がん治療関連心機能障害のリスク予測モデル、性能や外部検証が不十分/BMJ

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 オランダ・アムステルダム大学のClara Gomes氏らは、がん治療関連心機能障害(CTRCD)のリスクを予測するために開発または検証されたすべての予測モデルのシステマティックレビューと、性能の定量的解析を目的としたメタ解析を行った。その結果、現存するCTRCD予測モデルは臨床応用に先立ち、さらなるエビデンスの蓄積が必要であることを報告した。現存するモデルについては、重要な性能指標に関する報告が不足し外部検証も限られていたことが正確な評価を妨げており、Heart Failure Association-International Cardio-Oncology Society(HFA-ICOS)ツールは、とくに軽度CTRCDに関する性能が不十分であった。著者は、「今後は、さまざまながん種を対象とする大規模なクラスター化データセットを用い、既存モデルの検証と更新を進め、その性能、汎用性および臨床的有用性を高めるべきである」とまとめている。BMJ誌2025年9月23日号掲載の報告。

CTRCDのリスク予測モデルを開発または検証した56件の研究について解析

 研究グループは、Medline(Ovid)、Embase(Ovid)、およびCochrane Central Register of Controlled Trialsを用い、データベース開始から2024年8月23日までに発表された文献を検索した。

 適格基準は、がん患者またはがん生存者におけるCTRCDリスクを推定するための予測モデルの開発・検証・更新を報告している論文で、欧州心臓病学会(ESC)のcardio-oncologyガイドラインに記載されているCTRCDのいずれかを含み、CTRCDが主要アウトカムもしくは複合心血管アウトカムの一部であり、対象集団が化学療法または分子標的治療(チロシンキナーゼ阻害薬、モノクローナル抗体、免疫療法など)を受けた患者で、予測モデルは少なくとも2つ以上の予測因子を含み、予測モデルの使用予定時期が全身性抗がん治療の開始前または治療後のサバイバー期であることであった。適格基準を満たせば、非がん患者向けに開発された心血管リスク予測モデルの外部検証研究も対象とした。放射線誘発性心毒性に関する研究は除外した。

 2人の評価者がそれぞれ研究のスクリーニングとデータ抽出を行い、Prediction model Risk Of Bias ASsessment Tool(PROBAST)を用いてバイアスリスクを評価した。予測モデルの性能はランダム効果メタ解析で統合した。

 1万935件の論文がスクリーニングされ、適格基準を満たした56件の研究が解析対象となった。このうち29件が1つ以上の予測モデルを開発し、20件が外部検証を実施し、7件が開発と外部検証の両方を実施していた。

ほぼすべてのモデルでバイアスリスク高、HFA-ICOSツールは軽度CTRCDを過小評価

 最終的にがん患者またはがん生存者におけるCTRCDリスク予測モデルとして51件が特定された。67%(34/51件)は成人データから開発され、その多くは乳がん(20/34件、59%)または血液悪性腫瘍(6/34件、18%)を対象とし、治療前リスクの予測を目的としていた(33/34件、97%)。一方、小児・青年・若年成人(39歳以下)を対象としたモデルでは、大半(16/17件、94%)ががん生存者を研究対象とし、血液悪性腫瘍や胚細胞腫瘍を含む多様ながん種(14/17件、82%)が含まれた。

 開発モデル51件のうち25%(13件)、外部検証44件のうち14%(6件)でのみ性能指標や較正指標が報告されていた。ほぼすべてのモデルで、バイアスリスクが高かった。

 開発モデル51件中12件(24%)(若年群4/17件[24%]、成人群8/34件[24%])が開発モデルに対して外部検証を受けていた。最も多く検証されたのはHFA-ICOSツール(11回)であり、主にHER2標的療法を受ける乳がん患者(5/11件、45%)で使用されていた。このツールは、すべての外部検証でリスクを過小評価する傾向を示し、とくに軽度CTRCDが多く報告された研究では、観察されたイベント発生率が予測リスクを上回っていた。抗HER2治療を受けた乳がん患者における統合C統計量は0.60(95%信頼区間:0.52~0.68)であった。同集団にて観察されたイベント発生率は、低リスク群で12%(予測値<2%)、中リスク群で15%(2~9%)、高リスク群で25%(10~19%)、超高リスク群で41%(≧20%)であった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Gomes C, et al. BMJ. 2025;390:e084062.

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ER+/HER2-進行乳がん、オラパリブ+デュルバルマブ+フルベストラントの有効性

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 転移を有するER+/HER2-乳がんに対し、PARP阻害薬、ER阻害薬、PD-L1阻害薬の併用が、関連するゲノム変化のある患者に有効であり、毒性プロファイルも許容できるものであったことが多施設共同単群第II相DOLAF試験で示された。フランス・Institut Regional du Cancer de MontpellierのSeverine Guiu氏らがClinical Cancer Research誌オンライン版2025年9月23日号で報告した。

 本試験では、転移を有するER+/HER2-乳がんに対する2次治療または3次治療として、オラパリブ+フルベストラント+デュルバルマブの3剤併用療法の有効性と安全性を評価した。対象は、相同組み換え修復(HRR)遺伝子の体細胞または生殖細胞系列変異、マイクロサテライト不安定性(MSI)状態、内分泌抵抗性関連変異のいずれかを有する患者であった。主要評価項目は24週無増悪生存(PFS)率であった。

 主な結果は以下のとおり。

・対象の172例すべてにおいて転移乳がんに対する内分泌療法歴があり、86%はCDK4/6阻害薬を受け、39%は生殖細胞系列BRCA1/2(gBRCA1/2)変異を有していた。
・24週PFS率は、評価可能集団で66.7%(95%信頼区間[CI]:58.6~74.1)、gBRCA1/2変異症例で76.3%(95%CI:63.4~86.4)であった。
・PFS中央値は、ITT集団で9.3ヵ月(95%CI:7.5~12.7)、gBRCA1/2変異集団で12.6ヵ月(95%CI:8.2~16.7)であった。
・全生存期間中央値は30ヵ月(95%CI:26.6~NR)であった。
・Gradeを問わず最も多くみられた有害事象は、悪心(59%)および無力症(43%)で、新たな毒性はみられなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Guiu S, et al. Clin Cancer Res. 2025 Sep 23. [Epub ahead of print]

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ビタミンAはがんリスクを上げる?下げる?

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 ビタミンA摂取とがんリスクの関連について、メタ解析では食事性ビタミンA摂取量が多いほど乳がんや卵巣がんの罹患率が低いと報告された一方、臨床試験ではビタミンAが肺がんや前立腺がんの死亡リスクを高めることが報告され、一貫していない。今回、病院ベースの症例対照研究の結果、食事性ビタミンA摂取量とがんリスクにU字型の関係がみられたことを、国際医療福祉大学の池田 俊也氏らが報告した。Nutrients誌2025年8月25日号に掲載。

 本研究は、ベトナム科学技術省と日本政府の支援を受けて実施されたプロジェクトにおける症例対照研究で、参加者をベトナム・ハノイの主要な4つの大学病院で募集した。症例は新規がん患者で、食道がん(195例)、胃がん(1,182例)、結腸がん(567例)、直腸がん(482例)、肺がん(225例)、乳がん(281例)、その他のがん(826例)の3,758例、対照はがんを罹患していない患者で、外傷、尿路結石、胆石症、ヘルニア、多汗症、良性前立腺肥大症、痔核、甲状腺結節などの非がん性疾患のための手術で新規に入院した患者2,995例であった。食事性ビタミンA摂取量は半定量食物摂取頻度調査票を用いて調査した。ビタミンA摂取量とがんリスクとの関連は、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出して評価した。制限付き3次スプライン曲線により、母集団のビタミンA摂取量の中央値(86.6μg/日)および平均値(108.4μg/日)に近い四分位である85.3~104.0μg/日が安全な範囲であると示唆され、この四分位を基準とした。

 主な結果は以下のとおり。

・ビタミンA摂取量とがん罹患率の間に、基準と比較してU字型の関連が認められた。
・最低摂取量と最高摂取量の両方ががんリスク上昇と関連しており、OR(95%CI)値はそれぞれ1.98(1.57~2.49)と2.06(1.66~2.56)であった。
・このU字型パターンは、性別、肥満度、喫煙の有無、飲酒の有無、血液型A型、食道がん、胃がん、乳がん、直腸がんで定義されたサブグループで一貫してみられたが、肺がんと結腸がんではみられなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Ikeda S, et al. Nutrients. 2025;17:2744.

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患者報告アウトカムはがん患者の独立した予後予測因子~メタ解析

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 がん患者4万4,030例を対象とした69件のランダム化比較試験を統合したシステマティックレビューとメタ解析により、ベースライン時の全般的健康状態・QOLスコア、身体機能、役割機能(role functioning)が良好な患者ほど予後が良好であった一方、悪心・嘔吐、疼痛、疲労などの症状が強い患者ほど予後が不良であったことが、カナダ・トロント大学のRyan S. Huang氏らによって明らかになった。JAMA Oncology誌オンライン版2025年9月11日号掲載の報告。

 これまで、症状や生活の質などの患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome:PRO)と全生存(OS)との関連は報告されているが、特定のPROドメインが予後予測因子となり得るかどうかは不明であった。そこで研究グループは、がん患者におけるベースライン時のPROとOSとの関連性を評価し、さまざまなPROドメインの予後予測的意義を定量化するために、システマティックレビューとメタ解析を実施した。

 PubMed(MEDLINE)、Ovid Embase、Cochrane Libraryを用いて、2000年1月1日~2024年6月1日に公開された研究を検索した。対象となる研究は、18歳以上のがん患者を登録し、ベースライン時に少なくとも1つのPROを測定し、評価項目にOSがあり、臨床的および疾患関連の交絡因子を調整した多変量解析を実施した前向きなランダム化比較試験であった。データは2025年1月15日に分析された。主要評価項目はベースライン時のPROとOSとの関連性で、プールしたハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)で推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・計69件のランダム化比較試験の4万4,030例がシステマティックレビューに含まれ、そのうち31件(44.9%)がメタ解析の基準を満たした。
・全般的健康状態・QOLスコアの高値はOSの延長と関連していた(HR:0.99、95%CI:0.98~0.99)。
・機能尺度のうち、身体機能(HR:0.94、95%CI:0.92~0.96)および役割機能(HR:0.96、95%CI:0.94~0.98)スコアの高値もOSの延長と関連していた。
・悪心・嘔吐(HR:1.12、95%CI:1.04~1.21)、疼痛(HR:1.07、95%CI:1.04~1.11)、疲労(HR:1.05、95%CI:1.00~1.10)などの症状負担が強いほどOSは不良であった。
・個々の症状の重症度が高いほど死亡リスクが高くなることが示された(HR:1.03、95%CI:1.01~1.04)。

 これらの結果より、研究グループは「これらの知見は、治療の意思決定とリスクの層別化にPROの評価を取り入れることを支持するものである」とまとめた。

(ケアネット 森)


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Huang RS, et al. JAMA Oncol. 2025 Sep 11. [Epub ahead of print]

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医療費適正効果額は1千億円以上、あらためて確認したいバイオシミラーの有効性・安全性

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 日本国内で承認されているバイオシミラーは19成分となり、医療費適正化の観点から活用が期待されるが、患者調査における認知度は依然として低く、医療者においても品質に対する理解が十分に定着していない。2025年8月29日、日本バイオシミラー協議会主催のメディアセミナーが開催され、原 文堅氏(愛知県がんセンター乳腺科部)、桜井 なおみ氏(一般社団法人CSRプロジェクト)が、専門医・患者それぞれの立場からみたバイオシミラーの役割について講演した。

医師がバイオシミラー使用をためらう理由で最も多いのは「同等性/同質性への懸念」

 化学合成医薬品の後発品であるジェネリック医薬品で有効成分の「同一性」の証明が求められるのに対し、分子構造が複雑なバイオ医薬品の後続品であるバイオシミラーでは同一性を示すことが困難なために、「同等性/同質性」を示すことが求められる。

 原氏は「同一性」が証明されたジェネリック医薬品が比較的受け入れられやすいのに対し、バイオシミラーでは「同等性/同質性」という言葉がわかりにくく、意味が浸透していないことが普及の障害になっていると指摘。実際に日本乳癌学会が会員医師を対象に実施したバイオシミラーに関する意識調査において、使用をためらう理由として最も多かったのは「先発品との製剤の同等性/同質性に懸念があるため(53.7%)」で、「臨床試験で評価していない有効性に対する懸念があるため(46.3%)」との回答が続いた。

 「同等性/同質性」とは、「先行バイオ医薬品に対して、バイオシミラーの品質特性がまったく同一であるということを意味するのではなく、品質特性において類似性が高く、かつ、品質特性に何らかの差異があったとしても、最終製品の安全性や有効性に有害な影響を及ぼさないと科学的に判断できること」と定義されている1)

先行バイオ医薬品にも品質の「ばらつき」はある

 バイオ医薬品は、化学合成医薬品より複雑で巨大な分子を持ち、動物細胞を用いて生産されるために、同じ医薬品でも製品ごとにばらつきが生じる可能性がある。そのため先行バイオ医薬品においても、そのばらつきが有効性や安全性に影響を与えない範囲内に収まるように、ICH(日米欧医薬品規制調和国際会議)のガイドライン(ICH-Q5E)により厳格に管理されている。同じガイドラインがバイオシミラーの同等性/同質性評価にも適用されており、「先発品も後発品も品質特性について一定のばらつき・ブレ幅の中で管理されている」と原氏は解説した。

 がん治療においてバイオ医薬品である抗体医薬品はもはや欠かせない存在であり、今後も承認の増加が見込まれ、医療費増加の一因となることは間違いない。バイオシミラーの薬価は先行バイオ医薬品の70%とされており、バイオシミラー全体の2024年度の医療費適正効果額は1,103億円に上る。原氏は、「日本の医療保険制度を持続可能なものとするために、バイオシミラーの普及・啓発はますます重要」として講演を締めくくった。

高額療養費制度の見直し議論とバイオシミラー

 続いて登壇した桜井氏は、持続可能な社会保障制度におけるバイオシミラーの位置付けについて講演した。大きな議論となった高額療養費制度見直し案は「負担能力に応じた負担」を患者側に求めるものであり、一部の層(70歳未満で年収約1,650万円以上および年収約650~770万円)では現行と比較して70%以上も負担限度額が大きくなるものであった。さらに、これらの案を適用した場合、WHOが定義する破滅的医療支出(catastrophic health expenditure:自己負担額が医療費支払い能力の40%以上の状態)に全体で17.0%、年収550万円未満の世帯では36.4%が該当するという推計データを紹介した。

 全国がん患者団体連合会として「高額療養費制度における負担上限額引き上げの検討に関する要望書」2)を提出した背景に、ここに手を入れる前に他にやるべきことはないのかを提起する意図があったと説明。社会保障制度を持続可能なものとしていくためには、OTC類似薬やバイオシミラーの活用も含め、さまざまな視点から国民的な議論が必要とした。

 バイオシミラーに関しては、今後何も対策を講じない場合には「バイオシミラーのラグ・ロス」が起こる可能性に懸念を示し、「学会がガイドラインなどでバイオシミラーをもっと明確に位置付けていくこと」「バイオシミラーを製造する企業に対するインセンティブの仕組みなどについて議論していくこと」が必要ではないかと提起した。

 なお、日本バイオシミラー協議会のホームページでは、「バイオシミラーの市販後の臨床研究に関する論文情報」や、患者説明用の動画などが公開されている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1)厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針」(薬食審査発第0304007号、平成21年3月4日)

2)全国がん患者団体連合会「高額療養費制度における負担上限額引き上げの検討に関する要望書」

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HR+/HER2+転移乳がんへのパルボシクリブ+トラスツズマブのOS(PATRICIA)/ESMO Open

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 HR+/HER2+転移乳がんに内分泌療法を併用または非併用でパルボシクリブ+トラスツズマブの有効性を検討した第II相PATRICIA試験の結果、最終的な全生存期間(OS)中央値は29.8ヵ月であったことを、スペイン・SOLTI Cancer Research GroupのTomas Pascual氏らが報告した。また、バイオマーカー分析の結果についても報告した。ESMO Open誌2025年9月1日号に掲載。

 本試験は、2015年7月~2018年11月に患者を登録し、スペインの17施設で実施された研究者主導の多施設共同非盲検第II相試験である。対象は、トラスツズマブ治療歴があり、2~4レジメンの治療後に病勢進行が認められた閉経後HER2+転移乳がん患者で、ER-症例はコホートA(パルボシクリブ+トラスツズマブ)、ER+症例はコホートB1(追加治療なし)またはコホートB2(レトロゾール)に1:1に無作為に割り付けた。主要評価項目は治験責任医師による6ヵ月時点の無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目はOSと長期PFSであった。

 主な結果は以下のとおり。

・本試験には71例が登録され、コホートAに15例、B1に28例、B2に28例が登録された。
・OS中央値は29.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:20.9~38.0)、4年OS率はコホートAが13.3%、B1が35.7%、B2が32.3%であった。
・OSは、PAM50のLuminalタイプが38.0ヵ月で、非Luminalタイプ(26.6ヵ月)より良好であった。
・探索的バイオマーカー分析では、Luminal関連遺伝子が長期の生存と関連した一方、Basal -likeおよび増殖関連遺伝子は耐性と関連していた。
・Luminal A、Luminal B、化学内分泌(CES)スコア高値では予後は良好であった。

 著者らは、「本結果は、HER2+乳がんにおける遺伝子発現プロファイリングの関連を強調し、バイオマーカー主導の患者選択を支持している。また、本試験の長期成績は、HR+/HER2+転移乳がんにおける化学療法以外の可能性を実証するものだ」と結論している。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Pascual T, et al. ESMO Open. 2025;10:105572.

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早期浸潤性乳がん、2次がんのリスクは?/BMJ

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 英国・オックスフォード大学のPaul McGale氏らは、National Cancer Registration and Analysis Service(NCRAS)のデータを用いた観察コホート研究の結果、早期浸潤性乳がん治療を受けた女性の2次原発がんリスクは一般集団の女性よりわずかに高いものの、リスク増加全体の約6割は対側乳がんであり、術後補助療法に伴うリスクは低いことを報告した。乳がんサバイバーは2次原発がんを発症するリスクが高いが、そのリスクの推定方法は一貫しておらず、2次原発がんのリスクと患者・腫瘍特性、および治療との関係は明確にはなっていない。BMJ誌2025年8月27日号掲載の報告。

早期浸潤性乳がん女性約47万6,000例について解析

 研究グループは、英国・NCRASのデータを用い1993年1月~2016年12月に登録された、最初の浸潤がんとして早期乳がん(乳房のみ、または腋窩リンパ節陽性であるが遠隔転移なし)の診断を受け乳房温存術または乳房切除術を受けた女性を特定し、2021年10月まで追跡調査を行った。

 診断時年齢が20歳未満または75歳超、追跡期間3ヵ月未満、初回乳がん診断後3ヵ月以内に他の種類の浸潤がん発症、術前補助療法を受けた患者等は除外し、47万6,373例を評価対象とした。

 主要評価項目は、2次原発がんの発生率および累積リスクで、一般集団と比較するとともに、患者特性、初発腫瘍の特徴、術後補助療法との関連性を評価した。

2次がんリスクは20年で一般集団よりわずかに増加

 評価対象47万6,373例のうち、22%が1993~99年に、21%が2000~04年に、24%が2005~09年に、33%が2010~16年に診断を受けた。初回乳がん診断時の年齢は、20~39歳が7%、40~49歳が20%、50~59歳が31%、60~69歳が30%、70~75歳が12%であった。

 2次浸潤性原発がんは6万7,064例に確認され、このうち同側新規乳がんは新規原発がんか初回がんの再発かを区別することが困難であるため解析から除外し、6万4,747例を解析対象集団とした。

 これら2次原発がんを発症した計6万4,747例の女性は、一般集団と比較した過剰絶対リスクは小さかった。

 初回乳がん診断後20年間で、乳がん以外のがんを発症した女性は13.6%(95%信頼区間[CI]:13.5~13.7)で、英国一般集団の予測値より2.1%(95%CI:2.0~2.3)高かった。

 対側乳がんの発症率は5.6%(95%CI:5.5~5.6)で、予測値より3.1%(95%CI:3.0~3.2)高く、過剰絶対リスクは若年女性のほうが高齢女性より高かった。

 乳がん以外のがんで20年間の過剰絶対リスクが最も高かったのは、子宮体がんと肺がんであった。子宮体がん、軟部組織がん、骨・関節がん、唾液腺がん、および急性白血病については、標準化罹患比が一般集団の1.5倍以上であったものの、20年間の過剰絶対リスクはいずれも1%未満であった。

 術後補助療法別の解析では、放射線療法は対側乳がんおよび肺がんの増加、内分泌療法は子宮体がんの増加(ただし対側乳がんは減少)、化学療法は急性白血病の増加と関連していた。これらは無作為化試験の報告と一致していたが、今回の検討で新たに軟部組織、頭頸部、卵巣および胃がんとの正の関連性が認められた。

 これらの結果から、2次がんコホート6万4,747例のうち約2%が、また過剰2次がんコホート1万5,813例のうち7%が、術後補助療法に起因する可能性があることが示唆された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

McGale P, et al. BMJ. 2025;390:e083975.

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日本の乳がんサバイバーにおける子宮体がんリスク

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 日本の乳がんサバイバーの子宮体がんリスクは、乳がんではない女性と比べて7.71倍高いことが、筑波大学の河村 千登星氏らによるマッチドコホート研究で示された。また内分泌療法別にみると、タモキシフェン投与患者では5.67倍、内分泌療法なしの患者で3.56倍リスクが高かった。Breast Cancer誌オンライン版2025年8月27日号に掲載。

 本研究は、複数の健康保険組合のレセプトおよび健診データによるJMDC Claims Databaseを用いたマッチドコホート研究である。2005年1月~2019年12月に登録された乳がんサバイバー2万3,729人と、年齢とデータベース登録時期で1:4でマッチさせた乳がんではない女性9万5,659人における子宮体がんリスクを、層別化Cox回帰分析を用いて比較した。さらに、マッチングから1年後に追跡を開始し、非層別化Cox回帰分析を用いて内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、内分泌療法なし)別のリスクを評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・乳がんサバイバー2万3,729人とマッチさせた乳がんではない女性9万5,659人(年齢中央値:49.5歳)における子宮体がん発生例数は、それぞれ56例、40例(1,000人年当たり0.73例、0.13例)であり、調整ハザード比(HR)は7.71(95%信頼区間[CI]:4.56~13.0)であった。
・内分泌療法別の子宮体がんの発生例数(1,000人年当たり例数)および乳がんではない女性に対する調整HR(95%CI)は以下のとおり。
 - タモキシフェン群(9,183例):26例(0.92例)、5.67(3.20~10.0)
 - アロマターゼ阻害薬群(4,582例):5例(0.43例)、2.17(0.79~5.95)
 - 内分泌療法なし群(5,763例):10例(0.61例)、3.56(1.66~7.65)

(ケアネット 金沢 浩子)


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Kawamura C, et al. Breast Cancer. 2025 Aug 27. [Epub ahead of print]

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cN0乳がんのセンチネルリンパ節生検省略、リアルワールドで見逃されるpN+の割合は?

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 INSEMA試験やSOUND試験の結果から、乳房温存術を受けるHR+/HER2-の臨床的腋窩リンパ節転移陰性(cN0)早期乳がんの一部の患者では、センチネルリンパ節生検(SNB)は安全に省略可能であるとされつつある。しかし、リンパ節転移の有無は術後治療の選択に極めて大きな影響を及ぼすため、SNB省略のde-escalation戦略の妥当性については依然として議論の余地がある。そこで、Nikolas Tauber氏(ドイツ・University Hospital Schleswig-Holstein)らは、INSEMA試験の基準を満たす患者にSNBを行い、その病理学的結果や術後治療への影響を解析することで、SNB省略時の影響をリアルワールドで推計した。その結果がEuropean Journal of Surgical Oncology誌2025年8月14日号に掲載された。

 本研究は、ドイツの大学の乳がんセンター3施設を対象とした後ろ向き多施設コホート研究であり、2020~24年にHR+/HER2-乳がんと診断され、INSEMA試験の基準(cT1、グレード1~2、50歳以上、cN0、乳房温存術を施行)を満たす867例を解析した。病理学的リンパ節転移陽性(pN+)の割合、術後に上方修正された病期やグレードの割合、術後治療への影響を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・患者の内訳は、50~60歳が305例、61~70歳が275例、71~80歳が236例、80歳超が51例であった。
・SNBによってpN+と診断されたのは124例(14.3%)であった。
・微小転移と孤立性腫瘍細胞を除外した場合、SNBを省略すると見逃される転移の割合は10.5%であった。この割合は、INSEMA試験やSOUND試験とほぼ同等であった。
・pN+は、若年、腫瘍径が大きい、Ki67値が高い患者で多かった。
・pN+となった124例のうち101例で化学療法やCDK4/6阻害薬、放射線照射などの術後治療が新たに考慮された。
・SNBで病期やグレードが術後に上方修正された割合は18.8%であり、もしSNBを省略していた場合には2次的にSNBが必要になった可能性があった。
・CDK4/6阻害薬の適応症例における再発予防に必要な手術数は、年齢と腫瘍径によって大きく異なり、111~333例に1例であった。

 これらの結果より、研究グループは「一部の患者ではSNBの省略は安全であると考えられる。しかし、今回のリアルワールドデータの解析では、遺伝子発現プロファイルなど他の予後予測ツールを併用しない限り、腋窩リンパ節の評価は依然として個別の治療方針の決定に重要であることを示唆している」とまとめた。

(ケアネット 森)


【原著論文はこちら】

Tauber N, et al. Eur J Surg Oncol. 2025;51:110392.

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T-DXd、化学療法未治療のHER2低発現/超低発現の乳がんに承認取得/第一三共

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 第一三共は2025年8月25日、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)について、日本において「ホルモン受容体陽性かつHER2低発現又は超低発現の手術不能又は再発乳癌」の効能又は効果に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。

 本適応は、2024年6月開催の米国臨床腫瘍学会(ASCO2024)で発表された、化学療法未治療のホルモン受容体陽性かつ、HER2低発現またはHER2超低発現の転移再発乳がん患者を対象としたグローバル第III相臨床試験(DESTINY-Breast06)の結果に基づくもので、化学療法未治療のHER2低発現またはHER2超低発現の乳がんを対象に承認された日本で初めての抗HER2療法となる。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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