高リスク早期乳がんへの術後内分泌療法+アベマシクリブ、OS中間解析結果(monarchE)/SABCS2022

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 HR+/HER2-リンパ節転移陽性の高リスク早期乳がんにおける術後内分泌療法へのアベマシクリブの追加を検討するmonarchE試験では、すでに主要評価項目の無浸潤疾患生存期間(IDFS)と副次評価項目である遠隔無転移生存期間(DRFS)を改善することが示されている。今回、主要評価項目の解析から2年後に予定されていた全生存期間(OS)中間解析(IA2)の結果を、英国・The Royal Marsden HospitalのStephen R.D. Johnston氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表した。なお、この結果はThe Lancet Oncology誌オンライン版2022年12月6日号に同時掲載された。

・対象:再発リスクの高いHR+/HER2-の早期乳がん
[コホート1]リンパ節転移4個以上、リンパ節転移1~3個の場合はグレード3もしくは腫瘍径5cm以上
[コホート2]リンパ節転移1~3個かつKi-67値20%以上かつグレード1~2で腫瘍径5cm未満
・試験群:術後療法として、標準的内分泌療法(タモキシフェンもしくはアロマターゼ阻害薬)+アベマシクリブ150mg1日2回。アベマシクリブは最長2年投与(ET+アベマシクリブ群:2,808例)
・対照群:術後療法として、標準的内分泌療法を5年以上施行(ET群:2,829例)
・評価項目:
[主要評価項目]IDFS
[副次評価項目]Ki-67高値集団におけるIDFS、DRFS、OS、安全性、薬物動態、患者報告アウトカム

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値42ヵ月(データカットオフ:2022年7月1日)時点で、すべての患者がアベマシクリブ投与を終了していた。
・ITT集団におけるIDFSのハザード比(HR)は0.664(95%信頼区間[CI]:0.578~0.762、p<0.0001)で、IDFS率の絶対的ベネフィットは、2年時の2.8%、3年時の4.8%に比べ4年時は6.4%に増加した。
・ITT集団におけるDRFSのHRは0.659(95%CI:0.567~0.767、p<0.0001)で、DRFS率の絶対的ベネフィットは、2年時の2.5%、3年時の4.1%に比べ4年時は5.9%に増加した。
・ITT集団におけるOSはimmatureであった(HR:0.929、95%CI:0.748~1.153、p=0.5027)が、死亡例数はET+アベマシクリブ群(157例)がET群(173例)より少なかった。
・コホート1において、Ki-67高値のほうが低値より予後不良だったが、Ki-67値にかかわらずアベマシクリブの治療効果が認められた。
・アベマシクリブの安全性プロファイルは管理可能で、高リスク集団にも忍容可能と考えられた。

 Johnston氏は「今回の追加解析で、術後アベマシクリブのベネフィットは増大し、4年時のIDFSとDRFSの絶対的ベネフィットは2年時、3年時と比べて増加した。OSは現時点ではimmatureだったが、ET群に比べET+アベマシクリブ群で死亡例数が少なかった」とまとめた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

monarchE(ClinicalTrials.gov)

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術前化療で完全奏効のTN or HER2+乳がん、手術省略できるか/Lancet Oncol

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 トリプルネガティブ(TN)およびHER2陽性乳がん患者において、術前化学療法により病理学的完全奏効を達成した場合は予後良好とされ、経皮的画像ガイド下吸引補助式乳房組織生検(VACB)により正確に判断することが可能である。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのHenry M. Kuerer氏らは、術前化学療法を受けたTNまたはHER2陽性の早期乳がん患者において、画像ガイド下VACBにより病理学的完全奏効と判定された場合に、手術を省略し放射線治療のみにできるかどうか検討した。The Lancet Oncology誌2022年12月号に掲載。

 本試験は米国の7施設による多施設共同単群第II相試験で、対象はcT1-2N0-1M0のTNまたはHER2陽性乳がんの妊娠していない40歳以上の女性で、標準的な術前化学療法後、残存病変が画像上2cm未満の患者とした。画像ガイド下VACBで浸潤性・潜在性がんが確認されなかった場合、手術を省略し、標準的な全乳房放射線治療を行った。主要評価項目は、生検による同側乳がん再発率、安全性はVACBを受けた全患者を対象に評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・2017年3月6日~2021年11月9日に50例が登録され、年齢中央値は62歳(四分位範囲:55~77)、TN乳がん21例(42%)、HER2陽性乳がん29例(58%)であった。
・VACBにより31例(62%、95%信頼区間:47.2~75.4)に病理学的完全奏効を確認した。
・これらの31例について、観察期間中央値26.4ヵ月(四分位範囲:15.2~39.6)時点で、同側乳がん再発は認められなかった。
・生検関連の重篤な有害事象や治療関連死亡は発生しなかった。

 この第II相試験の結果から、著者らは、術前化学療法後に画像ガイド下VACBで病理学的完全奏効が判定された患者には手術省略が可能と考察している。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Kuerer HM, et al. Lancet Oncol. 2022;23:1517-1524.

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中程度の運動で乳がん患者の死亡リスクが60%減!?

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 乳がん患者における日常動作以上の身体活動レベルと全死因死亡リスクの関連を評価した結果、中程度の身体活動であっても死亡リスクが60%低いことを、米国・カイザーパーマネンテ南カリフォルニアのLie Hong Chen氏らが明らかにした。身体活動による乳がんの発症リスク低減効果は知られているが、乳がんと診断された後の身体活動の効果に関する評価はまだ不十分であった。JAMA Netw Open誌2022年11月17日リサーチレター掲載の報告。

 研究グループは、2年以上前に乳がんの診断を受け(生存期間中央値6年)、カリフォルニア州のヘルスケアプランのメンバーであった閉経後乳がん患者のコホート研究を実施した。対象は、1996~2012年に初期の乳がん(TNM分類0~II期)と診断された患者で、調査は2013年8月1日~2015年3月31日に行われ、2022年4月30日または患者死亡まで追跡された。

 身体活動レベルと疲労度は、ゴーディン式余暇運動調査票(GSLTPAQ)およびFatigue Severity Inventory(簡易倦怠感尺度)の2つのアンケートによって聞き取った。身体活動レベルと全死因死亡リスクの関連を、年齢、乳がんの病期、疲労度、併存疾患、診断からの年数、人種・民族、不眠症とうつ病の既往、がん治療の種類(内分泌療法、化学療法、放射線治療)によって調整し、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・参加者315例の平均年齢は71歳(57~86歳)で、68.9%が非ヒスパニック系白人であった。
・最長追跡期間8.7年(中央値7.8年[四分位範囲:7.3~8.3年])において、45例(14.3%)が死亡した。うち5例が乳がんによる死亡であった。
・死亡率は、身体活動レベルが高い群(高強度[ランニング、ジョギングなど]または高頻度)では12.9/1,000人年、身体活動レベルが中程度の群(中強度[早歩き、ゆっくりとしたサイクリングなど])では13.4/1,000人年、身体活動レベルが低い群(低強度[ヨガ、アーチェリーなど]または低頻度)では32.9/1,000人年であった。
・多変量解析において、身体活動レベルが低い群と比較して、身体活動レベルが高い群の死亡のハザード比(HR)は0.42(95%信頼区間[CI]:0.21~0.85)、身体活動レベルが中程度の死亡のHRは0.40(同:0.17~0.95)であった。

 これらの結果より、研究グループは「本研究は食事情報と客観的な身体活動の評価を欠いているという限界がある」としたうえで、「身体活動レベルが高い参加者と中程度の参加者の死亡リスクは同程度であり、がん患者のケアにおいて身体活動の取り組みを検討する必要がある」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


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Chen LH, et al. JAMA Netw Open. 2022;5:e2242660.

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乳がん内分泌療法中のホットフラッシュに有効な新規薬剤/Lancet

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 新規非ホルモン性小分子化合物Q-122は、乳がん後に経口内分泌療法中の女性患者において、ホットフラッシュや発汗など血管運動神経症状の改善に有効で忍容性は良好であることが、オーストラリア・QUE OncologyのAmanda Vrselja氏らが、オーストラリア、ニュージーランド、米国の18施設で実施した第II相無作為化二重盲検プラセボ対照概念実証試験の結果、示された。血管運動神経症状は、経口内分泌療法中の乳がん女性の3分の2以上にみられるが、安全で有効な治療法はない。Q-122は、視床下部にあるエストロゲンに反応するKNDyニューロンの活性化を減少することにより、血管運動神経症状を抑制する可能性が示唆されていた。著者は、「今回の結果は、Q-122の大規模かつ長期的な試験の実施を支持するものであり、更年期のホルモン療法に代わる治療を必要としている閉経後女性にも使用できる可能性もある」とまとめている。Lancet誌2022年11月12日号掲載の報告。

中等度~重度の血管運動神経症状に対するQ-122の有効性と安全性をプラセボと比較

 研究グループは、乳がん後にタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬を30日以上服用しており、中等度~重度の血管運動神経症状(ホットフラッシュおよび発汗)が週50回以上発現している18~70歳の女性患者を、Q-122群(100mgを1日2回)またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け(BMI値[≦30または>30]、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬、ガバペンチン、プレガバリンのいずれかの使用で層別化)、28日間経口投与した。

 血管運動神経症状の重症度は、血管運動神経症状重症度スコア(VMS-SS、スコア1[軽度:発汗を伴わない熱感]、スコア2[中等度:発汗を伴う熱感があるが、活動を継続できる]、スコア3[重度:発汗を伴う熱感があり、活動が停止])で患者に評価してもらった。

 主要評価項目は、中等度および重度VMS-SS(msVMS-SS)のベースラインから28日目までの平均変化率であった。msVMS-SSは、(2×中等度血管運動神経症状数)+(3×重度血管運動神経症状数)として算出した。

 少なくとも1回試験薬を服用し、試験開始後に1回以上有効性の評価を行った修正intention-to-treat集団を有効性解析対象集団とし、少なくとも1回試験薬を服用した全患者を安全性解析対象集団とした。

Q-122群でmsVMS-SSが有意に改善

 2018年10月24日~2020年9月9日の期間に、243例がスクリーニングされ、そのうち131例が無作為化された(Q-122群65例、プラセボ群66例)。

 msVMS-SSのベースラインから投与28日目までの平均変化率(最小二乗平均値)は、Q-122群が-39%(95%信頼区間[CI]:-46~-31)、プラセボ群が-26%(95%CI:-33~-18)であり、プラセボ群と比較してQ-122群で有意に低下した(p=0.018)。

 試験薬投与下で発現した有害事象は多くが軽症から中等症であり、両群間で類似していた。治療関連有害事象の発現率は、Q-122群17%(11/65例)、プラセボ群14%(9/66例)で、重篤な有害事象はQ-122群ではみられず、プラセボ群でのみ2例に認められた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


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Vrselja A, et al. Lancet. 2022;400:1704-1711.

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ドキソルビシン、乳がん併用療法での休薬期間短縮可能に/サンドファーマ

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 サンドファーマ株式会社は2022年11月24日、ドキソルビシン(一般名:アドリアシン注用10、同注用50)について、乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍薬との併用療法の場合、シクロホスファミド水和物との併用において、用法及び用量の医薬品製造販売承認事項一部変更承認を受けたことを発表した。

<製品概要>
・販売名:
アドリアシン注用10
アドリアシン注用50
・一般名:ドキソルビシン塩酸塩
・効能・効果:変更なし
・用法及び用量:
<乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法>
シクロホスファミド水和物との併用において、標準的なドキソルビシン塩酸塩の投与量及び投与方法は、1日量、ドキソルビシン塩酸塩として60mg(力価)/m2(体表面積)を日局注射用水又は日局生理食塩液に溶解し、1日1回静脈内投与後、13日間又は20日間休薬する。
この方法を1クールとし、4クール繰り返す。
なお、年齢、症状により適宜減量する。またドキソルビシン塩酸塩の総投与量は500mg(力価)/m2(体表面積)以下とする。
・用法及び用量に関連する注意:
<乳癌(手術可能例における術前、あるいは術後化学療法)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法>
本剤の投与スケジュールの選択、G-CSF製剤の使用等について、国内外の最新のガイドライン等を参考にすること。
・承認取得日:2022年11月24日

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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TS-1、ER+HER2-乳がん術後療法に適応拡大/大鵬

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 大鵬薬品工業は2022年11月24日、経口抗がん薬TS-1(一般名:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、商品名:ティーエスワン配合カプセルT20・T25/ティーエスワン配合顆粒T20・T25/ティーエスワン配合OD錠T20・T25)について、新たな適応として「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術後薬物療法」の承認を、厚生労働省より取得したことを発表した。

 今回の承認は、医師主導臨床試験である「エストロゲン受容体陽性HER2陰性乳癌に対するTS-1術後療法」(POTENT試験)の結果に基づく。同試験では、エストロゲン受容体陽性HER2陰性乳がんに対する術後補助療法において、標準的な治療法である内分泌療法(5年間)を対照群とし、この内分泌療法(5年間)とTS-1(1年間)を併用する治療法を試験群として、再発抑制効果が高まることを無作為化比較第III相試験により検証することが目的とされた。主な評価項目は、浸潤性疾患のない生存期間、全生存期間および安全性などで、2012年2月~2016年2月の症例登録期間中に全国の乳がん専門施設139施設から1,959例が登録された。

 POTENT試験の結果より、TS-1と内分泌療法の併用は、再発中間リスク以上のエストロゲン受容体陽性かつHER2陰性の原発性乳がん患者に対し、臨床的に意義のある浸潤性疾患のない生存期間(Invasive Disease Free Survival:iDFS)の延長を認めた。また、安全性はこれまでにTS-1で報告されているプロファイルと同様であり、POTENT試験で新たな懸念は確認されなかった。

<製品概要>
・販売名:
ティーエスワン配合カプセルT20・T25
ティーエスワン配合顆粒T20・T25
ティーエスワン配合OD錠T20・T25
・一般名:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム
・効能・効果:
胃癌、結腸・直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌、手術不能又は再発乳癌、膵癌、胆道癌、ホルモン受容体陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術後薬物療法
・用法・用量:
<ホルモン受容体陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術後薬物療法>
内分泌療法剤との併用において、通常、成人には次の投与量を朝食後および夕食後の1日2回、14日間連日経口投与し、その後7日間休薬する。これを1クールとして最長1年間、投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜増減する。初回基準量を超える増量は行わないこと。
体表面積1.25m2未満:40mg/回*
体表面積1.25m2以上1.5m2未満:50mg/回
体表面積1.5m2以上:60mg/回
*初回基準量(テガフール相当量)
・承認取得日:2022年11月24日

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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T-DXd、HER2陽性乳がん2次治療に適応拡大/第一三共

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 第一三共株式会社は2022年11月24日、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)について、「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌」の効能又は効果に係る国内製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。

 本適応は、HER2陽性の再発・転移乳がん患者への2次治療を対象としたグローバル第III相臨床試験(DESTINY-Breast03)の結果に基づくもので、2021年12月に国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行っていた。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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「G-CSF適正使用ガイドライン 2022年版」海外ガイドラインの模倣ではなく、科学的な手法を徹底/日本癌治療学会

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 がん薬物療法はさまざまな有害事象を伴うが、好中球減少は多くの薬剤で頻発する有害事象であり、時に重篤な感染症を引き起こし死に至ることもある。好中球減少と同時に発熱が生じる「発熱性好中球減少症(FN:Febrile Neutropenia)」を防ぐために使用されるのがG-CSF製剤である。

 G-CSF製剤の適正使用に関しては、1994年にASCO(米国臨床腫瘍学会)がガイドラインを作成し、以来、改訂を重ねて、世界中で参照されている。2013年に刊行された「G-CSF適正使用ガイドライン第1版」は、ASCOのガイドラインと歩調を合わせる形で作成され、FNのリスクが高い場合には、G-CSFの「予防投与」を行うことが強く推奨された。日本では、G-CSFの予防投与は一部のがんを除いて保険適用となっておらず、FNが起きてから使う「治療投与」が主流であったが、そんな医療現場に一石を投じることになった。

 そして2022年10月、大幅に改訂された「G-CSF適正使用ガイドライン 第2版」(日本癌治療学会・編)が刊行された。Web版としては4年ぶり、書籍版としては7年ぶりの改訂となる。4年に及ぶ改訂作業を率いた、G-CSF適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループ(WG)委員長の高野 利実氏(がん研有明病院 院長補佐)に改訂のポイントを聞いた。

 「今回の改訂における最大の変更点は、『Minds診療ガイドライン作成の手引き』に準拠し、エビデンスに基づく評価を徹底したことです。世界的な潮流であり当然の決断ではあったのですが、がん種によっては、G-CSFのありなしを比較する研究があまりなく、推奨の決定に苦慮しました。『FN発症率20%を基準にG-CSF使用の是非を判断する』という前提が、ASCOのガイドライン等で採用されているのですが、このカットオフに明確な根拠はないため、私たちは、この前提から離れた上で、G-CSFの有用性を評価するために、がん種別にシステマティックレビューを行いました」

 「作業は苦難の連続でしたが、WG委員とシステマティックレビューチームの総勢42名の4年間にわたる努力で、完成させることができました。推奨の強さが1(強い)となったクリニカル・クエスチョン(CQ)は少なく、『弱く推奨する』『有用性は明らかでない』という記述が多くなってしまいましたが、解説文では、G-CSFを使用することの益と害についてのレビュー結果を記載し、現場での判断に役立つように工夫しました」

 「刊行前のパブリックコメントでは『ASCOやNCCNのガイドラインに倣うべきでは』『20%のカットオフの方が使いやすい』といった意見も寄せられましたが、『海外の権威』や『使いやすさ』に安易になびくよりも、科学的に妥当であることを重視しました。結果として、世界に類を見ない新しいガイドラインになりました。疾患によってはエビデンスが乏しいことも明らかになりましたので、これからは、新たなエビデンスを創出していく必要があると認識しています」

『G-CSF適正使用ガイドライン 2022年10月改訂 第2版』
編集/日本癌治療学会
発行/金原出版
B5判 208ページ
定価 3,520円(税込)

(ケアネット 杉崎 真名)


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乳がん治療におけるタキサン3剤の末梢神経障害を比較

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 乳がん治療におけるnab-パクリタキセル、パクリタキセル、ドセタキセルによる化学療法誘発性末梢神経障害の患者報告を比較したコホート研究の結果を、中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのHongnan Mo氏らが報告した。化学療法誘発性末梢神経障害はnab-パクリタキセル群よりパクリタキセル群およびドセタキセル群で有意に少なく、nab-パクリタキセルでは主に感覚神経障害である手足のしびれ、パクリタキセルおよびドセタキセルでは主に運動神経障害および自律神経障害が報告された。また、感覚神経障害よりも運動神経障害のほうが早く報告されていた。JAMA Network Open誌2022年11月2日号に掲載。

 本研究は、2019~21年に中国全土の9つの医療センターで実施された前向きコホート研究である。対象は、nab-パクリタキセル、パクリタキセル、ドセタキセルベースのレジメンで治療を受けた入院中の浸潤性乳がん女性1,234例で、overlap propensity score weightingによる重み付けで評価した。2021年12月~2022年5月のデータを解析し、主要評価項目は欧州がん研究治療機関(ERT)のQOL調査票(感覚神経、運動神経、自律神経スケールの20項目)を用いた患者報告による化学療法誘発性末梢神経障害とした。解析には、ベースラインの患者、腫瘍、治療の特性で調整した重回帰モデルを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・1,234例の平均(SD)年齢は50.9(10.4)歳で、nab-パクリタキセルが295例(23.9%)、パクリタキセルが514例(41.7%)、ドセタキセルが425例(34.4%)だった。
・主な症状は、nab-パクリタキセル群では感覚神経に関連する手足のしびれ(81.4%)が多く、パクリタキセル群およびドセタキセル群では運動神経障害(例として、脚力低下はパクリタキセル群47.2%、ドセタキセル群44.4%)、自律神経障害(例として、目のかすみはパクリタキセル群45.7%、ドセタキセル群43.6%)が報告された。
・運動神経障害は、感覚神経障害より早い時期に報告され、症状発現までの中央値はnab-パクリタキセル群0.4週間(95%信頼区間[CI]:0.4~2.3)、パクリタキセル群2.7週間(同:1.7~3.4)、ドセタキセル群5.6週間(同:3.1~6.1)であった。
・患者報告による化学療法誘発性末梢神経障害のリスクは、nab-パクリタキセル群に比べてパクリタキセル群(ハザード比[HR]:0.59、95%CI:0.41~0.87、p=0.008)とドセタキセル群(HR:0.65、95%CI:0.45~0.94、p=0.02)で低く、感覚的不快感も、nab-パクリタキセル群と比べて、パクリタキセル群(HR:0.44、95%CI:0.30~0.64、p<0.001)およびドセタキセル群(HR:0.52、95%CI:0.36~0.75、p<0.001)で低かった。しかし、運動神経障害や自律神経障害を報告するリスクは、nab-パクリタキセル群に比べ、パクリタキセル群、ドセタキセル群が低くはなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Mo H, et al. JAMA Netw Open. 2022;5:e2239788.

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新経口薬camizestrant、ER+進行乳がんでフルベストラントに対しPFS延長/AZ

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 アストラゼネカは2022年11月8日、次世代経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であるcamizestrantが、進行乳がんに対して内分泌療法による治療歴があり、エストロゲン受容体(ER)陽性の局所進行または転移乳がんを有する閉経後の患者を対象に、フルベストラント500mgと比較して、75mgおよび150mgの両用量で主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)において、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示したと発表した。なお、camizestrantの忍容性は良好であり、安全性プロファイルは過去の試験で認められたものと一貫しており、新たな安全性上の懸念は確認されていない。

 camizestrantは、強力で経口投与可能なSERDかつERへの完全拮抗薬であり、ER活性型変異を含む幅広い前臨床モデルで抗がん活性を示している。第I相臨床試験(SERENA-1試験)では、camizestrantの忍容性が良好であり、単剤療法またはCDK4/6阻害薬パルボシクリブとの併用療法として投与したときに有望な抗腫瘍プロファイルを有することが示されている。

 今回結果が発表されたSERENA-2試験は、ER陽性HER2陰性の進行乳がん患者を対象に、複数の用量のcamizestrantをフルベストラントと比較して評価する、無作為化非盲検並行群間多施設共同第II相臨床試験。主要評価項目は、フルベストラント(500mg)との比較によるcamizestrant(75mg)のPFS、およびフルベストラントとの比較によるcamizestrant(150mg)のPFSであり、Response Evaluation Criteria In Solid Tumours(RECIST)ガイドライン第1.1版の定義に従い評価される。240例をcamizestrant群またはフルベストラント群に無作為に割り付け、病勢進行が認められるまで治療を実施した。副次評価項目は、24週目の安全性、客観的奏効率および臨床的ベネフィット率(CBR)など。本試験の詳しい結果は、今後の医学学会で発表される予定となっている。

 また、一次治療中にESR1遺伝子変異が検出されたHR陽性の転移乳がん患者を対象にcamizestrantとCDK4/6阻害剤(パルボシクリブまたはアベマシクリブ)の併用療法を評価する検証的第III相臨床試験であるSERENA-6試験や、HR陽性の局所進行または転移乳がんへの一次治療におけるcamizestrantとパルボシクリブの併用療法を評価する第III相SERENA-4試験などが実施されており、SERENA-6試験の適応症は米国食品医薬品局(FDA)よりファストトラック指定を付与されている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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