HR+/HER2+転移乳がんへのパルボシクリブ+トラスツズマブのOS(PATRICIA)/ESMO Open

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 HR+/HER2+転移乳がんに内分泌療法を併用または非併用でパルボシクリブ+トラスツズマブの有効性を検討した第II相PATRICIA試験の結果、最終的な全生存期間(OS)中央値は29.8ヵ月であったことを、スペイン・SOLTI Cancer Research GroupのTomas Pascual氏らが報告した。また、バイオマーカー分析の結果についても報告した。ESMO Open誌2025年9月1日号に掲載。

 本試験は、2015年7月~2018年11月に患者を登録し、スペインの17施設で実施された研究者主導の多施設共同非盲検第II相試験である。対象は、トラスツズマブ治療歴があり、2~4レジメンの治療後に病勢進行が認められた閉経後HER2+転移乳がん患者で、ER-症例はコホートA(パルボシクリブ+トラスツズマブ)、ER+症例はコホートB1(追加治療なし)またはコホートB2(レトロゾール)に1:1に無作為に割り付けた。主要評価項目は治験責任医師による6ヵ月時点の無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目はOSと長期PFSであった。

 主な結果は以下のとおり。

・本試験には71例が登録され、コホートAに15例、B1に28例、B2に28例が登録された。
・OS中央値は29.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:20.9~38.0)、4年OS率はコホートAが13.3%、B1が35.7%、B2が32.3%であった。
・OSは、PAM50のLuminalタイプが38.0ヵ月で、非Luminalタイプ(26.6ヵ月)より良好であった。
・探索的バイオマーカー分析では、Luminal関連遺伝子が長期の生存と関連した一方、Basal -likeおよび増殖関連遺伝子は耐性と関連していた。
・Luminal A、Luminal B、化学内分泌(CES)スコア高値では予後は良好であった。

 著者らは、「本結果は、HER2+乳がんにおける遺伝子発現プロファイリングの関連を強調し、バイオマーカー主導の患者選択を支持している。また、本試験の長期成績は、HR+/HER2+転移乳がんにおける化学療法以外の可能性を実証するものだ」と結論している。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Pascual T, et al. ESMO Open. 2025;10:105572.

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早期浸潤性乳がん、2次がんのリスクは?/BMJ

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 英国・オックスフォード大学のPaul McGale氏らは、National Cancer Registration and Analysis Service(NCRAS)のデータを用いた観察コホート研究の結果、早期浸潤性乳がん治療を受けた女性の2次原発がんリスクは一般集団の女性よりわずかに高いものの、リスク増加全体の約6割は対側乳がんであり、術後補助療法に伴うリスクは低いことを報告した。乳がんサバイバーは2次原発がんを発症するリスクが高いが、そのリスクの推定方法は一貫しておらず、2次原発がんのリスクと患者・腫瘍特性、および治療との関係は明確にはなっていない。BMJ誌2025年8月27日号掲載の報告。

早期浸潤性乳がん女性約47万6,000例について解析

 研究グループは、英国・NCRASのデータを用い1993年1月~2016年12月に登録された、最初の浸潤がんとして早期乳がん(乳房のみ、または腋窩リンパ節陽性であるが遠隔転移なし)の診断を受け乳房温存術または乳房切除術を受けた女性を特定し、2021年10月まで追跡調査を行った。

 診断時年齢が20歳未満または75歳超、追跡期間3ヵ月未満、初回乳がん診断後3ヵ月以内に他の種類の浸潤がん発症、術前補助療法を受けた患者等は除外し、47万6,373例を評価対象とした。

 主要評価項目は、2次原発がんの発生率および累積リスクで、一般集団と比較するとともに、患者特性、初発腫瘍の特徴、術後補助療法との関連性を評価した。

2次がんリスクは20年で一般集団よりわずかに増加

 評価対象47万6,373例のうち、22%が1993~99年に、21%が2000~04年に、24%が2005~09年に、33%が2010~16年に診断を受けた。初回乳がん診断時の年齢は、20~39歳が7%、40~49歳が20%、50~59歳が31%、60~69歳が30%、70~75歳が12%であった。

 2次浸潤性原発がんは6万7,064例に確認され、このうち同側新規乳がんは新規原発がんか初回がんの再発かを区別することが困難であるため解析から除外し、6万4,747例を解析対象集団とした。

 これら2次原発がんを発症した計6万4,747例の女性は、一般集団と比較した過剰絶対リスクは小さかった。

 初回乳がん診断後20年間で、乳がん以外のがんを発症した女性は13.6%(95%信頼区間[CI]:13.5~13.7)で、英国一般集団の予測値より2.1%(95%CI:2.0~2.3)高かった。

 対側乳がんの発症率は5.6%(95%CI:5.5~5.6)で、予測値より3.1%(95%CI:3.0~3.2)高く、過剰絶対リスクは若年女性のほうが高齢女性より高かった。

 乳がん以外のがんで20年間の過剰絶対リスクが最も高かったのは、子宮体がんと肺がんであった。子宮体がん、軟部組織がん、骨・関節がん、唾液腺がん、および急性白血病については、標準化罹患比が一般集団の1.5倍以上であったものの、20年間の過剰絶対リスクはいずれも1%未満であった。

 術後補助療法別の解析では、放射線療法は対側乳がんおよび肺がんの増加、内分泌療法は子宮体がんの増加(ただし対側乳がんは減少)、化学療法は急性白血病の増加と関連していた。これらは無作為化試験の報告と一致していたが、今回の検討で新たに軟部組織、頭頸部、卵巣および胃がんとの正の関連性が認められた。

 これらの結果から、2次がんコホート6万4,747例のうち約2%が、また過剰2次がんコホート1万5,813例のうち7%が、術後補助療法に起因する可能性があることが示唆された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

McGale P, et al. BMJ. 2025;390:e083975.

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日本の乳がんサバイバーにおける子宮体がんリスク

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 日本の乳がんサバイバーの子宮体がんリスクは、乳がんではない女性と比べて7.71倍高いことが、筑波大学の河村 千登星氏らによるマッチドコホート研究で示された。また内分泌療法別にみると、タモキシフェン投与患者では5.67倍、内分泌療法なしの患者で3.56倍リスクが高かった。Breast Cancer誌オンライン版2025年8月27日号に掲載。

 本研究は、複数の健康保険組合のレセプトおよび健診データによるJMDC Claims Databaseを用いたマッチドコホート研究である。2005年1月~2019年12月に登録された乳がんサバイバー2万3,729人と、年齢とデータベース登録時期で1:4でマッチさせた乳がんではない女性9万5,659人における子宮体がんリスクを、層別化Cox回帰分析を用いて比較した。さらに、マッチングから1年後に追跡を開始し、非層別化Cox回帰分析を用いて内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、内分泌療法なし)別のリスクを評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・乳がんサバイバー2万3,729人とマッチさせた乳がんではない女性9万5,659人(年齢中央値:49.5歳)における子宮体がん発生例数は、それぞれ56例、40例(1,000人年当たり0.73例、0.13例)であり、調整ハザード比(HR)は7.71(95%信頼区間[CI]:4.56~13.0)であった。
・内分泌療法別の子宮体がんの発生例数(1,000人年当たり例数)および乳がんではない女性に対する調整HR(95%CI)は以下のとおり。
 - タモキシフェン群(9,183例):26例(0.92例)、5.67(3.20~10.0)
 - アロマターゼ阻害薬群(4,582例):5例(0.43例)、2.17(0.79~5.95)
 - 内分泌療法なし群(5,763例):10例(0.61例)、3.56(1.66~7.65)

(ケアネット 金沢 浩子)


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Kawamura C, et al. Breast Cancer. 2025 Aug 27. [Epub ahead of print]

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cN0乳がんのセンチネルリンパ節生検省略、リアルワールドで見逃されるpN+の割合は?

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 INSEMA試験やSOUND試験の結果から、乳房温存術を受けるHR+/HER2-の臨床的腋窩リンパ節転移陰性(cN0)早期乳がんの一部の患者では、センチネルリンパ節生検(SNB)は安全に省略可能であるとされつつある。しかし、リンパ節転移の有無は術後治療の選択に極めて大きな影響を及ぼすため、SNB省略のde-escalation戦略の妥当性については依然として議論の余地がある。そこで、Nikolas Tauber氏(ドイツ・University Hospital Schleswig-Holstein)らは、INSEMA試験の基準を満たす患者にSNBを行い、その病理学的結果や術後治療への影響を解析することで、SNB省略時の影響をリアルワールドで推計した。その結果がEuropean Journal of Surgical Oncology誌2025年8月14日号に掲載された。

 本研究は、ドイツの大学の乳がんセンター3施設を対象とした後ろ向き多施設コホート研究であり、2020~24年にHR+/HER2-乳がんと診断され、INSEMA試験の基準(cT1、グレード1~2、50歳以上、cN0、乳房温存術を施行)を満たす867例を解析した。病理学的リンパ節転移陽性(pN+)の割合、術後に上方修正された病期やグレードの割合、術後治療への影響を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・患者の内訳は、50~60歳が305例、61~70歳が275例、71~80歳が236例、80歳超が51例であった。
・SNBによってpN+と診断されたのは124例(14.3%)であった。
・微小転移と孤立性腫瘍細胞を除外した場合、SNBを省略すると見逃される転移の割合は10.5%であった。この割合は、INSEMA試験やSOUND試験とほぼ同等であった。
・pN+は、若年、腫瘍径が大きい、Ki67値が高い患者で多かった。
・pN+となった124例のうち101例で化学療法やCDK4/6阻害薬、放射線照射などの術後治療が新たに考慮された。
・SNBで病期やグレードが術後に上方修正された割合は18.8%であり、もしSNBを省略していた場合には2次的にSNBが必要になった可能性があった。
・CDK4/6阻害薬の適応症例における再発予防に必要な手術数は、年齢と腫瘍径によって大きく異なり、111~333例に1例であった。

 これらの結果より、研究グループは「一部の患者ではSNBの省略は安全であると考えられる。しかし、今回のリアルワールドデータの解析では、遺伝子発現プロファイルなど他の予後予測ツールを併用しない限り、腋窩リンパ節の評価は依然として個別の治療方針の決定に重要であることを示唆している」とまとめた。

(ケアネット 森)


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Tauber N, et al. Eur J Surg Oncol. 2025;51:110392.

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T-DXd、化学療法未治療のHER2低発現/超低発現の乳がんに承認取得/第一三共

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 第一三共は2025年8月25日、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)について、日本において「ホルモン受容体陽性かつHER2低発現又は超低発現の手術不能又は再発乳癌」の効能又は効果に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。

 本適応は、2024年6月開催の米国臨床腫瘍学会(ASCO2024)で発表された、化学療法未治療のホルモン受容体陽性かつ、HER2低発現またはHER2超低発現の転移再発乳がん患者を対象としたグローバル第III相臨床試験(DESTINY-Breast06)の結果に基づくもので、化学療法未治療のHER2低発現またはHER2超低発現の乳がんを対象に承認された日本で初めての抗HER2療法となる。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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転移乳がんへのT-DXd後治療、アウトカムを比較

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 転移乳がん(MBC)に対し、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)投与後の治療選択について十分なデータはない。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のPaolo Tarantino氏らによる、電子カルテ由来のデータベースを用いた後ろ向き解析の結果、T-DXd投与後の追加治療(後治療)によるアウトカムは、MBCのサブタイプおよび投与された治療レジメンによって有意に異なることが明らかになった。また、T-DXd直後にサシツズマブ ゴビテカン(SG)を使用した場合、すべてのサブタイプで実臨床での無増悪生存期間(rwPFS)が比較的短く、T-DXdとの一定程度の交差耐性の可能性が示唆された。Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版8月14日号掲載の報告。

 本研究では、米国における全国規模の電子カルテ由来の匿名化データベースを用いて、2019年12月~2023年9月にT-DXd治療を開始し、T-DXd投与後に追加治療を受けた転移乳がん(MBC)患者のデータをレビューした。T-DXd投与前に一度でもHER2陽性であればHER2陽性、T-DXd投与前に一度もHER2陽性でなければHER2陰性として分類した。T-DXd後の治療におけるrwPFSおよび全生存期間(OS)を、カプランマイヤー法およびログランク検定を用いて比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・T-DXd投与後に追加治療を受けた患者793例を特定した。
・T-DXd投与後の追加治療のアウトカムはサブタイプにより有意に異なっていた(p<0.001)。各サブタイプのrwPFS中央値は以下のとおり:
【HER2陽性MBC】4.6ヵ月
【ホルモン受容体(HR)陽性/HER2陰性MBC】3.4ヵ月
【トリプルネガティブMBC】2.8ヵ月
・また、T-DXd投与後の追加治療のアウトカムは治療レジメンによっても有意に異なっていた(p<0.001)。各サブタイプおよび各レジメンごとのrwPFS中央値は以下のとおり。
【HER2陽性MBC】内分泌治療レジメン:6.7ヵ月、SG:2.3ヵ月
【HR陽性/HER2陰性MBC】エリブリン:5.9ヵ月、SG:2.5ヵ月
【トリプルネガティブMBC患者】ほとんどの治療レジメンでrwPFSが3ヵ月以下と予後不良。SG:3ヵ月、エリブリン:2ヵ月、多剤併用化学療法:2.5ヵ月

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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Tarantino P, et al. J Natl Cancer Inst. 2025 Aug 14. [Epub ahead of print]

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転移乳がんへのCDK4/6阻害薬、1次治療と2次治療でOSに差なし~メタ解析

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 CDK4/6阻害薬は、HR+/HER2-転移乳がんに対して、1次治療での使用が2次治療での使用より無増悪生存期間(PFS)の改善が認められたことから、1次治療としてガイドラインで推奨されている。一方、1次治療からの使用は累積毒性とコストの増加に関連することがSONIA試験で示唆されており、1次治療と2次治療の生存期間を比較したデータは少ない。今回、ブラジル・サンパウロ大学のLis Victoria Ravani氏/米国・マサチューセッツ総合病院のZahra Bagheri氏らがメタ解析を行った結果、2次治療での使用は1次治療からの使用と比べ、PFS2(無作為化から2次治療で進行するまでの期間)は悪化したが、全生存期間(OS)は同等であることが示唆された。Breast Cancer Research誌2025年8月13日号に掲載。

 本研究は、PubMed、Embase、Cochrane、学会プロシーディングを検索し、CDK4/6阻害薬による1次治療と2次治療の両方もしくはどちらかを受けた患者を含む観察研究および無作為化試験の系統的レビューおよびメタ解析を行った。1次治療からCDK4/6阻害薬を投与された患者は1次治療群に、1次治療でCDK4/6薬を投与されず2次治療から投与された患者は2次治療群に割り付けた。PFS2とOSをプール解析し、さらに試験デザインによる感度分析も行った。

 主な結果は以下のとおり。

・7,602例を対象とした9件の研究(無作為化試験5件、観察研究4件)が組み入れられ、6,475例(85.1%)が1次治療からCDK4/6阻害薬を投与され、1,127例(14.8%)が2次治療で投与された。
・1次治療群は2次治療群より有意にPFS2が長かったが(ハザード比[HR]:2.08、95%信頼区間[CI]:1.90~2.27)、RCTのみの感度分析では有意差は認められなかった(HR:1.10、95%CI:0.94~1.30)。
・OSは、1次治療群と2次治療群で有意差は認められず(HR:1.09、95%CI:1.00~1.18)、RCTのみの感度分析でも有意差は認められなかった(HR:1.03、95%CI:0.84~1.26)。

 著者らは「本結果は、2次治療から1次治療への治療シフトは毒性とコストは増加するが普遍的に転帰を改善する、という想定に異議を唱えるものである」と結論している。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Ravani LV, et al. Breast Cancer Res. 2025;27:146.

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早期乳がん、5年以上の内分泌療法後にAI投与5年で遠隔再発27%減/Lancet

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 術後内分泌療法を5年以上施行した患者にアロマターゼ阻害薬療法(AIT)を追加で5年間実施することにより、順守率がかなり低かったにもかかわらず、その後の遠隔再発率は約25%減少した。英国・オックスフォード大学のJeremy Braybrooke氏らEarly Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)がメタ解析で明らかにした。エストロゲン受容体(ER)陽性早期乳がんの閉経後女性において、5年間のタモキシフェン術後内分泌療法は15年再発率と死亡率を大幅に低下させ、AITはさらに効果的である。研究グループは、少なくとも5年間の内分泌療法後に再発のない女性を対象に、AIT追加の有効性を評価した。著者は、「死亡への影響を直接評価するには、より長期の追跡調査が必要と考えられる」とまとめている。Lancet誌2025年8月9日号掲載の報告。

5年以上の内分泌療法後の患者をAIT追加と追加治療なしに無作為化した試験をメタ解析

 研究グループは、いずれも5年以上のタモキシフェン単独、AIT単独、またはタモキシフェン後AITの投与を完了した閉経後ER陽性早期乳がん患者を、さらに数年間のAITを追加した群(AIT群)と追加治療なし群(無治療群)に無作為化した2010年1月1日より前に開始された試験について、患者個人レベルのメタ解析を行った。

 主要評価項目は、浸潤性乳がんの再発(局所再発、遠隔転移、対側新規発症)、乳がん死亡、その他の原因による死亡、および全死因死亡とし、ITT解析(割り付け順守の有無にかかわらず、年齢、リンパ節転移の有無、試験で層別化し、非関連死時点で打ち切り)によりイベント率比(RR)を算出した。

 1995年12月15日~2014年5月21日に2万5,100例が登録された無作為化試験12件が解析対象となり、このうち適格患者2万2,031例が解析に組み込まれた。

AIT後に5年間のAIT追加で、再発および遠隔再発が最も減少

 AIT群は無治療群と比較して、再発率が27%低下した(RR:0.73、95%信頼区間[CI]:0.67~0.80、p<0.0001)。この低下は、タモキシフェン単独療法歴のある患者のほうがAIT治療歴のある患者より大きく、また、AITを5年追加した試験のほうが2~3年追加した試験より無治療群との差が大きかった。

 AIT治療歴のある患者でAITを5年追加した患者(追加試験開始後の追跡期間中央値:8.1年、四分位範囲:6.0~10.0)では、再発(RR:0.71[95%CI:0.61~0.81、p<0.0001]、診断後5~15年のリスク:11.6%vs.15.2%)、ならびに遠隔再発(0.73[0.61~0.88、p=0.0010]、6.6%vs.8.6%)が有意に減少し、乳がん死は有意ではないものの減少した(RR:0.90[0.70~1.15、p=0.40]、4.4%vs.5.0%)。

 腫瘍の特性は、5~15年までの再発率の相対的減少に明確な影響を及ぼさなかったが、AIT 10年間とAIT 5年間の再発率の絶対減少は、リンパ節転移陽性例(リスク:16.3%vs.20.1%)のほうがリンパ節転移陰性例(9.1%vs.11.8%)より大きかった。

 AITの5年間追加により、5年後の骨折リスクが増加した(RR:1.35[95%CI:1.13~1.61、p=0.0009]、4.6%vs.3.4%)。

 割り付けられた治療の非順守率は高かった(プラセボ対照試験の場合に、AIT追加群39.0%vs.プラセボ群37.6%)。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


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Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group (EBCTCG). Lancet. 2025;406:603-614.

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早期乳がんの生存率、乳房温存療法vs.全切除術~単施設9千例で解析

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 米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMin Yi氏らが、単施設における早期乳がんの初回治療での乳房温存療法(乳房部分切除後に放射線照射)と乳房全切除術について、全生存期間(OS)、無遠隔転移生存期間(DMFS)、局所領域再発(LRR)、乳がん特異的生存期間を比較したところ、同程度であることが示唆された。Annals of Surgical Oncology誌オンライン版2025年8月11日号に掲載。

 本研究は、2000年1月1日~2014年12月31日に初回治療として手術を受けたT1-2、N0-1、M0の乳がん女性8,967例を対象とした。傾向スコアに基づく逆確率重み付け(IPW)を用いて、全コホートおよびサブセット解析(Stageとホルモン受容体の有無の組み合わせ)における生存モデルでの交絡を排除した。

 主な結果は以下のとおり。

・2005年から2013年にかけて、50歳未満における乳房全切除術の割合が39.7%から59.9%(p<0.001)に増加した。
・追跡期間中央値6.1年において、乳房温存療法を受けた患者または乳房全切除術後に放射線照射を受けた患者は、乳房全切除術のみ受けた患者と比較して、乳がん特異的生存期間がわずかに悪化したが、OS、DMFS、LRR率は同等であった。
・サブセット解析では、OS、DMFS、乳がん特異的生存期間において、乳房全切除術のみ受けた患者と乳房温存療法を受けた患者に有意差は認められなかった。
・Stage Iのトリプルネガティブ乳がん患者では、乳房温存療法を受けた患者は乳房全切除術を受けた患者よりもLRR率が低かった(相対リスク:0.5、p=0.02)。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Yi M, et al. Ann Surg Oncol. 2025 Aug 11. [Epub ahead of print]

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70歳以上のER+/HER2-高リスク乳がん、術後化学療法追加は有益か/Lancet

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 genomic grade index(GGI)高リスクのエストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)の70歳以上乳がん女性患者において、術後内分泌療法への化学療法追加は、生存ベネフィットをもたらさず有害事象の増加と関連していた。フランス・Institut CurieのEtienne Brain氏らGERICO&UCBG/Unicancerが第III相無作為化優越性試験の結果を報告した。70歳以上のER+/HER2-浸潤性乳がん女性において、標準的な術後補助療法は内分泌療法である。術後化学療法については、高齢乳がん患者に関するエビデンスは少なく、エビデンスの不足は主にER+患者に関係していることから、研究グループは進展するゲノムシグネチャーの技術がER+乳がん患者における術後化学療法の選択改善に役立つ可能性があるとして、高い予後識別能のエビデンスレベルを有するGGI検査を活用して被験者を絞り込み、本検討を行った。結果を踏まえて著者は、「試験結果は、高齢乳がん患者群における術後内分泌療法への化学療法追加のベネフィット・リスクバランスについて、重要なデータを提供するものであった」とまとめている。Lancet誌2025年8月2日号掲載の報告。

GGI高リスクのER+/HER2-乳がん患者を対象に試験

 試験は、フランスおよびベルギーの84医療施設で、70歳以上、ER+/HER2-の原発乳がんまたは局所再発で、完全切除後かつ全身治療前の女性患者を対象に行われた。GGI検査(Ipsogen開発)は中央判定で、パラフィン包埋腫瘍組織を用いてRT-PCR法により8つの遺伝子を調べて行われた。

 GGI高リスクであった患者を、タキサンベースまたはアントラサイクリンベースの術後化学療法を3週ごと4サイクル、その後に内分泌療法を受ける群(化学療法群)、または内分泌療法のみを受ける群(化学療法なし群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化では、フレイルの状態(G8スクリーニングツールスコアで14以下vs.14超)、リンパ節転移(転移ありvs.転移なし)、試験施設による層別化も行われた。

 主要評価項目は、全生存期間(OS)であった。

化学療法あり・なし群のOS、統計学的有意差なし

 2012年4月12日~2016年4月14日に1,969例がGGIに関するスクリーニングを受け、高リスクであった1,089例が化学療法群(541例)または化学療法なし群(548例)に無作為化された。年齢中央値は75.1歳(四分位範囲[IQR]:72.5~78.7)、フレイル(G8スコア14以下)が認められた患者は437例(40%)であった。化学療法群では281例(52%)がタキサンベース、148例(27%)がアントラサイクリンベースのレジメンを受けた(111例[21%]は化学療法を受けなかった)。

 追跡期間中央値7.8年(95%信頼区間[CI]:7.5~7.8)において、OS率は、化学療法群が4年時点90.5%(95%CI:87.6~92.8)、8年時点72.7%(67.8~77.0)、化学療法なし群は4年時点89.3%(86.2~91.6)、8年時点68.3%(63.3~72.7)であった(層別化log-rank検定のp=0.2100、ハザード比:0.83[95%CI:0.63~1.11])。OSの絶対群間差は統計学的に有意ではなく、4年時点1.3%ポイント(95%CI:-2.4~5.0)、8年時点4.5%ポイント(-2.1~11.1)であった。

 安全性の解析結果は、化学療法なし群のほうが好ましいものであった。Grade3以上の有害事象が少なくとも1件発現したのは、化学療法なし群では52/548例(9%)であった(治療に関連しない死亡1例含む)が、化学療法群は183/541例(34%)であった(死亡3例、うち1例は治療に関連)。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Brain E, et al. Lancet. 2025;406:489-500.

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