乳がんへのドセタキセルとパクリタキセル、眼科有害事象リスクに差/日本癌治療学会

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 乳がん周術期療法におけるドセタキセルとパクリタキセルの眼科有害事象のリスクを比較した結果、ドセタキセルはパクリタキセルと比較して流涙症のリスクが有意に高かった一方で、黄斑浮腫や視神経障害などのリスクは有意差を認めなかったことを、東京大学の祝 千佳子氏が第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。

 タキサン系薬剤は好中球減少症や末梢神経障害などさまざまな有害事象を来すことが広く知られているが、眼科有害事象についても報告がある。しかし、ドセタキセルとパクリタキセルの間で眼科有害事象を比較した研究は乏しい。そこで研究グループは、早期乳がんの周術期療法としてドセタキセルまたはパクリタキセルを使用した群で、眼科有害事象の発現リスクに差があるかどうかを比較するために研究を実施した。

 研究グループはDeSCのレセプトデータベースを用いて、2014年4月~2022年11月に周術期補助療法としてドセタキセルまたはパクリタキセルを使用した18歳以上の乳がん患者6,118例(ドセタキセル群3,950例、パクリタキセル群2,168例)を同定した。主要評価項目は流涙症、黄斑浮腫、視神経障害の発現、副次評価項目は眼科受診であった。主解析では、傾向スコアを用いたoverlap weighting法による生存時間分析を実施した。アウトカムの発生率は1万人年当たりで算出し、bootstrap法で信頼区間(CI)とp値を設定した。Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)を算出した。

 主な結果は以下のとおり。

●対象者の年齢中央値は65(四分位範囲:54~70)歳で、観察期間中央値は790(365~1,308)日であった。
●Overlap weighting後のドセタキセル群およびパクリタキセル群の流涙症の発現率はそれぞれ127および79/1万人年、黄斑浮腫は92および114/1万人年、視神経障害は53および78/1万人年、眼科受診は428および404/1万人年であった。
●ドセタキセル群はパクリタキセル群と比較して流涙症のリスクが有意に高かったが、黄斑浮腫、視神経障害、眼科受診のリスクは有意差を認めなかった。ドセタキセル群vs.パクリタキセル群のHRと95%CIは下記のとおり。
 【流涙症】
 ・主解析 HR:1.63、95%CI:1.13~2.37、p=0.010
 ・65歳未満 HR:1.82、95%CI:0.82~4.02、p=0.14
 ・65歳以上 HR:1.58、95%CI:1.04~2.42、p=0.033
 【黄斑浮腫】
 ・主解析 HR:0.81、95%CI:0.57~1.13、p=0.21
 ・65歳未満 HR:0.65、95%CI:0.32~1.33、p=0.24
 ・65歳以上 HR:0.86、95%CI:0.59~1.26、p=0.44
 【視神経障害】
 ・主解析 HR:0.67、95%CI:0.44~1.01、p=0.057
 ・65歳未満 HR:0.51、95%CI:0.24~1.09、p=0.082
 ・65歳以上 HR:0.73、95%CI:0.43~1.26、p=0.26
 【眼科受診】
 ・主解析 HR:1.09、95%CI:0.91~1.31、p=0.35
 ・65歳未満 HR:1.08、95%CI:0.81~1.45、p=0.60
 ・65歳以上 HR:1.09、95%CI:0.84~1.35、p=0.47

 これらの結果より、祝氏は「2群間で流涙症リスクに差が生じた理由として、薬剤特性の違いが涙液中の濃度や曝露時間に影響したり、添加物の違いが関係したりしている可能性がある」と示唆したうえで、「実臨床を反映した大規模診療データベースの解析の結果、乳がん患者において周術期療法としてのドセタキセル使用はパクリタキセル使用と比較して流涙症のリスクが有意に高く、とくに65歳以上で顕著であった。ドセタキセルまたはパクリタキセルの治療選択の際は、起こりうる眼科有害事象に留意する必要がある」とまとめた。

(ケアネット 森)


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HER2+乳がんが術前療法後に陰転、長期予後への影響は?/日本癌治療学会

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 術前薬物療法を行ったHER2陽性早期乳がん患者が手術検体を用いた術前薬物療法後の再検査でHER2陰性になった場合は、HER2陽性が保持されている場合と比べて長期予後が不良である可能性を、明治薬科大学/第一三共の中谷 駿介氏が第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。

 これまでの研究により、HER2陽性早期乳がんで、術前薬物療法を実施して残存病変が確認された症例の約8~47%でHER2が陽性から陰性に変化するHER2陰転化が報告されている。術前薬物療法後の手術検体を用いたHER2再評価は現時点で必須となっていないため、HER2陰転化症例に対しても術後薬物療法として抗HER2薬が投与されている実情がある。他方、HER2陰転化が予後に与える影響は研究によって結論が異なっている。HER2陰転化が予後に与える影響を明らかにすることで、術前薬物療法後の手術検体を用いたHER2再評価の必要性の再考、並びにHER2陰転化症例に対する最適な術後薬物療法の選択に寄与できる可能性がある。そこで、研究グループは、HER2陰転化が予後に与える影響を検討するために、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。

 研究グループは、2023年11月19日にPubMedとCochrane Libraryで対象となる研究を検索した。選択基準は、術前薬物療法を受けたHER2陽性早期乳がん症例を対象とし、術前薬物療法前後のHER2検査結果が報告されていて、再発リスクに関するアウトカムあるいは全生存期間(OS)の結果が報告されている観察研究あるいは介入研究で、2人の研究者がスクリーニングを実施した。主要評価項目は、HER2陽性早期乳がんにおける術前薬物療法後のHER2陰転化の予後予測因子としての有用性であった。

 主な結果・考察は以下のとおり。

・2013~22年に報告された8件の研究がシステマティックレビューおよびメタ解析に含まれた。再発リスクに関するアウトカムである無病生存期間(DFS)/無浸潤疾患生存期間(iDFS)/無再発生存期間(RFS)においては8件すべてが、OSにおいては8件のうち4件がメタ解析に含まれた。
・HER2保持群と比べ、HER2陰転化群ではDFS/iDFS/RFSが統計学的に有意に不良であった(ハザード比[HR]:1.85、95%信頼区間[CI]:1.31~2.61、p=0.0005)。
・ORにおいてもHER2陰転化群で統計学的に有意に不良であった(HR:2.37、95%CI:1.27~4.41、p=0.0065)。
・HER2陰転化はHER2陽性早期乳がんの予後に影響を与えるリスク因子であることが示唆された。
・HER2陰転化群がHER2保持群と比べて予後不良であった要因として、HER2陰転化症例に対して作用機序に基づいた適切な術後薬物療法が選択できていない可能性が考えられる。

 これらの結果より、中谷氏は「術前薬物療法後の手術検体を用いてHER2再検査を実施し、その結果に応じた薬物療法を選択することで、HER2陰転化症例に対して最適な治療法を提供できる可能性がある。HER2陰転化症例に対する最適な術後薬物療法に関するさらなる研究が期待される」とまとめた。

(ケアネット 森)


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早期乳がんの遠隔転移再発率、1990年代からどのくらい低下した?/Lancet

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 英国・Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)は同グループのデータベースを用いた統合解析を行い、エストロゲン受容体(ER)陽性およびER陰性乳がんの遠隔転移再発率が、1990年代に比べ2000年以降に診断された女性では約5分の1低下していることを報告した。この改善は、本研究に参加する低リスクの女性患者の割合が高くなったことと、補助療法の進歩により説明される。ER陽性乳がんの遠隔再発の長期リスクは、依然として存在するものの前回の報告よりも約10分の1低下した。ER陽性早期乳がん女性の遠隔転移再発率は診断後20年以上にわたって一定の割合で持続するが、ER陰性乳がんに関するデータはこれまでほとんどなかった。Lancet誌2024年10月12日号掲載の報告。

65万例を超えるEBCTCGデータベースから対象患者を抽出し解析

 研究グループは、早期乳がんの臨床試験に参加した65万例を超えるEBCTCGデータベースから、1990~2009年登録の新たにER陽性乳がんと診断され5年以上の内分泌療法が予定されていた患者またはER陰性と診断された患者で、診断時75歳未満、腫瘍径50mm以下、腋窩リンパ節転移10個未満、登録時遠隔転移のない女性患者を抽出し解析した。

 術前補助療法の臨床試験への参加者、術後補助療法の割り付けが不明な患者、ER陰性かつプロゲステロン受容体陽性の乳がん患者、結果またはベースライン時のデータが欠落している患者は除外した。

 主要評価項目は、各臨床試験で定義された最初の遠隔再発までの期間とし(局所再発または対側乳がんは除外)、患者および腫瘍の特性、試験、割り付けられた治療を補正したCox回帰を用いて、診断時期別の10年遠隔再発リスクを比較した。

遠隔再発率、2000年以降は1990年代に比べ約5分の1低下

 2023年1月17日時点のEBCTCGデータベースに登録されている早期乳がん女性患者65万2,258例のうち、151件の無作為化試験における15万5,746例(ER陽性かつ内分泌療法5年以上11万4,811例、ER陰性4万935例)が適格基準を満たした。

 遠隔再発率は、ER陽性例とER陰性例とも同様に改善した。ER陽性例の改善の80.5%ならびにER陰性例の改善の89.8%は、患者および腫瘍の特性の変化と治療の改善により説明されたが、依然として有意なままであった(p<0.0001)。最近診断された患者は、リンパ節転移陰性の割合が高かった。

 1990~99年と2000~09年の10年遠隔再発リスクを比較すると、リンパ節転移陰性の場合、ER陽性では10.1% vs.7.3%、ER陰性では18.3% vs.11.9%、リンパ節転移が1~3個の場合、それぞれ19.9% vs.14.7%、31.9% vs.22.1%、リンパ節転移が4~9個の場合、それぞれ39.6% vs.28.5%、47.8% vs.36.5%であった。

 治療について補正後、2000年以降は1990年代と比較して、遠隔再発率はER陽性例で25%、ER陰性例で19%減少し、ER陽性では5年を超えても同様の改善が認められた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group. Lancet. 2024;404:1407-1418.

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BRCA1/2変異保有者の避妊薬使用、乳がんリスクとの関連/JCO

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 生殖細胞系列BRCA1/2変異保有者において、ホルモン避妊薬が乳がんリスクを増加させるかどうかは不明である。今回、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのKelly-Anne Phillips氏らの研究で、ホルモン避妊薬は、とくに長期使用で、BRCA1変異保有者の乳がんリスク上昇と関連することが示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年10月2日号に掲載。

 本研究では、4つの前向きコホート研究からプールされた観察データを用いて、避妊薬使用とBRCA1/2変異保有女性の乳がんリスクとの関連についてCox回帰を用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

BRCA1変異保有者3,882人およびBRCA2変異保有者1,509人のうち、それぞれ53%および71%で1年以上の避妊薬使用歴があり、累積使用期間中央値はそれぞれ4.8年、5.7年だった。
BRCA1変異保有者488人とBRCA2変異保有者191人が、それぞれ追跡期間中央値5.9年と5.6年の間に乳がんを発症した。
BRCA1変異保有者では、現在/以前の使用とも1年以上の避妊薬使用歴は乳がんリスクと有意な関連はみられなかったが、使用歴ありは有意な関連がみられた。使用歴なしと比べたハザード比[HR](95%信頼区間[CI])は以下のとおり。
 現在使用:1.40(0.94~2.08)、p=0.10
 1~5年前に使用:1.16(0.80~1.69)、p=0.4
 6~10年前に使用:1.40(0.99~1.97)、p=0.05
 10年より前に使用:1.27(0.98~1.63)、p=0.07
 使用歴あり:1.29(1.04~1.60)、p=0.02
・避妊薬の累積使用期間が長いほど乳がんリスクが上昇し、1年増えるごとに3%(95%CI:1~5、p=0.002)のリスク上昇が推定された。
BRCA2変異保有者では、現在使用(HR:0.70、95%CI:0.33~1.47、p=0.3)および以前使用(HR:1.07、95%CI:0.73~1.57、p=0.7)とも乳がんリスクの上昇と関連していなかった。

 これらの結果から、著者らは「BRCA1変異を有する女性における避妊薬の使用については、個々人のリスクとベネフィットを慎重に検討する必要がある」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Phillips KA, et al. J Clin Oncol. 2024 Oct 2. [Epub ahead of print]

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転移を有する乳がん、ctDNA変化と生存率の関連~メタ解析

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 転移を有する乳がん患者の血中循環腫瘍DNA(ctDNA)における特定のゲノム変化の検出は、全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間(DFS)の悪化と関連していたことを、カナダ・Research Institute of the McGill University Health CentreのKyle Dickinson氏らがシステマティックレビューおよびメタ解析によって明らかにした。JAMA Network Open誌2024年9月5日号掲載の報告。

 これまでにも転移乳がんのctDNAと予後の関連を調査した報告は存在するが、研究デザインや分析方法などに不一致があり、矛盾する結論が得られている。そこで研究グループは、研究デザインの違いを考慮しながら特定のctDNAの変化を検出・評価することで、転移乳がんにおけるctDNAとOSやPFS、DFSの関連をより理解することができると考え、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。

 研究グループは、CINAHL、Cochrane Library、Embase、MedlineおよびWeb of Scienceをデータベースの開設から2023年10月23日まで検索した。メタ解析には、(1)転移/進行/StageIVの乳がんと診断された女性(18歳以上)が登録され、(2)ベースラインの血漿ctDNAデータがあり、(3)OSやPFS、DFSとそのハザード比(HR)の報告がある臨床研究を含めた。研究のスクリーニングおよびデータ抽出は2人の独立した研究者により実施され、データはランダム効果モデルを使用して統合された。

 主要評価項目はctDNAにおける特定のゲノム変化の検出と生存との関連で、副次評価項目は研究方法と生存との関連であった。

 主な結果は以下のとおり。

・20~94歳の女性患者4,264例を対象とした37件の研究が解析に含まれた。前向き研究が20件(54%)、後ろ向き研究が17件(46%)であった。
・ctDNAにおける特定のゲノム変化の検出と生存率低下の間に有意な関連が認められた(HR:1.40、95%信頼区間[CI]:1.22~1.58、p<0.001)。
・各生存転帰のサブグループ解析でも同様の結果が得られた。
 【OS】HR:1.44、95%CI:1.24~1.65、p<0.001
 【PFS】HR:1.31、95%CI:1.07~1.55、p<0.001
 【DFS】HR:1.56、95%CI:1.22~1.89、p<0.001
TP53およびESR1変異と生存率低下の間に有意な関連が認められた(それぞれのHR:1.58[95%CI:1.34~1.81]および1.28[95%CI:0.96~1.60]、いずれもp<0.001)。
PIK3CA変異は生存率低下との関連を示さなかった(HR:1.19、95%CI:0.85~1.53)。
・前向き研究でも後ろ向き研究でも同様に生存率の低下が認められた(それぞれのHR:1.48[95%CI:1.15~1.80]および1.37[95%CI:1.17~1.56]、いずれもp<0.001)。
・検出方法別に層別化すると、次世代シーケンシングとデジタルPCRのいずれかによるctDNA検出は生存率の低下と関連していた(それぞれのHR:1.48[95%CI:1.22~1.74]、1.28[95%CI:1.05~1.50]、いずれもp<0.001)。

 これらの結果より研究グループは、「ctDNAによる特定のゲノム変化の検出は、OSやPFS、DFSの悪化と関連しており、転移乳がんの予後バイオマーカーとしての可能性を示唆している。これらの結果は、ctDNAの実用性を判断する将来の研究デザインの指針となるだろう」とまとめた。

(ケアネット 森)

【原著論文はこちら】

Dickinson K, et al. JAMA Netw Open. 2024;7:e2431722.

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男性乳がんの病理学的特徴と生存期間

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 男性の乳がんは女性の乳がんと同様の治療戦略で管理されている。今回、中国・空軍軍医大学西京病院のMeiling Huang氏らは、自施設における男性乳がんの臨床病理学的特徴、治療、生存期間について後ろ向きに分析・報告した。American Journal of Men’s Health誌2024年9・10月号に掲載。

 本研究は2006年8月~2024年3月に西京病院に入院した男性乳がん患者66例を対象とした。データは病院記録と西京病院の乳がんデータベースから収集した。

 主な結果は以下のとおり。

・男性乳がんの罹患率は2018年から増加傾向にあり、女性乳がん患者よりも高齢であった。
・最も多い組織型は浸潤がんで、ホルモン受容体陽性であった。
・計62例(93.9%)に修正根治的乳房切除術が施行されていた。
・化学療法は39例(59.1%)、内分泌療法は14例(21.2%)、放射線療法は9例(13.6%)に施行されていた。
・全生存期間中央値は46.7ヵ月(0.9~184.8ヵ月)で、最新データでは58例(87.9%)が生存している。
・生存期間と有意に関連する因子は、年齢(χ2=3.856、p=0.050)、エストロゲン受容体(χ2=10.427、p=0.005)、分子タイプ(χ2=10.641、p=0.031)、p63(χ2=2.631、p<0.001)、内分泌療法(χ2=31.167、p<0.001)であった。

 著者らは「これらの結果は男性乳がんに関する貴重な知見を提供し、標準治療の参考となる」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Huang M, et al. Am J Mens Health. 2024;18:15579883241284981.

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乳がん術後放射線療法、最適な分割照射法は?/BMJ

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 乳がん術後放射線療法において、中等度寡分割照射(MHF)は通常分割照射(CF)と比較して腫瘍学的な治療アウトカムが同等でありながら安全性、美容およびQOLを改善し、超寡分割照射(UHF)はMHFやCFと比較した無作為化比較試験は少ないものの、短期間の追跡ではその安全性と腫瘍学的有効性は同程度であった。シンガポール国立大学のShing Fung Lee氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「治療期間の短縮、患者の利便性の向上ならびに費用対効果などを考慮すると、MHFおよびUHFは適切な臨床状況ではCFよりも好ましい選択肢とみなされなければならない。これらの知見を確かなものにするためにはさらなる研究が必要である」とまとめている。BMJ誌2024年9月11日号掲載の報告。

CF、MHF、UHFのRCTをメタ解析

 研究グループは、Ovid MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsを用い、2023年10月23日までに発表された乳がん術後放射線療法の有効性および安全性に関する文献について、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。

 対象試験の適格基準は、CF(総線量50~50.4Gy/25~28回[1日1.8~2Gy、5~6週間])、MHF(1回2.65~3.3Gyを13~16回[3~5週間])、またはUHF(5回のみ)について評価した無作為化比較試験であった。

 2人の研究者が独立してデータ抽出とチェックを行い、コクランバイアスリスクツール(バージョン2)およびGRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluations)を用いて、バイアスリスクおよびエビデンスの質、確実性を評価した。

 メタ解析では、ランダム効果モデルを用いてリスク比(RR)およびハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出し、コクランQ検定とI2統計量を用いて異質性を分析した。また、頻度論的(frequentist)ランダム効果モデルを用いてネットワークメタ解析も行った。

 主要アウトカムは、Grade2以上の急性放射線皮膚炎および晩期放射線障害、副次アウトカムは美容、QOL、局所再発、無病生存期間、全生存期間などであった。

MHFはCFより急性放射線皮膚炎のリスクが低い

 検索の結果、1,754本の文献が特定され、適格基準を満たした59本の文献に含まれる臨床試験35件(被験者計2万237例)が解析対象となった。全体として、評価項目の21.6%はバイアスリスクが低かったが、78.4%はバイアスリスクが中または高と評価された。

 MHFによるGrade2以上の急性放射線皮膚炎のCFに対するRRは、乳房温存術を受けた患者のみを対象とした8件の臨床試験で0.54(95%CI:0.49~0.61、p<0.001)、乳房切除術を受けた患者のみを対象とした10件の臨床試験で0.68(0.49~0.93、p=0.02)であった。

 乳房温存術と乳房切除術を合わせた場合、色素沈着およびGrade2以上の乳房縮小はCF後よりMHF後のほうが低頻度で、RRはそれぞれ0.77(0.62~0.95、p=0.02)および0.92(0.85~0.99、p=0.03)であった。しかし、乳房温存術のみの試験では、色素沈着(RR:0.79、95%CI:0.60~1.03、p=0.08)および乳房縮小(0.94、0.83~1.07、p=0.35)に関する差は統計学的に有意ではなかった。

 UHFのMHFに対するGrade2以上の急性放射線皮膚炎のRRは、乳房温存術と乳房切除術を合わせた場合0.85(0.47~1.55、p=0.60)であった。

 MHFはCFと比較して、美容およびQOLの改善と関連していたが、UHFとの比較では関連はみられなかった。再発および生存に関しては、UHF、MHF、CFで同様であった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Lee SF, et al. BMJ. 2024;386:e079089.

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HR陽性早期乳がん、内分泌療法中断中の出産・授乳の安全性(POSITIVE)/ESMO2024

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 妊娠・出産を希望するホルモン受容体陽性早期乳がん患者における、これまでで最大規模の前向きコホート研究で、内分泌療法を中断して出産した女性の約3分の2が母乳育児をしており、短期的には母乳育児の乳がん無発症期間(BCFI)への影響は認められないことが明らかになった。イタリア・European Institute of OncologyのFedro A. Peccatori氏が、POSITIVE試験の副次評価項目についての結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。

 POSITIVE試験は、乳がんStageI~IIIで術後補助内分泌療法期間が18~30ヵ月の、妊娠を希望する42歳以下の女性を対象として行われた。2014年12月~2019年12月に1ヵ月以内に内分泌療法を中止した女性が組み入れられ、3ヵ月間のウォッシュアウト期間、妊娠・出産(±母乳育児)のための最大2年までの休薬期間を経て内分泌療法を再開した。

 主要評価項目は乳がん無発症期間(BCFI)で、追跡期間中央値41ヵ月において、術後補助内分泌療法を一時的に中断しても、短期の乳がん再発リスクは増加しなかったことがすでに報告されている(3年時のBCFIイベント発生率:中断群8.9% vs.対照群9.2%、絶対群間差:-0.2%、ハザード比:0.81[95%信頼区間:0.57~1.15])。今回は、重要な副次評価項目の母乳育児に関するアウトカムについて結果が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・POSITIVE試験に組み入れられた518例のうち、317例が1人以上の生児を出産した。うち両側乳房切除を受けていないのは313例で、196例(62.6%)が母乳育児を行った。
・196例のベースライン特性は、35歳以上が62.7%を占め、初産が83.6%、pN0の症例が67.8%、化学療法歴ありが57.6%であった。
・196例中130例(66.3%)が乳房温存術を受けており、66例(33.6%)が片側乳房切除術を受けていた。
・母乳育児の頻度は、35歳以上(67.6% vs.55.7%)、初産(66.4% vs.48.5%)、乳房温存術を受けた女性(77.8% vs.45.2%)で高かった。
・授乳期間の中央値は4.4ヵ月(0~24.2ヵ月)で、37.1%は6ヵ月以上、12.8%は12ヵ月以上、1.5%は24ヵ月以上授乳していた。
・追跡期間中央値41ヵ月において、全体で9件のBCFIイベント(3件の局所再発含む)が発生した。12ヵ月時のBCFIイベント発生率は授乳群1.1% vs.非授乳群1.9%、24ヵ月時のBCFIイベント発生率は授乳群3.6% vs.非授乳群3.1%であった。

 Peccatori氏はより長期の追跡調査が必要としたうえで、今回の結果は妊娠や出産を希望する患者にとって重要な意味を持つとし、母乳育児に関するカウンセリングを個別の支援に組み入れていく必要があるとした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

POSITIVE試験(ClinicalTrials.gov)

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乳がん術前療法でのDato-DXdからの逐次治療、HR・免疫反応・DRD全陰性例で対照群より優れる(I-SPY2.2)/ESMO2024

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 StageII/IIIの高リスクHER2-乳がんの術前療法において、datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)単独治療で始める3ブロックの逐次治療戦略により、38.1%で病理学的完全奏効(pCR)を達成し、その約半数がDato-DXd単独治療後に達成したことが第II相I-SPY2.2試験で示された。また、ホルモン受容体(HR)・免疫反応・DNA修復欠損(DRD)がすべて陰性のサブタイプでpCR率が対照群を上回ったという。米国・University of Alabama at BirminghamのKatia Khoury氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表した。本結果はNature Medicine誌オンライン版2024年9月14日号に同時掲載された。

 I-SPY2.2試験は、外科的切除時のpCR達成のために術前療法を個別化・最適化することを目的とし、反応予測サブタイプ(RPS)に基づいて治療ブロックを割り当て、ブロックAでは新規薬剤を投与、ブロックBとCでは従来の標準療法を行う連続多段階ランダム割り付け試験である。治療は標準療法とマッチングされ、RPSは免疫療法の有用性、DRD、HRの有無、HER2の有無により分類された。

 本試験の適格患者は、70遺伝子シグネチャー(MammaPrint)で高リスクのStageII/IIIのHER2-乳がんである。Dato-DXdアームにおける治療は、ブロックAではDato-DXdを3週ごと4サイクル静注、ブロックBはタキサンを含む化学療法(±ペムブロリズマブ)、ブロックCはアントラサイクリンを含む化学療法(±ペンブロリズマブ)とした。ブロックAまたはBの終了時にpCRが予測された患者は手術に移行し、予測されない場合はブロックB±ブロックCに進む。予測残存腫瘍量の評価のために治療への反応を乳房MRIと生検で評価し、治療方針は担当医師が決定した。主要評価項目はpCRで、以前のI-SPYデータから得られた各サブタイプの対照群と比較した。

 ASCO2024ではブロックAの結果が報告され、今回はDato-DXdアーム全体の結果が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・2022年6月~2023年9月に103例がDato-DXd群に無作為に割り付けられた。
・年齢中央値は46歳、腫瘍サイズ5cm以上が29%、リンパ節転移ありが64%、トリプルネガティブが48.5%、免疫+が45%であった。
・pCRを達成したのは全体で38.1%(37例)で、ブロックA後に達成したのは18例、ブロックB後は13例、ブロックC後は6例であり、48.7%がブロックAのみで達成した。
・感度分析において、すべて陰性(HR-/免疫-/DRD-)のサブタイプでDato-DXd のpCR率が対照群を上回った。その他のサブタイプでは上回らなかったが、治療戦略に従った患者のpCR率は対照群と同様であった。
・ブロックAで最も多かった有害事象は、悪心、疲労、発疹であった。口内炎と眼毒性はそれほど多くはなく、ほとんどが低Gradeだった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

I-SPY試験(Clinical Trials.gov)

Khoury K, et al. Nat Med. 2024 Sep 14.[Epub ahead of print]

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乳がん術前療法でのDato-DXd+デュルバルマブからの逐次治療、免疫反応陽性例で高いpCR率(I-SPY2.2)/ESMO2024

 StageII/IIIの高リスクHER2-乳がんの術前療法において、datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)+デュルバルマブで始める3段階の逐次治療戦略により、50%で病理学的完全奏効(pCR)を達成したことが第II相I-SPY2.2試験で示された。免疫療法に反応する免疫反応陽性サブタイプでpCR率が最も高く、標準化学療法なしで50%以上、アントラサイクリンなしで90%以上がpCRを達成した。また、ホルモン受容体(HR)・免疫反応・DNA修復欠損(DRD)がすべて陰性のサブタイプでpCR率が対照群を上回ったという。米国・Columbia University Vagelos College of Physicians and SurgeonsのMeghna S. Trivedi氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表した。本結果はNature Medicine誌オンライン版2024年9月14日号に同時掲載された。

 I-SPY2.2試験は、外科的切除時のpCR達成のために術前療法を個別化・最適化することを目的とし、反応予測サブタイプ(RPS)に基づいて治療ブロックを割り当て、ブロックAでは新規薬剤を投与、ブロックBとCでは従来の標準療法を行う連続多段階ランダム割付試験である。治療は標準療法とマッチングされ、RPSは免疫療法の有用性、DRD、HRの有無、HER2の有無により分類された。

 本試験の適格患者は、70遺伝子シグネチャー(MammaPrint)で高リスクのStageII/IIIのHER2-乳がんである。Dato-DXd+デュルバルマブアームにおける治療は、ブロックAではDato-DXd 6mg/kg+デュルバルマブ1,120mgを3週ごと4サイクルまで静注、ブロックBはタキサンを含む化学療法±ペムブロリズマブ、ブロックCはアントラサイクリンを含む化学療法±ペンブロリズマブとした。ブロックAまたはBの終了時にpCRが予測された患者は手術に移行し、予測されない場合はブロックB±ブロックCに進む。予測残存腫瘍量の評価のために乳房MRIと生検で治療への反応を評価し、治療方針は最終的に担当医師が決定した。主要評価項目はpCRで、以前のI-SPYデータから得られた各サブタイプの対照群と比較した。

 ASCO2024ではブロックAの結果が報告され、今回はDato-DXd+デュルバルマブアーム全体の結果が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・2022年9月~2023年8月に106例がDato-DXd+デュルバルマブ群に無作為に割り付けられた。
・年齢中央値は50.5歳で、免疫+のサブタイプが47例と最も多く、うち3分の1(17例)がHR+だった。
・pCR率は、HR+/免疫-/DRD-および免疫-/DRD+のサブタイプでは対照群を上回らなかったが、すべて陰性(HR-/免疫-/DRD-)のサブタイプでは対照群を有意に上回った。
・一方、pCRの達成時期をみると、pCRを達成した53例(50%)のうち、ブロックA後が25例、ブロックB後が22例、ブロックC後が6例であった。
・免疫+およびトリプルネガティブのサブタイプで高いpCR率(順に79%、62%)を示し、どちらのサブタイプもこのうち54%がブロックAで達成し、92%がブロックBまでに達成した。
・Dato-DXd+デュルバルマブ併用で報告された毒性プロファイルは先行研究と一致しており、全ブロックにおける免疫関連有害事象もこれまでの結果と一致していた。
・高血圧既往のある70歳の参加者1例がブロックBで心停止により死亡した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

I-SPY試験(Clinical Trials.gov)

Shatsky RA, et al. Nat Med. 2024 Sep 14. [Epub ahead of print]

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