非浸潤性乳管がんの腫瘍径と断端、進展リスクとの関連は?/BMJ

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 非浸潤性乳管がん(DCIS)の腫瘍径および切除断端の状態と、同側浸潤性乳がんおよび同側DCISのリスクとの関連は小さく、これら2つの因子を他の既知のリスク因子に加えた多変量モデルでは、臨床病理学的リスク因子だけでは低リスクDCISと高リスクDCISを区別することに限界があるという。オランダがん研究所(NKI)のRenee S. J. M. Schmitz氏らGrand Challenge PRECISION consortiumの研究グループが、国際統合コホート研究の結果を報告した。どのようなDCISで、その後のイベントリスクが高いかを明らかにする必要があるが、現在の臨床的特徴がどの程度役立つかは不明であった。BMJ誌2023年10月30日号掲載の報告。

4つの大規模コホート約4万8千人のデータを統合解析

 研究グループは、DCISの腫瘍径および切除断端の状態と、治療後の同側浸潤性乳がんおよび同側DCISへの進展リスク、ならびに同側浸潤性乳がんのステージおよびサブタイプとの関連性を検討する目的で、オランダ、英国、米国で行われた4つの大規模コホート研究を統合解析した。対象被験者は、1999~2017年に純型の原発性DCISと診断され、乳房温存術または乳房切除術のいずれかを受け、術後に放射線療法または内分泌療法あるいはその両方が実施された4万7,695例の女性患者。解析には、患者個々のデータを用いた。

 主要評価項目は、同側浸潤性乳がんおよび同側DCISの10年累積発生率で、DCISの腫瘍径と切除断端の状態との関連について、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。

腫瘍径は同側DCISと、切除断端陽性は同側浸潤性乳がん・同側DCISと関連

 同側浸潤性乳がんの10年累積発生率は3.2%であった。放射線療法の有無にかかわらず乳房温存術を受けた女性において、腫瘍径がより大きいDCIS(20~49mm)は20mm未満のDCISと比較し、同側DCISの補正後リスクのみ有意に増加した(ハザード比[HR]:1.38、95%信頼区間[CI]:1.11~1.72)。同側浸潤性乳がんおよび同側DCISのリスクは、切除断端陰性と比較して陽性で有意に高かった(浸潤性乳がんのHR:1.40[95%CI:1.07~1.83]、DCISのHR:1.39[1.04~1.87])。

 術後内分泌療法は、乳房温存術のみの治療と比較して、同側浸潤性乳がんのリスク低下と有意な関連は認められなかった(HR:0.86、95%CI:0.62~1.21)。放射線療法の有無にかかわらず、乳房温存術を受けた女性では、DCISのグレードの大きさは同側浸潤性乳がんと有意に関連しなかったが、同側DCISのリスクは高かった(Grade1でのHR:1.42[95%CI:1.08~1.87]、Grade3でのHR:2.17[1.66~2.83])。

 診断時の年齢が高いほど、同側DCISの1年当たりのリスクは低く(HR:0.98、95%CI:0.97~0.99)、同側浸潤性乳がんのリスクとの関連はみられなかった(HR:1.00、95%CI:0.99~1.00)。

 腫瘍径が大きいDCIS(≧50mm)は小さいDCIS(<20mm)と比較し、StageIIIおよびIVの同側浸潤性乳がんを発症する割合が高かったが、切除断端陽性と陰性の比較では同様の関連性はみられなかった。

 また、DCISの腫瘍径とホルモン受容体陰性HER2陽性同側浸潤性乳がん、ならびに切除断端陽性とホルモン受容体陰性同側浸潤性乳がんとの関連が確認された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Schmitz RSJM, et al. BMJ. 2023;383:e076022.

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日本人乳がん患者におけるHER2低発現の割合・特徴(RetroBC-HER2L)/日本癌治療学会

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 HER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)の乳がん患者に対する治療薬の臨床的ベネフィットが示され、その割合や治療パターン、転帰などについて理解を深めることが求められる。HER2陰性転移乳がんにおけるHER2低発現患者の割合を10ヵ国13施設で評価したRetroBC-HER2L試験の日本人解析結果を、昭和大学病院の林 直輝氏が第61回日本癌治療学会学術集会(10月19~21日)で発表した。日本からは3施設が参加している。

・対象:2014年1月~2017年12月に切除不能および/または転移を有するHER2陰性(IHC 0、1+、2+/ISH-)乳がんと診断され治療を受けた患者
・評価項目:
[主要評価項目]過去のHER2固定組織スライドを実施医療機関の検査室で(ベンタナ4B5または他の検査法を用いて)再評価した結果に基づくHER2低発現の割合、ベースライン特性、治療パターン、アウトカム(治療成功期間[TTF]、最初の後治療開始または死亡までの期間[TFST]、全生存期間[OS])
[副次評価項目]HER2低発現の病理組織学的・臨床病理学的特徴、過去のHER2検査と再検査結果の一致状況など

 主な結果は以下のとおり。

・日本人サブセットには155例が組み入れられ、ホルモン受容体陽性(HR+)が120例/陰性(HR-)が35例、HER2再検査にベンタナ4B5が用いられたのが130例/その他の検査法が25例だった。
・再評価の結果、過去にHER2陰性と評価された患者におけるHER2低発現の患者の割合は61.3%(155例中95例)だった(全体集団では67.2%)。ホルモン受容体の状態ごとにみると、HR+患者の68.3%(120例中82例)、HR-患者の37.1%(35例中13例)が該当した。なお検査法別にみると、ベンタナ4B5で63.8%(130例中83例)、その他の検査法で48.0%(25例中12例)だった。
・HER2低発現とHER2 IHC 0の患者の間で、年齢中央値(HR+:56.5歳vs.55.0歳、HR-:50.0歳vs.47.0歳)、閉経状態(閉経後がHR+:63.4% vs.65.8%、HR-:53.8% vs.40.9%)のほか、ベースラインでの転移箇所や転移個数について有意な差はみられなかった。
・治療パターンについては、一次治療としてHR+では内分泌療法単独が53.4% vs.66.7%、HR-では単剤化学療法が45.5% vs.38.9%用いられていた。
・アウトカムについて、TTF中央値(HR+:5.6ヵ月vs.6.0ヵ月、HR-:3.7ヵ月vs.3.8ヵ月)およびTFST中央値(HR+:8.3ヵ月vs.6.0ヵ月、HR-:4.1ヵ月vs.5.0ヵ月)はホルモン受容体の状況によらずHER2発現による顕著な差はみられなかったが、OS中央値はHER2 IHC 0かつHR-(トリプルネガティブ乳がん)で短い傾向がみられた(HR+:38.7ヵ月vs.32.4ヵ月、HR-:29.8ヵ月vs.14.4ヵ月)。
・過去のHER2検査と再検査結果の一致率は82.6%(κ=0.636)。過去にHER2 IHC 0と診断された症例の陽性一致率は76.2%(63例中48例)、過去にHER2低発現と診断された症例の陽性一致率は87.0%(92例中80例)となり、IHC 0がHER2低発現と再評価される頻度よりもHER2低発現がIHC 0と再評価される頻度のほうが低いという点で、全体集団と同様の傾向がみられた。
・ベンタナ4B5が用いられた症例についてみると、過去にHER2 IHC 0と診断された症例の陽性一致率は72.4%(54例中39例)、過去にHER2低発現と診断された症例の陽性一致率は89.5%(76例中68例)となり、過去にHER2 IHC0と診断された約3人に1人がトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の治療適応になりうるHER2低発現と再評価される可能性があり、適切な治療選択のためにHER2発現の再評価を考慮すべきことが示された。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

RetroBC-HER2L試験(ClinicalTrials.gov)

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AI耐性HR+進行乳がんへのフルベストラント+capivasertib、日本人解析結果(CAPItello-291)/日本癌治療学会

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 アロマターゼ阻害薬(AI)耐性のホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)進行乳がん(切除不能の局所進行もしくは転移・再発乳がん)に対するフルベストラントへのAKT阻害薬capivasertibの上乗せ効果を検討した第III相CAPItello-291試験の日本人サブグループ解析結果を、九州がんセンターの徳永 えり子氏が第61回日本癌治療学会学術集会(10月19~21日)で発表した。

・対象:閉経前/後の女性もしくは男性のHR+/HER2-の進行乳がん患者(AI投与中/後に再発・進行、進行がんに対して2ライン以下の内分泌療法・1ライン以下の化学療法、CDK4/6阻害薬治療歴ありも許容、SERD・mTOR阻害薬・PI3K阻害薬・AKT阻害薬の治療歴は不可、HbA1c 8.0%未満)
・試験群(capi群):capivasertib(400mg1日2回、4日間投与、3日間休薬)+フルベストラント(500mg) 37例(グローバル:355例)
・対照群(プラセボ群):プラセボ+フルベストラント 41例(353例)
・評価項目:
[主要評価項目]全体集団およびAKT経路(PIK3CAAKT1PTENのいずれか1つ以上)に変異のある患者集団における無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]全体集団およびAKT経路に変異のある患者集団における全生存期間(OS)、奏効率(ORR)など
[層別化因子]CDK4/6阻害薬治療歴の有無、肝転移の有無など

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値は両群で61歳、閉経後患者はcapi群78.4% vs.プラセボ群70.7%だった。肝転移ありが29.7% vs.31.7%でグローバル(43.9% vs.42.5%)と比較すると少なく、ECOG PS 0が94.6% vs.85.4%と多かった(63.1% vs.68.3%)。
・ベースラインで進行がんに対して1ラインの内分泌療法歴のある患者は51.4% vs.43.9%、CDK4/6阻害薬治療歴のある患者は13.5% vs.19.5%とそれぞれグローバル(80.8% vs.71.4%、69.0% vs.69.1%)と比較すると少なかった。
・AKT経路に変異のある患者は51.4% vs.46.3%とグローバル(43.7% vs.38.0%)と比較してやや多かった。
・全体集団におけるPFS中央値は、Capi群13.9ヵ月vs.プラセボ群7.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.40~1.28)となり、Capi群で臨床的に意義のある改善が認められた(グローバルでは7.2ヵ月vs.3.6ヵ月、HR:0.60、95%CI:0.51~0.71、両側p<0.001)。
・AKT経路に変異のある患者集団におけるPFS中央値は、Capi群13.9ヵ月vs.プラセボ群9.1ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.29~1.39)となり、Capi群で臨床的に意義のある改善が認められた(グローバルでは7.3ヵ月vs.3.1ヵ月、HR:0.50、95%CI:0.38~0.65、両側p<0.001)。
・ORRは全体集団でCapi群29.4% vs.プラセボ群22.0%(グローバルでは22.9% vs.12.2%)、AKT経路に変異のある患者集団で27.8% vs.15.8%(28.8% vs.9.7%)で、グローバルと同様の傾向がみられた。
・重篤な有害事象(SAE)はCapi群で13.5%に認められ、グローバル(16.1%)と同様だったが、AEによる試験薬の中止(日本人サブグループ56.8%、グローバル34.9%)およびAEによる試験薬の減量(27.0%、19.7%)は日本人集団で多い傾向がみられた。
・Capi群の安全性プロファイルはグローバルと同様で、多く認められたAEは下痢(73.0%)、皮疹(48.6%)、口内炎(29.7%)など。皮疹と口内炎は日本人サブグループで多い傾向がみられた。

 徳永氏は日本人サブグループにおけるPFS中央値がグローバルより長いのは、ベースラインでECOG PS 0の患者の割合が多く、肝転移のある患者が少なく、進行がんに対する内分泌/化学療法歴あるいはCDK4/6阻害薬による治療歴のある患者が少なかったことによる可能性があると考察。グローバルでの結果と同様に、日本の患者におけるcapivasertib+フルベストラント併用療法のベネフィットとリスクのプロファイルは良好であり、将来の治療選択肢となる可能性があるとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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CAPItello-291試験(ClinicalTrials.gov)

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HER2+乳がん脳転移例、T-DXdで高い頭蓋内奏効率とCNS-PFS改善(DESTINY-Breast01、02、03プール解析)/ESMO2023

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 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)のDESTINY-Breast01、02、03試験において、ベースライン時に脳転移のあったHER2陽性乳がん患者の探索的プール解析の結果、既治療で安定した脳転移患者および未治療で活動性の脳転移患者で高い頭蓋内奏効率(ORR)が示された。また、中枢神経系無増悪生存期間(CNS-PFS)は、とくに未治療で活動性の脳転移患者において顕著な改善がみられた。米国・Fred Hutchinson Cancer Center, University of WashingtonのSara A. Hurvitz氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。

・対象:DESTINY-Breast01、02試験(トラスツズマブ エムタンシンに抵抗性または不応例)およびDESTINY-Breast03試験(トラスツズマブおよびタキサン系抗がん剤による既治療例)で、ベースライン時に脳転移のあったHER2陽性乳がん患者
・方法:ベースライン時に既治療で安定した脳転移患者と未治療で活動性脳転移患者に分け、T-DXd群と対照薬群で比較
・評価項目:盲検下独立中央判定(BICR)による頭蓋内ORR(頭蓋内完全奏効[CR]/部分奏効[PR])、頭蓋内奏効期間(DOR)、BICRによるCNS-PFS、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時に脳転移のあった患者はT-DXd群148例、対照薬群83例、そのうち再発乳がんがそれぞれ85例、51例だった。脳転移患者での前治療歴の中央値は3レジメン(範囲:1.0~14.0)だった。
・頭蓋内ORRは、既治療で安定した脳転移患者においてT-DXd群が45.2%(CR:17例/PR:30例)、対照薬群が27.6%(CR:2例/PR:14例)、未治療の活動性脳転移患者においてT-DXd群が45.5%(CR:7例/PR:13例)、対照薬群が12.0%(CR:0例/PR:3例)と、どちらもT-DXd群が高かった。
・頭蓋内DOR中央値は、既治療で安定した脳転移患者において、T-DXd群12.3ヵ月vs.対照薬群11.0ヵ月、未治療の活動性転移患者ではT-DXd群17.5ヵ月vs.対照薬群NAだった。
・CNS-PFS中央値は、既治療で安定した脳転移患者ではT-DXd群12.3ヵ月vs.対照薬群8.7ヵ月(ハザード比[HR]:0.5905、95%信頼区間[CI]:0.3921~0.8895)、未治療の活動性脳転移患者で18.5ヵ月vs.4.0ヵ月(HR:0.1919、95%CI:0.1060~0.3473)と、どちらもT-DXd群で延長し、とくに未治療の活動性脳転移患者で顕著だった。
・脳転移患者におけるT-DXdの安全性プロファイルは認容可能で管理可能であり、全患者集団と同等であった。

 Hurvitz氏は「T-DXdは、HER2陽性で既治療で安定した脳転移患者および未治療で活動性脳転移患者に対して有効で、許容可能で管理可能な安全性プロファイルを持つ治療オプションである」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)


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DESTINY-Breast01試験(Clinical Trials.gov)

DESTINY-Breast02試験(Clinical Trials.gov)

DESTINY-Breast03試験(Clinical Trials.gov)

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ER+乳がんの術前化療にペムブロリズマブ追加、pCRを有意に改善(KEYNOTE-756)/ESMO2023

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 高リスクのER陽性(+)/HER2陰性(-)早期乳がん患者を対象とした第III相KEYNOTE-756試験の結果、術前化学療法にペムブロリズマブを上乗せすることで、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善したことを、ポルトガル・Champalimaud Clinical Centre/Champalimaud FoundationのFatima Cardoso氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。

・対象:T1c~2 cN1~2またはT3~4 cN0~2、ER+/HER2–、Grade3、未治療の浸潤性乳管がん患者 1,278例
・試験群(ペムブロリズマブ群):ペムブロリズマブ+パクリタキセル→ペムブロリズマブ+AC療法またはEC療法→手術→ペムブロリズマブ+内分泌療法 635例
・対照群(プラセボ群):プラセボ+パクリタキセル→プラセボ+AC療法またはEC療法→手術→プラセボ+内分泌療法 643例
・評価項目:
[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、無イベント生存期間(EFS)
[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、全生存期間、安全性など
・層別化因子:東ヨーロッパ:PD-L1発現状況、中国:なし、その他の国/地域:PD-L1発現状況、リンパ節転移、AC/EC療法の投与スケジュール、ER陽性率

 今回がKEYNOTE-756試験結果の初報告で、主要評価項目の1つであるpCRの結果が報告された。EFSについては引き続き評価が行われる予定。

 主な結果は以下のとおり。

・pCRの最終解析(データカットオフ:2023年5月25日)における追跡期間中央値は33.2ヵ月(範囲:9.7~51.8)であった。
・ペムブロリズマブ群およびプラセボ群の年齢中央値は49歳(範囲:24~82)/49歳(19~78)、PD-L1 CPS≧1%が75.9%/76.0%、T3/4が36.7%/35.8%、リンパ節転移陽性が89.8%/90.5%、ER≧10%が94.6%/93.3%で、両群でバランスがとれていた。
・主要評価項目のpCR(ypT0/Tis ypN0)は、ペムブロリズマブ群24.3%、プラセボ群15.6%であり、統計学的に有意な改善を示した(推定差8.5%[95%信頼区間[CI]:4.2~12.8]、p=0.00005)。
・副次評価項目のpCRは、ypT0 ypN0がペムブロリズマブ群21.3%、プラセボ群12.8%(推定差8.3%[95%CI:4.2~12.4])、ypT0/Tisはペムブロリズマブ群29.4%、プラセボ群18.2%(推定差11.0%[95%CI:6.5~15.7])であった。
・事前に規定したサブグループのpCRもペムブロリズマブ群のほうが良好であった。とくにER陽性率が10%以上の場合の推定差は8.0%であったが、10%未満の場合は25.6%であった。
・Grade3以上の治療関連有害事象発生率は、ペムブロリズマブ群52.5%、プラセボ群46.4%で、安全性プロファイルは既報と一致していた。Grade3以上の免疫関連有害事象はペムブロリズマブ群7.1%、プラセボ群1.2%であった。ペムブロリズマブ群では急性心筋梗塞による死亡が1例(0.2%)認められた。

 これらの結果より、Cardoso氏は「PD-L1発現状況にかかわらず、術前化学療法にペムブロリズマブを追加することで、pCR(ypT0/Tis ypN0)は8.5%改善し、ypT0 ypN0およびypT0/Tisでも同様であった。安全性プロファイルはこれまでのものと同様で、新たな有害事象は報告されなかった」としたうえで、「今回の結果は、もう1つの主要評価項目であるEFSの評価を行うに値する結果である。現時点ではまだ不十分であるが、引き続き評価が必要である」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


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KEYNOTE-756試験(ClinicalTrials.gov)

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Stroke Oncology(脳卒中合併がん)の対策、学会の枠越え取り組み/日本腫瘍循環器学会

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 がん患者の脳梗塞合併の課題解決に向け、脳卒中医とがん診療医が共同で取り組んでいる。

 9月30日~10月1日の2日間、神戸で開催された第6回日本腫瘍循環器学会学術集会にて、NTT東日本関東病院の水上 拓郎氏が発表した。

 がん患者の脳梗塞リスクは非がん患者と比べ高く、そのリスクはステージが進行するごとに上昇する。がん患者の脳卒中合併には複数の因子が絡み、がん種や診断時期によってリスクは異なるため、予後予測は複雑である。

 そのような中、脳卒中とがん、それぞれの専門家が議論する場が必要とされてきた。日本脳卒中学会では2020年からStroke Oncology Project Teamを設立している。日本がんサポーティブケア学会では、腫瘍医側の主体として、Stroke Oncologyワーキンググループ(WG)を2022年に設立した。同WGでは、脳卒中医と連携し、Stroke Oncologyの各種課題について議論する。

 学術集会では最初の取り組みとして実施した日本国内の先行研究のレビューを発表した。脳卒中発症の予測因子として、D-ダイマー、CRP、脳転移の有無、がん診断からの期間の関連が高いと報告している。

(ケアネット 細田 雅之)


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日本がんサポーティブケア学会 Stroke Oncology ワーキンググループ

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高リスク早期乳がんへの術後内分泌療法+アベマシクリブ、5年時解析結果(monarchE)/ESMO2023

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 再発リスクの高いHR+/HER2-リンパ節転移陽性の高リスク早期乳がんにおける術後内分泌療法へのアベマシクリブの追加を検討するmonarchE試験では、無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無遠隔再発生存期間(DRFS)が有意に改善し、2年間の治療後も持続したことが報告されている。今回、事前に規定されていた中間解析における5年時の有効性について、ドイツ・ミュンヘン大学のNadia Harbeck氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。

・対象:再発リスクの高いHR+/HER2-の早期乳がん
[コホート1]リンパ節転移4個以上、リンパ節転移1~3個の場合はグレード3もしくは腫瘍径5cm以上(5,120例)
[コホート2]リンパ節転移1~3個かつKi-67値20%以上かつグレード1~2で腫瘍径5cm未満(517例)
・試験群:術後療法として、標準的内分泌療法(タモキシフェンもしくはアロマターゼ阻害薬)+アベマシクリブ150mg1日2回、アベマシクリブは最長2年投与(ET+アベマシクリブ群:2,808例)
・対照群:術後療法として、標準的内分泌療法を5年以上施行(ET群:2,829例)
・評価項目:
[主要評価項目]iDFS
[副次評価項目]Ki-67高値集団におけるiDFS、DRFS、全生存期間(OS)、安全性、薬物動態、患者報告アウトカム

 主な結果は以下のとおり。

・2023年7月3日のデータカットオフ時点で、追跡期間中央値4.5年(54ヵ月)、全患者がアベマシクリブ投与を終え、80%以上が2年以上追跡されていた。
・ITT集団でのiDFSのベネフィットは持続し、ハザード比(HR)は0.680(95%信頼区間[CI]:0.599~0.772、p<0.001)で、絶対的改善率は、3年時の4.8%、4年時の6.0%に比べ、5年時は7.6%に増加した。サブグループにおいても、iDFSのベネフィットは持続していた。
・ITT集団でのDRFSにおけるベネフィットも持続し、HRは0.675(95%CI:0.588~0.774、p<0.001)で、絶対的改善率は、3年時の4.1%、4年時の5.3%に比べ、5年時は6.7%に増加した。
・ITT集団での死亡例数は、ET+アベマシクリブ群で少なかった(HR:0.903、95%CI:0.749~1.088、p=0.284)。
・今回の解析においても、転移/再発例は引き続きET+アベマシクリブ群で少なかった。
・安全性は、monarchEのこれまでの解析やET+アベマシクリブにおける既知の安全性プロファイルと同様だった。

 Harbeck氏は「術後補助療法の試験で重要な5年時のデータにおいて、アベマシクリブのベネフィットが維持されていた。今回のデータは持ち越し効果と一致し、HR+/HER2-リンパ節転移陽性の高リスク早期乳がんにおける術後内分泌療法へのアベマシクリブの追加をさらに支持する」とした。なお、OSは最終解析まで追跡調査を継続中。

(ケアネット 金沢 浩子)


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monarchE試験(ClinicalTrials.gov)

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腫瘍径の小さいER+/HER2-乳がんへの術後ホルモン療法は必要か

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 マンモグラフィ検査の普及により、腫瘍径の小さな乳がんの検出が増加した。エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)のT1a/bN0M0乳がんにおける術後内分泌療法(ET)の必要性は明らかでない。広島大学の笹田 伸介氏らは同患者における術後ETの有効性を評価、Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年9月9日号に報告した。

 本研究では、2008年1月~2012年12月にJCOG乳がん研究グループ42施設で手術を受けたER+/HER2-のT1a/bN0M0乳がん患者のデータを後ろ向きに収集した。術前補助全身療法を受けた患者とBRCA陽性患者は除外された。主要評価項目は遠隔転移の累積発生率で、両側検定が用いられた。

 主な結果は以下のとおり。

・適格患者4,758例(T1a:1,202例、T1b:3,556例)中3,991例(83%)に標準的な術後ETが実施された。
・追跡期間中央値は9.2年。遠隔転移の9年累積発生率はETありで1.5%、ETなしで2.6%だった(部分分布ハザード比[SHR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.32~0.93)。
・多変量解析の結果、遠隔転移の独立したリスク因子は、ET歴なし、乳房切除術、高悪性度、およびリンパ管侵襲だった。
・9年全生存率はETありで97.0%、ETなしで94.4%だった(調整ハザード比:0.57、95%CI:0.39~0.83)。
・術後ETは同側(9年発生率:1.1% vs.6.9%、SHR:0.17)および対側の乳がん発生率を減少させた(9年発生率:1.9% vs.5.2%、SHR:0.33)。

 ER+/HER2-のT1a/bN0M0乳がん患者の予後は良好であり、臨床リスクによって層別化されることが確認された。また術後ETは、小さな絶対リスク差で遠隔転移の発生率と全生存率を改善した。著者らは、とくに低悪性度でリンパ管侵襲のない患者において、術後ET省略の検討を支持する結果とまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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Sasada S, et al. Breast Cancer Res Treat. 2023;202:473-483.

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診察室での会話を基にした対話型AI、BRCA検査への疑問や不安に対応/AZ

提供元:CareNet.com

 乳がんと診断されてから、患者は治療法選択のほか再建や遺伝子検査を行うかなどたくさんの意思決定を求められる。とくに遺伝子検査については、乳がんと遺伝の関係の理解に加え家族への配慮も必要となるが、外来で説明に十分な時間を設けるのが難しいことも多い。9月27日、アストラゼネカは「乳がんを遺伝子レベルで理解することの重要性~遺伝性乳がん治療における課題とは~」と題したメディアセミナーを開催し、大野 真司氏(相良病院)、乳がん経験者の園田 マイコ氏が登壇。BRCA検査やHBOCについての理解を促す患者向けのサポートツールとして、対話型人工知能WEBアプリ「ブルーカ」が紹介された。

 ブルーカは、60例の患者と複数名の医師の診察室での実際の会話を分析して作られている。分析の結果みえてきたのは、

・知りたいことの傾向(よくある質問)
・患者の感情として恐れや悲しみが強い
・「質問を考えること」が患者にとっては大変

 という3点だった。これらを踏まえてブルーカには下記の機能が搭載されている。

・よくある質問とその回答データを基に、回答を提示する機能
・投げかけられた質問に共感を示し、ブルーカというキャラクターが色味や表情を変えて回答する機能
・アプリ利用者(患者)の“沈黙”を察知し、集積されているよくある質問を例示する機能

 開発に携わった大野氏は、「単純に回答が提示されるのではなく、ブルーカが共感を示しながら対話の中で回答を示すという点が大きいのではないか」と話し、園田氏は「先生に質問できる時間は限られていて、一度聞いただけでは理解できないことも多い。自宅などでゆっくりアプリを使い、繰り返し回答を確認できれば、自分の中で咀嚼しながら正しい情報を理解できるのではないか」と期待を寄せた。

 ブルーカは主治医から「血液による遺伝子検査について」という冊子を渡され、表示されている二次元コードを読み込むと、スマートフォンで利用できる。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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2cm以下の乳がん、センチネルリンパ節生検を省略可能か/JAMA Oncology

提供元:CareNet.com

 センチネルリンパ節生検(SLNB)は早期乳がんの腋窩リンパ節転移を調べる標準的な方法だが、リンパ節検査のための腋窩手術は治療が目的ではないため、その必要性が問われる場合もある。今回、超音波検査でリンパ節転移の疑いのない腫瘍径2cm以下の乳がん患者における無作為化試験(SOUND試験)で、腋窩手術を受けなかった群の5年遠隔無病生存(DDFS)率がSLNBを受けた群に対して非劣性を示したことを、イタリア・Istituto di Ricovero e Cura a Carattere ScientificoのOreste Davide Gentilini氏らが報告した。JAMA Oncology誌オンライン版2023年9月21日号に掲載。

 本試験は、イタリア、スイス、スペイン、チリで実施された前向き第III相無作為化非劣性試験である。2012年2月6日~2017年6月30日に、腫瘍径2cm以下かつ超音波検査で腋窩リンパ節転移の疑いのない1,463例の女性を登録し、SLNBを受ける群(SLNB群)と腋窩手術を受けない群(腋窩手術なし群)に1対1に無作為に割り付けた。ITT解析対象は1,405例、主要評価項目は5年DDFS率であった。

 主な結果は以下のとおり。

・ITT解析に組み入れられた1,405例(年齢中央値:60歳)を、SLNB群708例、腋窩手術なし群697例に無作為化した。
・腫瘍径の中央値は1.1cm(四分位範囲:0.8~1.5)で、1,234例(87.8%)がエストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性であった。SLNB群では、97例(13.7%)が腋窩リンパ節転移陽性であった。
・5年DDFS率は、SLNB群で97.7%、腋窩手術なし群で98.0%であった(log-rank p=0.67、ハザード比:0.84、90%信頼区間:0.45~1.54、非劣性のp=0.02)。
・SLNB群では局所再発12例(1.7%)、遠隔転移13例(1.8%)、死亡21例(3.0%)、腋窩手術なし群では局所再発11例(1.6%)、遠隔転移14例(2.0%)、死亡18例(2.6%)だった。

 著者らは「これらの結果は、腫瘍が小さく、超音波検査で腋窩リンパ節転移のない乳がん患者は、病理学的情報の欠如が術後治療計画に影響を及ぼさない限り、安全に腋窩手術を免れられることを示唆する」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Gentilini OD, et al. JAMA Oncol. 2023;e233759. [Online ahead of print]

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