PD-L1陽性乳がん、nab-PTXにtoripalimab上乗せでPFS改善(TORCHLIGHT)

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 再発または転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療として、nab-パクリタキセルに抗PD-1抗体toripalimabを上乗せした第III相TORCHLIGHT試験の結果、PD-L1陽性集団において無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、安全性プロファイルは許容可能であったことを、中国・Fifth Medical Center of Chinese PLA General HospitalのZefei Jiang氏らが明らかにした。Nature Medicine誌2024年1月号掲載の報告。

 TORCHLIGHT試験は、再発または転移を有するTNBCで、全身療法を受けていない18~70歳の女性患者を対象に、1次治療としてnab-パクリタキセル+プラセボ群(178例)と比較して、nab-パクリタキセル+toripalimab群(353例)の有効性と安全性を評価することを目的とする多施設共同無作為化二重盲検試験。主要評価項目は、PD-L1陽性集団およびITT集団における盲検下独立中央判定(BICR)によるPFSで、副次評価項目は全生存期間(OS)と安全性であった。

 主な結果は以下のとおり。

・PD-L1陽性患者は、toripalimab群で200例、プラセボ群で100例であった。
・PD-L1陽性集団において、PFS中央値はtoripalimab群8.4ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月であり、toripalimab群で統計学的に有意な改善が示された(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.47~0.906、p=0.0102)。
・OS中央値は、toripalimab群32.8ヵ月、プラセボ群19.5ヵ月であった(HR:0.62、95%CI:0.414~0.914、p=0.0148)。
・治療に起因する有害事象(AE)はtoripalimab群99.2% vs.プラセボ群98.9%に発現した。うちGrade3以上のAEは56.4% vs.54.3%、致死的AEは0.6% vs.3.4%であった。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Jiang Z, et al. Nat Med. 2024;30:249-256.

【参考文献・参考サイトはこちら】

TORCHLIGHT試験(ClinicalTrials.gov)

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米国の乳がん死亡率の低下、治療の変化との関連は?/JAMA

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 米国の乳がん死亡率は、乳がんのスクリーニングと治療の改善によって、1975年から2019年までに58%低下したことが、米国・スタンフォード大学のJennifer L. Caswell-Jin氏らによるシミュレーションモデル研究で示された。シミュレーションでは、StageI~IIIの乳がんの治療が、47%の低下に寄与していることが示された一方で、転移のある乳がんについては、治療の寄与は29%、スクリーニングの寄与は25%であった。米国における乳がん死亡率は、1975年から2019年の間に減少したことが報告されていたが、転移のある乳がん治療の変化と乳がん死亡率低下との関連はわかっていなかった。JAMA誌2024年1月16日号掲載の報告。

CISNETの4つのモデルで乳がん死亡率をシミュレーション

 研究グループは、本研究のためにCancer Intervention and Surveillance Modeling Network (CISNET)が開発した4つのモデルを用い、マンモグラフィーによるスクリーニングと治療(StageI~IIIの乳がん治療、転移のある乳がん治療)の普及および効果に関する観察研究ならびに臨床試験のデータを集約し、1975~2019年の米国における30~79歳の女性の乳がん死亡率を、全体およびエストロゲン受容体(ER)およびERBB2(HER2)状態別にシミュレーションした。

 主要アウトカムは、乳がんの年齢調整死亡率で、スクリーニング、StageI~IIIの治療および転移のある乳がん治療の介入がない場合と比較した。また、乳がんの転移再発後の生存期間中央値についてもモデルで推定した。

1975年から2019年に乳がん死亡率は58%低下、転移治療の寄与は29%

 米国における乳がんの年齢調整死亡率は、1975年が女性10万人当たり48、2019年は同27であった。

 スクリーニング、StageI~IIIの乳がん治療および転移のある乳がん治療の3つすべての介入を反映したモデルでは、1975年に比べて2019年の乳がん死亡率は58%低下(モデル範囲:55~61)した。この低下について、転移のある乳がん治療の介入だけを反映したモデルでは29%(モデル範囲:19~33)、StageI~IIIの乳がん治療のみだけの場合は47%(35~60)、マンモグラフィー検査のみだけの場合は25%(21~33)の低下であった。

 シミュレーションに基づくと、転移再発後の生存の最も大きな変化は2000年から2019年の間に起きており、生存期間中央値は1.9年(モデル範囲:1.0~2.7)から3.2年(2.0~4.9)に延長していた。また、ER陽性/ERBB2陽性乳がんの生存期間中央値は2.5年(2.0~3.4)延長していた一方で、ER陰性/ERBB2陰性乳がんの生存期間中央値の延長は0.5年(0.3~0.8)であった。

 なお著者は、モデルの精度は実施された仮定に依存していること、モデルにはスクリーニングや治療の普及と有効性における年齢、人種、民族などによる潜在的な格差や、治療費やアウトカムとの関連性は組み込まれていないことなどを研究の限界として挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Caswell-Jin JL, et al. JAMA. 2024;331:233-241.

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PARP阻害薬タラゾパリブ、BRCA変異陽性乳がん、前立腺がんに承認/ファイザー

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 ファイザーは2024年1月18日、PARP阻害薬タラゾパリブ(商品名:ターゼナ)について、同剤の単剤療法による「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」、および同剤とエンザルタミドとの併用による「BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌」の治療薬として、国内における製造販売承認を取得した。

 今回の承認は、乳がんについての海外第III相試験(EMBRACA試験)および国内第I相試験の結果等、前立腺がんについては国際共同第III相試験(TALAPRO-2試験の結果等に基づいている。

 EMBRACA試験は、化学療法歴がある生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性の転移を有する乳がんを対象に、同剤と化学療法を比較する第III相非盲検無作為化並行2群多施設共同試験である。タラゾパリブ群は化学療法群と比較して、主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)の延長を示し、忍容性は良好であった。

 TALAPRO-2試験は、全身治療歴がない転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(相同組換え修復遺伝子変異の有無を問わず)を対象に、同剤とエンザルタミドの併用を評価する第III相二重盲検無作為化プラセボ対照多施設共同試験である。同剤とエンザルタミド併用群は、エンザルタミド群と比較して、主要評価項目の画像診断に基づくPFSの延長を示した。

(ケアネット 細田 雅之)


【参考文献・参考サイトはこちら】

EMBRACA試験(ClinicalTrials.gov)

TALAPRO-2試験(ClinicalTrials.gov)

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プラチナ治療歴のある進行TN乳がんの維持療法、オラパリブ±デュルバルマブが有効(DORA)

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 プラチナ製剤ベースの化学療法に感受性のある進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する維持療法として、オラパリブ±デュルバルマブの有効性を検討した第II相DORA試験において、デュルバルマブ併用/非併用のいずれの群も化学療法による維持療法のヒストリカルコントロールより無増悪生存期間(PFS)が長く、BRCA野生型プラチナ製剤感受性の進行TNBCの患者集団において、化学療法なしの維持療法で持続的な病勢コントロールが可能なことが示唆された。シンガポール・国立がんセンターのTira J. Tan氏らがClinical Cancer Research誌オンライン版2024年1月18日号で報告した。

 本試験は国際多施設第II相試験で、プラチナ製剤ベースの化学療法による1次治療もしくは2次治療で病勢安定(SD)持続または完全/部分奏効(CR/PR)が得られたTNBC(エストロゲン/プロゲステロン受容体発現率10%以下)患者を対象とし、オラパリブ単独群(オラパリブ300mg1日2回)とデュルバルマブ併用群(4週ごとにデュルバルマブ1,500mgを併用)に1:1で無作為に割り付けた。主要評価項目はPFSで、化学療法を継続するヒストリカルコントロールと比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・計45例をオラパリブ単独群23例、デュルバルマブ併用群22例に無作為に割り付けた。
・追跡期間中央値9.8ヵ月の時点で、無作為化からのPFS中央値はオラパリブ単独群で4.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:2.6~6.1)、デュルバルマブ併用群で6.1ヵ月(同:3.7~10.1)であり、いずれもヒストリカルコントロールより有意に長かった(順にp=0.0023、p<0.0001)。
・臨床的有用率(SDが24週以上またはCR/PR)は、オラパリブ単独群で44%(95%CI:23~66)、デュルバルマブ併用群で36%(同:17~59)であった。
・生殖細胞系列BRCA遺伝子変異やPD-L1発現にかかわらず、持続的な臨床的有用性が認められ、とくにオラパリブ単独群ではプラチナ製剤の前治療に対するCR/PRと関連する傾向がみられた。
・安全性に関する新たなシグナルは報告されなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Tan TJ, et al. Clin Cancer Res. 2024 Jan 18. [Epub ahead of print]

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HR+HER2-進行乳がん、パルボシクリブ+タモキシフェンが治療選択肢に/ファイザー

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 ファイザーは1月15日付のプレスリリースにて、パルボシクリブの添付文書が改訂されたことを発表した。ホルモン受容体(HR)陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)の進行または転移乳がん患者へのパルボシクリブとタモキシフェン併用投与の有効性と安全性を検討した第III相試験(PATHWAY試験)の結果に基づくもので、これにより、パルボシクリブとタモキシフェンとの併用が新たな治療選択肢となる。

 パルボシクリブはこれまで、レトロゾールまたはフルベストラントとの併用投与の成績に基づいて承認されており、タモキシフェンとの併用における有効性や安全性は確立されていなかった。またアジア地域では欧米に比べ、全乳がんのうち閉経前乳がんの占める割合が多く、治療選択肢が十分でない状況があった。

 PATHWAY試験は、HR+/HER2-の閉経前・閉経後の進行または転移乳がん患者を対象に、パルボシクリブとタモキシフェンの併用投与と、プラセボとタモキシフェンの併用投与を比較した国際多施設共同無作為化二重盲検試験で、国立がん研究センター中央病院が主導した医師主導治験。日本(12施設)、韓国(6施設)、台湾(3施設)、シンガポール(2施設)の4ヵ国が参加した。

 本試験において、パルボシクリブとタモキシフェンの併用投与は、プラセボとタモキシフェンの併用投与と比較し、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある無増悪生存期間(PFS)の延長を示し、試験の主要目的を達成した。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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黒砂糖、がん発症を抑制か~J-MICC研究

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 黒砂糖にはミネラル、ポリフェノール、ポリコサノールが多く含まれているが、黒砂糖が健康に役立つと評価した疫学研究はほとんどない。今回、鹿児島大学の宮本 楓氏らが、長寿者の割合が比較的高く黒砂糖をおやつにしている奄美群島の住民を対象としたコホート研究を実施したところ、黒砂糖摂取ががん全体、胃がん、乳がんの発症リスク低下と関連することが示された。Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition誌2023月12月号に掲載。

 本研究は日本多施設共同コホート研究(J-MICC研究)の一環で、黒砂糖摂取と死亡リスクおよびがん発症率の関連を明らかにするために実施された。奄美の一般住民から参加者を募集し、5,004人(男性2,057人、女性2,947人)が参加した。追跡期間中央値13.4年の間に274例が死亡、338例でがんが発症した。糖関連およびその他の変数を調整後、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間を推定した。黒砂糖の摂取頻度により低摂取群(週1回未満)、中摂取群(週1~6回)、高摂取群(1日1回以上)に分け、低摂取群を基準とした中摂取群、高摂取群の各HRとその傾向を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・交絡因子調整後、男女におけるがん全体と胃がん、女性における乳がんについて、黒砂糖の中摂取群と高摂取群のHRが低く、HRの低下傾向(がん全体:傾向のp=0.001、胃がん:傾向のp=0.017、乳がん:傾向のp=0.035)が認められた。
・肺がんは非喫煙者および元喫煙者のみHRの低下傾向がみられた(傾向のp=0.039)。
・全死亡、がん死亡、心血管疾患死亡におけるHRの低下は明らかではなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Miyamoto K, et al. Asia Pac J Clin Nutr. 2023;32:426-433.

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乳がん脳転移例、全脳照射前のBEEPで脳特異的PFS改善

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 脳転移を有する乳がん患者において、ERBB2(HER2)サブタイプにかかわらず、ベバシズマブ+エトポシド+シスプラチン(BEEP)導入療法を行ってから放射線の全脳照射を行った場合、全脳照射のみの場合よりも脳特異的無増悪生存期間(PFS)が有意に改善したことを、国立台湾大学病院のTom Wei-Wu Chen氏らが明らかにした。JAMA Oncology誌オンライン版2023年12月21日号掲載の報告。

 近年、乳がんに対する薬物療法は目覚ましい進歩を遂げており、術後再発や遠隔転移のコントロールが良好になっている。しかし、脳転移に奏効する薬剤は乏しく、治療の評価は確立していない。そこで研究グループは、BEEP導入療法を追加することで、全脳照射後の脳特異的PFSが改善するかどうかを検討するため、多施設共同無作為化非盲検試験を実施した。

 研究グループは、2014年9月9日~2018年12月24日まで台湾の脳転移を有する乳がん患者を評価し、2021年12月31日まで追跡調査を行った。対象は、年齢20~75歳、全脳照射未実施、局所治療に適さない脳転移で少なくとも1つの測定可能な病変を有する乳がん患者であった。BEEP導入療法を3サイクル行った後に全脳照射を行う実験群と、全脳照射のみを行う対照群に2:1の割合で無作為に割り付けた。

 主要評価項目は、RECIST v1.1に基づく脳特異的PFS、全脳照射後の脳転移病変に対する他治療の開始、死亡であった。その他の評価項目は、8週後の脳特異的奏効率(ORR)、8ヵ月後の脳特異的PFS率、PFS、全生存期間であった。

 主な結果は以下のとおり。

・合計118例が無作為化され、intention-to-treatコホートは112例(実験群74例、対照群38例)で構成された。年齢中央値は56歳(範囲:34~71)、61例(54.5%)がERBB2陽性であった。
・脳特異的PFSの中央値は、実験群は8.1ヵ月(範囲:0.3~29.5)、対照群は6.5ヵ月(範囲:0.9~25.5)であった(ハザード比:0.71、95%信頼区間:0.44~1.13、p=0.15[事前に設定した有意水準を超えていたため有意])。
・8週後の脳特異的ORRに有意差はなかった(実験群41.9%、対照群52.6%)。
・8ヵ月後の脳特異的PFS率は、実験群は48.7%であった一方で対照群は26.3%であり、実験群において有意に高かった(p=0.03)。
・有害事象は、予防的なG-CSF製剤投与で管理可能であった。

 これらの結果より、研究グループは「この知見は、放射線の全脳照射の前にBEEP導入療法を行うことで、脳転移を有する乳がんのコントロールが改善する可能性があることを示しており、難治性脳転移および頭蓋外転移に対する全身療法のアンメットニーズに対応できる可能性がある」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Chen TW, et al. JAMA Oncol. 2023 Dec 21. [Epub ahead of print]

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炎症性乳がんへのNAC、1ラインvs.2~3ラインで転帰の差は

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 多くのStageIII炎症性乳がん患者は、第1選択治療として術前化学療法(NAC)を受け、十分な反応を示し手術可能となるが、追加のNACが必要となるケースもある。米国・ハーバード大学医学大学院のFaina Nakhlis氏らは、1ラインvs.2~3ラインのNACを受けた患者における臨床転帰を評価した。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年12月28日号への報告。

 2施設において、1ラインまたは2~3ラインのNACを受けたStageIII炎症性乳がん患者が特定された。ホルモン受容体とHER2の状態、グレード、および病理学的完全奏効(pCR)が評価され、乳がんのない生存期間(BCFS)および全生存期間(OS)はKaplan-Meier法により評価された。多変数Coxモデルを用いてハザード比(HR)が推定された。

 主な結果は以下のとおり。

・808例の適格患者が特定された(1997~2020年、年齢中央値:51歳、追跡期間中央値:69ヵ月)。
・733例(91%)が1ライン、75例(9%)が2~3ラインのNACを受けていた。2~3ラインのNACを受けた患者において、グレード3、トリプルネガティブ、HER2陽性の乳がんがより多かった。
・1ラインの患者178例(24%)、2~3ラインの患者14例(19%)でpCRを達成した。
・5年BCFSは2~3ラインの患者で不良であったが(33% vs.46%、HR:1.37、95%信頼区間[CI]:0.99~1.91)、pCRを達成した192例では同様であった(1ラインの患者:76% vs.2~3ラインの患者:83%)。
・308例(1ラインの患者:276例、2~3ラインの患者:32例)が死亡した。
・5年OSは1ラインの患者:60% vs.2~3ラインの患者:53%(HR:1.32、95%CI:0.91~1.93)、 pCR達成例では1ラインおよび2~3ラインの患者でともに83%であった。

 著者らは、「StageIII炎症性乳がん患者において、pCR率はNACのライン数によらず同様であり、pCRを達成した患者におけるBCFSおよびOSは同程度であった」としている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Nakhlis F, et al. Breast Cancer Res Treat. 2023 Dec 28. [Epub ahead of print]

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脳転移のある乳がんの予後、HER2低発現vs.HER2ゼロ

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 脳転移した乳がん患者において、HER2低発現の患者はHER2ゼロの患者よりも良好な予後を示し、とくにホルモン受容体(HR)陰性の患者で顕著であることが、中国・National Cancer CenterのHangcheng Xu氏らの後ろ向き研究で示された。Breast誌オンライン版2024年1月1日号に掲載。

 この後ろ向き研究は、2010年1月~2021年7月にHER2発現状況が確認できた乳がん脳転移患者について、HER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)患者71例とHER2ゼロ患者64例を比較したもの。主要評価項目は脳転移診断後の全生存期間(OS)で、log-rank検定を用いたKaplan-Meier曲線とCox比例ハザードモデルで評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・限られたサンプル数にもかかわらず、HER2低発現患者のOSはHER2ゼロ患者と比較して有意に良好だった(26ヵ月vs.20ヵ月、p=0.0017)。この傾向はHR陰性群で顕著(26ヵ月vs.13ヵ月、p=0.0078)だったが、HR陽性群では有意差は認められなかった。
・Cox回帰分析により、HER2低発現がHR陰性患者のOSを延長する独立した予後因子であることが明らかになった(多変量解析においてp=0.046)。

 本研究の結果、HER2低発現が脳転移のある乳がん患者の生存期間延長に関連することが示唆された。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Xu H, et al. Breast. 2024:73:103669. [Epub ahead of print]

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オリゴ転移乳がん・NSCLC、SBRTは有益か?/Lancet

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 体幹部定位放射線治療(SBRT)+標準ケアの全身性治療(標準治療)は標準治療単独と比較して、無増悪生存期間(PFS)を延長することが示された。ただし、オリゴ転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)患者で、SBRT+標準治療は標準治療単独と比較してPFSを4倍以上延長し、有効性のある治療となる可能性が示された一方で、オリゴ転移のある乳がん患者ではベネフィットは観察されなかった。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのChiaojung Jillian Tsai氏らによる第II相非盲検無作為化試験の結果で、著者は「さらなる検討を行い、今回示された所見を検証し、ベネフィットが異なった要因を明らかにする必要がある」とまとめている。転移のあるがん患者の多くは、最終的に全身性治療に対する耐性を獲得し、一部の患者は限定的な病勢進行(すなわちオリゴ転移)を有する。研究グループは、オリゴ転移病変を標的としたSBRTが患者アウトカムを改善可能か評価した。Lancet誌オンライン版2023年12月14日号掲載の報告。

オリゴ転移のある乳がんまたはNSCLC患者を対象に無作為化試験

 試験は、18歳以上で、少なくとも1次治療の全身性治療を受けたオリゴ転移(PET-CTまたはCTで進行病変が5つ以下)のある、乳がんまたはNSCLCの患者を対象に行われた。

 被験者は、ニューヨーク市にある3次がんセンターと、ニューヨーク州とニュージャージー州にある6つの関連地域センターで登録され、1対1の割合で標準治療群またはSBRT+標準治療群に無作為化された。無作為化はコンピュータベースのアルゴリズムを用いて行われ、転移病変数、レセプターまたはドライバー遺伝子変異の状態、原発巣、前治療の全身性治療の種類で層別化した。患者と試験担当医は治療割り付けをマスキングされなかった。

 主要評価項目はPFSで、最長12ヵ月まで測定した。事前規定に基づき、疾患部位別に主要評価項目のサブグループ解析を行った。すべての解析はITT集団で行った。

SBRT+標準治療群のPFSが有意に延長

 2019年1月1日~2021年7月31日に、106例が標準治療群(51例[乳がん患者23例、NSCLC患者28例])またはSBRT+標準治療群(55例[24例、31例])に無作為化された。乳がん患者47例のうち16例(47%)がトリプルネガティブであり、NSCLC患者59例のうち51例(86%)は臨床的有用性の期待できる(actionable)ドライバー遺伝子変異を有していなかった。

 試験は、事前に計画された中間解析中に主要有効性評価項目が達成されたため、目標サンプルサイズを満たす前に終了となった。

 追跡期間中央値は、標準治療群11.6ヵ月、SBRT+標準治療群12.1ヵ月であった。PFS中央値は標準治療群3.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:2.0~4.5)、SBRT+標準治療群7.2ヵ月(4.5~10.0)であった(ハザード比[HR]:0.53、95%CI:0.35~0.81、p=0.0035)。

 PFS中央値は、SBRT+標準治療を受けたNSCLC患者のほうが標準治療のみを受けた同患者よりも有意に延長した(10.0ヵ月[95%CI:7.2~未到達]vs.2.2ヵ月[2.0~4.5]、HR:0.41[95%CI:0.22~0.75]、p=0.0039)。しかし、乳がん患者では同様の所見は認められなかった(4.4ヵ月[2.5~8.7]vs.4.2ヵ月[1.8~5.5]、HR:0.78[0.43~1.43]、p=0.43)。

 Grade2以上の有害事象が、標準治療群で21例(41%)、SBRT+標準治療群で34例(62%)報告された。SBRT+標準治療群の9例(16%)では、SBRTに関連したGrade2以上の毒性(胃食道逆流症、疼痛増悪、放射線肺臓炎、腕神経叢損傷、血球数低下など)が報告された。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Tsai CJ, et al. Lancet. 2023 Dec 14. [Epub ahead of print]

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