転移乳がんへのT-DXd+放射線療法、重篤な毒性増加は示されず

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 転移を有するHER2陽性またはHER2低発現の乳がん患者において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と放射線の併用療法は治療上の利点が期待される一方で、安全性と実現可能性に関するエビデンスは限られている。今回、T-DXd治療と放射線療法を同時に併用しても重篤な毒性や治療継続を妨げる毒性の増加は認められなかったことを、イタリア・Azienda Ospedaliero-Universitaria CareggiのLuca Visani氏らが明らかにした。The Breast誌2026年1月2日号掲載の報告。

 転移乳がんの治療では全身治療が病勢コントロールの中心であるが、放射線療法も症状緩和や局所制御のために用いられる。そこで研究グループは、T-DXd治療中に放射線療法を同時に併用しても安全かどうかを後ろ向きに検証した。

 対象は、イタリア、スロベニア、オーストリア、スウェーデンの6施設で2021年5月~2024年5月にT-DXd治療(±放射線療法)を受けた転移を有するHER2陽性またはHER2低発現の乳がん患者であった。併用療法の定義は、T-DXd治療中または治療開始10日以内に実施された放射線療法とした。主要評価項目は併用療法とGrade3以上の有害事象(AE)との関連で、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)などであった。

 主な結果は以下のとおり。

・全体(147例)の年齢中央値は49歳で、T-DXd+放射線群(67例)は45歳、T-DXd単独群(80例)は53歳であった。脳転移を有する患者はT-DXd+放射線群のほうが多かった(55.2%vs.22.5%)。放射線の照射部位は中枢神経系が最多であった(54.9%)。T-DXd開始からの追跡期間中央値は9(範囲:0.5~46)ヵ月であった。
・Grade3以上のAEは24例(16.3%)に発現し、T-DXd+放射線群(11.9%)とT-DXd単独群(20.0%)の間に有意差は認められなかった(p=0.30)。
・毒性によるT-DXdの中止は19例(12.9%)で、T-DXd+放射線群とT-DXd単独群で同等であった(11.9%vs.13.8%)。
・頭蓋内への放射線照射後に症候性放射線壊死が1例(1.5%)報告された。
・間質性肺疾患は、T-DXd+放射線群で7例(10.4%)、T-DXd単独群で7例(8.8%)に発現した。
・探索的解析では、放射線併用によるPFSまたはOSへの悪影響は示されなかった。

 研究グループは「これらの結果は、HER2陽性またはHER2低発現の転移乳がん患者に対するT-DXdと放射線療法の併用療法は実行可能で忍容性も高いことを示唆するものである。T-DXdと放射線療法の最適な順序、安全性および有効性をより明確にするためには前向き研究が必要である」とまとめた。

(ケアネット 森)


【原著論文はこちら】

Visani L, et al. Breast. 2026;85:104691.

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リスクベースvs.年1回の乳がん検診、乳がん発生率や生検率を比較/JAMA

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 集団ベースの遺伝子検査を含むリスクに基づく乳がん検診について、StageIIB以上の乳がん発生率が従来の年1回の検診に対し非劣性で、生検率は低減しないものの、個々のリスクに基づく検診の強度、検診法、開始年齢の層別化の安全にもつながることが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のLaura J. Esserman氏らが実施した「WISDOM試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年12月12日号で報告された。

米国の実践的無作為化臨床試験

 WISDOM試験は、全米50州で行われた実践的な並行群間無作為化臨床試験であり、2016年9月~2023年2月に、40~74歳で、乳がんや非浸潤性乳管がん(DCIS)の既往歴がなく、予防的両側乳房切除術を受けていない女性2万8,372人を登録した(Patient-Centered Outcomes Research Institute[PCORI]などの助成を受けた)。

 被験者を、リスクに基づく乳がん検診を受ける群(リスクベース群、1万4,212人)、または年次乳がん検診を受ける群(年次群、1万4,160人)に無作為に割り付けた。すべての研究手順はオンラインのプラットフォーム経由で行った。無作為化を辞退して検診法を自分で選択した女性は観察コホートに登録した。

 リスク評価には、9つの疾患感受性遺伝子、多遺伝子リスクスコア(polygenic risk score:PRS)、Breast Cancer Surveillance Consortium(BCSC)のバージョン2のモデルを用いた。

 リスクベース群は、次の4つのリスク別の推奨事項のいずれか1つを受けた。(1)最高リスク(5年リスクが6%以上で、高浸透率の病原性変異を有する):6ヵ月ごとのマンモグラフィまたはMRIによる交互の検査、カウンセリング、(2)高リスク(年齢別リスクの上位2.5パーセンタイル):年1回のマンモグラフィとリスク低減カウンセリング、(3)平均的リスク:2年ごとのマンモグラフィ、(4)低リスク(40~49歳で、5年リスクが1.3%未満):リスクが1.3%以上になるか、50歳に達するまで検診は不要。

 主要複合評価項目は、StageIIB以上の乳がんの発生の非劣性と、生検率の低減に関する優越性とした。StageIIB以上の乳がん発生については、両群間の絶対差の両側95%信頼区間(CI)の上限値が10万人年当たり50未満の場合に、リスクベース群は非劣性と見なした。

生検率は低減せず

 全体の平均年齢は54(SD 9.6)歳で、非ヒスパニック系白人が77%を占めた。リスクベース群の内訳は、最高リスクが2%、高リスクが8%、平均的リスクが63%、低リスクが27%であった。追跡期間中央値は5.1年で、この間に523件の乳がん(浸潤がん408件[78%]、DCIS 115件[22%])が発生した。

 StageIIB以上の乳がんは52件(リスクベース群21件、年次群31件)発生し、リスクベース群の年次群に対する非劣性が示された(リスクベース群30.0[95%CI:16.3~43.8]/10万人年vs.年次群48.0[95%CI:30.1~65.5]/10万人年、率差:-18.0[95%CI:-40.2~4.1]/10万人年、非劣性のp<0.001)。

 乳房生検率は、リスクベース群で有意な低減を示さなかった(リスクベース群1,029件vs.年次群943件、率差:98.7[95%CI:-17.9~215.3]/10万人年、優越性のp=0.10)。一方、マンモグラフィの施行数はリスクベース群で少なかった(3万2,332件vs.3万4,751件、-3,835.9[-4,516.8~-3,154.9]/10万人年)。

観察コホートの89%がリスクベースを選択

 副次評価項目であるStageIIA以上の乳がんは、リスクベース群の非劣性の基準(群間差の95%CI上限値<100/10万人年)を満たした(率差:-28.6[95%CI:-64.5~7.3]/10万人年)。浸潤性乳がん、DCISの診断率はいずれも両群間で同程度であった。

 リスクベース群におけるがんの発生率、生検、マンモグラフィ、MRIの施行率は、リスクカテゴリーが上昇するに従って増加した。たとえば、浸潤性乳がんの発生率は、10万人/年当たり最高リスクで1,279、高リスクで428、平均的リスクで233、低リスクで169だった。

 なお、これらの無作為化コホートとは別に、自分で検診法を決定した観察コホート(1万8,031人)のうち、1万5,980人(89%)がリスクベースの乳がん検診を選択した。

 著者は、「リスクに基づく乳がん検診は、女性にとって安全かつ受容可能であり、プレシジョン・メディシン(精密医療)時代に、検診の近代化の機会を提供する」「次のプラットフォームであるWISDOM 2.0では、サブタイプ別の祖先集団に基づくリスク評価のためのPRSと、画像診断によるAIを使ったリスク測定値を活用する取り組みが進行中である」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Esserman LJ, et al. JAMA. 2025 Dec 12. [Epub ahead of print]

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高リスク早期TN乳がん、術後EC+PTXにCBDCA追加で3年DFS・OS改善/BMJ

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 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対する術後補助療法として、エピルビシン+シクロホスファミド(EC療法)後の週1回パクリタキセル(PTX)投与にカルボプラチン(CBDCA)を追加することで、新たな安全性の懸念なく早期再発リスクが低下し、生存アウトカムが有意に改善したことが示された。中国・復旦大学上海がんセンターのYin Liu氏らが、第III相の無作為化非盲検試験「CITRINE試験」の結果を報告した。高リスクの早期TNBCの予後は不良であり、術後補助療法の強化戦略の最適化が依然として必要とされていたが、TNBCに対する術後補助療法としてのアントラサイクリン/タキサン系化学療法へのカルボプラチン追加の有益性については、意見が分かれていた。BMJ誌2025年12月23日号掲載の報告。

中国の復旦大学上海がんセンターで実施

 研究グループは、新たに診断された切除可能な片側浸潤性TNBCで、手術後の切除断端陰性、病理学的に局所リンパ節転移陽性またはリンパ節転移陰性でありKi-67が50%以上の18~70歳の女性患者を、カルボプラチン群または対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。

 カルボプラチン群は、エピルビシン+シクロホスファミドを2週間隔で4サイクル投与後、パクリタキセルとカルボプラチンを1サイクル28日(1日目、8日目、15日目に投与)で4サイクル投与した。対照群は、エピルビシン+シクロホスファミドを3週または2週間隔で4サイクル投与後、パクリタキセルを1サイクル21日(1日目、8日目、15日目に投与)で4サイクル投与した。

 主要評価項目はITT集団における無病生存期間(DFS)、副次評価項目は無再発生存期間(RFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)および安全性であった。

3年DFS、RFS、DDFSおよびOSが改善

 2020年3月~2022年3月に808例が登録され無作為化された(カルボプラチン群404例、対照群404例)。このうち、カルボプラチン群の1例が治療開始前に同意を撤回した。

 データカットオフ日(2025年3月10日)時点で、追跡期間中央値44.7ヵ月において推定3年DFS率は、カルボプラチン群92.3%、対照群85.8%であった(補正前ハザード比[HR]:0.64、95%信頼区間[CI]:0.43~0.95、p=0.03)。しかし、比例ハザード仮説の検証では仮説が成立しないことが判明し(p=0.02)、区分ハザードモデルによる解析の結果、HRが時間経過とともに変化することが示された(0~12ヵ月のHR:0.31[95%CI:0.13~0.73]、12~36ヵ月のHR:0.65[95%CI:0.39~1.09]、36ヵ月以降のHR:1.98[95%CI:0.69~5.69])。

 副次エンドポイントについては、カルボプラチン群は対照群と比較し、3年RFS率(93.8%vs.88.3%、HR:0.59[95%CI:0.37~0.93]、p=0.02)、3年DDFS率(94.8%vs.89.8%、0.61[0.37~0.98]、p=0.04)、および3年OS率(98.0%vs.94.0%、0.41[0.20~0.83]、p=0.01)の改善が認められた。

 Grade3/4の治療関連有害事象の発現割合は、カルボプラチン群で66.7%(269/403例)、対照群で55.0%(222/404例)であった。治療に関連した死亡は認められなかった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Liu Y, et al. BMJ. 2025;391:e085457.

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『がん患者におけるせん妄ガイドライン』改訂、抗精神病薬+ベンゾジアゼピン系薬など現場で多い処方を新規CQに

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 2025年9月、『がん患者におけるせん妄ガイドライン 2025年版』(日本サイコオンコロジー学会/日本がんサポーティブケア学会編、金原出版)が刊行された。2019年の初版から改訂を重ね、今回で第3版となる。日本サイコオンコロジー学会 ガイドライン策定委員会 せん妄小委員会委員長を務めた松田 能宣氏(国立病院機構近畿中央呼吸器センター心療内科/支持・緩和療法チーム)に改訂のポイントを聞いた。

――「がん患者におけるせん妄」には、その他の臨床状況におけるせん妄とは異なる特徴がある。がん治療にはオピオイド、ステロイドなどの薬剤が多用されるが、それらが直接因子となったせん妄が多くみられる。さらに、近年では免疫チェックポイント阻害薬に代表されるがん免疫療法の普及に伴い、この副作用としてせん妄を発症する患者も増えている。また高カルシウム血症や脳転移など、がんに伴う身体的問題を背景としてせん妄を発症することもある。進行がん患者におけるせん妄は、その原因が複合的であることが多い。さらに、終末期におけるせん妄では身体的要因の改善が困難であり、治療目標をせん妄の回復からせん妄による苦痛の緩和に変更し、それに合わせてケアを組み立てていく必要もある。

総論に7つの個別テーマを新設

 2025年版は前版と比較して約40ページ増となった。総論では、「関連する病態についてより詳しく説明できるとよいのでは」という委員会の議論を経て、7つのテーマを追加した。

 総論に追加したテーマは以下のようになっている。

1.アルコール離脱せん妄(評価のためのスコア、薬物治療)
2.術後せん妄(周術期神経認知障害、超高齢・がん外科治療の文脈も含む)
3.低活動型せん妄(頻度・症状・鑑別・マネジメント)
4.身体拘束に関する考え方(実態・葛藤・多職種アプローチ・法的倫理的視点)
5.認知症に重畳するせん妄(頻度・リスク因子・評価・対応)
6.せん妄とがん疼痛の合併(終末期、可逆的などで分岐する対応アルゴリズムなど)
7.在宅におけるせん妄診療(介護者負担、投与経路制限、在宅継続の可否、在宅アルゴリズムなど)

 「アルコール離脱せん妄」はがん患者に限ったものではないが、アルコールが関連するがん、たとえば頭頸部がんとの関連が深いため、別個に取り上げた。通常、せん妄治療にベンゾジアゼピン系薬を単剤で使うことはほぼないが、アルコール離脱せん妄の場合は適応となるなど、治療の独自性も高い。「術後せん妄」は、通常のがん患者におけるせん妄とはまた状況が異なり、頻度も高いため、改めて扱うこととした。

 せん妄は「過活動型せん妄」「低活動型せん妄」「活動水準混合型」の3つに分類される。中でも低活動型せん妄は見逃しやすく、がん患者での頻度が高いために取り上げた。「身体拘束」は、これまで過活動型の患者に対し、安全性確保のために拘束するケースがあった。しかし、近年はその有害性が報告されるようになっており、拘束を最小限にするための多職種によるアプローチをまとめた。

 高齢化社会の進行の中で「認知症」とせん妄を併発する患者が増えている。なかなか鑑別が難しいが、評価や対応についてまとめた。また、「せん妄とがん疼痛の合併」も非常に多いパターンで、中等度以上の痛みを伴うがん患者の3分の1以上がせん妄を合併している、との報告もある。ここには厚労省科研費里見班による報告があったので、そちらの治療アルゴリズムを掲載している。前版までは病院におけるせん妄治療が中心だったが、在宅医療におけるせん妄も増加していることを受け、介護者の存在や薬剤の制限など、在宅医療独自の状況を踏まえて項目を作成した。

CQでは予防と併用療法の項目を追加

 CQは4つ新設し、前版の12から15となった。増えたCQは以下のとおりとなっている。

CQ3:ラメルテオン単独投与による予防は推奨されるか?
CQ4:オレキシン受容体拮抗薬単独投与による予防は推奨されるか?
いずれも「単独で投与しないことを提案する」(推奨の強さ:2、エビデンスの確実性:D)

 予防目的の薬物治療として、新規睡眠薬(ラメルテオン/オレキシン拮抗薬)を明示的に扱うようになったのが大きな変更点となる。いずれも現時点では予防に有効とのエビデンスは確立しておらず、「単独で投与しないことを提案する」との記載となった。予防には非薬物的介入が第1選択という点は前版から変わらないが、実臨床においてはせん妄予防よりも睡眠リズムをつくることを目的に新規睡眠薬を投与する医師が一定数いると予想され、こうした処方までを一概に否定するものではない。高リスク群など一部の集団においては「個々の患者の状況やリスクを適切に評価し、予防的投与の妥当性を判断することが必要」との点も明記した。

CQ11:症状軽減を目的に、抗精神病薬+ベンゾジアゼピン系薬の併用投与は推奨されるか?
「併用で投与することを提案する」(推奨の強さ:2、エビデンスの確実性:C)

 このCQに関する文献は1件のみで、エビデンスとして質の高い研究ではあったものの、試験対象が「すでにハロペリドールを定時投与されている終末期の重症せん妄患者」に限定されていたことには注意が必要だ。よって、どんな症例でも併用投与を推奨するわけでなく、症例ごとの見極めが重要になる。また、試験の治療薬はロラゼパム注とハロペリドール注であったが、日本ではロラゼパム注が使われることは少なく、今後は日本で汎用されているベンゾジアゼピン系薬での検討や、重症例以外の検討が求められる。

CQ12:症状軽減を目的に、抗精神病薬+抗ヒスタミン薬の併用投与は推奨されるか?
「併用で投与しないことを提案する」(推奨の強さ:2、エビデンスの確実性:D)

 せん妄に認められる不穏の症状に対して、抗ヒスタミン薬や抗精神病薬を用いることがあるが、抗ヒスタミン薬はせん妄の原因ともなり得るなど安全性の懸念も残る。検討対象となった観察研究では、併用投与によるアウトカム改善は認められなかったため、「併用で投与しないことを提案する」との記載になった。

 がん患者のせん妄は、臨床試験が組みにくく、エビデンスが蓄積されにくい分野だ。理由としては、患者ごとにせん妄の原因が異なっているため試験の組み入れ条件をそろえることが難しい、終末期患者が多く同意取得が困難、といった背景がある。一方、患者数は多く、医療者・患者/家族ともケアに悩むことが多い分野でもある。今後も限られたエビデンスを集め、ガイドラインのアップデートや外部評価に努めたい。患者自身や家族がケアに関わることも多いので、同じ学会で作成する『がん患者における 気持ちのつらさガイドライン』『がん医療における 患者・医療者間のコミュニケーションガイドライン』と一緒に、患者向けガイドの作成も進めている。

(ケアネット 杉崎 真名)


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HR+/HER2-転移乳がん内分泌療法後の1次治療、SGはPFS延長せず(ASCENT-07)/SABCS2025

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 局所進行切除不能または転移のあるホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)乳がん患者における内分泌療法(ET)後の1次治療として、サシツズマブ ゴビテカン(SG)は医師選択の化学療法と比較して、統計学的に有意な無増悪生存期間(PFS)の延長を示さなかった。米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのKomal Jhaveri氏が、日本も参加している第III相ASCENT-07試験の主要解析結果を、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。

・試験デザイン:第III相非盲検無作為化試験
・対象:局所進行切除不能または転移のあるHR+/HER2-乳がん患者(進行がんに対する化学療法歴がなく、以下のうち1つ以上に該当:2ライン以上のET±標的療法後に進行/1次治療としてのET±CDK4/6阻害薬開始後<6ヵ月に進行/術後ET+CDK4/6阻害薬開始後<24ヵ月に再発し追加のETの対象外)
・試験群:SG(21日サイクルの1日目と8日目に10mg/kg点滴静注) 456例
・対照群:医師選択治療(カペシタビンもしくはパクリタキセルもしくはnab-パクリタキセル) 234例
・評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS
[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)、BICRによる奏効率(ORR)、QOL
[その他の副次評価項目]治験責任医師評価によるPFS、ORR、安全性など
・観察期間中央値:15.4ヵ月(データカットオフ:2025年9月15日)

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン特性は両群でバランスが取れており、年齢中央値はSG群57歳vs.対照群58歳、HER2発現状態はIHC 0が42%vs.43%、転移の診断から無作為化までの期間中央値は23.9ヵ月vs.26.2ヵ月、内臓転移ありが89%vs.88%、肝転移ありが70%vs.67%であった。
・前治療歴については、治療ライン中央値はともに2ライン、ET+CDK4/6阻害薬治療歴ありがSG群91%vs.対照群92%、CDK4/6阻害薬による治療期間≦12ヵ月が43%vs.42%であった。
・BICRによるPFS中央値は両群で8.3ヵ月(層別ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.69~1.05、p=0.130)で、SG群における統計学的に有意な改善は認められなかった。
・BICRによるPFSのサブグループ解析の結果は、全体集団とおおむね一致していたが、HER2 IHC 0の患者ではSG群で数値的に良好な傾向を示した。
・治験責任医師評価によるPFS中央値はSG群8.4ヵ月vs.対照群6.4ヵ月(層別HR:0.78、95%CI:0.64~0.93、名目上のp=0.008)であり、SG群で数値的な改善傾向を示した。
・OSデータは未成熟であり(maturity:27%)、OS中央値は両群ともに未到達であったが、SG群で良好な傾向が示された(HR:0.72、95%CI:0.54~0.97、名目上のp=0.029)。
・試験治療中止後の次治療は、ADCがSG群32%vs.対照群61%、化学療法が84%vs.66%などであった。
・BICRによるORRはSG群37%(CR:1%)vs.対照群33%(CR:0%)、奏効期間中央値は12.1ヵ月vs.9.3ヵ月であった。
・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)はSG群72%vs.対照群48%で発現し、TEAEによる治療中止は3%vs.7%であった。SG群の安全性プロファイルはこれまでの報告と一致しており、多く発現したGrade3以上のTEAEは、好中球減少症(56%)、白血球減少症(14%)、貧血(10%)などであった。

 Jhaveri氏は、TROPiCS-02試験に基づき、SGはHR+/HER2-転移乳がんに対する内分泌療法および化学療法後の標準治療として引き続き位置付けられるとした(本邦では2025年12月25日現在未承認)。なお、ASCENT-07試験は進行中で、OSが継続して評価される予定。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

ASCENT-07試験(ClinicalTrials.gov)

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cT1-2N0乳がんにおけるSLNB省略、5年RRFSで非劣性(BOOG2013-08)/SABCS2025

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 乳房温存療法(乳房温存手術および全乳房照射)を受けるcT1-2N0乳がんにおけるセンチネルリンパ節生検(SLNB)の省略を検討したBOOG2013-08試験で、SLNB非施行群が5年領域無再発生存(RRFS)率においてSLNB施行群に非劣性を示した。オランダ・Maastricht University Medical CenterのMarjolein L. Smidt氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。

 BOOG2013-08試験は、2015~22年にオランダの25施設で実施された多施設共同非劣性無作為化第III相試験である。

・対象:乳房温存療法で治療予定のcT1-2N0の片側浸潤性乳がんの女性
・試験群(非施行群):SLNB非施行
・対照群(施行群):SLNB施行
・評価項目:
[主要評価項目]5年RRFS率(絶対差の両側95%信頼区間[CI]が5%未満の場合に非劣性と定義)
[副次評価項目]局所再発率、対側乳がん発生率、遠隔転移・死亡、5年遠隔無再発生存期間(DDFS)率など

 主な結果は以下のとおり。

・計1,733例が登録され1,572例がPPS解析の対象となった(施行群:748例、非施行群:824例)。平均年齢は施行群61.6歳、非施行群61.4歳で、89%が50歳以上であった。82%がcT1で、82.8%が腫瘍グレード1/2であった。乳がんのサブタイプはHR+/HER2-が最も多かった。施行群におけるセンチネルリンパ節転移陰性は86.3%で、微小転移が6.0%、肉眼的転移が7.7%に検出された。術後療法については、なしが52%、化学療法が約12%、分子標的療法が4~5%、内分泌療法は約44%であった。
・5年RRFS率は、施行群96.6%(95%CI:95.2~98.0)、非施行群94.2%(同:92.4~96.0)で、絶対差2.35%(同:0.06~4.72)で5%の非劣性マージンを超えず、ITT解析も同様であった。
・5年領域再発(RR)率は、施行群0.6%(95%CI:0.0~1.1)、非施行群1.1%(同:0.4~2.0)であり、絶対差は0.5%(同:-0.3~1.7)であった。
・5年DDFS率は、施行群96.0%(95%CI:94.4~97.6)、非施行群92.9%(同:90.9~94.9)であり、絶対差は3.3%であった。

 Smidt氏は「本試験の対象患者のほとんどが50歳以上、HR+/HER2-、腫瘍グレード1/2のcT1乳がんであり、今回の結果はこの集団においてはSLNB省略が安全に考慮されうることを示唆している」とまとめ、さらに「この集団においては内分泌療法がSLNB省略の必要条件ではないようだ」と追加した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

BOOG 2013-08試験(ClinicalTrials.gov)

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ER+/HER2-進行乳がんへのimlunestrant、OS中間解析時点の最新データ(EMBER-3)/SABCS2025

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 エストロゲン受容体陽性HER2陰性(ER+/HER2-)の進行乳がんを対象とした経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)imlunestrantの第III相EMBER-3試験において、事前に規定された全生存期間(OS)中間解析時点(追跡期間中央値:28.5ヵ月)での各評価項目の最新データを、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのKomal L. Jhaveri氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。

 本試験の1次解析(追跡期間中央値:15.7ヵ月)では、ESR1変異を有する患者においてimlunestrant群が標準内分泌療法群に比べて無増悪生存期間(PFS)が有意に改善し、またESR1変異の有無にかかわらず全患者において、imlunestrant+アベマシクリブ群がimlunestrant群に比べPFSを有意に改善したことが報告されている。

・対象:アロマターゼ阻害薬±CDK4/6阻害薬による治療歴のあるER+/HER2-進行乳がん患者874例
・試験群(imlunestrant群):imlunestrant単剤(1日1回400mg)331例
・試験群(imlunestrant+アベマシクリブ群):imlunestrant(1日1回400mg)+アベマシクリブ(1日2回150mg)330例
・対照群(標準内分泌療法群):治験責任医師がエキセメスタン/フルベストラントから選択 213例
・評価項目:
[主要評価項目]治験責任医師評価によるPFS(ESR1変異を有する患者および全患者におけるimlunestrant群vs.標準内分泌療法群、全患者におけるimlunestrant+アベマシクリブ群vs.imlunestrant群)
[重要な副次評価項目]OS、盲検独立中央判定によるPFS、奏効率、安全性など
[探索的評価項目]化学療法開始までの期間(TTC)、無化学療法生存期間、PFS2

 主な結果は以下のとおり。

・OS中間解析2の時点(データカットオフ:2025年8月18日)で、追跡期間中央値は28.5ヵ月、治療継続率はimlunestrant群10%、標準内分泌療法群5%、imlunestrant+アベマシクリブ群18%であった。
ESR1変異を有する患者におけるimlunestrant群vs.標準内分泌療法群>
・PFS中央値はimlunestrant群が5.5ヵ月、標準内分泌療法群が3.8ヵ月で、PFSベネフィットが維持されていた(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.47~0.82)。
・OS中央値はimlunestrant群が34.5ヵ月、標準内分泌療法群が23.1ヵ月で、11.4ヵ月改善したが、事前に規定された有意性の境界に達しなかった(HR:0.60、95%CI:0.43~0.86、p=0.0043)。
・TTC中央値はimlunestrant群が15.6ヵ月、標準内分泌療法群が10.2ヵ月であった(HR:0.66、95%CI:0.48~0.92)。
・imlunestrantは良好な安全性プロファイルを維持し、経口SERD特有の毒性はなかった。
<全患者におけるimlunestrant+アベマシクリブ群vs.imlunestrant群>
・PFS中央値はimlunestrant+アベマシクリブ群が10.9ヵ月、imlunestrant群が5.5ヵ月でPFSベネフィットが維持されていた(HR:0.59、95%CI:0.47~0.74)。サブグループ解析では、CDK4/6阻害薬治療歴のある患者においてもimlunestrant+アベマシクリブ群のPFSベネフィットが維持されていた(HR:0.53、95%CI:0.40~0.69)。また、ESR1変異やPI3K経路の変異の有無にかかわらず、imlunestrant+アベマシクリブ群のPFSベネフィットが維持され、ESR1とPI3K経路ともに変異のある患者においても維持されていた。
・OS中央値は、imlunestrant+アベマシクリブ群が未達、imlunestrant群が34.4ヵ月であった(HR:0.82、95%CI:0.59~1.16、p=0.2622)。生存曲線は24ヵ月以降に離れた。
・imlunestrantとアベマシクリブの既知の安全性プロファイルを維持していた。

 Jhaveri氏は、「imlunestrantは、単剤療法またはアベマシクリブとの併用療法として、内分泌療法歴のあるER+/HER2-進行乳がん患者に対して、化学療法を含まない経口剤のみの治療選択肢を提供する」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

EMBER-3試験(ClinicalTrials.gov)

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乳房温存術時1~3個のセンチネルリンパ節転移陽性乳がん、SNLB単独はcALNDに非劣性示せず(INSEMA)/SABCS2025

提供元:CareNet.com

 乳房温存術時に1~3個のセンチネルリンパ節転移陽性の浸潤性乳がん患者において、センチネルリンパ節生検(SNLB)のみの施行は、完全腋窩リンパ節郭清(cALND)の施行と比較し無浸潤疾患生存期間(iDFS)に関して非劣性を示さなかった。ドイツ・ロストック大学のToralf Reimer氏が、ドイツの142施設およびオーストリアの9施設で実施した前向き無作為化非劣性試験「Intergroup Sentinel Mamma:INSEMA試験」における、2次無作為化後の副次評価項目の解析結果を、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。

 本研究では、18歳以上で乳房温存術と術後放射線治療を受ける予定の浸潤性乳がん患者(腫瘍サイズ≦5cmのcT1またはcT2、かつcN0)を対象として、SNLB省略群とSNLB単独群に1対4の割合で無作為に割り付けた(初回無作為化)。その後、SNLB単独群で1~3個のセンチネルリンパ節転移陽性と診断された患者を、SNLB単独群とcALND群に1対1の割合で無作為に割り付けた(2次無作為化)。

 今回発表された重要な副次評価項目は、SNLB単独群とcALND群における(2次無作為化)乳房温存術後のiDFSであった(追跡期間中央値:74.2ヵ月)。

 主な結果は以下のとおり。

・初回無作為化でSNLB単独群に割り付けられた4,184例のうち、センチネルリンパ節転移陽性と診断されたのは1,050例であった。2次無作為化を受けたのは485例で(ITT解析集団)、うち386例がper-protocol解析集団に含まれた。
・per-protocol解析集団におけるベースライン特性は両群でおおむねバランスが取れており、65歳未満はSNLB単独群64.5%vs.cALND群65.7%、術前の腫瘍サイズ≦2cmは80.2%vs.82.2%、ERおよび/またはPgR陽性は97.7%vs.82.2%、HER2陰性は94.9%vs.85.9%であった。Ki-67≦20%は84.6%vs.76.6%、化学療法歴ありは33.6%vs.39.6%、領域リンパ節照射ありは20.6%vs.36.6%であった。
・per-protocol解析集団における5年iDFS率は、SNLB単独群86.6%vs.cALND群93.8%(ハザード比[HR]:1.69、95%信頼区間[CI]:0.96~2.94)となり、非劣性は示されなかった(事前に規定された非劣性マージン:1.271)。
・iDFSイベントについて、遠隔転移(6.9%vs.4.1%)と二次がん(4.1%vs.2.1%)はSNLB単独群で多く発生したが、腋窩再発については1例(0.5%)vs.0例であった。
・iDFSについてのサブグループ解析の結果、術後の腫瘍サイズ>2cmの患者およびマクロ転移個数の多い患者においては、cALNDによるベネフィットが少ない傾向がみられた。一方、Ki-67>20%の患者においてはcALNDにより大きなベネフィットが得られる可能性が示唆された。
・ITT解析集団における5年iDFS率は、SNLB単独群86.0%vs.cALND群89.3%(HR:1.26、95%CI:0.80~1.99)となり、非劣性は示されなかった。
・イベント数は少ないものの、per-protocol解析集団における5年OS率は、SNLB単独群94.9%vs.cALND群96.2%(HR:1.19、95%CI:0.55~2.56)であった。
・術後放射線療法については、通常分割照射(75.1%vs.87.0%)および追加照射(80.6%vs.88.8%)の実施率はcALND群で有意に高かったが、腋窩放射線治療の線量に治療群による差はなかった。

 Reimer氏は、同患者におけるcALNDの省略が5年iDFS率に影響を与える可能性が初めて示唆されたとし、この結果は放射線治療の内容、化学療法の実施有無、およびKi-67高値の影響により部分的に説明できる可能性があるとまとめている。同試験のフォローアップは継続中で、10年時データは2029年に得られる予定。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

INSEMA試験(ClinicalTrials.gov)

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ER+低リスクDCIS、手術せず内分泌療法単独での有用性を検証(LORETTA)/SABCS2025

提供元:CareNet.com

 エストロゲン受容体陽性(ER+)の低リスク非浸潤性乳管がん(DCIS)に対して、手術せず内分泌療法のみ実施する治療が選択肢となる可能性がLORETTA試験(JCOG1505)で示唆された。本試験の主要評価項目である5年累積同側乳房内浸潤がん(IPIC)発生割合は事前に設定した閾値を達成しなかったものの、9.8%と低く、また乳がんによる死亡はなかったことを、名古屋市立大学の岩田 広治氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。

 LORETTA試験(JCOG1505)は、JCOG乳がんグループによるER+の低リスクDCISに対して、手術と放射線照射なしで内分泌療法のみを実施する低侵襲治療の有効性と安全性の検証を目的とした単群検証的試験である。

・対象:40歳以上のER+/HER2-の低リスクDCIS(Comedo壊死がなく、核グレード1または2)で、画像検査(マンモグラフィ、超音波、MRI)で浸潤がんの所見がみられず、最大腫瘍径が2.5cm以下の女性
・方法:外科的切除なしで、タモキシフェン20mg/日を5年間連日投与
・評価項目:
[主要評価項目]5年累積IPIC発生割合
[副次評価項目]同側乳房内浸潤がん無発生生存期間、対側乳房無病生存期間、全生存期間(OS)、手術割合、無手術生存期間、安全性など
・統計解析:5年累積IPIC発生割合の閾値を7%、期待値を2.5%と仮定し、片側α=2.5%、検出力95%とした。5年時点でIPIC発生が14例以下であれば帰無仮説は棄却される。

 主な結果は以下のとおり。

・2017年7月~2024年1月に344例が登録され、341例が解析対象となった。5年時点で18例にIPICが発生したため、2025年6月に効果・安全性評価委員会より早期中止が勧告された。データカットオフは2024年12月で、追跡期間中央値は36ヵ月(範囲:0~80.4ヵ月)であった。年齢中央値は53歳(範囲:40~85歳)、68%が核グレード1、プロゲステロン受容体(PgR)はほぼ陽性、腫瘍径はマンモグラフィと超音波検査では2cm以上が約7%だったが、MRIでは22%であった。
・主要評価項目の5年累積IPIC発生割合は9.8%(95%信頼区間[CI]:5.2~16.1)で、事前設定の閾値を達成しなかった。サブグループ解析では、マンモグラフィ(p=0.0278)、超音波(p=0.0433)、MRI(p=0.0530)における腫瘍径(2cm以上)が浸潤がん発生と関連していたが、核グレード、HER2、PgR、マンモグラフィ上の石灰化との有意な関連は認められなかった。
・5年OS率は98.8%(死亡2例、どちらも乳がんとの関連なし)、5年対側乳房無病生存率は97.5%(イベントは4例のみ、浸潤性2例・非浸潤性2例)、5年同側乳房内浸潤がん無発生生存率は89.7%、5年無手術生存率は82.0%であった。
・有害事象は、タモキシフェンの既知の有害事象のみ認められ、新たな安全性シグナルはなかった。AST/ALT上昇が全Gradeでは約20%に発生し、Grade3以上は約2%であった。

 岩田氏は、「5年累積IPIC発生割合を主要評価項目とした本試験の結果はネガティブだったが、小さな非浸潤がんなどの患者を慎重に選択すれば、手術をしないタモキシフェン単独療法はER+/HER2-の低リスクDCISにおける実行可能な選択肢となるかもしれない」と可能性を指摘した。ディスカッサントのEric P. Winer氏は、「本試験は、DCISに対する非外科的アプローチにおける浸潤性乳がんリスクの新たな推定値を提供する。『watchful waiting』が生存率に影響があるかは明らかではないが、もし影響があるとしても非常に小さなものだろう。最終的には患者の希望が意思決定の中心となるべきである」とまとめている。

(ケアネット 金沢 浩子)


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術前療法後に残存病変を有するHER2+早期乳がん、T-DXd vs.T-DM1(DESTINY-Breast05)/NEJM

提供元:CareNet.com

 再発リスクの高い、術前化学療法後に浸潤性残存病変を有するHER2陽性(+)の早期乳がん患者において、術後療法としてのトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と比較して、無浸潤疾患生存期間(iDFS)を統計学的に有意に改善し、毒性作用は主に消化器系および血液系であったことが、ドイツ・Goethe University FrankfurtのSibylle Loibl氏らDESTINY-Breast05 Trial Investigatorsが行った第III相の国際共同非盲検無作為化試験「DESTINY-Breast05試験」の結果で示された。NEJM誌オンライン版2025年12月10日号掲載の報告。

主要評価項目はiDFS、重要な副次評価項目はDFS

 研究グループは、術前化学療法後(タキサン系化学療法と抗HER2療法を含む)に乳房または腋窩リンパ節に浸潤性残存病変を有する、あるいは初診時に手術不能病変を有する、再発リスクの高いHER2+乳がん患者を対象に、術後療法としてT-DXd 5.4mg/kgと現行の標準治療であるT-DM1 3.6mg/kgを比較した。再発高リスクの定義は、術前療法前にT4 N0~3 M0またはcT1~3 N2~3 M0で手術不能と判断、または術前療法前に手術可能と判断されたが(cT1~3 N0~1 M0)術前療法後に腋窩リンパ節転移が陽性(ypN1~3)であったこととされた。

 主要評価項目はiDFS。重要な副次評価項目は無病生存期間(DFS、非浸潤性乳がんおよび二次原発性非乳がんのDFSを含む)であった。その他の副次評価項目は、全生存期間、無遠隔転移生存期間および安全性などであった。

iDFSおよびDFSイベントの発生とも、T-DXd群で統計学的に有意に改善

 2020年12月4日~2024年1月23日に1,635例が1対1の割合で無作為化され、T-DXd(818例)またはT-DM1(817例)の投与を受けた。データカットオフ(2025年7月2日)時点で、追跡期間中央値は両群ともおよそ30ヵ月(T-DXd群29.9ヵ月[範囲:0.3~53.4]、T-DM1群29.7ヵ月[0.1~54.4])であった。ベースライン特性は両群で類似しており、大半が65歳未満(T-DXd群89.9%vs.T-DM1群90.1%)、ホルモン受容体陽性(71.0%vs.71.4%)、術前療法後に腋窩リンパ節転移陽性(80.7%vs.80.5%)、術前療法として2剤併用抗HER2療法(78.5%vs.79.1%)、アントラサイクリンまたはプラチナ製剤ベースの化学療法(アントラサイクリン:51.7%vs.48.8%、プラチナ製剤:47.2%vs.48.0%)、および放射線療法(93.4%vs.92.9%)を受けていた。また、被験者のほぼ半数がアジア人(48.8%vs.47.2%)であった。

 iDFSイベントの発生は、T-DXd群51例(6.2%)、T-DM1群102例(12.5%)であった(ハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.34~0.66、p<0.001)。3年iDFS率はそれぞれ92.4%と83.7%であった。

 DFSイベントの発生は、T-DXd群52例(6.4%)、T-DM1群103例(12.6%)であった(HR:0.47、95%CI:0.34~0.66、p<0.001)。3年DFS率はそれぞれ92.3%と83.5%であった。

間質性肺疾患リスクに対する適切なモニタリングと管理が必要

 最も多くみられた有害事象は、T-DXd群では悪心(発現率71.3%)、便秘(32.0%)、好中球減少(31.6%)、嘔吐(31.0%)であり、T-DM1群では肝機能評価値の上昇(AST上昇50.2%、ALT上昇45.3%)および血小板数の低下(49.8%)であった。

 治療薬に関連した間質性肺疾患の発現頻度は、T-DXd群(9.6%)がT-DM1群(1.6%)と比べて高かった。T-DXd群では、間質性肺疾患を呈した2例が死亡した。

 著者は、「T-DXdの特定された重要なリスクは間質性肺疾患であり、適切なモニタリングと管理が必要である」と述べている。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Loibl S, et al. N Engl J Med. 2025 Dec 10. [Epub ahead of print]

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