高齢者のがん薬物療法GLの改訂ポイント【乳腺】/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 『高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版』が2026年3月25日に発刊され、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)のシンポジウムで全17項目のクリニカルクエスチョン(CQ)が解説された。乳腺領域からは、HER2陽性(CQ12)、トリプルネガティブ(CQ13)、ホルモン受容体陽性HER2陰性(CQ14)の高齢者の周術期乳がんの薬物療法に関する計3つのCQが設定された。

CQ12 高齢者HER2陽性乳がん周術期治療には、どのような治療が推奨されるか?
 HER2陽性乳がん術後の標準治療は、化学療法と抗HER2モノクローナル抗体トラスツズマブの併用療法である。しかし、高齢者では治療利益と化学療法やトラスツズマブの忍容性のバランスが問題となるため、化学療法とトラスツズマブの併用、化学療法のみ、トラスツズマブのみ、経過観察など治療選択が割れやすい。本CQでは、高齢者HER2陽性乳がん患者の周術期治療の実臨床における個別化治療と意思決定を支えるため、(1)トラスツズマブ+化学療法、(2)トラスツズマブ単剤、(3)トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法の3つに分けて評価を行った。

(1)トラスツズマブ+化学療法
推奨:高齢者HER2陽性乳がん周術期治療には、トラスツズマブ+化学療法を強く推奨する。
推奨のタイプ:当該介入の強い推奨
エビデンスの強さ:A
 4件のランダム化比較試験(RCT)(HERA、BCIRG006、NSABP B-31/N9831統合解析)で、トラスツズマブ+化学療法群は化学療法単独群に比べ、全生存期間(OS)および無病生存期間(DFS)が改善した。これらは高齢者のみを対象とした試験ではないが、60歳以上のサブグループにおいても良好であり、高齢者でも治療利益は大きいと考えられた。トラスツズマブの併用により心不全や心機能低下が有意に増加したが、その多くは可逆的であった。OS・DFSの延長について、トラスツズマブ+化学療法の益は大きく一貫していることから、化学療法単独よりも優れていると評価された。

(2)トラスツズマブ単剤
推奨:化学療法の忍容性がない場合には、トラスツズマブ単剤が選択肢となりうる。
推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨
エビデンスの強さ:B
 わが国で行われた70歳以上の高齢者HER2陽性乳がん患者を対象としたRCT(RESPECT)において、トラスツズマブ単剤群は化学療法併用群と比べ、OS・DFSの非劣性は統計学的に示されなかった。トラスツズマブ単剤群では治療開始12ヵ月においてQOL低下が少なかった。Grade3以上の有害事象は化学療法併用群において有意に多く生じていた。1件のRCTに限られるが日本人高齢者を対象として直接性が高く、結果に対する不確実性は少ないと評価された。

(3)トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法
推奨:再発リスクが高く、全身状態良好で化学療法に十分耐えうる状況に限り、トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法が選択肢となりうる。
推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨
エビデンスの強さ:C
 1件のRCT(APHINITY)において、トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法群はトラスツズマブ+化学療法群と比べてOSの有意差は認められなかった一方、ペルツズマブ追加により無浸潤疾患生存期間(iDFS)は有意に改善し、とくにリンパ節転移陽性例ではハザード比0.72と良好な上乗せ効果が示された。Grade3以上の有害事象はペルツズマブ追加により6%増加した。下痢によるQOL低下もみられたが、永続的な有害事象ではなかった。1件のRCTに限られ、高齢者に特化した試験ではないが、ペルツズマブによる予後改善が期待でき、かつ十分な忍容性があると判断される患者では検討しうると評価された。

CQ13 高齢者の周術期トリプルネガティブ乳がんに対して、免疫チェックポイント阻害薬の使用は推奨されるか?
推奨:周術期トリプルネガティブ高齢者乳がんに対して、免疫チェックポイント阻害薬の併用を弱く推奨する。
推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨
エビデンスの強さ:C
 トリプルネガティブ乳がんの周術期標準治療は化学療法であるが、近年では再発高リスク症例に対して免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を併用したレジメンも推奨されている。高齢者では、治療効果と有害事象のバランスが重視されるため、ICIの使用推奨を検討することは臨床的に重要である。そこで本CQでは、高齢者トリプルネガティブ乳がんで、ICIを含む薬物治療を実施した群(介入群)とICIを含まない薬物治療または経過観察の群(対照群)のアウトカムを評価した。OS・DFSを指標とした2件のRCT(KEYNOTE-522、IMpassion031)および関連サブ解析において、OSには有意差を認めなかったが(文献検索期間終了後にOS改善の報告あり)、DFSはKEYNOTE-522では介入群で有意な延長を認め、IMpassion031でも延長傾向が示された。Grade3以上の有害事象の頻度に差はなかった。免疫関連有害事象(irAE)は介入群で増加したが、AE of special interestの定義が異なったため、評価には限界があった。ICI併用による持続的なQOL低下は認めなかった。根拠となる試験には全身状態が良好な高齢者が一部含まれるのみで、高齢者におけるエビデンスは十分ではないと評価された。

CQ14 ホルモン受容体陽性HER2陰性高齢者乳がんの術後内分泌療法にアベマシクリブやS-1の併用は推奨されるか?
 ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がん術後の標準治療は内分泌療法であるが、再発リスクが高い場合は追加治療が検討される。近年では内分泌療法にアベマシクリブやS-1を併用する新たな治療戦略が登場している。これらの薬剤は作用機序ならびに治療効果、有害事象のプロファイルが異なることから、本CQでは(1)内分泌療法+アベマシクリブ、(2)内分泌療法+S-1に分けて、それぞれを内分泌療法単独と比較した。

(1)アベマシクリブ
推奨:ホルモン受容体陽性HER2陰性高齢者乳がんの術後内分泌療法として、再発リスクが高く治療に耐えうる状況に限り、アベマシクリブが選択肢となりうる。
推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨
エビデンスの強さ:C
 1件のRCT(monarchE)において、内分泌療法+アベマシクリブ群は内分泌療法のみの群と比べてOSの有意差は認められなかった(文献検索期間終了後にOS改善の報告あり)が、iDFSはアベマシクリブ追加により有意に改善した。Grade3以上の有害事象は併用群で増加した。下痢などは高齢者で問題となりやすく、休薬・減量を含めた管理を要した。本試験は高齢者に特化したものではないが、アベマシクリブ併用による再発抑制効果は示される一方、有害事象増加にも留意が必要であり、高齢者への適用は個別に判断すべきと評価された。

(2)S-1
推奨:再発高リスクホルモン受容体陽性HER2陰性高齢者乳がんの術後内分泌療法へのS-1併用は、患者の全身状態やリスク・ベネフィットを総合的に考慮したうえで行うことが望ましい。
推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨
エビデンスの強さ:C
 1件のRCT(POTENT)において、内分泌療法+S-1群は内分泌療法のみの群と比べてOSの有意差は認められなかったが、iDFSはS-1追加により有意に改善した。Grade3以上の有害事象は併用群で好中球減少(8%)、下痢(2%)などが報告された。1件のRCTに限られ、かつ高齢者に特化した試験ではないという限界を有するもののS-1併用による再発抑制効果は示唆されている一方、毒性増加のリスクもあることから高齢者に対する適用は個別に判断すべきと考えられた。

(ケアネット 森)


【参考文献・参考サイトはこちら】

日本臨床腫瘍学会/日本癌治療学会編. 高齢者のがん薬物療法ガイドライン改訂第2版. 南江堂;2026.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

少量〜中等量でも死亡リスクが高まるお酒の種類は?/ACC

提供元:CareNet.com

 過度な飲酒は健康に悪影響を及ぼすが、少量~中等量の飲酒と死亡率との関連については、飲料の種類によってリスク構造が大きく異なることがUKバイオバンクのデータを用いた大規模調査で明らかになった。本研究は米国心臓学会議(ACC2026、3月28~30日)のPoster Contributionsにおいて、中国・中南大学湘雅第二病院のZhangling Chen氏が発表し、Journal of the American College of Cardiology誌オンライン版2026年4月7日号(第87巻第13号増刊号)に掲載された。

 本研究は、アルコールの総摂取量ならびに種類別摂取量と、全死亡および原因別死亡率との関連を明らかにするため、2006〜22年にUKバイオバンクに参加した34万924人を解析。各参加者を1日および1週間あたりの純アルコール摂取量(g)に基づいて4つのカテゴリーに分類し、Cox回帰分析した。

(1)Never/Occasional(飲まない/たまに飲む)…男女共20g/週
(2)Low(少量)…男性:20g/週かつ20g/日、女性:20g/週かつ10g/日
(3)Moderate(中等量)…男性:20~40g/日、女性:10~20g/日
(4)High(多量)…男性:40g/日超、女性:20g/日超
純アルコール約14gは、ビール350mL、ワイン150mL、蒸留酒45mLに相当

 主な結果は以下のとおり。

・平均追跡期間13.4年に2万2,381例の死亡が記録された(心血管疾患[CVD]:4,288例、がん:1万1,063例、そのほか:7,030例)。
・総アルコール摂取量の多量群は飲まない/たまに飲む群と比較して全死亡が24%上昇(ハザード比[HR]:1.24、 95%信頼区間[CI]:1.17~1.31)、CVDによる死亡は14%(95%CI:1.01~1.28)、がんによる死亡は36%(同:1.26~1.47)、そのほかの原因別死亡は12%(同:1.02~1.22)高かった。
・中等量群でもがんによる死亡が11%上昇した(同:1.03~1.20)。
・アルコールの種類によるリスクの違いは、少量~中等量群で顕著で、蒸留酒、ビール、シードルの摂取が全死亡の有意な上昇と関連していた(HR:1.07〜1.83)。
・一方でワインの場合は、少量~中等量群では全死亡ならびに原因別死亡の低下と関連し(HR:0.79〜0.92)、多量群はがんによる死亡の上昇と関連していた(HR:1.10、95%CI:1.02~1.20)。
・多量群は、ビール、シードル、蒸留酒、ワインと種類を問わず、部位別がん死亡の上昇と関連していた。
*頭頸部、呼吸器、消化器、肝臓/胆嚢、神経系、血液、生殖器、女性乳がん

 研究者らは、「赤ワインに含まれるポリフェノールや抗酸化物質などの特定の化合物は、心血管の健康に良い影響を与える可能性がある。また、ワインは食事と一緒に飲まれることが多く、食生活の質が高く、全体的に健康的な生活習慣を送っている人に多く飲まれている。一方、蒸留酒、ビール、シードルは食事以外の場面で飲まれることが多く、食生活の質の低さやそのほかの生活習慣上のリスク要因と関連している」とし、「これらの要因を総合的に考え、アルコールの種類、摂取方法、そしてそれに伴う生活習慣のすべてが、観察された死亡リスクの差に寄与していることが示唆される」と述べている。

(ケアネット 土井 舞子)


【原著論文はこちら】

Li Z, et al. J Am Coll Cardiol. 2026;87:9249.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

日本の乳がん・子宮頸がん・卵巣がんの5年純生存率の推移:2000~14年(CONCORD-3)

提供元:CareNet.com

 日本の乳がん、子宮頸がん、卵巣がんの女性の5年純生存率は2000~14年に改善し、この期間を通じて世界的に高い水準を維持したことが世界的ながん生存率調査プログラムであるCONCORD-3の日本人データを用いた分析により示された。神奈川県立がんセンターの渡邉 要氏らがJapanese Journal of Clinical Oncology誌2026年3月号で報告した。

 本研究は、国内16の地域がん登録データから、2000~14年に乳房、子宮頸部、卵巣に原発する腫瘍と診断された15~99歳の女性のデータを分析した。追跡期間は診断後5年間、もしくは2014年12月31日までとした。上皮内がんや死亡診断書のみの登録は除外した。5年純生存率は、診断の暦年、形態、および病期別にPohar-Perme法を用いて推定し、International Cancer Survival Standard(ICSS)の重み付けを用いて年齢を調整した。

 主な結果は以下のとおり。

・2000年から2014年の間に、乳がんの5年純生存率は、85.9%(95%信頼区間:85.2~86.6)から89.4%(同:88.9~89.9)に、子宮頸がんの5年純生存率は67.5%(同:66.3~68.7%)から71.4%(同:70.4~72.3)に、卵巣がんの5年純生存率は35.5%(同:33.8~37.%)から46.3%(同:44.9~47.7)に改善した。
・局所のStageで診断された腫瘍の5年生存率は一貫して高く(乳がんは98%超、子宮頸がんは90%超)、卵巣がんの生存率は形態によって大きく異なった。

 著者らは「この改善は、乳がんおよび子宮頸がんの早期発見と、あらゆるがんに対する集学的治療の進歩によるものと考えられる。遠隔転移を伴う子宮頸がんおよび卵巣がんの生存率は依然として課題であり、検診と治療戦略の強化の必要性が改めて浮き彫りになった」と結論している。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Watanabe K, et al. Jpn J Clin Oncol. 2026;56:i73-i86.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

早期TN乳がん術前療法におけるペムブロリズマブ投与時刻とpCRの関連/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の投与時刻が治療効果と関連する可能性が示唆されているが、乳がんにおけるエビデンスは限られている。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)では、早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の術前療法におけるペムブロリズマブの投与時刻と病理学的完全奏効(pCR)の関連について後ろ向きに検討した2つの単施設研究の結果を、国立がん研究センター中央病院の齋木 琢郎氏とがん研究会有明病院の久野 真弘氏がそれぞれ発表した。

投与が1時間早まるごとにpCR達成のオッズが1.5倍に~国立がん研究センター中央病院 齋木氏

 齋木氏らは、2022年8月~2025年8月に国立がん研究センター中央病院でKEYNOTE-522レジメンによる術前療法を受け、その後手術を受けたTNBC患者102例を後ろ向きに検討した。投与時刻はペムブロリズマブ投与完了時刻とした。主な結果は以下のとおり。

・投与時刻の中央値は午後12時48分(範囲:午前10時13分~午後3時40分)であった。
・102例中53例(52.0%)がpCRを達成した。
・単変量解析では、組織学的グレード3、核グレード3、ペムブロリズマブ投与時刻の中央値がpCRと有意な関連が認められた。
・多変量解析では、組織学的グレード3、投与時刻の中央値がpCRと有意な関連がみられた。調整オッズ比は1.007(1分早まるごと)であり、これは投与が1時間早まるごとにpCR達成のオッズが1.5倍(1.00760)高まることを示す。
・各薬剤(ペムブロリズマブ、カルボプラチン、パクリタキセル、AC)の相対用量強度と投与時刻に有意な関連はみられなかった。

 齋木氏は「本結果は、ペムブロリズマブを早い時刻に投与することが、pCRの達成率向上に関連する可能性を示唆しているが、カットオフ値は見いだせなかった」とまとめ、午後の投与が良好であった、あるいは差がなかったという結果を示した先行研究との違いについては、「先行研究のコホートでは主に午後に投与していたのに対し、われわれのコホートは主に午前中に投与していたことがこの違いを説明するかもしれない」と考察した。

適切なカットオフ時刻ならびに治療のどのフェーズに注目するかを後ろ向きに検討~がん研究会有明病院 久野氏

 久野氏らは、ペムブロリズマブの投与時刻とpCRの関連を、とくに治療フェーズの影響に注目して検討した。2022年10月~2024年12月にがん研究会有明病院でKEYNOTE-522レジメンによる術前療法を開始したTNBC患者99例を後ろ向きに検討した。ペムブロリズマブの投与開始時刻を電子カルテから抽出、4つのフェーズ(全サイクル、初回サイクル、カルボプラチン+パクリタキセルフェーズ、アントラサイクリンフェーズ)についてROC解析を行い、最適なカットオフ値を決定した。主な結果は以下のとおり。

・99例中65例がpCRを達成した。
・全サイクルにおける投与開始時刻の分布を見ると、pCR群とnon-pCR群の間で有意な差は認められなかった。ROC曲線から導き出された時刻(正午)をカットオフ値として適用しても両群間でpCR率に差はなかった。
・4つの治療フェーズで投与開始時刻とpCRの関連を調べたところ、カルボプラチン+パクリタキセルフェーズのみが午前11時のカットオフ値でpCR率と有意な関連を示し、午前11時より早い時刻で開始した群は95.2%(20/21例)、遅い時刻で開始した群は57.7%(45/78例)であった(p=0.0007)。内的妥当性に関してはMaxstat解析とBootstrap(1,000回)を施行し、安定性を確認した。早い時刻で開始した群と遅い時刻で開始した群の背景因子は、Ki-67値を除いてバランスが取れていた。
・多変量解析において、カルボプラチン+パクリタキセルフェーズにおける投与開始時刻とpCRの関連は、Ki-67値および生殖細胞系列BRCA病的バリアントの有無を調整後も維持された。腫瘍浸潤リンパ球データが利用可能なサブセット(63例)では関連が有意ではなくなったが、早い時刻で開始した群が8例と症例数は限られていた。

 久野氏は「全サイクルを通じたペムブロリズマブの投与開始時刻はpCRと関連していなかったが、カルボプラチン+パクリタキセルフェーズにおいて午前11時より早いペムブロリズマブ投与開始は高いpCR率と関連している可能性が示唆された。あくまで単施設後ろ向き研究のため、外的妥当性や前向き研究のデータが必要である」とまとめた。

2つの研究の違い

 2演題の発表後における質疑応答で、齋木氏は2つの研究の違いについて「久野先生の解析手法は先行研究の手法を踏襲し、科学的なアプローチだが、われわれの研究の目的は投与タイミングの重要性を結論付けることではなく、その重要性を探索することであった」と述べた。久野氏は「pCRに対する投与時刻の効果を評価する手法が異なっていた。われわれはROC曲線(Youden index)などの解析手法を用いて最適なカットオフ値を決定したのに対し、齋木先生は1時間ごとの変化がpCRのオッズ比に与える影響を解析していた」と説明し、「手法は異なるが共に後ろ向き研究を行っているので、今後ぜひ協力したい」と呼びかけた。

(ケアネット 金沢 浩子)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

乳がんオリゴ転移、今わかっていること・いないこと/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 乳がんオリゴ転移については、手術や放射線療法などの局所療法が検討されるが、その有効性についての報告は多くが後方視的検討であり、どのような患者にどの治療を選択すべきかについて明確なコンセンサスは得られていない。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、東京科学大学病院の石場 俊之氏が「乳癌オリゴ転移の今とJCOG2110(OLIGAMI試験)の可能性」と題した講演を行い、近年の研究結果と現在患者登録中のOLIGAMI試験の概要について解説した。

オリゴ転移に局所療法を行うべきか?

 オリゴ転移とは、「転移巣の数が少なく腫瘍径が小さく(5個以下で同一臓器に必ずしも限定しない)、局所療法により完全奏効(CR:Complete Response)となる可能性がある状態」と定義され1)、新規に診断される転移乳がんの1~10%程度と考えられている2)

 オリゴ転移に対する局所療法としては、手術、ラジオ波焼灼療法(RFA)、放射線療法(寡分割照射、体幹部定位放射線治療[SBRT])などが考えられるが、「乳癌診療ガイドライン2022年版」3)では外科的切除は推奨されておらず、SBRTについては「症例を選択したうえで考慮してもよい」という記述となっている。
 一方で、2025年のSt. Gallen国際乳がんコンセンサス会議では乳がんオリゴ転移への局所療法介入に対して87.1%の専門家が「同意する」と回答し、日本のJCOG乳がんグループへのアンケートでも81%が「転移が限局していて初期薬物療法に感受性が高い場合に検討する」と答えるなど、実地臨床では局所療法の併用が広く模索されている。 

2つの臨床試験結果からみえてきたこと

 近年、乳がんオリゴ転移を対象とした前向き無作為化試験が世界中で実施されている。石場氏は2つの試験に着目し、その結果について解説した。4個以下の乳がんオリゴ転移を対象としたNRG-BR002試験では、標準的な全身薬物療法に局所療法(定位照射または手術)を追加しても、無増悪生存期間(PFS)の改善は認められなかった。この理由として、同氏は、無作為化前の薬剤の規定がなく全身薬物療法の強度に群間差があった可能性、患者選定について「登録時の60日以内のオリゴ転移」との規定のみでPETが必須でなく、もともと多発転移であったinducedオリゴ転移や全身療法中に一部の病変のみが増悪したoligoprogressionの症例が含まれていた可能性を指摘した。

 乳がんおよび肺がんのoligoprogressionを対象としたCURB試験では、肺がん患者においてはSBRTによりPFS改善が認められたが、乳がん患者では差がみられなかった。石場氏は、PDとなった症例の約6割で新規の病変が出現している点が、乳がん患者でベネフィットが得られない要因ではないかと述べた。

OLIGAMI試験のデザインとその意義

 上記のような乳がんオリゴ転移の特徴を踏まえ、現在進行中のJCOG2110(OLIGAMI試験)では、以下の基準が設けられている4)
・対象:3個以下のオリゴ転移、各オリゴ転移の大きさ≦5cm(脳転移≦2cm)
※de novoオリゴ転移に限定し、PETを必須とする
・12週間の全身薬物療法で、薬物への反応性のある症例のみを無作為化
・割付調整因子:施設、オリゴ転移個数、サブタイプ分類、転移時期
・試験群:全身薬物療法継続群、根治的局所療法(放射線療法または手術後に全身薬物療法を再開)群
・主要評価項目:全生存期間

 石場氏は、同試験を実施する意義として、ポジティブな結果が出た場合は、乳がんオリゴ転移に対する局所療法を積極的に推奨することができ、現在統一されていない患者選択基準、局所療法の選択に関するコンセンサスが得られることを挙げた。また、もしネガティブな結果となったとしても、無用な局所療法を避けることができ、特定の集団でのみ有効性が認められた場合はさらなる研究につなげることができるとした。

 さらに本試験の大きな特徴として、ctDNA(血中循環腫瘍DNA)を用いた微小残存病変(MRD)解析の附随研究が組み込まれている。局所療法介入前後のctDNA動態をモニタリングすることで、分子レベルでの微小転移の有無と局所療法の効果判定、さらには再発の早期検知に関する有用性が明らかになることが期待される。

 同試験は現在も患者登録中で、最後に石場氏は「対象の患者さんがいらっしゃれば、ぜひJCOG参加施設にご連絡いただきたい」として、講演を締めくくった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1)Cardoso F, et al. Ann Oncol. 2017;28:3111.

2)Pagani O, et al. J Natl Cancer Inst. 2010;102:456-463.

3)日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドライン2022年版. 金原出版:2022.

4)Sasaki K, et al. Jpn J Clin Oncol. 2026 Jan 30. [Epub ahead of print]

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

HR+HER2-転移・再発乳がんへのSG、日本人での有効性と安全性(ASCENT-J02)/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 日本人の既治療HR+HER2-転移・再発乳がんに対するサシツズマブ ゴビテカン(SG)の有効性・安全性を評価した非盲検第I/II相ブリッジング試験(ASCENT-J02試験)の結果、国際第III相TROPiCS-02試験における結果と同程度の効果が認められ、安全性についても既知の安全性プロファイルと同様であったことが報告された。国立国際医療センターの下村 昭彦氏が、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で同試験の第II相HR+HER2-転移・再発乳がんコホートの結果を発表した。

・対象:CDK4/6阻害薬、内分泌療法およびタキサン系薬剤による治療歴があり、かつ進行・転移病変に対する2ライン以上の全身化学療法歴のある、HR+HER2-乳がん患者(ECOG PS 0/1)42例
・方法:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静脈内投与
・評価項目:
[主要評価項目]独立判定委員会(IRC)評価による奏効率(ORR)
[副次評価項目]治験責任医師評価によるORR、無増悪生存期間(PFS)、奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・2024年11月26日のデータカットオフ時点で、16例(38%)が試験治療を継続していた(追跡期間中央値は7.5ヵ月)。
・年齢中央値は56歳(範囲:37~79歳)、がん薬物療法歴の中央値は6.0レジメン(同:3.0~11.0)、進行・転移病変に対する全身化学療法歴の中央値は2.0レジメン(同:1.0~3.0)、全例にCDK4/6阻害薬治療歴があった(治療期間は≦12ヵ月が43%)。
・主要評価項目であるIRC評価によるORRは16.7%(95%信頼区間[CI]:7.0~31.4、p=0.1214)で、本試験における統計学的基準(p>0.025)は満たさなかったものの、TROPiCS-02試験におけるIRC評価によるORR(21.0%)と同程度であった。
・治験責任医師評価によるORRは28.6%(95%CI:15.7~44.6)であった(TROPiCS-02試験では16.2%)。
・IRC評価によるTTR中央値は2.8ヵ月(範囲:1.2~3.0)、DOR中央値は未到達(同:2.7~未到達)であった。
・IRCによるPFS中央値は4.4ヵ月(95%CI:2.7~8.5)、治験責任医師評価によるPFS中央値は5.6ヵ月(95%CI:3.3~7.1)であった(TROPiCS-02試験ではそれぞれ5.5ヵ月[95%CI:4.2~7.0]、4.4ヵ月[95%CI:3.8~5.4])。
・OS中央値は13.0ヵ月(95%CI:11.0~未到達)であった(TROPiCS-02試験では14.4ヵ月[95%CI:13.0~15.7]、追跡期間中央値:12.5ヵ月)。
・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)が83%に認められた。10%以上で発現したのは好中球減少症(71%)と白血球減少症(40%)であった。G-CSF製剤の予防的投与は36%で実施された。

 下村氏は、本試験はブリッジング試験としてデザインされたもので、サンプルサイズが少なく、対照群との比較がなく、追跡期間が短いことなどを研究の限界として挙げたうえで、本試験とTROPiCS-02試験の結果は、内分泌療法抵抗性の日本人HR+HER2-転移・再発乳がん患者に対し、化学療法に続くSGの投与を支持するものとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

ASCENT-J02試験(Clinical Trials.gov)

1)Shimomura A, et al. Jpn J Clin Oncol. 2026 Mar 27. [Epub ahead of print]

進行乳がん1次治療中にESR1変異出現でcamizestrantに切り替え、SERENA-6試験の日本人解析/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 SERENA-6試験は、ER+/HER2-の進行乳がんに対して1次治療のアロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬併用療法中、病勢進行する前にctDNA検査でESR1変異が検出された患者において、CDK4/6阻害薬を継続しAIを経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)camizestrantに切り替えることの有用性を検討した国際共同第III相二重盲検試験である。すでに中間解析(データカットオフ:2024年11月28日)で、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の有意な改善(ハザード比[HR]:0.44、p<0.0001)が報告されている。今回、日本人集団の結果(データカットオフ:2025年6月30日)について、名古屋市立大学の岩田 広治氏が第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で発表した。

 本試験では、1次治療としてAI+CDK4/6阻害薬を6ヵ月以上投与されたER+/HER2-進行乳がん患者に、定期的な画像検査に合わせて2~3ヵ月ごとにctDNA検査を行い、ESR1変異の有無を評価した。ESR1変異出現時に病勢進行が認められない患者を、camizestrant(75mg、1日1回経口投与)+CDK4/6阻害薬(種類・用量を継続)+AIのプラセボ、およびAI+CDK4/6阻害薬+camizestrantのプラセボの2群に1:1に無作為に割り付けた。主要評価項目は治験責任医師判定によるPFS、副次評価項目はPFS2と全生存期間(OS)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・315例中20例が日本人患者であった(camizestrant+CDK4/6阻害薬群:11例、AI+CDK4/6阻害薬群:9例)。患者の背景因子は全体集団ではバランスがとれていたが、日本人集団は少数のためバランスがとれておらず、初回検査でのESR1変異検出例は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が73%とAI+CDK4/6阻害薬群の33%より多く、早期進行例もcamizestrant+CDK4/6阻害薬群で多かった。
・PFS中央値は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が19.4ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が9.3ヵ月、HRは0.42(95%信頼区間[CI]:0.08~0.93)で有意な改善がみられた。
・PFS2中央値は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が35.5ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が19.4ヵ月、HRは0.38(95%CI:0.10~1.36)で全体集団と同様の傾向であった。
・最初の後続治療までの期間(TFST)の中央値は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が20.4ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が7.7ヵ月、HRは0.30(95%CI:0.09~0.92)で全体集団と同様の傾向であった。2回目の後治療までの期間(TSST)も同様の傾向であった。
・化学療法もしくはADC(抗体薬物複合体)フリー生存期間の中央値は、全体集団でcamizestrant+CDK4/6阻害薬群が22.7ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が18.7ヵ月、HRは0.69(95%CI:0.49~0.97)であり、日本人集団でも同様の傾向であった。
・全体集団において、camizestrant+CDK4/6阻害薬群では8週以内にESR1変異のアレル頻度が大幅に減少したが、AI+CDK4/6阻害薬群ではほとんどの患者で増加した。
・camizestrant+CDK4/6阻害薬群は、日本人患者において良好な忍容性を示し、Grade3以上の有害事象は27.3%で、有害事象プロファイルは全体集団と同様であった。
・日本人集団では、camizestrant+CDK4/6阻害薬群での好中球数減少症は全Gradeが27.3%、Grade3以上が18.2%であり、曝露期間を調整した発現割合はcamizestrant+CDK4/6阻害薬群のほうが低かった。
・camizestrantによる光視症は全体集団では20.6%に報告されたが、日本人集団では2例のみでどちらもGrade1であった。

 これらの結果から、岩田氏は「1次治療の内分泌療法を、CDK4/6阻害薬を継続しながらcamizestrantに切り替えることは、病勢進行を遅らせ、化学療法/ADCフリー生存期間を延長させるだけでなく、ESR1変異のアレル頻度を大幅かつ迅速に減少させることにより、治療上のベネフィットを大幅に高める」とまとめた。

(ケアネット 金沢 浩子)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

高齢HER2+早期乳がん、術後化学療法省略の判断にHER2DXが有用な可能性(Trans-RESPECT)/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 高齢のHER2陽性早期乳がん患者における長期転帰の予測に、多遺伝子アッセイ「HER2DX」が有用である可能性が示された。また探索的解析の結果、同アッセイによるpCRスコア高値群で術後化学療法の上乗せが有効となることも示唆された。名古屋市立大学臨床研究戦略部の能澤 一樹氏が、RESPECT試験の追加解析「Trans-RESPECT」の結果を、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で発表した。

 RESPECT試験は本邦で実施された第III相無作為化比較試験で、70~80歳のHER2陽性早期乳がん患者を対象に、術後トラスツズマブ単独療法(H群)とトラスツズマブ+化学療法(H+CT群)を比較。トラスツズマブ単独療法の非劣性は証明されなかったが、3年DFS率は92.4%vs.95.3%であり、トラスツズマブ単独療法が高齢患者における治療選択肢の1つとなりうることが示された。

<HER2DXとは>
 HER2陽性早期乳がんに特化した多遺伝子アッセイ。27遺伝子の発現を解析し、リスクスコアとpCRスコア、ERBB2 mRNAスコアを算出する。本解析では、リスクスコアについてカットオフ値を50とし、低リスク(1~49)および高リスク(50~99)に分類している。

 主な結果は以下のとおり。

・RESPECT試験の対象者275例のうち、適格患者154例(H群74例、H+CT群80例)についてHER2DXによる評価が行われた。
・本解析対象者の患者背景は、平均年齢がH群73.6歳vs.H+CT群73.9歳、ER陽性が41.9%vs.46.3%などおおむねバランスがとれていたが、pN0の症例は90.5%vs.77.5%とH群でより多くを占めていた。
・HER2DXリスクスコアにより、40例(H群16例vs.H+CT群24例)が高リスク群、114例(58例vs.56例)が低リスク群に分類された。
・10年RFS率はHER2DX高リスク群68.0%vs.低リスク群77.9%(ハザード比[HR]:0.48、95%信頼区間[CI]:0.23~1.01、p=0.05)、10年OS率は69.7%vs.85.9%(HR:0.34、95%CI:0.15~0.80、p=0.01)であった(追跡期間中央値:9.1年)。
・感度分析の結果、5、6、7、8、9、10年のすべての時点でRFSとOSのHR推定値は低リスク群において良好であり、一貫して0.50未満であった。
・HER2DX pCRスコア(高値/中間~低値)別にみた10年OS率は、pCR高値群ではH群66.4%vs.H+CT群94.4%(HR:0.23、95%CI:0.05~1.08、p=0.04)と化学療法併用群で生存期間の延長が認められたが、中間~低値群では88.6%vs.76.2%(HR:1.68、95%CI:0.50~5.60、p=0.40)と認められず、トラスツズマブ単剤においても良好な全生存期間を示した。

 能澤氏は、HER2DX低リスクと判定された患者を中心に、治療方針決定におけるHER2DXの有用性を検証する前向き試験の実施が期待されるとした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

RESPECT試験(ClinicalTrials.gov)

1)Nozawa K, et al. Nat Commun. 2025;16:9585.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

転移乳がんへのサシツズマブ ゴビテカン、アジアを含む安全性統合解析/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 サシツズマブ ゴビテカン(SG)は、既治療で転移を有するトリプルネガティブおよびHR+/HER2-乳がん患者を対象とした複数の臨床試験において、標準治療と比較して患者の転帰を大幅に改善し、安全性プロファイルは管理可能であることが示されている。今回、米国やカナダ、欧州、アジアで実施された試験でSGを投与された転移乳がん患者の安全性データを統合した解析結果を、米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で発表した。

 対象となった試験は、北米・欧州で実施されたASCENT試験、TROPiCS-02試験、IMMU-132-01試験、アジアで実施されたEVER-132-001試験、EVER-132-002試験、ASCENT-J02試験であった。試験治療下における有害事象(TEAE)は初回投与日から最終投与の30日以内に発現したすべての有害事象(AE)と定義し、北米・欧州とアジアの両地域で比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析には、北米・欧州の688例とアジアの281例が含まれた。両地域のほぼ全例(99%以上)がいずれかのGradeのTEAEを経験し、Grade3以上のTEAEは北米・欧州74%およびアジア78%、重篤な有害事象は28%および22%に発現した。
・SGの減量(北米・欧州28%、アジア24%)、中断(61%、63%)、中止(5%、4%)、死亡(1%、3%)につながったTEAEの発現率は両地域で同程度であった。
・投与中止につながった最も一般的なTEAEは、北米・欧州では好中球減少症、下痢、疲労、肺炎(それぞれ1%未満)であり、アジアでは好中球減少症、白血球減少症、疲労、敗血症性ショック(それぞれ1%)であった。
・全GradeおよびGrade3以上の好中球減少症、貧血、白血球減少症、全GradeのAST/ALT上昇、低アルブミン血症はアジアのほうが北米・欧州よりも高頻度であった。
・全GradeおよびGrade3以上の下痢と全Gradeの疲労はアジアのほうが少なかった。
・好中球減少症は両地域ともに治療初期に多く発現したが、適切なマネジメントや減量により、その後減少した。
・両地域ともにG-CSF製剤の予防的投与は好中球減少症の発現率の低下と関連しており、1次予防としてのG-CSF製剤の有用性が示唆された。
・下痢および悪心も適切な支持療法によって管理可能であることが示唆された。

 これらの結果より、Rugo氏は「全GradeおよびGrade3以上のTEAE、減量・中断・中止・死亡につながったTEAEの発現率は北米・欧州とアジアの両地域で同程度であった。本研究は、転移乳がんにおけるSGのアジアを含む安全性解析としてはこれまでで最大規模のものであり、患者サブグループ間でSGが一貫して管理可能な安全性プロファイルを有する治療薬であることを改めて裏付けるものである」とまとめた。

(ケアネット 森)


掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)

HER2陽性転移乳がん1次治療、pyrotinib上乗せで予後改善/BMJ

提供元:CareNet.com

 中国・Cancer Hospital Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのFei Ma氏らは、中国の40施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「PHILA試験」の主要評価項目である、治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)の最終解析結果を報告した。未治療のHER2陽性転移乳がんに対するトラスツズマブ+ドセタキセルへのpyrotinib併用は、プラセボ併用と比較してPFSの有意な改善が維持されており、全生存期間(OS)においても改善傾向が認められたという。安全性プロファイルは中間解析結果と一致しており、長期追跡期間中に新たな安全性に対する懸念は認められなかった。著者は、「今回の解析結果は、同患者集団に対する治療戦略として、pyrotinib+トラスツズマブによる抗HER2併用療法の有効性を裏付けるものである」とまとめている。BMJ誌2026年3月16日号掲載の報告。

トラスツズマブ+ドセタキセルへのpyrotinibまたはプラセボ併用を比較

 PHILA試験の対象は、HER2陽性の再発または転移のある乳がんで、同がんに対する治療歴のない18~75歳の女性患者590例であった。

 研究グループは、適格患者をpyrotinib(400mgを1日1回経口投与)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、いずれも1サイクルを21日間として1日目にトラスツズマブ(初回は8mg/kg、以降は6mg/kg)およびドセタキセル(75mg/m2)の静脈内投与と併用投与し、病勢進行、許容できない毒性の発現、同意撤回、治験責任医師の判断または死亡まで継続した。

 主要評価項目は、治験責任医師評価によるPFS、副次評価項目は独立評価委員会評価によるPFS、OSなどであった。

 無作為化された590例(pyrotinib群297例、プラセボ群293例)全例が、少なくとも1回治療を受け、有効性および安全性の解析対象集団に含まれた。

pyrotinib併用群はPFSの有意な改善が継続、OSも良好

 PFSの最終解析は2024年4月30日をデータカットオフ日として実施された。追跡期間中央値はpyrotinib群35.7ヵ月、プラセボ群34.3ヵ月で、それぞれ91例(31%)および26例(9%)が治療を継続しており、pyrotinib群における治験責任医師評価によるPFSの改善は維持されていた(PFS中央値22.1ヵ月[95%信頼区間[CI]:19.3~27.8]vs.10.5ヵ月[95%CI:9.5~12.4]、ハザード比[HR]:0.44[95%CI:0.36~0.53]、名目上の片側p<0.001)。

 また、pyrotinib群で59例(20%)、プラセボ群で87例(30%)の死亡が報告され、OSは両群とも中央値には未到達であったもののpyrotinib群が良好であった(HR:0.64、95%CI:0.46~0.89、名目上の片側p=0.004)。

 安全性プロファイルは、有害事象の種類、頻度、重症度に関して中間解析と一致しており、新たな安全性の懸念は確認されなかった。ドセタキセルの中止後、有害事象の全体的な発現割合は大幅に減少した。

 長期解析のデータカットオフ日である2025年5月30日時点(追跡期間中央値は全体で45.5ヵ月)では、pyrotinib群で85例(29%)、プラセボ群で108例(37%)の死亡が確認され、OSはpyrotinib群が良好であった(HR:0.74、95%CI:0.56~0.98、名目上の片側p=0.02)。両群ともOS中央値には未到達で、5年生存率はそれぞれ66%および58.5%であった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Ma F, et al. BMJ. 2026;392:e087259.

掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。
(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。)