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HER2陽性の進行または転移を有する乳がんの1次治療として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)+ペルツズマブの併用療法は、標準治療のタキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(THP)併用療法と比べて進行または死亡のリスクが有意に低く、新たな安全性に関する懸念はみられなかった。米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏らDESTINY-Breast09 Trial Investigatorsが、第III相の「DESTINY-Breast09試験」の中間解析の結果を報告した。T-DXdは、既治療のHER2陽性の進行または転移を有する乳がん患者に対する有効性が示されているが、未治療の同患者に対するT-DXdの有効性および安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2025年10月29日号掲載の報告。
国際共同第III相無作為化試験、PFSを評価
DESTINY-Breast09試験は、国際共同第III相無作為化試験で、HER2陽性の進行または転移を有する乳がんで、進行・転移病変に対する化学療法またはHER2標的療法の治療歴がない患者を対象に、T-DXd単剤療法とT-DXd+ペルツズマブ併用療法の有効性および安全性を評価した。術前・術後化学療法と全身性の抗がん剤治療終了後の再発までの期間が6ヵ月超の患者は対象とされ、進行・転移病変への内分泌療法歴は1ラインまで許容された。
T-DXd+ペルツズマブまたはT-DXd+プラセボ併用療法とTHP併用療法が比較された。被験者は、T-DXd+ペルツズマブ併用療法群(盲検化)、T-DXd+プラセボ併用療法群(盲検化)、THP併用療法群(非盲検化)に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、盲検下独立中央判定による無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、および安全性であった。
2021年4月26日~2023年10月26日に、279施設で1,157例が登録・無作為化された。
本報告では、事前規定の中間解析であるT-DXd+ペルツズマブ併用療法とTHP併用療法のデータが報告された。T-DXd+プラセボ併用療法のデータは、PFSの最終解析まで盲検化される。
T-DXd+ペルツズマブ群のPFSのハザード比0.56
T-DXd+ペルツズマブ群(383例)とTHP群(387例)のベースラインの人口動態学的および疾患特性は均衡が取れていた。この2群において、被験者の年齢中央値は54歳(範囲:20~85)、アジア人が約半数(49.6%と50.6%)で、de novoが400例(51.9%)、ホルモン受容体陽性が416例(54.0%)、PIK3CA変異陽性が237例(30.8%)などであった。
データカットオフ時点(2025年2月26日)で、T-DXd+ペルツズマブ群で174/380例(45.8%)、THP群で128/383例(33.4%)が治療を継続していた。
主要評価項目であるPFSは、T-DXd+ペルツズマブ群40.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:36.5~推定不能[NC])、THP群26.9ヵ月(21.8~NC)であり、T-DXd+ペルツズマブ群が有意に改善した(進行または死亡のハザード比:0.56、95%CI:0.44~0.71、p<0.00001[事前規定の優越性のp値閾値は0.00043])。
ORRは、T-DXd+ペルツズマブ群85.1%(95%CI:81.2~88.5)、THP群78.6%(74.1~82.5)であり、完全奏効率はそれぞれ15.1%および8.5%であった。DOR中央値は39.2ヵ月(95%CI:35.1~NC)と26.4ヵ月(22.3~NC)であった。
安全性は既知のプロファイルと一致
安全性は、各治療法の既知のプロファイルと一致していた。
Grade3以上の有害事象は、T-DXd+ペルツズマブ群63.5%、THP群62.3%に発現した。最も多くみられたのは、T-DXd+ペルツズマブ群では好中球減少症、低カリウム血症、貧血であり、THP群では好中球減少症、白血球減少症、下痢であった。
薬剤関連有害事象と判定された間質性肺疾患または肺臓炎は、T-DXd+ペルツズマブ群で12.2%(46例:44例がGrade1/2、2例がGrade5[死亡])、THP群で1.0%(4例:すべてGrade1/2)に発現した。
(ケアネット)
【原著論文はこちら】
Tolaney SM, et al. N Engl J Med. 2025 Oct 29. [Epub ahead of print]





