陰性ではTP53異常(53.9%)、PIK3CA異常(36.3%)、MYC異常(20.4%)、FGFR1異常(18.8%)、GATA3異常(18.8%)であった。
・無増悪生存期間(PFS)は、ERBB2増幅例で非増幅例より有意に長く(p<0.001)、HER2陽性例では陰性例より有意に長かった(p<0.001)。
・多変量解析の結果、HER2の状態はPFSの延長と有意に関連(ハザード比[HR]:0.33、95%信頼区間[CI]:0.22~0.50、p<0.001)し、CDK4異常(HR:2.18、95%CI:1.06~4.51、p=0.035)およびCDK12異常(HR:2.28、95%CI:1.08~4.79、p=0.030)はPFSの短縮と関連していた。

 山中氏は、「本研究の結果を裏付け、新たな戦略的アプローチを開発するためにさらなる研究が必要」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


固形がん患者における初回治療時CGP検査実施の有用性(UPFRONT)/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 本邦における包括的ゲノムプロファイリング検査(CGP)は、「標準治療がない、または局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了となった(見込みを含む)」固形がん患者に対して生涯一度に限り保険適用となる。米国では、StageIII以上の固形がんでのFDA承認CGPに対し、治療ラインに制限なく全国的な保険償還がなされており、開発中の新薬や治験へのアクセスを考慮すると、早期に遺伝子情報を把握する意義は今後さらに増大すると考えられる。本邦の固形がん患者を対象に、コンパニオン診断薬(CDx)に加えて全身治療前にCGPを実施する実現性と有用性を評価することを目的に実施された、多施設共同単群非盲検医師主導臨床試験(NCCH1908、UPFRONT試験)の結果を、国立がん研究センター中央病院/慶應義塾大学の水野 孝昭氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。

・対象:16歳以上の治癒切除不能または再発病変を有する非小細胞肺がん(EGFRALKROS1BRAFのドライバー遺伝子変異なし)、トリプルネガティブ乳がん、胃がん、大腸がん、膵がん、胆道がん患者(前治療歴なし[術前術後補助化学療法は許容]、ECOG PS 0/1、CGP検査に提出可能な腫瘍検体・末梢血検体を有する)
・組み入れ患者の治療の流れ:CGP(医療保険の先進医療特約または自費)→標準治療±分子標的治療(→[保険適用のCGP]→分子標的治療)※1
・評価項目:
[主要評価項目]actionableな遺伝子異常※2に対応する分子標的薬による治療を受ける患者の割合
[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)、actionableな遺伝子異常を有する患者の割合、actionableな遺伝子異常に対する標的治療における無増悪生存期間(PFS)など
・追跡期間:24ヵ月(データカットオフ:2024年3月)
※1:保険適用のCGPを受けるかどうかは任意で、本研究では規定なし
※2:actionableな遺伝子異常=厚生労働省「第2回がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議(2019年3月8日)」で示された「資料3-4 治療効果に関するエビデンスレベル分類案」1)におけるエビデンスレベルD以上

 主な結果は以下のとおり。

・2020年6月~2022年3月に201例が登録され、192例がCGPを受けた。
・201例の患者背景は、年齢中央値が62歳(範囲:19~83)、男性が54.2%、がん種は膵がん27.9%/大腸がん24.9%/非小細胞肺がん15.9%/胆道がん11.9%/胃がん8.5%/乳がん6.5%で、術後再発症例は32.8%であった。
・最も多く検出された遺伝子異常はTP53(≧60%)で、KRAS(≧40%)、APCSMAD4ARID1A(いずれも≧10%)などが続いた。また、ERBB2BRAFEGFRなど薬剤に直結する遺伝子異常も、いずれも5%未満ではあるが検出された。
・actionableな遺伝子異常(エビデンスレベルA~D)を有する患者は110例(57.3%)、治療候補薬の推奨あり(エビデンスレベルE以下も含む)の患者は142例(74.0%)であった。
・actionableな遺伝子異常を有する患者の割合をがん種別にみると、膵がん67.9%/非小細胞肺がん65.6%/胆道がん62.5%/大腸がん48.0%/乳がん46.2%/胃がん35.3%であった。
・actionableな遺伝子異常に対応する分子標的薬による治療を受けた患者は14例(7.3%)で、がん種ごとにみると非小細胞肺がん18.8%/膵がん8.9%/胆道がん4.2%/大腸がん4.0%、乳がんおよび大腸がんは0%であった。なお、14例中8例が治験的治療を受けた。
・actionableな遺伝子異常に対する標的治療におけるPFS中央値は3.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:1.1~5.8)、奏効率(ORR)は28.6%であった。とくに非小細胞がん患者においてPFSが良好な傾向がみられ、6例中4例がPR(部分奏効)であった。
・全体集団のOS中央値は24.3ヵ月(95%CI:20.2~30.9)であった。
・治療候補薬の推奨があった患者における分子標的治療を受けなかった理由としては、標準治療中の状態悪化が57.0%を占め、32.8%が標準治療中であった。

 水野氏は今回の結果について、初回全身治療時にCGPを受けた固形がん患者のうち、actionableな遺伝子異常に基づく分子標的治療を受けた患者の割合は7.3%であり、本研究実施期間中においては限定的であったが、ドライバー遺伝子陽性症例を除く非小細胞肺がん患者で比較的良好な結果が得られたことから、特定の背景を有する患者においてはCGP早期実施による利益が得られる可能性があるとまとめている。

 講演後の質疑応答において、司会を務めた京都大学の武藤 学氏は、今回の7.3%という結果にはCGPをCDxとして使用したケースは含まれず、治験的治療やCDxがカバーできない治療に進んだ症例が該当するという点に注意が必要と指摘。そのうえで、今後は治験へのアクセスのしやすさの向上、継続した対象者への治験提案、治験の数を増やすなどの方策を練るべきではないかとした。

 本試験に関しては、同時期に標準治療を受けた固形がん患者130例を登録した観察研究が並行して実施されており、今後対照群として比較解析を行うことが計画されている。また、本試験のサブスタディとして、CGPに対する十分な組織のない患者を対象としたUpfront Liquid study、費用対効果分析やQOL評価を行うためのアンケート調査も実施されている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1)厚生労働省:第2回がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議(2019年3月8日)「資料3-4 治療効果に関するエビデンスレベル分類案」

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

高齢乳がん患者へのアベマシクリブ、リアルワールドでの治療実態/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 日本においてアベマシクリブによる治療を受けた、転移を有するHR+/HER2-乳がん患者の全体集団および高齢者集団(65歳以上)の患者特性、治療パターン、転帰をレトロスペクティブに解析した結果、両集団の治療開始から中止までの期間(TTD)や減量が必要となった割合は同等であり、高齢者でも適切な用量であればアベマシクリブによる治療は実施可能であることを、国立がん研究センター中央病院の下井 辰徳氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。

 本調査では、メディカル・データ・ビジョンのデータベースの非識別化データを解析した。2018年11月~2023年5月に最初のCDK4/6阻害薬としてアベマシクリブ(+内分泌療法)を投与された転移を有するHR+/HER2-乳がん患者を同定した。全体集団および高齢者集団のTTDなどを、カプランマイヤー法を用いて推定した。

 主な結果は以下のとおり。

●最初のCDK4/6阻害薬としてアベマシクリブを投与された転移を有するHR+/HER2-乳がん患者3,669例のうち、1,681例(45.8%)が65歳以上であった。年齢中央値は全体集団63歳(範囲:21~97)、高齢者集団72歳(65~97)であった。骨・骨髄転移があったのは60.1%および56.3%、内臓転移があったのは54.9%および55.9%であった。高齢者集団では併存疾患を有している割合が高かった。
●高齢者集団のアベマシクリブレジメンで最も多かったのはアベマシクリブ+フルベストラント(55.0%)で、アベマシクリブ+レトロゾール(31.9%)、アベマシクリブ+アナストロゾール(13.0%)と続き、全体集団と同等であった。
●初回アベマシクリブ療法のTTD中央値は全体集団と高齢者集団で類似していた(以下、括弧内は95%信頼区間)。
 ・全体集団 13.1ヵ月(12.5~14.0)
 ・高齢者集団 12.8ヵ月(11.4~13.6)
●高齢者集団のうち、75歳以上の場合はTTDが短かった。
 ・65~69歳 13.2ヵ月(11.4~15.3)
 ・70~74歳 13.2ヵ月(11.0~15.2)
 ・75歳以上 11.2ヵ月(9.8~13.0)
●内臓転移がある場合もTTDが短かった。
 ・内臓転移あり 11.5ヵ月(10.3~13.0)
 ・内臓転移なし 14.0ヵ月(12.2~15.4)
●初回アベマシクリブ療法から最後の乳がん治療のTTDは、年齢にかかわらず同等であった。
 ・全体集団 42.1ヵ月(40.5~45.7)
 ・高齢者集団 40.2ヵ月(37.0~44.0)
●化学療法開始までの期間は、高齢者集団のほうが長かった。
 ・全体集団 30.6ヵ月(28.8~33.1)
 ・高齢者集団 34.8ヵ月(30.2~39.5)
●アベマシクリブの初回投与を承認用量(300mg/日)で実施していた割合は、全体集団79.3%、高齢者集団69.6%(65~69歳79.9%、70~74歳72.9%、75歳以上56.8%)であった。治療中に1段階以上減量したのは、全体集団55.7%、高齢者集団58.3%で、初回の減量までの期間は高齢者集団で短かった。

(ケアネット 森)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

HR+/HER2-乳がんへのダトポタマブ デルクステカンを発売/第一三共

提供元:CareNet.com

 第一三共は、化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんの治療薬である抗TROP-2抗体薬物複合体ダトポタマブ デルクステカン(商品名:ダトロウェイ)について、2025年3月19日に薬価収載され、同日より発売したことを発表した。

 本剤は、TROP-2に対するヒト化モノクローナル抗体とトポイソメラーゼI阻害作用を有するカンプトテシン誘導体を、リンカーを介して結合させた抗体薬物複合体である。化学療法の前治療歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または転移を有する乳がん患者を対象とした第III相TROPION-Breast01試験において、本剤投与群では医師選択化学療法投与群よりも有意に無増悪生存期間が延長し、かつGrade3以上の治療関連有害事象は半数以下であったことが示された。なお、アジア人サブグループ解析においても、全体集団と同様の結果が得られている。

<製品概要>
販売名:ダトロウェイ点滴静注用100mg
一般名:ダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)
効能又は効果:化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
用法及び用量:通常、成人にはダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回6mg/kgを90分かけて3週間間隔で点滴静注する。初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。なお、患者の状態により適宜減量する。
製造販売承認日:2024年12月27日
薬価基準収載日および発売日:2025年3月19日
薬価:100mg 1瓶 311,990円
製造販売元:第一三共株式会社

(ケアネット 森)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

HER2+乳がんへのtucatinib、日本人集団でも良好な有効性(HER2CLIMB-03)/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 前治療歴のある切除不能な局所進行または転移を有するHER2+乳がん患者に対し、トラスツズマブとカペシタビンに加えて経口チロシンキナーゼ阻害薬tucatinibを追加投与した第II相HER2CLIMB-03試験の結果、日本人集団においても良好な有効性と安全性を示したことを、大阪国際がんセンターの中山 貴寛氏が22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。

 グローバルなHER2CLIMB試験において、複数の前治療歴があり、局所進行/転移を有するHER2+乳がん患者に対するトラスツズマブ+カペシタビン+tucatinib併用療法は、臨床的に有意な有効性を示し、忍容性も良好であったことが報告されている。今回は、主に日本から患者を登録したHER2CLIMB-03試験の有効性と安全性が報告された。

・試験デザイン:第II相単群試験
・対象:タキサン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、T-DM1による治療後に病勢進行が認められた局所進行/転移を有するHER2+乳がん患者(ECOG PS 0/1)
・スケジュール:tucatinib(1日2回300mg、経口投与)+トラスツズマブ(21日ごとに6mg/kg[1サイクル目の1日目は8mg/kg]、静脈内投与)+カペシタビン(21日ごとの1~14日まで1日2回1,000mg/m2、経口投与)
・評価項目:
[主要評価項目]日本人集団における独立中央判定(ICR)による確定奏効率(cORR)
[副次評価項目]全体集団におけるICRによるcORR、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性
・データカットオフ:2023年7月17日

 主な結果は以下のとおり。

・合計66例(日本53例、韓国10例、台湾3例)が1サイクル以上の治療を受けた。全例が女性で、年齢中央値は53歳(範囲:31~84)、ECOG PS 0は77%、HR+は42.4%、HR-は48.5%、Stage IVは47.0%、内臓疾患を有したのは63.6%、転移に対する前治療ライン数中央値は3であった。
・データカットオフ時に評価可能であった日本人集団(48例)のcORR率は35.4%(90%信頼区間[CI]:24.0~48.3)、全体集団(60例)では40.0%(29.3~51.4)であった。
・DOR中央値は、日本人集団8.3カ月(90%CI:6.2~8.5)、全体集団8.5ヵ月(6.2~12.4)であった。
・PFS中央値は、日本人集団7.4カ月(90%CI:5.3~7.6)、全体集団6.4ヵ月(5.3~7.5)であった。
・12ヵ月OS率は、日本人集団80.2%、全体集団82.5%であった。
・試験治療下における有害事象(TEAE)は全例で認められた(投与期間中央値7.6ヵ月)。Grade≧3のTEAEは日本人集団49.1%および全体集団43.9%に発現し、重篤なTEAEは11.3%および9.1%に発現した。Grade≧3のTEAEで多かったのは、ALT増加(15.2%)、好中球数減少(10.6%)、AST増加(9.1%)、貧血(7.6%)であった。

 これらの結果より、中山氏は「トラスツズマブとカペシタビンへのtucatinib追加は、前治療歴があり、局所進行/転移を有するHER2+乳がんの日本人、韓国人、台湾人の集団において良好な有効性と安全性を示した。HER2CLIMB-03試験の結果はグローバルなHER2CLIMB試験と一貫したものであり、tucatinib+トラスツズマブ+カペシタビンはアジア人においても今後の治療選択肢として支持されるものである」とまとめた。

(ケアネット 森)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

乳がんdose-dense PTX療法、Peg Gは安全に省略可能/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 乳がん周術期のdose-denseパクリタキセル療法は好中球減少症を引き起こすリスクが高いため、予防的に持続型G-CSF製剤ペグフィルグラスチム(Peg G)が投与されることが多い。今回、Peg Gを省略したdose-denseパクリタキセル療法であってもスケジュールを遅延させることなく治療の完了が可能であり、安全性に問題はなく、薬剤費が削減できることを、東北労災病院の大竹 かおり氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。

 これまでの報告で、パクリタキセルを高用量で投与する場合であってもPeg Gを有効かつ安全に省略できることが示唆されている。Peg Gの有害事象や薬剤費というリスクを低減できる可能性があるが、東アジア人では化学療法による骨髄抑制が生じやすい傾向があるため、東アジア人におけるエビデンスが求められていた。そこで大竹氏らは、東北労災病院の乳がん患者のデータをレトロスペクティブに解析し、dose-denseパクリタキセル療法でPeg Gを省略した場合の有効性と安全性を評価した。

 対象は、2019年2月~2024年3月にdose-dense EC療法を行い、dose-denseパクリタキセル療法を4サイクル完了した患者で、投与スケジュール、有害事象、相対用量強度(relative-dose-intensity)、薬剤費をPeg G投与群とPeg G非投与群で比較した。なお、Peg G非投与群で好中球減少症が発現した場合はPeg Gの投与が認められた。

 主な結果は以下のとおり。

・合計48例の患者が解析対象となり、Peg G投与群が15例、Peg G非投与群が33例であった。年齢中央値は49歳(範囲:31~66)、全例がアジア人で、ベースライン時の特性は両群でバランスがとれていた。
・相対用量強度は両群ともに高く、投与群は0.961、非投与群は0.985で両群間に有意差は認められなかった(p=0.125)。
・各サイクルの投与予定日に、非投与群で好中球減少症のためにPeg Gの投与が必要になったのは最大(3サイクル目)で12.1%であった。
・各サイクルの1日目に好中球絶対数が1,000/µL超であった割合は、非投与群では4サイクル目に87.9%に低下したが、両群間に有意差は認められなかった(p=0.796)。
・パクリタキセル投与を7週間以内に4サイクル完了した割合は、両群で同等であった(p=0.561)。
・投与群および非投与群で発現した非血液毒性は、疼痛がそれぞれ87%(うちGrade3以上が7%)および91%(45%)、浮腫が47%(0%)および48%(3%)、神経障害が87%(7%)および91%(27%)であった。
・4サイクルの平均薬剤費は、投与群が56万4,681円、非投与群が17万9,214円であり、両群間に有意差が認められた(p<0.001)。

 これらの結果より大竹氏は、好中球などの血液検査の必要性を強調したうえで、「アジア人に対する乳がん周術期のdose-denseパクリタキセル療法において、Peg Gの省略は有望な選択肢となる可能性がある」とまとめた。

(ケアネット 森)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

CDK4/6阻害薬治療中に進行したHR+HER2-転移乳がん、生存に関連する因子は?

提供元:CareNet.com

 ホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)転移乳がんにおいて、内分泌療法+CDK4/6阻害薬による治療中に病勢進行した後の実臨床における無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)をイタリア・European Institute of Oncology IRCCSのPier Paolo Maria Berton Giachetti氏らが評価した。その結果、「若年」「de novo転移病変」「内臓転移」が独立してPFS短縮と関連し、「12ヵ月を超えるCDK4/6阻害薬投与」がOS延長と関連していた。また、内臓転移のある患者には経口化学療法が有益である可能性が示唆された。JAMA Network Open誌2025年2月3日号に掲載。

 本研究は多施設後ろ向きコホート研究で、2015年4月22日~2023年1月31日にHR+HER2-転移乳がんと診断され、内分泌療法+CDK4/6阻害薬で病勢進行後に内分泌療法ベースの治療または化学療法ベースの治療を受けた506例(病勢進行後、CDK4/6阻害薬、抗体薬物複合体、免疫チェックポイント阻害薬、PARP阻害薬を投与された患者は除外)を対象とした。治療タイプ、臨床病理学的特徴、CDK4/6阻害薬の前治療期間に基づいて解析した。治療タイプについては、内分泌療法ベースの治療はエベロリムス+エキセメスタンと内分泌療法単独、化学療法ベースの治療は静注化学療法と経口化学療法に分けて解析した。主要評価項目は、実臨床におけるPFS(内分泌療法+CDK4/6阻害薬で病勢進行後の最初の薬剤治療開始から病勢進行/あらゆる原因による死亡までの期間)、副次評価項目は、実臨床におけるOS(内分泌療法+CDK4/6阻害薬で病勢進行後、あらゆる原因による死亡までの期間)とした。

 主な結果は以下のとおり。

・対象患者506例(診断時年齢中央値:52.4歳、四分位範囲:44.6~62.8)において、PFS不良と関連する独立因子は、内臓転移(ハザード比[HR]:1.45、95%信頼区間[CI]:1.17~1.80、p=0.008)とde novo転移病変(HR:1.25、95%CI:1.01~1.54、p=0.04)であった。
・CDK4/6阻害薬の投与期間が長いほど(OSのHR:0.55、95%CI:0.41~0.73、p<0.001)、また年齢が高いほど(PFSのHR:0.99、95%CI:0.98~1.00、p=0.03)、予後良好であった。
・静注化学療法および内分泌療法の治療は、経口化学療法と比較してPFS短縮と関連していた(静注化学療法のHR:1.45、95%CI:1.11~1.89、p=0.006、エベロリムス+エキセメスタンのHR:1.38、95%CI:1.06~1.78、p=0.02、内分泌療法単独のHR:1.38、95%CI:1.05~1.89、p=0.02)。
・12ヵ月超のCDK4/6阻害薬投与がOS延長と関連していた(HR:0.55、95%CI:0.41~0.73、p<0.001)。
・内臓転移を有する患者では、静注化学療法は経口化学療法と比較してOS短縮と関連していた(HR:1.52、95%CI:1.03~2.24、p=0.04)。

 このコホート研究の結果から、著者らは「CDK4/6阻害薬ベースの治療で得られた腫瘍制御期間と内臓転移の有無が、治療決定に影響する可能性のある主要因子として浮上した。経口化学療法は特定の患者グループに有益な可能性がある」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Berton Giachetti PPM, et al. JAMA Netw Open. 2025;8:e2461067.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

乳がん発見のためのWGSを用いたctDNAアッセイ

提供元:CareNet.com

 乳がんにおいて、全ゲノムシークエンス(WGS)を用いた循環腫瘍DNA(ctDNA)アッセイにより、ベースライン時および追跡調査時の検出が改善され、臨床的な再発診断までの期間(リードタイム)が長くなることが、英国・The Institute of Cancer ResearchのIsaac Garcia-Murillas氏らによる後ろ向き研究で示唆された。Annals of Oncology誌オンライン版2025年2月4日号に掲載。

 ctDNAに基づく分子的残存病変(MRD)の検出は、再発リスクの高い患者を特定するための戦略となる。今回、WGSに基づく超高感度のtumor-informed ctDNA プラットフォームを使用して早期乳がん患者のプロファイリングを実施した。本研究では、転移のない原発性乳がん78例(トリプルネガティブ乳がん23例、HER2+乳がん35例、HR+乳がん18例、不明2例)の血漿617検体(中央値:8、範囲:2~14)を分析。検体は、診断時(治療前)、術前化学療法の2サイクル目、術後(術前化学療法を受けた場合)、術後1年間は3ヵ月ごと、その後は6ヵ月ごとに採取された。血漿DNAはNeXT Personal MRDプラットフォームを用いて分析され、1例当たり1,451バリアント(中央値)を追跡する個別化ctDNAシークエンスパネルを作成した。MRD検出は臨床転帰と相関していた。

 主な結果は以下のとおり。

・ctDNAは2.19~204,900PPM(中央値:405)の範囲で検出され、検出されたctDNAの39%は100PPM未満の超低レベルであった。
・診断時の検体があった50例中49例(98%)は、治療前にctDNAが検出されていた。
・追跡期間中央値76ヵ月(範囲:5~118)において、ctDNAの検出は、再発高リスク(log-rank検定:p<0.0001)と全生存期間の短縮(p<0.0001)に関連し、ctDNA検出から臨床的な再発までのリードタイム中央値は15ヵ月(範囲:0.9~61.5)であった。
・再発した11例すべてでMRDが同定され、MRD初回検出時のctDNA中央値は13.1PPMであった。
・ctDNAが検出されなかった64例はすべて、追跡期間中に再発がみられなかった。
・エクソームを用いたMRD検出アッセイより、感度とリードタイムが改善した。

 本研究の結果、全ゲノムを利用したMRDアッセイでは乳がん再発までのリードタイムが長く、無再発生存と強く関連していた。また、診断時のctDNA検出率は、エクソームを利用したtumour-informedアッセイで報告された検出率より高かった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Garcia-Murillas I, et al. Ann Oncol. 2025 Feb 4. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)