閉経後HR+乳がんの術後アナストロゾール、10年vs.5年(AERAS)/JCO

提供元:CareNet.com

 閉経後ホルモン受容体(HR)陽性乳がん患者に対する術後のアロマターゼ阻害薬の投与期間について、5年から10年に延長すると無病生存(DFS)率が改善することが、日本の多施設共同無作為化非盲検第III相試験(N-SAS BC 05/AERAS)で示された。岩瀬 拓士氏(日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院)らによる論文が、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年4月20日号に掲載された。

 本試験は、アナストロゾールを5年投与、もしくはタモキシフェンを2~3年投与後にアナストロゾール2~3年投与した閉経後乳がん患者を対象に、アナストロゾールをさらに5年延長した場合の効果を評価した。患者は、アナストロゾールをさらに5年継続する群(継続群)と、アナストロゾールを中止する群(中止群)に無作為に1:1に割り付けた。主要評価項目はDFS(乳がん再発・2次原発がん発生・あらゆる原因での死亡までの期間)、副次評価項目は全生存(OS)、遠隔無病生存(DDFS)、安全性などであった。

 主な結果は以下のとおり。

・2007年11月~2012年11月に117施設から1,697例を登録し、追跡情報が得られた1,593例(継続群787例、中止群806例)をFAS(Full Analysis Set)とした(タモキシフェン治療歴のある144例と放射線照射を伴わない乳房温存手術を受けた259例を含む)。
・5年DFS率は、継続群で91%(95%信頼区間[CI]:89~93)、中止群で86%(同:83~88)であった(ハザード比:0.61、95%CI:0.46~0.82、p<0.0010)。
・アナストロゾール延長により、局所再発(継続群10例、中止群27例)および2次原発がん(継続群27例、中止群52例)の発生率が低下した。
・OS率およびDDFS率に有意差はなかった。
・更年期障害または骨関連の有害事象の発現率は、全Gradeでは中止群よりも継続群で高かったが、Grade3以上では両群とも1%未満であった。

 著者らは、「アナストロゾールまたはタモキシフェンによる5年の治療後にアナストロゾールをさらに5年継続する治療は、忍容性が高く、DFSを改善した。OSには差が認められなかったが、閉経後のHR陽性乳がん患者に対するアナストロゾールの投与延長は治療選択の1つとなりうる」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Iwase T, et al. J Clin Oncol. 2023 Apr 20. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

スタチンでアジア人乳がん患者のがん死亡リスク低下

提供元:CareNet.com

 スタチン製剤を服用しているアジア人の乳がん患者では、スタチンを服用していない乳がん患者と比べて、がん関連の死亡リスクが有意に低かったことを、台湾・国立成功大学のWei-Ting Chang氏らが明らかにした。なお、心血管疾患による死亡リスクには有意差はなかった。JAMA Network Open誌4月21日号掲載の報告。

 スタチンは化学療法と併用することで、がんの進行や微小転移を抑制することが報告されていて、乳がんの再発リスクを低減させる可能性が示唆されている。しかし、欧米の乳がん患者とは異なり、アジアの乳がん患者は診断時の年齢が比較的若く、ほとんどが心血管リスク因子を有していないため、スタチンの服用によって生存率が改善するかどうかは不明である。そこで研究グループは、アジア人の乳がん患者において、スタチン使用とがんおよび心血管疾患による死亡リスクとの関連を後方視的に調査した。

 本コホート研究の対象は、台湾の国民健康保険研究データベース(NHIRD)と国民がん登録を用いて、2012年1月~2017年12月までに乳がんと診断された女性患者1万4,902例で、乳がんの診断前6ヵ月以内にスタチンを服用した患者と、スタチンを服用していない患者を比較した。年齢、がんの進行度、抗がん剤治療、併存疾患、社会経済的状況、心血管系薬剤などを傾向スコアマッチング法で適合させ、解析は2022年6月~2023年2月に実施された。主要アウトカムは死亡(全死因、がん、心血管疾患、その他)で、副次的アウトカムは新規発症の急性心不全、急性心筋梗塞や虚血性脳卒中などの動脈イベント、深部静脈血栓症や肺塞栓症などの静脈イベントであった。平均追跡期間は4.10±2.96年であった。

 主な結果は以下のとおり。

・スタチン使用群7,451例(平均年齢64.3±9.4歳)とスタチン非使用群7,451例(平均年齢65.8±10.8歳)がマッチングされた。
・非使用群と比較して、使用群では全死因死亡のリスクが有意に低かった(調整ハザード比[aHR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.77~0.91、p<0.001)。
・がん関連死亡のリスクも、非使用群と比較して、使用群では有意に低かった(aHR:0.83、95%CI:0.75~0.92、p<0.001)。
・心不全、動脈・静脈イベントなどの心血管疾患の発生は少数であり、使用群と非使用群で死亡リスクに有意差は認められなかった。
・時間依存性解析でも、非使用群と比較して、使用群では全死因死亡(aHR:0.32、95%CI:0.28~0.36、p<0.001)およびがん関連死亡(aHR:0.28、95%CI:0.24~0.32、p<0.001)が有意に少なかった。
・これらのリスクは、とくに高用量スタチンを服用している群でさらに低かった。

 これらの結果より、研究グループは「アジア人の乳がん患者を対象としたこのコホート研究では、スタチンの使用は心血管疾患による死亡ではなく、がん関連の死亡リスクの低減と関連していた。今回の結果は、乳がん患者におけるスタチンの使用を支持するエビデンスとなるが、さらなるランダム化試験が必要である」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Chang WT, et al. JAMA Netw Open. 2023;6:e239515.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

若年乳がん患者、出産は予後に影響するのか~日本の傾向スコアマッチング研究

提供元:CareNet.com

 若年乳がん患者の出産に関するこれまでの研究は潜在的なバイアスがあり不明な点が多い。今回、聖路加国際病院の越智 友洋氏らが傾向スコアマッチングを用いて、乳がん診断後の出産が予後に及ぼす影響を検討した結果、出産により再発や死亡リスクは増加しないことが示唆された。Breast Cancer誌2023年5月号に掲載。

 本研究は、単施設での後ろ向きコホート研究で、2005~14年に乳がんと診断された45歳以下の患者を対象とし、診断後に出産した患者(出産コホート)104例と出産していない患者(非出産コホート)2,250例で無再発生存率(RFS)および全生存率(OS)を比較した。傾向スコアモデルの共変量は、年齢、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、乳がん診断前の分娩回数、エストロゲン受容体およびHER2の発現状態とした。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値82ヵ月で、出産コホートは非出産コホートよりRFSが有意に長かった(ハザード比[HR]:0.469[0.221~0.992]、p=0.047)が、OSには有意差はなかった(HR:0.208[0.029~1.494]、p=0.119)。

・傾向スコアマッチング後、乳がん診断後の出産はRFS(HR:0.436[0.163~1.164]、p=0.098)およびOS(HR:0.372[0.033~4.134]、p=0.402)と有意な関連はなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Ochi T, et al. Breast Cancer. 2023;30:354-363.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

T-DXd、T-DM1不応または抵抗性乳がんに有効/Lancet

提供元:CareNet.com

 トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)に対して不応または抵抗性を示すHER2陽性転移のある乳がん患者の治療において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は医師が選択した治療と比較して、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、安全性プロファイルはすでに確立されたものと一致し、新たな安全性シグナルは観察されなかったことが、フランス・パリ・サクレー大学のFabrice Andre氏らが実施した「DESTINY-Breast02試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年4月19日号で報告された。

227施設の無作為化第III相試験

 DESTINY-Breast02試験は、北米、欧州、アジア(日本を含む)、オーストラリア、ブラジル、イスラエル、トルコの227施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2018年9月~2020年12月の期間に患者のスクリーニングと無作為割り付けが行われた(Daiichi SankyoとAstraZenecaの助成を受けた)。

 年齢18歳以上、病理学的に切除不能なHER2陽性転移のある乳がんが確認され、T-DM1による治療歴があり、画像所見で病勢の進行が認められ、全身状態が良好な患者(ECOG PSスコア0/1)が、T-DXd(5.4mg/kg、3週ごとに静脈内投与)、または医師の選択による治療を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。

 医師の選択による治療は、カペシタビン+トラスツズマブまたはカペシタビン+ラパチニブとされ、いずれも21日スケジュールで投与された。

 主要評価項目はPFSであり、最大の解析対象集団(FAS)において盲検下に独立の中央判定で評価が行われた。

OSも良好、14%で完全奏効

 608例が登録され、T-DXd群に406例、医師選択治療群に202例が割り付けられた。それぞれ2例および7例が実際には治療を受けなかったが、608例すべてがFASに含まれた。

 年齢中央値は、T-DXd群が54.2歳(四分位範囲[IQR]:45.5~63.4)、医師選択治療群は54.7歳(48.0~63.0)であり、男性がそれぞれ3例および2例、白人が63%ずつ、アジア人が30%および28%含まれた。フォローアップ期間中央値は、21.5ヵ月および18.6ヵ月だった。

 盲検下独立中央判定によるPFS中央値は、T-DXd群が17.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:14.3~20.8)と、医師選択治療群の6.9ヵ月(5.5~8.4)に比べ、有意に延長した(ハザード比[HR]:0.36、95%信頼区間[CI]:0.28~0.45、p<0.0001)。

 全生存期間(OS)中央値は、T-DXd群が39.2ヵ月(95%CI:32.7~評価不能[NE])であり、医師選択治療群の26.5ヵ月(21.0~NE)に比し、有意に延長した(HR:0.66、95%CI:0.50~0.86、p=0.0021[統計学的有意性の境界値:p=0.0040])。また、奏効率は、それぞれ70%(283/406例)および29%(59/202例)であり、内訳は完全奏効が14%(57例)および5%(10例)、部分奏効は56%(226例)および24%(49例)だった。

抗体-薬物複合体による逐次治療の可能性

 頻度の高い治療関連有害事象として、悪心(T-DXd群73%[293/404例]、医師選択治療群37%[73/195例])、嘔吐(38%[152例]、13%[25例])、脱毛(37%[150例]、4%[8例])、疲労(36%[147例]、27%[52例])、下痢(27%[109例]、54%[105例])、手掌・足底発赤知覚不全症候群(2%[7例]、51%[100例])が認められた。

 Grade3以上の治療関連有害事象は、T-DXd群が53%、医師選択治療群は44%で発現し、薬剤関連の間質性肺疾患がそれぞれ10%(42例、Grade5[死亡]の2例を含む)および<1%(1例)でみられた。

 著者は、「われわれの知る限りこの研究は、抗体-薬物複合体が、別の抗体-薬物複合体による治療で病勢が進行した患者において有意な有益性を示した初めての無作為化試験であり、HER2陽性転移のある乳がんや他の患者集団における抗体-薬物複合体の逐次治療に関して、明るい展望をもたらすものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Andre F, et al. Lancet. 2023 Apr 19. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

早期乳がん、アントラサイクリン+タキサン併用が最も有効~メタ解析/Lancet

提供元:CareNet.com

 乳がんの再発と死亡の減少にはアントラサイクリン系+タキサン系併用療法が最も有効であり、とくにアントラサイクリン系+タキサン系の累積投与量が多いレジメンで最大の効果を得られることが、英国・オックスフォード大学のJeremy Braybrooke氏らEarly Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)が行ったメタ解析で明らかにされた。早期乳がんに対するアントラサイクリン系+タキサン系併用療法は、化学療法を行わない場合と比較して生存を著明に改善するが、アントラサイクリン系薬剤の短期および長期の副作用に対する懸念から、アントラサイクリン系薬剤を含まないタキサン系レジメンの使用が増加しており、有効性が損なわれる可能性があった。

 著者は、「示された結果は、臨床診療やガイドラインにおける最近のトレンドである非アントラサイクリン系化学療法、とくにドセタキセル+シクロホスファミドの4サイクルなどの短期レジメンに対して挑戦的である」と述べ、「本検討は、関連するほぼすべての臨床試験のデータをまとめており、個々の治療の決定、臨床ガイドライン、および将来の臨床試験のデザインに役立つ確かなエビデンスを提供するものである」とまとめている。Lancet誌2023年4月15日号掲載の報告。

アントラサイクリン系およびタキサン系レジメンを評価した無作為化試験86件が対象

 研究グループは、MEDLINE、Embase、Cochrane Library、学会抄録を含むデータベースを用いて、アントラサイクリン系およびタキサン系レジメンを評価したあらゆる言語の無作為化試験86件を特定(最終検索は2022年9月)。タキサン系レジメンとアントラサイクリン系レジメンを比較した無作為化試験の患者個人レベルのメタ解析を行い、本研究グループによる前回のメタ解析を更新するとともに、6つの関連比較に関して解析した。術後または術前補助療法の臨床試験は、2012年1月1日以前に開始されたものであれば対象とした。

 主要アウトカムは、浸潤性乳がんの再発(遠隔、局所、対側乳房の新規原発)、乳がん死、再発を伴わない死亡、全死亡とし、log-rank解析により初回イベント率比(RR)と信頼区間(CI)を算出した。

アントラサイクリン系+タキサン系同時併用が最も再発率が低い

 アントラサイクリン系を含むタキサン系レジメンとアントラサイクリン系を含まないタキサン系レジメンを比較した28件の臨床試験を特定し、23件を適格とした。そのうち15件について、計1万8,103例の女性の個人データが提供された。この15件すべてにおいて、アントラサイクリン系を含むタキサン系レジメンは、アントラサイクリン系を含まないタキサン系レジメンより、再発率が平均14%低かった(RR:0.86、95%CI:0.79~0.93、p=0.0004)。非乳がん死は増加しなかったが、治療を受けた女性700例当たり1例に急性骨髄性白血病の発症が認められた。

 再発率が最も低かったのは、ドセタキセル+シクロホスファミドにアントラサイクリン系の同時併用と、同量のドセタキセル+シクロホスファミドを比較した場合であった(10年再発リスク:12.3% vs.21.0%、リスク差:8.7%[95%CI:4.5~12.9]、RR:0.58[95%CI:0.47~0.73]、p<0.0001)。このグループにおける10年乳がん死亡率は4.2%減少した(95%CI:0.4~8.1、p=0.0034)。

 アントラサイクリン系+タキサン系の順次投与は、ドセタキセル+シクロホスファミドと比較して、再発リスクの有意な低下は認められなかった(RR:0.94、95%CI:0.83~1.06、p=0.30)。

 アントラサイクリン系レジメンとタキサン系レジメンを比較した臨床試験については、44件の適格試験を特定し、このうち35件について計5万2,976例の女性の個人データが提供された。

 アントラサイクリン系レジメンへのタキサン系薬剤の上乗せは、タキサン系薬剤を含まないアントラサイクリン系レジメン(アントラサイクリン系薬剤の累積投与量が同じ)と比較した場合は再発を有意に抑制したが(RR:0.87、95%CI:0.82~0.93、p<0.0001、1万1,167例)、対照群の非タキサン系薬剤の累積投与量をタキサン系薬剤の2倍量にした場合と比較すると再発率の有意な低下は認められなかった(RR:0.96、95%CI:0.90~1.03、p=0.27、1万4,620例)。

 アントラサイクリン系レジメンとタキサン系レジメンの直接比較では、累積投与量が多く、投与強度が高いレジメンがより効果的であることが示された。アントラサイクリン系+タキサン系併用療法の再発抑制効果は、エストロゲン受容体陽性集団とエストロゲン受容体陰性集団で同様であり、年齢、リンパ節転移状態、腫瘍のサイズまたはグレードによって差は認められなかった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group (EBCTCG). Lancet. 2023;401:1277-1292.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

術前AC抵抗性TN乳がん、アテゾリズマブ+nab-PTXが有望/第II相試験

提供元:CareNet.com

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)では、抗PD-(L)1抗体による術前療法で病理学的完全奏効(pCR)率が改善されるが、免疫関連有害事象(irAE)の長期持続リスクのためリスク・ベネフィット比の最適化が重要である。最初の術前療法で臨床効果が不十分な場合はpCR率が低い(2~5%)ことから、免疫チェックポイント阻害薬が選択可能かもしれない。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのClinton Yam氏らは、術前ドキソルビシン+シクロホスファミド(AC)抵抗性のTNBC患者に対して、第2の術前療法としてアテゾリズマブ+nab-パクリタキセルを投与する単群第II相試験を実施し、有望な結果が得られた。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年4月15日号に掲載。

 本試験の対象は、StageI~IIIのAC抵抗性(AC 4サイクル後に病勢進行もしくは腫瘍体積の80%未満の減少)のTNBCで、第2の術前療法としてアテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと4回)+nab-パクリタキセル(100mg/m2、1週ごと12回)を投与後、アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと4回)を投与した。

 主な結果は以下のとおり。

・2016年2月15日~2021年1月29日にAC抵抗性TNBCを37例登録した。
・pCR/residual cancer burden(RCB)-I率は46%だった(ヒストリカルコントロール群:5%)。
・新たな安全性シグナルは観察されなかった。
・7例(19%)がirAEによりアテゾリズマブを中止した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Yam C, et al. Breast Cancer Res Treat. 2023 Apr 15. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

HER2+早期乳がんの術前化療、pCRは代替評価項目になり得るか/JCO

提供元:CareNet.com

 病理学的完全奏効(pCR)は治療効果の確認と予後予測に有用であるものの、HER2陽性の早期乳がん患者に対する無イベント生存期間(EFS)および全生存期間(OS)の代替評価項目としては不適切であることを、ベルギー・International Drug Development InstituteのPierre Squifflet氏らが明らかにした。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年3月28日号掲載の報告。

 臨床試験においてEFSやOSなどを主要評価項目とすると、結果が明らかになるまで長期間かかるため、pCRがしばしば用いられている。しかし、pCRをHER2陽性の早期乳がん患者におけるEFSおよびOSの代替評価項目とすることについては議論が続いている。

 本研究は、HER2阻害薬による術前化学療法の有効性を調査したランダム化試験(登録100例以上、pCR/EFS/OSの記録あり、追跡期間中央値3年以上)の個々の患者データを取得して行われた。pCR(ypT0/Tis ypN0と定義)とEFSおよびOSの関連性を、患者レベルではオッズ比(OR)を用いて、試験レベルでは決定係数(R2)を用いて解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析には11件のランダム化試験が組み込まれた(患者数3,980例、追跡期間中央値62ヵ月)。
・患者レベルの関連性は、EFSのORが2.64(95%信頼区間[CI]:2.20~3.07)、OSのORが3.15(同:2.38~3.91)で強いものであった。
・しかし、試験レベルの関連性は、EFSの未調整R2が0.23(95%CI:0~0.66)、OSの未調整R2が0.02(同:0~0.17)で弱いものであった。
・ホルモン受容体陰性患者のみの場合、より厳格なpCRの定義(ypT0 ypN0)を用いた場合でサブグループ化した解析でも同様の結果であった。

 これらの結果より、研究グループは「pCRは治療効果の確認と予後予測に有用である可能性はあるが、HER2陽性の手術可能な乳がん患者を対象とした術前化学療法の臨床試験において、pCRをEFSおよびOSの代替評価項目とすることはできない」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Squifflet P, et al. J Clin Oncol. 2023 Mar 28. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

同側多発乳がんへの乳房温存療法、5年局所再発率は許容範囲(Alliance試験)/JCO

提供元:CareNet.com

 同側乳房に2~3個の病巣を有する乳がん患者において、乳房温存手術後の全乳房放射線療法と切除部位へのブースト照射による5年局所再発率は3.1%であり、臨床的許容率として規定されていた8%を下回ったことが、第II相単群の前向き試験であるACOSOG Z11102(Alliance)試験で確認されたことを、米国・Mayo ClinicのJudy C. Boughey氏らが明らかにした。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年3月28日号掲載の報告。なお、本結果はサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表されている。

 乳房温存療法(乳房温存手術+標準的放射線療法、以下BCT)は、Stage0~IIの乳がんに対する標準的な治療であるが、過去の研究においてBCTを受けた患者では局所再発率が高いことが報告されているため、同側多発乳がん(MIBC)患者では乳房切除術を受けることが推奨されている。しかし、MIBCに対するBCT後の局所再発について評価した前向き臨床試験はない。そのため、本研究は、BCTを受けたMIBC患者の転帰を評価するため、前方視的に実施された。

 対象は、40歳以上の女性で、同側乳房に2~3個の腫瘍を有する乳がん患者(cN0~1)であった。乳房温存手術後に、全乳房放射線療法と切除部位へのブースト照射を行った。主要評価項目は、放射線療法終了後5年目の局所再発の発生率で、臨床的許容率は8%未満と規定した。

 主な結果は以下のとおり。

・2012年11月~2016年8月に270例が登録され、うち204例(年齢中央値61歳[範囲:40~87歳])が評価可能であった。
・追跡期間中央値は66.4ヵ月(1.3~90.6ヵ月)で、6例に局所再発が生じた。5年目の局所再発率は3.1%(95%信頼区間:1.3~6.4)であった。
・年齢、術前の生検による病巣の数、ER/HER2発現状況、病理学的病期分類は、局所再発リスクと関連していなかった。
・探索的解析において、術前にMRIを実施していない患者(15例)の局所再発率は22.6%で、術前にMRIを実施した患者(189例)の局所再発率は1.7%であった(p=0.002)。

 これらの結果より、研究グループは「本試験によって、MIBC患者に対する乳房温存手術後の全乳房放射線療法と切除部位へのブースト照射の5年局所再発率は許容できるほど低いことが明らかになった。同側乳房に2~3個の病巣を有する乳がん患者で、とくに術前MRI実施した患者に対するBCTは妥当な外科的選択肢である」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Boughey JC, et al. J Clin Oncol. 2023 Mar 28. [Epub ahead of print]

【参考文献・参考サイトはこちら】

ACOSOG Z11102試験(Clinical Trials.gov)

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

不健康なプラントベース食では死亡、がん、CVDリスクが増大

提供元:CareNet.com

 “健康的”なプラントベース食(植物由来の食品)の摂取が多いほど、死亡、がん、心血管疾患のリスクが低くなるが、“不健康”なプラントベース食ばかりではそれらのリスクがむしろ高くなることが、英国・クイーンズ大学ベルファストのAlysha S. Thompson氏らの研究により明らかになった。JAMA Network Open誌2023年3月28日号掲載の報告。

 プラントベース食は、卵、乳製品、魚、肉を少量のみ摂取またはまったく摂取しないことを特徴とする食事で、環境と健康の両方の理由から世界中で人気となっている。しかし、プラントベース食の質と死亡や慢性疾患のリスクに関する総合的な評価は不十分であった。そこで研究グループは、健康的なプラントベース食と不健康なプラントベース食が、英国成人の死亡や主要な慢性疾患(心血管疾患、がん、骨折など)と関連しているかどうかを調査した。

 調査は、UKバイオバンクの参加者を前向きに収集して行われた。2006~10年に40~69歳の参加者を募集して2021年まで追跡し、データの解析は2021年11月~2022年10月に行われた。主要アウトカムは、健康的/不健康なプラントベース食の順守の程度による、死亡率(全死因死亡および疾患特異的死亡)および心血管疾患(全イベント、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中)、がん(全がん、乳がん、前立腺がん、結腸直腸がん)、骨折(全部位、椎骨、股関節)の相対的危険度であった。

 健康的なプラントベース食か不健康なプラントベース食かどうかは、1日最低2回の食事を、24時間の平均摂取量に基づいて17項目の食品群(全粒穀物、果物、野菜、ナッツ、植物性の代替食品、紅茶/コーヒー、フルーツジュース、精製穀物、ジャガイモ、砂糖入り飲料、お菓子/デザート、動物性脂肪、乳製品、卵、魚介類、肉、その他の動物性食品)のスコアで評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・参加者12万6,394例(平均年齢56.1歳、女性55.9%、白人91.3%)を10.6~12.2年間追跡したところ、5,627例の死亡、6,890例の心血管疾患イベント、8,939例のがん、4,751例の骨折が発生した。
・健康的なプラントベース食をより多く摂取していたのは、女性、低BMI、高齢、服薬/健康異常なし、低アルコール摂取、高学歴の人であった。
・健康的なプラントベース食の順守率が最も高い四分位集団では、最も低い集団と比較して、全死因死亡、全がん、全心血管疾患のリスクが低かった(死亡のハザード比[HR]:0.84[95%信頼区間:0.78~0.91]、がんのHR:0.93[0.88~0.99]、心血管疾患のHR:0.92[0.86~0.99])。
・同様に、健康的なプラントベース食の順守率が最も高い集団では、心筋梗塞および虚血性脳卒中のリスクも低かった(心筋梗塞のHR:0.86[0.78~0.95]、虚血性脳卒中のHR:0.84 [0.71~0.99])。
・一方、不健康なプラントベース食を最も多く摂取していた集団では、全死因死亡、全がん、全心血管疾患のリスクが高かった(死亡のHR:1.23[1.14~1.32]、がんのHR:1.10[1.03~1.17]、心血管疾患のHR:1.21[1.05~1.20])。
・同様に、不健康なプラントベース食を最もよく摂取していた集団では、心筋梗塞および虚血性脳卒中リスクも高かった(心筋梗塞のHR:1.23[0.95~1.33]、虚血性脳卒中のHR:1.17[1.06~1.29])。
・健康的または不健康なプラントベース食と、出血性脳卒中、個別のがん種、骨折(全部位、部位別)には有意差はみられなかった。
・砂糖入り飲料、スナック/デザート、精製穀物、ジャガイモ、フルーツジュースの摂取量が少ない健康的な食事がリスクの低下と関連していた。
・これらは、性別、喫煙状況、BMI、社会経済的地位、多遺伝子リスクスコア(PRS)と関連はみられなかった。

 上記の結果より、研究グループは「健康的なプラントベース食の摂取が、心血管疾患、がん、および死亡のリスクの低下と関連していた。健康的なプラントベース食をより多く摂取し、動物性食品の摂取を減らすことで、慢性疾患の危険因子や遺伝子素因に関係なく健康に有益である可能性がある」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Thompson AS, et al. JAMA Netw Open. 2023;6:e234714.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

ピロリ菌感染、がん治療には良い影響か~大幸研究

提供元:CareNet.com

 Helicobacter pylori(HP)感染は胃がんの原因と考えられているが、逆にHP陽性の進行胃がん患者の生存率がHP陰性患者よりも高いことがさまざまな国の研究で報告されている。また以前の研究から、HP感染により潜在的な抗腫瘍免疫が維持されることにより、生存期間が延長する可能性が示唆されている。今回、岩手医科大学医歯薬総合研究所の西塚 哲氏らが大幸研究コホートの前向き研究で、すべてのがんの発生率および死亡率を検討した結果、HP陽性者の全がん発生率は陰性者より有意に高かったが、全がん死亡率は同等だった。著者らは、HP感染によるがん診断後の死亡リスク低下の可能性を考察している。PLOS Global Public Health誌2023年2月8日号に掲載。

 本研究の参加者は、2008年6月~2010年5月に名古屋市在住で名古屋大学医学部保健学科(旧・大幸医療センター)に来院した35~69歳の4,982人。抗HP抗体の有無が、がん(胃がん、子宮がん、肺がん、前立腺がん、結腸がん、乳がんなど)の発生率と関連するかどうかを評価し、さらにHP感染が全がん死亡に及ぼす影響も評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・1次登録の年齢中央値は53歳(範囲:35~69歳)で、8年間の観察期間中、がんが234例(4.7%)、全死亡が88例(1.8%)にみられた。
・HP陽性者は1,825人(37%)、HP陰性者3,156人(63%)であった。
・出生年が早いほどHP陽性割合が高かった。
・生年月日をマッチさせたコホート(3,376人)では、全がん発生率はHP陽性者がHP陰性者より有意に高かった(p=0.00328)が、全がん死亡率は両者に有意差はなかった(p=0.888)。
・予後因子に関するCox回帰分析の結果、HP陽性者の全がん発生率のハザード比はHP陰性者の1.59倍(95%信頼区間:1.17~2.26)だった。

 著者らは「本研究では、HP陽性者は陰性者よりがん発生率が高かったが、がん死亡率には差がなかったことから、HP陽性者においてがん診断後の死亡リスクが低下したことが示唆される。ほぼすべてのがん患者は最初の診断後に治療を受けることから、HP陽性者のほうが治療による効果が高い可能性がある。この結果は、HP感染ががん診断後の死亡リスクを低下させる可能性を示唆しているかもしれない」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Nishizuka SS, et al. PLOS Glob Public Health. 2023;3:e0001125.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)