HR+/HER2-進行乳がん、CDK4/6阻害薬は1次治療か2次治療か(SONIA)/ASCO2023

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 HR+/HER2-進行乳がんに対する1次治療でのCDK4/6阻害薬使用は、2次治療での使用と比較して、無増悪生存期間(PFS)の有意な減少や臨床的に意味のある有用性が認められなかったことが、オランダで全国的に実施された医師主導の第III相SONIA試験で示された。また、CDK4/6阻害薬を1次治療で使用すると使用期間が16.5ヵ月長くなり、毒性および治療費用が増加したという。オランダ・The Netherlands Cancer InstituteのGabe S. Sonke氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。

 CDK4/6阻害薬の1次治療での使用は2次治療での使用より毒性が長期にわたり、治療費用も増加しているが、現在、ほとんどの世界的なガイドラインでは1次治療での使用を推奨している。しかし、1次治療での使用の2次治療での使用に対する優越性は、head-to-headの比較試験から得られているわけではない。本試験では、オランダの74病院におけるHR+/HER2-進行乳がんを対象に進行がんに未治療の患者において、1次治療もしくは2次治療の内分泌療法へのCDK4/6阻害薬追加の有効性、安全性、費用対効果を評価した。

・対象:測定可能または評価可能な病変を有し、進行がんに未治療の閉経前・後のHR+/HER2-進行乳がん(WHO PS 0~2) 1,050例
・A群:1次治療で非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬(アベマシクリブ、パルボシクリブ、リボシクリブから治験担当医師が選択)、進行後フルベストラント 524例
・B群:1次治療で非ステロイド性AI単独、進行後フルベストラント+CDK4/6阻害薬 526例
・評価項目:
[主要評価項目]PFS2(2次治療でのPFS:無作為化から増悪/死亡まで)
[副次評価項目]QOL、全生存期間(OS)、費用対効果

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフ(2022年12月1日)時点の追跡期間中央値は37.3ヵ月だった。
・CDK4/6阻害薬の投与期間中央値は、A群24.6ヵ月、B群8.1ヵ月で、A群が16.5ヵ月長かった。
・1次治療におけるPFS(PFS1)中央値は、A群24.7ヵ月、B群(AI単独)16.1ヵ月だった(ハザード比[HR]:0.59、95%信頼区間[CI]:0.51~0.69、p<0.0001)。PFS2中央値はA群31.0ヵ月、B群26.8ヵ月で有意差は認められなかった(HR:0.87、95%CI:0.75~1.03、p=0.10)。これは、どのサブグループ解析でも同様だった。
・OS中央値はA群45.9ヵ月、B群53.7ヵ月で、有意差は認められなかった(HR:0.98、95%CI:0.80~1.20、p=0.83)。
・QOL(FACT-B合計スコア)に差はなかった。
・安全性については、CDK4/6阻害薬の特徴的な有害事象が認められ、Grade3以上の有害事象はA群が42%多かった。
・患者当たりの薬剤費用はA群のほうが20万ドル高かった。

 本試験の結果から、Sonke氏は「1次治療において内分泌療法単独は優れた選択肢」と述べ、「SONIA試験のような試験は、効果的な薬剤の毒性を大きく減少でき、また、高価なために手の届かない患者が利用しやすくなる」と考察している。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

SONIA試験(ClinicalTrials.gov)

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薬物療法抵抗性ではないStageIV乳がんの原発巣切除、OS改善せず(JCOG1017)/ASCO2023

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 薬物療法抵抗性ではないde-novo stageIV乳がんに対して、薬物療法単独に比べて、原発巣切除により全生存期間(OS)を改善するかどうかを検討したわが国の第III相試験(JCOG1017)の結果、OSに有意差が認められなかった。一方、原発巣切除群は、局所コントロールが良好であり、また閉経前や単臓器転移ではOSが改善される可能性が示された。岡山大学の枝園 忠彦氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。

 原発巣切除がde novo StageIV乳がんの生存期間を改善する可能性については、Tata Memorial Hospital、MF07-01試験、ABCSG28試験、ECOG2108試験といった前向き研究で検討されているが、いまだ議論の余地がある。JCOG1017試験では、de novo StageIV乳がんにおいて臨床的サブタイプに基づき、初期薬物療法後の原発巣切除の有無による予後を比較した。

・対象:de novo StageIV乳がん患者(1次登録)のうち、初期薬物療法で病勢進行(PD)と判定されなかった患者(2次登録)
・A群:薬物療法単独
・B群:原発巣切除術+薬物療法
・評価項目:
[主要評価項目]OS
[副次評価項目]遠隔転移無増悪割合、無局所再発生存期間(LRFS)、無原発巣切除生存期間、局所潰瘍形成・局所出血発生率、重篤な有害事象

 主な結果は以下のとおり。

・2011年11月5日~2018年5月31日に1次登録された570例のうち、初期薬物療法後に2次登録適格条件を満たした407例をA群(205例)とB群(202例)に無作為に割り付けた。
・OSには有意差がみられなかった(ハザード比[HR]:0.857、95%信頼区間[CI]:0.686~1.072、p=0.3129)。OS中央値はA群68.7ヵ月、B群74.9ヵ月であった。
・LRFSは有意に延長した(HR:0.415、95%CI:0.327~0.527、p<0.0001)。LRFS中央値はA群19.6ヵ月、B群62.9ヵ月であった。
・OSのサブグループ解析では、エストロゲン受容体陽性、閉経前、単臓器転移の患者で原発巣切除によりOSが改善する可能性が示された。

 枝園氏は「サブグループ解析の結果から、閉経前女性や転移臓器が少ない患者についてはさらなるトランスレーショナルリサーチや無作為化試験で、原発巣切除の効果が検討されるべき」とし、「原発巣切除はすべてのde novo StageIV乳がん患者に推奨されるものではないが、転移臓器数が少ない場合は治療選択肢となる可能性がある」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)


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HR+進行乳がん、capivasertib+フルベストラントが有効/NEJM

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 サイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬併用の有無にかかわらず、アロマターゼ阻害薬の治療中または治療後に病勢進行したホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)進行乳がん患者において、AKT阻害薬capivasertibとフルベストラントの併用療法は、フルベストラント単独療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが、英国・Royal Marsden HospitalのNicholas C. Turner氏らによる第III相無作為化二重盲検比較試験「CAPItello-291試験」で示された。AKT経路の活性化は内分泌療法の抵抗性に関与することが知られているが、HR+進行乳がんに対するフルベストラントへのcapivasertib上乗せの有効性と安全性に関するデータは限られていた。NEJM誌2023年6月1日号掲載の報告。

capivasertib+フルベストラントvs.フルベストラント単独を比較

 研究グループは、CDK4/6阻害薬併用の有無にかかわらずアロマターゼ阻害薬による治療中または治療後に再発または病勢進行した、HR+HER2-進行乳がん患者(閉経前または閉経後の女性、および男性、化学療法歴1ライン以下)を、capivasertib+フルベストラント群(capivasertib群)、またはプラセボ+フルベストラント群(プラセボ群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。

 主要評価項目は、全体集団およびAKT経路の遺伝子変異(PIK3CAAKT1またはPTEN)を有する患者集団における、治験責任医師評価によるPFSで、安全性も評価した。

主要評価項目のPFSは、capivasertib+フルベストラントで有意に延長

 計708例が無作為化され、289例(40.8%)がAKT経路の遺伝子変異を有しており、489例(69.1%)が進行乳がんに対するCDK4/6阻害薬の治療歴を有していた。

 全体集団におけるPFS中央値は、capivasertib群7.2ヵ月、プラセボ群3.6ヵ月で、病勢進行または死亡のハザード比(HR)は0.60(95%信頼区間[CI]:0.51~0.71、p<0.001)であった。また、AKT経路の遺伝子変異を有する患者集団におけるPFS中央値は、capivasertib群7.3ヵ月、プラセボ群3.1ヵ月であった(HR:0.50、95%CI:0.38~0.65、p<0.001)。

 capivasertib群で頻度の高かったGrade3以上の有害事象は、発疹(12.1% vs.0.3%)、下痢(9.3% vs.0.3%)であった。投与中止に至った有害事象は、capivasertib群13.0%、プラセボ群2.3%で報告された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Turner NC, et al. N Engl J Med. 2023;388:2058-2070.

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HER2+早期乳がん、化学療法なしのde-escalationで3年iDFS良好(PHERGain)/ASCO2023

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 HER2+早期乳がん患者を対象とした第II相PHERGain試験において、化学療法を含まないトラスツズマブ+ペルツズマブ(PH)併用療法の3年無浸潤疾患生存(iDFS)率は、ドセタキセル+カルボプラチン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(TCHP)併用療法と同等で、とくに18F-FDG PET/CT(以下「PET」)を指標とした反応例かつ病理学的完全奏効(pCR)例(一度も化学療法を行わない群)では98.8%と最も高かったことを、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が発表した。

 本試験の先行解析において、HER2+早期乳がん患者の術前治療としてトラスツズマブ+ペルツズマブ併用のpCR率が37.9%であったことが、2021年のLancet Oncology誌に掲載されている。今回は、手術を受けた患者を対象に、3年iDFS率の結果が発表された(データカットオフ:2023年2月24日)。PET反応例の判断基準はベースラインのSUVmax値から40%以上の減少であった。

・対象:腫瘍径が1.5cm以上で、初回治療としてトラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)併用療法を受けたStageI~IIIAのHR+早期乳がん患者
・試験群(PH群):PHを2サイクル→PET→PET反応例はPHを6サイクル/無反応例はTCHPを6サイクル→手術→pCR例はPHを10サイクル/非pCR例はTCHPを6サイクルとPHを4サイクル/PET無反応例はPHを10サイクル 285例
・対照群(TCHP群):TCHPを2サイクル→PET→TCHPを4サイクル→手術→PHを12サイクル 71例
・評価項目:
[主要評価項目]試験群におけるPET反応例のpCR(ypT0/isN0)、試験群における3年iDFS
[副次評価項目]全患者のpCR、対照群における3年iDFS、遠隔無病生存期間(DDFS)、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)、安全性 など

 主な結果は以下のとおり。

・2017年6月26日~2019年4月24日に、356例をPH群とTCHP群に4:1の割合で無作為に割り付けた。追跡期間中央値は3.5年(範囲:0~5.3)で、手術を受けたのはTCHP群63例(88.7%)、PH群267例(93.7%)であった。
・PH群のPET反応例は79.6%(227例)、PET無反応例は20.4%(58例)であった。pCR率は37.9%であった(95%信頼区間[CI]:31.6~44.5、p<0.001)。
・3年iDFS率は、TCHP群が98.3%、PH群全体が95.4%、PH群のPET反応例かつpCR例が98.8%であった。iDFSイベントは、PH群全体で4.5%、PH群のPET反応例かつpCR例で1.2%に生じた。
・3年DDFS率は、TCHP群が98.3%、PH群全体が96.5%、PH群のPET反応例かつpCR例が100%であった。
・3年EFS率は、TCHP群が98.4%、PH群全体が93.5%、PH群のPET反応例かつpCR例が98.8%であった。
・3年OS率は、TCHP群が98.4%、PH群全体が98.5%、PH群のPET反応例かつpCR例が100%であった。
・Grade3以上の治療関連有害事象および重篤な有害事象の発現は、TCHP群が61.8%/27.9%、PH群全体が32.9%/13.8%、PH群のPET反応例かつpCR例が1.2%/0%であった。治療に関連する死亡例はなく、予期しない安全性上の所見は認められなかった。

 これらの結果より、Cortes氏は「本試験において、PH群の3年iDFS率は95.4%で、とくにPET反応例かつpCR例では98.8%であった。多くのHER2+早期乳がん患者が、化学療法を含まないトラスツズマブ+ペルツズマブ(±内分泌療法)で治療できる可能性がある」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

PHERGain試験(Clinical Trials.gov)

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高リスク早期乳がんでの術後内分泌療法+アベマシクリブ、高齢患者でも有用(monarchE)/ASCO2023

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 再発リスクの高いHR+/HER2-リンパ節転移陽性早期乳がん患者への術後内分泌療法へのアベマシクリブ追加を検討したmonarchE試験において、65歳以上の高齢患者においても管理可能な安全性プロファイルと治療効果が得られることが示された。米国・Sarah Cannon Research Institute at Tennessee OncologyのErika P. Hamilton氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。

 monarchE試験は、再発リスクの高いHR+/HER2-リンパ節転移陽性早期乳がん患者を対象に、術後補助療法としてアベマシクリブ+内分泌療法群と内分泌療法単独群に1:1に無作為に割り付けた第III相試験で、すでに無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無遠隔再発生存期間(DRFS)の延長と忍容可能な安全性プロファイルが示され、2年間の治療後もiDFS、DRFSへのベネフィットが持続し、QOLも保たれている。今回、本試験に参加した高齢患者における有効性と安全性を検討するために、65歳未満および65歳以上に分け、各サブグループでハザード比(HR)を推定した。また、安全性は65歳以上を65~74歳と75歳以上に分けて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・monarchE試験の参加者のうち、65歳未満は4,787例、65歳以上が850例であった。
・高齢患者は、併存疾患がより多く、PSがより高く、以前に受けていた術前/術後化学療法がより少なかった。
・追跡期間中央値42ヵ月で、iDFSは、アベマシクリブ+内分泌療法群が内分泌療法単独群に比べて、65歳未満群(HR:0.646、95%信頼区間[CI]:0.554~0.753)と65歳以上群(HR:0.767、95%CI:0.556~1.059)の両群で数値的に優れた効果がみられた。4年iDFS率の絶対差は、65歳未満6.7%、65歳以上5.2%と、アベマシクリブによる絶対ベネフィットはほぼ同様だった。4年DRFS率の絶対差も65歳未満6.2%、65歳以上4.6%とほぼ同様だった。
・アベマシクリブ+内分泌療法群での有害事象(AE)発現率は、全体、65歳未満、65歳以上でほぼ同様だった。75歳以上ではGrade3の下痢とGrade2~3の倦怠感の発現率が高かった。
・65歳以上ではAEのために減量する割合が55%(65歳未満41%)、中止する割合が38%(65歳未満15%)と高く、75歳以降ではより高かった。
・AEのために用量調節した患者群でもiDFSは同様だった。
・QOLは2年間の治療期間中、どちらの治療群でもどの年齢層でも同様だった。

 Hamilton氏は「これらのデータは、すべての年代への術後アベマシクリブを支持し、患者への治療経過の見通しについての助言に使用できる」とした。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

monarchE試験(ClinicalTrials.gov)

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高リスクStageII/III早期乳がんでの術後内分泌療法+ribociclib、iDFSを改善(NATALEE)/ASCO2023

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 再発リスクの高いHR+/HER2-早期乳がんの術後内分泌療法へのCDK4/6阻害薬追加による効果については、すでにアベマシクリブが無浸潤疾患生存期間(iDFS)を改善したことがmonarchE試験で確認されている。ribociclibについては、リンパ節転移のない患者を含む再発リスクの高いStageII/IIIのHR+/HER2-早期乳がんという幅広い集団を対象に第III相NATALEE試験が進行している。その主要評価項目であるiDFSについて、第2回中間解析の結果、有意に改善したことが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で米国・David Geffen School of Medicine at UCLAのDennis J. Slamon氏により発表された。

・対象: 男性および女性(閉経前後)の再発リスクの高いStageII/IIIのHR+/HER2-早期乳がん(StageIIAの場合はN1、またはN0かつグレード3、またはN0かつグレード2かつ高リスク、StageIIBの場合はN0~1、StageIIIの場合はN0~3の症例が対象)
・試験群(ribociclib+ET群):ribociclib(400mg/日、3週投与1週休薬を3年)+内分泌療法(レトロゾールもしくはアナストロゾールを5年以上投与、男性と閉経前女性はゴセレリンを併用)2,549例
・対照群(ET単独群):内分泌療法のみ 2,552例
・評価項目:
[主要評価項目]iDFS
[副次評価項目]無再発生存期間、無遠隔再発生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)、患者報告アウトカム、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・2019年1月10日~2021年4月20日に5,101例を1:1に無作為化した。iDFSの第2回中間解析のデータカットオフ(2023年1月11日)時点で、426件のiDFSイベントが報告された。追跡期間中央値34ヵ月で、ribociclib群のうち治療中も含め治療を2年以上完了した症例は1,449例(57%)、3年完了した症例は515例(20%)だった。
・iDFSにおける追跡期間中央値27.7ヵ月で、iDFSはribociclib+ET群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.748、95%信頼区間[CI]:0.618~0.906、片側p=0.0014)。主要なサブグループでも同様に改善した。
・DDFSにおいても同様の改善がみられた(HR:0.739、95%CI:0.603~0.905、片側p=0.0017)。
・OSは改善傾向が認められた(HR:0.759、95%CI:0.539~1.068、片側p=0.0563)。
・ribociclib 400mgにおいても忍容性の高い安全性プロファイルが認められた。

 Slamon氏は「NATALEE試験の結果は、ribociclib+非ステロイド性アロマターゼ阻害薬が、N0を含む、再発リスクの高いStageII/IIIのHR+/HER2-早期乳がんという幅広い患者の新たな治療選択肢となることを支持する」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)


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NATALEE試験(ClinicalTrials.gov)

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がん死亡率、ファストフード店の多さと関連

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 住居地を選ぶ際にスーパーや飲食店へのアクセスの良さを考慮する人は少なくない。今回、米国・オーガスタ大学のMalcolm Seth Bevel氏らは米国における飲食店へのアクセス条件が肥満関連のがん死亡率と関係するのかどうかを調査した。近年、野菜などの生鮮食料品が入手困難な地域はFood Desert(食の砂漠)と呼ばれ、一方でファストフード店が多く集中し生鮮食品を取り扱う店が少ない地域はFood Swamp(食品沼)と呼ばれている。

 今回の横断研究では、2012年、2014~15年、2017年、2020年の米国農務省(USDA)のFood Environment Atlasと、2010~20年の米国疾病予防管理センター(CDC)の18歳以上の成人の死亡率データを使用し、Food DesertとFood Swampの両スコアと肥満関連のがん死亡率との関連について調査した。解析には年齢調整した混合効果モデルが用いられ、Food Swampの指標として、食料品店や野菜などの直売所の数に対するファストフードやコンビニの店舗数の比率を計算しスコア化した。Food SwampとFood Desertのスコアが高ければ(20.0~58.0)、その郡は健康的な食品資源が少ないと判定された。また、肥満と関連する13種類のがん(子宮内膜がん、食道腺がん、胃噴門部がん、肝臓がん、腎がん、多発性骨髄腫、髄膜腫、膵臓がん、大腸がん、胆嚢がん、乳がん、卵巣がん、甲状腺がん)による死亡率を人口10万人あたり71.8以上で「高い」とし、人口10万人あたり71.8未満で「低い」と分類した。

 主な結果は以下のとおり。

・米国3,142郡のうち、合計3,038郡(96.7%)がこの分析に含まれ、そのうち758郡(25.0%)で肥満関連のがん死亡率が高かった(四分位範囲[IQR]の“最も高い”範囲)。
・これらの特定の郡ではほかの郡と比べ、非ヒスパニック系黒人住民の割合が高く(3.26%[IQR:0.47~26.35] vs.1.77%[IQR:0.43~8.48])、65歳以上でもその割合が高かった(15.71%[IQR:13.73~18.00] vs.15.40%[IQR:12.82~18.09])。
・また、肥満関連のがん死亡率が高い郡は、低い郡と比較して以下の特徴が挙げられた。
 貧困率が高い(19.00%[IQR:14.20~23.70] vs.14.40%[IQR:11.00~18.50])
 肥満率が高い(33.00%[IQR:32.00~35.00] vs.32.10%[IQR:29.30~33.20])
 糖尿病の罹患率が高い(12.50%[IQR:1:1.00~14.20] vs.10.70%[IQR:9.30~12.40])
・これらの郡では、Food Desert(7.39%[IQR:4.09~11.65] vs.5.99%[IQR:3.47~9.50])およびFood Swamp(19.86%[IQR:13.91?26.40] vs.18.20%[IQR:13.14~24.00])に居住する人の割合が高かった。
・相関分析の結果、Food DesertとFood Swampの両スコアが肥満関連がん死亡率と正の相関関係があり、Food Desertと肥満関連のがん死亡率との間の相関がわずかに高いことが示唆された(Food Desert:ρ=0.12、Food Swamp:ρ=0.08)。しかし、Food DesertとFood Swampの指数スコアはユニークであると決定付けられ、低い係数が与えられた。
・Food Swampスコアが高い郡では、肥満関連のがん死亡のオッズが77%増加した(調整オッズ比:1.77、95%信頼区間:1.43~2.19)。また、Food DesertとFood Swampのスコアの3つのレベル(低-中-高)と肥満関連のがん死亡率との間には、正の用量反応関係も観察された。

(ケアネット 土井 舞子)


【原著論文はこちら】

Bevel MS, et al. JAMA Oncol. 2023 May 4. [Epub ahead of print]

【参考文献・参考サイトはこちら】

Inoue M, et al. Cancer Causes Control. 2004;15:671-680.

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進行乳がんへのHER3-DXd、効果予測因子は?(ICARUS-BREAST01)/ESMO BREAST 2023

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 HR+/HER2-の進行乳がん患者に対し、HER3を標的としたpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)を投与した第II相ICARUS-BREAST01試験において、ベースライン時のHER3+の血中循環腫瘍細胞(CTC)数が多い患者、または1サイクル目でHER3+のCTC数が大きく減少した患者では、治療反応が早期に得られやすい傾向にあったことを、フランス・Gustave RoussyのBarbara Pistilli氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。

 これまで、HER3+の再発/転移乳がん患者(HR+/HER2-、HER2+、トリプルネガティブ)に対する第I/II相U31402-A-J101試験において、HER3-DXdの有効性と安全性が示されている。この有用性はすべてのサブタイプで同様であり、HER3-DXdはHER3の発現量にあまり依存しない可能性が示唆されており、HER3-DXdに対する反応性/抵抗性のバイオマーカーは不明である。

 そこで、本試験は複数治療歴のあるHR+/HER2-進行乳がん患者におけるHER3-DXdの予測因子を明らかにすることを目的として現在行われている。データカットオフは2023年2月15日で、今回は3ヵ月奏効率と安全性データが報告された。なお、IHCでのHER3発現状況の登録は、2022年4月21日より削除された。

・対象:CDK4/6阻害薬+内分泌療法歴、1ラインの化学療法歴のあるHR+/HER2-またはHER2低発現の進行乳がん(切除不能の局所進行もしくは転移を有する乳がん)患者
・試験群:HER3-DXd 5.6mg/kg 3週間ごとに静脈内投与(治療前、治療中、治療終了時に腫瘍生検) 
・評価項目:
[主要評価項目]奏効率
[副次評価項目]無増悪生存期間、奏効期間、クリニカルベネフィット率、全生存期間、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフの時点で85例の患者が試験に参加し、うち56例が評価可能であった。
・ベースライン時の患者特性は、年齢中央値56歳(範囲:28~82歳)、全例が女性、HER3+が51.8%、前治療のライン数中央値2(範囲:1~4)、HER3-DXdのサイクル数中央値8(範囲:1~20)であった。
・3ヵ月奏効率は、部分奏効が28.6%(16例)、病勢安定が53.6%(30例)、進行が17.8%(10例)であった。
・HER3-DXd投与1~2サイクル後に、主にHER3+のCTC数の中央値が減少した。
・HER3-のCTC数と治療効果に関連はなく、病勢進行時もHER3-のCTC数の増加はみられなかった。
・ベースライン時のHER3+のCTC数が多い患者、または1サイクル目でHER3+のCTC数が大きく減少した患者では、治療反応が早期に得られやすい傾向にあったが、統計学的な有意差は認められなかった。
・治療関連有害事象(TRAE)は100%に生じ、多かったものは疲労89.3%、悪心75.0%、下痢46.4%、脱毛44.6、便秘26.8%であった。Grade3以上のTRAEは48.2%で、疲労14.3%、悪心3.6%、下痢3.6%、便秘5.3%であった。間質性肺疾患は1例(1.8%)報告された。

 ICARUS BREAST01試験は現在も進行中であり、さらなる有効性と効果予測因子の解析が行われる予定である。

(ケアネット 森 幸子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

ICARUS-BREAST試験(Clinical Trials.gov)

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TN乳がんへのHER3-DXd、CelTILスコアが有意に増加(SOLTI TOT-HER3)/ESMO BREAST 2023

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 未治療のHER2-早期乳がん患者に対するHER3を標的とした抗体薬物複合体(ADC)patritumab deruxtecan(HER3-DXd)5.6mg/kgを単回投与した第II相SOLTI TOT-HER3試験(part B)の結果、病理学的完全奏効(pCR)の予測スコアとして開発されたCelTILスコアが有意に増加し、ホルモン受容体の発現状況にかかわらず約30%の奏効率(ORR)が得られたことを、スペイン・Vall d’Hebron University HospitalのA.M. Antunes De Melo e Oliveira氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。

 昨年のESMO Breast Cancer 2022において、SOLTI TOT-HER3試験part Aの最終結果が報告され、未治療のHR+/HER2-早期乳がん患者に対するHER3-DXdの術前単回投与は、CelTILスコアの有意な増加と関連し、ORRは45%であった。今回報告されたpart Bでは、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者も登録され、有効性と安全性が検証された。なお、part AではHER3-DXdは6.4mg/kgが投与されたが、part Bでは5.6mg/kgが投与された。

<SOLTI TOT-HER3試験(part B)>
・対象:未治療、HER2-、手術可能(超音波検査またはMRIで腫瘍径≧1cm)、Ki67≧10%の閉経前/後女性および男性乳がん患者
・試験群:HER3-DXd(5.6mg/kg)を単回投与 37例(HR+/HER2-患者20例、TNBC患者17例)
・評価項目:
[主要評価項目]治療前と治療後(サイクル1の21日目)のCelTILスコア(-0.8×tumor cellularity[%]+1.3×TILs[%]:pCRと相関)の変動
[副次評価項目]治療後の超音波検査によるORR、治療前のERBB3 mRNAレベルおよびIHCでのHER3タンパク質発現状況とCelTILスコアの変化など

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時の患者特性は、年齢中央値:51歳(HR+/HER2-群51歳、TNBC群50歳)、閉経前:54%(60%、47%)、腫瘍径中央値:21mm(21.5mm、26mm)、cN0:76%(85%、65%)、Ki67中央値:30%(20%、70%)であった。
・治療前と比較した治療後のCelTILスコアの変化は、全体では平均差+9.4(p=0.046)で、TNBC群(平均差+17.9)のほうがHR+/HER2-群(平均差+2.2)よりも顕著であった。
・ORRは、全体32%、HR+/HER2-群30%、TNBC群35%で、part Aと同様にCelTILスコアの変化量はORRと関連していた(AUC=0.693、p=0.049)。
・治療前のERBB3 mRNAレベルおよびIHCでのHER3タンパク質発現状況と、CelTILスコアの変化量やORRとの関連はみられなかった。
・PAM50サブタイプは、治療前がLuminal A:9例、Luminal B:7例、HER2-Enriched:4例、Basal-like:17例で、治療後はLuminal A:10例、Luminal B:4例、HER2-Enriched:2例、Basal-like:8例、Nomal-like:6例、No residual tumor:7例であった。
・Gradeを問わない治療関連有害事象(TRAE)は84%(31例)に生じた。多かったものは、悪心65%(24例、うち1例はGrade3)、疲労46%(17例)、脱毛27%(10例)、下痢22%(8例)、便秘14%(5例)、頭痛14%(5例)、トランスアミナーゼ値上昇14%(5例)などで、以前に報告されたものと一致していた。Part Aと比較して、血液毒性および肝毒性の発現率は低かった。間質性肺疾患は報告されなかった。

 現在、HR+/HER2-乳がんを対象に、術前にHER3-DXdを5.6mg/kgを6サイクル投与する第II相SOLTI-VALENTINE試験が実施されている。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

TOT-HER3試験(Clinical Trials.gov)

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AI耐性HR+進行乳がんへのcapivasertib上乗せによるPFS改善、サブグループ解析結果(CAPItello-291)/ESMO BREAST 2023

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 アロマターゼ阻害薬(AI)耐性のホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)進行乳がん(切除不能の局所進行乳がんもしくは転移・再発乳がん)に対するフルベストラントへのAKT阻害薬capivasertibの上乗せ効果を検討した第III相CAPItello-291試験。その探索的サブグループ解析の結果、CDK4/6阻害薬治療歴、進行がんへの化学療法歴、肝転移の有無にかかわらず、一貫した無増悪生存期間(PFS)の改善が示された。英国・The Royal Marsden Hospital-ChelseaのNicholas Turner氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023)で報告した。

 本試験の主要評価項目である全体集団およびAKT経路に変異のある集団におけるPFSの結果は、2022年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で報告されている(全体集団でのハザード比[HR]:0.60、AKT経路変異集団でのHR:0.50)。また、全生存期間(OS)はimmatureではあるが、全体集団でのHRが0.74、AKT経路変異集団のHRが0.69であった。今回は事前に計画された探索的サブグループ解析の結果が報告された(データカットオフ:2022年8月15日)。

・対象:男性もしくは閉経前/後の女性のHR+/HER2-の進行乳がん患者(AI投与中/後に再発・進行、進行がんに対して2ライン以下の内分泌療法・1ライン以下の化学療法、CDK4/6阻害薬治療歴ありも許容、SERD・mTOR阻害薬・PI3K阻害薬・AKT阻害薬の治療歴は不可、HbA1c 8.0%未満)
・試験群(capi群):capivasertib(400mg1日2回、4日間投与、3日間休薬)+フルベストラント(500mg) 355例
・対照群(プラセボ群):プラセボ+フルベストラント 353例
・評価項目:
[主要評価項目]全体集団およびAKT経路(PIK3CAAKT1PTENのいずれか1つ以上)に変異のある患者集団におけるPFS
[副次評価項目]全体集団およびAKT経路に変異のある患者集団におけるOS、奏効率(ORR)など
[サブグループ]CDK4/6阻害薬治療歴の有無、進行がんへの化学療法歴の有無、ベースラインにおける肝転移の有無

 今回のサブグループ解析における主な結果は以下のとおり。

・全体集団における各群のPFS中央値および調整HR(95%信頼区間)は以下のとおり。
– CDK4/6阻害薬治療歴
 あり:capi群5.5ヵ月、プラセボ群2.6ヵ月、0.59(0.48~0.72)
 なし:capi群10.9ヵ月、プラセボ群7.2ヵ月、0.64(0.45~0.90)
– 進行がんへの化学療法歴
 あり:capi群3.8ヵ月、プラセボ群2.1ヵ月、0.55(0.36~0.82)
 なし:capi群7.3ヵ月、プラセボ群3.7ヵ月、0.62(0.51~0.75)
– 肝転移
 あり:capi群3.8ヵ月、プラセボ群1.9ヵ月、0.61(0.48~0.78)
 なし:capi群9.2ヵ月、プラセボ群5.5ヵ月、0.60(0.48~0.76)

・CDK4/6阻害薬治療期間について12ヵ月未満と12ヵ月以上で層別解析した結果、治療期間によらずcapi群が有効であることが確認された。

 Turner氏は「フルベストラント単剤の有効性は低く、CDK4/6阻害薬投与後のアンメットニーズを浮き彫りにした。capivasertib+フルベストラントは、CDK4/6阻害薬の使用有無にかかわらず、AI投与中もしくは後に進行したHR+進行乳がんに対する治療選択肢となる可能性がある」とした。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

CAPItello-291試験(ClinicalTrials.gov)

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