オンコタイプDX再発スコア≧31のHR+/HER2ー乳がん、アントラサイクリンによるベネフィット得られる可能性(TAILORx)/SABCS2024

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 21遺伝子アッセイ(Oncotype DX)による再発スコア(RS)≧31の、リンパ節転移のないホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性乳がん患者における術後療法として、タキサン+シクロホスファミド(TC)療法と比較したタキサン+アントラサイクリン/シクロホスファミド(T-AC)療法の5年無遠隔再発期間(DRFI)および無遠隔再発生存期間(DRFS)における有意なベネフィットが確認された。とくに明確にこのベネフィットが認められたのは、腫瘍径>2cmの患者であった。TAILORx試験の事後解析結果を、米国・シカゴ大学のNan Chen氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で報告した。

 TAILORx試験では、Oncotype DXによるRSに基づき低リスク(RS:0〜10)、中間リスク(同:11〜25)、高リスク(同:26〜100)に分類している。今回の解析では中~高リスク患者のうち、T-ACまたはTCによる化学療法を受けた患者のデータが分析された。中間リスクの患者は内分泌療法のみまたは内分泌療法+医師選択による化学療法のいずれかに無作為に割り付けられ、高リスクの患者は内分泌療法+医師選択による化学療法を受けていた。

 年齢、RS、腫瘍グレード、腫瘍サイズ、エストロゲン/プロゲステロン受容体の状態による調整ハザード比(aHR)を使用して、T-AC群とTC群におけるDRFI率、DRFS率、および全生存期間(OS)を比較。結果はRS<31または≧31で層別化された。

 主な結果は以下のとおり。

・本解析の適格条件を満たした2,549例のうち、438例がT-AC療法、2,111例がTC療法を受けていた。
・患者特性は年齢中央値がT-AC群53.0歳vs.TC群55.1歳、閉経後が58.4% vs.64.4%、RS 11〜25が44.7% vs.73.6%/26〜30が15.8% vs.11.9%/31〜100が39.5% vs.14.5%であった。
・T-AC療法群でのレジメンは、dose-dense AC-T療法が42.5%、標準的AC-T療法が25.1%、TAC療法が13.0%、その他のアントラサイクリン/タキサンレジメンが19.4%であった。
・5年DRFI率は、RS<31の患者ではT-AC群97.0% vs.TC群97.6%(aHR:1.24、p=0.484)、RS≧31の患者では96.1% vs.91.0%(aHR:0.32、p=0.009)となり、RS≧31の患者においてT-AC群で有意に改善した。
・RS≧31の患者における5年DRFS率はT-AC群95.4% vs.TC群89.8%とT-AC群で有意に改善し(aHR:0.47、p=0.031)、5年OS率は97.3% vs.93.5%とT-AC群で良好な傾向がみられた(aHR:0.546、p=0.167)。
・RS≧31の患者における5年DRFI率およびDRFS率のサブグループ解析の結果、DRFI率はすべてのサブグループにおいてT-AC群で良好な傾向がみられたが、DRFS率については腫瘍径>2cmではT-AC群で良好(HR:0.23、95%信頼区間[CI]:0.08~0.69)であった一方、≦2cmではTC群で良好な傾向がみられた(HR:1.32、95%CI:0.51~3.43)。
・RS≧31の患者において、閉経状態ごとに5年DRFI率をみると、閉経前の患者でT-AC群96.9% vs.TC群84.4%(aHR:0.20、p=0.032)、閉経後の患者で95.6% vs.93.4%(aHR:0.25、p=0.028)であり、閉経状態によらずT-AC群で良好な傾向がみられた。
・スプライン回帰モデルによりTC療法と比較したT-AC療法のDRFIへの影響は、RS 20ではaHR:0.96(95%CI:0.53~1.75)、RS 30ではaHR:0.79(95%CI:0.45~1.39)、RS 40ではaHR:0.60(95%CI:0.34~1.05)、RS 50ではaHR:0.45(95%CI:0.21~0.96)と推定され、RSの増加に伴いアントラサイクリンによるベネフィットが増すことが示唆された。

 Chen氏は、事後解析であるため今回のエンドポイントを評価するために設計されていないことなどを限界として挙げたうえで、多遺伝子アッセイで高リスク、リンパ節転移陰性のHR陽性HER2陰性乳がん患者では、アントラサイクリンの使用が検討されるべきではないかとしている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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TAILORx試験(ClinicalTrials.gov)

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乳がん再発予測、ctDNA検査はいつ実施すべき?示唆を与える結果(ZEST)/SABCS2024

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 血中循環腫瘍DNA(ctDNA)陽性で再発リスクが高いStageI~IIIの乳がん患者に対するPARP阻害薬ニラパリブの有効性を評価する目的で実施された第III相ZEST試験において、試験登録者のctDNA陽性率が低く、また陽性時点での再発率が高かったために登録が早期終了したことを、英国・Royal Marsden Hospital and Institute of Cancer ResearchのNicholas Turner氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で報告した。

 ZEST試験では、治療可能病変に対する標準治療完了後の、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)または腫瘍組織のBRCAtBRCA)病的バリアントを有するHR+/HER2-乳がん患者(StageI~III)を対象に、血液を用いた微小残存腫瘍検出専用の遺伝子パネル検査(Signatera)を実施。ctDNA陽性で放射線学的に再発のない患者を、ニラパリブ群(200または300mg/日)およびプラセボ群に無作為に割り付けた。ctDNA検査は2~3ヵ月ごとに実施された。主要評価項目はニラパリブ群の安全性と忍容性で、無再発生存期間(RFS)も評価された(当初は無病生存期間が主要評価項目とされていたが、登録の早期中止に伴い変更)。

 主な結果は以下のとおり。

・2024年5月8日時点で2,746例が事前スクリーニングに参加、1,901例がctDNA検査を受け、147例(8%)がctDNA陽性であった。
・1,901例の患者特性は、年齢中央値が52.0歳、TNBCが88.5%、tBRCA病的バリアントを有するHR+乳がんが11.5%、術前補助療法歴ありが32.7%、術後補助療法歴ありが33.8%、術前・術後補助療法歴ありが31.2%であった。
・ctDNA陽性率が低く、また陽性時点での再発率が高かったために登録は早期終了した。
・ctDNA陽性となった患者の割合は1回目の検査で5.2%、2回目以降の検査で4.4%、再発率はそれぞれ52.5%、43.8%であり、再発率はctDNAレベルの高さと関連していた。
・根治的治療完了からctDNA陽性までの期間は3ヵ月未満が最も多く、TNBCにおいてはctDNA陽性者の60%が根治的治療完了から6ヵ月以下で検出されていた。
・ctDNA陽性者では、リンパ節転移陽性、Non-pCR、StageIII、術前・術後補助療法歴を有する傾向がみられた。
・ctDNA陽性者のうち、50%(73/147例)はctDNA検出時に再発が確認された。
・ctDNA陽性者のうち40例がニラパリブ群(18例)またはプラセボ群(22例)に無作為に割り付けられた。90%がTN乳がん、10%がtBRCA病的バリアントを有するHR+乳がんであった。
・RFS中央値は、ニラパリブ群11.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.7~18.2) vs.プラセボ群5.4ヵ月(95%CI:2.8~9.3)であった(ハザード比:0.66、95%CI:0.32~1.36)。
・ニラパリブ群において、新たな安全性シグナルは確認されなかった。

 Turner氏は、十分な登録患者数が得られず早期終了したため、ニラパリブの有効性について結論を出すことはできないが、本試験が直面した課題は今後の臨床試験の設計に影響を与えるものだと指摘。ctDNA陽性者の半数がすでに再発していたことを踏まえると、今後の研究では、術前療法終了前にctDNA検査を開始すべきではないかとコメントした。これはとくにTNBCが該当するとして、術前療法で効果が得られない場合、早期に再発する可能性があると指摘している。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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ZEST試験(ClinicalTrials.gov)

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TN乳がん術前化学療法への周術期アテゾリズマブ上乗せ、EFSを改善せず/SABCS2024

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 StageII/IIIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対して、術前化学療法に術前・術後アテゾリズマブを上乗せした場合の有効性と安全性を評価した第III相NSABP B-59/GBG-96-GeparDouze試験の結果、術前アテゾリズマブ+化学療法→術後アテゾリズマブは、術前プラセボ+化学療法→術後プラセボと比較して、主要評価項目である無イベント生存期間(EFS)を有意に改善しなかったことを、米国・ピッツバーグ大学のCharles Geyer氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。

<NSABP B-59/GBG-96-GeparDouze試験>
・試験デザイン:第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験
・対象:StageII/III、ER/PR/HER2陰性のTNBC患者
・試験群:アテゾリズマブ1,200mg(3週ごと)+パクリタキセル80mg/m2(毎週)+カルボプラチンAUC5(3週ごと)を12週間→アテゾリズマブ1,200mg(3週ごと)+AC/EC療法(2または3週ごと)を8~12週間→手術→アテゾリズマブ1,200mg(3週ごと)を1年間(アテゾリズマブ群:777例)
・対照群:上記のアテゾリズマブの代わりにプラセボを投与(プラセボ群:773例)
・評価項目:
[主要評価項目]EFS
[副次評価項目]病理学的完全奏効(pCR)、全生存期間(OS)、安全性など
・層別化因子:地域、腫瘍サイズ、AC/EC療法のスケジュール、リンパ節転移の有無
・統計解析:主要評価項目であるEFSについて、アテゾリズマブとプラセボのハザード比(HR)0.7を検出するようにデザインされ、両側α値5%で80%の検出力を有していた。

 主な結果は以下のとおり。

・2017年12月~2021年5月に1,550例が1:1に無作為化された。患者プロファイルは両群でバランスがとれており、年齢中央値が49.0(22~79)歳、白人が89.9%、女性が99.9%(男性は1例)、リンパ節転移陽性が41.2%、原発腫瘍3cm超が41.3%、PD-L1陰性が63.8%、TILs ≧30%が37.6%であった。
・追跡期間中央値46.9ヵ月時点の4年EFS率は、アテゾリズマブ群85.2%(95%信頼区間[CI]:82.4~87.7)、プラセボ群81.9%(95%CI:78.9~84.6)で有意差は認められなかった(HR:0.8[95%CI:0.62~1.03]、p=0.08)。
・サブグループ解析では、リンパ節転移陽性の患者ではアテゾリズマブ群のほうがEFSが良好であった(p=0.039)。
・pCR率は、アテゾリズマブ群63.3%(95%CI:59.9~66.7)、プラセボ群57.0%(95%CI:53.5~60.5%)で、アテゾリズマブ群で良好であった(補正後のp=0.0091)。
・4年EFS率は、アテゾリズマブ群のpCR例が93%(95%CI:90.3~95)、non-pCR例が70.5%(95%CI:64.3~75.9)で、プラセボ群はそれぞれ91%(95%CI:87.8~93.4)、68.9%(95%CI:63.2~74)であった。
・4年OS率は、アテゾリズマブ群90.2%(95%CI:87.7~92.3)、プラセボ群89.5%(95%CI:86.9~91.5)であった(HR:0.86[95%CI:0.62~1.19])。
・試験治療下における有害事象(TEAE)はアテゾリズマブ群100%、プラセボ群99.7%に発現した。Grade3/4のTEAEは75.3%および73.4%、死亡に至ったTEAEは0.3%および0.4%であった。安全性に関する新たな懸念は認められなかった。

 これらの結果より、Geyer氏は「主要評価項目の有効性基準は満たさなかったが、この結果は、術前/術後療法を受けるTNBC患者のサブセットを同定するためのバイオマーカーのトランスレーショナル研究を支持するものである」とまとめた。

(ケアネット 森)


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導入療法後に病勢進行のないHR+/HER2+転移乳がん1次治療、パルボシクリブ追加でPFS改善(PATINA)/SABCS2024

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 導入療法後に病勢進行のないホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陽性(HER2+)転移乳がん患者における1次治療として、抗HER2療法と内分泌療法へのパルボシクリブの追加は無増悪生存期間(PFS)を統計学的に有意に改善した。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のOtto Metzger氏が、第III相無作為化非盲検PATINA試験の結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。

・対象:HR+/HER2+転移乳がん患者(6~8サイクルの導入化学療法+トラスツズマブ±ペルツズマブ後に病勢進行なし)
・試験群:パルボシクリブ125mgを1日1回経口投与(3週間)+トラスツズマブ±ペルツズマブ+内分泌療法(パルボシクリブ追加群、261例)
・対照群:トラスツズマブ±ペルツズマブ+内分泌療法(抗HER2療法+内分泌療法群、257例)
・評価項目:
[主要評価項目]治験責任医師評価によるPFS
[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性など
・層別化因子:ペルツズマブ投与の有無、術後(術前)補助療法としての抗HER2療法の有無、導入療法への反応(CR/PR vs.SD)、内分泌療法の種類(フルベストラントvs.アロマターゼ阻害薬[AI])

 主な結果は以下のとおり。

・患者登録は2017年6月~2021年7月に行われた。
・ベースラインの患者特性は、年齢中央値がパルボシクリブ追加群53.5歳vs.抗HER2療法+内分泌療法群53.0歳、導入療法のサイクル数中央値がともに6、ペルツズマブ投与ありが96.9% vs.97.7%、術後(術前)補助療法としての抗HER2療法ありが72.8% vs.70.8%、導入療法への反応はCR/PRが68.6% vs.68.5%、内分泌療法の種類はAIが90.8% vs.91.1%であった。
・治験責任医師評価によるPFS中央値は(データカットオフ:2024年10月15日)、パルボシクリブ追加群44.3ヵ月vs.抗HER2療法+内分泌療法群29.1ヵ月で、パルボシクリブ追加群における有意な改善がみられた(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.58~0.94、片側p=0.0074)。
・PFSのサブグループ解析では、ペルツズマブ投与や術後(術前)補助療法としての抗HER2療法歴の有無、導入療法への反応や内分泌療法の種類によらず、パルボシクリブ追加群で良好であった。
・奏効率(ORR)はパルボシクリブ追加群29.9% vs.抗HER2療法+内分泌療法群22.2%(p=0.046)、臨床的有用率(CBR)は89.3% vs.81.3%(p=0.01)でいずれもパルボシクリブ追加群で良好であった。
・OS中央値(中間解析)はパルボシクリブ追加群NE vs.抗HER2療法+内分泌療法群77ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.6~1.24)、3年OS率は87.0% vs.84.7%、5年OS率は74.3% vs.69.8%であった。
・パルボシクリブ追加群で最も多くみられた有害事象はGrade3の好中球減少症(63.2%)で、Grade2および3の疲労、口内炎、下痢も多くみられた。Grade4の有害事象発現率はパルボシクリブ追加群12.3% vs.抗HER2療法+内分泌療法群8.9%で有意差はなく(p=0.21)、治療関連の死亡は両群ともに報告されていない。

 Metzger氏は同療法について、HR+/HER2+転移乳がん患者に対する新たな標準治療となる可能性があると結んでいる。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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PATINA試験(ClinicalTrials.gov)

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経口SERDのimlunestrant、ER+/HER2-進行乳がんのPFSを改善(EMBER-3)/NEJM

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 エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)進行乳がん患者において、ESR1(ERαをコードする遺伝子)変異陽性の患者では、imlunestrant単剤療法が標準内分泌療法よりも無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが示され、被験者全集団では、imlunestrant+アベマシクリブ併用療法がimlunestrant単剤療法よりもPFSを有意に延長したことが示された。米国・メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのKomal L. Jhaveri氏らEMBER-3 Study Groupが、第III相非盲検無作為化試験「EMBER-3試験」の結果を報告した。imlunestrantは次世代の脳内移行性の高い経口選択的ER分解薬(SERD)で、ESR1変異陽性乳がんにおいても持続的にERを阻害する。NEJM誌オンライン版2024年12月11日号掲載の報告。

imlunestrant単剤、標準内分泌療法、imlunestrant+アベマシクリブ併用を比較

 EMBER-3試験では、アロマターゼ阻害薬単剤またはCDK4/6阻害薬との併用による治療中もしくは治療後に病勢進行が認められたER+/HER2-進行乳がん患者において、imlunestrant単剤治療およびアベマシクリブとの併用治療の有用性を検討した。

 被験者は、imlunestrant単剤療法(1日1回400mg、imlunestrant群)、標準内分泌療法(治験医師がエキセメスタンまたはフルベストラントから選択、標準内分泌療法群)、imlunestrant(1日1回400mg)+アベマシクリブ(1日2回150mg)併用療法(imlunestrant+アベマシクリブ群)に、1対1対1の割合で無作為化された。

 主要評価項目は、治験医師評価によるPFSで、ESR1変異陽性患者および全集団においてimlunestrant群と標準内分泌療法群を比較し、また全集団においてimlunestrant+アベマシクリブ群とimlunestrant群を比較した。

imlunestrant単剤、さらにimlunestrant+アベマシクリブ併用でPFS延長

 2021年10月~2023年11月に、22ヵ国195施設で874例が無作為化された(imlunestrant群331例、標準内分泌療法群330例[292例がフルベストラント投与]、imlunestrant+アベマシクリブ群213例)。全患者の年齢中央値は61歳(範囲:27~89)、55.5%に内臓転移があり、59.8%がCDK4/6阻害薬による治療歴を有していた。ESR1変異陽性患者は計256例(imlunestrant群138例、内分泌療法群118例)。

 主要解析(データカットオフ日:2024年6月24日)時点で、計183例が治療継続中であった(imlunestrant群65例[19.6%]、標準内分泌療法群43例[13.0%]、imlunestrant+アベマシクリブ群75例[35.2%])。

ESR1変異陽性患者256例において、PFS中央値はimlunestrant群5.5ヵ月、標準内分泌療法群3.8ヵ月。19.4ヵ月時点の推定RMST(restricted mean survival time)は、imlunestrant群7.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.8~9.1)、標準内分泌療法群5.4ヵ月(4.6~6.2)であった(群間差:2.6ヵ月、95%CI:1.2~3.9、p<0.001)。全集団(imlunestrant群と標準内分泌療法群の計661例)では、PFS中央値はimlunestrant群5.6ヵ月、標準内分泌療法群5.5ヵ月であった(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.87、95%CI:0.72~1.04、p=0.12)。

 imlunestrant+アベマシクリブ群とimlunestrant群の計426例におけるPFS中央値は、それぞれ9.4ヵ月と5.5ヵ月であった(HR:0.57、95%CI:0.44~0.73、p<0.001)。同解析の結果は、ほとんどの患者サブグループ(ESR1変異あり/なし、PI3K経路変異あり/なし、CDK4/6阻害薬による治療歴ありなど)で類似していた。

 Grade3以上の有害事象の発現率は、imlunestrant群17.1%、標準内分泌療法群20.7%、imlunestrant+アベマシクリブ群48.6%であった。主なGrade3以上の有害事象は、imlunestrant群と標準内分泌療法群では、貧血(2.1%、2.8%)、好中球減少症(2.1%、1.9%)であり、imlunestrant+アベマシクリブ群では、好中球減少症(19.7%)、下痢(8.2%)、貧血(7.7%)であった。

 これらの結果を踏まえて著者は、「imlunestrant単剤およびアベマシクリブとの併用における毒性は、低Gradeが多かった。imlunestrant単剤およびアベマシクリブとの併用は、ER+/HER2-進行乳がんで内分泌療法中に病勢進行が認められた患者において、経口分子標的治療の選択肢となることが示された」と述べている。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Jhaveri KL, et al. N Engl J Med. 2024 Dec 11. [Epub ahead of print]

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高齢低リスク早期乳がんの温存手術後、放射線療法vs.内分泌療法(EUROPA)/SABCS2024

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 70歳以上の低リスク早期乳がん患者の乳房温存手術後の治療を、放射線療法(RT)と内分泌療法(ET)で比較した第III相無作為化比較試験(EUROPA試験)の中間解析において、RTがETより2年健康関連QOLが良好で治療関連有害事象の発現率が低かったことを、イタリア・フィレンツェ大学のIcro Meattini氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。

・対象:70歳以上のLuminal-like早期乳がん(ER/PR≧10%、HER2陰性、pT1pN0もしくはcN0、Ki-67≦20%)で乳房温存手術を受けた女性
・RT群:寡分割照射による全乳房照射もしくは乳房部分照射
・ET群:アロマターゼ阻害薬もしくはタモキシフェンを5~10年間投与
・評価項目:
[主要評価項目]5年同側乳房内再発(IBTR)率、EORTC QLQ-C30のglobal health status(GHS)スコアによる2年健康関連QOL
[副次評価項目]局所再発(LRR)、乳がん特異的生存期間、全生存期間、対側乳がん(CBC)、有害事象、QLQ-C30/BR45モジュールドメインにおける健康関連QOL

 健康関連QOLの中間解析は、2年健康関連QOL評価に152例が到達した時点で実施することが事前に計画されていた。今回は、その中間解析結果が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・2021年2月~2024年6月に734例が登録され、731例がRT群(365例)またはET群(366例)に無作為に割り付けられた。今回の中間解析では、RT群104例、ET群103例が解析対象で、年齢(70~79歳/80歳以上)およびG8スコア(14以下/14超)の分布は両群でほぼ同じであった。
・QLQ-C30 GHSスコアのベースライン時から24ヵ月目の変化の平均は、RT群では-1.1(SD:18.8)、ET群では-10.0(SD:25.8)であった。年齢およびG8スコア調整後のGHSスコアの最小二乗平均の変化はRT群が-3.40、ET群で-9.79で、RT群がET群より6.39(p=0.045)小さかった。
・QLQ-C30のほとんどの機能ドメインおよび症状尺度の変化において、RT群のほうが良好な結果を示した。
・QLQ-BR45の機能ドメインの変化は有意な差はなかったが、ほとんどの症状尺度の変化はRT群のほうが良好な結果を示した。
・IBTR、LRRは両群とも報告されず、CBCはRT群で2例(1.9%)、ET群で1例(1%)にみられた。RT群で4例(3.8%)、ET群で2例(1.9%)が死亡したが、いずれも乳がん関連ではなかった。
・治療関連有害事象はRT群で65例(67.0%)、ET群で76例(85.4%)に発現した。

 本試験の患者登録およびフォローアップは継続しており、最終解析にはIBTR率と長期転帰が含まれる予定。Icro Meattini氏は「RTもしくはETは単独で実施できる治療オプションの可能性があり、集学的かつ患者中心の個別化治療における必要性を強調している」とまとめた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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EUROPA試験(ClinicalTrials.gov)

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高リスク早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブ、バイオマーカー解析結果(KEYNOTE-522)/SABCS2024

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 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対し、術前および術後補助療法としてペムブロリズマブの追加を検討したKEYNOTE-522試験では、ペムブロリズマブ追加により病理学的完全奏効率(pCR)、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)が有意に改善したことが報告されている。今回、本試験の探索的バイオマーカー解析で、T細胞浸潤18遺伝子発現プロファイル(TcellinfGEP)、腫瘍遺伝子変異量(TMB)、TcellinfGEP以外のコンセンサスシグネチャーなどのバイオマーカーとpCRおよびEFSとの関連を調べた結果について、米国・Baylor-Sammons Cancer CenterのJoyce O’Shaughnessy氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で報告した。

 バイオマーカーはベースラインでの腫瘍検体で評価した。TMB、BRCA、相同組換え修復欠損(HRD)は全エクソームシーケンシング(WES)、それ以外のバイオマーカーはRNAシーケンシングで調べた。主要評価項目は、TcellinfGEP、TMB、TcellinfGEP以外のコンセンサスシグネチャーとpCRおよびEFSとの関連、副次評価項目は、TNBC分子サブタイプ、HRD状況、HER2遺伝子発現/シグネチャー、PTEN欠損シグネチャーとpCRおよびEFSとの関連とした。データカットオフは2021年3月23日であった。

 主な結果は以下のとおり。

・WESデータはペムブロリズマブ+化学療法群641例、プラセボ+化学療法群305例、RNAシーケンシングデータはペムブロリズマブ+化学療法群618例、プラセボ+化学療法群286例で得られた。
・TcellinfGEPは、両群ともpCRおよびEFSと正の関連を示した。
・TMBは、ペムブロリズマブ+化学療法群ではpCRおよびEFSと正の関連を示した。プラセボ+化学療法群ではpCRと正の関連を示したが、EFSとは示さなかった。
・TcellinfGEPの第1三分位未満と第1三分位以上のサブグループ解析において、EFSはどちらもペムブロリズマブ+化学療法群が優位であった。
・TMBの175変異/エクソーム未満と175変異/エクソーム以上のサブグループ解析において、EFSはどちらもペムブロリズマブ+化学療法群が優位であった。
・TcellinfGEP以外のコンセンサスシグネチャーのうち、解糖系と細胞増殖は両群ともpCRと正の関連を示したが、EFSとは示さなかった。
・PTEN欠損シグネチャーとHRD状況は、両群でpCRと正の関連を示した。
・TNBC分子サブタイプ(BLIA、BLIS、LAR、MES)別のサブグループ解析では、どの分子タイプもEFSはペムブロリズマブ+化学療法群で優位であった。
・HRD状況のサブグループ解析では、陰性と陽性のどちらのサブグループにおいてもペムブロリズマブ+化学療法群でpCR、EFSとも優位であった。

 O’Shaughnessy氏は、「これらの結果から、TcellinfGEPなどのいくつかのバイオマーカーはpCRやEFSの予後予測因子であるが、ペムブロリズマブの効果予測因子ではないことが示唆された。TcellinfGEP、TMB、分子サブタイプ、HRD、TcellinfGEP以外のコンセンサスシグネチャーを含む、さまざまなバイオマーカーで定義されたサブグループで、ペムブロリズマブ+化学療法は化学療法単独に対する効果の優位性が示された」とまとめた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

KEYNOTE-522試験(ClinicalTrials.gov)

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手術可能な高齢乳がん患者の予後、即時手術vs.局所再発まで延期/SABCS2024

提供元:CareNet.com

 70歳以上の手術可能な乳がん患者における、即時手術または局所再発まで手術を延期した場合の長期的リスクを調査したメタ解析によって、即時手術は5年以内の局所再発率を大幅に低下させ、長期的な遠隔再発率と乳がん死亡率も低下させたことを、英国・オックスフォード大学のRobert K. Hills氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。

 これまでの研究により、年齢が上がるほど、とくに80歳以上になると手術の実施率が下がることが報告されている。そのため、手術可能な早期乳がんであっても、高齢患者に対しては内分泌療法のみを実施して手術は局所再発時まで行わないことがあるが、手術を延期することの長期的リスクは不明である。そこで研究グループは、即時手術と手術延期の転帰を比較するために、1980年代に開始された3つの無作為化試験を用いて個々の患者データのメタ解析を実施した。対象は、70歳以上の手術可能な乳がんの女性1,082例(全例がタモキシフェンを少なくとも5年間投与)であった。これらの試験では、放射線療法や化学療法は予定されていなかった。

 主要アウトカムは、局所再発までの期間、遠隔再発までの期間、乳がん死亡率であった。局所再発は、手術後の局所再発、または手術を行わない場合は腫瘍径の25%以上の増大と定義した。リンパ節転移の状態により層別化した年齢調整intent-to-treat log-rank解析を用いて初発再発の発生率比(RR)を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

●無作為化時の年齢中央値は76(73~80)歳、腫瘍径が20mm超だったのは63%(666/1,082例)であった。生存中の平均追跡期間は7.3年であった。
●即時手術を受けた518例のうち、45.7%が乳房切除術を受け、47.3%が乳房温存術を受けた。
●5年時点の局所再発率は、リンパ節転移の有無にかかわらず即時手術群で大幅に低く、この有益性はフォローアップ初期から認められた。
 ・リンパ節転移なし(656例) 即時手術群14.4%、手術延期群45.4%(RR:0.25、95%信頼区間[CI]:0.19~0.34、p<0.00001)
 ・リンパ節転移あり(262例) 即時手術群6.8%、手術延期群48.1%(RR:0.18、95%CI:0.11~0.29、p<0.00001)
●15年時点では、即時手術群のほうが遠隔再発率(RR:0.72、95%CI:0.57~0.90、p=0.003)、乳がん死亡率(RR:0.68、95%CI:0.54~0.86、p=0.002)が低かった。これらの有益性はフォローアップ初期は顕著ではなかった。
●全死因死亡率は、即時手術群のほうが低い傾向にあったが、有意差は認められなかった(RR:0.83、95%CI:0.72~0.97、p=0.016)。

(ケアネット 森)


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高リスクHR+/HER2-乳がんの1次治療、パルボシクリブ+内分泌療法vs.化学療法単独(PADMA)/SABCS2024

提供元:CareNet.com

 高リスクHR+/HER2-転移乳がんの1次治療として、CDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用が国際的ガイドラインで推奨されているが、化学療法単独との比較を前向きに実施した試験は報告されていない。今回、ドイツ・German Breast Groupが実施したPADMA試験で、パルボシクリブ+内分泌療法の併用が化学療法単独に比べて、治療成功期間(TTF)と無増悪生存期間(PFS)の統計学的有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことを、Sibylle Loibl氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。

 PADMA試験は、化学療法の適応のある高リスク転移乳がんの1次治療として、CDK4/6阻害薬+内分泌療法を化学療法単独(±維持療法としての内分泌療法)と比較した、初の前向き多施設無作為化非盲検第IV相試験である。

・対象:化学療法の適応のある未治療のHR+/HER2-転移乳がん
・試験群:パルボシクリブ+内分泌療法(アロマターゼ阻害薬/フルベストラント±GnRHアゴニスト)
・対照群:医師選択の化学療法(パクリタキセル/カペシタビン/エピルビシン/ビノレルビン)±維持療法として内分泌療法(タモキシフェン/アロマターゼ阻害薬/フルベストラント±GnRHアゴニスト)
・評価項目:
[主要評価項目]TTF(無作為化から病勢進行/治療毒性/患者希望/死亡による治療中止までの期間と定義)
[副次評価項目]PFS、全生存期間(OS)、安全性、忍容性、コンプライアンスなど

 主な結果は以下のとおり。

・2018年4月~2023年12月にドイツの28施設で130例が登録され、うち120例(パルボシクリブ+内分泌療法群 61例、化学療法群59例)が治療を開始し解析に組み入れられた。年齢中央値は62歳(範囲:31~85歳)であった。化学療法群における医師選択の化学療法はカペシタビンが69.0%、パクリタキセルが29.3%、ビノレルビンが1.7%で、22.4%が維持療法としての内分泌療法を受けた。
・TTF中央値は、追跡期間中央値36.8(範囲:0~74.4)ヵ月において、パルボシクリブ+内分泌療法群が17.2ヵ月と、化学療法群の6.1ヵ月より有意に長く(ハザード比[HR]:0.46、95%信頼区間[CI]: 0.31~0.69、p<0.001)、どのサブグループにおいても一貫していた。
・PFS中央値も、パルボシクリブ+内分泌療法群が18.7ヵ月と、化学療法群の7.8ヵ月より有意に長かった(HR:0.45、95%CI:0.29~0.70、p<0.001)。
・OS中央値は、パルボシクリブ+内分泌療法群が46.1ヵ月、化学療法群が36.8ヵ月と、パルボシクリブ+内分泌療法群で数値的に改善傾向がみられた。
・血液毒性の発現割合はパルボシクリブ+内分泌療法群で有意に高く(全Grade:96.8% vs.56.8%、 Grade3/4:54.8% vs.6.9%)、非血液毒性は両群で同程度であった。
・治療関連死亡はパルボシクリブ+内分泌療法群で1例(敗血症性ショック)みられた。

 Loibl氏は、「この結果は、HR+/HER2-転移乳がんの1次治療として、CDK4/6阻害薬+内分泌療法を標準治療と提唱する既存の国際的ガイドラインを支持する」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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PADMA試験(ClinicalTrials.gov)

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高リスクHR+/HER2-早期乳がんの術前療法、HER3-DXd単独vs.内分泌療法併用(SOLTI VALENTINE)/SABCS2024

提供元:CareNet.com

 高リスクのHR+/HER2-早期乳がん患者の術前療法として、HER3-DXd単独、HER3-DXdとレトロゾール併用、化学療法を比較した第II相SOLTI VALENTINE試験の結果、HER3-DXdによる治療はレトロゾールの有無にかかわらず化学療法と同程度の病理学的完全奏効(pCR)を示し、Grade3以上の有害事象の発現は少なかったことを、スペイン・Vall d’Hebron University HospitalのMafalda Oliveira氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。

 高リスクのHR+/HER2-早期乳がんでは、化学療法と内分泌療法の両方が有効であるにもかかわらず、再発リスクが長期にわたって持続するため、転帰を改善するための新たな戦略が必要とされている。HER3-DXdは、HER3を標的とするファーストインクラスの抗体薬物複合体で、複数の乳がんサブタイプに活性を示す可能性がある。そこで研究グループは、術前療法としてのHER3-DXd(±レトロゾール)の有効性と安全性を評価することを目的として研究を実施した。

 なお、2022年の欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022)で発表されたSOLTI TOT-HER3試験において、HR+/HER2-早期乳がん患者に対するHER3-DXdの術前単回投与が、pCRの予測スコアとして開発されたCelTILスコアの有意な増加および臨床的奏効と関連していたことが報告されている。

<SOLTI VALENTINE試験>
・試験デザイン:並行群間非盲検無作為化非比較試験
・対象:手術可能なStageII/IIIで高リスク(Ki67≧20%および/または高ゲノムリスク[遺伝子シグネチャーで定義])のHR+/HER2-早期乳がん患者
・試験群1(HER3-DXd群):HER3-DXd 5.6mg/kgを21日ごとに6サイクル
・試験群2(HER3-DXd+LET群):HER3-DXd(同上)とレトロゾール2.5mgを1日1回(±LH-RHアゴニスト)
・比較群(化学療法群):ECまたはAC療法(エピルビシン90mg/m2またはドキソルビシン60mg/m2+シクロホスファミド600mg/m2を14日または21日ごと)を4サイクル→パクリタキセル80mg/m2の毎週投与を12週間
・評価項目:
[主要評価項目]手術時のpCR(ypT0/is ypN0)率
[副次評価項目]全奏効率(ORR)、CelTILスコアの変化、Ki-67値の変化、PAM50サブタイプの変化、再発リスクスコア(ROR)、安全性、無浸潤疾患生存期間
・データカットオフ:2024年4月22日

 主な結果は以下のとおり。

・2022年11月~2023年9月に122例の患者が2:2:1にHER3-DXd群(50例)、HER3-DXd+LET群(48群)、化学療法群(24群)に無作為に割り付けられた。
・全体の年齢中央値は51(29~82)歳、女性が99.2%、閉経前が52.9%であった。cT3/4はHER3-DXd群が42.0%、HER3-DXd+LET群が39.6%、化学療法群が29.2%、リンパ節転移陽性が76.0/77.1/75.0%、StageIIIが36.0/39.6/29.2%、Ki67中央値が35/37/35、HER3-highが80.6/83.8/88.2%、PAM50によるLuminal Bが54.0/60.4/47.8%であった。
・主要評価項目である手術時のpCR率は、HER3-DXd群4.0%(95%信頼区間[CI]:0.5~13.7)、HER3-DXd+LET群2.1%(0.1~11.1)、化学療法群4.2%(0.1~21.1)であった。
・ORRはHER3-DXd群70.0%(95%CI:55.4~82.1)、HER3-DXd+LET群81.3%(67.4~91.1)、化学療法群70.8%(48.9~87.4)であった。
・Ki67中央値の低下は、HER3-DXd+LET群で最も顕著であった。
・PAM50によるLuminal BからLuminal A/Normal-likeサブタイプへの変化は3群ともに2サイクル目の1日目に観察され、手術時にはさらに増強した。
・CelTILスコアの有意な増加はHER3-DXd群およびHER3-DXd+LET群では認められたが、化学療法群では有意ではなかった。
・ROR-high/mediumからROR-lowへの変化は3群ともに認められた。
・治療有害事象(TEAEs)はHER3-DXd群96.0%、HER3-DXd+LET群97.9%、化学療法群95.8%に発現し、うちGrade3以上は14.0/14.6/45.8%であった。減量や治療中断・中止に至るTEAEsはHER3-DXd群で少なかった。間質性肺疾患や治療に関連する死亡は報告されなかった。
・HER3-DXd群およびHER3-DXd+LET群で多く報告されたTEAEsは、悪心、脱毛、疲労、下痢などであった。

 これらの結果より、Oliveira氏は「SOLTI VALENTINE試験は、HER3-DXdの早期乳がんにおける有効性および高リスクのHR+/HER2-乳がんにおける可能性を支持するものである」とまとめた。

(ケアネット 森)


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