1~2個のSLN転移陽性早期乳がん、ALND省略で生存アウトカムは?メタ解析

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 センチネルリンパ節(SLN)転移陽性の乳がん患者に対しては、これまで腋窩リンパ節郭清(ALND)が推奨されてきたが、乳房温存術(BCS)を受ける患者でSLN転移が限局的な患者に対しては、Z0011試験などの結果を踏まえALND省略が考慮されるようになっている。しかし、乳房全切除術(TM)を受ける患者に関しては、エビデンスが限られ、結果も一貫していない。中国・Qilu Hospital of Shandong UniversityのJinyi Xie氏らは、1〜2個のSLN転移陽性早期乳がん患者において、ALND群とセンチネルリンパ節生検(SLNB)単独群の生存アウトカムを比較することを目的としてメタ解析を実施。BCSを受ける患者とTMを受ける患者におけるサブグループ解析も行い、結果をOncologist誌オンライン版11月14日号で報告した。

 PubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceを対象に2024年12月までに発表された文献を系統的に検索し、計29件の研究(うち6件は無作為化比較試験、23件は観察研究)を特定した。これらの研究には計14万6,407例の患者が含まれる。全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)、無再発生存期間(RFS)などの生存アウトカムをランダム効果モデルまたは固定効果モデルを用いて統合解析し、異質性と出版バイアスはI2統計量、Begg検定およびEgger検定を用いて評価した。さらに、研究デザイン、手術の種類(TM vs.BCS)、T分類に基づくサブグループ解析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・ALND群とSLNB単独群の間でOS(オッズ比[OR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.83~1.04)、DFS(OR:1.02、95%CI:0.87~1.20)、RFS(OR:1.08、95%CI:0.89~1.30)に有意な差は認められなかった。
・しかしTMサブグループにおいては、ALND群でOSの改善と関連していた(OR:0.75、95%CI:0.62~0.90)。同様に、T3~T4の患者ではALND群でOSアウトカムが良好な傾向がみられた。
・DFSとRFSについては、サブグループ間で有意な差は認められなかった。

 著者らは、今回の結果は1~2個のSLN転移陽性早期乳がん患者において、SLNB単独はALNDと同等の生存成績を示し、BCSを受ける患者における安全性を支持するものとした。一方、TMを受ける患者やT3~T4の患者においてALNDが生存利益と関連する可能性が示唆された。しかし、選択バイアスや交絡による影響を受けている可能性があるため、現時点でこれらのサブグループ解析結果が治療方針を変更する根拠とはならないとし、質の高い前向き研究による検討が求められると結んでいる。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Xie J, et al. Oncologist. 2025 Nov 14. [Epub ahead of print]

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乳がん化学療法中の頭皮冷却で発毛が回復しにくい患者の因子は?

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 頭皮冷却は化学療法誘発性脱毛症(CIA)を軽減する効果的な介入として注目されており、脱毛抑制に加えて治療後の発毛促進も期待されている。しかし、一部の患者では頭皮冷却を実施しても持続性化学療法誘発性脱毛症(pCIA)が生じることがある。今回、韓国・成均館大学校のHaseen Lee氏らは、乳がん患者を対象に、頭皮冷却を実施してもpCIAが生じる患者の臨床的・遺伝的因子を解析し、NPJ Breast Cancer誌2025年11月12日号で報告した。

 研究グループは、韓国・ソウルのサムスンメディカルセンターで、アントラサイクリン系および/またはタキサン系抗がん剤による化学療法と頭皮冷却を併用したStageI~IIIの乳がん女性123例を解析した。主要評価項目はpCIAで、化学療法6ヵ月後に発毛が認められない、または不完全と定義した。

 主な結果は以下のとおり。

・化学療法中に頭皮冷却を受けた患者123例(平均年齢45.6歳)が解析に含まれた。主な化学療法はTAC療法(40例)およびTCHP療法(34例)であった。
・化学療法中、患者の58.5%がベースライン時の毛髪の太さの75%以上を維持し、CIAを発症しなかった。
・アントラサイクリン系レジメンは、非アントラサイクリン系レジメンよりもCIAの発症率が高かった。
・化学療法の6ヵ月後に15例(12%)がpCIAを発症した。
・内分泌療法を受けなかった患者と比較した結果、タモキシフェン単独療法はpCIAの独立したリスク因子として特定された(調整オッズ比:11.66、95%信頼区間:1.87~120.20)。
chr20p11(男性型脱毛症遺伝子)およびHLA-DQB1(円形脱毛症遺伝子)の変異はpCIAとの関連性がわずかに認められたが有意ではなかった。
・化学療法6ヵ月後、タモキシフェン単独療法群では毛髪の太さはベースライン時より減少したままであったが、タモキシフェン単独療法を除く内分泌療法群では毛髪の太さに有意差を認めなかった。
・毛髪密度は、内分泌療法群間で有意差を認めなかった。

 研究グループは「これらの結果は、タモキシフェンが化学療法後の毛包の回復を損なう可能性があることを示唆しており、頭皮冷却を受けている患者に対する個別カウンセリングと綿密な皮膚科的フォローアップの重要性を強調している」とまとめた。

(ケアネット 森)


【原著論文はこちら】

Lee H, et al. NPJ Breast Cancer. 2025;11:124.

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HR+/HER2-乳がんの局所領域再発、術後化学療法でiDFS改善/ESMO Open

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 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)乳がんの局所領域再発(LRR)に対して、根治的手術後の術後化学療法が無浸潤疾患生存期間(iDFS)を改善することが、JCOGの多施設共同後ろ向きコホート研究で示唆された。とくに、非温存乳房内再発(非IBTR)例、原発腫瘍に対する術後内分泌療法中の再発例や周術期化学療法未施行例において、iDFS改善と関連していた。がん研究会有明病院の尾崎 由記範氏らがESMO Open誌2025年11月7日号に報告。

 本研究の対象は初発乳がん手術後にLRRと診断されたHR+/HER2-乳がん患者で、2014~18年にLRRに対する根治的手術を受けた患者を、LRRに対する術後化学療法(CTx)実施の有無に基づいて2群に分けた。主要評価項目はiDFS、副次評価項目は全生存期間(OS)とした。主要解析は逆確率治療重み付けを組み込んだ二重ロバストCox比例ハザードモデルを用いて実施し、傾向スコアマッチングを用いた感度分析も実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象は計958例(平均年齢:55歳、男性:5例)で、初回手術からLRR診断までの中央値は9.5年(四分位範囲:3.1~10.1)であった。CTx群は235例(25%)、非CTx群は722例(75%)であった。
・全症例における5年iDFS率は75.4%(95%信頼区間[CI]:72.4~78.2)であり、多変量解析ではCTx群で良好なiDFSが認められた(ハザード比:0.70、95%CI:0.49~0.99、p=0.045)。これらの結果は感度解析でも支持された。
・サブグループ解析では、非IBTR例、初発乳がんへの術後内分泌療法中の再発例、初発乳がんへの周術期化学療法未施行例において、CTx群でiDFSが良好であった。
・OSについては多変量Cox比例ハザードモデルにおいて、有意差はみられなかったがCTx群で悪化傾向が認められた。

 著者らは本研究の限界として、本研究は後ろ向き研究デザインであり、残余交絡因子の存在の可能性があることや、IBTR症例において真の再発と新規の原発腫瘍を区別できなかったことなどを挙げ、「慎重な解釈が必要」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Ozaki Y, et al. ESMO Open. 2025;10:105889.

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乳房切除後の胸壁照射、10年OSを改善せず/NEJM

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 乳房切除術+現在推奨される補助全身療法を受けた中間リスクの早期乳がん患者において、胸壁照射は胸壁照射を行わない場合と比較し全生存期間(OS)を改善しないことが、第III相多施設共同無作為化試験「Selective Use of Postoperative Radiotherapy after Mastectomy:SUPREMO試験」で示された。英国・エディンバラ大学のIan H. Kunkler氏らが報告した。腋窩リンパ節転移が1~3個のpN1、あるいは病理学的リンパ節陰性のpN0に分類され、かつその他のリスク因子を有する乳がん患者に対する乳房切除術後の胸壁照射がOSに及ぼす影響は、現在推奨される周術期薬物療法下では不明であった。NEJM誌2025年11月6日号掲載の報告。

中間リスクの早期乳がん患者が対象、胸壁照射群と非照射群に無作為化

 研究グループは、中間リスク(pT1N1、pT2N1、pT3N0、またはpT2N0かつ組織学的Grade3±リンパ管浸潤)の乳がん患者を、胸壁照射(40~50Gy)群または胸壁照射を行わない群(非照射群)に1対1の割合で無作為に割り付け、10年間追跡した。

 アントラサイクリン系薬剤を含む術後または術前化学療法が推奨され、トラスツズマブは各施設の方針に従って投与された。エストロゲン受容体陽性患者には、最低5年間の術後内分泌療法が推奨された。

 主要評価項目はOS、副次評価項目は胸壁再発、領域再発、無病生存期間(DFS)、無遠隔転移生存期間(DMFS)、乳がんによる死亡、放射線関連有害事象などであった。

 2006年8月4日~2013年4月29日に計1,679例が無作為化され、同意撤回等を除いた胸壁照射群808例、非照射群799例がITT解析対象集団に含まれた。

10年OS率81.4%vs.81.9%、有意差認められず

 追跡期間中央値9.6年において、295例の死亡が確認された(胸壁照射群150例、非照射群145例)。Kaplan-Meier法により推定された10年OS率は、胸壁照射群81.4%、非照射群81.9%で、群間差は認められなかった(死亡のハザード比[HR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.82~1.30、p=0.80)。死亡例の多く(194/295例、65.8%)は乳がんによるものであった。

 胸壁再発は29例(胸壁照射群9例[1.1%]、非照射群20例[2.5%])に認められ、群間差は2%未満であった(HR:0.45、95%CI:0.20~0.99)。10年DFS率は胸壁照射群76.2%、非照射群75.5%(再発または死亡のHR:0.97、95%CI:0.79~1.18)、10年DMFS率はそれぞれ78.2%、79.2%(遠隔転移または死亡のHR:1.06、95%CI:0.86~1.31)であった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Kunkler IH, et al. N Engl J Med. 2025;393:1771-1783.

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女性のがん、39ヵ国の診断時期・治療を比較/Lancet

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 英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のClaudia Allemani氏らVENUSCANCER Working Groupは、女性に多い3種類のがん(乳がん、子宮頸がん、卵巣がん)の治療提供状況について初めて世界規模で評価した「VENUSCANCERプロジェクト」の解析結果を報告した。低・中所得国では、早期がんと診断された女性がガイドラインに準拠した治療を受けやすくなってはいたが、早期診断される女性の割合は依然として非常に低いままであることを示した。著者は、「解析で得られた知見は、WHOの世界乳がんイニシアチブや子宮頸がん撲滅イニシアチブといった、がん対策への国際的な取り組みの実施とモニタリングを支援する重要なリアルワールドエビデンスである」としている。Lancet誌2025年11月15日号掲載の報告。

ガイドライン準拠、診断~治療開始の期間中央値を評価、高所得国と低・中所得国の受療確率を分析

 研究グループは、CONCORDプログラムに乳がん・卵巣がん・子宮頸がんのデータを提供した全322のがん登録に対して、VENUSCANCERプロジェクトへのデータ提供を要請し、世界39の国と地域における103のがん登録から得られた2015~18年のいずれかの1年間に乳がん、子宮頸がん、または卵巣がんと診断された女性の高精度データを解析した。高精度データには、診断時Stage、Stage分類手順、腫瘍グレード、バイオマーカー(ER、PR、HER2)、各治療法(手術、放射線療法、化学療法、内分泌療法、抗HER2療法)の初回治療コースおよび関連する日付が含まれた。

 国または地域別に予後因子、国際臨床ガイドライン(ESMO、ASCO、NCCN)との整合性を示す主要な指標、および診断から治療開始までの期間中央値を評価した。年齢と腫瘍のサブタイプを調整し、高所得国と低・中所得国におけるガイドラインに沿った治療を受けられる確率を分析した。

低・中所得国では、早期診断される女性の割合が依然として非常に低い

 解析には、3種類のいずれか1つのがんと診断された女性計27万5,792例が包含された。乳がん診断者21万4,111例(77.6%)、子宮頸がん(上皮内がんを含む)診断者4万4,468例(16.1%)、卵巣がん診断者1万7,213例(6.2%)であった。

 高所得国では、早期・リンパ節陰性のがんは乳がん診断者および子宮頸がん診断者の40%超を占めていたが、卵巣がん診断者では20%未満であった。一方、低・中所得国では、これらの割合は3つのがんすべてでおおむね20%未満であった。ただしキューバ(乳がん30%)、ロシア(子宮頸がん36%、卵巣がん27%)では高かった。

 国際ガイドラインとの整合性には大きなばらつきが認められ、とくに早期乳がんに対する手術・放射線療法(ジョージア13%~フランス82%)、進行子宮頸がんに対する化学療法(モンゴル18%~カナダ90%)、転移のある卵巣がんに対する手術+化学療法併用(キューバ9%~米国53%)で顕著であった。

 何らかの手術が提供されたのは、高所得国では78%、低・中所得国では56%であり、早期がんに対する初期治療(臨床ガイドラインに準拠した)は、乳がんと比べて子宮頸がんと卵巣がんのほうがより均一に行われていた。高所得国と低・中所得国のいずれにおいても、高齢女性(70~99歳)は50~69歳の女性との比較において臨床ガイドラインに準拠した初期治療を受ける確率が低かった。

 早期がんの診断から治療までの期間中央値は、複数の高所得国では1ヵ月未満であったが、モンゴルの子宮頸がんおよびエクアドルの卵巣がんでは最大4ヵ月、モンゴルの乳がんでは最大1年であった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


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Allemani C, et al. Lancet 2025;406:2325-2348.

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HER2陽性進行乳がんの1次治療、T-DXd+ペルツズマブvs.THP/NEJM

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 HER2陽性の進行または転移を有する乳がんの1次治療として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)+ペルツズマブの併用療法は、標準治療のタキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(THP)併用療法と比べて進行または死亡のリスクが有意に低く、新たな安全性に関する懸念はみられなかった。米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏らDESTINY-Breast09 Trial Investigatorsが、第III相の「DESTINY-Breast09試験」の中間解析の結果を報告した。T-DXdは、既治療のHER2陽性の進行または転移を有する乳がん患者に対する有効性が示されているが、未治療の同患者に対するT-DXdの有効性および安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2025年10月29日号掲載の報告。

国際共同第III相無作為化試験、PFSを評価

 DESTINY-Breast09試験は、国際共同第III相無作為化試験で、HER2陽性の進行または転移を有する乳がんで、進行・転移病変に対する化学療法またはHER2標的療法の治療歴がない患者を対象に、T-DXd単剤療法とT-DXd+ペルツズマブ併用療法の有効性および安全性を評価した。術前・術後化学療法と全身性の抗がん剤治療終了後の再発までの期間が6ヵ月超の患者は対象とされ、進行・転移病変への内分泌療法歴は1ラインまで許容された。

 T-DXd+ペルツズマブまたはT-DXd+プラセボ併用療法とTHP併用療法が比較された。被験者は、T-DXd+ペルツズマブ併用療法群(盲検化)、T-DXd+プラセボ併用療法群(盲検化)、THP併用療法群(非盲検化)に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要評価項目は、盲検下独立中央判定による無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、および安全性であった。

 2021年4月26日~2023年10月26日に、279施設で1,157例が登録・無作為化された。

 本報告では、事前規定の中間解析であるT-DXd+ペルツズマブ併用療法とTHP併用療法のデータが報告された。T-DXd+プラセボ併用療法のデータは、PFSの最終解析まで盲検化される。

T-DXd+ペルツズマブ群のPFSのハザード比0.56

 T-DXd+ペルツズマブ群(383例)とTHP群(387例)のベースラインの人口動態学的および疾患特性は均衡が取れていた。この2群において、被験者の年齢中央値は54歳(範囲:20~85)、アジア人が約半数(49.6%と50.6%)で、de novoが400例(51.9%)、ホルモン受容体陽性が416例(54.0%)、PIK3CA変異陽性が237例(30.8%)などであった。

 データカットオフ時点(2025年2月26日)で、T-DXd+ペルツズマブ群で174/380例(45.8%)、THP群で128/383例(33.4%)が治療を継続していた。

 主要評価項目であるPFSは、T-DXd+ペルツズマブ群40.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:36.5~推定不能[NC])、THP群26.9ヵ月(21.8~NC)であり、T-DXd+ペルツズマブ群が有意に改善した(進行または死亡のハザード比:0.56、95%CI:0.44~0.71、p<0.00001[事前規定の優越性のp値閾値は0.00043])。

 ORRは、T-DXd+ペルツズマブ群85.1%(95%CI:81.2~88.5)、THP群78.6%(74.1~82.5)であり、完全奏効率はそれぞれ15.1%および8.5%であった。DOR中央値は39.2ヵ月(95%CI:35.1~NC)と26.4ヵ月(22.3~NC)であった。

安全性は既知のプロファイルと一致

 安全性は、各治療法の既知のプロファイルと一致していた。

 Grade3以上の有害事象は、T-DXd+ペルツズマブ群63.5%、THP群62.3%に発現した。最も多くみられたのは、T-DXd+ペルツズマブ群では好中球減少症、低カリウム血症、貧血であり、THP群では好中球減少症、白血球減少症、下痢であった。

 薬剤関連有害事象と判定された間質性肺疾患または肺臓炎は、T-DXd+ペルツズマブ群で12.2%(46例:44例がGrade1/2、2例がGrade5[死亡])、THP群で1.0%(4例:すべてGrade1/2)に発現した。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Tolaney SM, et al. N Engl J Med. 2025 Oct 29. [Epub ahead of print]

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がんと心房細動、合併メカニズムと臨床転帰/日本腫瘍循環器学会

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 がん患者では心房細動(AF)が高率に発症する。がん患者の生命予後が改善していく中、その病態解明と適切な管理は喫緊の課題となっている。第8回日本腫瘍循環器学会学術集会では、がん患者におけるAFの発症メカニズムおよび活動性がん合併AF患者の管理について最新の大規模臨床研究の知見も含め紹介された。

がん患者におけるAFの発症メカニズム

 東京科学大学の笹野 哲郎氏はがん患者におけるAF発症について、がん治療およびがん自体との関連を紹介した。

 肺がんや食道がんに対する心臓近傍への手術や放射線照射では、術後炎症や心筋の線維化がAF発症と関連している。AF発症が高率な薬剤としてドキソルビシンなどのアントラサイクリン系薬剤やイブルチニブなどのBTK阻害薬が代表的である。これらの抗がん剤は心筋細胞の脱落や線維化など構造的な変化と電気生理的な変化によってAFを発症する。

 また、腫瘍細胞の直接浸潤は催不整脈性を有し、AF発症の原因となる。これには腫瘍によるギャップ結合チャネルの低下や心房の線維化によるAF誘発の可能性が示唆されている。しかし、発症メカニズムについては未解明な部分も多い。

大規模レジストリで明らかになったAF患者へのがん合併の影響

 東邦大学大学院医学研究科の池田 隆徳氏は、全国的に実施された高齢者の心房細動のANAFIE(All Nippon AF in Elderly)レジストリのサブスタディとして、活動性がんの合併がAF患者の血栓塞栓症や出血性イベントおよび死亡に与える影響を発表した。

 ANAFIEレジストリに登録された3万例を超える高齢患者のうち11%に活動性がんの合併が確認された。非がん群と比較してがん群ではCHADS2スコアおよびHAS-BLEDスコアが高く、ハイリスク例が多かった。経口抗凝固薬(OAC)の投与実態を見ると、がん群においてDOACの使用率が高いことが明らかになった。

 臨床転帰を見ると、がん群と非がん群における有効性イベント(脳卒中、全身性塞栓症)の発現率は同程度であったが、安全性イベント(大出血、頭蓋内出血、全死亡、ネットクリニカルアウトカム)はがん群で高率であった。OACの投与は非がん群、がん群ともに7割がDOACであった。DOACとワルファリンの臨床イベントを比較すると、非がん群ではDOACのワルファリンに対し優位性が認められた。一方、がん群ではDOACのワルファリンに対する優位性は認められなかった。

(ケアネット 細田 雅之)


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75歳以上の乳がん検診は過剰診断か~日本人での検討

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 乳がん検診は死亡率低下と関連する可能性があるが、高齢者においては過剰診断が懸念される。今回、石巻赤十字病院の佐藤 馨氏らが、高齢化地域における75歳以上の女性において検討した結果、検診と死亡率低下に有意な関連はみられなかったものの、検診群において乳がんによる死亡は認められなかった。Preventive Medicine Reports誌2025年10月9日号に掲載。

 本研究では、石巻赤十字病院で乳がんと診断された75~98歳(中央値81歳)の女性289例(2011~20年)を後ろ向きに解析した。患者を検診群(40歳以上の全女性を対象とした2年ごとの全国規模集団ベース乳がんスクリーニングで診断)と非検診群(症状で診断もしくはCTなどの他疾患の画像検査で偶然発見)に分類した。主要評価項目は全死亡率であった。比較にはMann-Whitney のU検定、カイ二乗検定、Fisherの正確確率検定、生存率はKaplan-Meier法、log-rank検定、予後因子はCox比例ハザードモデルで解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・289例中46例(15.9%)が検診を受け、243例(84.1%)が検診を受けていなかった。
・検診群は、若年で腫瘍が小さく、リンパ節転移が少なく、手術回数が多かった。
・単変量解析では検診が死亡率の低下と関連していたが、多変量解析では関連がみられなかった。
・検診群では乳がんによる死亡は認められなかったが、非検診群では25例(10.3%)に認められた(p=0.02)。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Sato K, et al. Prev Med Rep. 2025;59:103273.

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monarchE試験のOS結果が発表/ESMO2025

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 HR+/HER2-でリンパ節転移陽性の高リスク早期乳がん患者を対象に、術後内分泌療法(ET)へのアベマシクリブ追加の有用性を検討したmonarchE試験の全生存期間(OS)の解析の結果、アベマシクリブ+ET併用療法は、ET単剤療法と比べて死亡リスクを15.8%低減させたことを、Royal Marsden NHS Foundation TrustのStephen R. Johnston氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。

 monarchE試験は、HR+/HER2-でリンパ節転移陽性の高リスク早期乳がん患者5,637例を、2年間の術後療法としてアベマシクリブ+ET群とET単独群に1:1に無作為に割り付けた第III相多施設共同無作為化非盲検試験。これまでの解析では、アベマシクリブ追加による無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無遠隔再発生存期間(DRFS)の5年時のベネフィットが報告されている。今回は、主要副次評価項目であるOSのほか、更新されたiDFSとDRFSの結果が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフは2025年7月15日で、追跡期間中央値は6.3年であった。
・OSイベントは、アベマシクリブ+ET群301例、ET単独群360例に発生した。アベマシクリブ併用によって死亡リスクが15.8%低減し、事前に規定されていた有意水準を満たした(ハザード比[HR]:0.842、95%信頼区間[CI]:0.722~0.981、p=0.0273)。7年OS率は、アベマシクリブ+ET群86.8%、ET単独群85.0%であった。
・転移の発生率は、アベマシクリブ+ET群6.4%、ET単独群9.4%であった。
・iDFSのベネフィットは7年時点でも持続していた(HR:0.734、95%CI:0.657~0.820、p<0.0001)。7年iDFS率は、アベマシクリブ+ET群77.4%、ET単独群70.9%であった。
・DRFSのベネフィットも持続していた(HR:0.746、95%CI:0.662~0.840、p<0.0001)。7年DRFS率は、アベマシクリブ+ET群80.0%、ET単独群74.9%であった。
・OS、iDFS、DRFSの改善は、すべてのサブグループで一貫して認められた。
・新たな安全性上の懸念や遅延毒性は認められなかった。

(ケアネット 森)


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免疫療法の対象とならない進行TN乳がん1次治療、Dato-DXdがPFSとOSを延長(TROPION-Breast02)/ESMO2025

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 免疫チェックポイント阻害薬の対象とならない局所進行切除不能または転移のあるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療で、ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)が化学療法に比べ有意に全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を延長したことが第III相TROPION-Breast02試験で示された。シンガポール・National Cancer Center SingaporeのRebecca Dent氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。

・試験デザイン:国際共同ランダム化非盲検第III相試験
・対象:免疫チェックポイント阻害薬の対象とならない未治療の局所再発切除不能/転移TNBC
・試験群:Dato-DXd(3週ごと6mg/kg点滴静注)323例
・対照群:治験責任医師選択化学療法(ICC)(nab-パクリタキセル、カペシタビン、エリブリン、カルボプラチンから選択)321例
・評価項目:
[主要評価項目]OS、盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS
[副次評価項目]治験担当医師評価によるPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフ時(2025年8月25日)の追跡期間中央値は27.5ヵ月で、PFSイベントが63%に、OSイベントは54%で発生していた。被験者の再発までの期間(DFI)別の割合は、de novoが34%、0~12ヵ月が21%(0~6ヵ月は15%)、12ヵ月超が約45%であった。
・BICRによるPFS中央値は、Dato-DXd群が10.8ヵ月とICC群(5.6ヵ月)より有意に延長した(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.47~0.69、p<0.0001)。この傾向は、臨床的に重要なサブグループで一貫していた。
・OS中央値は、Dato-DXd群が23.7ヵ月でICC群18.7ヵ月より5ヵ月延長し、有意に延長した(HR:0.79、95%CI:0.64~0.98、p=0.0291)。この傾向はほとんどのサブグループで一貫していた。
・BICR評価によるORRは、Dato-DXd群が62.5%とICC群(29.3%)の2倍以上、完全奏効率(CR)は3倍以上であった。この傾向はすべてのサブグループで一貫していた。
・DOR中央値は、Dato-DXd群12.3ヵ月、ICC群7.1ヵ月であった。
・治療期間中央値は、Dato-DXd群(8.5ヵ月)がICC群(4.1ヵ月)の2倍以上だったが、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は両群で同程度であり、中止率はICC群より低かった。Dato-DXd群の主なTRAEはドライアイ、口内炎、悪心であった。

 Rebecca Dent氏は「本試験の結果は、免疫療法の対象とならない局所進行切除不能または転移のあるTNBC患者における新たな1次治療の標準治療としてDato-DXdを支持する」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

TROPION-Breast02試験(ClinicalTrials.gov)

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