HR+/HER2-進行再発乳がん、CDK4/6i直後のS-1の有用性は?/日本乳癌学会

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 HR+/HER2-の進行・再発乳がんに対して、CDK4/6阻害薬による治療直後の経口フッ化ピリミジン系薬剤(以下「経口5-FU」)は有望な選択肢になり得ることを、九州がんセンターの厚井 裕三子氏が第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 HR+/HER2-の進行・再発乳がんの標準療法は、CDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用療法である。乳癌診療ガイドラインにおいて、S-1やカペシタビンなどの経口5-FUは、HR+/HER2-の転移・再発乳がんの1次・2次化学療法として弱く推奨されているが、これらの推奨の根拠となる臨床試験はCDK4/6阻害薬が臨床導入される以前の試験であるため、CDK4/6阻害薬の前治療歴がない患者が対象となっている。そこで研究グループは、HR+/HER2-の進行・再発乳がんに対するCDK4/6阻害薬治療後の経口5-FUの治療効果を調査した。

 対象は、2018年1月~2023年12月に九州がんセンターにおいて、CDK4/6阻害薬による治療の直後に経口5-FUを投与されたHR+/HER2-の進行・再発乳がん患者40例であった。患者データをレトロスペクティブに診療録より抽出して解析した。治療成功期間(TTF)はカプランマイヤー法を用いて推定した。StageIV治療開始日または再発確認日からの観察期間中央値は4.8年(範囲:1.8~11.3)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・年齢中央値は53歳、術後再発が82.5%、de novo StageIVが17.5%。内臓転移ありが87.5%で、転移部位が1ヵ所は17.5%、2ヵ所は35.0%、3ヵ所以上は47.5%。進行・再発に対する内分泌療法が1ラインだったのは15.0%、2ラインは37.5%、3ライン以上は47.5%。経口5-FUの前に投与されたCDK4/6阻害薬はアベマシクリブが97.5%で、CDK4/6阻害薬の治療期間中央値は13.0ヵ月(範囲:2.1~37.9)。投与された経口5-FUは、S-1が95.0%、カペシタビンが5%。7例がS-1継続中。
・経口5-FUのTTF中央値は13.3ヵ月(範囲:1.2~28.9、95%信頼区間:7.4~13.9)であった。
・完全奏効(CR)が0%、部分奏効(PR)が37.5%、安定(SD)が40.0%、病勢進行(PD)が22.5%であった。
・Grade3以上の有害事象は17.5%(7例)に発現した(好中球減少症2例、貧血2例、ALT上昇2例、浮腫1例)。いずれも減量によってマネジメントが可能であり、治療中止に至った症例はなかった。
・単変量解析では、経口5-FUの治療効果の持続期間に関する有意な因子は認められなかった。内臓転移のない症例は、内臓転移のある症例に比べて持続期間が長い傾向にあったが、統計学的な有意差は認められなかった(ハザード比:0.44、p=0.089)。

 厚井氏は考察として、本研究における経口5-FUのTTF(13.3ヵ月)は他のランダム化比較試験で示されたTTF/無増悪生存期間と類似した結果であったことに言及したうえで、「益と害のバランスを考慮する必要があるが、経口5-FUはCDK4/6阻害薬後の化学療法の選択肢になり得る」とまとめた。

(ケアネット 森)


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乳がんT-DXd直後の抗HER2療法、効果が期待できる患者は?(EN-SEMBLE)/ESMO Open

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 再発または転移を有するHER2陽性乳がん患者を対象に、日本の実臨床下においてトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の中止直後に実施した治療レジメンの分布、有効性、間質性肺疾患(ILD)の発現率を検討したEN-SEMBLE試験の結果を、名古屋市立大学の能澤 一樹氏がESMO Open誌2025年8月号で報告した。その結果、患者の73%がT-DXd中止直後の治療として別の抗HER2療法をベースとした治療を受けており、有害事象(AE)のためにT-DXdを中止した患者や奏効を得られた患者では抗HER2療法を逐次的に行うことで利益を得られる可能性があることを明らかにした。

 対象は、特定使用成績調査に登録し、再発または転移を有するHER2陽性の乳がんに対して、2020年5月25日~2021年11月30日にT-DXdの投与を開始したものの中止し、後治療を開始した患者であった。評価項目は、T-DXd中止直後の治療レジメンの分布、リアルワールドにおける無増悪生存期間(rwPFS)、治療成功期間(rwTTF)、後治療までの期間(rwTTNT)、全生存期間(OS)、ILD発現率などであった。追跡期間中央値は12.0(範囲:0.3~36.2)ヵ月。

 主な結果は以下のとおり。

・解析には664例の患者が含まれた。
・T-DXdによる治療の前に受けた全身治療は、トラスツズマブ(93.4%)、ペルツズマブ(90.5%)、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)(91.3%)などであった。前治療ライン数中央値は3であった。
・T-DXdの投与期間中央値は8.1ヵ月であった。T-DXd中止理由は病勢進行が67.5%、ILDが22.0%、その他のAEが5.1%であった。
・T-DXd直後の後治療開始時点の患者背景は、年齢中央値60歳、ECOG PS 0/1が86.9%、内臓転移ありが79.8%、脳転移ありが23.0%であった。
・T-DXd直後の後治療として、抗HER2療法を受けたのは73.2%であり、内訳は抗HER2抗体が54.4%、HER2チロシンキナーゼ阻害薬(HER2-TKI)が17.0%、T-DM1が1.8%であった。
・後治療としての(1)全体、(2)抗HER2抗体、(3)HER2-TKI、(4)T-DM1の主な結果は以下のとおり。
 【rwPFS中央値】(1)4.1ヵ月、(2)4.1ヵ月、(3)4.3ヵ月、(4)2.6ヵ月
 【rwTTF中央値】(1)3.8ヵ月、(2)3.9ヵ月、(3)4.2ヵ月、(4)2.0ヵ月
 【rwTTNT中央値】(1)5.0ヵ月、(2)5.1ヵ月、(3)5.3ヵ月、(4)3.0ヵ月
 【OS中央値】(1)16.2ヵ月、(2)17.2ヵ月、(3)16.3ヵ月、(4)9.3ヵ月
・抗HER2抗体vs.HER2-TKIのrwPFSとOSの結果に有意差は認められなかった。
・全体集団におけるT-DXdの中止理由別の転帰は、ILDを含むAEによりT-DXdを中止した患者は、病勢進行によりT-DXdを中止した患者よりも良好であった。
 【病勢進行による中止】rwPFS中央値:3.5ヵ月、OS中央値:12.0ヵ月
 【全AEによる中止】rwPFS中央値:7.3ヵ月、OS中央値:32.4ヵ月
 【ILDによる中止】rwPFS中央値:7.2ヵ月、OS中央値:32.4ヵ月
 【ILD以外のAEによる中止】rwPFS:10.2ヵ月、OS中央値:未到達
・T-DXd直後の後治療でILDは664例中10例(1.5%)に発現した。T-DXd治療中にILDが発現し、後治療でILDが再発/増悪したのは155例中5例(3.2%)であった。

(ケアネット 森)


【原著論文はこちら】

Nozawa K, et al. ESMO Open. 2025;10:105511.

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腋窩リンパ節郭清省略はどこまで進むのか~現状と課題/日本乳癌学会

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 乳がん治療においては、近年、術前化学療法(NAC)の高い完全奏効率から手術のde-escalationが期待されるようになり、なかでも腋窩リンパ節郭清(ALND)省略はQOLを改善する。第33回日本乳癌学会学術総会で企画されたパネルディスカッション「腋窩リンパ節郭清省略はどこまで進む?」において、昭和医科大学の林 直輝氏が腋窩リンパ節郭清省略の現状と課題について講演した。

最近のトピック、SNB省略とASCOガイドライン

 ALNDのde-escalationは、リンパ浮腫などの合併症を減らすメリットと、不十分な局所コントロールが予後を悪化させるリスクがあるため、そのバランスが非常に大事である。その対応は、手術先行かNAC実施か、臨床的腋窩リンパ節転移陰性(cN0)か陽性(cN+)か、さらにそれが消失したかどうかによって変わるため、非常に複雑である。

 手術先行の場合は、最近、ホルモン受容体(HR)陽性例において、cN0の場合はセンチネルリンパ節生検(SNB)そのものを省略可能であることが示された(SOUND試験、INSEMA試験)。また、SNBを実施する場合、病理学的リンパ節転移陽性(pN+)でも、センチネルリンパ節転移が2個以下の場合はALNDを省略可能であることが示唆されている(ACOSOG Z0011試験)。

 SOUND試験およびINSEMA試験に基づいて、ASCOの早期乳がんにおけるSNBに関するガイドラインが2025年4月に改訂され、腫瘍径2cm以下、術前超音波検査でN0、50歳以上、閉経後、グレード1~2、HR陽性、HER2陰性で、乳房温存術後に放射線治療を受ける予定の患者はSNBを省略できるという選択肢ができた。自施設(昭和医科大学)においても、ASCOガイドラインに準じて、腫瘍径2cm以下、50歳以上の閉経女性、グレードの低いHR陽性、放射線治療を伴う部分切除予定の患者に対してSNB省略を開始している。ただし、適応を絞ったうえで、患者とよく相談し実施しているという。

ALNDのde-escalationの2つのコンセプト、TASとTAD

 次に林氏は、N+症例にNACを実施してALNDを省略するde-escalationの方法としてTailored axillary surgery(TAS)とTargeted axillary dissection(TAD)を解説し、これらによる試験を紹介した。TASはNAC後に最小限の転移リンパ節を摘出して腫瘍量を減らす方法で、TADはNAC後に事前にクリップを留置しておいた転移リンパ節の摘出とSNBを行う方法である。

 手術先行の場合、cN+症例に対してALNDとTASの選択肢があり、TASについてはTAXIS試験のほか、JCOGでも現在HR陽性乳がんにおける試験が進行中で、結果が待たれる。

 一方、NACによる腫瘍消失はHER2陽性やトリプルネガティブ乳がんで意味があるという。NACでycN0になった場合はTADとSNB単独の選択肢があるが、SNB単独では偽陰性率が高い。TADによる効果を検証したSenTa試験では、3年無浸潤がん生存率がTAD群91.2%、腋窩郭清群82.4%、腋窩再発率がTAD群1.8%、腋窩郭清群1.4%と同様であった。わが国でも、林氏らのN+患者におけるNAC後ALND省略を検討する多施設共同LEISTER試験が進行中である。SNB単独においても、前向き試験のSENATURK OTHER-NAC試験、後ろ向き試験のKROG21-06試験とI-SPY2試験の結果、SNB単独でも予後が良好である結果も出ている。また、前向き試験のSenTa試験でTADをSNBと実施した場合に治療効果が大きいことが報告されている。

ALNDのde-escalationにおけるポイントと臨床での課題

 林氏は、ALNDのde-escalationで重要なポイントとしてエビデンスとなる試験のデザインを挙げ、前向き試験なのか、無作為化されているか、サンプルサイズ、適応のサブタイプが非常に大事であると述べた。また、ベースラインでのリスクが重要であることから、NAC前のリンパ節のステータスが正確に評価されているか、また、もともとたくさんのリンパ節に転移していた患者を同じように扱っていくのか、という点を挙げた。

 最後に林氏は、de-escalationにおける臨床での課題として、長期予後への影響、適切なフォローアップ頻度と方法(どのモダリティで、何ヵ月おきに、いつまでフォローするか)が確立されていないことを挙げ、さらに、保険が適用されないことやTAS/TADの方法の標準化ができていないことを指摘し、「患者さんが何を求めるのか、何をしてあげるべきかをバランスよく考えたうえで、エビデンスをしっかり積み重ねて評価していく必要がある」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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“早期乳癌”の定義を変更、「乳癌取扱い規約 第19版」臨床編の改訂点/日本乳癌学会

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 2025年6月、7年ぶりの改訂版となる「乳癌取扱い規約 第19版」が発行された。第33回日本乳癌学会学術総会では委員会企画として「第19版取扱い規約の改訂点~臨床編・病理編~」と題したセッションが行われ、各領域の改訂点が解説された。本稿では、臨床編について解説した静岡がんセンターの高橋 かおる氏による講演の内容を紹介する。

腫瘍占居部位の略号表記、T4所見について再整理

 日本の取扱い規約で用いられている腫瘍の局在を示すA~Eの略号について、日本独自の略号のため海外では通じず、不要ではないかという議論が以前から行われてきた。今回の改訂でも議論されたが、日本では長く使われており、簡潔で記載にも便利なことから引き続き規約に掲載することとし、対応する英語表記(UICCのAnatomical Subsites)を明記、ICDコードと齟齬のあったC‘~E‘が修正され、E、E’の区別がわかる記載も追加された(下線部分が変更点):
C‘:腋窩部(C50.6/Axillary tail
E:中央部(C50.1/Central portion
  乳頭乳輪の下に位置する乳房中央部
E‘:乳頭部および乳輪(C50.0/Nipple
  乳頭乳輪部の皮膚

 臨床所見については、第18版まではT4の定義について解釈が分かれる記載となっていた。そこで今版では、「T4所見は浮腫、潰瘍、衛星皮膚結節の3つであり、皮膚固定や発赤はT4に入らない」ということがわかるような記載に変更された。またT4所見としての潰瘍について、クレーター形成の有無は問わないという意図で「潰瘍(皮膚が欠損して病変が露出した状態)」と追記された。

病理編でPaget病の定義が変更、臨床医も注意が必要

 臨床T因子の表について変更はなく、注釈の表現が下記のとおりいくつか整理された。

・原発巣の評価方法(注1):T因子の判断材料として、従来の視触診、画像診断に、針生検を追加
・Tis(注4):病理編のPaget病の定義が「乳頭・乳輪部および周囲表皮に限局したものをPaget病と主診断、乳房内に連続性に非浸潤癌を伴う場合は非浸潤癌と主診断し、Paget病の存在は所見に記入する」と変更されたことを受け、臨床編の注釈も「Paget病のほとんどはTisに分類される。まれに乳頭・乳輪部の真皮に微小浸潤もしくはそれを越える浸潤を伴うものがあり、その場合は浸潤径に応じたT分類を採用する」と変更された。
・T0(注5):「視触診、画像診断で原発巣を確認できない場合。腋窩リンパ節転移で発見され乳房内に原発巣を認めない潜在性乳癌などがこれに相当する」と記載を整理
・T4(注7):臨床所見と同様、T4の定義をわかりやすくするために、「真皮への浸潤のみではT4としない、T4b~T4d以外の皮膚のくぼみ、乳頭陥没、その他の皮膚変化は、T1、T2またはT3で発生してもT分類には影響しない」というUICCの注にある内容が追加された。
・T4d(注8):第18版までの注釈では冒頭に「炎症性乳癌は通常腫瘤を認めず」とあったことから、腫瘤を認めないことが炎症性乳癌の必須要件のように読めてしまうという指摘があったため、「炎症性乳癌は、皮膚のびまん性発赤、浮腫、硬結を特徴とし、その下に明らかな腫瘤を認めないことが多い」と表現を変更

 高橋氏はPaget病の定義の変更について、これまでPaget病と診断していた病変のうち、多くが今後は非浸潤性乳管癌(Paget病変を伴う)と診断されることとなり、Paget病の診断は減るであろうと指摘し、病理編の変更について臨床医も一度は目を通してほしいと話した。

 臨床N因子についても表の変更はなく、T因子と同様に、判定材料として、従来の視触診、画像診断に、細胞診や針生検が追加されたほか、内胸リンパ節について第何肋間かを表記する場合の簡略な方法として、「Imの次に()で数字を記載する」こととした。

「早期乳癌は切除可能乳癌(Stage 0~IIIA)を指す」と定義

 第18版までは「Stage 0・Iを早期乳癌とする」と定義していた。これは、検診等における早期発見の概念には適していたと思われるが、国際的な臨床試験や乳癌診療ガイドラインとの整合性を考慮し、第19版では「早期乳癌は切除可能乳癌(Stage 0~IIIA)を指す」と定義が変更された。高橋氏は私見として「検診が目的とする“早期発見”は、“早期乳癌の発見”ではなく、乳癌を0期やI期などの早い段階で見つけることだと考えればよいのではないか」と話した。ただし、検診成績の評価などの際には、“早期乳癌の比率”といった表現は誤解を招く恐れがあり、今後は“0期・I期の比率”などの表現に変えていく必要があるとした。

治療の進歩に合わせて第2章を変更

 第2章の治療の記載法については、乳房の術式の1つとして新たに保険適用されたラジオ波焼灼術(RFA)が追加された。

 リンパ節の切除範囲の表については、英語表記を追加するなど整備し、新たな項目として腋窩リンパ節サンプリング(AxS)を加えた。また、「Rotterリンパ節は郭清しない場合でもレベルIIまで郭清、Ax(II)としてよい」という注釈が加わり、新たな手法であるTargeted Axillary Dissection(TAD)およびTailored Axillary Surgery(TAS)についても、“付記”という形で追加されている。

 再建の術式については、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会の用語委員からの助言を受けて、再建方法として腹直筋皮弁(有茎)、腹直筋皮弁(遊離)、深下腹壁動脈穿通枝皮弁、大腿深動脈穿通枝皮弁を加え、英語表記も追加された。

 手術以外の治療法では、免疫療法が、薬物療法の一項目として追加された。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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高リスク早期TN乳がんへの術前・術後ペムブロリズマブ追加、日本のサブグループにおけるOS解析結果(KEYNOTE-522)/日本乳癌学会

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 高リスク早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者において、ペムブロリズマブ+化学療法による術前療法およびペムブロリズマブによる術後療法は、術前化学療法単独と比較して、病理学的完全奏効(pCR)割合および無イベント生存期間(EFS)を統計学的有意に改善し、7回目の中間解析報告(データカットオフ:2024年3月22日)において全生存期間(OS)についてもベネフィットが示されたことが報告されている(5年OS率:86.6%vs.81.7%、p=0.002)。今回、7回目の中間解析の日本におけるサブグループ解析結果を、がん研究会有明病院の高野 利実氏が第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。

・対象:T1c、N1~2またはT2~4、N0~2で、治療歴のないECOG PS 0/1の高リスク早期TNBC患者(18歳以上)
・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、週1回)+カルボプラチン(AUC 1.5、週1回またはAUC 5、3週ごと)を4サイクル投与後、ペムブロリズマブ+シクロホスファミド(600mg/m2)+ドキソルビシン(60mg/m2)またはエピルビシン(90mg/m2)を3週ごとに4サイクル投与し、術後療法としてペムブロリズマブを3週ごとに最長9サイクル投与(ペムブロリズマブ群)
・対照群:術前に化学療法+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群)
・評価項目:
[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・日本で登録されたのは76例で、ペムブロリズマブ群に45例、プラセボ群に31例が割り付けられた。
・ベースラインの患者特性は、全体集団と比較してPD-L1陽性の患者が若干少なく(日本:ペムブロリズマブ群71.1%vs.プラセボ群74.2%/全体集団:83.7%vs.81.3%)、毎週投与のカルボプラチンの使用割合が高かった(日本:80.0%vs.77.4%/全体集団:57.3%vs. 57.2%)。また日本では、T3/T4の症例(24.4%vs.16.1%)およびリンパ節転移陽性の症例(53.3%vs.41.9%)がペムブロリズマブ群で多い傾向がみられた。
・5年EFS率は、ペムブロリズマブ群84.4%vs.プラセボ群73.2%、ハザード比(HR):0.54、95%信頼区間(CI):0.20~1.50であった(全体集団では81.2%vs.72.2%、HR:0.65、95%CI:0.51~0.83)。
・5年OS率は、ペムブロリズマブ群88.9%vs.プラセボ群86.5%、HR:0.82、95%CI:0.22~3.04であった(全体集団では86.6%vs.81.7%、HR:0.66、95%CI:0.50~0.87)。
・5年EFS率について、pCRが得られた症例ではペムブロリズマブ群95.8%(24例)vs.プラセボ群100%(15例)、pCRが得られなかった症例では71.4%(21例)vs.46.7%(16例)であった。
・5年OS率について、pCRが得られた症例ではペムブロリズマブ群95.8%vs.プラセボ群100%、pCRが得られなかった症例では81.0%vs.73.7%であった。
・Grade3~4の治療関連有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ群82.2%vs.プラセボ群76.7%(全体集団では77.1%vs.73.3%)、うち治療中止に至ったのは24.4%vs.16.7%であった。プラセボ群と比較して多くみられたのは(全Grade)、貧血(75.6%vs.63.3%)、味覚障害(44.4%vs.23.3%)、皮疹(40.0%vs.10.0%)などであった。
・Grade3~4の免疫関連有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ群20.0%vs.プラセボ群3.3%であった(全体集団では13.0%vs.1.5%)。

 高野氏は、日本のサブグループ解析結果について、症例数が少ないためこの結果をもって統計学的な判断はできないが、OSはグローバルの全体集団と同様にペムブロリズマブ群で良好な傾向を示したとし、EFSについても6年以上のフォローアップで引き続き有効な傾向を示しているとまとめた。また安全性についても、既知のプロファイルと同様の結果が確認されたとしている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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ER+/HER2-進行乳がんへのimlunestrant、日本人サブグループ解析結果(EMBER-3)/日本乳癌学会

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 アロマターゼ阻害薬単剤またはCDK4/6阻害薬との併用による治療中もしくは治療後に病勢進行が認められた、ESR1変異陽性のエストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)進行乳がん患者において、経口選択的ER分解薬(SERD)imlunestrant単剤療法が、標準内分泌療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが第III相EMBER-3試験の結果として報告されている。今回、同試験の日本人サブグループ解析結果を、千葉県がんセンターの中村 力也氏が第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。

・対象:アロマターゼ阻害薬±CDK4/6阻害薬による治療中もしくは治療後(12ヵ月以内)に病勢進行が認められたER+/HER2-進行乳がん患者
・試験群(imlunestrant群):imlunestrant単剤療法(1日1回400mg)
・試験群(imlunestrant+アベマシクリブ群):imlunestrant(1日1回400mg)+アベマシクリブ(1日2回150mg)
・対照群(標準内分泌療法群):治験医師がエキセメスタンまたはフルベストラントから選択
・評価項目:
[主要評価項目]治験医師評価によるPFS(ESR1変異陽性患者および全患者におけるimlunestrant群vs.標準内分泌療法群、全患者におけるimlunestrant+アベマシクリブ群vs.imlunestrant群)
[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、安全性など
・データカットオフ:2024年6月24日

 主な結果は以下のとおり。

・79例が1:1:1の割合で無作為化され、imlunestrant群に31例、imlunestrant+アベマシクリブ群に24例、標準内分泌療法群に24例が割り付けられた。
・ベースラインの患者特性は3群でバランスがとれており、おおむねグローバルの全体集団と同様であったが、ESR1変異陽性患者の割合は若干低かった(imlunestrant群35%vs.imlunestrant+アベマシクリブ群17%vs.標準内分泌療法群25%)。また、CDK4/6阻害薬による治療歴を有する患者がグローバルでは6割程度だったのに対し、日本人集団では19%vs.29%vs.17%と少ない傾向であった。
ESR1変異陽性患者における治験医師評価によるPFS中央値は、imlunestrant群11.1ヵ月vs.標準内分泌療法群7.0ヵ月(ハザード比[HR]:0.26、95%信頼区間[CI]:0.05~1.31)であった。
・全患者における治験医師評価によるPFS中央値は、imlunestrant群11.1ヵ月vs.標準内分泌療法群7.6ヵ月(HR:1.22、95%CI:0.59~2.50)、imlunestrant+アベマシクリブ群11.2ヵ月vs.imlunestrant群11.1ヵ月(HR:0.75、95%CI:0.34~1.66)であった。
・測定可能病変を有する患者におけるORRは、全患者ではimlunestrant群13%(3/23例)vs.標準内分泌療法群5%(1/19例)、imlunestrant+アベマシクリブ群17%(3/18例)vs.imlunestrant群15%(3/20例)、ESR1変異陽性患者ではimlunestrant群29%(2/7例)vs.標準内分泌療法群0%(NA)であった。
・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現率は、imlunestrant群10%vs.imlunestrant+アベマシクリブ群61%vs.標準内分泌療法群13%であり、グローバルと比較してimlunestrant+アベマシクリブ群での発現が多い傾向がみられた。同群における有害事象による減量・治療中止も日本人集団で多く(それぞれ61%、17%)、主に下痢やALT上昇によるものであった。
・Grade3以上のTRAEでimlunestrant+アベマシクリブ群で多くみられたのは、ALT上昇(22%)、皮疹、白血球減少、好中球減少(いずれも13%)、下痢、AST上昇(いずれも9%)などであった。

 中村氏は、ESR1変異陽性のER+/HER2-進行乳がんに対するimlunestrant単剤療法はグローバルと同様に日本人集団でもPFSの改善が確認されたとし、良好な安全性プロファイルを示したとまとめている。なお、OS解析は進行中である。ESR1変異の有無を問わない全患者に対するimlunestrant単剤療法と比較したimlunestrant+アベマシクリブ併用療法についても、グローバルと同様にPFSの数値的な改善がみられたとし、安全性はこれまでのアベマシクリブ+内分泌療法併用でみられたプロファイルと同様で、imlunestrant併用による追加の毒性は示されていないとしている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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わが国の乳房部分切除術後の長期予後と局所再発のリスク因子~約9千例の後ろ向き研究/日本乳癌学会

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 近年の乳がん治療の進歩によって、乳房部分切除術後の局所再発率と生存率が変化していることが推測される。また、乳房部分切除術の手技は国や解剖学的な違いによって異なり、国や人種の違いが局所再発リスクのパターンに影響する可能性がある。今回、聖路加国際病院の喜多 久美子氏らは、日本のリアルワールドデータを用いた多施設共同コホート研究で、近年の日本における乳房部分切除術後の局所再発率と予後、局所再発のリスク因子を検討し、第33回日本乳癌学会学術総会で報告した。本研究より、発症時若年、腫瘍径2cm以上、高Ki-67、脈管侵襲、術後療法や放射線療法を受けていないことが局所再発のリスク因子であり、術後療法はすべてのサブタイプで局所再発リスク低減に寄与することが示唆されたという。

 本研究は多施設共同後ろ向きコホート研究で、2014~18年に国内25施設でStage0~III乳がんで乳房部分切除術を受けた患者を登録した。評価項目は、局所再発率、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・計8,897例を登録し、平均年齢は57.1歳、99.8%がアジア系であり、59.4%がT1、51.0%がStage I、70.2%がER+/HER2-であった。治療は化学療法が31.1%、放射線療法は86.7%で実施されていた。切除断端陽性は7.3%にみられた。
・追跡期間中央値は6.6年で、10年局所再発率は4.6%、DFS率は86.2%、OS率は94.1%であった。
・局所再発率はStage I、DCIS、II、IIIの順に良好で、最も良好なサブタイプはER+/HER2-であった。
・切除断端陽性と放射線治療なしは局所再発と有意に関連していた。
・多変量解析の結果、以下の因子で局所再発リスクとの関連がみられた。
 - 発症時40歳未満・腫瘍径2cm以上・高Ki-67:ER+/HER2-で高リスクと関連
 - ER+:全集団で低リスクと関連
 - 脈管侵襲:トリプルネガティブで高リスクと関連
 - 術後療法:すべてのサブタイプで低リスクと関連
 - 術前化学療法:ER+/HER2-で高リスクと関連
 - 放射線療法:すべてのサブタイプで低リスクと関連
 - 内分泌療法(ER+/HER2-のみ):低リスクと関連

 喜多氏は「直接比較はできないが、ヒストリカルデータと比較して局所再発率は改善しており、治療や放射線療法の進歩、術前画像診断技術の向上によるのではないか」と考察した。また、ER+/HER2-で術前化学療法を受けた患者で局所再発率が高かったことから、「EBCTCGメタ解析でも同様の傾向が観察されたため、とくにER+/HER2-において術前化学療法後の局所再発を減少させるため、慎重な手術計画が必要かもしれない」と指摘した。最後に喜多氏は、「近年におけるわれわれのデータはわが国の乳房部分切除術の予後が以前より改善していることを示しており、毎年多くの新規全身療法が導入されるなか、最適な手術戦略を検討する際には最新データを反映させる必要がある」と述べ講演を終えた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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早期手術を受けなかったDCIS、同側浸潤性乳がんの8年累積発生率/BMJ

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 診断後早期(6ヵ月以内)に手術を受けなかった非浸潤性乳管がん(DCIS)患者のコホートにおいて、同側乳房浸潤がんの8年累積発生率は8~14%の範囲であることが、米国・デューク大学医療センターのMarc D. Ryser氏らによる観察コホート研究の結果で示された。同国のDCISに対する現行ガイドラインのコンコーダントケア(concordant care、患者の意に即したケア)では、診断時に手術を行うことが義務付けられている。一方で、手術を受けなかった場合の長期予後については、ほとんど明らかになっていなかった。今回の検討では、将来の浸潤がんのリスクは、疾患(腫瘍)関連および患者関連の両方の因子と関連していたことも示され、著者は、「手術を受けなかったDCIS患者集団に対する、効果的なリスク層別化ツールと共同意思決定が不可欠である」とまとめている。BMJ誌2025年7月8日号掲載の報告。

診断時年齢中央値63歳1,780例を追跡

 研究グループは、初期手術を受けなかったDCISの女性患者における同側浸潤性乳がんリスクを明らかにするため、2008~15年に、原発性DCISと診断された患者の医療記録および全米がんレジストリーから直接抽出したデータを用いて、観察コホート研究を行った。

 米国外科学会と共同で行われた2018 Commission on Cancer Special Study on DCISの認定施設1,330ヵ所を対象とし、針生検で原発性DCISと診断され、診断後6ヵ月時点で生存しており、浸潤性乳管がんは認められず手術を受けていなかった女性患者1,780例についてデータが収集された。

 主要評価項目は同側浸潤性乳がん、副次評価項目は乳がん死であった。

 進行中のアクティブモニタリング試験の適格基準に基づくリスク群(低リスク群[画像診断検出時40歳以上、核グレード分類Grade1/2、HR陽性のDCIS]、高リスク群[その他の場合])別によるサブグループ解析も行った。

 1,780例の診断時年齢中央値は63歳、追跡期間中央値は53.3ヵ月であった。腫瘍グレードは898/1,533例(59%)が低~中グレードであり、HR陽性は1,342/1,530例(88%)であった。675/1,780例(38%)は6ヵ月以降に少なくとも1回の同側乳がん手術を受けていた。

8年累積発生率10.7%、低リスク群は8.5%、高リスク群は13.9%

 全1,780例において、同側浸潤性乳がんは115件(6.5%)、乳がん死は29例(1.6%)で発生した。同側浸潤性乳がんの8年累積発生率は10.7%(95%信頼区間[CI]:8.4~12.8)であった。

 浸潤性乳がんの発生率は、疾患関連および患者関連の因子によって異なっており、同側浸潤性乳がんの8年累積発生率は、低リスク群の女性(650例)では8.5%(95%CI:4.7~12.1)、高リスク群の女性(833例)では13.9%(10.5~17.2)であった。

 8年疾患特異的生存(DSS)率は、全集団では96.4%(95%CI:95.0~97.9)、低リスク群では98.1%(96.7~99.6)であった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Ryser MD, et al. BMJ. 2025;390:e083542.

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HR+/HER2-乳がんで術後S-1が本当に必要な再発リスク群は?/日本乳癌学会

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 経口フッ化ピリミジン系薬剤S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)は、POTENT試験によって、HR+/HER2-乳がんに対する標準的な術後内分泌療法に1年間併用することで再発抑制効果が高まることが示され、2022年11月に適応が拡大した。しかし、POTENT試験の適格基準はStageI~IIIBと幅広く、再発リスク群によっては追加利益が得られないという報告もあるため、S-1の追加投与が本当に必要な患者に関する検討が求められていた。名古屋大学医学部附属病院の豊田 千裕氏らの研究グループは、S-1適応拡大以前の症例によるPOTENT試験に準じた適格基準別の予後を比較してS-1追加投与の意義について検討し、その結果を第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。

 まず、名古屋大学医学部附属病院における、HR+/HER2-乳がんの術後補助療法としてのS-1併用の現状を報告した。

S-1併用の現状
・2022年9月~2024年9月に根治術を施行した原発性乳がんのうち、ER+/HER2-浸潤性乳がんのPOTENT適格(かつmonarchE不適格)で、術後補助療法として実際にS-1を併用したのは54例であった。
・年齢中央値は56歳、観察期間中央値は17ヵ月、周術期化学療法施行が22.2%であった。POTENT試験の適格が79.6%、一部適格(2)が11.1%、一部適格(1)が5.6%、その他3.7%であった。
・現在もS-1内服中が48.1%、減量なく完遂が24.1%、一段階減量で完遂が16.7%、中止が11.1%であった。中止理由は薬剤性肺炎または放射線肺臓炎疑い、肝機能異常(Grade2)、皮疹(Grade2)、悪心(Grade1/2)であり、Grade3以上の重篤な有害事象は認めなかった。
・現時点で再発症例は認めていない。

 小括として、S-1併用療法においてGrade3以上の重篤な副作用は認められなかったことや完遂率の高さについて触れたうえで、後半では名古屋大学医学部附属病院におけるS-1適応拡大前のHR+/HER2-乳がん症例(=S-1非併用症例)のPOTENT試験に準じた適格基準別の予後について報告した。

S-1適応拡大前の症例における予後比較
・2017年11月~2022年11月に根治術を施行したStageI~IIIBのHR+/HER2-浸潤性乳がんのうち、術後補助療法を施行して追跡可能であったのは520例であった。年齢中央値は54歳、観察期間中央値は53ヵ月であった。
・POTENT試験の適格基準に準じて分類した結果、適格群42.3%、一部適格(2)群7.1%、一部適格(1)群3.7%、適格なし群46.7%であった。そのうち周術期に経静脈的化学療法を施行した患者はそれぞれ45.5%、24.3%、0%、0.4%であった。
・5年全生存(OS)率は、適格群96.8%、一部適格群92.6%、適格なし群98.1%で有意差は認めなかった。一方、5年無病生存(DFS)率はそれぞれ90.2%、98.2%、98.9%と適格群では適格なし群よりも有意に不良であり(p<0.001)、適格群では再発抑制を目的とした術後補助療法の必要性が示唆された。
・全体集団をPOTENT試験の追加解析の複合リスク評価に応じてgroup1(低リスク群)、group2(中間リスク群)、group3(高リスク群)の3群に分類したサブグループ解析では、5年OS率はgroup1が97.8%、group2が96.9%、group3が97.9%で有意差は認めなかった。一方、5年DFS率はそれぞれ98.5%、89.2%、83.8%とgroup3では有意に不良であり、高リスク群では再発抑制を目的とした術後補助療法の必要性が示唆された。
・POTENT適格患者からmonarchE適格患者(腋窩リンパ節転移数が多いハイリスク患者)を除いたnon-monarchE群の5年OS率は、group1が97.7%、group2が87.8%、group3が78.8%であり、non-monarchE群でも中間および高リスク群で不良であった。
・non-monarchE群を複合リスク別に分類し、術後の点滴静注化学療法の有無で比較した場合のDFS率は、group1では化学療法ありのグループのほうが不良な傾向にあったが(p=0.07)、group2および3では差を認めなかった(p=0.349およびp=0.618)。
・non-monarchE群で術後の点滴静注化学療法を行わなかった場合は、group1のDFSが良好であった。

 これらの結果より、豊田氏は「本研究は観察期間が短く他病死も多かったことから、今後も長期フォローアップが望まれる」としたうえで、「HR+/HER2-乳がんにおける再発高リスク群では、術後補助療法にS-1を併用することで再発率を有意に低下させる可能性がある。患者背景やリスク評価を踏まえた適応選択が、S-1補助療法の最大の効果を引き出すために重要」とまとめた。

※POTENT試験の適格基準:以下の条件を満たすStageI~IIIBの症例

(ケアネット 森)


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術前療法でリンパ節転移陰転の乳がん、照射は省略できるか/NEJM

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 乳がん治療では、病理学的に腋窩リンパ節転移陽性の患者における領域リンパ節照射の有益性が確立しているが、術前補助化学療法後に病理学的にリンパ節転移なし(ypN0)の患者でも有益かは不明だという。米国・AdventHealth Cancer InstituteのEleftherios P. Mamounas氏らは、無作為化第III相試験「NSABP B-51-Radiation Therapy Oncology Group 1304試験」において、術前補助化学療法後に腋窩リンパ節転移陰性となった患者では、術後補助療法として領域リンパ節照射を追加しても、浸潤性乳がんの再発または乳がん死のリスクは低下しないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年6月5日号で報告された。

7ヵ国の無作為化第III相試験

 NSABP B-51-Radiation Therapy Oncology Group 1304試験は、日本を含む7ヵ国で実施され、2013年8月~2020年12月に参加者を登録した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。

 臨床病期T1~T3 N1 M0の切除可能な乳がんで、生検で病理学的に腋窩リンパ節転移陽性と確認され、標準的な術前補助化学療法(アントラサイクリン系またはタキサン系[あるいはこれら両方]をベースとするレジメン)を8週間以上受け、HER2陽性例は抗HER2療法も受けており、手術時に病理学的に腋窩リンパ節転移陰性(ypN0)であった患者を対象とした。

 被験者を、領域リンパ節照射(総線量50 Gy、25分割)を受ける群、またはこれを受けない群に無作為に割り付けた。

 主要評価項目は、浸潤性乳がんの再発または乳がん死のない期間(浸潤性乳がん無再発期間)であり、副次評価項目は、局所・領域リンパ節無再発期間、無遠隔再発期間、無病生存期間、全生存期間などとし、安全性の評価も行った。

副次評価項目にも有意差はない

 1,641例を登録し、照射群に820例、非照射群に821例を割り付けた。全体の年齢中央値は52歳(四分位範囲:44~60)で、40.3%が50歳未満であった。59.9%が臨床的T2腫瘍(腫瘍径2~5cm)、53.2%がホルモン受容体陽性、56.7%がHER2陽性で、79.0%がトリプルネガティブまたはHER2陽性のがんであった。78.2%で病理学的完全奏効(乳房とリンパ節)が得られ、57.7%が乳房の部分切除術、42.3%が全摘術を受け、55.4%でセンチネルリンパ節生検が行われた。

 1,556例(照射群772例、非照射群784例)を主解析の対象とした。追跡期間中央値59.5ヵ月の時点で、主要評価項目のイベントは109件発生した(照射群50件[6.5%]、非照射群59件[7.5%])。領域リンパ節照射は、浸潤性乳がん無再発期間の有意な延長をもたらさなかった(ハザード比[HR]:0.88[95%信頼区間[CI]:0.60~1.28、p=0.51])。

 また、主要評価項目のイベントのない生存率の点推定値は、照射群が92.7%、非照射群は91.8%であった。

 照射群では、局所・領域リンパ節無再発期間(HR:0.57[95%CI:0.21~1.54])、無遠隔再発期間(1.00[0.67~1.51])、無病生存期間(1.06[0.79~1.44])、全生存期間(1.12[0.75~1.68])についても、改善効果はみられなかった。

Grade3の放射線皮膚炎は5.7%

 プロトコールで規定された治療関連の死亡の報告はなく、予期せぬ有害事象は認めなかった。Grade4の有害事象は、照射群で0.5%、非照射群で0.1%に、Grade3はそれぞれ10.0%および6.5%に発現した。最も頻度の高いGrade3の有害事象は放射線皮膚炎で、照射群の5.7%、非照射群でも3.3%に発現した。

 著者は、「本試験は、生検で腋窩リンパ節転移が確認された患者では、術前補助化学療法でypN0に達した場合に、領域リンパ節照射を行っても、5年後の腫瘍学的なアウトカムは改善しないことを示している」「これらの結果は、術前補助化学療法を受けた患者ではリンパ節の病理学的な反応に基づいて領域リンパ節照射の実施を決められるという治療戦略への転換を支持するものである」「長期的なアウトカムの評価のために追跡調査を継続中である」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Mamounas EP, et al. N Engl J Med. 2025;392:2113-2124.

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