固形がん患者へのブースター接種、抗体価の変化は?/JAMA Oncol

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 積極的な治療を受けている固形がん患者では新型コロナウイルス感染症により予後が悪化するリスクが高く、また、化学療法を受けているがん患者ではBNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer/BioNTech)による体液性応答が低下することが報告されている。今回、イスラエル・Hadassah Medical CenterのYakir Rottenberg氏らが、主に化学療法を受けた固形がん患者でのBNT162b2ワクチンの3回目(ブースター)接種後30日未満の体液性応答を調査したところ、ほとんどの症例でブースター接種後早期に抗体反応がみられたことがわかった。JAMA Oncology誌オンライン版2021年11月23日号に掲載。

 本研究の対象は、Hadassah Medical Centerにおいて化学療法、生物学的製剤、免疫チェックポイント阻害薬、もしくはこれらの組み合わせで治療された固形がん患者で、BNT162b2ワクチンを2回接種していた患者。血液サンプルの採取日の中央値は、ブースター接種後13日(範囲:1~29)で、スパイクタンパク質結合抗体について分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・2021年8月15日~9月5日に37例がブースター接種後に血清学的検査を受けた。2回目接種とブースター接種との間隔の中央値は214日(範囲:172~229)、2回目接種と2回目接種後抗体測定の間隔の中央値は86日(範囲:30~203)だった。
・年齢中央値は67歳(範囲:43~88)で、11例(30%)は転移がなく、19例(51%)は化学療法を受けていた。
・1例(40代、dose-dense AC療法後パクリタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブによる術後補助療法中)を除いた患者が血清学的検査で陽性だった。さらに、化学療法の有無に関係なく、2回目接種後の反応が中程度または最小だった患者で、ほぼすべての患者が高い抗体価を示し、有意に抗体価が増加した。
・多重線形回帰の結果、2回目接種後の抗体価(p<0.001)と高齢者(p=0.03)がブースター接種後の高い抗体価と関連した。一方、性別、化学療法の有無、3回目接種と抗体検査の間隔との関連はみられなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Rottenberg Y, et al. JAMA Oncol. 2021 Nov 23.[Epub ahead of print]

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がん治療における遺伝子パネル検査、データ利活用の最前線/日本癌治療学会

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 実臨床で得られた診療データをその後の研究に活かしていくという、「データ利活用」の動きが世界中で活発になっている。第59回日本癌治療学会学術集会(10月21~23日)では会長企画シンポジウムとして「大規模データベースを活用したがん治療の新展開――医療データの臨床開発への利活用」と題した発表が行われた。

 冒頭に中島 直樹氏(九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター)が「データ駆動型の医療エビデンス構築の現在と未来」と題した講演を行い、日本の医療データの問題点として「収集後の名寄せが困難(マイナンバーの医療分野利用の遅れなど)」「医療情報の標準化の遅れ」「改正個人情報保護法によるハードル」を挙げた。そして、これらの問題の解決策として2018年に制定された次世代医療基盤法によるデータ収集と連携のプラットフォームに触れ、状況が変わりつつあることを紹介した。

 続いて、谷口 浩也(愛知県がんセンター病院 薬物療法部)が、「産学連携ゲノム解析研究SCRUM/CIRCULATE-Japan Registryの医薬品医療機器承認への活用」と題した発表で、 国立がんセンターを中心とした産学連携全国がんゲノムスクリーニングプロジェクト「SCRUM-Japan」内の「SCRUM-Japan Registry」プロジェクトにおける、臨床研究データを蓄積し、外部の医薬品メーカーに提供、主に希少疾病の新薬開発における比較対照として活用して承認申請に結びつける取り組みを紹介した。「データの質を保つために参加施設を本体研究より絞り、患者背景の均一化などを工夫してきた。悉皆性の確保、参加施設のモチベーションの維持、コスト負担などが今後の課題だ」とした。

 さらに、河野 隆志氏(国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター=C-CAT)が「保険診療で行われるがん遺伝子パネル検査のデータの診療・研究・開発への利活用」と題した演題でC-CATのデータ利活用の現状を紹介。C-CATには2019年6月~2021年8月までに2万1,030例の遺伝子パネル検査の結果が集積。がん種は男性では肺がんよりも膵臓がんが多く、女性では乳がんと卵巣/卵管がんがほぼ同数などとなっている。「遺伝子パネル検査を受けるのは標準治療終了後の患者さんに限られるため、一般的ながん種別の罹患率とは異なり、悪性度の高いがんが多くなる傾向がある」(河野氏)という。これまで、「診療検索ポータル」という検索サイトを立ち上げ、患者背景ごとに適合する進行中の治験を検索できるようにしてきた。

 さらに今年の10月から「利活用検索ポータル」として、研究・開発目的としてC-CATデータを提供するサイトをオープン。1万8,000例ほどから、がん種や遺伝子変異の種類、薬剤名、奏効率や有害事象などの条件で検索し、詳細なデータを閲覧できる。

 利用者はC-CATによる審査・登録後、がんゲノム医療中核拠点病院、大学等の研究機関であれば無償、製薬メーカーは有償で利用できるようになる。「特定の遺伝子変異の患者データ等の把握が容易になり、治験などが活発になることを期待している。登録は審査が必要となり時間がかかるため、最低限の情報を確認できる『登録件数検索』機能を用意しており、興味がある方はぜひ一度見ていただきたい」(河野氏)とした。

(ケアネット 杉崎 真名)


【参考文献・参考サイトはこちら】

国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター「利活用のページ」

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ナッツ類の摂取と乳がんサバイバーの転帰の関係

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 ナッツ類の積極的な摂取が、全死亡や心血管疾患などの死因別死亡リスク低下と関連するという報告があるが、乳がんサバイバーにおけるがんの転帰との関連はみられるのだろうか。米国・ヴァンダービルト大学メディカルセンターのCong Wang氏らは、乳がんサバイバーを対象に、ナッツ類の消費量と全生存率(OS)および無病生存率(DFS)との関連を分析した。International Journal of Cancer誌オンライン版2021年10月19日号に掲載の報告より。

 本研究では、中国の大規模コホート研究・上海乳がん生存者調査のデータが用いられた。同調査では、乳がん診断後5年時点で、食事摂取頻度調査票を用いた過去1年間の包括的な食事評価が実施されている。ピーナッツ、クルミ、その他のナッツを含むナッツ類の消費量は、1週間当たりの摂取量をグラム数に換算して評価。ナッツ類の総消費量が0g/週を超える患者はナッツ類消費者、それ以外はナッツ類非消費者と定義され、さらにナッツ類消費者は≦中央値(17.32g/週)、>中央値に分類された。ナッツ類の消費量とOSおよびDFSの関連はCox回帰分析を用いて評価された。

 主な結果は以下のとおり。

・診断後5年時点で食事評価が実施された乳がんサバイバー3,449例が対象。食事評価実施後の追跡期間中央値は8.27年で、252例の乳がんによる死亡を含む374例の死亡があった。
・診断後5年の食事評価時点で再発のなかった3,274例のうち、209例で乳がんの再発、転移、または乳がんによる死亡が報告された。
・初回の食事評価からさらに5年後(診断10年後)の評価では、ナッツ類消費者は、非消費者と比較してOS(93.7% vs.89.0%)およびDFS(94.1% vs.86.2%)が有意に高かった(p<0.001)。
・多変量調整後、ナッツ類消費量は用量反応パターンにしたがってOS(傾向のp=0.022)およびDFS(傾向のp=0.003)と正の相関がみられた。ナッツ類消費量>中央値と非消費者の比較では、OSのハザード比(HR)は0.72(95%信頼区間[CI]:0.52~1.05)、DFSのHRは0.48(95%CI:0.31~0.73)だった。
・これらの関連は、ナッツの種類による違いはみられなかった。
・また層別化分析では、総エネルギー摂取量が多い患者とOS(交互作用のp=0.02)および、早期(StageI~II)乳がん患者とDFS(交互作用のp=0.04)において関連性がより明白であることが示された。
・ナッツ類消費とDFSの関連について、ホルモン受容体の状態およびその他既知の予後因子による変化はみられなかった。

 著者らは、長期の乳がんサバイバーにおけるナッツ類の摂取は、より良い生存、とくにDFSと関連していたと結論付けている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Wang C,et al.Int J Cancer. 2021 Oct 19. [Epub ahead of print]

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CDK4/6阻害薬、HER2低発現の進行乳がんでの有効性は?

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 CDK4/6阻害薬はホルモン受容体陽性(HR+)/HER2-進行・再発乳がん(MBC)の1次/2次治療において、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間を大幅に改善する。しかしながら、表現型および遺伝子解析では、有効性に関連する予測マーカーは特定されていない。今回、香港・クイーンエリザベス病院のKelvin K. H. Bao氏らは、CDK4/6阻害薬で治療されたHR+/HER2-MBC患者のHER2低発現と予後の関連を調査した結果、HER2低発現例ではCDK4/6阻害薬の有効性が低いことが示唆された。JAMA Network Open誌2021年11月1日号に掲載。

 本研究では、香港・クイーンエリザベス病院において、2017年3月~2020年6月にレトロゾールもしくはフルベストラントとの併用でCDK4/6阻害薬を投与されたHR+/HER2-MBCの患者について調べた。HER2-低発現はIHCスコア1+もしくは2+かつISH陰性とした。また、PFSはCDK4/6阻害薬投与開始日から病勢進行または死亡までの期間とした。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象のMBCの女性患者は106例で、治療時の年齢中央値(範囲)は58.0(23.0~91.4)歳、90例(84.9%)がパルボシクリブ、16例(15.1%)がリボシクリブを投与されていた。54例(50.9%)が1次治療で投与されていた。
・乳管組織型が88例(83.0%)、エストロゲン受容体Hスコア200以上が76例(71.7%)、プロゲステロン受容体陽性が81例(76.4%)だった。
・PFS中央値は、HER2低発現の82例(77.3%)では8.9ヵ月(95%CI:6.49~11.30)で、HER2 IHCスコア0の24例における18.8ヵ月(95%CI:9.44~28.16)より短かった(p=0.01)。
・多変量解析において、治療ライン(2次治療以降のラインに対する1次治療のHR:0.30、95%CI:0.18~0.53、p<0.001)、プロゲステロン受容体(陰性に対する陽性のHR:1.48、95%CI:0.62~3.50、p=0.38)、疾患範囲(骨外に対する骨のみのHR:0.50、95%CI:0.26~0.97、p=0.04)を調整後も、HER2低発現例でPFSが短かった(HR:1.96、95%CI:1.03~3.75、p=0.04)。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Bao KKH, et al. JAMA Netw Open. 2021;4:e2133132.

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2020年のがん診断数は前年比9%減、とくに早期での発見が減少/日本対がん協会

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 2020年のがん診断件数は8万660件で、2019年より8,154件(9.2%)少なく、治療数(外科的・鏡視下的)も減ったことがわかった。おおむね早期が減る一方、進行期は両年で差が少ない傾向となり、今後進行がんの発見が増えることが懸念される。日本対がん協会は11月4日、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)と共同実施したアンケート調査の結果を発表した。

 アンケートは今年7~8月、全がん協会加盟施設、がん診療連携拠点病院、がん診療病院、大学病院など486施設を対象として実施。5つのがん(胃、大腸、肺、乳、子宮頸)について診断数、臨床病期(1~4期、がん種によって0期も含む)、手術数、内視鏡治療数などを聞いた。大規模調査は全国初で、北海道東北、関東、中部北陸、近畿、中国四国、九州沖縄の各地域の計105施設から回答を得ている(回答率21.6%)。

 5がん種の診断数の減少幅は下記のとおり。

・胃がん:2019年1万9,470件→2020年1 万6,868件(-13.4%)
・大腸がん:2019年2 万1,975件→2020年1 万9,724件(-10.2%)
・乳がん:2019年1 万9,528件→2020年1 万7,919件(-8.2%)
・肺がん:2019年2 万3,010件→2020年2 万1,548件(-6.4%)
・子宮頸がん:2019年4,831件→2020年4,601件(-4.8%)

 がんに罹患する人の割合は2019年、2020年でほぼ変わらないと考えられるため、2019年と同じように検診や通院ができていれば発見できたがんが約9%あったと推測される。がん診断数の減少は早期が顕著なため、進行期の発見の増加が心配されるほか、予後の悪化や将来的にはがん死亡率が増加するおそれもある。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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がん種別5年・10年生存率、最新版を公表/全がん協調査

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 11月10日、全国がんセンター協議会加盟32施設の診断治療症例について、部位別5年生存率、10年生存率の最新データが公表され、全部位の5年生存率は68.9%、10年生存率は58.9%だった。部位別にみると、10年生存率が最も高かったのは前立腺がんで99.2%、最も低かったのは膵臓がんで6.6%だった。

 本調査は国立がん研究センターの「施設をベースとしたがん登録情報の収集から活用・情報発信までの効果と効率の最大化モデル構築のための研究」研究班が、全国がんセンター協議会の協力を得て、加盟32施設の診断治療症例について部位別5年生存率、10年生存率を集計したもの。同研究班は、1997年診断症例より部位別臨床病期別5年生存率、1999年診断症例より施設別5年生存率を公表し、2012年からはグラフを描画する生存率解析システム「KapWeb」を開設、2016年からはより長期にわたる生存率を把握するため10年生存率を公表している。

 がん診療連携拠点病院の中のがんセンターなど、限られた施設のデータではあるが、10年生存率を過去と比較できるのは現時点で本調査のみとなっている。また、がん種、病期、治療法などさまざまな条件設定での10年生存率、診断からの経過日数を指定したうえでのサバイバー生存率をグラフ描画できるのは現時点でKapWebのみとなっている。

<データベース概要>
対象施設:全国がんセンター協議会加盟32施設(2021年現在)
収集症例:1997~2013年までに全がん協加盟32施設で診断治療を行った87万6,679症例
集計対象:
[5年生存率]2011~13年に診断治療を行った症例のうち、集計基準を満たした15万1,568症例
[10年生存率]2005~08年に診断治療を行った症例のうち、集計基準を満たした12万649症例

<5年生存率>
全部位および部位別の5年相対生存率は以下のとおり。※( )内の数値は、前回2010~12年症例の5年相対生存率。
・全部位:68.9%(68.6%)
・食道:50.1%(48.9%)
・胃:75.4%(74.9%)
・大腸:76.8%(76.5%)
・肝:38.6%(38.1%)
・胆のう・胆管:28.7%(28.9%)
・膵臓:12.1%(11.1%)
・喉頭:80.4%(82.0%)
・肺:47.5%(46.5%)
・乳(女):93.2%(93.6%)
・子宮頸:75.9%(75.7%)
・子宮体:86.2%(86.3%)
・卵巣:64.3%(65.3%)
・前立腺:100.0%(100.0%)
・腎臓など:71.0%(69.9%)
・膀胱:67.7%(68.5%)
・甲状腺:93.0%(92.6%)

<10年生存率>
全部位および部位別の10年相対生存率は以下のとおり。※( )内の数値は、前回2004~07年症例の10年相対生存率。
・全部位:58.9%(58.3%)
・食道:34.4%(31.8%)
・胃:67.3%(66.8%)
・大腸:69.7%(68.7%)
・肝:17.6%(16.1%)
・胆のう・胆管:19.8%(19.1%)
・膵臓:6.6%(6.2%)
・喉頭:64.2%(63.3%)
・肺:33.6%(32.4%)
・乳(女):87.5%(86.8%)
・子宮頸:68.2(68.7%)
・子宮体:82.3%(81.6%)
・卵巣:51.0%(48.2%)
・前立腺:99.2%(98.8%)
・腎臓など:63.3%(62.8%)
・膀胱:63.0%(61.1%)
・甲状腺:86.8%(85.7%)

 5年生存率および10年生存率ともに、前回公表データと比較した場合多くの部位で生存率の上昇を認める一方、一部低下している部位も含めて、臨床的に意味のある変化は認められていない。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

国立がん研究センタープレスリリース

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乳がん放射線治療中、デオドラントの使用を継続してよいか~メタ解析/日本癌治療学会

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 デオドラント製品を日常的に使用している日本人女性は多いが、放射線治療期間中に使用を継続した場合に放射線皮膚炎への影響はあるのだろうか? 齋藤 アンネ優子氏(順天堂大学)らは、放射線治療期間中のデオドラント使用に関連する放射線皮膚炎について調査した無作為化試験のメタ解析を実施し、第59回日本癌治療学会学術集会(10月21~23日)で報告した。なお、本解析は「がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版」のために実施された。

 2020年3月までに、PubMed、医中誌、Cochrane Library、CINAHLより、デオドラント使用が放射線皮膚炎に与える影響を検討した無作為化比較試験を中心に検索がされた。評価項目は腋窩の放射線皮膚炎の重症度(Grade2以上/ Grade3以上、NCI-CTC v5.0による評価)で、金属含有デオドラントと金属非含有デオドラントを別々に評価した。メタアナリシスの効果指標はリスク比(RR)とした。

 主な結果は以下のとおり。

・乳がん患者を対象とした前向き比較第III相試験が5編、アンケート調査1編の計6編の論文が特定され、定性的・定量的システマティックレビューが実施された。
・金属含有デオドラント使用群とデオドラント禁止群の比較では、Grade2以上の皮膚炎(RR:1.01、95%信頼区間[CI]:0.85~1.20)、Grade3以上の皮膚炎(RR:0.79、95%CI:0.22~2.84)のいずれも有意な差はみられなかった。
・金属非含有デオドラント使用群とデオドラント禁止群の比較では、Grade2以上の皮膚炎(RR:0.9、95%CI:0.5~1.6)、Grade3以上の皮膚炎(RR:0.76、95%CI:0.33~1.78)のいずれも有意な差はみられなかった。
・QOLの評価は2編の論文で行われた。デオドラント使用群で汗の量は有意に少なかったが、QOLについては使用群と対照群の間で有意な差はなかった。しかし、1編のアンケート調査では、習慣的にデオドラントを使用しているとした乳がん患者のうち64%は、デオドラントを使用できないことで体臭が気になったと回答していた。

 皮膚炎の評価にかかわる主な交絡因子としては、喫煙、化学療法、照射範囲・線量、体型などが考えられ、デオドラントの使用方法が規定されておらず、盲検化が行われていないため、エビデンスの強さとしては「非常に弱い」とされた。また金属非含有デオドラント使用群との比較については研究数が3~4編となった一方、金属含有デオドラント使用群との比較については研究数が2編のみとなり、さらにこの2編が類似のバイアスの影響を受けていると考えられるもので、エビデンスとしてはより脆弱と考えられた。

 以上より、害と益のバランスとしては、下記のように評価された:
・金属非含有のデオドラントによる放射線皮膚炎の増悪は、エビデンスは弱いが、認められなかった
・習慣的にデオドラントを使用している患者には益が害を上回る

 ガイドラインにおける推奨文としては、「放射線治療中のデオドラント使用の継続を弱く推奨する」とされた。ただし、金属含有のデオドラントについては皮膚炎への評価をした研究のエビデンスの確実性が非常に低く、注意をしながら使用を継続することが推奨される。

 実臨床で質問を受けたときに医療者が提供できる情報として、齋藤氏は、習慣的に使用している場合であれば金属非含有のものを使用するのがいいのではないかという点に加え、商品としてはアルミニウムフリーと明記されて販売されていることを挙げた。また、ミョウバン入りの商品について、ミョウバン=アルミニウムということを認識していない患者さんも多いため、補足して伝えることができればよいのではないかと話した。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1)日本がんサポーティブケア学会編.がん治療におけるアピアランスケアガイドライン 2021年版 第2版.金原出版;2021.

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都市伝説に惑わされない!『がん治療におけるアピアランスケアGL 2021年版』発刊

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 日本がんサポーティブケア学会が作成した『がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版』が10月20日に発刊した。外見(アピアランス)に関する課題は2018年の第3期がん対策推進基本計画でも取り上げられ、がんサバイバーが増える昨今ではがん治療を円滑に遂行するためにも、治療を担う医師に対してもアピアランス問題の取り扱い方が求められる。今回の改訂は、分子標的薬治療や頭皮冷却法などに関する重要な臨床課題の新たな研究知見が蓄積されたことを踏まえており、患者ががん治療に伴う外見変化で悩みを抱えた際、医療者として質の高い治療・整容を提供するのに有用な一冊となっている。

 本書はこれまで“がん患者に対するアピアランスの手引き 2016年版”として公開してきたものをMinds診療ガイドライン作成マニュアル2017に準拠し作成、ガイドライン(GL)に格上げされたものだが、この作成委員長を務めた野澤 桂子氏(目白大学看護学部 看護学科/国立がん研究センター中央病院 アピアランス支援センター)に注目すべき点やアピアランスケアにおける患者への寄り添い方について伺った。

「◯◯の使用を控えましょう」は都市伝説レベルも少なくない

 今回、GLを発刊するにあたり、野澤氏は「僅少の研究からエビデンスとなるものを抽出し推奨度を決定するのは困難を極めた。さらに、下痢や発熱などの副作用と異なり、直接は命に関わらない外見の副作用に対するケアを患者QOLと医学的エビデンスとのバランスの中でどうGLに反映させるか、今回の課題だった」と言及した。その一方で、エビデンスを重視し過ぎる医療者に危機感も感じたという。「支持療法の評価を、がん治療の効果を評価するのとまったく同じ手法で評価する必要がどこまであるのだろうか。ハードルが高すぎて、同じ労力なら支持療法より治療法の研究をしようとする研究者も増えるかも知れない」とし、「医療者は、ゼロリスクにするために少しでも危険を避けようとするが、たとえば、日用整容品の注意事項に書かれている“病中病後の使用はお控えください”という言葉もがん患者のエビデンスがあるとは限らない」と指摘した。また、「炎症や肌荒れがなく患者さんの希望があれば挑戦してほしい。医療者は、患者さんがその挑戦のメリットデメリットを判断できるような情報を提供することが重要」と説明した。

医療者の責務―患者が主体的に生きることを支援する

 また、同氏は医療者のアピアランスケアの現状について「医療者は根拠なく患者さんの生活を限定させるような指導を行うべきではない。人間は息をするためだけに生きているのではない。その人らしく豊かに過ごすための時間にできなければ、患者さんにとって意味がないともいえる」と強調した。

 そんな野澤氏も以前はざ瘡様皮疹が出現した患者さんには、当時言われていたように、症状の悪化を懸念してフルメイクではなくポイントメイクを推奨していた。しかし、ある患者さんの一言でケアの在り方を見直したのだという。“ポイントメイクでは隠したいブツブツが隠せない。私は可愛いおばあちゃんと言われることが生きがいだったのに、これでは孫に会えない。効いてる限り死ぬまで使う薬なのに、そもそも生きている意味がないじゃない”と患者さんに迫られた経験談を話し、「その時にケアに対する認識の転換期を迎えた。アピアランスケアがほかの副作用対策と異なるのは、“命に直接関わらない”ということ。ケアに挑戦して何かあってもそれに対する対策はある。重要なのは、患者さんが納得した選択ができること、その人らしさを表現できることではないか」と語った。本ガイドラインはある意味、医療者のエビデンス呪縛を解くための指南書の役割もあるのだろう。

読みやすさ刷新、気になるページにすぐジャンプ

 今回の改訂では各章の項目がひと目でわかる「項目一覧」というページが追加されている。ここでは分類(症状や部位)、番号(BQ:background question、CQ:clinical question、FQ:future research question)の項目分類が一覧になっており、研究の状況がわかると同時に、気になるページにすぐたどり着くようになっている。また、各章に総論が設けられており、治療ごとの現状など、本書の読者の理解が促される仕様になっている。たとえば、化学療法編では、「レジメン別脱毛の頻度」や「レジメン別の手足症候群の頻度」が表として掲載され副作用の発現率に注目することで、実際の治療に応じた患者管理がしやすくなっている。

 各章の変更点については、5月に開催された日本がんサポーティブケア学会の特別シンポジウム『アピアランスケア研究の現状と課題~アピアランスケアガイドライン2021最新版を作成して~』にて、作成委員会の各領域リーダーらがトピックを解説。そこで挙げられた注目すべき点や改訂にて変更されたquestionを以下に示す。

<項目ごと追加・改訂点>―――

治療編(化学療法)
・CQ1:化学療法誘発脱毛の予防や重症度軽減に頭皮クーリングシステムは勧められるか(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B[中]、合意率:100%)
→周術期化学療法を行う乳がん患者限定。また、レジメンごとの脱毛治療の成功・不成功を踏まえた上で患者指導やケアが必要とされる。

・CQ8:化学療法による手足症候群の予防や重症度の軽減に保湿薬の外用は勧められるか
(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:D[とても弱い]、合意率:94%)

・CQ10:化学療法による手足症候群の予防や発現を遅らせる目的で、ビタミンB6を投与することは勧められるか(推奨の強さ:3、エビデンスの強さ:B[中]、合意率:94%)

治療編(分子標的療法)
・CQ17:分子標的治療に伴うざ瘡様皮疹の予防あるいは治療に対してテトラサイクリン系抗菌薬の内服は勧められるか(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B[中]、合意率:100%)
→皮膚障害のなかで代表的なのが「ざ瘡様皮疹」だが、無菌性であることが特徴。テトラサイクリン系は抗菌作用のみならず抗炎症作用を持ち合わせており、この効果を期待して使用される。

・FQ16:分子標的治療に伴うざ瘡様皮疹に対して過酸化ベンゾイルゲルの外用は勧められるか。

治療編(放射線療法)
・CQ28:放射線治療による皮膚有害事象に対して保湿薬の外用は勧められるか(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:C[弱]、合意率:乳がん-100%、頭頸部-94%)
→強度変調放射線治療(IMRT)の普及に伴い、線量に関する規定が削除され、“70Gy相当”の文言が削除された。

・FQ31:軟膏等外用薬を塗布したまま放射線治療を受けてもよいか

日常整容編
スキンケア(洗顔やひげ剃りなど)、カモフラージュとしてのメイクやつけまつげに関する項目は漠然としていたので今回は項目より削除。また、手術瘢痕へのテーピングについてはカモフラージュという表現から“顕著化を防ぐ方法”に変更されている。

・BQ32:化学療法中の患者に対して、安全な洗髪等の日常的ヘアケア方法は何か
→頭皮を清潔→決まった回数は存在せず、臭いや痒みに応じてでも構わない。シャンプ
ーも指定品があるわけではないので患者の嗜好に応じたものをアドバイスする。

・BQ37:がん薬物療法中の患者に対して勧められる紫外線防御方法は何か
→前回あまり触れられていなかった衣服について盛り込まれた。

・FQ42:乳房再建術後に使用が勧められる下着はあるか
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 今回は43項目(FQ:19、CQ:10、BQ:14)が出来上がったものの、患者の生命に直接関わるわけではない点がボトルネックとなりエビデンスレベルの高い研究が今後望まれる。次回の課題として「研究の蓄積、免疫チェックポイント阻害剤の皮膚障害に関する項目が盛り込まれること」と同氏は話した。

がん患者を治療ストレスから開放するために

 アピアランスケアを実践することは患者の自己表現を容認するものであり、治療効果ひいては生存率にもかかわってくるのではないだろうか。同氏は「患者さんにはもっと安心して治療をしてもらいたい。今は外見の副作用コントロールのための休薬・減量のスキルも進歩してきており、不安なことはケア方法含めて医療者に聞いて欲しい。そして、医療者はエビデンスをベースとしつつも、個々に応じた対応を心がけることが必要」と締めくくった。

(ケアネット 土井 舞子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

金原出版:がん治療におけるアピアランスケアガイドライン2021年版(第2版)

第6回日本がんサポーティングケア学会学術集会

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HR+/HER2-進行乳がんへのCDK4/6阻害薬+フルベストラントのOS、FDAがプール解析/Lancet Oncol

提供元:CareNet.com

 CDK4/6阻害薬は、ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行・再発乳がんの1次/2次治療における内分泌療法との併用で、米国・食品医薬品局(FDA)に承認されている。今回、FDAのJennifer J. Gao氏らがCDK4/6阻害薬とフルベストラントによる全生存期間(OS)のプール解析を行ったところ、患者全体および調査したほとんどの臨床病理学的サブグループでOSベネフィットが示された。Lancet Oncology誌オンライン版2021年10月14日号に掲載。

 この探索的解析では、フルベストラントとCDK4/6阻害薬もしくはプラセボを併用した3つの第III相無作為化試験の患者データを統合した。解析した患者はすべて18歳以上で、ECOG PS 0~1のHR+/HER2-進行・再発乳がんだった。患者全体のほか、ライン別(1次治療と2次治療以降)、臨床病理学的サブグループ別に解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・3試験を統合すると、2013年10月7日~2016年6月10日に1,960例が登録され、うち12例が治療されず、CDK4/6阻害薬に1,296例(66%)、プラセボに652例(33%)が無作為に割り付けられた。
・治療を受けた患者(1,948例)において、OSの推定ハザード比(HR)は0.77(95%信頼区間[CI]:0.68~0.88)、追跡期間中央値は43.7ヵ月(四分位範囲[IQR]:37.8~47.7)で、935例(48%)が死亡した。推定OS中央値の差は7.1ヵ月で、CDK4/6阻害薬が良好だった。
・1次治療の内分泌療法でフルベストラントとCDK4/6阻害薬またはプラセボを併用された患者(2試験、396例)では、OSの推定HRは0.74(95%CI:0.52~1.07)、追跡期間中央値は39.4ヵ月(IQR:37.0~42.2)で、123例(31%)が死亡した。推定OS中央値の差は、CDK4/6阻害薬群のOS中央値が推定不能で(95%CI:50.9~NE)、算出できなかった。
・2次治療以降の内分泌療法でフルベストラントとCDK4/6阻害薬またはプラセボを併用された患者(3試験、1,552例)では、OSの推定HRは0.77(95%CI:0.67~0.89)、追跡期間中央値は45.1ヵ月(95%CI:39.2~48.5)で、812例(52%)が死亡した。推定OS中央値の差は7.0ヵ月で、CDK4/6阻害薬が良好だった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Gao JJ, et al. Lancet Oncol. 2021 Oct 14.[Epub ahead of print]

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卵巣がん患者アンケート、6割が情報収集に困難/アストラゼネカ

提供元:CareNet.com

 アストラゼネカは卵巣がん患者の情報収集の実態と一般女性の卵巣がんに対する認識・理解度を把握するためのWebアンケートを実施し、結果を発表した。卵巣がんは国内の年間新規患者数約1万3,000人、初期は自覚症状がほとんどなく、検診での早期発見も難しいとされる。アンケートの回答者は「10年以内に卵巣がんと診断された20代以上の卵巣患者111名(患者調査)」と「卵巣がんに罹患していない女性1,314名(一般調査)」の2群。

【患者調査】
 93%が卵巣がんに関する情報を自ら調べていると回答し、情報収集源は医療情報関連サイトや病院HP、患者のブログなど多岐にわたっていた。また、62%が「情報収集時に困難を感じた」と回答し、困りごとの内訳としては、「信頼できる情報がどれだかわからなかった」(56%)、次いで「いろいろなサイトを見に行かなければならなかった」(39%)が続いた。

 患者が「信頼性の高い情報源」と認識しているのは「医師の情報(「非常に高い」「高い」の計71%)、「病院のHP」(同68%)が上位となり、これに学会や製薬会社の情報が続いた。他には「書籍」42%、「家族・知人」23%、「SNS」15%等が挙がった。一方で、医師の治療内容の説明に対して、54%が「専門用語などが難しく、その場ですぐに理解できなかった」と回答した。

 そして、72%が「情報が集約されている方が便利」と回答し、必要とする情報が医師監修など信頼できるかたちで1ヵ所にまとまって入手できる状態を望んでいることが確認された。

【一般調査】
 婦人科検診の受診状況について57%が「受けていない」と回答し、未受診の理由は「体調の不調を感じない」(44%)、「必要性を感じない」(23%)などとなった。婦人科検診を受けた人の中でも、マンモグラフィを子宮頸がん・卵巣がんの検査と認識するなど、どのがんのための検査なのかを理解していない人が一定数存在した。また、「おなかの張り」「腹痛」の症状がある時に受診する科としては8割以上が「内科」と回答し、婦人科は10%台だった。また、好発年齢や家族歴等のリスク要因について、卵巣がんは乳がん、子宮頸がんと比べて理解度が低いという結果が出た。

 調査を実施したアストラゼネカは「患者からは信頼できる正確な情報を手軽にかつ1ヵ所で入手したいというニーズが確認でき、一般の方には卵巣がんに対する知識の向上と婦人科検診の受診への意欲を高めてもらえるよう、各種の取り組みを続けたい」とコメントしている。

【アンケート概要】
調査対象:
[1]10年以内に「卵巣がん」と診断された20代以上の女性:111名  
[2]卵巣がんに罹患していない20代~70代の女性:1,314名
調査方法:Webアンケート
調査期間:2021年8月27日~9月1日

アンケートの詳細は下記
卵巣がん患者情報収集に関する調査
卵巣がんに関する意識調査

(ケアネット 杉崎 真名)


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