リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー  CONNECTED PAPERSの活用 その1【「実践的」臨床研究入門】第15回

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本連載は、臨床研究のノウハウを身につけたいけれど、メンター不在の臨床現場で悩める医療者のための、「実践的」臨床研究入門講座です。臨床研究の実践や論文執筆に必要な臨床疫学や生物統計の基本について、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや、実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、解説していきます。

関連研究のネットワークを可視化する

 これまで、関連研究レビューのための質の高い2次情報源(連載第3回参照)として、診療ガイドライン、UpToDate®、コクラン・ライブラリーの活用法を解説してきました。今回はその他の有用な情報源として”CONNECTED PAPERS”を紹介します。

 ”CONNECTED PAPERS”は「Key論文」(連載第8回参照)と内容の「類似性」の高い論文をネットワーク化して図示する無料のオンラインツールです。”CONNECTED PAPERS”のホームページのヘッダーにある”About”をクリックすると”How does it work?”とあり、このツールの「からくり」についての説明があります。それによると、ここで言う論文の「類似性」とは、互いに引用している関係に限らないようです。それぞれの論文の引用文献の多くが重複していると関連したトピックを扱っている可能性が高い、と推定するなどして関連研究のネットワークを可視化しているそうです。

 それでは、実際の論文を用いて“CONNECTED PAPERS”を使ってみたいと思います。

 前回読み込んだコクラン・フル・レビュー論文1)ですが、出版年は2007年と10年以上前です。コクラン・ライブラリーで”Version history”を確認すると(連載第13回参照)、このトピックに関する初版のフル・レビュー論文2)は1997年に出版され、現行の2007年版1)はその「アップデート論文」でした。この2つのフル・レビュー論文のコクラン・ライブラリーでの固有IDは”CD002181”と同じですが、筆頭著者が違います1, 2)

 一方、Digital Object Identifier(DOI)は個別のコンテンツ(ここでは論文)の電子データに与えられる恒久的な識別子です。コクラン・ライブラリーでもPubMedでも論文タイトルの直下にDOIが示されています。1997年版2)と2007年版1)のフル・レビュー論文のDOIを比較してみます。

・DOI: 10.1002/14651858.CD002181.pub2(2007年版)1)
・DOI: 10.1002/14651858.CD002181.(1997年版)2)

 「アップデート論文」1)のDOIの末尾には”.pub2”が追記されており、個別の論文ごとの識別子であることがわかります。

 コクラン・ライブラリーを見る限り、2007年版のフル・レビュー論文1)以降はアップデートされていないようです。そこで、このトピックに関して2007年以降に新たなエビデンスが出版されているかを”CONNECTED PAPERS”で調べてみましょう。

 ”CONNECTED PAPERS”の使い方は簡単です。そのホームページを開くと”To start, enter a paper identifier”と注釈のついた検索窓が出てきます。そこに、「Key論文」のタイトルもしくはDOIをコピー&ペーストするだけです。

実際に2007年版のコクラン・フル・レビュー論文1)を「Key論文」として、そのDOIを検索窓にコピー&ペーストしてみます。すると、「Key論文」を中心とした関連研究との関係性がリンクのように可視化されます。 類似の論文は矢印で結ばれ、個々の論文は円型の節点(ノード)で示されます。ノードの大きさは被引用回数の多さを、色は出版年を表しています(色が濃いほど新しい論文)。”CONNECTED PAPERS”を使えば、関連研究の見逃しが減るかもしれません。


【 引用文献 】

講師紹介

harasense

長谷川 毅 ( はせがわ たけし ) 氏
昭和大学統括研究推進センター研究推進部門 教授
昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門/衛生学公衆衛生学講座 兼担教授
福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター 特任教授

[略歴]
1996年昭和大学医学部卒業。
2007年京都大学大学院医学研究科臨床情報疫学分野(臨床研究者養成コース)修了。
都市型および地方型の地域中核病院で一般内科から腎臓内科専門診療、三次救急から亜急性期リハビリテーション診療まで臨床経験を積む。その臨床経験の中で生じた「臨床上の疑問」を科学的に可視化したいという思いが募り、京都の公衆衛生大学院で臨床疫学を学び、米国留学を経て現在に至る。


バックナンバー

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46. 何はさておき記述統計 その7

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40. 何はさておき記述統計 その1

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5. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その2

4. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用その1

3. リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビューその2

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1. 臨床上の疑問とリサーチ・クエスチョン

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HER2+進行乳がん2次治療、T-DXdが脳転移例にも良好な結果(DESTINY-Breast03)/SABCS2021

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 HER2陽性の切除不能または転移を有する乳がん(mBC)患者に対する2次治療として、脳転移の有無にかかわらずトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)がトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と比較し高い有効性を示した。米国・カリフォルニア大学のSara A. Hurvitz氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2021)で第III相DESTINY-Breast03試験のサブグループ解析結果を発表した。

 DESTINY-Breast03試験については、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で中間解析結果が発表され、主要評価項目のPFS中央値は、T-Dxd群NR(95%信頼区間[CI]:18.5~NE) vs.T-DM1群6.8ヵ月(95%CI:5.6~8.2)、ハザード比(HR):0.28(95%CI:0.22~0.37、p=7.8×10-22)でT-Dxd群の有意な延長が報告されている。

・対象:トラスツズマブとタキサンによる治療歴のあるHER2+mBC患者
・試験群:以下の2群に1対1の割合で無作為に割り付け
T-DXd群:3週間間隔で5.4mg/kg投与 261例
T-DM1群:3週間間隔で3.6mg/kg投与 263例
・層別化因子:ホルモン受容体の状態、ペルツズマブ治療歴、内臓転移の有無、治療ライン数(0~1、≧2)、脳転移の有無
・評価項目:
[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]OS、BICRおよび治験実施医師評価による客観的奏効率(ORR)、BICR評価による奏効期間(DOR)、治験実施医師評価によるPFS、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフは2021年5月21日、追跡期間中央値は15.9ヵ月。
・ベースライン時点で、脳転移を有する患者はT-DXd群43例(16.5%)vs. T-DM1群39例(14.8%)だった。
・ホルモン受容体の状態、ペルツズマブ治療歴、内臓転移の有無、治療ライン数、脳転移の有無別のいずれのサブグループにおいても、T-DM1群と比較してT-DXd群ではPFS中央値とORRが大きく改善していた。
・ベースライン時点で脳転移を有する症例でのPFS中央値はT-Dxd群15.0ヵ月(95%CI:12.5~22.2) vs.T-DM1群3.0ヵ月(95%CI:2.8~5.8)、HR:0.25(95%CI:0.13~0.45)。脳転移のない症例でのPFS中央値はNE(95%CI:22.2~NE)vs. 7.1ヵ月(95%CI:5.6~9.7)、HR:0.30(95%CI:0.22~0.40)だった。
・ベースライン時点で脳転移を有する症例でのORRはT-Dxd群67.4% vs.T-DM1群20.5%。CRは4.7% vs.0%、PRは62.8% vs.20.5%。脳転移のない症例でのORRは82.1% vs. 36.6%。CRは18.3% vs.10.3%、PRは63.8% vs.26.3%だった。
・ベースライン時点で脳転移を有する症例での頭蓋内奏効は、CRがT-Dxd群27.8% vs. T-DM1群2.8%、PRは36.1% vs.30.6%だった。
・中間解析において治療中止に関連した有害事象としてT-Dxd群で最も多かったのはILD/肺炎であったが、Grade4以上の報告はなく、またアジア人サブグループと非アジア人サブグループの間で差は認められなかった(10.9% vs.10.0%)。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

DESTINY-Breast03試験(Clinical Trials.gov)

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早期乳がん術後化療中の遠隔ケア、予防的電話介入の効果は?/BMJ

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 早期乳がんの外来化学療法中の毒性管理について、プロアクティブに電話で介入する方法は、救急部門の受診や入院の減少に結び付かなかったことが、カナダ・University Health NetworkのMonika K. Krzyzanowska氏らが行った検討で示された。がん化学療法中は、救急部門の受診や入院は一般的であり、外来で適切にサポートすれば予防できる可能性が示唆されているが、これまで遠隔管理の大規模な検討は限定的であった。結果を踏まえて著者は、「COVID-19パンデミックにより遠隔ケアが急速に増加しており、がん治療中の患者の遠隔管理について、実践可能な戦略を確立することはとくに重要な課題である」と述べている。BMJ誌2021年12月8日号掲載の報告。

介入群vs.通常ケア、化学療法中の救急部門受診/入院回数を検証

 研究グループは、早期乳がんの化学療法中の毒性管理について、プロアクティブな遠隔管理の効果を評価する、プラグマティックなクラスター無作為化試験を行った。

 カナダ、オンタリオ州の20のがんセンターを、共変量制限付き無作為化法にて、毒性の遠隔管理を行う(介入)群または通常ケアを行う(対照)群に割り付けた。被験者は、各センターで早期乳がんによりアジュバント化学療法またはネオアジュバント化学療法を受けた全患者。また、各センターで25例に、アウトカムの質問票に回答してもらった。

 介入群には、各化学療法サイクル後の2つの時点で、看護師によるプロアクティブかつ標準化された一般的な毒性の管理が電話にて行われた。

 主要評価項目は、化学療法全コース中の、クラスターレベルでみた患者1人当たりの救急部門受診回数または入院回数の平均値で、ルーチンに利用可能な健康管理データを用いて評価した。また、患者の自己申告によるアウトカムには、毒性、自己効力感、QOLなどが含まれていた。

両群間で有意差なし

 被験者のベースライン特性は、介入群(944例)、対照群(1,214例)で類似していた。65歳超の被験者は22%で、占有率(各センターで介入を受けた患者の割合)は、50~86%であった。

 患者1人当たりの救急部門受診/入院回数の平均値は、介入群0.91(標準偏差[SD] 0.28)、対照群0.94(0.40)だった(p=0.94)。47%(1,014/2,158例)が、化学療法中に1回以上、救急部門受診/入院を経験した。

 患者が自己申告するアウトカム質問票に回答した580例において、Grade3の毒性を1回以上経験したと報告したのは、介入群48%(134/278例)、対照群58%(163/283例)であった。自己効力感、不安、うつ症状について差は認められなかった。また、ベースラインと比較した、がん治療試験の機能評価のアウトカム指数の低下は、介入群6.1ポイント、対照群9.0ポイントであった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Krzyzanowska MK, et al. BMJ. 2021 Dec 8. [Epub ahead of print]

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早期乳がん、タキサンへのアントラサイクリン追加のベネフィットとリスク~メタ解析/SABCS2021

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 早期乳がんに対するタキサンとアントラサイクリンをベースとした化学療法は、アントラサイクリンによる心毒性と白血病リスク増加の懸念から、アントラサイクリンを含まないレジメン、とくにドセタキセル+シクロホスファミド(DC)が広く使用されている。アントラサイクリン併用のベネフィットとリスクは複数の無作為化試験で検討されているが、結果が一致していない。今回、Early Breast Cancer Trialists Collaborative Group(EBCTCG)が、2012年以前に開始された16件の無作為化比較試験から約1万8,200例のデータのメタ解析を実施した。その結果、アントラサイクリン併用で、乳がん再発リスクが相対的に15%減少し、また同時投与レジメンで最大の減少がみられたことを、英国・オックスフォード大学のJeremy Braybrooke氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2021)で発表した。

・比較試験の種類:
(A)アントラサイクリン+DC同時投与6サイクル vs. DC 6サイクル(タキサン累積投与量が両群で同じ)3試験
(B)アントラサイクリン/タキサン逐次投与 vs. DC 6サイクル(タキサン累積投与量が併用群で少ない)8試験
(C)タキサン+アントラサイクリン vs. タキサン±カペシタビン3試験
(D)タキサン+アントラサイクリン vs. タキサン+カルボプラチン2試験
・主要評価項目:再発率、乳がんによる死亡率

 主な結果は以下のとおり。

・全試験でのメタ解析では、タキサンに対するタキサン+アントラサイクリンでの再発リスクの相対的減少は15%(RR:0.85、95%CI:0.78~0.93、2p=0.0003)、10年での絶対的減少は2.5%(95%CI:0.9~4.2)だった。乳がん死亡リスクの相対的減少は13%(RR:0.87、95%CI:0.78~0.98、2p=0.02)、10年での絶対的減少は1.6%(95%CI:0.1~3.1)だった。
・再発リスクの相対的減少は、アントラサイクリン同時投与の有無による比較(A)で42%(RR:0.58、95%CI:0.43~0.79)と最大だった。一方、アントラサイクリン/ドセタキセル逐次投与とDCの比較(B、ドセタキセル累積投与量が併用群で少ない)では、アントラサイクリン併用による有意なベネフィットはなかった(RR:0.92、95%CI:0.78~1.09)。
・再発率の相対的減少について、エストロゲン受容体の発現状況やリンパ節転移の個数による違いはなかった。
・心血管疾患や白血病による死亡の有意な増加は示されなかった(長期フォローアップが必要)。

(ケアネット 金沢 浩子)


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ESR1変異を有するHR+進行乳がん、フルベストラント+パルボシクリブへの早期切り替えでPFS改善(PADA-1)/SABCS2021

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 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんに対する一次治療として、アロマターゼ阻害薬(AI)とパルボシクリブの併用療法で治療中の患者のうち、疾患進行前に血液中で検出されたESR1変異を有する患者は、フルベストラントとパルボシクリブの併用療法に早期に切り替えることで、無増悪生存期間(PFS)の改善がみられた。第III相PADA-1試験の結果を、フランス・Institut Curie and Paris-Saclay UniversityのFrancois-Clement Bidard氏が発表した。

・対象:アロマターゼ阻害薬とパルボシクリブの併用による一次治療中の転移を有するHR+/ HER2-乳がん患者(ECOG PS 0~2) 1,017例
・試験の構成:
[STEP1]組み入れ時、一ヵ月後、その後2ヵ月後おきにリキッドバイオプシーで採取した血中循環腫瘍DNA(ctDNA)からdroplet digital PCR(ddPCR)を用いてESR1変異の状況を確認
[STEP2]ESR1変異が確認され、その時点で疾患進行のみられない患者(172例)を無作為化:
AI+パルボシクリブ(Pal)併用群 84例
フルベストラント(Ful)+パルボシクリブ(Pal)併用群 88例
[STEP3]AI+パルボシクリブ併用群において疾患増悪後、フルベストラント+パルボシクリブへのクロスオーバーが認められた
・評価項目:
[主要評価項目]STEP2における治験担当医師評価による無増悪生存期間(PFS)、安全性(Grade3以上の血液毒性)
[副次評価項目]クロスオーバー後のPFS、安全性(Grade3以上の非血液毒性、SAE)など

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフは2021年7月31日で、追跡期間中央値は34.5ヵ月(STEP1~3まで0~52ヵ月)。
・STEP2での両群の患者特性は、年齢中央値がAI+Pal群60歳vs. Ful+Pal群62歳、術後AI療法歴を有する患者が37% vs. 34%、ESR1変異発現までの期間12ヵ月以上が65% vs. 61%と両群でバランスがとれていた。
・STEP2の追跡期間中央値は26ヵ月。PFS中央値はAI+Pal群5.7ヵ月に対しFul+Pal群11.9ヵ月とFul+Pal群で有意な改善がみられた(層別ハザード比:0.61、95%信頼区間[CI]:0.43~0.86、p=0.005)。
・安全性について、Grade3以上の血液毒性/非血液毒性いずれも両群で差はみられず、新たな安全性上の懸念も認められなかった。
・STEP2のAI+Pal群のうち、69例がPDとなり、うち47例がクロスオーバーコホートとしてFul+Pal併用療法へ切り替えた(STEP3)。
・STEP3の追跡期間中央値は14.7ヵ月。PFS中央値は3.5ヵ月(95%CI:2.7~5.1)だった。

 Bidard氏はctDNAによるESR1変異のモニタリングはCDK4/6阻害薬との併用療法を最適化するために有用とし、治療中にオプションとしてこの戦略を取り入れていくことがベネフィットにつながる可能性があるとした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

PADA-1試験(ClinicalTrials.gov)

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21遺伝子アッセイ、リンパ節転移陽性乳がんの術後化学療法の効果予測は?/NEJM

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 21遺伝子乳がんアッセイ(Oncotype DX、Exact Sciences製)による再発スコアは、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、腋窩リンパ節転移陰性の乳がんにおける化学療法の効果の予測に有用であることが確認されている。米国・エモリー大学Winshipがん研究所のKevin Kalinsky氏らは、今回、リンパ節転移陽性乳がんにおける21遺伝子アッセイの有用性を検討し、再発スコアが25点以下の閉経前女性では、術後の化学療法+内分泌療法(化学内分泌療法)は内分泌療法単独と比較して、無浸潤病変生存と無遠隔再発生存の期間を延長する一方で、同様の病態の閉経後女性では化学療法の利益はないことを示した(RxPONDER試験)。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2021年12月1日号で報告された。

9ヵ国632施設の無作為化試験

 研究グループは、21遺伝子アッセイはリンパ節転移陽性乳がん女性における術後化学療法の利益を予測可能かの検証を目的に、前向き無作為化臨床試験を行った(米国国立がん研究所[NCI]などの助成を受けた)。本試験では、2011年2月~2017年9月の期間に、9ヵ国632施設で参加者の無作為化が行われた。

 対象は、年齢18歳以上で、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、1~3個の腋窩リンパ節転移(Stage N1)を有し、再発スコア(0~100点、点数が高いほど予後不良)が25点以下の遠隔転移のない非炎症性乳がんで、初回手術としてセンチネルリンパ節生検または腋窩リンパ節郭清を受けており、タキサン、アントラサイクリンあるいはこれら双方を含む化学療法レジメンが適応となる女性であった。

 被験者は、化学内分泌療法または内分泌療法のみを受ける群に無作為に割り付けられ、15年間追跡された。

 この試験の主要な目標は、無浸潤病変生存期間に及ぼす化学療法の効果を評価することであり、再発スコアと化学療法の効果の関連が検討された。無浸潤病変生存期間は、無作為化の日から、浸潤病変の初回再発(局所、領域、遠隔)、初発の新規浸潤がん(乳がん、他の種類のがん)、全死因死亡が発生するまでの期間と定義された。副次エンドポイントは無遠隔再発生存などであった。

閉経後女性では術後化学療法を安全に回避可能

 5,018例(年齢中央値57.5歳[IQR:18.3~87.6]、閉経前33.2%、閉経後66.8%)が解析に含まれた。化学内分泌療法群が2,511例、内分泌療法単独群は2,507例であった。事前に規定された3回目の中間解析で、無浸潤病変生存期間に及ぼす化学療法の利益は閉経状況によって異なること(p=0.008)が明らかとなったため、閉経前と閉経後に分けて解析が行われた。

 閉経後女性では、5年無浸潤病変生存率は化学内分泌療法群が91.3%、内分泌療法単独群は91.9%であり、化学療法の利益は示されなかった(ハザード比[HR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.82~1.26、p=0.89)。また、5年無遠隔再発生存率にも、両群間に差は認められなかった(94.4% vs.94.4%、HR:1.05、95%CI:0.81~1.37、p=0.70)。

 これに対し、閉経前女性の5年無浸潤病変生存率は、化学内分泌療法群が93.9%と、内分泌療法単独群の89.0%に比べ有意に良好であった(HR:0.60、95%CI:0.43~0.83、p=0.002)。5年無遠隔再発生存率も同様に、化学内分泌療法群で高かった(96.1% vs.92.8%、HR:0.58、95%CI:0.39~0.87、p=0.009)。閉経前女性では、再発スコアの上昇に伴って、化学療法の相対的な利益が増加することはなかった。

 著者は、「1~3個の腋窩リンパ節転移を有し、再発スコアが0~25点の閉経後乳がん女性では、無浸潤病変生存や無遠隔再発生存を損なわずに、術後化学療法を安全に回避可能であることが示された。対照的に、1~3個の腋窩リンパ節転移を有する閉経前乳がん女性では、再発スコアがかなり低い患者であっても、化学療法の利益が大きいことがわかった」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Kalinsky K, et al. N Eng J Med. 2021 Dec 1. [Epub ahead of print]

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抗TROP2抗体薬物複合体Dato-DXd、TN乳がんでの第I相試験最新データ(TROPION-PanTumor01)/SABCS2021

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 抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd、DS-1062)の固形がんを対象とした第I相TROPION-PanTumor01試験のうち、切除不能なトリプルネガティブ(TN)乳がんにおける安全性と有効性に関する最新データについて、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのIan Krop氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2021)で発表した。本データから、Dato-DXdが管理可能な安全性プロファイルと有望な抗腫瘍活性を示すことが示唆された。

 本試験は進行中の多施設非盲検第I相試験で、進行/転移乳がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、その他のがんを対象に安全性と有効性が評価されている。今回、TN乳がんコホートにおける更新結果を発表した。

・対象:標準治療後に病勢進行した切除不能なTN乳がん(ECOG PS 0~1)44例
・投与スケジュール:42例はDato-DXd 6mg/kgを3週間ごとに静脈内投与、2例は8mg/kgを投与
・評価項目:
[主要評価項目]安全性、忍容性
[副次評価項目]有効性(盲検下独立中央評価[BICR]による奏効率)、薬物動態など

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフ(2021年7月30日)時点で、44例中13例(30%)が治療を継続し、30例(68%)が病勢進行、1例(2%)が有害事象により治療を中止していた。
・年齢中央値は53歳(範囲:32〜82歳)で、30例(68%)が前治療を2ライン以上受けていた。前治療は、19例(43%)が免疫療法、13例(30%)は別のトポイソメラーゼ阻害薬が結合した抗体薬物複合体(うち10例はsacituzumab govitecan)が投与されていた。
・BICRによる奏効率は34%(確定したCR/PR:14例、確定前のCR/PR:1例)で、病勢コントロール率(DCR)は77%だった。
・別のトポイソメラーゼI阻害薬が結合した抗体薬物複合体による治療歴のない27例のサブグループ解析において、奏効率は52%(確定したCR/PR:13例、確定前のCR/PR:1例)で、DCRは81%だった。
・奏効期間中央値は未到達(範囲:2.7〜7.4+ヵ月)だった。
・治療中の有害事象(TEAE)は、全Gradeが98%、Grade3以上が45%に発現し、治療関連TEAEは全Gradeが98%、Grade3以上が23%に発現した。重篤な治療関連TEAEは5%に発現し、死亡例はなかった。
・発現の多かった有害事象は、悪心、口内炎、嘔吐、倦怠感、脱毛症で、血液毒性と下痢の頻度は低かった。薬物関連の間質性肺疾患は報告されていない。

 なお、本試験におけるHR+/HER2-乳がんコホートについては登録が完了している。ほかにも、TN乳がんに対してDato-DXd+デュルバルマブの有効性と安全性を評価するBEGONIA試験が進行中である。また、HR+/HER2-乳がんに対する第III相TROPION-Breast01試験が開始されており、今後、TN乳がんに対する第III相試験も予定されている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

TROPION-PanTumor01試験(ClinicalTrials.gov)

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新薬elacestrantがHR+進行乳がん2~3次治療でPFS改善、初の経口SERD(EMERALD)/SABCS2021

提供元:CareNet.com

 ホルモン受容体陽性/ HER2陰性の転移を有する閉経後乳がん患者への2次および3次治療において、経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)elacestrantが、医師選択の標準治療と比較して死亡または疾患進行リスクを有意に減少させ、無増悪生存期間(PFS)を改善した。第III相EMERALD試験の中間解析結果を、米国・Mass General Cancer CenterのAditya Bardia氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2021)で発表した。

 現在、同患者に対しては主に内分泌療法とCDK4/6阻害薬による治療が行われているが、ほとんどの患者は最終的にこれらの治療に対する耐性を獲得し、その耐性機序の一つとしてESR1変異が考えられている。

 SERDとして乳がん治療で唯一承認されているフルベストラントは筋肉内注射による投与であり、経口SERDとして第III相試験が実施されたのは今回のelacestrantが初。Bardia氏はelacestrantはフルベストラントと比較して吸収が大きく、薬物動態が改善され、ERの阻害が強化されていると説明した。EMERALD試験は多施設共同無作為化比較試験で、北米・ヨーロッパの他アルゼンチン、韓国、オーストラリアなど17カ国228施設が参加。日本からの参加はない。

・対象:ホルモン受容体陽性/ HER2陰性の転移を有し、CDK4/6阻害薬治療後に進行した男性および女性の閉経後乳がん患者(1~2ラインの内分泌療法歴[うち1ラインはCDK4/6阻害薬との併用]と1ライン以下の化学療法歴有、ECOG PS 0/1) 477例
・elacestrant群:elacestrant(400mg/日) 239例
・標準治療群:治験担当医選択によるフルベストラントまたはアロマターゼ阻害薬 238例
・評価項目:
[主要評価項目]ITT集団およびESR1変異を有する患者におけるPFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時点での患者特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はelacestrant群63.0歳vs.標準治療群63.5歳、内臓転移を有する患者は68.2% vs.70.6%、1ラインの化学療法歴を有する患者は20.1% vs.24.4%だった。
・主要評価項目であるITT集団におけるPFS中央値は、elacestrant群2.79ヵ月に対し標準治療群1.91ヵ月となり、elacestrant群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.697、95%信頼区間[CI]:0.552~0.880、p=0.0018)。
ESR1変異を有する患者におけるPFS中央値は、elacestrant群3.78ヵ月に対し標準治療群1.87ヵ月となり、elacestrant群で有意に改善した(HR:0.546、95%CI:0.387~0.768、p=0.0005)。
・ITT集団における6ヵ月時点でのPFS率は34.3% vs.20.4%、12ヵ月時点では22.32% vs.9.42%だった。ESR1変異を有する患者においては6ヵ月時点でのPFS率は40.8% vs.19.1%、12ヵ月時点では26.76% vs.8.19%だった。
・elacestrantによるPFSのベネフィットは、フルベストラントによる治療歴(HR:0.679、 95%CI:0.438~1.029)および内臓転移を有する患者(HR:0.665、95%CI:0.607~0.869)を含む、事前に設定されたほとんどのサブグループにおいて観察された。 一方、アジア人(HR:1.091、95%CI:0.456~2.642)およびその他の人種(HR:1.075、95%CI:0.309~3.580)ではみられなかった。ただし、これらのサブグループは例数が少ない(32例、14例)。
・副次評価項目であるOS中央値は、未成熟なデータではあるが、ITT集団 (HR:0.751、 95%CI:0.542~1.038、p=0.0821) およびESR1変異を有する患者(HR:0.592、95%CI:0.361~0.958、p=0.0325)においてともにelacestrant群で良好な傾向がみられている。
・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)で多くみられたのは悪心(35.0% vs.18.8%)、倦怠感(19.0% vs.18.8%)、嘔吐(19.0% vs.8.3%)、食欲不振(14.8% vs.9.2%)、関節痛(14.3%vs.16.2%)。Grade3/4では、悪心(2.5% vs.0.9%)、背部痛(2.5% vs.0.4%)、ALT上昇(2.1% vs.0.4%)がみられた。TRAEによる治療中止はelacestrant群3.4%、標準治療群0.9%で報告され、両群とも治療関連の死亡は発生していない。

 Bardia氏は同患者に対するelacestrant単剤療法は新しい標準治療となる可能性があるとし、OSの最終結果は来年以降発表される見通しとした。また、より早期の治療ラインにおける有効性および他の治療薬と組み合わせたときの有効性を評価する必要があるとし、脳転移のある患者を対象に、アベマシクリブと組み合わせたelacestrantの有効性を評価する第II相試験が計画されているとした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

EMERALD試験(ClinicalTrials.gov)

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TN乳がん1次治療でのペムブロリズマブ、適切なCPSカットオフ値は?(KEYNOTE-355)/SABCS2021

提供元:CareNet.com

 手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性のトリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療において、ペムブロリズマブ+化学療法による治療ベネフィットが期待される患者の定義としてCPS 10以上が適切であることを示唆する、第III相KEYNOTE-355試験のサブグループ解析結果を、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2021)で発表した。

 本試験では、化学療法+ペムブロリズマブが、未治療のPD-L1陽性(CPS 10以上)の手術不能な局所再発または転移を有するTN乳がん患者において、化学療法+プラセボと比べ、有意に全生存(OS)および無増悪生存(PFS)を改善したことがすでに報告されている。しかし、CPS 1以上の集団では有意なベネフィットは示されなかった。今回は、CPS 1未満、1~9、10~19、20以上のサブグループに分けてOSとPFSを解析した。

・対象:18歳以上の手術不能な局所再発または転移を有するPD-L1陽性のTN乳がん(ECOG PS 0/1)847例
・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンの3種類のうちいずれか)566例
・対照群:プラセボ+化学療法 281例
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS 10以上、1以上)およびITT集団におけるPFSとOS
[副次評価項目]奏効率、奏効期間、病勢コントロール率、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・最終解析時点(データカットオフ:2021年6月15日)で、無作為化~データカットオフの期間の中央値は44ヵ月だった。
・OSについては、報告済みのハザード比(95%信頼区間)は、CPS 10以上で0.73(0.55~0.95)、CPS 1以上で0.86(0.72~1.04)、ITT集団で0.89(0.76~1.05)だった。今回のサブグループ解析では、CPS 1未満で0.97(0.72~1.32)、1~9で1.09(0.85~1.40)、10~19で0.71(0.46~1.09)、20以上で0.72(0.51~1.01)で、CPS 1~9ではペムブロリズマブ群とプラセボ群で変わらず、10~19と20以上ではペムブロリズマブの追加による治療ベネフィットが同等だった。
・PFSについては、報告済みのハザード比(95%信頼区間)は、CPS 10以上で0.66(0.50~0.88)、CPS 1以上で0.75(0.62~0.91)、ITT集団で0.82(0.70~0.98)だった。今回のサブグループ解析では、CPS 1未満で1.09(0.78~1.52)、1~9で0.85(0.65~1.11)、10~19で0.70(0.44~1.09)、20以上で0.62(0.44~0.88)だった。

(ケアネット 金沢 浩子)


KEYNOTE-355試験(ClinicalTrials.gov)

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高齢がん患者への高齢者機能評価介入、治療毒性を低減/Lancet

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 進行がんの高齢患者への介入として、地域の腫瘍医(community oncology practice)に高齢者機能評価の要約を提供すると、これを提供しない場合に比べ、がん治療による重度の毒性作用の発現頻度が抑制され、用量強度の低いレジメンで治療を開始する腫瘍医が増えることが、米国・ロチェスター大学医療センターのSupriya G. Mohile氏らのクラスター無作為化試験「GAP70+試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年11月20日号で報告された。

米国の40施設のクラスター無作為化試験

 本研究は、患者管理上の推奨事項を含む高齢者機能評価の要約を地域の腫瘍医に提供することによる介入は、意思決定の改善をもたらし、高リスクのがん治療による重度の毒性を軽減するとの仮説の検証を目的とするクラスター無作為化試験であり、米国の40の地域腫瘍診療施設が参加し、2014年7月~2019年3月の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]の研究助成を受けた)。

 対象は、年齢70歳以上、高齢者機能評価のドメイン(8項目)のうち、ポリファーマシーを除く少なくとも1つの機能障害がみられ、非治癒性の進行固形がんまたはリンパ腫(StageIII/IV)に罹患しており、4週間以内に毒性作用のリスクが高い新たながん治療レジメンを開始する予定の患者であった。

 参加施設は、高齢者機能評価による介入群または通常治療群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。介入群の腫瘍医には、Webベースのプラットフォームを用いて作成された個別の高齢者機能評価の要約と患者管理上の推奨事項が提供され、通常治療群の腫瘍医には提供されなかった。

 主要アウトカムは、3ヵ月間にGrade3~5の毒性作用(NCIの有害事象共通用語規準[CTCAE]の第4版で判定)が発現した患者の割合とされた。

転倒の発生率も低下

 40施設(腫瘍医156人)のうち、16施設が介入群、24施設は通常治療群に割り付けられた。患者718例が登録され、349例が介入群、369例は通常治療群であった。全体の平均年齢は77.2(SD 5.4)歳、311例(43%)が女性であった。がん種は、消化器がんが34%、肺がんが25%、泌尿生殖器がんが15%、乳がんが8%で、リンパ腫は6%だった。

 ベースラインの高齢者機能評価で機能障害が認められた平均ドメイン数は4.5(SD 1.6)であり、両群間に差はなかった。介入群は通常治療群に比べ、黒人が多く(11%[40/349例]vs.3%[12/369例]、p<0.0001)、化学療法による既治療例の割合が高かった(30%[104/349例]vs.22%[81/369例]、p=0.016)。

 新たな治療レジメン開始から3ヵ月以内にGrade3~5の毒性作用が発現した患者の割合は全体で61%(440/718例)であった。このうちGrade5(死亡)は5例(1%)で認められた。

 Grade3~5の毒性作用が発現した患者の割合は、介入群が51%(177/349例)と、通常治療群の71%(263/369例)に比べて低く、高齢者機能評価による介入は毒性作用のリスクを有意に低減することが確認された(補正後リスク比[RR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.64~0.86、p=0.0001)。Grade3~5の毒性作用のうち、非血液毒性には有意差が認められたが(補正後RR:0.72、95%CI:0.52~0.99、p=0.045)、血液毒性には差がなかった(0.85、0.70~1.04、p=0.11)。

 化学療法は、タキサン系薬剤やプラチナ製剤を含むレジメンが多かった。化学療法のパターンには両群間に差がみられ(p=0.011)、介入群では用量強度の低い併用療法や単剤療法、化学療法+他の薬剤(モノクローナル抗体など)、化学療法以外のレジメンの割合が高い傾向が認められた。通常治療群では、2剤併用化学療法の使用頻度が高かった。

 また、介入群では、1サイクル目の用量強度が標準よりも低い治療を受けた患者が多く(49%[170/349例]vs.35%[129/369例]、補正後RR:1.38、95%CI:1.06~1.78、p=0.015)、3ヵ月間に毒性関連で減量が行われた患者は少なかったが有意差はなかった(43%[149/349]vs.58%[213/369例]、0.85、0.68~1.08、p=0.18)。6ヵ月生存率(補正後ハザード比[HR]:1.13、95%CI:0.85~1.50、p=0.39)と1年生存率(1.05、0.85~1.29、p=0.68)には差が認められなかった。

 さらに、介入群では、3ヵ月以内の転倒の発生率が低く(12%[35/298例]vs.21%[68/329例]、補正後RR:0.58、95%CI:0.40~0.84、p=0.0035)、がん治療レジメン開始前に中止された薬剤の数が多かった(平均群間差:0.14、95%CI:0.03~0.25、p=0.015)。

 著者は、「進行がんや加齢に伴う疾患を有する高齢患者に対し、毒性作用のリスクが高い治療レジメンを新たに開始する場合は、高齢者機能評価とこれに基づく患者管理を、標準治療として考慮すべきである」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Mohile SG, et al. Lancet. 2021;398:1894-1904.

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