閉経後早期乳がんへの術前内分泌療法、フルベストラントvs.フルベストラント+AI vs.AI/JAMA Oncol

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 エストロゲン受容体(ER)陽性/ERBB2陰性の閉経後進行乳がん患者において、アナストロゾールへのフルベストラントの追加が生存率を改善させたことが報告されているが、早期乳がんにおける試験は行われていない。米国・Washington University School of MedicineのCynthia X. Ma氏らは、ER-rich/ERBB2陰性の閉経後早期乳がん患者における術前内分泌療法(NET)としてのフルベストラント単剤およびアナストロゾールとの併用療法が、アナストロゾール単剤療法に比べて優れるかどうかについて検討した第III相無作為化試験の結果を、JAMA Oncology誌オンライン版2024年1月18日号で報告した。

 本試験はStageII~III、ER-rich(Allred score:6~8または>66%)/ERBB2陰性の閉経後乳がん患者が対象。アナストロゾール群(A群)、フルベストラント群(F群)、アナストロゾール+フルベストラント群(A+F群)に無作為に割り付けられ、それぞれ術前6ヵ月間の投与を受けた。

 主要評価項目は内分泌感受性疾病率(ESDR)。副次評価項目は4週間のNET後のKi-67スコアの変化率(4週目のKi-67抑制効果)とされた。Ki-67スコアは4週目、および必要に応じて12週目に評価され、いずれかの時点で10%を超えた場合、術前化学療法または即時手術に切り替えられた。

 主な結果は以下のとおり。

・2014年2月~2018年11月までに、1,362例の女性患者(平均[SD]年齢:65.0[8.2]歳)が登録された。
・評価可能な1,298例において、ESDRはA群18.7%(95%信頼区間[CI]:15.1~22.7)、F群22.8%(95%CI:18.9~27.1)、A+F群20.5%(95%CI:16.8~24.6)であった。
・A群と比較して、フルベストラントを含むレジメンはどちらもESDRまたは4週目のKi-67抑制効果を有意に改善しなかった。
・4週目または12週目でKi-67スコアが10%を超えた割合は、A群25.1%、F群24.2%、およびA+F群15.7%であった。
・4週目または12週目でKi-67スコアが10%を超え、術前化学療法に切り替えた後、病理学的完全奏効(pCR)は167例中8例、residual cancer burden(RCB)-Iは167例中8例で確認された(pCR/RCB-I率:15.0%、95%CI:9.9~21.3)。
・ベースラインのPAM50サブタイプについてデータが得られた753例(58%)において、Luminal Aは394例、Luminal Bは304例、non-Luminalは55例であった。
・Luminal Bにおいて、A+F群はA群と比較して4週目のKi-67抑制効果が高かった(中央値[IQR]:-90.4%[-95.2~-81.9] vs.-76.7%[-89.0~-55.6]、p<0.001)。この傾向はLuminal Aではみられなかった。
・non-Luminalの36例(65.5%)では、4週目または12週目のKi-67スコアが10%を超えていた。

 著者らは今回の結果を受けて、ER-rich/ERBB2陰性の閉経後早期乳がん患者におけるNETとしての標準治療はアロマターゼ阻害薬で変更はないとしたうえで、探索的分析で明らかになったPAM50サブタイプによるNETへの反応の違いについてはさらなる検討が必要としている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Ma CX, et al. JAMA Oncol. 2024;e236038. [Epub ahead of print]

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中間期乳がん、生殖細胞系列遺伝子変異と関連/JAMA Oncol

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 検診と検診の間にみつかる乳がんは中間期乳がんと呼ばれ、検診でみつかる乳がんより臨床病理学的特徴が悪く、予後も不良である。これまで中間期乳がんと生殖細胞系列遺伝子変異との関連は研究されていないことから、今回、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJuan Rodriguez氏らが中間期乳がんと検診発見乳がんの識別に生殖細胞系列タンパク質切断型変異体(PTV)を適用できるかどうか検討した。JAMA Oncology誌オンライン版2024年1月25日号に掲載。

 この研究は、スウェーデンでマンモグラフィ検査を受けている40~76歳の女性で、2001年1月~2016年1月に乳がんと診断された全女性と、年齢をマッチさせた対照を対象としたもの。乳がん患者については2021年まで生存について追跡し、34の乳がん感受性遺伝子の生殖細胞系列PTVをターゲットシークエンシングにより解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・乳がん患者4,121例(中間期乳がん:1,229例、検診発見乳がん:2,892例)はすべて女性で、平均年齢は55.5歳(SD:7.1歳)であった。対照は5,631人であった。
・中間期乳がんの患者は検診発見乳がん患者より、5つの主要遺伝子(ATMBRCA1BRCA2CHEK2PALB2)にPTVを保有する可能性が高く(オッズ比[OR]:1.48、95%信頼区間[CI]:1.06~2.05)、主にBRCA1/2PALB2の変異と関連していた。
・乳がん家族歴を持つ女性は、これら5つの遺伝子のいずれかにPTVを保有していると、検診発見乳がんと比較して中間期乳がんリスクが相乗的に増加した(OR:3.95、95%CI:1.97~7.92)。
・中間期乳がんの診断を受けた場合、これら5つの遺伝子のいずれかにPTVを保有する患者はいずれの遺伝子も持たない患者に比べて生存率が有意に低い(ハザード比:2.04、95%CI:1.06~3.92)ことが、10年乳がん特異的生存率から明らかになった。
・これらの関連はすべて、以前の検診で乳腺密度が低かった中間期乳がん患者でより顕著であった。

 著者らは「本研究の結果は、乳がんの治療だけでなく、死亡率低下を目的とした将来の検診プログラムの最適化にも有用だろう」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Rodriguez J, et al. JAMA Oncol. 2024 Jan 25:e236287. [Epub ahead of print]

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乳がん検診、異型検出後の罹患リスクは?/BMJ

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 乳がん検診で異型を伴う病変が検出された場合、その後の短期間において、マンモグラフィ検査を毎年行うことは有益ではないことが、英国・ウォーリック大学のKaroline Freeman氏らによる検討で示された。悪性か否かが不明の異型を伴う乳房病変が検出された場合、乳がんの長期リスクが3~4倍増加する可能性が示されている。英国、欧州、米国のガイドラインでは、異型部位を吸引式乳房組織生検(VAB)または手術で切除し、画像サーベイランスを行うことが推奨されている。しかし、画像サーベイランスを5年間にわたり毎年行うことについてはエビデンスがなく、期間、頻度、妥当性が議論の的となっていた。なお、今回の結果について著者は、「長期的リスクについてさらなるエビデンスが必要である」と述べている。BMJ誌2024年2月1日号掲載の報告。

上皮異型が診断された女性3,238例のその後の乳がん例数・種類を調査

 研究グループは、検診での異型検出後の乳がん発症例数と種類について調べるため、英国で3年に1回の検診での検出が予測される例数(女性1,000人当たり11.3例)と比較した。

 イングランドのSloane Atypia Projectの前向きコホートを対象とした観察研究を実施した。同コホートには、英国の国民保健サービス(NHS)乳がん検診プログラムで診断された異型が含まれており、English Cancer RegistryおよびMortality and Birth Information Systemとリンクしていることから、その後の乳がんおよび死亡に関する情報を得ることができる。

 解析には、2003年4月1日~2018年6月30日に上皮異型と診断された女性3,238例が含まれた。

 主要アウトカムは、異型診断後1年、3年、6年後に検出された浸潤性乳がんの例数と種類で、異型の種類、年齢、診断暦年別に解析した。

マンモと生検の技術的変化で、異型のリスク特定が可能に?

 異型検出は、2010年の119例から、デジタルマンモグラフィ導入後の2015年には502例と4倍に増加していた。

 2018年12月までの追跡期間中(異型診断後の1万9,088人年)に、女性141例が乳がんを発症した。異型が検出された女性1,000人当たりの浸潤性乳がんの累積発症率は、異型検出後1年時点で0.95(95%信頼区間[CI]:0.28~2.69)、3年時点で14.2(10.3~19.1)、6年時点で45.0(36.3~55.1)だった。異型検出がより直近の時期だった女性ほど、その後3年以内にがんが検出された割合は低かった。

 浸潤性乳がん検出(女性1,000人当たり)は、2013~18年は6.0(95%CI:3.1~10.9)であったのに対し、2003~07年は24.3(13.7~40.1)、2008~12年は24.6(14.9~38.3)だった。浸潤性乳がんのグレード、大きさ、リンパ節転移は、一般の検診集団で検出されたがんと同等(同側および対側がんの例数も同等)だった。

 結果を踏まえて著者は、「多くの異型はリスク因子ではあるが、短期的には、手術が必要となる浸潤性乳がんの前兆ではないと思われた」とし、「異型検出がより直近の女性ほど、その後にがんが検出される割合が低かったのは、過剰診断に相当する可能性が高い異型を検出するマンモグラフィや生検の技術的変化と関連していると思われる」と述べている。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)


【原著論文はこちら】

Freeman K, et al. BMJ. 2024;384:e077039.

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検診以外で発見の非浸潤性乳管がん、浸潤性病変・乳がん死の長期リスク高い/BMJ

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 検診以外で発見された非浸潤性乳管がん(DCIS)の女性は、診断後少なくとも25年間は、一般集団の女性と比較して浸潤性乳がんや乳がん死のリスクが高く、検診でDCISが検出された女性に比べ長期的なリスクも高いことが、英国・オックスフォード大学のGurdeep S. Mannu氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年1月24日号に掲載された。

長期リスクを評価するイングランドのコホート研究

 本研究は、検診以外で検出されたDCISにおける浸潤性乳がんと乳がん死の長期的なリスクの評価を目的に、一般集団の女性と検診でDCISと診断された女性を比較する住民ベースのコホート研究である(Cancer Research UKなどの助成を受けた)。

 1990~2018年に、英国国民保健サービス(NHS)の乳房検診プログラム以外でDCISと診断されたイングランドの女性2万7,543例を解析に含めた。

浸潤性乳がん、乳がん死の実測値は予測値より高い

 2018年12月31日の時点で、検診以外でDCISと診断された女性のうち3,651例が浸潤性乳がんを発症した。これは、全国的ながん罹患率から予測される値の4倍以上であった(実測値/予測値の比:4.21、95%信頼区間[CI]:4.07~4.35)。また、浸潤性乳がん発症の実測値/予測値の比は、追跡期間を通じて高いままであった。DCIS診断時年齢別の、浸潤性乳がんの25年間の累積リスクは、45歳未満で27.3%、45~49歳で25.2%、50~59歳で21.7%、60~70歳で20.8%だった。

 乳がんで死亡した女性は全体で908例。これは、一般集団の乳がん死亡率から予測される値のほぼ4倍(実測値/予測値の比:3.83[95%CI:3.59~4.09])であった。また、乳がんに起因する死亡の実測値/予測値の比は、追跡期間を通じて高値を維持していた。DCIS診断時年齢別の、乳がん死の25年間の累積リスクは、45歳未満で7.6%、45~49歳で5.8%、50~59歳で5.9%、60~70歳で6.2%であった。

乳房切除術は浸潤性乳がんを低減、乳がん死には影響せず

 50~64歳(NHS乳房検診の対象年齢)の女性では、検診でDCISが検出された女性に対する、検診以外でDCISが検出された女性の、浸潤性乳がん発症の実測値/予測値の比は1.26(95%CI:1.17~1.35)、同じく乳がん死亡率の実測値/予測値の比は1.37(1.17~1.60)であった。

 手術を受けた片側DCIS女性2万2,753例では、乳房温存術に比べ乳房切除術で、同側浸潤性乳がんの25年累積リスクが低かった(乳房切除術8.2%[95%CI:7.0~9.4]、乳房温存術+放射線治療:19.8%[16.2~23.4]、乳房温存術単独:20.6%[18.7~22.4])。

 一方、乳がん死の25年累積リスクは、乳房切除術と乳房温存術(±放射線治療)で同程度であった(乳房切除術:6.5%[95%CI:4.9~10.9]、乳房温存術+放射線治療8.6%[5.9~15.5]、乳房温存術単独7.8%[6.3~11.5])。

 著者は、「DCIS女性では、浸潤性乳がんと乳がん死のリスク増加が少なくとも25年間続いたことから、DCIS生存者は少なくとも30年間は、サーベイランスの恩恵を受ける可能性があると示唆された」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Mannu GS, et al. BMJ. 2024;384:e075498.

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ER陽性/HER2陽性乳がん、PR陽性vs.陰性で転帰の差は

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 エストロゲン受容体(ER)陽性プロゲステロン受容体(PR)陽性HER2陽性(ER+/PR+/HER2+)乳がんとER+/PR-/HER2+乳がんは、異なる臨床病理学的特徴および生存転帰を示すことが示唆された。中国・Shaoxing Second HospitalのWu Ding氏らによるBreast Cancer誌オンライン版2024年1月17日号掲載の報告より。

 本研究では、Shanghai Jiao Tong University Breast Cancer Data Baseと国立がん研究所のSEER(Surveillance、Epidemiology、and End Results)データベースを用いて分析。傾向スコア調整法により両サブタイプ間の患者特性のバランスが調整された。カプランマイヤー生存曲線により両サブタイプの無病生存期間(DFS)、乳がん特異的生存期間(BCSS)、全生存期間(OS)を推定したほか、多変量モデルを使用して閉経状態、病理学的分類(pN)、抗HER2療法および内分泌療法の有無についてサブグループ解析が行われた。

 主な結果は以下のとおり。

・ER+/PR+/HER2+乳がんは、とくに閉経後およびpN0の患者において、ER+/PR-/HER2+ 乳がんと比較して有意に良好なDFSおよびBCSSを示した。
・抗HER2療法および内分泌療法後の生存転帰は両サブタイプで同様であった。
・選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)治療を受けたER+/PR-/HER2+乳がん患者では、ER+/PR+/HER2+乳がん患者と比較して予後が有意に悪かった。

 著者らは今回の結果を踏まえ、ホルモン受容体の状態と特定のモダリティについて考慮した個別の治療戦略を立てる必要があると結論付けている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Ding W, et al. Breast Cancer. 2024 Jan 17. [Epub ahead of print]

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新規がんは世界で約2,000万例、日本で多いがん種との違いは?/WHO

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 2024年2月1日、世界保健機関(WHO)のがんに特化した機関である国際がん研究機関(IARC)は、185ヵ国から収集したがん負担に関する最新の推計を発表した。それによると、2022年には全世界で新たに約2,000万例のがん患者が生じ、約970万例が死亡したと推定される。36のがん種のうち、世界で最も多く発症および死亡したのは肺がんで、日本で最も多く発症したのは大腸がん、最も多く死亡したのは肺がんであった。

<全世界>
 全世界では、2022年に新たに1,996万5,054例(男性:1,030万6,574例、女性:965万8,480例)ががんに罹患し、死亡は973万6,520例(男性:542万6,895例、女性:430万9,625例)と推定される。

 新規発症したがんは、全体では肺がんが最も多く(12.4%[248万308例])、乳がん(11.6%[230万8,931例])、大腸がん(9.6%[192万6,136例])、前立腺がん(7.3%[146万6,718例])、胃がん(4.9%[96万8,365例])と続いた。男女別では、男性では肺がん(15.3%)、前立腺がん(14.2%)、大腸がん(10.4%)、胃がん(6.1%)、肝がん(5.8%)が多く、女性では乳がん(23.8%)、肺がん(9.4%)、大腸がん(8.9%)、子宮がん(6.8%)、甲状腺がん(6.4%)が多かった。

 死亡が最も多かったのは、全体では肺がん(18.7%[181万7,131例])で、大腸がん(9.3%[90万3,853例])、肝がん(7.8%[75万7,906例])、乳がん(6.9%[66万9,418例])、胃がん(6.8%[65万9,805例])と続いた。男性では肺がん(22.7%)、肝がん(9.6%)、大腸がん(9.2%)、胃がん(7.9%)、前立腺がん(7.3%)の順に多く、女性では乳がん(15.4%)、肺がん(13.6%)、大腸がん(9.4%)、子宮がん(8.1%)、肝がん(5.5%)の順に多かった。

 なお、肺がんは、アジアにおけるタバコの習慣的な使用が関係している可能性が高いと推測されている。

<日本>
 日本では、2022年に新たに100万5,157例(男性:58万535例、女性:42万4,622例)ががんに罹患し、42万6,278例(男性:24万823例、女性:18万5,455例)が死亡したと推定される。

 新規発症したがんは、全体では大腸がん(14.5%[14万5,756例])、肺がん(13.6%[13万6,723例])、胃がん(12.6%[12万6,724例])、前立腺がん(10.4%[10万4,318例])、乳がん(9.1%[9万1,916例])の順に多かった。男女別では、男性では前立腺がん(18.0%[10万4,318例])が最も多く、肺がん(16.5%[9万5,740例])、胃がん(14.5%[8万4,071]、大腸がん(13.9%[8万435例])、肝がん(4.9%[2万8,678])と続いた。女性では乳がん(21.6%[9万1,916例])、大腸がん(15.4%[6万5,321例])、胃がん(10.0%[4万2,653例])、肺がん(9.7%[4万983例])、膵がん(5.7%[2万4,018例])の順に多かった。

 死亡が最も多かったのは、全体では肺がん(19.5%[8万3,243例])で、大腸がん(14.2%[6万473例])、胃がん(10.3%[4万3,807例])、膵がん(10.1%[4万3,265例])、肝がん(6.2%[2万6,420例])と続いた。男性では肺がん、大腸がん、胃がんが多く、女性では大腸がん、肺がん、膵がんが多かった。

 2050年には新たに3,500万例以上のがん患者が発生すると予測しており、これは2022年の推定2,000万例から77%の増加である。急速に増加する世界的ながん罹患は、人口の高齢化や増加、社会経済的発展に関連する危険因子(タバコ、アルコール、肥満、大気汚染など)への曝露の変化を反映しているとされる。

(ケアネット 森 幸子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

WHO/IARC:Global cancer burden growing, amidst mounting need for services

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第21回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2024

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 日本臨床腫瘍学会は2024年1月31日にプレスセミナーを開催し、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(2024年2月22日~24日)の注目演題などを紹介した。

 今回は、国・立場・専門分野・職種・治療手段などのあらゆる障壁をなくし、世界を1つにして皆で語り、議論をして、その先に続く未来を切り拓いていきたいという願いを込め、「Break the Borders and Beyond ~for our patients~」というテーマが設定された。演題数は1,258となり、そのうち海外演題数は511と過去最多になる予定である。

プレジデンシャルシンポジウムなどの注目演題

 能澤 一樹氏(愛知県がんセンター ゲノム医療センターがんゲノム医療室・乳腺科部 医長)が、本会で企画されているプレジデンシャルシンポジウムを紹介した。プレジデンシャルシンポジウムは8セッション、シンポジウムは30セッション企画されている。プレジデンシャルシンポジウムは以下のとおり。

【プレジデンシャルシンポジウム】
会長企画シンポジウム1:Real World Data(RWD)活用に向けた基盤整備
2月22日(木)9:00~10:20
会長企画シンポジウム2:ICIで変わる、周術期治療
2月22日(木)10:30~11:30
会長企画シンポジウム3:腫瘍内科医に知って欲しい外科治療の進歩
2月22日(木)15:30~17:00
会長企画シンポジウム4:多学際領域との協働で奏でる臨床腫瘍学の未来
2月23日(金)8:20~9:50
会長企画シンポジウム5:超高齢社会のがん医療、日本はどうすべきか
2月23日(金)9:50~11:20
会長企画シンポジウム6:臨床開発や日常診療のためのReal World Data活用を考える
2月24日(土)8:20~9:50
会長企画シンポジウム7:がん診療は集約化か均てん化か
2月24日(土)13:45~15:15
会長企画シンポジウム8:新規薬剤開発における新しいドラッグロス
2月24日(土)9:50~11:50

 また、岩田 広治氏(愛知県がんセンター副院長 兼 乳腺科部長)は、プレジデンシャルセッションが充実していることを強調した。プレジデンシャルセッションで発表されるデータは、過去に国際学会で発表されたものではなく、世界で初めて発表されるデータとなっている。紹介された演題は以下のとおり。

【プレジデンシャルセッション】
・肺がんグローバル試験の日本人サブセット解析:1演題
・肺がんグローバル試験のアジア人サブセット解析:1演題
・肺がんグローバル試験の全生存期間アップデート:1演題
・消化器がん大規模コホート研究からの新規データ(SCRUM-Japan MONSTAR SCREEN2、GALAXY Trial):3演題
・血液がんの新規薬剤第I相試験:1演題
・乳がん新規抗体薬物複合体のグローバル試験のアジア人サブセット解析:1演題
・乳がん新規グローバル試験のバイオマーカー解析:1演題
・日本での新規抗体薬物複合体の第I相試験データ:1演題
・消化器がんの日本での第III相試験のバイオマーカー解析:1演題
・消化器がんのグローバル試験の日本人サブセット解析:1演題
・肝胆膵領域でのJCOG試験の追加解析結果:1演題

新規薬剤のドラッグロスへの取り組み

 室 圭氏(愛知県がんセンター 薬物療法部 部長)がドラッグロスについて解説した。ドラッグロスは、欧米にて承認されている薬剤が日本では開発されず、使用できないという問題であり、ドラッグロスに該当する抗がん剤は2016年時点で21剤であったのに対し、2020年時点では44剤に増加している。この原因として、海外新興企業が開発する薬剤の増加、臨床試験に日本が組み入れられないことなどが挙げられる。

 そこで、わが国が直面する喫緊の問題の解決に向けて、以下のシンポジウムが企画されている。

会長企画シンポジウム8:新規薬剤開発における新しいドラッグロス
2月24日(土)9:50~11:50

リアルワールドデータの活用に向けた諸問題

 武藤 学氏(京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学講座 教授)がリアルワールドデータの活用法と現状の課題について紹介した。国際的には、リアルワールドデータを用いて薬剤の承認申請を行うことが検討されており、実際に活用され始めている。日本でもさまざまなデータベースが利用できるようになっているが、アウトカムのデータが存在しない、デジタル化が遅れている、電子カルテメーカーや施設によって情報のコードやデータ構造が異なる、医療者によって記載方法が異なるナラティブデータの取り扱い方が定まっていないなど、課題が山積している。

 そこで、リアルワールドデータの活用に向けて、以下のシンポジウムが企画されている。

会長企画シンポジウム1:Real World Data(RWD)活用に向けた基盤整備
2月22日(木)9:00~10:20
会長企画シンポジウム6:臨床開発や日常診療のためのReal World Data活用を考える
2月24日(土)8:20~9:50

(ケアネット 佐藤 亮)


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乳房温存術後の局所再発率、70遺伝子シグネチャーで予測可能か(MINDACT)/JCO

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 乳房温存手術を受けた早期乳がん患者の局所再発リスクは、70遺伝子シグネチャー(MammaPrint)によるリスクと独立して関連しないことが、EORTC 10041/BIG 03-04 MINDACT試験の探索的サブ解析で示された。また、術後8年間の局所再発率は3.2%と推定された。オランダ・Netherlands Cancer Institute-Antoni van Leeuwenhoek HospitalのSena Alaeikhanehshir氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年1月19日号で報告。

 本解析は、EORTC 10041/BIG 03-04 MINDACT試験において、乳房温存手術を受け、臨床的リスクおよび70遺伝子シグネチャーによるリスクが判明している女性を評価した。主要評価項目は累積発生率で推定した8年の局所再発率だった。

 主な結果は以下のとおり。

・登録患者6,693例中5,470例(81.7%)が乳房温存手術を受け、そのうち98%が放射線治療を受けていた。
・8年間で189例に局所再発が発生し、8年累積発生率は3.2%(95%信頼区間[CI]:2.7~3.7)であった。
・70遺伝子シグネチャーによる低リスク患者における8年累積発生率は2.7%(95%CI:2.1~3.3)であった。
・単変量解析では、化学療法で調整後、12変数のうち70遺伝子シグネチャーを含む5変数が局所再発と関連した。多変量解析では、術後内分泌療法、腫瘍径、悪性度と関連していた。

 著者らは「この探索的解析では、局所再発イベント数が少なかったためか、70遺伝子シグネチャーは独立して局所再発を予測するものではなく、現在のところ、局所再発に関する臨床的意思決定には使用できない」とした。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Alaeikhanehshir S, et al. J Clin Oncol. 2024 Jan 19. [Epub ahead of print]

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固形がん治療での制吐療法、オランザピン2.5mgが10mgに非劣性/Lancet Oncol

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 オランザピンは効果的な制吐薬であるが、日中の傾眠を引き起こす。インド・Tata Memorial CentreのJyoti Bajpai氏らは、固形がん患者における催吐性の高い化学療法後の低用量オランザピン(2.5mg)と標準用量オランザピン(10mg)の有効性を比較することを目的に、単施設無作為化対照非盲検非劣性試験を実施。結果をLancet Oncology誌2024年2月号に報告した。

 本試験はインドの3次医療施設で実施され、固形がんに対しドキソルビシン+シクロホスファミドまたは高用量シスプラチン投与を受けているECOG PS 0~2の13~75歳が対象。患者はブロックランダム化法(ブロックサイズ2または4)により2.5mg群(1日1回2.5mgを4日間経口投与)または10mg群(1日1回10mgを4日間経口投与)に1:1の割合で無作為に割り付けられ、性別、年齢(55歳以上または55歳未満)、および化学療法レジメンによって層別化された。研究スタッフは治療の割り当てを知らされていなかったが、患者は認識していた。

 主要評価項目は、修正intent-to-treat(mITT)集団における全期間中(0~120時間)の完全制御(催吐エピソードなし、制吐薬追加なし、悪心なしまたは軽度の悪心で定義)。日中の傾眠は関心のある安全性評価項目とされた。非劣性は治療群間における完全制御割合の差の片側95%信頼区間(CI)の上限値が非劣性マージン10%未満の場合と定義された。

 主な結果は以下のとおり。

・2021年2月9日~2023年5月30日に、356例が適格性について事前スクリーニングを受け、うち275例が登録され、両群に無作為に割り付けられた(2.5mg群:134例、10mg群:141例)。
・267例(2.5mg群:132例、10mg群:135例)がmITT集団に含まれ、うち252例(94%)が女性、242例(91%)が乳がん患者であった。
・2.5mg群では132例中59例(45%)、10mg群では135例中59例(44%)が全期間において完全制御を示した(群間差:-1.0%、片側95%CI:-100.0~9.0、p=0.87)。
・全期間において、2.5mg群では10mg群に比べ、Gradeを問わず日中の傾眠が認められた患者(65% vs.90%、p<0.0001)および1日目に重篤な傾眠が認められた患者(5% vs.40%、p<0.0001)が有意に少なかった。

 著者らは、催吐性の高い化学療法を受けている患者においてオランザピン2.5mgは10mgと比較して制吐効果が非劣性で、日中の傾眠を減少させることが示唆されたとし、新たな標準治療として考慮されるべきとしている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Bajpai J, et al. Lancet Oncol. 2024;25:246-254.

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TN乳がんの治療薬SG、日本での製造販売承認を申請/ギリアド

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 ギリアド・サイエンシズは、2024年1月30日付のプレスリリースで、全身療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性かつHER2陰性(HR-/HER2-)乳がん治療薬として開発を進めている抗体薬物複合体(ADC)sacituzumab govitecan(SG)について、同日に日本における製造販売承認申請を行ったと発表した。

 HR-/HER2-(IHCスコア0、IHCスコア1+またはIHCスコア2+/ISH陰性)乳がん(トリプルネガティブ乳がん)は、最も悪性度の高いタイプの乳がんで、乳がん全体の約10%を占めるといわれている。HR-/HER2-乳がんの細胞は、エストロゲンとプロゲステロンの受容体の発現がなく、HER2の発現も限定的もしくはまったく認められない。HR-/HER2-乳がんはその性質上、他の乳がんに比べて有効な治療法がきわめて限られており、再発や転移の可能性が高く、他の乳がんにおける転移・再発までの平均期間が5年であるのに対し、HR-/HER2-乳がんでは約2.6年、5年生存率は、一般的な再発乳がんの女性においては28%、HR-/HER2-再発乳がんにおいては12%とされている。

 SGは、90%以上の乳がんを含む複数のがん種で高発現する細胞表面抗原であるTrop-2蛋白を標的とするADCである。Trop-2が発現したがん細胞に取り込まれると、トポイソメラーゼI阻害薬であるSN-38を直接届けるとともに、バイスタンダー効果により周辺のがん細胞のDNAにも作用し、がん細胞を死滅させる。

 今回の承認申請は、2つ以上の化学療法レジメンによる前治療後に再発した切除不能な局所進行または転移・再発のHR-/HER2-乳がん患者を対象に海外で実施した第III相試験(ASCENT試験)および国内第II相臨床試験(ASCENT-J02試験)の結果に基づく。

(ケアネット)


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