転移を有する乳がん、ctDNA変化と生存率の関連~メタ解析

提供元:CareNet.com

 転移を有する乳がん患者の血中循環腫瘍DNA(ctDNA)における特定のゲノム変化の検出は、全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間(DFS)の悪化と関連していたことを、カナダ・Research Institute of the McGill University Health CentreのKyle Dickinson氏らがシステマティックレビューおよびメタ解析によって明らかにした。JAMA Network Open誌2024年9月5日号掲載の報告。

 これまでにも転移乳がんのctDNAと予後の関連を調査した報告は存在するが、研究デザインや分析方法などに不一致があり、矛盾する結論が得られている。そこで研究グループは、研究デザインの違いを考慮しながら特定のctDNAの変化を検出・評価することで、転移乳がんにおけるctDNAとOSやPFS、DFSの関連をより理解することができると考え、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。

 研究グループは、CINAHL、Cochrane Library、Embase、MedlineおよびWeb of Scienceをデータベースの開設から2023年10月23日まで検索した。メタ解析には、(1)転移/進行/StageIVの乳がんと診断された女性(18歳以上)が登録され、(2)ベースラインの血漿ctDNAデータがあり、(3)OSやPFS、DFSとそのハザード比(HR)の報告がある臨床研究を含めた。研究のスクリーニングおよびデータ抽出は2人の独立した研究者により実施され、データはランダム効果モデルを使用して統合された。

 主要評価項目はctDNAにおける特定のゲノム変化の検出と生存との関連で、副次評価項目は研究方法と生存との関連であった。

 主な結果は以下のとおり。

・20~94歳の女性患者4,264例を対象とした37件の研究が解析に含まれた。前向き研究が20件(54%)、後ろ向き研究が17件(46%)であった。
・ctDNAにおける特定のゲノム変化の検出と生存率低下の間に有意な関連が認められた(HR:1.40、95%信頼区間[CI]:1.22~1.58、p<0.001)。
・各生存転帰のサブグループ解析でも同様の結果が得られた。
 【OS】HR:1.44、95%CI:1.24~1.65、p<0.001
 【PFS】HR:1.31、95%CI:1.07~1.55、p<0.001
 【DFS】HR:1.56、95%CI:1.22~1.89、p<0.001
TP53およびESR1変異と生存率低下の間に有意な関連が認められた(それぞれのHR:1.58[95%CI:1.34~1.81]および1.28[95%CI:0.96~1.60]、いずれもp<0.001)。
PIK3CA変異は生存率低下との関連を示さなかった(HR:1.19、95%CI:0.85~1.53)。
・前向き研究でも後ろ向き研究でも同様に生存率の低下が認められた(それぞれのHR:1.48[95%CI:1.15~1.80]および1.37[95%CI:1.17~1.56]、いずれもp<0.001)。
・検出方法別に層別化すると、次世代シーケンシングとデジタルPCRのいずれかによるctDNA検出は生存率の低下と関連していた(それぞれのHR:1.48[95%CI:1.22~1.74]、1.28[95%CI:1.05~1.50]、いずれもp<0.001)。

 これらの結果より研究グループは、「ctDNAによる特定のゲノム変化の検出は、OSやPFS、DFSの悪化と関連しており、転移乳がんの予後バイオマーカーとしての可能性を示唆している。これらの結果は、ctDNAの実用性を判断する将来の研究デザインの指針となるだろう」とまとめた。

(ケアネット 森)

【原著論文はこちら】
(ご覧いただくには [ CareNet.com ]の会員登録が必要です)

Dickinson K, et al. JAMA Netw Open. 2024;7:e2431722.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

男性乳がんの病理学的特徴と生存期間

提供元:CareNet.com

 男性の乳がんは女性の乳がんと同様の治療戦略で管理されている。今回、中国・空軍軍医大学西京病院のMeiling Huang氏らは、自施設における男性乳がんの臨床病理学的特徴、治療、生存期間について後ろ向きに分析・報告した。American Journal of Men’s Health誌2024年9・10月号に掲載。

 本研究は2006年8月~2024年3月に西京病院に入院した男性乳がん患者66例を対象とした。データは病院記録と西京病院の乳がんデータベースから収集した。

 主な結果は以下のとおり。

・男性乳がんの罹患率は2018年から増加傾向にあり、女性乳がん患者よりも高齢であった。
・最も多い組織型は浸潤がんで、ホルモン受容体陽性であった。
・計62例(93.9%)に修正根治的乳房切除術が施行されていた。
・化学療法は39例(59.1%)、内分泌療法は14例(21.2%)、放射線療法は9例(13.6%)に施行されていた。
・全生存期間中央値は46.7ヵ月(0.9~184.8ヵ月)で、最新データでは58例(87.9%)が生存している。
・生存期間と有意に関連する因子は、年齢(χ2=3.856、p=0.050)、エストロゲン受容体(χ2=10.427、p=0.005)、分子タイプ(χ2=10.641、p=0.031)、p63(χ2=2.631、p<0.001)、内分泌療法(χ2=31.167、p<0.001)であった。

 著者らは「これらの結果は男性乳がんに関する貴重な知見を提供し、標準治療の参考となる」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】
(ご覧いただくには [ CareNet.com ]の会員登録が必要です)

Huang M, et al. Am J Mens Health. 2024;18:15579883241284981.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

乳がん術後放射線療法、最適な分割照射法は?/BMJ

提供元:CareNet.com

 乳がん術後放射線療法において、中等度寡分割照射(MHF)は通常分割照射(CF)と比較して腫瘍学的な治療アウトカムが同等でありながら安全性、美容およびQOLを改善し、超寡分割照射(UHF)はMHFやCFと比較した無作為化比較試験は少ないものの、短期間の追跡ではその安全性と腫瘍学的有効性は同程度であった。シンガポール国立大学のShing Fung Lee氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「治療期間の短縮、患者の利便性の向上ならびに費用対効果などを考慮すると、MHFおよびUHFは適切な臨床状況ではCFよりも好ましい選択肢とみなされなければならない。これらの知見を確かなものにするためにはさらなる研究が必要である」とまとめている。BMJ誌2024年9月11日号掲載の報告。

CF、MHF、UHFのRCTをメタ解析

 研究グループは、Ovid MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsを用い、2023年10月23日までに発表された乳がん術後放射線療法の有効性および安全性に関する文献について、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。

 対象試験の適格基準は、CF(総線量50~50.4Gy/25~28回[1日1.8~2Gy、5~6週間])、MHF(1回2.65~3.3Gyを13~16回[3~5週間])、またはUHF(5回のみ)について評価した無作為化比較試験であった。

 2人の研究者が独立してデータ抽出とチェックを行い、コクランバイアスリスクツール(バージョン2)およびGRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluations)を用いて、バイアスリスクおよびエビデンスの質、確実性を評価した。

 メタ解析では、ランダム効果モデルを用いてリスク比(RR)およびハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出し、コクランQ検定とI2統計量を用いて異質性を分析した。また、頻度論的(frequentist)ランダム効果モデルを用いてネットワークメタ解析も行った。

 主要アウトカムは、Grade2以上の急性放射線皮膚炎および晩期放射線障害、副次アウトカムは美容、QOL、局所再発、無病生存期間、全生存期間などであった。

MHFはCFより急性放射線皮膚炎のリスクが低い

 検索の結果、1,754本の文献が特定され、適格基準を満たした59本の文献に含まれる臨床試験35件(被験者計2万237例)が解析対象となった。全体として、評価項目の21.6%はバイアスリスクが低かったが、78.4%はバイアスリスクが中または高と評価された。

 MHFによるGrade2以上の急性放射線皮膚炎のCFに対するRRは、乳房温存術を受けた患者のみを対象とした8件の臨床試験で0.54(95%CI:0.49~0.61、p<0.001)、乳房切除術を受けた患者のみを対象とした10件の臨床試験で0.68(0.49~0.93、p=0.02)であった。

 乳房温存術と乳房切除術を合わせた場合、色素沈着およびGrade2以上の乳房縮小はCF後よりMHF後のほうが低頻度で、RRはそれぞれ0.77(0.62~0.95、p=0.02)および0.92(0.85~0.99、p=0.03)であった。しかし、乳房温存術のみの試験では、色素沈着(RR:0.79、95%CI:0.60~1.03、p=0.08)および乳房縮小(0.94、0.83~1.07、p=0.35)に関する差は統計学的に有意ではなかった。

 UHFのMHFに対するGrade2以上の急性放射線皮膚炎のRRは、乳房温存術と乳房切除術を合わせた場合0.85(0.47~1.55、p=0.60)であった。

 MHFはCFと比較して、美容およびQOLの改善と関連していたが、UHFとの比較では関連はみられなかった。再発および生存に関しては、UHF、MHF、CFで同様であった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】
(ご覧いただくには [ CareNet.com ]の会員登録が必要です)

Lee SF, et al. BMJ. 2024;386:e079089.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

HR陽性早期乳がん、内分泌療法中断中の出産・授乳の安全性(POSITIVE)/ESMO2024

提供元:CareNet.com

 妊娠・出産を希望するホルモン受容体陽性早期乳がん患者における、これまでで最大規模の前向きコホート研究で、内分泌療法を中断して出産した女性の約3分の2が母乳育児をしており、短期的には母乳育児の乳がん無発症期間(BCFI)への影響は認められないことが明らかになった。イタリア・European Institute of OncologyのFedro A. Peccatori氏が、POSITIVE試験の副次評価項目についての結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。

 POSITIVE試験は、乳がんStageI~IIIで術後補助内分泌療法期間が18~30ヵ月の、妊娠を希望する42歳以下の女性を対象として行われた。2014年12月~2019年12月に1ヵ月以内に内分泌療法を中止した女性が組み入れられ、3ヵ月間のウォッシュアウト期間、妊娠・出産(±母乳育児)のための最大2年までの休薬期間を経て内分泌療法を再開した。

 主要評価項目は乳がん無発症期間(BCFI)で、追跡期間中央値41ヵ月において、術後補助内分泌療法を一時的に中断しても、短期の乳がん再発リスクは増加しなかったことがすでに報告されている(3年時のBCFIイベント発生率:中断群8.9% vs.対照群9.2%、絶対群間差:-0.2%、ハザード比:0.81[95%信頼区間:0.57~1.15])。今回は、重要な副次評価項目の母乳育児に関するアウトカムについて結果が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・POSITIVE試験に組み入れられた518例のうち、317例が1人以上の生児を出産した。うち両側乳房切除を受けていないのは313例で、196例(62.6%)が母乳育児を行った。
・196例のベースライン特性は、35歳以上が62.7%を占め、初産が83.6%、pN0の症例が67.8%、化学療法歴ありが57.6%であった。
・196例中130例(66.3%)が乳房温存術を受けており、66例(33.6%)が片側乳房切除術を受けていた。
・母乳育児の頻度は、35歳以上(67.6% vs.55.7%)、初産(66.4% vs.48.5%)、乳房温存術を受けた女性(77.8% vs.45.2%)で高かった。
・授乳期間の中央値は4.4ヵ月(0~24.2ヵ月)で、37.1%は6ヵ月以上、12.8%は12ヵ月以上、1.5%は24ヵ月以上授乳していた。
・追跡期間中央値41ヵ月において、全体で9件のBCFIイベント(3件の局所再発含む)が発生した。12ヵ月時のBCFIイベント発生率は授乳群1.1% vs.非授乳群1.9%、24ヵ月時のBCFIイベント発生率は授乳群3.6% vs.非授乳群3.1%であった。

 Peccatori氏はより長期の追跡調査が必要としたうえで、今回の結果は妊娠や出産を希望する患者にとって重要な意味を持つとし、母乳育児に関するカウンセリングを個別の支援に組み入れていく必要があるとした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

POSITIVE試験(ClinicalTrials.gov)

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

乳がん術前療法でのDato-DXdからの逐次治療、HR・免疫反応・DRD全陰性例で対照群より優れる(I-SPY2.2)/ESMO2024

提供元:CareNet.com

 StageII/IIIの高リスクHER2-乳がんの術前療法において、datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)単独治療で始める3ブロックの逐次治療戦略により、38.1%で病理学的完全奏効(pCR)を達成し、その約半数がDato-DXd単独治療後に達成したことが第II相I-SPY2.2試験で示された。また、ホルモン受容体(HR)・免疫反応・DNA修復欠損(DRD)がすべて陰性のサブタイプでpCR率が対照群を上回ったという。米国・University of Alabama at BirminghamのKatia Khoury氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表した。本結果はNature Medicine誌オンライン版2024年9月14日号に同時掲載された。

 I-SPY2.2試験は、外科的切除時のpCR達成のために術前療法を個別化・最適化することを目的とし、反応予測サブタイプ(RPS)に基づいて治療ブロックを割り当て、ブロックAでは新規薬剤を投与、ブロックBとCでは従来の標準療法を行う連続多段階ランダム割り付け試験である。治療は標準療法とマッチングされ、RPSは免疫療法の有用性、DRD、HRの有無、HER2の有無により分類された。

 本試験の適格患者は、70遺伝子シグネチャー(MammaPrint)で高リスクのStageII/IIIのHER2-乳がんである。Dato-DXdアームにおける治療は、ブロックAではDato-DXdを3週ごと4サイクル静注、ブロックBはタキサンを含む化学療法(±ペムブロリズマブ)、ブロックCはアントラサイクリンを含む化学療法(±ペンブロリズマブ)とした。ブロックAまたはBの終了時にpCRが予測された患者は手術に移行し、予測されない場合はブロックB±ブロックCに進む。予測残存腫瘍量の評価のために治療への反応を乳房MRIと生検で評価し、治療方針は担当医師が決定した。主要評価項目はpCRで、以前のI-SPYデータから得られた各サブタイプの対照群と比較した。

 ASCO2024ではブロックAの結果が報告され、今回はDato-DXdアーム全体の結果が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・2022年6月~2023年9月に103例がDato-DXd群に無作為に割り付けられた。
・年齢中央値は46歳、腫瘍サイズ5cm以上が29%、リンパ節転移ありが64%、トリプルネガティブが48.5%、免疫+が45%であった。
・pCRを達成したのは全体で38.1%(37例)で、ブロックA後に達成したのは18例、ブロックB後は13例、ブロックC後は6例であり、48.7%がブロックAのみで達成した。
・感度分析において、すべて陰性(HR-/免疫-/DRD-)のサブタイプでDato-DXd のpCR率が対照群を上回った。その他のサブタイプでは上回らなかったが、治療戦略に従った患者のpCR率は対照群と同様であった。
・ブロックAで最も多かった有害事象は、悪心、疲労、発疹であった。口内炎と眼毒性はそれほど多くはなく、ほとんどが低Gradeだった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

I-SPY試験(Clinical Trials.gov)

Khoury K, et al. Nat Med. 2024 Sep 14.[Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

乳がん術前療法でのDato-DXd+デュルバルマブからの逐次治療、免疫反応陽性例で高いpCR率(I-SPY2.2)/ESMO2024

 StageII/IIIの高リスクHER2-乳がんの術前療法において、datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)+デュルバルマブで始める3段階の逐次治療戦略により、50%で病理学的完全奏効(pCR)を達成したことが第II相I-SPY2.2試験で示された。免疫療法に反応する免疫反応陽性サブタイプでpCR率が最も高く、標準化学療法なしで50%以上、アントラサイクリンなしで90%以上がpCRを達成した。また、ホルモン受容体(HR)・免疫反応・DNA修復欠損(DRD)がすべて陰性のサブタイプでpCR率が対照群を上回ったという。米国・Columbia University Vagelos College of Physicians and SurgeonsのMeghna S. Trivedi氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表した。本結果はNature Medicine誌オンライン版2024年9月14日号に同時掲載された。

 I-SPY2.2試験は、外科的切除時のpCR達成のために術前療法を個別化・最適化することを目的とし、反応予測サブタイプ(RPS)に基づいて治療ブロックを割り当て、ブロックAでは新規薬剤を投与、ブロックBとCでは従来の標準療法を行う連続多段階ランダム割付試験である。治療は標準療法とマッチングされ、RPSは免疫療法の有用性、DRD、HRの有無、HER2の有無により分類された。

 本試験の適格患者は、70遺伝子シグネチャー(MammaPrint)で高リスクのStageII/IIIのHER2-乳がんである。Dato-DXd+デュルバルマブアームにおける治療は、ブロックAではDato-DXd 6mg/kg+デュルバルマブ1,120mgを3週ごと4サイクルまで静注、ブロックBはタキサンを含む化学療法±ペムブロリズマブ、ブロックCはアントラサイクリンを含む化学療法±ペンブロリズマブとした。ブロックAまたはBの終了時にpCRが予測された患者は手術に移行し、予測されない場合はブロックB±ブロックCに進む。予測残存腫瘍量の評価のために乳房MRIと生検で治療への反応を評価し、治療方針は最終的に担当医師が決定した。主要評価項目はpCRで、以前のI-SPYデータから得られた各サブタイプの対照群と比較した。

 ASCO2024ではブロックAの結果が報告され、今回はDato-DXd+デュルバルマブアーム全体の結果が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・2022年9月~2023年8月に106例がDato-DXd+デュルバルマブ群に無作為に割り付けられた。
・年齢中央値は50.5歳で、免疫+のサブタイプが47例と最も多く、うち3分の1(17例)がHR+だった。
・pCR率は、HR+/免疫-/DRD-および免疫-/DRD+のサブタイプでは対照群を上回らなかったが、すべて陰性(HR-/免疫-/DRD-)のサブタイプでは対照群を有意に上回った。
・一方、pCRの達成時期をみると、pCRを達成した53例(50%)のうち、ブロックA後が25例、ブロックB後が22例、ブロックC後が6例であった。
・免疫+およびトリプルネガティブのサブタイプで高いpCR率(順に79%、62%)を示し、どちらのサブタイプもこのうち54%がブロックAで達成し、92%がブロックBまでに達成した。
・Dato-DXd+デュルバルマブ併用で報告された毒性プロファイルは先行研究と一致しており、全ブロックにおける免疫関連有害事象もこれまでの結果と一致していた。
・高血圧既往のある70歳の参加者1例がブロックBで心停止により死亡した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

I-SPY試験(Clinical Trials.gov)

Shatsky RA, et al. Nat Med. 2024 Sep 14. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

内分泌療法後の転移乳がん、T-DXdがPFSを有意に改善(DESTINY-Breast06)/NEJM

提供元:CareNet.com

 内分泌療法を1ライン以上受けた、ホルモン受容体(HR)陽性かつHER2低発現またはHER2超低発現の転移を有する乳がん患者において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は医師選択の化学療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、新たな安全性シグナルは確認されなかった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のAditya Bardia氏らDESTINY-Breast06 Trial Investigatorsが多施設共同無作為化非盲検第III相試験「DESTINY-Breast06試験」の結果を報告した。内分泌療法後の進行に対し、従来の化学療法の有効性は限定的となっている。T-DXdは、化学療法歴のあるHER2低発現の転移を有する乳がんに対する有効性が示されていた。NEJM誌オンライン版2024年9月15日号掲載の報告。

主要評価項目はHER2低発現集団におけるPFS

 研究グループは、324施設において、HR陽性かつHER2低発現またはHER2超低発現の転移を有する乳がんに対する内分泌療法で、病勢進行が認められた成人患者をT-DXd群または医師選択の化学療法群に1対1の割合で無作為に割り付けた。

 被験者の適格基準は、進行または転移乳がんに対する化学療法歴がなく、2ライン以上の内分泌療法で病勢進行が認められた患者、術後補助内分泌療法の開始から24ヵ月以内に病勢進行した患者、または内分泌療法とCDK4/6阻害薬による1次治療の開始から6ヵ月以内に病勢進行が認められた患者であった。

 HER2低発現は、免疫組織化学染色(IHC)で1+または2+、in situハイブリダイゼーション(ISH)陰性と定義し、HER2超低発現は膜染色を伴うIHC 0(>0および<1+)と定義した。

 主要評価項目は、HER2低発現集団における盲検下独立中央判定(BICR)によるRECIST 1.1に基づくPFS、副次評価項目はBICRによるITT集団(無作為化されたすべての患者、すなわちHER2低発現およびHER2超低発現集団)におけるPFS、ならびにHER2低発現集団およびITT集団における全生存期間(OS)、安全性などであった。

HER2低発現集団におけるPFS中央値はT-DXd群13.2ヵ月、化学療法群8.1ヵ月

 2020年8月20日~2024年3月18日の間に、計866例がT-DXd群(436例)および化学療法群(430例)に割り付けられた。化学療法群では、カペシタビンが59.8%、nab-パクリタキセルが24.4%、パクリタキセルが15.8%であった。HER2低発現集団は713例、HER2超低発現集団は153例であった。

 HER2低発現集団において、PFS中央値はT-DXd群13.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.4~15.2)、化学療法群8.1ヵ月(7.0~9.0)であり、T-DXd群が有意に延長した(病勢進行または死亡のハザード比:0.62、95%CI:0.51~0.74、p<0.001)。この結果は、ITT集団、ならびにHER2超低発現集団においても一致していた。

 OSについては、データが未成熟であった。

 Grade3以上の有害事象は、T-DXd群で52.8%、化学療法群で44.4%に発現した。間質性肺疾患または肺炎は、それぞれ49例(11.3%、3例はGrade5)、1例(0.2%、Grade2)に認められた。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】
(ご覧いただくには [ CareNet.com ]の会員登録が必要です)

Bardia A, et al. N Engl J Med. 2024 Sep 15. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

サシツズマブ ゴビテカン、トリプルネガティブ乳がんに承認/ギリアド

提供元:CareNet.com

 ギリアド・サイエンシズは2024年9月24日、化学療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性かつHER2陰性(トリプルネガティブ)乳がんの治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるサシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)の日本における製造販売承認を取得したと発表した。

 今回の承認は、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンと医師選択治療の有効性と安全性を比較した海外での第III相臨床試験(ASCENT)と、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンの有効性と安全性を評価した国内の第II相臨床試験(ASCENT-J02)の結果に基づくものである。

 トリプルネガティブ乳がんは、転移・再発を起こしやすく、予後不良とされる。近年使用可能になった免疫チェックポイント阻害薬のほかに、新しい治療選択肢の登場が待たれていた。

(ケアネット 細田 雅之)


【参考文献・参考サイトはこちら】

ASCENT-J02試験(Clinical Trials.gov)

ASCENT試験(ClinicalTrials.gov)

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブ、最終OS結果(KEYNOTE-522)/NEJM

提供元:CareNet.com

 高リスク早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者において、ペムブロリズマブ+化学療法による術前補助療法およびペムブロリズマブ単独による術後補助療法は、術前化学療法単独と比較して、全生存期間(OS)を有意に延長した。英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のPeter Schmid氏らKEYNOTE-522 Investigatorsが、21ヵ国181施設で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「KEYNOTE-522試験」の結果を報告した。KEYNOTE-522試験では、プラチナ製剤を含む化学療法にペムブロリズマブを追加することで、病理学的完全奏効(pCR)率と無イベント生存期間(EFS)が有意に改善することが示されており、今回はOSについての最終結果が報告された。NEJM誌オンライン版2024年9月15日号掲載の報告。

術前・術後ペムブロリズマブ併用の有効性をプラセボ併用と比較

 研究グループは、未治療の高リスク早期TNBC患者(T1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0~1)を、ペムブロリズマブ+化学療法群とプラセボ+化学療法群に2対1の割合で無作為に割り付けた。

 術前補助療法として、ペムブロリズマブ+化学療法群では、ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、週1回)+カルボプラチン(AUC 1.5、週1回またはAUC 5、3週ごと)を4サイクル、その後ペムブロリズマブ+シクロホスファミド(600mg/m2)+ドキソルビシン(60mg/m2)またはエピルビシン(90mg/m2)を3週ごと4サイクル投与し、プラセボ+化学療法群ではペムブロリズマブの代わりにプラセボを上記化学療法とともに投与した。

 根治手術後は術後補助療法として、適応があれば放射線療法を行うとともに、それぞれペムブロリズマブまたはプラセボを3週ごと9サイクル投与した。

 主要評価項目は、pCR率およびEFS、副次評価項目はOSで、ITT解析を行った。

5年OS率は86.6% vs.81.7%

 2017年3月~2018年9月に計1,174例が無作為化された(ペムブロリズマブ+化学療法群784例、プラセボ+化学療法群390例)。

 計画されていた今回の第7回中間解析(データカットオフ日:2024年3月22日)における追跡期間中央値は75.1ヵ月(範囲:65.9~84.0)で、死亡はペムブロリズマブ+化学療法群で115例(14.7%)、プラセボ+化学療法群で85例(21.8%)に認められた。

 5年OS率は、ペムブロリズマブ+化学療法群が86.6%(95%信頼区間[CI]:84.0~88.8)、プラセボ+化学療法群は81.7%(95%CI:77.5~85.2)であり、ペムブロリズマブ+化学療法群においてOSの有意な延長が認められた(p=0.002、層別log-rank検定、有意水準α=0.00503)。

 有害事象については、これまでに報告されているペムブロリズマブおよび化学療法の安全性プロファイルと一致していた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】
(ご覧いただくには [ CareNet.com ]の会員登録が必要です)

Schmid P, et al. N Engl J Med. 2024 Sep 15. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

StageIのTN乳がんにおける術前化療後のpCR率とOSの関係/ESMO2024

提供元:CareNet.com

 StageIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)において、術前化学療法後のpCR率は良好な長期転帰と関連することが示され、同患者における術前化学療法の実施が裏付けられた。オランダ・Netherlands Cancer InstituteのManon De Graaf氏が、1,000例以上のTNBC患者を対象としたレジストリ研究の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。

 本研究では、2012~22年に術前化学療法後に手術が施行されたcT1N0のTNBC患者をオランダがん登録のデータから特定し、pCR率と全生存期間(OS)との関連を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・アントラサイクリンおよびタキサンベースの術前化学療法を受けた患者1,144例が特定された。
・年齢中央値は50.0(22.0~77.0)歳、94.1%がcT1c腫瘍で、90.5%が乳管がんであった。41.3%がプラチナベースの術前化学療法を受け、24.7%が術後カペシタビン療法を受けていた。
・全体のpCR達成率は57.3%(656例)であった。
・多重ロジスティック回帰分析の結果、若年(50歳未満vs.50歳以上、オッズ比[OR]:1.75、95%信頼区間[CI]:1.36~2.26)および腫瘍グレードの高さ(グレード3 vs.1または2、OR:2.07、95%CI:1.55~2.76)はpCR率の高さと関連していたが、小葉がんはpCR率の低さと関連していた(小葉がんvs.乳管がん、OR:0.18、95%CI:0.03~0.69)(いずれもp<0.05)。
・プラチナベースの術前化学療法は、pCR率の改善と有意な関連はみられなかった(プラチナベースの術前化学療法ありvs.なし、57.6% vs.57.1%、OR:1.02、95%CI:0.80~1.29、p=0.9)。
・4年時OSは、pCR達成群で98% vs.残存病変群で93%となり、pCR達成群で有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.29、95%CI:0.15~0.36、log-rank検定のp<0.001)。
・残存病変群における術後カペシタビン療法の有無によるOSへの影響をみると、4年時OSはカペシタビン群93% vs.術後化学療法なし群91%であった(HR:0.65、95%CI:0.31~1.39、log-rank検定のp=0.3)。

 Graaf氏は、StageIのTNBC患者のうち術前化学療法が必要な患者を決めるため、またTILsや免疫関連遺伝子シグネチャ―などの予測バイオマーカーを評価するために、さらなる研究が必要と結んでいる。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)