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乳がんとの関連が報告されている9つの生殖細胞系列の遺伝子変異について、それぞれ腫瘍サブタイプや悪性度にどんな特徴があるのか? 多施設共同症例対照研究(BRIDGES研究)の結果を、英国・ケンブリッジ大学のNasim Mavaddat氏らがJAMA Oncology誌オンライン版2022年1月27日号に報告した。
本研究は1991~2016年の間に実施され、遺伝子解析と分析は2016~21年に行われた。ATM、BARD1、BRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2、RAD51C、RAD51D、およびTP53の9つの遺伝子変異について、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、ERBB2の状態および腫瘍の悪性度(組織型、サイズ、TNM病期、リンパ節転移)によって定義された5つの乳がんサブタイプ(HR+ERBB2-低悪性度、HR+ERBB2+、HR+ERBB2-高悪性度、HR-ERBB2+、トリプルネガティブ)との関連が解析された。
主な結果は以下のとおり。
・ヨーロッパまたは東アジアの38の研究から、家族歴とは無関係にサンプリングされた18~79歳の女性で構成される4万2,680人の乳がん患者と4万6,387人の対照参加者が含まれた。
・面接(対照者)および診断(乳がん症例)時の平均(SD)年齢は、それぞれ55.1(11.9)歳および55.8(10.6)歳だった。
・遺伝子変異別のサブタイプの分布にはかなりの不均一性がみられた。
・RAD51C(OR:6.19、95%信頼区間[CI]:3.17~12.12)、RAD51D(OR:6.19、95%CI:2.99~12.79)、およびBARD1(OR:10.05、95%CI:5.27~19.19)の変異は、主にトリプルネガティブ乳がんと関連していた。
・CHEK2の変異は、トリプルネガティブ乳がんを除くすべてのサブタイプ(OR:2.21~3.17)に関連していた。
・ATMの変異は、HR+ERBB2-高悪性度サブタイプとの関連が最も強かった(OR:4.99、95%CI:3.68~6.76)。
・BRCA1の変異はすべてのサブタイプのリスク増加と関連していたが、オッズ比は大きく異なり、トリプルネガティブ乳がんで最も高かった(OR:55.32、95%CI:40.51~75.55)。
・BRCA2およびPALB2の変異もトリプルネガティブ乳がんと関連していた。
・TP53の変異は、HR+ERBB2+およびHR-ERBB2+サブタイプと最も強く関連していた。
・病的バリアント保持者で発生する腫瘍は、より高悪性度だった。
・ほとんどの遺伝子変異とサブタイプでは、年齢が高くなるごとにオッズ比の低下が観察された。
・9つの遺伝子変異は40歳以下の女性におけるトリプルネガティブ乳がんの27.3%に関連していた。
(ケアネット 遊佐 なつみ)
【原著論文はこちら】
Breast Cancer Association Consortium. JAMA Oncol. 2022 Jan 27. [Epub ahead of print]