早期手術を受けなかったDCIS、同側浸潤性乳がんの8年累積発生率/BMJ

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 診断後早期(6ヵ月以内)に手術を受けなかった非浸潤性乳管がん(DCIS)患者のコホートにおいて、同側乳房浸潤がんの8年累積発生率は8~14%の範囲であることが、米国・デューク大学医療センターのMarc D. Ryser氏らによる観察コホート研究の結果で示された。同国のDCISに対する現行ガイドラインのコンコーダントケア(concordant care、患者の意に即したケア)では、診断時に手術を行うことが義務付けられている。一方で、手術を受けなかった場合の長期予後については、ほとんど明らかになっていなかった。今回の検討では、将来の浸潤がんのリスクは、疾患(腫瘍)関連および患者関連の両方の因子と関連していたことも示され、著者は、「手術を受けなかったDCIS患者集団に対する、効果的なリスク層別化ツールと共同意思決定が不可欠である」とまとめている。BMJ誌2025年7月8日号掲載の報告。

診断時年齢中央値63歳1,780例を追跡

 研究グループは、初期手術を受けなかったDCISの女性患者における同側浸潤性乳がんリスクを明らかにするため、2008~15年に、原発性DCISと診断された患者の医療記録および全米がんレジストリーから直接抽出したデータを用いて、観察コホート研究を行った。

 米国外科学会と共同で行われた2018 Commission on Cancer Special Study on DCISの認定施設1,330ヵ所を対象とし、針生検で原発性DCISと診断され、診断後6ヵ月時点で生存しており、浸潤性乳管がんは認められず手術を受けていなかった女性患者1,780例についてデータが収集された。

 主要評価項目は同側浸潤性乳がん、副次評価項目は乳がん死であった。

 進行中のアクティブモニタリング試験の適格基準に基づくリスク群(低リスク群[画像診断検出時40歳以上、核グレード分類Grade1/2、HR陽性のDCIS]、高リスク群[その他の場合])別によるサブグループ解析も行った。

 1,780例の診断時年齢中央値は63歳、追跡期間中央値は53.3ヵ月であった。腫瘍グレードは898/1,533例(59%)が低~中グレードであり、HR陽性は1,342/1,530例(88%)であった。675/1,780例(38%)は6ヵ月以降に少なくとも1回の同側乳がん手術を受けていた。

8年累積発生率10.7%、低リスク群は8.5%、高リスク群は13.9%

 全1,780例において、同側浸潤性乳がんは115件(6.5%)、乳がん死は29例(1.6%)で発生した。同側浸潤性乳がんの8年累積発生率は10.7%(95%信頼区間[CI]:8.4~12.8)であった。

 浸潤性乳がんの発生率は、疾患関連および患者関連の因子によって異なっており、同側浸潤性乳がんの8年累積発生率は、低リスク群の女性(650例)では8.5%(95%CI:4.7~12.1)、高リスク群の女性(833例)では13.9%(10.5~17.2)であった。

 8年疾患特異的生存(DSS)率は、全集団では96.4%(95%CI:95.0~97.9)、低リスク群では98.1%(96.7~99.6)であった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Ryser MD, et al. BMJ. 2025;390:e083542.

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HR+/HER2-乳がんで術後S-1が本当に必要な再発リスク群は?/日本乳癌学会

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 経口フッ化ピリミジン系薬剤S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)は、POTENT試験によって、HR+/HER2-乳がんに対する標準的な術後内分泌療法に1年間併用することで再発抑制効果が高まることが示され、2022年11月に適応が拡大した。しかし、POTENT試験の適格基準はStageI~IIIBと幅広く、再発リスク群によっては追加利益が得られないという報告もあるため、S-1の追加投与が本当に必要な患者に関する検討が求められていた。名古屋大学医学部附属病院の豊田 千裕氏らの研究グループは、S-1適応拡大以前の症例によるPOTENT試験に準じた適格基準別の予後を比較してS-1追加投与の意義について検討し、その結果を第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 まず、名古屋大学医学部附属病院における、HR+/HER2-乳がんの術後補助療法としてのS-1併用の現状を報告した。

S-1併用の現状
・2022年9月~2024年9月に根治術を施行した原発性乳がんのうち、ER+/HER2-浸潤性乳がんのPOTENT適格(かつmonarchE不適格)で、術後補助療法として実際にS-1を併用したのは54例であった。
・年齢中央値は56歳、観察期間中央値は17ヵ月、周術期化学療法施行が22.2%であった。POTENT試験の適格が79.6%、一部適格(2)が11.1%、一部適格(1)が5.6%、その他3.7%であった。
・現在もS-1内服中が48.1%、減量なく完遂が24.1%、一段階減量で完遂が16.7%、中止が11.1%であった。中止理由は薬剤性肺炎または放射線肺臓炎疑い、肝機能異常(Grade2)、皮疹(Grade2)、悪心(Grade1/2)であり、Grade3以上の重篤な有害事象は認めなかった。
・現時点で再発症例は認めていない。

 小括として、S-1併用療法においてGrade3以上の重篤な副作用は認められなかったことや完遂率の高さについて触れたうえで、後半では名古屋大学医学部附属病院におけるS-1適応拡大前のHR+/HER2-乳がん症例(=S-1非併用症例)のPOTENT試験に準じた適格基準別の予後について報告した。

S-1適応拡大前の症例における予後比較
・2017年11月~2022年11月に根治術を施行したStageI~IIIBのHR+/HER2-浸潤性乳がんのうち、術後補助療法を施行して追跡可能であったのは520例であった。年齢中央値は54歳、観察期間中央値は53ヵ月であった。
・POTENT試験の適格基準に準じて分類した結果、適格群42.3%、一部適格(2)群7.1%、一部適格(1)群3.7%、適格なし群46.7%であった。そのうち周術期に経静脈的化学療法を施行した患者はそれぞれ45.5%、24.3%、0%、0.4%であった。
・5年全生存(OS)率は、適格群96.8%、一部適格群92.6%、適格なし群98.1%で有意差は認めなかった。一方、5年無病生存(DFS)率はそれぞれ90.2%、98.2%、98.9%と適格群では適格なし群よりも有意に不良であり(p<0.001)、適格群では再発抑制を目的とした術後補助療法の必要性が示唆された。
・全体集団をPOTENT試験の追加解析の複合リスク評価に応じてgroup1(低リスク群)、group2(中間リスク群)、group3(高リスク群)の3群に分類したサブグループ解析では、5年OS率はgroup1が97.8%、group2が96.9%、group3が97.9%で有意差は認めなかった。一方、5年DFS率はそれぞれ98.5%、89.2%、83.8%とgroup3では有意に不良であり、高リスク群では再発抑制を目的とした術後補助療法の必要性が示唆された。
・POTENT適格患者からmonarchE適格患者(腋窩リンパ節転移数が多いハイリスク患者)を除いたnon-monarchE群の5年OS率は、group1が97.7%、group2が87.8%、group3が78.8%であり、non-monarchE群でも中間および高リスク群で不良であった。
・non-monarchE群を複合リスク別に分類し、術後の点滴静注化学療法の有無で比較した場合のDFS率は、group1では化学療法ありのグループのほうが不良な傾向にあったが(p=0.07)、group2および3では差を認めなかった(p=0.349およびp=0.618)。
・non-monarchE群で術後の点滴静注化学療法を行わなかった場合は、group1のDFSが良好であった。

 これらの結果より、豊田氏は「本研究は観察期間が短く他病死も多かったことから、今後も長期フォローアップが望まれる」としたうえで、「HR+/HER2-乳がんにおける再発高リスク群では、術後補助療法にS-1を併用することで再発率を有意に低下させる可能性がある。患者背景やリスク評価を踏まえた適応選択が、S-1補助療法の最大の効果を引き出すために重要」とまとめた。

※POTENT試験の適格基準:以下の条件を満たすStageI~IIIBの症例

(ケアネット 森)


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術前療法でリンパ節転移陰転の乳がん、照射は省略できるか/NEJM

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 乳がん治療では、病理学的に腋窩リンパ節転移陽性の患者における領域リンパ節照射の有益性が確立しているが、術前補助化学療法後に病理学的にリンパ節転移なし(ypN0)の患者でも有益かは不明だという。米国・AdventHealth Cancer InstituteのEleftherios P. Mamounas氏らは、無作為化第III相試験「NSABP B-51-Radiation Therapy Oncology Group 1304試験」において、術前補助化学療法後に腋窩リンパ節転移陰性となった患者では、術後補助療法として領域リンパ節照射を追加しても、浸潤性乳がんの再発または乳がん死のリスクは低下しないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年6月5日号で報告された。

7ヵ国の無作為化第III相試験

 NSABP B-51-Radiation Therapy Oncology Group 1304試験は、日本を含む7ヵ国で実施され、2013年8月~2020年12月に参加者を登録した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。

 臨床病期T1~T3 N1 M0の切除可能な乳がんで、生検で病理学的に腋窩リンパ節転移陽性と確認され、標準的な術前補助化学療法(アントラサイクリン系またはタキサン系[あるいはこれら両方]をベースとするレジメン)を8週間以上受け、HER2陽性例は抗HER2療法も受けており、手術時に病理学的に腋窩リンパ節転移陰性(ypN0)であった患者を対象とした。

 被験者を、領域リンパ節照射(総線量50 Gy、25分割)を受ける群、またはこれを受けない群に無作為に割り付けた。

 主要評価項目は、浸潤性乳がんの再発または乳がん死のない期間(浸潤性乳がん無再発期間)であり、副次評価項目は、局所・領域リンパ節無再発期間、無遠隔再発期間、無病生存期間、全生存期間などとし、安全性の評価も行った。

副次評価項目にも有意差はない

 1,641例を登録し、照射群に820例、非照射群に821例を割り付けた。全体の年齢中央値は52歳(四分位範囲:44~60)で、40.3%が50歳未満であった。59.9%が臨床的T2腫瘍(腫瘍径2~5cm)、53.2%がホルモン受容体陽性、56.7%がHER2陽性で、79.0%がトリプルネガティブまたはHER2陽性のがんであった。78.2%で病理学的完全奏効(乳房とリンパ節)が得られ、57.7%が乳房の部分切除術、42.3%が全摘術を受け、55.4%でセンチネルリンパ節生検が行われた。

 1,556例(照射群772例、非照射群784例)を主解析の対象とした。追跡期間中央値59.5ヵ月の時点で、主要評価項目のイベントは109件発生した(照射群50件[6.5%]、非照射群59件[7.5%])。領域リンパ節照射は、浸潤性乳がん無再発期間の有意な延長をもたらさなかった(ハザード比[HR]:0.88[95%信頼区間[CI]:0.60~1.28、p=0.51])。

 また、主要評価項目のイベントのない生存率の点推定値は、照射群が92.7%、非照射群は91.8%であった。

 照射群では、局所・領域リンパ節無再発期間(HR:0.57[95%CI:0.21~1.54])、無遠隔再発期間(1.00[0.67~1.51])、無病生存期間(1.06[0.79~1.44])、全生存期間(1.12[0.75~1.68])についても、改善効果はみられなかった。

Grade3の放射線皮膚炎は5.7%

 プロトコールで規定された治療関連の死亡の報告はなく、予期せぬ有害事象は認めなかった。Grade4の有害事象は、照射群で0.5%、非照射群で0.1%に、Grade3はそれぞれ10.0%および6.5%に発現した。最も頻度の高いGrade3の有害事象は放射線皮膚炎で、照射群の5.7%、非照射群でも3.3%に発現した。

 著者は、「本試験は、生検で腋窩リンパ節転移が確認された患者では、術前補助化学療法でypN0に達した場合に、領域リンパ節照射を行っても、5年後の腫瘍学的なアウトカムは改善しないことを示している」「これらの結果は、術前補助化学療法を受けた患者ではリンパ節の病理学的な反応に基づいて領域リンパ節照射の実施を決められるという治療戦略への転換を支持するものである」「長期的なアウトカムの評価のために追跡調査を継続中である」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Mamounas EP, et al. N Engl J Med. 2025;392:2113-2124.

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術前化療後の乳房温存術、断端陽性で再発リスク3倍~日本人1,813例での研究

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 術前化学療法後に乳房温存療法(乳房温存手術および放射線療法)を受けた乳がん患者において、切除断端陽性例では温存乳房内再発リスクが3.1倍であったことが、1,813例を対象にした日本の多施設共同後ろ向き研究で示された。大阪はびきの医療センターの石飛 真人氏らがBreast Cancer誌オンライン版2025年6月9日号で発表した。

 本研究の対象は、新たにStageI~III乳がんと診断され、術前化学療法後に乳房温存療法を受けた1,813例で、切除断端の状態が温存乳房内再発に与える影響を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値8.0年(範囲:0.1~17.0)において、8年温存乳房内無再発生存率は95.9%であった。切除断端陽性例(87.6%)は陰性例(96.2%)と比べて有意に低かった(p=0.010)。
・多変量解析では、切除断端の状態が温存乳房内無再発生存率と有意に関連することが示された(ハザード比:3.1、95%信頼区間:1.3~7.2、p=0.0081)。

 今回の結果は、術前化学療法を受けずに最初から手術を行った症例での結果と一致する結果であった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Ishitobi M, et al. Breast Cancer. 2025 Jun 9. [Epub ahead of print]

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ESR1変異のER+/HER2-進行乳がん、vepdegestrant vs.フルベストラント(VERITAC-2)/NEJM

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 既治療のエストロゲン受容体(ER)陽性・HER2陰性の進行乳がん患者において、フルベストラントと比較してvepdegestrant(ユビキチン・プロテアソーム系を利用した標的タンパク質分解誘導キメラ分子[PROTAC]、経口ER分解薬)は、全患者では無増悪生存期間(PFS)の改善を認めなかったものの、エストロゲン受容体遺伝子(ESR1)変異を有するサブグループではPFSの有意な延長が認められ、安全性プロファイルも良好であることが、フランス・Institut de Cancerologie de l’Ouest Angers-NantesのMario Campone氏らVERITAC-2 Study Groupが実施した「VERITAC-2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年5月31日号に掲載された。

25ヵ国の非盲検無作為化第III相試験

 VERITAC-2試験は、日本を含む25ヵ国213施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2023年3月~2024年10月に患者を登録した(PfizerとArvinasの助成を受けた)。

 年齢18歳以上、外科的切除や放射線治療の適応がないER陽性、HER2陰性の局所・領域再発または転移を有する乳がんで、サイクリン依存性キナーゼ阻害薬(CDK4/6阻害薬)療法1ライン+内分泌療法1ライン(1ラインの追加まで可)の治療歴のある患者を対象とした。

 被験者を、vepdegestrant(200mg、28日を1サイクルとし、毎日1回)を経口投与する群、またはフルベストラント(500mg、1サイクル目は1および15日目、2サイクル目以降は1日目)を筋肉内注射する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。

 主要評価項目はPFSとし、ESR1変異を有する患者と全患者について、盲検下独立中央判定で評価した。

OS中央値は両群とも未到達

 624例を登録し、vepdegestrant群に313例、フルベストラント群に311例を割り付けた。全体の99.5%が女性で、年齢中央値は60.0歳であり、63.1%が臓器障害を伴う内臓転移を有し、全例が進行または転移を認める病変に対する治療を受けており、前治療ライン数は1が79.0%、2が20.4%であった。また、270例(43.3%)がESR1変異を有していた(vepdegestrant群136例、フルベストラント134例)。

ESR1変異例におけるPFS中央値は、フルベストラント群が2.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:1.9~3.5)であったのに対し、vepdegestrant群は5.0ヵ月(3.7~7.4)と有意に延長した(ハザード比[HR]:0.58[95%CI:0.43~0.78]、p<0.001)。

 一方、全患者のPFS中央値は、vepdegestrant群が3.8ヵ月(95%CI:3.7~5.3)、フルベストラント群は3.6ヵ月(2.6~4.0)であり、両群間に有意な差を認めなかった(HR:0.83[95%CI:0.69~1.01]、p=0.07)。

 全生存期間(OS)中央値は、両群とも未到達であった。また、盲検下独立中央判定によるESR1変異例の奏効率(完全奏効、部分奏効)は、vepdegestrant群18.6%、フルベストラント群4.0%であり、試験担当医師判定の値とほぼ一致していた。

Grade3/4の有害事象23.4%、投与中止2.9%

 vepdegestrant群で頻度の高い有害事象は、疲労感(26.6%)、ALT値上昇(14.4%)、AST値上昇(14.4%)、悪心(13.5%)、貧血(12.2%)であり、ほとんどがGrade1または2であった。消化器関連有害事象の発現率は低かった。

 Grade3/4の有害事象は、vepdegestrant群で23.4%、フルベストラント群で17.6%に発現し、このうち最も頻度が高かったのは、それぞれ好中球減少(1.9%)と低カリウム血症(1.9%)、および貧血(3.3%)とAST値上昇(2.6%)であった。担当医によって治療関連と判定された有害事象は、vepdegestrant群で56.7%、フルベストラント群で40.4%に発現し、このうちGrade3/4はそれぞれ7.7%および2.9%だった。

 重篤な有害事象は、vepdegestrant群で10.3%、フルベストラント群で9.1%に発現した。有害事象による死亡は、vepdegestrant群で8例、フルベストラント群で2例にみられたが、担当医が治療関連と判定したものはなかった。また、QT延長を、それぞれ9.9%および1.3%に認めたが、臨床的続発症は発生しなかった。恒久的な投与中止に至った有害事象は、それぞれ2.9%および0.7%に発現した。

 著者は、「本試験の知見は、現在、治療選択肢が限られているこれらの患者において、異なる作用機序と、良好な安全性プロファイルを有する新たな内分泌療法としてのvepdegestrantを支持するものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Campone M, et al. N Engl J Med. 2025 May 31. [Epub ahead of print]

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軽症の免疫チェックポイント阻害薬関連肺臓炎へのステロイド、3週vs.6週(PROTECT)/ASCO2025

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 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が広く使用されるようになり、免疫関連有害事象(irAE)マネジメントの重要性が高まっている。irAEのなかで比較的多いものの1つに、薬剤性肺障害(免疫関連肺臓炎)がある。免疫関連肺臓炎の治療としては、一般的にステロイドが用いられるが、適切な治療期間は明らかになっていない。そこで、免疫関連肺臓炎に対するステロイド治療の期間を検討する無作為化比較試験「PROTECT試験」が本邦で実施された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、藤本 大智氏(兵庫医科大学)が本試験の結果を報告した。本試験において、ステロイド治療期間を3週間とする治療レジメンは、6週間の治療レジメンに対する非劣性が示されなかった。

 軽症の免疫関連肺臓炎に対する治療について、各種ガイドラインに記載されているステロイド治療期間は無作為化比較試験によって評価されたものではなく、専門家の意見により4~6週間と設定されている。また、軽症の免疫関連肺臓炎は死亡率が低く、長期のステロイド治療はICIの効果を損なう可能性が考えられ、有害事象を増加させる懸念がある。そこで、PROTECT試験では、ステロイド治療期間を3週間に短縮することが可能であるか検討した。

・試験デザイン:国内無作為化比較試験
・対象:ICIを投与中または投与後に、Grade1/2の免疫関連肺臓炎(CTCAE第5版)が認められた患者
・試験群(3週群):プレドニゾロンを3週間かけて漸減・中止 51例
・対照群(6週群):プレドニゾロンを6週間かけて漸減・中止 55例(1例は解析から除外)
・評価項目:
[主要評価項目]治療成功割合(ステロイド治療開始から8週後までSpO2≧90%[room air]、かつステロイドの増量・延長が必要な免疫関連肺臓炎の悪化・再燃なし)
[副次評価項目]ステロイド中止までの期間、全生存期間(OS)、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・全体として男性の割合が高く、3週群76%、6週群85%であった。喫煙歴のある患者も多く、過去喫煙または現喫煙の割合は、それぞれ88%、83%であった。PS0/1/2の割合は、それぞれ27%/65%/8%、20%/72%/7%であった。肺がんの割合は、それぞれ59%、56%であった。
・主要評価項目の治療成功割合は、3週群66.7%、6週群85.2%であり、3週群の6週群に対する非劣性は検証されなかった(群間差:-18.5%、80%信頼区間[CI]:-29.0~-7.9、非劣性のp=0.629[非劣性マージン:-16%])。
・試験全体期間中における肺臓炎の再燃または悪化割合は、3週群41.1%、6週群24.1%であり、3週群が多かった(p=0.046)。
・ステロイド治療中止までの期間中央値は、3週群25日(95%CI:21~30)、6週群41日(同:41~42)であり、有意差はみられなかった(ハザード比[HR]:0.98、95%CI:0.63~1.52)。3週群では肺臓炎の再燃や悪化により、ステロイドの再開や増量に至った患者が多く、両群の生存曲線は交差した。
・OS中央値は両群共に未到達で、有意差はみられなかった(HR:1.03、95%CI:0.46~2.29)。
・Grade3以上の有害事象の発現割合は、3週群12%、6週群24%であり、3週群のほうが少ない傾向にあった。ステロイドの中止や減量に至った有害事象、死亡に至った有害事象はいずれの群にも認められなかった。高血糖(35%vs.50%)、皮膚障害(2%vs.13%)は6週群に多い傾向にあった。
・間質性肺疾患に関する簡易健康状態質問票「K-BILD(King’s Brief Intestinal Lung Disease)質問票」に基づくQOLは、3週群と比べて6週群のほうが良好な傾向にあった。

 本結果について、藤本氏は「ガイドラインに採用されている6週間のステロイド治療レジメンは、エビデンスに基づく免疫関連肺臓炎に対する標準治療であることを支持するものである」とまとめた。

(ケアネット 佐藤 亮)


【参考文献・参考サイトはこちら】

PROTECT試験(jRCT)

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HER2+早期乳がん術前療法、de-escalation戦略3試験の統合解析結果/ASCO2025

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 HER2陽性(HER2+)早期乳がんに対し、パクリタキセル+抗HER2抗体薬による12週の術前補助療法は有効性と忍容性に優れ、5年生存率も極めて良好であった。さらにStageI~IIの患者においては、ほかの臨床的・分子的因子を考慮したうえで、化学療法省略もしくは抗体薬物複合体(ADC)による治療を考慮できる可能性が示唆された。de-escalation戦略を検討したWest German Study Group(WSG)による3件の無作為化比較試験(ADAPT-HR-/HER2+試験、ADAPT-HR+/HER2+試験、TP-II試験)の統合解析結果を、ドイツ・ハンブルグ大学のMonika Karla Graeser氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

<各試験の概要>

■ADAPT-HR-/HER2+試験(134例)
遠隔転移のないHR-/HER2+乳がん患者を対象に、12週間の術前補助療法としてトラスツズマブ+ペルツズマブ(T+P群)、トラスツズマブ+ペルツズマブ+パクリタキセル(T+P+pac群)に5:2の割合で無作為に割り付け
■ADAPT-HR+/HER2+試験(375例)
遠隔転移のないHR+/HER2+乳がん患者を対象に、12週間の術前補助療法としてトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1群)、T-DM1+内分泌療法(T-DM1+ET群)、T+ET群に1:1:1の割合で無作為に割り付け
■TP-II試験(207例)
遠隔転移のないHR+/HER2+乳がん患者を対象に、12週間の術前補助療法としてT+P+ET群、T+P+pac群に1:1の割合で無作為に割り付け
 主要評価項目はいずれも病理学的完全奏効(pCR)で、生存成績は副次評価項目であった。

 主な結果は以下のとおり。

・3つの試験から計713例のデータが集められ、術前全身化学療法あり(sCTx群)149例、術前全身化学療法なし/ADC(sCTx-free/ADC群)564例であった。
・ベースラインの患者特性は、>50歳がsCTx群59.7%vs.sCTx-free/ADC群52.7%、StageI が74.5%vs.76.6%、HR+が71.8%vs.84.3%、cT2~4が56.4%vs.55.1%、cN1~3が28.2%vs.32.1%、Grade3が55.7%vs.74.3%であった。
・術後pCR達成症例がsCTx群66.4%vs.sCTx-free/ADC群31.4%、術後化学療法ありが47.1%vs.88.4%であった。
・追跡期間中央値60.7ヵ月における生存成績は以下のとおり。
[5年無浸潤疾患生存(iDFS)率]
sCTx群96.4%vs.sCTx-free/ADC群88.2%(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.29~1.08、p=0. 083)
[5年全生存(OS)率]
97.8%vs.96.8%(HR:0.88、95%CI:0.36~2.11、p=0.775)
・pCR達成状況別にみた生存成績は以下のとおり。
[5年iDFS率]
-pCR例:sCTx群97.8%vs.sCTx-free/ADC群93.7%(HR:0.76、95%CI:0.27~2.12、p=0.609)
-non-pCR例:93.3%vs.85.5%(HR:0.77、95%CI:0.31~1.94、p=0.587)
[5年OS率]
-pCR例:98.9%vs.98.7%(HR:1.10、95%CI:0.28~4.32、p=0.895)
-non-pCR例:95.5%vs.95.8%(HR:1.49、95%CI:0.44~5.03、p=0.523)
・iDFSと関連する臨床的因子を検討した多変量解析の結果、sCTx群ではpCR([vs.non- pCR]HR:0.14、p=0.013)、sCTx-free/ADC群ではpCR([vs.non- pCR]HR:0.51、p=0.026)、cN1([vs.cN0]HR:2.31、p<0.001)と有意に関連していた。
・sCTx-free/ADC群における、pCR後の5年iDFS率に対する術後化学療法実施の有意なベネフィットは確認されなかった(5年iDFS率:術後化学療法あり94.0%vs.なし93.2%、HR:1.25、95%CI:0.39~4.00、p=0.712)。

 Graeser氏は、化学療法を省略した術前補助療法群において、pCR達成例で良好な生存成績が得られたことは、さらなるde-escalation戦略検討の基盤となるとし、術前補助療法としてのトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)を評価する現在進行中のADAPT-HER2-IV試験への期待を示した。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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閉経前HR+乳がんの術後補助療法、EXE+OFSとTAM+OFSの15年追跡結果(SOFT/TEXT)/ASCO2025

 閉経前のHR+早期乳がんにおいて、術後補助内分泌療法+卵巣機能抑制(OFS)による再発抑制の持続および再発リスクが高い患者における全生存期間(OS)の改善が、SOFT試験とTEXT試験ですでに報告されている。今回、これらの試験の最終報告として、SOFT試験(追跡期間中央値:15年)およびSOFT試験とTEXT試験の統合解析(同:16年)の結果について、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのPrudence A. Francis氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

<各試験の概要>
■SOFT試験(登録期間:2003年11月~2011年1月、3,066例)
閉経前のHR+乳がん患者を対象に、5年間の術後補助化学療法としてタモキシフェン(TAM)単独群、TAM+卵巣機能抑制(OFS)群、エキセメスタン(EXE)+OFS群に無作為に割り付け
■TEXT試験(登録期間:2003年11月~2011年4月、2,672例)
閉経前のHR+乳がん患者を対象に、5年間の術後補助療法としてTAM+OFS群、EXE+OFS群に無作為に割り付け
■TEXT試験とSOFT試験の統合解析(4,670例)
TEXT試験とSOFT試験のEXE+OFS群とTAM+OFS群を統合して比較

 主な結果は以下のとおり。

■SOFT試験
・浸潤性乳がん無発症期間(BCFI)は、TAM単独群に対するTAM+OFS群のハザード比(HR)が0.82(95%信頼区間[CI]:0.69~0.98)、EXE+OFS群では0.70(95%CI:0.58~0.84)だった。15年BCFI率は、TAM単独群に比べ、TAM+OFS群で3.7%高く、EXE+OFS群で6.5%高かった。
・化学療法を受けていない低リスク患者における15年BCFI率は、TAM単独群(79.4%)に比べてTAM+OFS群(84.8%)、EXE+OFS群(87.8%)で改善した一方、15年無遠隔再発(DRFI)率は、TAM単独群(94.7%)、TAM+OFS群(94.7%)、EXE+OFS群(96.8%)でほぼ同様だった。
・35歳未満で診断されたHER2-患者において、OFSを追加された群でBCFI(15年BCFI率:TAM単独群51.3%、TAM+OFS群64.1%、EXE+OFS群69.6%)、OS(15年OS率:TAM単独群68.1%、TAM+OFS群77.9%、EXE+OFS群82.5%)が大きく改善していた。
■TEXT試験およびSOFT試験の統合解析(HER2-患者のみを解析)
・EXE+OFS群のほうがTAM+OFS群より、DRFI(HR:0.75、95%CI:0.63~0.90)およびOS(HR:0.89、96%CI:0.74~1.06)ともに改善していた。
・年齢別の解析では、40歳未満でEXE+OFS群とTAM+OFS群の差が大きかった。
・腫瘍グレード別の解析では、15年BCFI率がグレード1/2の患者に比べてグレード3の患者で差が大きかった(EXE+OFS群73.1%、TAM+OFS群61.0%)。

 この長期追跡の結果、内分泌療法にOFSを追加することで高い再発抑制効果が示され、その効果はEXE+OFSでより高かったが、OSにおける臨床的に意味のある改善は若年者や高グレードの高リスク患者に限られていた。35歳未満ではOFSの併用により再発を大幅に減少させ、持続的なOS延長につながることが示唆された。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

SOFT試験(ClinicalTrials.gov)

TEXT試験(ClinicalTrials.gov)

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早期TN乳がんの術前療法、SG+ペムブロリズマブでpCRが32%(NeoSTAR)/ASCO2025

提供元:CareNet.com

 早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)への術前サシツズマブ ゴビテカン(SG)+ペムブロリズマブ併用療法を評価した初の試験である第II相NeoSTAR試験において、SG+ペムブロリズマブ 4サイクルによる病理学的完全奏効(pCR)率は32%であり、非アントラサイクリン系レジメンを用いた術前化学療法が追加された患者を含めると50%がpCRを達成した。米国・Massachusetts General Hospital Cancer CenterのRachel Occhiogrosso Abelman氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

 SGは転移TNBCおよびHR+HER2-転移乳がんに承認されており、ペムブロリズマブは早期TNBCおよびPD-L1陽性転移乳がんに承認されている。本試験のArm A1では、早期TNBCへのSG単剤療法4サイクルにより、30%のpCR率が得られたことが確認されている。今回は、Arm A2において早期TNBCへのSG+ペムブロリズマブ併用を評価した結果が報告された。

・対象:T2以上もしくはリンパ節転移陽性の早期TNBC患者
・方法:SG(1、8日目に投与、開始用量10mg/kg)+ペムブロリズマブ(1日目に200mg)を21日ごと4サイクル投与
→ 画像診断で残存病変が疑われなかった患者は手術を実施、疑われた患者は生検を実施し、担当医の裁量で術前化学療法を追加し手術を実施
→ pCRを達成した患者は術後補助療法としてペムブロリズマブ+タキサン/カルボプラチンを4サイクル投与し、達成しなかった患者は担当医の裁量で術後補助化学療法を実施
・評価項目:
[主要評価項目]術前SG+ペムブロリズマブ後のpCR
[副次評価項目]術前化学療法追加の必要性、放射線学的奏効、安全性および忍容性、無イベント生存期間(EFS)など

 主な結果は以下のとおり。

・2023年5月19日~2024年8月13日に50例(年齢中央値:57歳)が登録された。診断時、96%がStageIIで、生殖細胞系列BRCAの病的バリアントが5例(10%)に認められた。
・50例がSG+ペムブロリズマブを完了し、うち24例が完了後に残存病変が疑われず、16例はSG+ペムブロリズマブのみでpCRを達成した。26例は残存病変が疑われ、術前化学療法が追加された。うち9例はSG+ペムブロリズマブおよび追加の術前化学療法(アントラサイクリン含有レジメンなし)後にpCRを達成した。
・SG+ペムブロリズマブのみでの術後のpCR率は32.0%(95%信頼区間[CI]:19.5~46.7)であり、術前化学療法を追加した患者を含めると50%(50例中25例)であった。
BRCAの病的バリアントを有する5例のうち、3例がSG+ペムブロリズマブ後にpCRが得られ(pCR率60%)、1例が術前化学療法追加後にpCRが得られた。
・18ヵ月EFS率は90.6%(95%CI:89.2~100)で、放射線学的奏効(完全または部分奏効)率は66%(95%CI:50~78)であった。
・予期せぬ毒性や新たな毒性は認められず、88%が試験レジメンを完了した。

 現在、SGとペムブロリズマブへの反応に関連するメカニズムとバイオマーカーを同定するため、本試験のトランスレーショナル解析が進行中という。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

NeoSTAR試験(ClinicalTrials.gov)

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PIK3CA変異の内分泌療法抵抗性HR+/HER2-乳がん、inavolisib追加でPFS・OS改善(INAVO120)/NEJM

提供元:CareNet.com

 PIK3CA変異陽性のホルモン受容体陽性/HER2陰性の局所進行または転移のある乳がんの治療において、パルボシクリブ+フルベストラントとの併用でinavolisib(PI3Kα阻害薬)はプラセボと比較し、全生存期間(OS)および奏効率を有意に改善することが、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのKomal L. Jhaveri氏らが実施した「INAVO120試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年5月31日号で報告された。

28ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験

 INAVO120試験は、PIK3CA変異陽性乳がんの治療におけるinavolisib追加の有効性と安全性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年1月~2023年9月に世界28ヵ国で参加者を登録した(F. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。

PIK3CA変異陽性、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の局所進行または転移のある乳がんで、補助内分泌療法の施行中または終了後12ヵ月以内に再発または進行した患者を対象とした。女性は閉経状況を問わず、男性も対象に含めた。被験者を、inavolisib+パルボシクリブ+フルベストラントまたはプラセボ+パルボシクリブ+フルベストラントの投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。inavolisibは、28日を1サイクルとして9mgを1日1回経口投与した。

 今回は、有効性と安全性の最新データと共に、OSの最終解析の結果が報告された。

無増悪生存期間の改善は維持された

 325例を登録し、inavolisib群に161例、プラセボ群に164例を割り付けた。患者背景因子は全般に両群でバランスが取れていた。追跡期間中央値は、inavolisib群34.2ヵ月、プラセボ群32.3ヵ月だった。

 OS中央値は、プラセボ群が27.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:22.8~38.7)であったのに対し、inavolisib群は34.0ヵ月(28.4~44.8)と有意に延長した(死亡のハザード比[HR]:0.67[95%CI:0.48~0.94]、p=0.02[事前に規定された統計学的有意差の境界値はp<0.0469])。

 無増悪生存期間の最新の解析結果は、既報の主解析の結果と一致していた(inavolisib群17.2ヵ月vs.プラセボ群7.3ヵ月、病勢進行または死亡のHR:0.42[95%CI:0.32~0.55])。

 奏効率も、inavolisib群で有意に優れた(62.7%[95%CI:54.8~70.2]vs.28.0%[21.3~35.6]、群間差:34.7%ポイント[95%CI:24.5~44.8]、p<0.001)。また、奏効期間中央値は、inavolisib群で長い状況が続いていた(19.2ヵ月vs.11.1ヵ月)。

高血糖、口内炎/粘膜炎が高頻度

 プラセボ群に比べinavolisib群で頻度の高い有害事象として、高血糖(63.4%vs.13.5%)、口内炎または粘膜炎(55.3%vs.28.8%)、下痢(52.2%vs.16.0%)、皮疹(26.7%vs.19.6%)、眼毒性(ドライアイ、霧視など)(29.2%vs.16.0%)がみられた。

 Grade3/4の有害事象(90.7%vs.84.7%)、重篤な有害事象(27.3%vs.13.5%)の頻度はinavolisib群で高く、inavolisibの投与中止に至った有害事象は6.8%、プラセボの投与中止に至った有害事象は0.6%で発現した。

 著者は、「無増悪生存と全生存の双方のKaplan-Meier曲線が約2ヵ月後には乖離したことが示す早期の臨床的有益性と、奏効率の高さは、とくに予後不良な疾患特性を有し、長期の良好なアウトカムを得るには早期かつ迅速な病勢コントロールが重要となる患者において、inavolisibを含むこの治療の有効性が期待できることを支持するものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Jhaveri KL, et al. N Engl J Med. 2025 May 31. [Epub ahead of print]

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