転移乳がんへのnab-PTX、3投1休vs.2投1休

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 HER2陰性転移乳がん患者を対象に、nab-パクリタキセルの2投1休と3投1休スケジュールを比較した無作為化第II相試験の結果、2投1休スケジュールでより良好な抗腫瘍活性と安全性プロファイルが示された。中国・北京大学のYaxin Liu氏らによるOncologist誌2023年12月11日号への報告。

 本試験では、HER2陰性転移乳がん患者がnab-パクリタキセルの2投1休群(1・8日目に125mg/m2、1週間休薬)および3投1休群(1・8・15日目に125mg/m2、1週間休薬)に1:1で無作為に割り付けられた(病勢進行または治療不耐性まで投与)。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)。許容できない毒性がみられた患者では、維持療法として内分泌療法もしくは経口化学療法を受けることが認められた。

 主な結果は以下のとおり。

・94例が組み入れられ、各群に47例ずつ割り付けられた。
・2投1休群では、3投1休群と比較してより長いPFS中央値が観察された(未達vs.6.8ヵ月、ハザード比:0.44、p=0.029)。
・全生存期間(28.0ヵ月vs.25.8ヵ月)、客観的奏効率(51.1% vs.48.9%)、および病勢コントロール率(93.6% vs.80.9%)は両群で同様であった。
・2投1休群では、毒性による治療中止(8.5% vs.29.8%)および投与延期(6.4% vs.23.4%)が少なかった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Baek SY, et al. Oncologist. 2023;28:1102-e1302.

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7時間以上の座位で乳がんリスク36%増/京都府立医科大

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 日本人を対象とした大規模研究により、座っている時間が1日7時間以上だと乳がんの罹患リスクが36%上昇し、余暇の運動量・頻度や歩行時間が多くてもリスクは依然として高かったことを、京都府立医科大学の富田 仁美氏らの研究グループが明らかにした。Cancer Science誌オンライン版2023年12月2日号掲載の報告。

 日本人の乳がんの罹患原因のうち、約5%は運動不足に起因していると言われている1)。しかし、年齢や性別、筋肉量は個々人によって差があるため、適切な身体活動量を定量化することは難しい。そこで、研究グループは、座位時間と乳がん罹患との関連を明らかにするとともに、身体活動がその関連に影響を及ぼすかどうかを調査した。

 研究には、日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)のデータを用いた。解析対象は35〜69歳の女性3万6,023人(平均年齢54.5歳)で、追跡期間中央値は9.4年であった。Cox比例ハザードモデルを用いて、1日の座位時間と乳がん罹患の関連におけるハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。さらに、余暇の代謝当量(METs)、余暇の運動頻度、1日の歩行時間などの関連も分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・3万6,023人のうち、1日当たりの座位時間が7時間未満だったのは21.2%、7~10時間未満は26.3%、10~13時間未満は25.3%、13時間以上は27.2%であった。
・追跡期間中に554例(1.5%)が乳がんに罹患した。
・7時間未満の集団と比較して、7時間以上の集団では乳がんの罹患リスクが有意に高かった(HR:1.36、95%CI:1.07~1.71、p=0.01)。
・座位時間が長くなるほどリスクが上がるわけではなく、7~10時間未満のHRは1.32(95%CI:1.01~1.72、p=0.043)、10~13時間未満は1.42(1.09~1.84、p=0.010)、13時間以上は1.34(1.02~1.75、p=0.035)であった。
・7時間以上の集団の乳がん罹患リスクは、余暇における1METs・時/日以上の運動(HR:1.58、95%CI:1.11~2.25、p=0.012)、週3回以上の運動(1.77、1.20~2.61、p=0.004)、1日1時間以上の歩行(1.42、1.10~1.83、p=0.007)を行っていても、7時間未満の集団よりも高かった。

 これらの結果より、研究グループは「7時間/日以上座って過ごす生活習慣は、より高い乳がんリスクと関連し、余暇の身体活動や1日の歩行時間はリスクを抑制しなかった。この所見は、座っている時間が身体活動よりも影響力のある因子である可能性を示唆している。日本人女性の乳がんリスクを低下させるためには、座位時間の短縮が必要」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Tomida S, et al. Cancer Sci. 2023 Dec 2. [Epub ahead of print]

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身体活動と閉経前の乳がんリスクの関連、19研究のプール解析/JCO

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 余暇の身体活動が閉経「後」の乳がんリスクを予防するという強いエビデンスはあるが、閉経「前」の乳がんリスクとの関連は明らかではない。今回、英国・The Institute of Cancer ResearchのIain R. Timmins氏らが19のコホート研究を含む大規模なプール解析を実施した結果、身体活動レベルが高いと閉経前乳がんリスクが低いことが示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年12月11日号に掲載。

 本研究では、閉経前女性54万7,601人、乳がん患者1万231例を含む、19のコホート研究の自己申告による余暇の身体活動の個々人のデータを統合した。多変量Cox回帰モデルを用いて、余暇の身体活動と乳がん発症率の関連におけるハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値11.5年(四分位範囲:8.0~16.1)において、余暇の身体活動が低レベルに対する高レベルの人の乳がんリスクは、BMIの調整前で6%(HR:0.94、95%CI:0.89~0.99)、調整後で10%(HR:0.90、95%CI:0.85~0.95)低かった。
・非線形性の検定は、ほぼ直線的な関係を示した(非線形のp=0.94)。
・逆相関はHER2-enrichedの乳がんにおいてとくに強かった(HR:0.57、95%CI:0.39~0.84)。

(ケアネット 金沢 浩子)

【原著論文はこちら】


Timmins IR, et al, J Clin Oncol. 2023 Dec 11.[Online ahead of print]

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高リスクHER2+乳がん、術前療法へのアテゾリズマブ追加でpCR改善は(APTneo)/SABCS2023

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 HER2陽性高リスク乳がんに対する術前補助療法として、トラスツズマブ(H)+ペルツズマブ(P)+化学療法は標準治療となっている。また、抗HER2療法に対する免疫系の寄与を示すデータが報告され、免疫チェックポイント阻害薬と抗HER2抗体の組み合わせが裏付けられている。イタリア・Fondazione MichelangeloのLuca Gianni氏らは、HP+化学療法へのアテゾリズマブ(±アントラサイクリン)の追加を評価することを目的として、第III相APTneo試験を実施。サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で病理学的完全奏効(pCR)についてのデータを報告した。

・対象:HER2陽性の切除可能または局所進行乳がん患者(化学療法未治療)
・試験群
AC+アテゾリズマブ併用群:AC(ドキソルビシン+シクロホスファミド)+アテゾリズマブ(1,200mg 3週ごと静脈内投与)×3サイクル→HPCT(トラスツズマブ+ペルツズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル)+アテゾリズマブ×3サイクル→手術→HP+アテゾリズマブ 218例
アテゾリズマブ併用群:HPCT+アテゾリズマブ×6サイクル→手術→HP+アテゾリズマブ 220例
・対照群:HPCT×6サイクル→手術→HP 223例
・評価項目:
[主要評価項目]試験群vs.対照群の無イベント生存期間(EFS)
[副次評価項目]pCR、忍容性、予測マーカーの評価など

 主な結果は以下のとおり。

・ベースラインにおける患者特性は3群でバランスがとれており、年齢中央値は49~50歳、局所進行乳がんは44.1~45.3%、PD-L1陽性は29.8~30.9%、ホルモン受容体陽性は61.0~69.1%であった。
・副次評価項目のpCR率は、対照群52.0%に対し試験群57.8%で有意な改善はみられなかった(p=0.091)。AC+アテゾリズマブ併用群のpCR率は61.9%で対照群と比較して有意に改善したが(p=0.022)、アテゾリズマブ併用群のpCR率(53.6%)と比較して有意な差はみられなかった(p=0.089)。
・重篤な有害事象(SAE)は、対照群で6.8%、試験群で14.1%に発生した。AC療法による血液毒性のため、アテゾリズマブ併用群(11.6%)よりもAC+アテゾリズマブ併用群(16.7%)で頻度が高かった。
・免疫関連のSAEはAC+アテゾリズマブ併用群で4.7%、アテゾリズマブ併用群で7.8%と頻度が高いわけではなく、臨床的にコントロール可能なものであった。

 Gianni氏は、「HER2陽性の早期高リスクおよび局所進行乳がん患者において、HP+化学療法へのアテゾリズマブの追加は、数値としてpCR率の5.8%増加が確認されたものの統計学的有意差は得られなかった。探索的解析において、AC+アテゾリズマブ併用群におけるpCR率は統計学的に有意に高いことが示されており、アントラサイクリンの直接効果あるいはアテゾリズマブによるAC療法の機構的増強のいずれかが示唆されるのではないか」と結論付けている。同試験はEFSの解析まで現在も進行中。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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APTneo試験(ClinicalTrials.gov)

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TN乳がん術前免疫化療前・後のニボルマブ単剤、pCRに有意差なし(BCT1902/IBCSG 61-20 Neo-N)/SABCS2023

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 StageI~IIBのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対して、12週間のニボルマブ+非アンスラサイクリン系抗がん剤の術前免疫化学療法の前または後にニボルマブ単剤治療を組み合わせた第II相BCT1902/IBCSG 61-20 Neo-N試験の結果、ニボルマブ単剤治療の順番にかかわらず有望な病理学的完全奏効(pCR)率を示したことを、オーストラリア・Newcastle大学のNicholas Zdenkowski氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023、12月5~9日)で発表した。

 これまで、早期TNBC患者に対する抗PD-L1抗体薬+化学療法の術前免疫化学療法では、すべての薬剤を同時に開始するよりも、抗PD-L1抗体薬を先行して投与したほうがより良好なpCRが得られたという報告1)がある。pCRは良好な予後と関連し、化学療法の期間の短縮が期待されていることから、研究グループはTNBC患者に対するニボルマブ単剤とニボルマブ+化学療法併用の治療戦略を明らかにするために研究を行った。

・対象:StageI~IIBのTNBC患者 108例
・試験群:ニボルマブ(240mg、2週間)→ニボルマブ(360mg、21日ごと)+カルボプラチン(AUC5、21日ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、21日ごとの1・8・15日目)を4サイクル→手術【ニボ先行群:53例】
・対照群:ニボルマブ(360mg、21日ごと)+カルボプラチン(AUC5、21日ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、21日ごとの1・8・15日目)を4サイクル→ニボルマブ(240mg)→手術【ニボ後行群:55例】
・評価項目:
[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)
[副次評価項目]腫瘍残存率(RCB)、安全性、PD-L1陽性(≧1%)集団および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)高値(≧30%)集団におけるpCR、無イベント生存期間(EFS)
・層別化因子:年齢(40歳未満/以上)

 主な結果は以下のとおり。

・2020年7月~2022年4月に110例が両群に無作為に割り付けられ、治療を開始した108例が解析対象となった。追跡期間中央値は12ヵ月であった。
・ベースライン時のニボ先行群およびニボ後行群の患者特性は、年齢40歳未満が26%/16%、閉経周辺期が53%/55%、StageIが34%/35%、TIL高値が34%/33%、PLD1陽性が43%/51%、Ki67中央値がそれぞれ70%であった。
・pCR率は全体で53%(90%信頼区間:44~61)、ニボ先行群は51%(39~63)、ニボ後行群は55%(43~66)で、ニボルマブ単剤治療の先行によるpCRの優位性は認められなかった。
・PD-L1発現状況によるpCR率は、陽性集団では71%、陰性集団では33%であった。
・TIL値によるpCR率は、高値集団では67%、低値集団では47%であった。
・全体のRCB 0~1の割合は69%で、ニボ先行群は64%、ニボ後行群は73%であった。
・忍容性は良好で、新たな安全性シグナルは認められなかった。
・EFSは未成熟であった。

(ケアネット 森 幸子)


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1)GeparNuevo試験(ClinicalTrials.gov)

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高リスク早期乳がんへの術後アベマシクリブ併用、再発スコアによらず有効(monarchE)/SABCS2023

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 HR+/HER2-リンパ節転移陽性の高リスク早期乳がんに対する術後内分泌療法(ET)にアベマシクリブ追加の有用性を検討したmonarchE試験では、無浸潤疾患生存期間(iDFS)と無遠隔再発生存期間(DRFS)が有意かつ臨床的に意義のある改善が示され、さらに併用療法終了から5年後にiDFSとDRFSの絶対的ベネフィットがさらに大きくなったことが報告されている。今回、原発腫瘍組織の分子プロファイルと臨床転帰の関連について検討した結果を、英国・The Royal Marsden Hospital, Institute of Cancer ResearchのNicholas C. Turner氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で発表した。

 今回の解析は、層別無作為抽出ケースコホートデザインを用いて、ITT集団から層別化されたランダムサンプル症例、および主要評価項目のデータカットオフ(2020年7月8日)までにiDFSイベントを発症した全症例について、ベースライン時の原発腫瘍サンプルのバイオマーカー解析を実施した。全エクソームシーケンスで1,173例(ET+アベマシクリブ:580例、ET:593例)、RNAシーケンスで1,190例(ET+アベマシクリブ:605例、ET:585例)の結果が得られた。

 主な結果は以下のとおり。

・アベマシクリブの4年iDFSのベネフィットはすべての内因性サブタイプで一貫していた。
・21遺伝子再発スコア(Oncotype DX)が25以下の低リスク患者および26以上の高リスク患者とも、アベマシクリブによるベネフィットを示した。
・アベマシクリブによるベネフィットは、最も一般的なゲノム変化で一貫して観察された。MYCのみ、増幅患者のハザード比(HR)が1.30(95%信頼区間[CI]:0.77~2.20)、野生型患者のHRが0.62(95%CI:0.47~0.80、相互作用のp=0.014)で、増幅患者でベネフィットがみられなかった。

 今回のトランスクリプトーム解析により、すべての内因性サブタイプ、また21遺伝子再発スコアによる高リスクおよび低リスクのどちらの患者においても、アベマシクリブの一貫した有用性が示された。一般的なゲノム変化においても、MYC増幅を除いて一貫した有効性が示された。Turner氏は「これらのデータは、HR+/HER2-リンパ節転移陽性の高リスク早期乳がん患者において、内因性サブタイプ、21遺伝子再発スコア、最も一般的なゲノム変化に関係なく、アベマシクリブの使用を支持するもの」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)


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monarchE(ClinicalTrials.gov)

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早期乳がん、術前MRIで術後放射線療法の省略を判定可能?(PROSPECT)/Lancet

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 MRI検査で単病巣性の乳がん(unifocal breast cancer)が認められた病状良好な女性患者は、術後の放射線療法を安全に省略できることが示された。オーストラリア・王立メルボルン病院のGregory Bruce Mann氏らが、多施設共同前向き2アーム非無作為化試験「PROSPECT試験」の結果を報告した。早期乳がんに対する術後の乳房放射線治療は、標準的な乳房温存療法として行われているが、多くの女性にとって過剰治療となる可能性が示唆されている。また、乳房MRIは、局所腫瘍の最も感度の高い評価法である。本試験は、MRIと病理学的所見の組み合わせによって、放射線治療を安全に回避可能な局所乳がんを有する女性の特定が可能であることを見極める目的で行われた。Lancet誌オンライン版2023年12月5日号掲載の報告。

単病巣性の乳がんで術後のpT1N0またはN1miは放射線治療省略、5年後IIRRを評価

 PROSPECT試験は、術前のMRI検査と術後の腫瘍の病理学的所見により選択した患者を対象とした、放射線治療省略に関する試験であり、オーストラリアの大学病院4施設で行われた。cT1N0非トリプルネガティブ乳がんで50歳以上の女性を適格とした。

 適格となった女性のうちMRIで単病巣性の乳がんが認められた患者は、乳房温存手術(BCS)を受け、pT1N0またはN1miの場合は放射線治療が省略された(グループ1)。それ以外の患者には、MRIで検出された他のがん切除など標準治療が行われた(グループ2)。また、全患者が薬物療法を受けた。

 主要評価項目は、グループ1の5年後の同側浸潤性乳がん再発率(IIRR)とした。

 主要解析は、グループ1で100人目の患者の追跡調査が5年に到達した後に行われた。本試験の鑑別法(PROSPECT pathway)により治療を受けた患者の質調整生存年(QALY)と費用対効果についても分析した。

5年後IIRRは1.0%、再発1件目は4.5年時点

 2011年5月17日~2019年5月6日に、乳がん患者443例がMRI検査を受けた。年齢中央値は63.0歳。MRI検査によって48例(11%)で、指標となるがんとは別に61個の潜在的な悪性病変が検出された。

 放射線治療を省略したBCSを受けたグループ1(201例)において、5年後のIIRRは1.0%(95%信頼区間[CI]上限値:5.4%)であった。グループ1の局所再発は、1件目が4.5年時点で、2件目が7.5年時点で報告された。

 グループ2(242例)では、9例が乳房切除術を受けており(コホート全体の2%)、5年IIRRは1.7%(95%CI上限値6.1%)であった。

 コホート全体で報告された唯一の遠隔転移は、指標となるがんとは遺伝子学的に異なるものであった。

 PROSPECT pathwayにより、QALYが0.019(95%CI:0.008~0.029)増加し、患者1例当たり1,980オーストラリアドル(95%CI:1,396~2,528)(953ポンド[672~1,216])の節減効果が認められた。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Mann GB, et al. Lancet. 2023 Dec 5. [Epub ahead of print]

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HER2+進行乳がん高齢患者への1次治療、T-DM1 vs.標準治療(HERB TEA)/SABCS2023

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 HER2陽性進行乳がん患者の1次治療として標準的なHPD(トラスツズマブ+ペルツズマブ+ドセタキセル)療法は、高齢患者では有害事象により相対用量強度を維持できないケースやQOLが損なわれるケースがある。そのため、毒性は低く、有効性は劣らない高齢者における新たな治療オプションが求められる。国立国際医療研究センター病院の下村 昭彦氏は、HPD療法とトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)を比較した第III相HERB TEA試験(JCOG1607)の結果を、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で報告した。

・対象:65歳以上のHER2陽性進行乳がん患者(転移乳がんに対する治療歴なし、ECOG PS 0~2[75歳以上は0~1])
・試験群(T-DM1群):T-DM1(3週間間隔で3.6mg/kg、増悪まで) 73例
・対照群(HPD群):トラスツズマブ(6mg/kg、初回8mg/kg)、ペルツズマブ(420mg、初回840mg)、ドセタキセル(3週間間隔で60mg/m2、増悪まで) 75例
・評価項目:
[主要評価項目]全生存期間(OS)、
[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、累積乳がん特異的死亡率、奏効率、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・2018年1月~2023年3月に148例が登録された(データカットオフ:2023年6月15日)。
・ベースラインにおける患者特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はT-DM1群72歳vs.HPD群71歳、PS 0は70% vs.73%、ホルモン受容体陽性は55% vs.51%、stageIVは66% vs.65%、脳転移ありは0% vs.3%、内臓転移ありは66% vs.65%であった。
・主要評価項目であるOSについて、HPD群に対するT-DM1群の非劣性は示されなかった(ハザード比[HR]:1.263、95%信頼区間[CI]:0.677~2.357、片側p=0.95322)。
・PFS中央値はT-DM1群11.3ヵ月vs.HPD群15.6ヵ月であった(HR:1.358、95%CI:0.907~2.033、p=0.1236)。
・Grade3以上の有害事象は、T-DM1群34.7%、HPD群56.8%で発現した。HPD群ではとくに白血球減少(0% vs.26.0%)、好中球減少(0% vs.30.1%)、下痢(0% vs.12.2%)、疲労(5.6% vs.21.6%)が多くみられた。

 下村氏は、「HPD療法に対するT-DM1のOSおよびPFSにおける非劣性は示されず、HPD療法は今後もHER2陽性進行乳がん患者の1次治療として、年齢を問わず標準治療となる。しかし有害事象の頻度はT-DM1と比較して高く、高齢者機能評価結果を含めた詳細な解析によって、T-DM1による治療が適している患者群について検討していく必要がある」と結論付けた。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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HERB TEA試験(UMIN000030783)

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妊娠希望で乳がん術後内分泌療法を中断した患者、生殖補助医療の効果は(POSITIVE)/SABCS2023

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 妊娠を試みるために術後補助内分泌療法を一時的に中断する早期HR+乳がん患者を対象としたPOSITIVE試験において妊孕性温存と生殖補助医療について評価した結果、乳がん診断時に胚・卵子を凍結保存し、内分泌療法中断後に胚移植した場合の妊娠率が高いことが示された。体外受精を受けた患者に乳がんイベントの増加はみられなかった。メキシコ・Monterrey Institute of TechnologyのHatem Azim氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で発表した。

 本試験では、妊娠希望で術後補助内分泌療法を一時的に中断しても、短期の乳がん再発リスクは増加しなかったことがすでに報告されている(追跡調査期間中央値41ヵ月)。今回は、副次評価項目である月経の回復、生殖補助医療利用について評価した結果が報告された。

・対象:術後補助内分泌療法を18~30ヵ月間受けたStageI~IIIのHR+乳がん患者で、妊娠を希望し内分泌療法を中断する42歳以下の閉経前女性
・方法:内分泌療法を、wash out期間(3ヵ月)を含み、妊娠企図、妊娠、出産、授乳で2年間中断し、再開後5~10年追跡
・評価項目:
[主要評価項目]乳がん無発症期間(BCFI)
[副次評価項目]妊娠、出産、母乳育児、月経の回復、生殖補助医療の利用、内分泌療法のアドヒアランス、無遠隔再発期間

 主な結果は以下のとおり。

・主要評価項目の解析対象患者516例中、6ヵ月以上追跡した497例が副次評価項目の評価が可能で、うち368例が1回以上妊娠した。
・登録時に無月経だった273例のうち255例(93%)で月経が再開した。
・多変量ロジスティック回帰モデルにおいて、妊娠までの期間の短さと関連したのは若年齢(35歳未満)のみだった。12ヵ月後の累積妊娠率は、35歳未満64%、35〜39歳54%、40〜42歳38%だった。
・多変量ロジスティック回帰モデルにおいて、生殖補助医療のうち凍結保存胚移植のみが高い妊娠率と独立して関連し(オッズ比:2.41、95%信頼区間[CI]:1.75~4.95)、妊娠率は82%であった。
・3年BCFIイベント累積発生率は、診断時/登録前に胚・卵子凍結保存のための卵巣刺激を受けた女性で9.7%(95%CI:6.0~5.4)、受けなかった女性で8.7%(同:6.0~12.5)と同程度であった。

 Azim氏は、「本試験は妊娠を希望する早期HR+乳がん患者における妊孕性温存と生殖補助医療を調査した最大規模の前向き試験である。これらのデータは、若年乳がん患者の不妊カウンセリングに最も重要だ」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)

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POSITIVE(ClinicalTrials.gov)

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TN乳がん導入療法後のペムブロリズマブ、オラパリブ併用vs.化療併用(KEYLYNK-009)/SABCS2023

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 ペムブロリズマブ+化学療法による導入療法で臨床的有用性が得られた切除不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者を対象に、その後の維持療法としてペムブロリズマブ+オラパリブとペムブロリズマブ+化学療法の有効性と安全性を比較した第II相KEYLYNK-009試験の結果を、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のHope S. Rugo氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で発表した。その結果、ペムブロリズマブ+オラパリブ群はITT集団では無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善しなかったが、BRCA変異陽性集団においては良好な傾向にあり、治療関連有害事象(TRAE)は少ないことが明らかになった。

・対象:導入療法としてカルボプラチン(AUC2を3週ごとに1・8日目)+ゲムシタビン(1,000mg/m2を3週ごとに1・8日目)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を4~6サイクル投与し、完全奏効(CR)/部分奏効(PR)/病勢安定(SD)が得られた切除不能な局所再発または転移を有するTNBC患者 271例
・試験群:オラパリブ(300mg、1日2回)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと、導入療法を含めて35サイクルまで)【ペムブロ+オラパリブ群:135例】
・対照群:カルボプラチン(AUC2を3週ごとに1・8日目)+ゲムシタビン(1,000mg/m2を3週ごとに1・8日目)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと、導入療法を含めて35サイクルまで)【ペムブロ+化学療法群:136例】
・評価項目:
[主要評価項目]ITT集団におけるRECIST v1.1を用いた盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、OS
[副次評価項目]PD-L1 CPS≧10およびBRCA変異陽性集団におけるPFSおよびOS、安全性
・層別化因子:導入療法の臨床的有用性(CR/PR/SD)、PD-L1発現状況(CPS≧1/CPS<1)、腫瘍のBRCA変異

 主な結果は以下のとおり。

・導入療法を受けた460例のうち、271例がペムブロ+オラパリブ群またはペムブロ+化学療法群に1:1に無作為に割り付けられた。2022年12月15日のデータカットオフ時点での追跡期間中央値は17.2ヵ月であった。
・ベースライン時のペムブロ+オラパリブ群およびペムブロ+化学療法群の年齢中央値はそれぞれ54歳/52歳、PD-L1 CPS≧10は48.1%/47.8%、BRCA変異陽性は21.5%/22.1%、CRまたはPRは70.4%/70.6%で、両群でバランスがとれていた。
・ITT集団におけるPFS中央値は、ペムブロ+オラパリブ群5.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.2~8.3)、ペムブロ+化学療法群5.6ヵ月(4.3~6.9)で、ハザード比(HR)は0.98(0.72~1.33)であった(p=0.4556)。12ヵ月PFS率はそれぞれ33.3%(24.5~42.3)、29.3%(21.2~37.8)であった。
・ITT集団におけるOS中央値は、ペムブロ+オラパリブ群25.1ヵ月(95%CI:18.3~NR)、ペムブロ+化学療法群23.4月(15.8~NR)で、HRは0.95(0.64~1.40)であった。18ヵ月OS率はそれぞれ62.0%(51.9~70.6)、55.7%(45.5~64.7)であった。
BRCA陽性集団のPFS中央値は、ペムブロ+オラパリブ群(12.4ヵ月[95%CI:8.3~NR])のほうが、ペムブロ+化学療法群(8.4ヵ月[5.4~NR])より長かった(HR:0.70[0.33~1.48])。しかし、PD-L1 CPS≧10集団ではそれぞれ5.7ヵ月(2.9~13.9)および5.7ヵ月(3.8~7.6)で同程度であった(HR:0.92[0.59~1.43])。
BRCA陽性集団のOS中央値はペムブロ+オラパリブ群はNR(95%CI:17.1~NR)、ペムブロ+化学療法群は23.4ヵ月(17.3~NR)であった(HR:0.81[0.28~2.37])。PD-L1 CPS≧10集団では両群ともNR(17.0~NR vs.15.5~NR)であった(HR:0.97[0.53~1.76])。
・治療患者268例において、TRAEはペムブロ+オラパリブ群で114/135例(84.4%)、ペムブロ+化学療法群で128/133例(96.2%)に発現した。Grade3以上のTRAEはそれぞれ44例(32.6%)、91例(68.4%)に発現し、治療中止に至ったTRAEは12例(8.9%)、26例(19.5%)であった。ペムブロ+化学療法群において死亡が2例(1.5%)認められた。安全性プロファイルとは既知のものと一致していた。

 これらの結果より、Rugo氏は「導入療法で臨床的有用性が得られた再発・転移TNBC患者が化学療法を中止してペムブロリズマブ+オラパリブの維持療法を行った場合、ペムブロリズマブ+化学療法を継続した場合と同等の有効性が得られ、安全性プロファイルはより良好である」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

KEYLYNK-009(ClinicalTrials.gov)

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