乳がん術後マンモグラフィ、頻度を減らすことは可能か/Lancet

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 乳がんの診断時年齢が50歳以上で根治手術から3年が経過し、再発のない女性では、年1回のマンモグラフィ検査に対し、2年または3年に1回の低頻度マンモグラフィ検査は、乳がん特異的生存率、無再発率、全生存率に関して非劣性であることが、英国・ウォーリック大学のJanet A. Dunn氏らが実施した「Mammo-50試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年2月1日号で報告された。

英国の非劣性を検証する無作為化第III相試験

 Mammo-50試験は、年1回のマンモグラフィ検査に対する年1回以下の低頻度マンモグラフィ検査の非劣性の評価を目的とする実践的な無作為化第III相試験であり、2014年4月~2018年9月の期間に英国の114の病院で参加者を登録した(英国国立衛生研究所[NIHR]Health Technology Assessment programmeの助成を受けた)。

 侵襲性または非侵襲性乳がんの初回診断時年齢が50歳以上で、根治手術を受けた後、再発のない状態で3年が経過した女性を対象とした。被験者を、年1回のマンモグラフィ検査を受ける群、または年1回以下の低頻度マンモグラフィ検査(乳房温存術を受けた患者は2年ごと、乳房全切除術を受けた患者は3年ごと)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付け、6年間追跡した。

 主要評価項目は2つで、乳がん特異的生存率および費用対効果とした。なお本論では、乳がん特異的生存率の解析結果を報告している。乳がん特異的生存は試験登録日から乳がんによる死亡までの期間とし、非劣性マージンは3%に設定した。

 副次評価項目として、無再発期間(初回局所領域再発、遠隔転移、新たな原発乳がんの発生のない期間)、全生存期間などを評価した。

5年乳がん特異的生存率:98.1%vs.98.3%

 5,235例(年齢中央値66歳[四分位範囲[IQR]:60~71])を登録し、年1回群に2,618例、低頻度群に2,617例を割り付けた。3,858例(73.6%)が60歳以上で、4,202例(80.3%)が乳房温存術を受け、4,576例(87.4%)が浸潤性の病変を有し、1,159例(22.1%)がリンパ節転移陽性、4,330例(82.7%)がエストロゲン受容体陽性、3,811例(72.8%)がホルモン療法を継続中であった。

 追跡期間中央値は5.7年(IQR:5.0~6.0、根治手術後8.7年)で、この間に343例が死亡し、うち116例は乳がんによる死亡であった(年1回群61例、低頻度群55例)。

 5年乳がん特異的生存率は、年1回群が98.1%(95%信頼区間[CI]:97.5~98.6)、低頻度群は98.3%(97.8~98.8)だった。補正後ハザード比(HR)は0.92(95%CI:0.64~1.32)であり、年1回群に対する低頻度群の非劣性が示された(非劣性のp<0.0001)。

大幅なコスト削減の可能性も

 5年無再発率は、年1回群で94.1%(95%CI:93.1~94.9)、低頻度群で94.5%(93.5~95.3)であった。補正HRは1.00(95%CI:0.81~1.23)であり、年1回群に対し低頻度群は非劣性であった(2%マージンにおける非劣性のp=0.0024)。また、5年全生存率は、年1回群94.7%(95%CI:93.8~95.5)、低頻度群94.5%(93.5~95.3)で、補正HRは1.07(95%CI:0.87~1.33)と、低頻度群の非劣性が確認された(2%マージンにおける非劣性のp=0.0078)。

 乳がんイベント345件のうち224件(64.9%)が緊急入院または症状の発現による病院システムへの再紹介によるもので、内訳は年1回群が175件中108件(61.7%)、低頻度群は170件中116件(68.2%)であった。

 著者は、「本試験のデータは、これらの女性では診断から3年以降にマンモグラフィによるサーベイランスの頻度を少なくしても、安全性が保たれ、生存、再発の発見、新たな原発がんの検出に有害な影響を及ぼさず、大幅なコスト削減の可能性があることを示している」「これらのエビデンスは、この患者群におけるマンモグラフィ・サーベイランスに関するガイドラインの改訂に使用可能と考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Dunn JA, et al. Lancet. 2025;405:396-407.

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NRG1融合遺伝子陽性がんへのzenocutuzumab、とくに期待できるがん種は?/NEJM

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 進行ニューレグリン1(NRG1)融合遺伝子陽性がんに対するzenocutuzumab(MCLA-128)の有効性および安全性を評価した第II相臨床試験の結果が、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのAlison M. Schram氏らeNRGy Investigatorsにより報告された。とくに非小細胞肺がん(NSCLC)および膵臓がんの患者において有効性が示され、有害事象の大部分は低Gradeであった。NRG1融合遺伝子は、複数の固形がんで確認されているリカレントながんドライバー遺伝子で、NRG1がヒト上皮成長因子受容体3(HER3)に結合し、HER2とのヘテロ二量体化と下流での腫瘍成長および増殖経路の活性化を引き起こす。zenocutuzumabは、HER2およびHER3を標的とする初の二重特異性抗体薬で、前臨床試験では複数の種類の腫瘍でzenocutuzumabの抗腫瘍活性が示されていた。NEJM誌2025年2月6日号掲載の報告。

腫瘍の種類を問わない進行NRG1融合遺伝子陽性がん患者を対象に試験

 研究グループは、腫瘍の種類を問わない進行NRG1融合遺伝子陽性がん患者を対象に、zenocutuzumabの有効性と安全性を評価する登録制の第II相臨床試験を行った。18歳以上、進行または転移固形腫瘍の診断を受け、試験担当医師の見解でそれら腫瘍種に対する標準治療を受けたもしくは標準治療の対象外であり、次世代シークエンス法によりNRG1融合遺伝子陽性と確認された患者を適格とした。

 登録被験者は、2週間ごとにzenocutuzumab 750mgを静脈内投与された。主要評価項目は、試験担当医師の評価による全奏効(完全奏効[CR]または部分奏効[PR])とした。副次評価項目は、奏効期間、無増悪生存期間(PFS)、安全性などであった。

30%で奏効、NSCLCでは29%、膵臓がんで42%

 2019年9月25日~2024年1月31日(データカットオフ日)に、12種の腫瘍を有する204例が登録され治療を受けた。このうち、4例(乳がん2例、NSCLC 2例)は評価可能であったが測定可能病変を有していなかった。そのほか、データカットオフ日前の24週間未満に初回zenocutuzumabの投与を受けたなどの理由で、計43例が除外され、主要有効性集団には10種の腫瘍を有する161例(主にNSCLC[94例]と膵臓がん[36例])が含まれた。

 測定可能病変を有し、データカットオフ日の24週間以前に登録された158例において、奏効が得られたのは30%(95%信頼区間[CI]:23~37)であった。奏効期間中央値は11.1ヵ月(95%CI:7.4~12.9)であり、データカットオフ日の時点で奏効例の19%が持続していた。

 奏効は、NSCLC(27/93例、29%[95%CI:20~39])、膵臓がん(15/36例、42%[25~59])など複数種の腫瘍と、複数のNRG1融合パートナーで認められた。

 PFS中央値は6.8ヵ月(95%CI:5.5~9.1)であった。

 有害事象は、主にGrade1または2であった。試験担当医師判断によるzenocutuzumab関連有害事象で多くみられたのは、下痢(患者の18%)、倦怠感(12%)、悪心(11%)であった。注入に伴う反応(複合事象)は患者の14%に認められた。1例が治療関連有害事象によりzenocutuzumabを中止した。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Schram AM, et al. N Engl J Med. 2025;392:566-576.

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早期乳がんの術後パルボシクリブ、PPI併用の影響は?(PALLAS)/ESMO Open

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 抗がん剤とプロトンポンプ阻害薬(PPI)の併用は薬物相互作用を引き起こし、抗がん剤の効果に影響を及ぼす可能性がある。今回、ベルギー・Hopital Universitaire de BruxellesのElisa Agostinetto氏らは、HR+/HER2-早期乳がんの術後補助内分泌療法へのパルボシクリブ追加を検討した第III相PALLAS試験の探索的解析として、パルボシクリブ投与患者においてPPI併用が生存転帰に影響するかどうかを検討し、ESMO Open誌2025年1月号に報告した。

 PALLAS試験では主要評価項目である無浸潤疾患生存期間(iDFS)は改善しなかったことが報告されている。今回の探索的解析は、パルボシクリブを1回以上投与された患者を対象に、PPI併用とiDFS、無遠隔再発生存期間(DRFS)、全生存期間(OS)との関連を明らかにすることを目的とした。さらにPPI使用と好中球減少症との関連も調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・パルボシクリブ+内分泌療法を受けた2,840例中525例(18.5%)にPPIが併用されていた。
・PPI投与は、高齢、閉経後、アロマターゼ阻害薬の使用、肥満度の高さ、PSの悪化と有意に関連していた(すべてp<0.001)。
・PPI併用は、iDFS、DRFS、OSとの有意な関連は示されなかった。
・好中球減少症発現割合(全Grade)は、試験開始前にPPIを開始した患者ではPPIを開始しなかった患者と比べて数値的に低かった(調整オッズ比:0.81、95%信頼区間:0.60~1.09)。

 著者らは「今回の探索的解析において、パルボシクリブとPPIを併用した患者における生存転帰の悪化は示されなかった。とはいえ、とくに早期乳がんにおける新規薬剤の研究においては、可能性のある薬物相互作用を注意深く考慮することが重要」と提言している。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Agostinetto E, et al. ESMO Open. 2025;10:104096.

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早期TN乳がんへの術後アテゾリズマブ、iDFSを改善せず(ALEXANDRA/IMpassion030)/JAMA

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 StageII/IIIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者において、術後化学療法へのアテゾリズマブ上乗せは、ベネフィットが示されなかった。ベルギー・Institut Jules BordetのMichail Ignatiadis氏らが無作為化試験「ALEXANDRA/IMpassion030試験」の結果を報告した。TNBC患者は、転移のリスクが高く、若年女性や非ヒスパニック系の黒人女性に多いことで知られている。さらにStageII/IIIのTNBC患者は、最適な化学療法を受けても約3分の1が早期診断後2~3年に転移再発を経験し、平均余命は12~18ヵ月である。そのため、化学療法の革新にもかかわらずアンメットニーズが存在する。直近では、TNBC患者の早期治療戦略の1つは術後化学療法であったが、免疫療法を上乗せすることのベネフィットについては明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2025年1月30日号掲載の報告。

31ヵ国330施設超で行われた第III相国際非盲検無作為化試験、iDFSを評価

 ALEXANDRA/IMpassion030試験は、31ヵ国330施設超で行われた第III相の国際非盲検無作為化試験であり、初回治療として手術を受けた18歳以上のStageII/IIIのTNBC患者を対象とした。被験者登録は2018年8月2日~2022年11月11日、最終フォローアップは2023年8月18日であった。

 被験者は1対1の割合で、標準化学療法(20週間)に加えアテゾリズマブの投与(最長1年間)を受ける群(アテゾリズマブ群、1,101例)または標準化学療法のみを受ける群(化学療法群、1,098例)に無作為化された。標準化学療法は、パクリタキセル80mg/m2を週1回12サイクルに続き、アントラサイクリン(エピルビシン90mg/m2またはドキソルビシン60mg/m2)+シクロホスファミド600mg/m2を2週間ごと4サイクル投与した。アテゾリズマブは、840mgを2週ごと10サイクル、その後1,200mgを3週間ごととし、最長で計1年間投与した。

 主要評価項目は、無浸潤疾患生存期間(iDFS)で、無作為化から同側または対側乳房の浸潤乳がん発生、遠隔転移、またはあらゆる原因による死亡までの期間と定義した。

 予定被験者登録数は2,300例であったが、独立データモニタリング委員会の勧告に基づき2,199例で登録は中止となった。全患者が、計画された早期中間解析および無益性解析の後にアテゾリズマブの投与を中止された。試験は、前倒しされた最終解析まで継続した。

iDFSイベント発生、アテゾリズマブ群12.8%、化学療法群11.4%

 登録被験者の年齢中央値は53歳で、自己申告に基づく人種/民族は、ほとんどがアジア人または白人であり、ラテン系またはヒスパニックはわずかであった。

 iDFSイベントが発生したのは、アテゾリズマブ群141例(12.8%)、化学療法群125例(11.4%)であり(追跡期間中央値32ヵ月)、最終的なiDFSの層別化ハザード比は1.11であった(95%信頼区間:0.87~1.42、p=0.38)。

 化学療法群と比較して、アテゾリズマブ群ではGrade3または4の治療関連有害事象が多かったが(54% vs.44%)、死亡に至った有害事象(0.8% vs.0.6%)および試験中止に至った有害事象の発現は同程度であった。化学療法曝露は両群で同等であった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Ignatiadis M, et al. JAMA. 2025 Jan 30. [Epub ahead of print]

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免疫チェックポイント阻害薬関連の1型糖尿病、生存率との関連~日本人2万例を解析

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 免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病(ICI-T1DM)の発現割合、危険因子、生存率への影響について、奈良県立医科大学の紙谷 史夏氏らが後ろ向き大規模コホートで調査した結果、ICI-T1DMは0.48%に発現し、他の免疫関連有害事象(irAE)と同様、ICI-T1DM発現が高い生存率に関連していることが示唆された。Journal of Diabetes Investigation誌2025年2月号に掲載。

 本研究は、わが国の診療報酬請求データベースの1つであるDeSCデータベースを用いた後ろ向き大規模コホート研究で、2014~22年にICIを投与された2万1,121例が登録された。ICI-T1DM発現の危険因子とその特徴をロジスティック回帰分析で評価し、ICI初回投与の翌日以降の新たなirAEの発現をアウトカムとした。

 主な結果は以下のとおり。

・ICI投与開始後、2万1,121例中102例(0.48%)にICI-T1DMが認められた。
・PD-(L)1阻害薬とCTLA-4阻害薬の併用は、PD-1阻害薬単独と比較してICI-T1DMのリスクが高かった(オッズ比[OR]:2.36、95%信頼区間[CI]:1.21~4.58、p=0.01)。
・過去に糖尿病(OR:1.59、95%CI:1.03~2.46、p=0.04)または甲状腺機能低下症(OR:2.48、95%CI:1.39~4.43、p<0.01)と診断された患者はICI-T1DMリスクが高かった。
・Kaplan-Meier解析では、ICI-T1DM患者はそうでない患者よりも生存率が高かった(log-lank検定p<0.01)。
・多変量Cox回帰分析では、ICI-T1DM発現は低い死亡率と関連していた(ハザード比:0.60、95%CI:0.37~0.99、p=0.04)。

(ケアネット 金沢 浩子)

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Kamitani F, et al. J Diabetes Investig. 2025;16:334-342.

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日本人HER2+進行乳がんへのペルツズマブ再投与、OS最終解析結果(PRECIOUS)/JCO

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 ペルツズマブ治療歴のある、HER2陽性局所進行/転移乳がんに対し、ペルツズマブ再投与(ペルツズマブ+トラスツズマブ+主治医選択による化学療法)はトラスツズマブ+主治医選択による化学療法と比較して治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが、第III相PRECIOUS試験の主要解析結果として報告されている。今回、熊本大学の山本 豊氏らは、同試験の全生存期間(OS)の最終解析結果をJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年1月24日号で報告した。

 PRECIOUS試験では、局所進行/転移乳がんに対する1次または2次治療としてペルツズマブを含む治療歴を有する患者を、ペルツズマブ再投与群(PTC群)とトラスツズマブ+主治医選択による化学療法群(TC群)に1:1の割合で無作為に割り付けた(PTC群110例、TC群109例)。主要評価項目は治験責任医師評価によるPFS、重要な副次評価項目はOS、独立中央評価によるPFSであった。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値25.8ヵ月において、PTC群ではTC群と比較してOS中央値を延長した(36.2ヵ月vs.26.5ヵ月、ハザード比[HR]:0.73、片側95%信頼区間[CI]上限:0.97)。
・治験責任医師評価によるPFS中央値のアップデート解析結果についても、PTC群で良好であった(5.5ヵ月vs.4.2ヵ月、HR:0.81、片側95%CI上限:1.02)。
・独立中央評価によるPFS中央値については、両群間で差はみられなかった(4.4ヵ月vs. 4.4ヵ月、HR:1.03、片側95%CI上限:1.36)。

 著者らは、ペルツズマブ+トラスツズマブによる二重HER2阻害療法が、ペルツズマブを含むレジメンによる治療歴を有するHER2陽性局所進行/転移乳がん患者においてOS改善に寄与する可能性が示唆されたと結論付けている。独立中央評価によるPFS中央値の改善が認められなかったことについては、解析対象集団やPFSイベントの評価方法の違いによる影響を指摘している。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Yamamoto Y, et al. J Clin Oncol. 2025 Jan 24. [Epub ahead of print]

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T-DXd治療後のHER2発現の変化

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 転移のある乳がん患者におけるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の治療後のHER2発現状況の変化について、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMohamed A. Gouda氏らが後ろ向きに検討したところ、約半数の患者でHER2の消失や低下がみられたという。Clinical Cancer Research誌オンライン版2025年1月22日号に掲載。

 本研究では、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでT-DXd治療を受けた転移乳がん患者を後ろ向きに検討した。T-DXd治療の前後で生検を実施しIHC染色を用いてHER2発現を評価した患者を対象とした。

 本研究の結果、対象患者41例のうち、T-DXdによる治療後に11例(治療前にIHCスコアが1+、2+、3+だった34例のうち32.4%)でHER2の消失がみられた。さらに、10例(34例中29.4%)でHER2スコアの減少がみられた。

 著者らは「T-DXdによる治療を受けている転移乳がん患者において、HER2の消失および低下が多く見られる。T-DXdの治療後にHER2過剰発現が必要なHER2標的療法を実施する際は、HER2の再評価を考慮すべき」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Gouda MA, et al. Clin Cancer Res. 2025 Jan 22. [Epub ahead of print]

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T-DXd、米国で化学療法未治療のHER2低発現/超低発現の乳がんに承認取得/第一三共

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 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)が、米国食品医薬品局(FDA)より、1つ以上の内分泌療法を受けた化学療法未治療のホルモン受容体(HR)陽性かつHER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)またはHER2超低発現(膜染色を認めるIHC 0)の転移/再発乳がんに承認されたことを、2025年1月28日、第一三共が発表した。

 本適応は2024年10月にFDAより承認申請が受理され、画期的治療薬(Breakthrough Therapy)指定および優先審査のもとで承認された。この承認は、2024年6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2024)で発表された、化学療法未治療のHR陽性かつHER2低発現またはHER2超低発現の転移/再発乳がん患者を対象とした国際第III相試験(DESTINY-Breast06)の結果に基づくもの。

※日本における効能・効果は、以下のとおり(2025年1月現在)。
◯化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌
◯化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能又は再発乳癌
◯がん化学療法後に増悪したHER2ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
◯がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌

(ケアネット 金沢 浩子)


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T1cN0M0のHER2+乳がんへの術前vs.術後補助療法、OSに差は?

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 T1cN0M0のHER2+乳がん患者において、術前補助療法は術後補助療法と同等の全生存期間(OS)および乳がん特異的生存期間(BCSS)を示したことを、中国・ハルビン医科大学のXuelian Wang氏らが明らかにした。これまで、腫瘍径が小さく、リンパ節転移のないHER2+乳がん患者おける術前補助療法の術後補助療法に対する優位性については議論が続いていた。Cancer誌2025年1月1日号掲載の報告。

 研究グループは、米国・Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベースから、2010~20年に化学療法と手術を受けたT1cN0M0のHER2+乳がん患者のデータを抽出した。傾向スコアマッチングにより、術前補助療法群と術後補助療法群の背景因子が一致するコホートを作成した。術前補助療法群と術後補助療法群のOSとBCSSを、カプランマイヤー法とCox比例ハザードモデルによって解析した。さらに、ロジスティック回帰モデルを使用して、術前補助療法に対する病理学的完全奏効(pCR)の予測因子を探索した。

 主な結果は以下のとおり。

●バランスのとれた2,140組が傾向スコアマッチングした。
●術前補助療法群と術後補助療法群のOSおよびBCSSは同等であった。
●術前補助療法後にpCRを達成した場合、術後補助療法群よりもOSおよびBCSSが有意に良好であった。
 ・OSのハザード比(HR):0.52、95%信頼区間(CI):0.35~0.77、p<0.001
 ・BCSSのHR:0.60、95%CI:0.37~0.98、p=0.041
●白人患者およびHR-が独立したpCR予測因子であることが明らかになった。

(ケアネット 森)


【原著論文はこちら】

Wang X, et al. Cancer. 2025;131:e35581.

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HER2+早期乳がんへの術後T-DM1、iDFS改善を長期維持しOS有意に延長/NEJM

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 トラスツズマブを含む術前化学療法後に浸潤がんの残存が認められたHER2陽性(HER2+)早期乳がん患者において、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)はトラスツズマブと比較して、全生存期間(OS)を延長し、無浸潤疾患生存期間(iDFS)の改善が維持されていた。米国・National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project (NSABP) FoundationのCharles E. Geyer Jr氏らが、第III相無作為化非盲検比較試験「KATHERINE試験」のiDFSの最終解析およびOSの2回目の中間解析の結果を報告した。術前化学療法後に浸潤がんが残存するHER2+早期乳がん患者は、再発および死亡のリスクが高い。KATHERINE試験では、iDFSの1回目の中間解析においてT-DM1のトラスツズマブに対する優越性が検証され(非層別ハザード比[HR]:0.50、95%信頼区間[CI]:0.39~0.64、p<0.001)、この結果に基づき「HER2+の乳がんにおける術後療法」の適応追加が承認されていた。NEJM誌2025年1月16日号掲載の報告。

術前療法で浸潤がん残存HER2+早期乳がん、T-DM1 vs.トラスツズマブを比較

 研究グループは、タキサン系化学療法およびトラスツズマブを含む術前薬物療法を受け、手術後、乳房または腋窩リンパ節に浸潤がんの残存が認められたHER2+早期乳がん患者を、T-DM1群またはトラスツズマブ群に1対1の割合で無作為に割り付け、14サイクル投与した。

 主要評価項目はiDFSとし、重要な副次評価項目はOSなどであった。iDFSの定義は、同側浸潤性乳がん再発、同側局所の浸潤性乳がんの再発、遠隔再発、対側乳房の浸潤性乳がん、全死因死亡のいずれかが無作為化から最初に認められた日までの期間とされた。

 有効性の解析はITT解析とし、iDFSの最終解析およびOSの2回目の中間解析は、iDFSのイベントが384件発生後に行うことと規定された。

 ITT集団には各群743例の患者が組み込まれた。

中央値8.4年追跡後もiDFSの改善は維持、OSの有意な改善を認める

 追跡期間中央値8.4年において、iDFSのイベントはT-DM1群で146例(19.7%)、トラスツズマブ群で239例(32.2%)に報告された。浸潤性疾患または死亡の非層別HRは0.54(95%CI:0.44~0.66)であり、iDFSの改善が維持されていた。

 7年iDFS率は、T-DM1群80.8%、トラスツズマブ群67.1%であった(群間差:13.7%ポイント)。

 死亡は、T-DM1群89例(12.0%)、トラスツズマブ群126例(17.0%)が報告された。死亡のHRは0.66(95%CI:0.51~0.87、p=0.003)で、事前に規定された有意水準(p<0.0263、HR:0.739に相当)を超えており、T-DM1群はトラスツズマブ群より死亡リスクが有意に低いことが認められた。推定7年OS率はT-DM1群89.1%、トラスツズマブ群84.4%であった(群間差4.7%ポイント)。

 Grade3以上の有害事象は、T-DM1群で26.1%、トラスツズマブ群で15.7%に報告された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Geyer CE Jr, et al. N Engl J Med. 2025;392:249-257.

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