T1cN0M0のHER2+乳がんへの術前vs.術後補助療法、OSに差は?

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 T1cN0M0のHER2+乳がん患者において、術前補助療法は術後補助療法と同等の全生存期間(OS)および乳がん特異的生存期間(BCSS)を示したことを、中国・ハルビン医科大学のXuelian Wang氏らが明らかにした。これまで、腫瘍径が小さく、リンパ節転移のないHER2+乳がん患者おける術前補助療法の術後補助療法に対する優位性については議論が続いていた。Cancer誌2025年1月1日号掲載の報告。

 研究グループは、米国・Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベースから、2010~20年に化学療法と手術を受けたT1cN0M0のHER2+乳がん患者のデータを抽出した。傾向スコアマッチングにより、術前補助療法群と術後補助療法群の背景因子が一致するコホートを作成した。術前補助療法群と術後補助療法群のOSとBCSSを、カプランマイヤー法とCox比例ハザードモデルによって解析した。さらに、ロジスティック回帰モデルを使用して、術前補助療法に対する病理学的完全奏効(pCR)の予測因子を探索した。

 主な結果は以下のとおり。

●バランスのとれた2,140組が傾向スコアマッチングした。
●術前補助療法群と術後補助療法群のOSおよびBCSSは同等であった。
●術前補助療法後にpCRを達成した場合、術後補助療法群よりもOSおよびBCSSが有意に良好であった。
 ・OSのハザード比(HR):0.52、95%信頼区間(CI):0.35~0.77、p<0.001
 ・BCSSのHR:0.60、95%CI:0.37~0.98、p=0.041
●白人患者およびHR-が独立したpCR予測因子であることが明らかになった。

(ケアネット 森)


【原著論文はこちら】

Wang X, et al. Cancer. 2025;131:e35581.

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HER2+早期乳がんへの術後T-DM1、iDFS改善を長期維持しOS有意に延長/NEJM

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 トラスツズマブを含む術前化学療法後に浸潤がんの残存が認められたHER2陽性(HER2+)早期乳がん患者において、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)はトラスツズマブと比較して、全生存期間(OS)を延長し、無浸潤疾患生存期間(iDFS)の改善が維持されていた。米国・National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project (NSABP) FoundationのCharles E. Geyer Jr氏らが、第III相無作為化非盲検比較試験「KATHERINE試験」のiDFSの最終解析およびOSの2回目の中間解析の結果を報告した。術前化学療法後に浸潤がんが残存するHER2+早期乳がん患者は、再発および死亡のリスクが高い。KATHERINE試験では、iDFSの1回目の中間解析においてT-DM1のトラスツズマブに対する優越性が検証され(非層別ハザード比[HR]:0.50、95%信頼区間[CI]:0.39~0.64、p<0.001)、この結果に基づき「HER2+の乳がんにおける術後療法」の適応追加が承認されていた。NEJM誌2025年1月16日号掲載の報告。

術前療法で浸潤がん残存HER2+早期乳がん、T-DM1 vs.トラスツズマブを比較

 研究グループは、タキサン系化学療法およびトラスツズマブを含む術前薬物療法を受け、手術後、乳房または腋窩リンパ節に浸潤がんの残存が認められたHER2+早期乳がん患者を、T-DM1群またはトラスツズマブ群に1対1の割合で無作為に割り付け、14サイクル投与した。

 主要評価項目はiDFSとし、重要な副次評価項目はOSなどであった。iDFSの定義は、同側浸潤性乳がん再発、同側局所の浸潤性乳がんの再発、遠隔再発、対側乳房の浸潤性乳がん、全死因死亡のいずれかが無作為化から最初に認められた日までの期間とされた。

 有効性の解析はITT解析とし、iDFSの最終解析およびOSの2回目の中間解析は、iDFSのイベントが384件発生後に行うことと規定された。

 ITT集団には各群743例の患者が組み込まれた。

中央値8.4年追跡後もiDFSの改善は維持、OSの有意な改善を認める

 追跡期間中央値8.4年において、iDFSのイベントはT-DM1群で146例(19.7%)、トラスツズマブ群で239例(32.2%)に報告された。浸潤性疾患または死亡の非層別HRは0.54(95%CI:0.44~0.66)であり、iDFSの改善が維持されていた。

 7年iDFS率は、T-DM1群80.8%、トラスツズマブ群67.1%であった(群間差:13.7%ポイント)。

 死亡は、T-DM1群89例(12.0%)、トラスツズマブ群126例(17.0%)が報告された。死亡のHRは0.66(95%CI:0.51~0.87、p=0.003)で、事前に規定された有意水準(p<0.0263、HR:0.739に相当)を超えており、T-DM1群はトラスツズマブ群より死亡リスクが有意に低いことが認められた。推定7年OS率はT-DM1群89.1%、トラスツズマブ群84.4%であった(群間差4.7%ポイント)。

 Grade3以上の有害事象は、T-DM1群で26.1%、トラスツズマブ群で15.7%に報告された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Geyer CE Jr, et al. N Engl J Med. 2025;392:249-257.

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乳がん診断後の手術遅延、サブタイプ別の死亡リスクへの影響

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 乳がん診断後の手術遅延による乳がん特異的死亡率(BCSM)への影響はサブタイプにより異なり、ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)患者でBCSMリスクの最も顕著な増加がみられたことが明らかになった。これまで、手術の遅れが死亡リスク増加と関連することが報告されていたが、サブタイプによる違いがあるかどうかは明らかになっていなかった。米国・Stephenson Cancer CenterのMacall Leslie Salewon氏らが実施した後ろ向きコホート研究の結果が、Breast Cancer Research誌2024年12月30日号に掲載された。

 研究グループは、米国国立がん研究所(NCI)のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベースを用いて、2010~17年に初回治療として手術を受けた局所乳がん患者において、手術の延期が生存率に与える影響がサブタイプ(HR+/HER2-、HR-/HER2-、およびHER2+)によって異なるかどうかを評価した。手術までの時間(TTS)は、診断のための生検日から手術日までの日数として定義され、TTS=30日を対照とした。BCSMは、サブタイプ別にそれぞれFine-Gray回帰モデルを使用してTTSに応じて評価され、TTSに影響を与える人口統計学的・臨床的変数、治療変数が傾向スコアによる逆数重み付け法を用いて調整された。

 主な結果は以下のとおり。

・調整後のBCSMリスクは、すべてのサブタイプにおいてTTSの増加とともに増加したが、その関連パターンと範囲は異なっていた。
・HR+/HER2-患者において、TTSに関連するBCSMリスクは最も顕著な増加を示した。BCSMリスクはTTS=42日以降にほぼ指数関数的に増加し、調整後の部分分布ハザード比(sHR)は、TTS=60日で1.21(95%信頼区間[CI]:1.06~1.37)、TTS=90日で1.79(95%CI:1.40~2.29)、TTS=120日で2.83(95%CI:1.76~4.55)であった。
・HER2+患者では、sHRはほぼ直線的な増加を示し、TTS=60日で1.34(95%CI:1.02〜1.76)、TTS=90日で1.78(95%CI:0.92〜3.44)、TTS=120日で2.29(95%CI:0.63〜8.31)であった。
・HR-/HER2-患者では、sHRはほぼ直線的な増加を示したものの推定値に有意差はみられなかった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Leslie Salewon M, et al. Breast Cancer Res. 2024;26:191.

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乳腺密度の経時的な上昇や高濃度の持続、乳がんリスクと関連/BMJ

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 韓国・漢陽大学のBoyoung Park氏らは、40歳以上の女性において乳腺密度の経時的変化が異なる5つのグループを特定し、各グループの乳がんリスクが異なること、乳腺密度の上昇や、高濃度状態の持続が乳がんリスクの上昇と関連することを明らかにした。結果を踏まえて著者は、「乳腺密度の経時的な変化を、乳がんのリスク分類において慎重に検討すべきであり、今後リスクモデルに組み込むべきである」と述べている。先行研究により、乳腺密度は乳がんリスクの増加と関連することが知られており、また定期的にマンモグラフィスクリーニングを受けている大規模集団における、乳腺密度の縦断的変化についての研究報告は限られている。BMJ誌2024年12月30日号掲載の報告。

40歳以上の韓国女性、乳腺密度の変化の軌跡と乳がんアウトカムとの関連を評価

 研究グループは、韓国の国民健康保険サービスのデータベースに組み込まれている全国乳がんスクリーニングプログラムのデータを用いて、4回の縦断的評価で類似の乳腺密度の変化を示す女性の集団を特定し、それらの変化とその後の乳がんリスクとの関連を調べる後ろ向きコホート研究を行った。

 対象としたのは、2009~16年に隔年で4回のマンモグラフィスクリーニングを受けた40歳以上の女性。Breast Imaging Reporting and Data System(BI-RADS)の4つのカテゴリー(1:脂肪性、2:乳房散在、3:不均一高濃度、4:きわめて高濃度)を用いて乳腺密度を評価。2021年12月31日までに判定された乳がん発症を調べ、Cox比例ハザードモデルを用いて、交絡因子を補正後、乳腺密度の変化の軌跡と乳がんアウトカムとの関連を評価した。

グループ1と比べてグループ2~5の乳がんリスクは1.60~3.07倍

 174万7,507例(平均年齢61.4歳)の女性コホートにおいて、5つの乳腺密度の変化の軌跡を特定した。グループ1には「一貫してBI-RADSカテゴリー1~2であった女性」が包含され、グループ2には「ベースラインでBI-RADSカテゴリー1~2であったが、時間の経過とともに乳腺密度が上昇した女性」が包含された。グループ3には「ベースラインでBI-RADSカテゴリー2~3であったが、時間の経過とともに乳腺密度が減少した女性」が、グループ4には「ベースラインでBI-RADSカテゴリー2~3であり、その後も同レベルが持続していた女性」が、グループ5には「一貫してBI-RADSカテゴリー3~4であった女性」が包含された。

 グループ2の女性はグループ1の女性と比べて、乳がんリスクが1.60倍(95%信頼区間[CI]:1.49~1.72)であった。グループ3~5の女性もグループ1の女性と比べて乳がんリスクは高く、補正後ハザード比はそれぞれ1.86(95%CI:1.74~1.98)、2.49(2.33~2.65)、3.07(2.87~3.28)であった。

 同様の結果は、いずれの年齢群でも、また閉経状態やBMIの違いに関係なく確認された。

(ケアネット)


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Park B, et al. BMJ. 2024;387:e079575.

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HR+乳がん、dose-dense術後補助化学療法が有益な患者の同定/JCO

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 リンパ節転移陽性のエストロゲン受容体陽性(ER+)乳がん患者の一部は化学療法による効果が小さいことを示すエビデンスが増えてきている。米国・ダナファーバーがん研究所のOtto Metzger Filho氏らは、術後補助化学療法におけるdose-dense化学療法の有用性を検討したCALGB 9741試験において、12年間のアウトカムおよび内分泌療法への感受性を示すSET2,3スコアによりdose-dense化学療法が最も有益と考えられる患者を同定した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年1月2日号に掲載。

 CALGB 9741試験は1,973例がdose-dense化学療法群と通常化学療法群に無作為に割り付けられた。化学療法スケジュールと予後および効果予測の交互作用のハザード比(HR)は、長期の無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)のCoxモデルから推定した。内分泌転写活性を示すバイオマーカーであるSET2,3の検査はER+乳がん女性のRNAサンプル682個に実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・dose-dense化学療法は、全集団においてDFSを23%改善し(HR:0.77、95%信頼区間[CI]:0.66~0.90)、OSを20%改善した(HR:0.80、95%CI:0.67~0.95)。
・dose-dense化学療法の有益性はER+およびER-のサブセットで認められ、治療群とERの状態との間に有意な交互作用は認められなかった。
・SET2,3スコアが低いと予後不良だったが、閉経状態に関係なくdose-dense化学療法による予後は改善した(交互作用のp:DFS 0.0998、OS 0.027)。具体的には、内分泌転写活性が低いことがdose-dense化学療法の有益性を予測した。しかし、分子サブタイプによる腫瘍負荷および増殖によるシグネチャーは予測しなかった。

 本研究の結果、SET2,3スコアがdose-dense化学療法の有益な患者を同定し、具体的には、腫瘍負荷、分子サブタイプ、閉経状態よりも、内分泌転写活性の低さでその有益性が予測されることが示唆された。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Metzger Filho O, et al. J Clin Oncol. 2025 Jan 2. [Epub ahead of print]

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早期/局所進行TNBCの術前補助療法、camrelizumab追加でpCR改善/JAMA

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 早期または局所進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の術前補助療法において、化学療法単独と比較して化学療法に抗PD-1抗体camrelizumabを追加すると、病理学的完全奏効(pCR)の割合を有意に改善し、術前補助療法期に新たな安全性シグナルは発現しなかったことが、中国・復旦大学上海がんセンターのLi Chen氏らが実施した「CamRelief試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年12月13日号に掲載された。

中国の無作為化プラセボ対照第III相試験

 CamRelief試験は、早期または局所進行TNBCの術前補助療法におけるcamrelizumab追加の有益性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年11月~2023年5月に中国の40病院で患者を登録した(Jiangsu Hengrui Pharmaceuticalsの助成を受けた)。

 年齢18~75歳、StageIIまたはIIIの浸潤性TNBCの女性(性別は自己申告)で、乳がんに対する全身治療を受けておらず、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance-status(ECOG PS、0~5点、点数が高いほど機能障害が重度)のスコアが0または1点の患者を対象とした。

 これらの患者を、術前補助療法(24週間)として、化学療法(2週ごと)との併用でcamrelizumab(200mg、2週ごと)またはプラセボの静脈内投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。化学療法は、最初の16週間はnab-パクリタキセル(100mg/m2)とカルボプラチン(曲線下面積[AUC]1.5)を28日間(1サイクル)の1、8、15日目に投与し、次の8週間はエピルビシン(90mg/m2)とシクロホスファミド(500mg/m2)を2週ごとに投与した。その後、手術を行い、術後補助療法として、camrelizumab群はcamrelizumab 200mgを2週ごとに最長1年間投与+標準治療、プラセボ群は標準治療のみを受けた。

 主要評価項目はpCRで、両乳房とリンパ節に浸潤性腫瘍がない状態(ypT0/Tis ypN0)と定義した。

副次評価項目のデータは不十分

 441例(年齢中央値48歳[範囲:22~75]、StageIII 158例[35.8%]、リンパ節転移あり331例[70.5%])を、camrelizumab群(222例)またはプラセボ群(219例)に無作為に割り付けた。camrelizumab群の198例(89.2%)とプラセボ群の200例(91.3%)が手術を受けた。無作為化後の追跡期間中央値は14.4ヵ月(範囲:0.0~31.8)だった。

 pCRを達成した患者は、プラセボ群で98例(44.7%)であったのに対し、camrelizumab群では126例(56.8%)と有意に達成患者割合が高かった(達成率の群間差:12.2%、95%信頼区間[CI]:3.3~21.2、片側p=0.004)。

 データカットオフ(2023年9月30日)の時点で、副次評価項目である無イベント生存、無病生存、遠隔無病生存のデータは不十分であったが、18ヵ月無イベント生存率はcamrelizumab群86.6%、プラセボ群83.6%(ハザード比:0.80、95%CI:0.46~1.42)、12ヵ月無病生存率はそれぞれ91.9%および87.8%(0.58、0.27~1.24)、12ヵ月遠隔無病生存率は91.9%および88.4%(0.62、0.29~1.33)だった。

 また、手術前の画像上の奏効は、camrelizumab群が194例(87.4%)、プラセボ群は181例(82.6%)で達成された(群間差:4.7%、95%CI:-1.8~11.1)。

術後補助療法期にも新たな安全性シグナルは認めない

 術前補助療法期に、Grade3以上の有害事象はcamrelizumab群198例(89.2%)、プラセボ群182例(83.1%)に発現した。両群とも血液毒性が主で、白血球数の減少がそれぞれ73.4%および67.6%、好中球数の減少が80.2%および77.2%、貧血が30.2%および21.9%に認めた。また、重篤な有害事象は、それぞれ77例(34.7%)および50例(22.8%)に発現し、camrelizumab群で致死的有害事象を2例(0.9%)に認めた。

 camrelizumab群では、205例(92.3%)に免疫関連有害事象を認め、21例(9.5%)がGrade3以上であった。最も頻度が高かったのはreactive capillary endothelial proliferation(195例[87.8%])で、このうちGrade3以上は5例(2.3%)だった。

 また、術後補助療法期のcamrelizumabの継続投与では、Grade3以上の有害事象、重篤な有害事象、免疫関連有害事象に関して、新たな安全性シグナルは認めなかった。

 著者は、「これらの結果を先行研究と統合すると、とくに高リスクの患者における強力化学療法レジメンと併用した場合のcamrelizumabの有益性が示され、早期または局所進行TNBCの新たな治療選択肢となる可能性を支持する知見と考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)


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Chen L, et al. JAMA. 2024 Dec 13. [Epub ahead of print]

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ダトポタマブ デルクステカン、HR陽性/HER2陰性乳がんに承認/第一三共

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 第一三共は、抗TROP-2抗体薬物複合体ダトポタマブ デルクステカン(商品名:ダトロウェイ)について、2024年12月27日、「化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」を適応として日本で製造販売承認を取得したと発表。

 同剤は上記(HR陽性/HER2陰性)患者を対象とした第III相臨床試験(TROPION-Breast01)の結果に基づき、承認された。同剤の承認は世界で初めてで、日本においてHR陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんを対象とするTROP-2を標的とした薬剤として初めて承認された。

・販売名:ダトロウェイ点滴静注用100mg
・一般名:ダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)
・製造販売承認日 :2024年12月27日
・効能又は効果:化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
・用法及び用量:通常、成人にはダトポタマブ デルクステカン(遺伝子組換え)として1回6mg/kgを90分かけて3週間間隔で点滴静注する。初回投与の忍容性が良好であれば2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できる。なお、患者の状態により適宜減量する。

(ケアネット 細田 雅之)


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リンパ節転移陰性の浸潤性乳がん、腋窩手術省略vs.センチネルリンパ節生検/NEJM

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 リンパ節転移陰性のcT1またはcT2浸潤性乳がん患者では、腋窩郭清術を省略してもセンチネルリンパ節生検に対して非劣性であった。ドイツ・ロストック大学のToralf Reimer氏らがドイツの142施設およびオーストリアの9施設で実施した前向き無作為化非劣性試験「Intergroup Sentinel Mamma:INSEMA試験」の追跡期間中央値6年の解析結果を報告した。乳房温存療法の一環として、生存率を損なうことなく腋窩手術を省略できるかどうかは不明のままであった。NEJM誌オンライン版2024年12月12日号掲載の報告。

主要評価項目は無浸潤疾患生存期間

 研究グループは、18歳以上で浸潤性乳がんを有し乳房温存術を受ける予定の女性で、腫瘍径≦5cmのcT1またはcT2、かつ臨床的評価および画像診断でリンパ節転移陰性(cN0、iN0)の患者を、腋窩手術省略群とセンチネルリンパ節生検群に1対4の割合で無作為に割り付けた(初回無作為化)。その後、センチネルリンパ節生検群でセンチネルリンパ節転移陽性と診断された患者を、腋窩リンパ節郭清実施群と非実施群に1対1の割合で無作為に割り付けた。

 本論では、初回無作為化の結果が報告された。主要評価項目は、初回無作為化における無浸潤疾患生存期間(iDFS)で、per-protocol解析を行った。腋窩手術省略群のセンチネルリンパ節生検群に対する非劣性は、5年iDFS率が85%以上で、浸潤性疾患または死亡のハザード比の95%信頼区間(CI)の上限が1.271未満と規定した。

腋窩手術省略はセンチネルリンパ節生検に対して非劣性

 2015年9月~2019年4月に5,502例が初回無作為化を受け、4,858例がper-protocol解析集団となった(腋窩手術省略群962例、センチネルリンパ節生検群3,896例)。

 追跡期間中央値73.6ヵ月において、per-protocol集団における5年iDFS率は腋窩手術省略群91.9%(95%CI:89.9~93.5)、センチネルリンパ節生検群91.7%(90.8~92.6)であった。ハザード比は0.91(95%CI:0.73~1.14)であり、事前に規定された非劣性マージンを満たした。

 主要評価項目のイベント(浸潤性疾患の発症または再発、あるいは死亡)は525例(10.8%)に発生した。腋窩手術省略群とセンチネルリンパ節生検群の間で、腋窩再発発生率(1.0% vs.0.3%)、および死亡率(1.4% vs.2.4%)について、明らかな違いが認められた。

 安全性については、腋窩手術省略群はセンチネルリンパ節生検群と比較して、リンパ浮腫の発現率が低く、腕の可動域が大きく、腕や肩の動きに伴う痛みが少なかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


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Reimer T, et al. N Engl J Med. 2024 Dec 12. [Epub ahead of print]

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低リスクDCIS、積極的モニタリングvs.標準治療/JAMA

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 低リスク非浸潤性乳管がん(DCIS)に対する積極的モニタリング(6ヵ月ごとに乳房画像検査と身体検査を実施)は、ガイドラインに準拠した治療(手術±放射線治療)と比較して、追跡2年時点の同側乳房浸潤がんの発生率を上昇せず、積極的モニタリングの標準治療に対する非劣性が示された。米国・デューク大学のE. Shelley Hwang氏らCOMET Study Investigatorsが前向き無作為化非劣性試験「COMET試験」の結果を報告した。JAMA誌オンライン版2024年12月12日号掲載の報告。

グレード1/2のDCIS女性を対象、同側浸潤がん診断の2年累積リスクを評価

 研究グループは、2017~23年にUS Alliance Cancer Cooperative Groupのクリニック試験地100ヵ所で、ホルモン受容体陽性(HR+)グレード1/2のDCISと新規診断された40歳以上の女性995例を登録して試験を行った。

 被験者は、積極的モニタリング群(484例)またはガイドライン準拠治療群(473例)に無作為に割り付けられた。

 主要アウトカムは、同側浸潤がん診断の2年累積リスクで、事前に計画されたITT解析およびper-protocol解析で評価した。非劣性マージンは0.05%。

2年累積発生率、積極的モニタリング群4.2%、ガイドライン準拠治療群5.9%

 957例が解析対象となった。積極的モニタリング群は63.7歳(95%信頼区間[CI]:60.0~71.6)、ガイドライン準拠治療群は63.6歳(55.5~70.5)であり、全体では15.7%が黒人女性、75.0%が白人女性であった。

 事前規定された主要解析(追跡期間中央値36.9ヵ月)において、DCISの手術を受けたのは346例で(積極的モニタリング群82例、ガイドライン準拠治療群264例)、浸潤がんと診断されたのは46例(19例、27例)であった。

 Kaplan-Meier法による同側浸潤がんの2年累積発生率は、積極的モニタリング群4.2%、ガイドライン準拠治療群5.9%で、群間差は-1.7%(95%CI上限0.95%)であり、積極的モニタリングのガイドライン準拠治療群に対する非劣性が示された。

 浸潤がんの腫瘍特性は、両群間で統計学的な有意差はなかった。

 また、全体として68.4%(665例)が内分泌療法の開始を報告していた(積極的モニタリング群345例[71.3%]、ガイドライン準拠治療群310例[65.5%])。これら内分泌療法を受けたサブグループの同側浸潤がんの発生率は、積極的モニタリング群3.21%、ガイドライン準拠治療群7.15%で、群間差は-3.94%(95%CI:-5.72~-2.16)であった。

 著者は、「より長期の試験を行うことで、積極的モニタリングが永続的な安全性と忍容性を提供するかを明らかにできるだろう」とまとめている。
(ケアネット)


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Hwang ES, et al. JAMA. 2024 Dec 12. [Epub ahead of print]

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オンコタイプDX再発スコア≧31のHR+/HER2ー乳がん、アントラサイクリンによるベネフィット得られる可能性(TAILORx)/SABCS2024

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 21遺伝子アッセイ(Oncotype DX)による再発スコア(RS)≧31の、リンパ節転移のないホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性乳がん患者における術後療法として、タキサン+シクロホスファミド(TC)療法と比較したタキサン+アントラサイクリン/シクロホスファミド(T-AC)療法の5年無遠隔再発期間(DRFI)および無遠隔再発生存期間(DRFS)における有意なベネフィットが確認された。とくに明確にこのベネフィットが認められたのは、腫瘍径>2cmの患者であった。TAILORx試験の事後解析結果を、米国・シカゴ大学のNan Chen氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で報告した。

 TAILORx試験では、Oncotype DXによるRSに基づき低リスク(RS:0〜10)、中間リスク(同:11〜25)、高リスク(同:26〜100)に分類している。今回の解析では中~高リスク患者のうち、T-ACまたはTCによる化学療法を受けた患者のデータが分析された。中間リスクの患者は内分泌療法のみまたは内分泌療法+医師選択による化学療法のいずれかに無作為に割り付けられ、高リスクの患者は内分泌療法+医師選択による化学療法を受けていた。

 年齢、RS、腫瘍グレード、腫瘍サイズ、エストロゲン/プロゲステロン受容体の状態による調整ハザード比(aHR)を使用して、T-AC群とTC群におけるDRFI率、DRFS率、および全生存期間(OS)を比較。結果はRS<31または≧31で層別化された。

 主な結果は以下のとおり。

・本解析の適格条件を満たした2,549例のうち、438例がT-AC療法、2,111例がTC療法を受けていた。
・患者特性は年齢中央値がT-AC群53.0歳vs.TC群55.1歳、閉経後が58.4% vs.64.4%、RS 11〜25が44.7% vs.73.6%/26〜30が15.8% vs.11.9%/31〜100が39.5% vs.14.5%であった。
・T-AC療法群でのレジメンは、dose-dense AC-T療法が42.5%、標準的AC-T療法が25.1%、TAC療法が13.0%、その他のアントラサイクリン/タキサンレジメンが19.4%であった。
・5年DRFI率は、RS<31の患者ではT-AC群97.0% vs.TC群97.6%(aHR:1.24、p=0.484)、RS≧31の患者では96.1% vs.91.0%(aHR:0.32、p=0.009)となり、RS≧31の患者においてT-AC群で有意に改善した。
・RS≧31の患者における5年DRFS率はT-AC群95.4% vs.TC群89.8%とT-AC群で有意に改善し(aHR:0.47、p=0.031)、5年OS率は97.3% vs.93.5%とT-AC群で良好な傾向がみられた(aHR:0.546、p=0.167)。
・RS≧31の患者における5年DRFI率およびDRFS率のサブグループ解析の結果、DRFI率はすべてのサブグループにおいてT-AC群で良好な傾向がみられたが、DRFS率については腫瘍径>2cmではT-AC群で良好(HR:0.23、95%信頼区間[CI]:0.08~0.69)であった一方、≦2cmではTC群で良好な傾向がみられた(HR:1.32、95%CI:0.51~3.43)。
・RS≧31の患者において、閉経状態ごとに5年DRFI率をみると、閉経前の患者でT-AC群96.9% vs.TC群84.4%(aHR:0.20、p=0.032)、閉経後の患者で95.6% vs.93.4%(aHR:0.25、p=0.028)であり、閉経状態によらずT-AC群で良好な傾向がみられた。
・スプライン回帰モデルによりTC療法と比較したT-AC療法のDRFIへの影響は、RS 20ではaHR:0.96(95%CI:0.53~1.75)、RS 30ではaHR:0.79(95%CI:0.45~1.39)、RS 40ではaHR:0.60(95%CI:0.34~1.05)、RS 50ではaHR:0.45(95%CI:0.21~0.96)と推定され、RSの増加に伴いアントラサイクリンによるベネフィットが増すことが示唆された。

 Chen氏は、事後解析であるため今回のエンドポイントを評価するために設計されていないことなどを限界として挙げたうえで、多遺伝子アッセイで高リスク、リンパ節転移陰性のHR陽性HER2陰性乳がん患者では、アントラサイクリンの使用が検討されるべきではないかとしている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

TAILORx試験(ClinicalTrials.gov)

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