内分泌療法後の転移乳がん、T-DXdがPFSを有意に改善(DESTINY-Breast06)/NEJM

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 内分泌療法を1ライン以上受けた、ホルモン受容体(HR)陽性かつHER2低発現またはHER2超低発現の転移を有する乳がん患者において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は医師選択の化学療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、新たな安全性シグナルは確認されなかった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のAditya Bardia氏らDESTINY-Breast06 Trial Investigatorsが多施設共同無作為化非盲検第III相試験「DESTINY-Breast06試験」の結果を報告した。内分泌療法後の進行に対し、従来の化学療法の有効性は限定的となっている。T-DXdは、化学療法歴のあるHER2低発現の転移を有する乳がんに対する有効性が示されていた。NEJM誌オンライン版2024年9月15日号掲載の報告。

主要評価項目はHER2低発現集団におけるPFS

 研究グループは、324施設において、HR陽性かつHER2低発現またはHER2超低発現の転移を有する乳がんに対する内分泌療法で、病勢進行が認められた成人患者をT-DXd群または医師選択の化学療法群に1対1の割合で無作為に割り付けた。

 被験者の適格基準は、進行または転移乳がんに対する化学療法歴がなく、2ライン以上の内分泌療法で病勢進行が認められた患者、術後補助内分泌療法の開始から24ヵ月以内に病勢進行した患者、または内分泌療法とCDK4/6阻害薬による1次治療の開始から6ヵ月以内に病勢進行が認められた患者であった。

 HER2低発現は、免疫組織化学染色(IHC)で1+または2+、in situハイブリダイゼーション(ISH)陰性と定義し、HER2超低発現は膜染色を伴うIHC 0(>0および<1+)と定義した。

 主要評価項目は、HER2低発現集団における盲検下独立中央判定(BICR)によるRECIST 1.1に基づくPFS、副次評価項目はBICRによるITT集団(無作為化されたすべての患者、すなわちHER2低発現およびHER2超低発現集団)におけるPFS、ならびにHER2低発現集団およびITT集団における全生存期間(OS)、安全性などであった。

HER2低発現集団におけるPFS中央値はT-DXd群13.2ヵ月、化学療法群8.1ヵ月

 2020年8月20日~2024年3月18日の間に、計866例がT-DXd群(436例)および化学療法群(430例)に割り付けられた。化学療法群では、カペシタビンが59.8%、nab-パクリタキセルが24.4%、パクリタキセルが15.8%であった。HER2低発現集団は713例、HER2超低発現集団は153例であった。

 HER2低発現集団において、PFS中央値はT-DXd群13.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.4~15.2)、化学療法群8.1ヵ月(7.0~9.0)であり、T-DXd群が有意に延長した(病勢進行または死亡のハザード比:0.62、95%CI:0.51~0.74、p<0.001)。この結果は、ITT集団、ならびにHER2超低発現集団においても一致していた。

 OSについては、データが未成熟であった。

 Grade3以上の有害事象は、T-DXd群で52.8%、化学療法群で44.4%に発現した。間質性肺疾患または肺炎は、それぞれ49例(11.3%、3例はGrade5)、1例(0.2%、Grade2)に認められた。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Bardia A, et al. N Engl J Med. 2024 Sep 15. [Epub ahead of print]

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サシツズマブ ゴビテカン、トリプルネガティブ乳がんに承認/ギリアド

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 ギリアド・サイエンシズは2024年9月24日、化学療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性かつHER2陰性(トリプルネガティブ)乳がんの治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるサシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)の日本における製造販売承認を取得したと発表した。

 今回の承認は、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンと医師選択治療の有効性と安全性を比較した海外での第III相臨床試験(ASCENT)と、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンの有効性と安全性を評価した国内の第II相臨床試験(ASCENT-J02)の結果に基づくものである。

 トリプルネガティブ乳がんは、転移・再発を起こしやすく、予後不良とされる。近年使用可能になった免疫チェックポイント阻害薬のほかに、新しい治療選択肢の登場が待たれていた。

(ケアネット 細田 雅之)


【参考文献・参考サイトはこちら】

ASCENT-J02試験(Clinical Trials.gov)

ASCENT試験(ClinicalTrials.gov)

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早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブ、最終OS結果(KEYNOTE-522)/NEJM

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 高リスク早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者において、ペムブロリズマブ+化学療法による術前補助療法およびペムブロリズマブ単独による術後補助療法は、術前化学療法単独と比較して、全生存期間(OS)を有意に延長した。英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のPeter Schmid氏らKEYNOTE-522 Investigatorsが、21ヵ国181施設で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「KEYNOTE-522試験」の結果を報告した。KEYNOTE-522試験では、プラチナ製剤を含む化学療法にペムブロリズマブを追加することで、病理学的完全奏効(pCR)率と無イベント生存期間(EFS)が有意に改善することが示されており、今回はOSについての最終結果が報告された。NEJM誌オンライン版2024年9月15日号掲載の報告。

術前・術後ペムブロリズマブ併用の有効性をプラセボ併用と比較

 研究グループは、未治療の高リスク早期TNBC患者(T1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0~1)を、ペムブロリズマブ+化学療法群とプラセボ+化学療法群に2対1の割合で無作為に割り付けた。

 術前補助療法として、ペムブロリズマブ+化学療法群では、ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、週1回)+カルボプラチン(AUC 1.5、週1回またはAUC 5、3週ごと)を4サイクル、その後ペムブロリズマブ+シクロホスファミド(600mg/m2)+ドキソルビシン(60mg/m2)またはエピルビシン(90mg/m2)を3週ごと4サイクル投与し、プラセボ+化学療法群ではペムブロリズマブの代わりにプラセボを上記化学療法とともに投与した。

 根治手術後は術後補助療法として、適応があれば放射線療法を行うとともに、それぞれペムブロリズマブまたはプラセボを3週ごと9サイクル投与した。

 主要評価項目は、pCR率およびEFS、副次評価項目はOSで、ITT解析を行った。

5年OS率は86.6% vs.81.7%

 2017年3月~2018年9月に計1,174例が無作為化された(ペムブロリズマブ+化学療法群784例、プラセボ+化学療法群390例)。

 計画されていた今回の第7回中間解析(データカットオフ日:2024年3月22日)における追跡期間中央値は75.1ヵ月(範囲:65.9~84.0)で、死亡はペムブロリズマブ+化学療法群で115例(14.7%)、プラセボ+化学療法群で85例(21.8%)に認められた。

 5年OS率は、ペムブロリズマブ+化学療法群が86.6%(95%信頼区間[CI]:84.0~88.8)、プラセボ+化学療法群は81.7%(95%CI:77.5~85.2)であり、ペムブロリズマブ+化学療法群においてOSの有意な延長が認められた(p=0.002、層別log-rank検定、有意水準α=0.00503)。

 有害事象については、これまでに報告されているペムブロリズマブおよび化学療法の安全性プロファイルと一致していた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Schmid P, et al. N Engl J Med. 2024 Sep 15. [Epub ahead of print]

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StageIのTN乳がんにおける術前化療後のpCR率とOSの関係/ESMO2024

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 StageIのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)において、術前化学療法後のpCR率は良好な長期転帰と関連することが示され、同患者における術前化学療法の実施が裏付けられた。オランダ・Netherlands Cancer InstituteのManon De Graaf氏が、1,000例以上のTNBC患者を対象としたレジストリ研究の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。

 本研究では、2012~22年に術前化学療法後に手術が施行されたcT1N0のTNBC患者をオランダがん登録のデータから特定し、pCR率と全生存期間(OS)との関連を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・アントラサイクリンおよびタキサンベースの術前化学療法を受けた患者1,144例が特定された。
・年齢中央値は50.0(22.0~77.0)歳、94.1%がcT1c腫瘍で、90.5%が乳管がんであった。41.3%がプラチナベースの術前化学療法を受け、24.7%が術後カペシタビン療法を受けていた。
・全体のpCR達成率は57.3%(656例)であった。
・多重ロジスティック回帰分析の結果、若年(50歳未満vs.50歳以上、オッズ比[OR]:1.75、95%信頼区間[CI]:1.36~2.26)および腫瘍グレードの高さ(グレード3 vs.1または2、OR:2.07、95%CI:1.55~2.76)はpCR率の高さと関連していたが、小葉がんはpCR率の低さと関連していた(小葉がんvs.乳管がん、OR:0.18、95%CI:0.03~0.69)(いずれもp<0.05)。
・プラチナベースの術前化学療法は、pCR率の改善と有意な関連はみられなかった(プラチナベースの術前化学療法ありvs.なし、57.6% vs.57.1%、OR:1.02、95%CI:0.80~1.29、p=0.9)。
・4年時OSは、pCR達成群で98% vs.残存病変群で93%となり、pCR達成群で有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.29、95%CI:0.15~0.36、log-rank検定のp<0.001)。
・残存病変群における術後カペシタビン療法の有無によるOSへの影響をみると、4年時OSはカペシタビン群93% vs.術後化学療法なし群91%であった(HR:0.65、95%CI:0.31~1.39、log-rank検定のp=0.3)。

 Graaf氏は、StageIのTNBC患者のうち術前化学療法が必要な患者を決めるため、またTILsや免疫関連遺伝子シグネチャ―などの予測バイオマーカーを評価するために、さらなる研究が必要と結んでいる。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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HR+/HER2+の閉経前乳がん、卵巣機能抑制で予後改善/ESMO2024

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 術前または術後補助化学療法を受けた閉経前のHR+/HER2+の早期乳がん患者において、内分泌療法に卵巣機能抑制を追加することで予後が有意に改善したことを、韓国・延世大学校医科大のSung Gwe Ahn氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表した。

 これまでの研究により、卵巣機能抑制と内分泌療法の併用により、閉経前のHR+の早期乳がん患者の無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)が改善することが示されている。しかし、これらの対象の多くはHER2-の乳がん患者であり、HER2+の乳がん患者におけるデータは限られている。

 そこで研究グループは、国際共同第III相HERA試験のデータを後ろ向きに解析し、HR+/HER2+の閉経前の早期乳がん患者に卵巣機能抑制を追加することで予後が改善するかどうかを評価した。また、卵巣機能抑制に併用した内分泌療法(タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬)による予後を比較した。

 患者を、下記の4群に分け、(1)のタモキシフェン単独群vs.(2~4)の内分泌療法+卵巣機能抑制群、および(2)のタモキシフェン併用群vs.(3、4)のアロマターゼ阻害薬併用群のDFSとOSを評価した。追跡期間中央値は11.0年であった。
(1)タモキシフェン単独 501例
(2)タモキシフェン+卵巣機能抑制 269例
(3)タモキシフェン+アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制 140例
(4)アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制 55例

 主な結果は以下のとおり。

タモキシフェン単独vs.内分泌療法+卵巣機能抑制
・解析には965例が含まれ、そのうち501例(51.9%)はタモキシフェン単独で、464例(48.1%)は卵巣機能抑制と内分泌療法(タモキシフェン269例[27.9%]、エキセメスタン195例[20.2%])を併用していた。
・内分泌療法+卵巣機能抑制群の10年DFS率は70.9%、タモキシフェン単独群は59.6%で、内分泌療法の追加は予後の改善と独立して関連していた(ハザード比[HR]:0.68[95%信頼区間[CI]:0.53~0.88]、p<0.001)。
・10年OS率は、内分泌療法+卵巣機能抑制群84.7%、タモキシフェン単独群74.0%で、併用群で有意に良好であった(HR:0.64[95%CI:0.46~0.89]、p<0.001)。
・これらの結果は、トラスツズマブ併用の有無によらず同様の傾向にあった。

タモキシフェンvs.アロマターゼ阻害薬
・解析には、タモキシフェン+卵巣機能抑制群269例、タモキシフェン+アロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制群とアロマターゼ阻害薬+卵巣機能抑制群(以下、アロマターゼ阻害薬+免疫機能抑制群)195例が含まれた。
・10年DFS率は、アロマターゼ阻害薬+免疫機能抑制群が78.7%、タモキシフェン+卵巣機能抑制群が65.2%であり、アロマターゼ阻害薬併用のほうが良好であった(HR:0.54[95%CI:0.38~0.75])。
・10年OS率は、アロマターゼ阻害薬+免疫機能抑制群91.3%、タモキシフェン+卵巣機能抑制群79.7%であった(HR:0.48[95%CI:0.30~0.77])。
・これらの結果は、トラスツズマブ併用の有無によらず同様の傾向にあった。

(ケアネット 森)


【参考文献・参考サイトはこちら】

ClinicalTrials.gov(ABIGAIL試験)

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T-DXdによる遅発期・延長期の悪心・嘔吐抑制にオランザピン6日間併用が有効(ERICA)/ESMO2024

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 HER2陽性/低発現の転移乳がんへのトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)治療による遅発期および延長期の悪心・嘔吐を、オランザピン6日間投与と5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの併用が抑制する可能性が、日本で実施された多施設無作為化二重盲検プラセボ対照第II相比較試験(ERICA)で示唆された。昭和大学の酒井 瞳氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表し、Annals of Oncology誌オンライン版に同時掲載された。

・対象:T-DXd治療を予定しているHER2陽性/低発現の転移/再発乳がん患者
・試験群:T-DXd投与1~6日目にオランザピン5mg(1日1回)を5-HT3受容体拮抗薬およびデキサメタゾン(1日目に6.6mg静脈内投与または8mg経口投与)と併用
・対照群:オランザピンの代わりにプラセボを投与
・評価項目:
[主要評価項目]遅発期(T-DXd投与後24~120時間)の完全奏効(嘔吐なし、レスキュー治療なし)割合
[副次評価項目]急性期(0~24時間)/延長期(120~504時間)の完全奏効割合、急性期・遅発期・延長期の完全制御(嘔吐なし、レスキュー治療なし、悪心なし/軽度)割合、急性期・遅発期・延長期の総制御(嘔吐なし、レスキュー治療なし、悪心なし)割合、急性期・遅発期・延長期の悪心なし割合、1日毎の完全奏効割合、PRO-CTCAEによる患者報告症状、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・2021年11月~2023年9月に国内43施設で168例が登録され、162例(オランザピン群80例、プラセボ群82例)がプロトコールに組み入れられた。
・遅発期の完全奏効割合は、オランザピン群(70.0%)がプラセボ群(56.1%)より有意に高く(p=0.047)、主要評価項目を達成した。
・副次評価項目のすべての項目において、遅発期および延長期でオランザピン群のほうが高かった。
・1日毎の完全奏効割合および悪心なし割合も、21日間の観察期間を通してオランザピンのほうが高かった。
・初回の悪心発現までの期間中央値はオランザピン群6.5日/プラセボ群3.0日、悪心発現患者における悪心期間中央値はオランザピン群4.0日/プラセボ群8.0日、レスキュー治療を実施した患者割合はオランザピン群38.8%/プラセボ群56.6%だった。
・PRO-CTCAEによる患者自身の評価では、食欲不振がオランザピン群で少なかった。
・有害事象はオランザピンの以前の報告と同様で、新たな安全性シグナルはみられなかった(傾眠:オランザピン群25.0%/プラセボ群10.8%、高血糖:オランザピン群7.5%/プラセボ群0%)。

 これらの結果から、酒井氏は「オランザピンをベースとした3剤併用療法は、T-DXd治療により引き起こされる遅発期および延長期の悪心・嘔吐を抑制する有効な制吐療法と思われる」とまとめた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Sakai H, et al. Ann Oncol. 2024 Sep 14. [Epub ahead of print]

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高悪性度のHR+/HER2-進行乳がん1次治療、化学療法と比べアベマシクリブ+ETが早期ORR良好(ABIGAIL)/ESMO2024

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 予後不良の関連因子を有する、悪性度の高いホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対する1次治療として、アベマシクリブと内分泌療法(ET)の併用は、化学療法に続いて同併用療法を実施する場合と比較して早期の奏効率(ORR)が高いことが示された。スペイン・Hospital San Juan de Dios de CordobaのJuan De la Haba Rodriguez氏は、非盲検無作為化多施設共同非劣性試験である第II相ABIGAIL試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。

・対象:高悪性度の基準(術後ET完了時の再発またはアロマターゼ阻害薬ベースのレジメン終了から36ヵ月以内、内臓転移、グレード3またはPgR陰性、LDH>1.5ULN)を1つ以上満たすHR+/HER2-進行乳がん患者(進行がんに対する治療歴なし、ECOG PS 0~1) 
・試験群:アベマシクリブ(28日サイクルで1日2回、150mg)+レトロゾール(1日1回、2.5mg)またはフルベストラント(1、15、29日目、その後は月1回、500mg) 80例
・対照群:パクリタキセル(28日サイクルで1、8、15日目、90mg/m2)を12週→アベマシクリブ+レトロゾールまたはフルベストラント 82例
・評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)による12週時点でのORR
[副次評価項目]全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時点での患者背景は両群でバランスがとれており、年齢中央値が試験群57歳vs.対照群60歳、ECOG PS 0が65% vs.64.3%、閉経後が68.7% vs.75.6%であった。
・12週時点でのORRは試験群58.8% vs.対照群40.2%(オッズ比:2.11、95%信頼区間:1.13~3.96、p=0.0193)で、主要評価項目は達成された。
・12週時点で、完全奏効(CR)はともに0%、部分奏効(PR)は試験群58.8% vs.対照群40.2%、安定(SD)は30.0% vs.45.2%、進行(PD)は1.2% vs.8.5%であった。
・12週時点での試験治療下における有害事象(TEAE)は、両群でそれぞれ予測されたものであり、下痢(試験群68% vs.対照群23%)を除き、試験群でより良好または同等であった。

 同試験は現在も進行中で、PFSを含むその他の副次評価項目や長期の有効性が評価される予定となっている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

ClinicalTrials.gov(ABIGAIL試験)

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初発乳がんへの遺伝子検査でPARP阻害薬の適応となる患者の割合

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 乳がん患者の5~10%が、乳がん感受性遺伝子における生殖細胞系列病的バリアントまたはその可能性が高い病的バリアントと関連することが報告されており、局所療法と全身療法の推奨を変える可能性がある。今回、カナダ・McGill大学のZoulikha Rezoug氏らが、新たに浸潤性乳がんと診断された女性を対象に調査したところ、乳がん感受性遺伝子における生殖細胞系列病的バリアントまたはその可能性が高い病的バリアントを保持する患者の割合は7.3%であった。また、BRCA1/2またはPALB2病的バリアントを保持する患者は5.3%で、その3分の1がPARP阻害薬の適応であったという。JAMA Network Open誌2014年9月3日号に掲載。

 この横断研究では、2019年9月~2022年4月にカナダ・モントリオールの3施設で初発の浸潤性乳がんと診断されたすべての女性に遺伝カウンセリングと遺伝子検査が提案され、3遺伝子(BRCA1BRCA2PALB2)の1次パネル(必須)と、14遺伝子(ATMBARD1BRIP1CDH1CHEK2MLH1MSH2MSH6PMS2PTENRAD51CRAD51DSTK11TP53)の2次パネル(任意)が提案された。本研究に紹介される6ヵ月前までに初めて浸潤性乳がんの診断を受けた18歳以上の女性を適格とし、2023年11月~2024年6月のデータを解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・1,017例中、適格だった805例に遺伝カウンセリングと検査が提案され、うち729例(90.6%)が検査を受けた。乳がん診断時の年齢中央値は53歳(範囲:23~91歳)、65.4%が白人もしくは欧州系であった。
・53例(7.3%)に54の生殖細胞系列病的バリアントまたはその可能性の高い病的バリアントが同定され、39例(5.3%)が1次パネルの3遺伝子(BRCA1BRCA2PALB2)で、15例(2.1%)が2次パネルの14遺伝子中の6遺伝子(ATMBARD1BRIP1CHEK2RAD51DSTK11)であった。
・多変量解析では、BRCA1/BRCA2/PALB2病的バリアント陽性に独立して関連する臨床的因子として、診断時年齢40歳未満(オッズ比[OR]:6.83、95%信頼区間[CI]:2.22~20.90)、トリプルネガティブ乳がん(OR:3.19、95%CI:1.20~8.43)、高悪性度(OR:1.68、95%CI:1.05~2.70)、卵巣がんの家族歴あり(OR:9.75、95%CI:2.65~35.85)が挙げられた。
BRCA1/BRCA2/PALB2病的バリアント陽性の39例のうち13例(33.3%)がPARP阻害薬の適応であった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Rezoug Z, et al. JAMA Netw Open. 2024;7:e2431427.

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がん罹患の40%・死亡の44%が予防できる可能性

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 米国におけるがん罹患の約40%とがん死亡の44%が、修正可能なリスク因子に起因していることが新たな研究で明らかになった。とくに喫煙、過体重、飲酒が主要なリスク因子であり、肺がんをはじめとする多くのがんに大きな影響を与えているという。A Cancer Journal for Clinicians誌オンライン版2024年7月11日号の報告。

 米国がん協会(ジョージア州・アトランタ)のFarhad Islami氏らは、2019年(COVID-19流行の影響を避けるため、この年に設定)に米国でがんと診断された30歳以上の成人を対象に、30のがん種について全体および潜在的に修正可能なリスク因子に起因する割合と死亡数を推定した。評価されたリスク因子には、喫煙(現在および過去)、受動喫煙、過体重、飲酒、赤肉および加工肉の摂取、果物や野菜の摂取不足、食物繊維およびカルシウムの摂取不足、運動不足、紫外線、そして7つの発がん性感染症が含まれた。がん罹患数と死亡数は全国をカバーするデータソース、全国調査によるリスク因子の有病率推定値、および公表された大規模なプールまたはメタアナリシスによるがんの関連相対リスクから得た。

 主な結果は以下のとおり。

・2019年における米国の30歳以上の成人における全がん罹患数(非メラノーマを除く)の40.0%(71万3,340/178万1,649例)、全がん死亡数の44.0%(26万2,120/59万5,737例)が評価されたリスク因子に起因すると推定された。
・全がんの罹患/死亡に関連するリスク因子の1位は喫煙(19.3%/28.5%)であり、2位は過体重(7.6%/7.3%)、3位は飲酒(5.4%/4.1%)であった。
・評価対象となった30種のがんのうち、19種類のがんは罹患数および死亡数の2分の1以上が検討された評価されたリスク因子に起因していた。
・リスク因子に起因するがんのうち、肺がんが罹患数(20万1,660例)および死亡数(12万2,740例)とも最多であり、罹患数は女性の乳がん(8万3,840例)、メラノーマ(8万2,710例)、大腸がん(7万8,440例)が続き、死亡数では大腸がん(2万5,800例)、肝がん(1万4,720例)、食道がん(1万3,600例)が続いた。

 著者らは「米国における多数のがん罹患および死亡は、潜在的に修正可能なリスク因子に起因しており、予防策を幅広く公平に実施することにより、がんの負担を大幅に軽減できる可能性がある。喫煙対策としての課税強化、禁煙支援プログラムの拡充、そして健康的な体重維持の推進などが有効だろう。さらに適切な飲酒制限、バランスの取れた食事、定期的な運動もがん予防に有効だ」としている。

(ケアネット 杉崎 真名)


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slami F, et al. CA Cancer J Clin. 2024 Jul 11. [Epub ahead of print]

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ICI関連心筋炎の発見・治療・管理に腫瘍循環器医の協力を/腫瘍循環器学会

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 頻度は低いが、発現すれば重篤な状態になりえる免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫関連有害事象としての心筋炎(irAE心筋炎)。大阪大学の吉波 哲大氏が第7回日本腫瘍循環器学会学術集会でirAE心筋炎における問題点を挙げ、腫瘍循環器医の協力を呼びかけた。

致死率20%を超えるirAE心筋炎

 ICIは今や固形がんの治療に必須の薬剤となった。一方、ICIの適用拡大と共に免疫関連有害事象(irAE)の発症リスクも増加する。心臓に関連するirAEは心筋炎、非炎症性左室機能不全、心外膜炎、伝導障害など多岐にわたる。その中でもirAE心筋炎は、発現すると一両日中に、心不全、コントロール困難な不整脈を併発し、致死的な状況に追い込まれることもある1)

 irAE心筋炎はICIにより活性化したT細胞が心筋に浸潤し、心筋を傷害するために起こるとされる。irAE心筋炎の発現は1%前後であるが2)、死亡率は20%を超え、通常の心筋炎をはるかに上回る3)。とくに女性(調整オッズ比[aOR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.38〜0.51、p<0.01)、75歳以上(aOR:0.19、95%CI:0.14〜0.28、p<0.01)、ICI同士の併用(aOR:1.93、95%CI:1.19〜3.12、p=0.08)ではリスクが高い2)。irAE心筋炎の頻度は低いものの、ICIの適応拡大とともに遭遇機会は増えていると考えられる。irAE心筋炎発現時期はICI開始後30日程度(日本のデータでは18〜28日、米国のデータでは中央値34日)と報告されている4、5)

定期モニタリングとステロイドによる治療が原則

 わが国のOnco-CardiologyガイドラインではirAE心筋炎スクリーニングに、心電図、トロポニンT、NT-pro BNP、NLR(好中球・リンパ球比)、CRPのモニタリングが有効な可能性を挙げている(FRQ6-1)。吉波氏も、月1回程度行うICIの定期モニタリング時にトロポニンT、NT-pro BNPなどの検査(リスクがあれば心電図)をすべきと提案する。また、irAE心筋炎に対するステロイド治療については、使用すべき種類・投与経路・用量は定まっていないものの、有用な可能性があるとしている(BQ6-2)。

irAE心筋炎を管理してICI治療を実施するために腫瘍循環器医の協力を

 ICIのがん治療に対する影響は大きく、もはや固形がんでは必須の薬剤だ。ペムブロリズマブは周術期化学療法に併用することでトリプルネガティブ乳がんの再発リスクを37%低下させ6)、アテゾリズマブは化学療法に併用することでStageIVもしくは再発非小細胞肺がんの12ヵ月無増悪生存割合を約2倍にする7)

 「治りたい、長生きしたい」という患者の希望を実現するために、腫瘍診療医はirAE心筋炎を危惧しながらもICIを使っている。「irAE心筋炎の発見・治療・管理にぜひとも腫瘍循環器医の協力をお願いしたい」と吉波氏は訴える。

■参考
1)三浦理. 新潟がんセンター病院医誌. 2024;62:45-48.
2)Zamami Y, et al. JAMA Oncol. 2019;5:1635-1637.
3)Wang DY, et al. JAMA Oncol. 2018;4:1721-1728.
4)Mahmood SS, et al. J Am Coll Cardiol. 2018;71:1755-1764.
5)Hasegawa S, et al. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2020;29:1279-1294.
6)Schmid P, et al. N Engl J Med. 2022;386:556-567.
7)Socinski MA, et al. N Engl J Med. 2018;378:2288-2301.

(ケアネット 細田 雅之)


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