monarchE試験のOS結果が発表/ESMO2025

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 HR+/HER2-でリンパ節転移陽性の高リスク早期乳がん患者を対象に、術後内分泌療法(ET)へのアベマシクリブ追加の有用性を検討したmonarchE試験の全生存期間(OS)の解析の結果、アベマシクリブ+ET併用療法は、ET単剤療法と比べて死亡リスクを15.8%低減させたことを、Royal Marsden NHS Foundation TrustのStephen R. Johnston氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。

 monarchE試験は、HR+/HER2-でリンパ節転移陽性の高リスク早期乳がん患者5,637例を、2年間の術後療法としてアベマシクリブ+ET群とET単独群に1:1に無作為に割り付けた第III相多施設共同無作為化非盲検試験。これまでの解析では、アベマシクリブ追加による無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無遠隔再発生存期間(DRFS)の5年時のベネフィットが報告されている。今回は、主要副次評価項目であるOSのほか、更新されたiDFSとDRFSの結果が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフは2025年7月15日で、追跡期間中央値は6.3年であった。
・OSイベントは、アベマシクリブ+ET群301例、ET単独群360例に発生した。アベマシクリブ併用によって死亡リスクが15.8%低減し、事前に規定されていた有意水準を満たした(ハザード比[HR]:0.842、95%信頼区間[CI]:0.722~0.981、p=0.0273)。7年OS率は、アベマシクリブ+ET群86.8%、ET単独群85.0%であった。
・転移の発生率は、アベマシクリブ+ET群6.4%、ET単独群9.4%であった。
・iDFSのベネフィットは7年時点でも持続していた(HR:0.734、95%CI:0.657~0.820、p<0.0001)。7年iDFS率は、アベマシクリブ+ET群77.4%、ET単独群70.9%であった。
・DRFSのベネフィットも持続していた(HR:0.746、95%CI:0.662~0.840、p<0.0001)。7年DRFS率は、アベマシクリブ+ET群80.0%、ET単独群74.9%であった。
・OS、iDFS、DRFSの改善は、すべてのサブグループで一貫して認められた。
・新たな安全性上の懸念や遅延毒性は認められなかった。

(ケアネット 森)


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免疫療法の対象とならない進行TN乳がん1次治療、Dato-DXdがPFSとOSを延長(TROPION-Breast02)/ESMO2025

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 免疫チェックポイント阻害薬の対象とならない局所進行切除不能または転移のあるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療で、ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)が化学療法に比べ有意に全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を延長したことが第III相TROPION-Breast02試験で示された。シンガポール・National Cancer Center SingaporeのRebecca Dent氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。

・試験デザイン:国際共同ランダム化非盲検第III相試験
・対象:免疫チェックポイント阻害薬の対象とならない未治療の局所再発切除不能/転移TNBC
・試験群:Dato-DXd(3週ごと6mg/kg点滴静注)323例
・対照群:治験責任医師選択化学療法(ICC)(nab-パクリタキセル、カペシタビン、エリブリン、カルボプラチンから選択)321例
・評価項目:
[主要評価項目]OS、盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS
[副次評価項目]治験担当医師評価によるPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフ時(2025年8月25日)の追跡期間中央値は27.5ヵ月で、PFSイベントが63%に、OSイベントは54%で発生していた。被験者の再発までの期間(DFI)別の割合は、de novoが34%、0~12ヵ月が21%(0~6ヵ月は15%)、12ヵ月超が約45%であった。
・BICRによるPFS中央値は、Dato-DXd群が10.8ヵ月とICC群(5.6ヵ月)より有意に延長した(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.47~0.69、p<0.0001)。この傾向は、臨床的に重要なサブグループで一貫していた。
・OS中央値は、Dato-DXd群が23.7ヵ月でICC群18.7ヵ月より5ヵ月延長し、有意に延長した(HR:0.79、95%CI:0.64~0.98、p=0.0291)。この傾向はほとんどのサブグループで一貫していた。
・BICR評価によるORRは、Dato-DXd群が62.5%とICC群(29.3%)の2倍以上、完全奏効率(CR)は3倍以上であった。この傾向はすべてのサブグループで一貫していた。
・DOR中央値は、Dato-DXd群12.3ヵ月、ICC群7.1ヵ月であった。
・治療期間中央値は、Dato-DXd群(8.5ヵ月)がICC群(4.1ヵ月)の2倍以上だったが、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は両群で同程度であり、中止率はICC群より低かった。Dato-DXd群の主なTRAEはドライアイ、口内炎、悪心であった。

 Rebecca Dent氏は「本試験の結果は、免疫療法の対象とならない局所進行切除不能または転移のあるTNBC患者における新たな1次治療の標準治療としてDato-DXdを支持する」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

TROPION-Breast02試験(ClinicalTrials.gov)

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免疫療法の対象とならない進行TN乳がんの1次治療、SGがPFS延長(ASCENT-03)/ESMO2025

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 PD-1/PD-L1阻害薬の対象とならない局所進行切除不能または転移のあるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療で、サシツズマブ ゴビテカン(SG)が化学療法より有意な無増悪生存期間(PFS)の延長と持続的な奏効をもたらしたことが、第III相ASCENT-03試験で示された。スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。なお、本結果はNEJM誌オンライン版2025年10月18日号に掲載された。

・試験デザイン:国際共同ランダム化非盲検第III相試験
・対象:PD-1/PD-L1阻害薬投与対象外(PD-L1陰性、PD-L1陽性でPD-1/PD-L1阻害薬の治療歴あり、併存疾患により不適格)で未治療(治療歴がある場合は6ヵ月以上無治療)の局所進行切除不能/転移TNBC患者
・試験群:SG(21日サイクルの1日目と8日目に10mg/kg点滴静注)279例
・対照群:化学療法(パクリタキセルもしくはnab-パクリタキセルもしくはゲムシタビン+カルボプラチン)279例、病勢進行後クロスオーバー可
・評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)、BICRによる奏効率(ORR)・奏効期間(DOR)・奏効までの期間、安全性、QOL

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフ(2025年4月2日)時における追跡期間中央値は13.2ヵ月、349例にPFSイベントが発生していた。患者の地域別の構成は米国/カナダ/西ヨーロッパが32%、その他が68%であった。
・主要評価項目であるBICRによるPFSは、SG群が化学療法群に比べて有意に改善した(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.50~0.77、p<0.0001、中央値:9.7ヵ月vs.6.9ヵ月)。このベネフィットは、事前に規定された主要なサブグループで一貫して認められた。
・ORRは、SG群が48%、化学療法群が46%と同程度であったが、DOR中央値はSG群(12.2ヵ月)が化学療法群(7.2ヵ月)より長かった。
・OSは今回の解析ではimmatureであった。HRは0.98で、中央値はSG群で21.5ヵ月、化学療法群で20.2ヵ月であった。
・PFS2(ランダム化から後続治療後の病勢進行/死亡までの期間)中央値は、SG群(18.2ヵ月)が化学療法群(14ヵ月)より長く、HRは0.70(95%CI:0.55~0.90)であった。
・Grade3以上の治療関連TEAEは、SG群61%、化学療法群53%であった。TEAEによる治療中止割合は、SG群4%、化学療法群12%、減量に至った割合は、SG群で37%、化学療法群で45%であった。治療関連死はSG群で6例(すべて感染症による死亡)、化学療法群で1例報告された。
・SGの有害事象は既知の安全性プロファイルと一致しており、Grade3以上の発現割合は好中球減少が43%、下痢が9%であった。

 Javier Cortes氏は「本試験のデータは、PD-1/PD-L1阻害薬を投与できない未治療の転移TNBC患者における新たな標準治療の可能性としてSGを支持する」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

ASCENT-03試験(Clinical Trials.gov)

Cortes J, et al. N Engl J Med. 2025 Oct 18. [Epub ahead of print]

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HER2+早期乳がんの術前療法、T-DXd→THPが標準治療を上回るpCR率(DESTINY-Breast11)/ESMO2025

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 DESTINY-Breast11試験において、再発リスクの高いHER2陽性(+)早期乳がん患者の術前療法として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)投与後のパクリタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法(THP療法)は、ドキソルビシン+シクロホスファミド投与後にTHP療法を行う現在の標準治療(ddAC-THP療法)に比べて、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある病理学的完全奏効(pCR)の改善を示したことを、ドイツ・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのNadia Harbeck氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。

 DESTINY-Breast11試験は、高リスクのHER2+早期乳がん患者における術前療法としてのT-DXdの有効性と安全性を検討する第III相試験。患者は、(1)T-DXdのみを投与する群、(2)T-DXdに続いてTHPを投与する群、(3)ddACに続いてTHPを投与する群のいずれかに無作為に割り付けられた。なお、独立データモニタリング委員会の勧告により、T-DXd単独群への登録は2024年3月12日に中止された。

・試験デザイン:第III相多施設共同非盲検無作為化試験
・対象:高リスク(cT3以上でN0~3またはcT0~4でN1~3または炎症性乳がん)で未治療のHER2+早期乳がん患者
・試験群(T-DXd-THP群):T-DXd(5.4mg/kg、3週間間隔)を4サイクル→THP療法を4サイクル 321例
・対照群(ddAC-THP群):ddAC療法を4サイクル→THP療法を4サイクル 320例
・評価項目:
[主要評価項目]盲検下中央判定によるpCR(ypT0/Tis ypN0)
[副次評価項目]盲検下中央判定によるpCR(ypT0 ypN0)、無イベント生存期間(EFS)、無浸潤疾患生存期間、全生存期間、安全性など
・データカットオフ:2025年3月12日

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時の年齢中央値はT-DXd-THP群50歳およびddAC-THP群50歳、アジア人が49.8%および49.1%、HER2ステータス IHC3+が87.2%および88.4%、HR+が73.5%および73.4%、cT0~2が54.8%および58.8%、リンパ節転移ありが89.4%および87.8%であった。
・主要評価項目であるpCR率は、T-DXd-THP群67.3%、ddAC-THP群56.3%であった。絶対差は11.2%(95%信頼区間[CI]:4.0~18.3、p=0.003)であり、T-DXd-THP療法は統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるpCRの改善を示した。このベネフィットはHR+でもHR-でも同様に認められた。
・残存腫瘍負荷(RCB)インデックス0~Iとなったのは、T-DXd-THP群81.3%、ddAC-THP群69.1%であった。このベネフィットもHR+でもHR-でも同様に認められた。
・EFSはT-DXd-THP群で早期から良好な傾向がみられた(ハザード比:0.56、95%CI:0.26~1.17)。24ヵ月EFS率は、T-DXd-THP群96.9%(95%CI:93.5~98.6)、ddAC-THP群93.1%(95%CI:88.7~95.8)であった。
・Grade3以上の有害事象(AE)はT-DXd-THP群37.5%およびddAC-THP群55.8%、重篤なAEは10.6%および20.2%に発現した。治療中断に至ったAEは37.8%および54.5%であった。
・薬剤関連と判断された間質性肺疾患/肺臓炎はT-DXd-THP群4.4%(Grade3以上:0.6%)およびddAC-THP群5.1%(同:1.9%)、左室機能不全は1.3%(同:0.3%)および6.1%(同:1.9%)に発現した。

 これらの結果より、Harbeck氏は「T-DXd-THP療法はddAC-THP療法よりも有効性が高く、毒性が少ない術前療法であり、高リスクのHER2+早期乳がんの新たな標準治療候補となる可能性がある」とまとめた。

(ケアネット 森)


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術前療法後の高リスクHER2+早期乳がん、T-DXd vs.T-DM1(DESTINY-Breast05)/ESMO2025

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 術前療法後に乳房および/または腋窩リンパ節に浸潤性残存病変を有する再発リスクの高いHER2陽性(+)の早期乳がん患者を対象に、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)とトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)の有効性と安全性を直接比較したDESTINY-Breast05試験の中間解析結果を、米国・University of Pittsburgh Hillman Cancer CenterのCharles E. Geyer氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。その結果、T-DXd群において無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無病生存期間(DFS)で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことが明らかになった。

・第III相多施設共同無作為化非盲検実薬対照試験
・対象:タキサン系化学療法と抗HER2療法による術前療法後に乳房および/または腋窩リンパ節に浸潤性残存病変を有する再発リスクの高いHER2+の早期乳がん患者 1,635例
※「高リスク」は、(1)術前療法前にT4 N0~3 M0またはcT1~3 N2~3 M0で手術不能と判断された症例、または(2)術前療法後に手術可能であったが(cT1~3 N0~1 M0)、腋窩リンパ節転移が陽性(ypN1~3)であった症例 のいずれかと定義
・試験群(T-DXd群):T-DXd(5.4mg/kg)を3週間間隔で14サイクル投与 818例
・対照群(T-DM1群):T-DM1(3.6mg/kg)を3週間間隔で14サイクル投与 817例
・評価項目:
[主要評価項目]iDFS
[重要な副次評価項目]DFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)、無遠隔再発生存期間(DRFS)、無脳転移期間(brain metastasis-free interval)、安全性
・データカットオフ:2025年7月2日

 主な結果は以下のとおり。

・試験期間中央値はT-DXd群で29.9(範囲:0.3~53.4)ヵ月、T-DM1群で29.7(範囲:0.1~54.4)ヵ月であった。
・ベースライン時の患者特性は、65歳以下がT-DXd群89.9%およびT-DM1群90.1%、アジア人が47.9%および46.5%、HER2ステータス IHC3+が82.6%および82.0%、HR+が71.0%および71.4%、手術不能が52.7%および51.9%、術前療法後のリンパ節転移陽性が80.7%および80.5%であった。
・主要評価項目であるiDFSイベントの発生は、T-DXd群51例(6.2%)、T-DM1群102例(12.5%)であり、T-DXd群で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.34~0.66、p<0.0001)。T-DXdによるベネフィットはすべてのサブグループで同様であった。
・3年iDFS率は、T-DXd群92.4%(95%CI:89.7~94.4)、T-DM1群83.7%(95%CI:80.2~86.7)であった。
・DFSイベントの発生は、T-DXd群52例(6.4%)、T-DM1群103例(12.6%)であり、T-DXd群で統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(HR:0.47、95%CI:0.34~0.66、p<0.0001)。
・3年DFS率は、T-DXd群92.3%(95%CI:89.5~94.3)、T-DM1群83.5%(95%CI:79.9~86.4)であった。
・DRFSイベントは、T-DXd群42例(5.1%)、T-DM1群81例(9.9%)に発生した(HR:0.49、95%CI:0.34~0.71)。
・中枢神経系転移は、T-DXd群17例(2.1%)、T-DM1群26例(3.2%)に発生した(HR:0.64、95%CI:0.25~1.17)。
・OSイベント(成熟度2.9%)は、T-DXd群18例(2.2%)、T-DM1群29例(3.5%)に発生した(HR:0.61、95%CI:0.34~1.10)。
・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)は、T-DXd群408例(50.6%)、T-DM1群416例(51.9%)に発現した。死亡に関連するTEAEは3例(0.4%)および5例(0.6%)であった。新たな安全性の懸念は認められなかった。
・薬剤関連と判断された間質性肺疾患は、T-DXd群77例(9.6%)、T-DM1群13例(1.6%)に発現し、そのほとんどがGrade1または2であった。Grade5は2例(0.2%)および0例であった。

  これらの結果より、Geyer氏は「術前療法後に浸潤性残存病変を有するHER2+早期乳がんにおいて、T-DXdが新たな標準治療となる可能性が示された」とまとめた。

(ケアネット 森)


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初回マンモグラフィ非受診女性、乳がん死リスク増加/BMJ

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 スウェーデン・カロリンスカ研究所のZiyan Ma氏らの研究チームは観察研究において、初回マンモグラフィの受診勧奨に応じず受診しなかった女性は、受診勧奨に応じ受診した女性と比較して、乳がん発見時の腫瘍の悪性度が高く長期的な乳がん死のリスクが顕著に増加しているが、乳がん発生率は同程度であることを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年9月24日号で報告された。

初回の受診勧奨を受けた約43万例の女性を解析

 研究チームは、初回マンモグラフィの受診勧奨に応じなかった女性における、その後の受診状況および乳がんのアウトカムを評価する目的で、住民ベースのコホート研究を実施した(スウェーデン研究会議などの助成を受けた)。

 1991~2020年に、同国ストックホルム県でSwedish Mammography Screening Programmeの受診勧奨を受け取り、初回の受診勧奨時の年齢が50歳(2005年7月以前)または40歳(2005年7月以降)の女性43万2,775例を解析の対象とした。初回の受診勧奨前にがんの診断を受けた女性は除外した。

 2023年までの追跡期間(最長25年)における、受診、乳がん発生、腫瘍特性、乳がん死について調査した。

非受診者は受診率が継続的に低く、StageIII、IVの割合が高い

 494万375人年の追跡期間中に、1万6,059例で新たに乳がんが発生した。初回マンモグラフィの受診勧奨を受けた女性のうち、29万4,015例(68.9%)が実際に検診を受け、13万8,760例(32.1%)は受診しなかった。

 初回検診の非受診者は、その後の検診でも受診率が継続的に低く、症状の発現によって発見されて進行乳がんと診断される確率が高かった。具体的には、初回検診の非受診者は受診者に比べ、StageIII(4.1%vs.2.9%、オッズ比[OR]:1.53[95%信頼区間[CI]:1.24~1.88])およびStageIV(3.9%vs.1.2%、3.61[2.79~4.68])の乳がんの割合が高かった。

非受診者の乳がん死の増加は、発見の遅れを反映する可能性

 681万8,686人年の総追跡期間中に、1,603例が乳がんにより死亡した。初回検診の非受診者は乳がん死のリスクも高く、25年間の累積乳がん死亡率は、初回検診の受診者が7.0/1,000例であったのに対し、非受診者は9.9/1,000例だった(補正後ハザード比:1.40、95%CI:1.26~1.55)。

 これに対し、25年間の累積乳がん発生率は両群で同程度(受診者7.8%vs.非受診者7.6%)であった。このことから、初回検診の非受診者における乳がん死亡率の増加は、発生率の上昇ではなく、発見の遅れを反映している可能性が高いという。

 著者は、「これらのデータは、初回検診の非受診者が、乳がんによる死亡の長期リスクを有する大規模な集団であることを示している。この高リスク集団は、検診受診率の向上と、それによる死亡リスクの低減を目的とする、対象を絞った介入の機会を提供するものである」「初回検診非受診は、回避可能な乳がん死の早期かつ対応可能な予測因子として優先的に取り組むべき課題である」「本研究の知見は、他のがんの検診プログラムへの示唆をも含むものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Ma Z, et al. BMJ. 2025;390:e085029.

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世界のがん発症や死亡、2050年に6~7割増/Lancet

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 がんは世界の疾病負担の大きな要因であり、2050年まで症例数と死亡数の増加が続くことが予測され、とくに資源の乏しい国との負担格差が大きくなることが見込まれること、また、がんの年齢標準化死亡率は低下するものの、国連による2030年の持続可能な開発目標(SDG)の達成には不十分であることが、米国・ワシントン大学のLisa M. Force氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2023 Cancer Collaboratorsの解析で示された。がんは世界的に主要な死因の1つで、政策立案には正確ながん負担情報が欠かせないが、多くの国では最新のがんサーベイランスデータがない。著者は、「世界的ながん負担に効果的かつ持続的に対処するには、予防、診断、治療の全過程にわたるがん対策戦略の策定と実施において、各国の医療システムや開発状況を考慮した包括的な国内外の取り組みが必要である」と提言している。Lancet誌オンライン版2025年9月24日号掲載の報告。

1990~2023年の204の国と地域のデータを解析、2050年のがん負担を予測

 研究グループは、GBD 2023の枠組みを用い、204の国と地域別および年齢別、性別による、「1990~2023年における47種またはグループのがん負担」「1990~2023年における特定の危険因子に起因するがん負担」、ならびに「2050年までのがん負担予測」を推計した。

 GBD 2023におけるがん負担の推計には、がん登録、出生登録、口頭による死因調査のデータを使用した。がん死亡率はCause of Death Ensembleモデルを用いて推定し、罹患率は死亡率推定値と死亡率/罹患率比(MIR)に基づいて算出した。有病率は生存率モデルから推定し、障害加重を乗じて障害生存年数(YLD)を推定し、年齢別がん死亡数に死亡年齢時のGBD標準余命を乗じて損失生存年数(YLL)を推定した。障害調整生存年数(DALYs)は、YLLsとYLDsの合計として計算された。

 また、GBD 2023比較リスク評価フレームワークを用い、44の行動、環境、職業および代謝リスク因子に起因するがん負担を推定するとともに、GBD 2023予測フレームワークを用いて2024年から2050年までのがん負担を予測した。この予測フレームワークには、関連リスク因子曝露の予測が含まれており、社会人口統計指数を共変量として、これらのリスク因子の影響を受けない各がんの割合を予測した。

 国連のSDG3.4に掲げられた「非感染性疾患による死亡を2015年から2030年の間に3分の1減少させる」という目標に向けた進捗状況について、がん関連の進捗を推定した。

2050年には新規発症やがん死亡が増加、低所得国~中所得国でとくに顕著

 2023年は、非黒色腫皮膚がんを除き、世界全体で1,850万人(95%不確実性区間[UI]:1,640万~2,070万)のがん新規症例と、1,040万人(95%UI:965万~1,090万)の死亡が発生し、DALYは2億7,100万(95%UI:2億5,500万~2億8,500万)であった。このうち、世界銀行の所得分類に基づくと、新規症例の57.9%(95%UI:56.1~59.8)およびがん死亡の65.8%(95%UI:64.3~67.6)が低所得国~上位中所得国における発生であった。

 2023年において、がんは心血管疾患に次いで世界第2位の死因であった。また、2023年には、世界全体で433万人(95%UI:385万~478万)のリスク因子に起因するがん死亡があり、これは全がん死亡の41.7%(95%UI:37.8~45.4)を占めた。リスク因子起因がん死亡は1990年から2023年にかけて72.3%(95%UI:57.1~86.8)増加し、世界全体のがん死亡は同期間に74.3%(95%UI:62.2~86.2)増加した。

 最も可能性の高い基準予測では、2050年には世界全体でがん新規発症例が3,050万人(95%UI:2,290万~3,890万)、がん死亡が1,860万人(95%UI:1,560万~2,150万)と推定され、これは2024年と比較し、それぞれ60.7%(95%UI:41.9~80.6)および74.5%(95%UI:50.1~104.2)の増加であった。

 このうち死亡数増加の予測は、高所得国(42.8%、95%UI:28.3~58.6)より、低所得国および中所得国(90.6%、95%UI:61.0~127.0)で大きかった。これらの増加のほとんどは人口動態の変化に起因するものと考えられ、年齢標準化死亡率は2024年から2050年の間に世界全体で-5.6%(95%UI:-12.8~4.6)減少すると予測された。また、2015年から2030年の間に、30~70歳の年齢層におけるがんによる死亡確率は、相対的に6.5%(95%UI:3.2~10.3)減少すると予測された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

GBD 2023 Cancer Collaborators. Lancet. 2025 Sep 24. [Epub ahead of print]

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がん治療関連心機能障害のリスク予測モデル、性能や外部検証が不十分/BMJ

提供元:CareNet.com

 オランダ・アムステルダム大学のClara Gomes氏らは、がん治療関連心機能障害(CTRCD)のリスクを予測するために開発または検証されたすべての予測モデルのシステマティックレビューと、性能の定量的解析を目的としたメタ解析を行った。その結果、現存するCTRCD予測モデルは臨床応用に先立ち、さらなるエビデンスの蓄積が必要であることを報告した。現存するモデルについては、重要な性能指標に関する報告が不足し外部検証も限られていたことが正確な評価を妨げており、Heart Failure Association-International Cardio-Oncology Society(HFA-ICOS)ツールは、とくに軽度CTRCDに関する性能が不十分であった。著者は、「今後は、さまざまながん種を対象とする大規模なクラスター化データセットを用い、既存モデルの検証と更新を進め、その性能、汎用性および臨床的有用性を高めるべきである」とまとめている。BMJ誌2025年9月23日号掲載の報告。

CTRCDのリスク予測モデルを開発または検証した56件の研究について解析

 研究グループは、Medline(Ovid)、Embase(Ovid)、およびCochrane Central Register of Controlled Trialsを用い、データベース開始から2024年8月23日までに発表された文献を検索した。

 適格基準は、がん患者またはがん生存者におけるCTRCDリスクを推定するための予測モデルの開発・検証・更新を報告している論文で、欧州心臓病学会(ESC)のcardio-oncologyガイドラインに記載されているCTRCDのいずれかを含み、CTRCDが主要アウトカムもしくは複合心血管アウトカムの一部であり、対象集団が化学療法または分子標的治療(チロシンキナーゼ阻害薬、モノクローナル抗体、免疫療法など)を受けた患者で、予測モデルは少なくとも2つ以上の予測因子を含み、予測モデルの使用予定時期が全身性抗がん治療の開始前または治療後のサバイバー期であることであった。適格基準を満たせば、非がん患者向けに開発された心血管リスク予測モデルの外部検証研究も対象とした。放射線誘発性心毒性に関する研究は除外した。

 2人の評価者がそれぞれ研究のスクリーニングとデータ抽出を行い、Prediction model Risk Of Bias ASsessment Tool(PROBAST)を用いてバイアスリスクを評価した。予測モデルの性能はランダム効果メタ解析で統合した。

 1万935件の論文がスクリーニングされ、適格基準を満たした56件の研究が解析対象となった。このうち29件が1つ以上の予測モデルを開発し、20件が外部検証を実施し、7件が開発と外部検証の両方を実施していた。

ほぼすべてのモデルでバイアスリスク高、HFA-ICOSツールは軽度CTRCDを過小評価

 最終的にがん患者またはがん生存者におけるCTRCDリスク予測モデルとして51件が特定された。67%(34/51件)は成人データから開発され、その多くは乳がん(20/34件、59%)または血液悪性腫瘍(6/34件、18%)を対象とし、治療前リスクの予測を目的としていた(33/34件、97%)。一方、小児・青年・若年成人(39歳以下)を対象としたモデルでは、大半(16/17件、94%)ががん生存者を研究対象とし、血液悪性腫瘍や胚細胞腫瘍を含む多様ながん種(14/17件、82%)が含まれた。

 開発モデル51件のうち25%(13件)、外部検証44件のうち14%(6件)でのみ性能指標や較正指標が報告されていた。ほぼすべてのモデルで、バイアスリスクが高かった。

 開発モデル51件中12件(24%)(若年群4/17件[24%]、成人群8/34件[24%])が開発モデルに対して外部検証を受けていた。最も多く検証されたのはHFA-ICOSツール(11回)であり、主にHER2標的療法を受ける乳がん患者(5/11件、45%)で使用されていた。このツールは、すべての外部検証でリスクを過小評価する傾向を示し、とくに軽度CTRCDが多く報告された研究では、観察されたイベント発生率が予測リスクを上回っていた。抗HER2治療を受けた乳がん患者における統合C統計量は0.60(95%信頼区間:0.52~0.68)であった。同集団にて観察されたイベント発生率は、低リスク群で12%(予測値<2%)、中リスク群で15%(2~9%)、高リスク群で25%(10~19%)、超高リスク群で41%(≧20%)であった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Gomes C, et al. BMJ. 2025;390:e084062.

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ER+/HER2-進行乳がん、オラパリブ+デュルバルマブ+フルベストラントの有効性

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 転移を有するER+/HER2-乳がんに対し、PARP阻害薬、ER阻害薬、PD-L1阻害薬の併用が、関連するゲノム変化のある患者に有効であり、毒性プロファイルも許容できるものであったことが多施設共同単群第II相DOLAF試験で示された。フランス・Institut Regional du Cancer de MontpellierのSeverine Guiu氏らがClinical Cancer Research誌オンライン版2025年9月23日号で報告した。

 本試験では、転移を有するER+/HER2-乳がんに対する2次治療または3次治療として、オラパリブ+フルベストラント+デュルバルマブの3剤併用療法の有効性と安全性を評価した。対象は、相同組み換え修復(HRR)遺伝子の体細胞または生殖細胞系列変異、マイクロサテライト不安定性(MSI)状態、内分泌抵抗性関連変異のいずれかを有する患者であった。主要評価項目は24週無増悪生存(PFS)率であった。

 主な結果は以下のとおり。

・対象の172例すべてにおいて転移乳がんに対する内分泌療法歴があり、86%はCDK4/6阻害薬を受け、39%は生殖細胞系列BRCA1/2(gBRCA1/2)変異を有していた。
・24週PFS率は、評価可能集団で66.7%(95%信頼区間[CI]:58.6~74.1)、gBRCA1/2変異症例で76.3%(95%CI:63.4~86.4)であった。
・PFS中央値は、ITT集団で9.3ヵ月(95%CI:7.5~12.7)、gBRCA1/2変異集団で12.6ヵ月(95%CI:8.2~16.7)であった。
・全生存期間中央値は30ヵ月(95%CI:26.6~NR)であった。
・Gradeを問わず最も多くみられた有害事象は、悪心(59%)および無力症(43%)で、新たな毒性はみられなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Guiu S, et al. Clin Cancer Res. 2025 Sep 23. [Epub ahead of print]

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ビタミンAはがんリスクを上げる?下げる?

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 ビタミンA摂取とがんリスクの関連について、メタ解析では食事性ビタミンA摂取量が多いほど乳がんや卵巣がんの罹患率が低いと報告された一方、臨床試験ではビタミンAが肺がんや前立腺がんの死亡リスクを高めることが報告され、一貫していない。今回、病院ベースの症例対照研究の結果、食事性ビタミンA摂取量とがんリスクにU字型の関係がみられたことを、国際医療福祉大学の池田 俊也氏らが報告した。Nutrients誌2025年8月25日号に掲載。

 本研究は、ベトナム科学技術省と日本政府の支援を受けて実施されたプロジェクトにおける症例対照研究で、参加者をベトナム・ハノイの主要な4つの大学病院で募集した。症例は新規がん患者で、食道がん(195例)、胃がん(1,182例)、結腸がん(567例)、直腸がん(482例)、肺がん(225例)、乳がん(281例)、その他のがん(826例)の3,758例、対照はがんを罹患していない患者で、外傷、尿路結石、胆石症、ヘルニア、多汗症、良性前立腺肥大症、痔核、甲状腺結節などの非がん性疾患のための手術で新規に入院した患者2,995例であった。食事性ビタミンA摂取量は半定量食物摂取頻度調査票を用いて調査した。ビタミンA摂取量とがんリスクとの関連は、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出して評価した。制限付き3次スプライン曲線により、母集団のビタミンA摂取量の中央値(86.6μg/日)および平均値(108.4μg/日)に近い四分位である85.3~104.0μg/日が安全な範囲であると示唆され、この四分位を基準とした。

 主な結果は以下のとおり。

・ビタミンA摂取量とがん罹患率の間に、基準と比較してU字型の関連が認められた。
・最低摂取量と最高摂取量の両方ががんリスク上昇と関連しており、OR(95%CI)値はそれぞれ1.98(1.57~2.49)と2.06(1.66~2.56)であった。
・このU字型パターンは、性別、肥満度、喫煙の有無、飲酒の有無、血液型A型、食道がん、胃がん、乳がん、直腸がんで定義されたサブグループで一貫してみられたが、肺がんと結腸がんではみられなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Ikeda S, et al. Nutrients. 2025;17:2744.

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