乳がんのsBRCA変異とgBRCA変異、生物学的特徴と治療反応が異なる/ESMO Open

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 BRCA変異のうち、生殖細胞系列(g)BRCA変異は生物学的および臨床的な重要性が十分に確立されているが、体細胞(s)BRCA変異の意義については不明な点が多い。今回、横浜市立大学の押 正徳氏らが、日本全国のがんゲノム医療データベース(C-CAT)を用いて大規模な乳がんゲノム解析を実施した結果、sBRCAのみ変異ありは、gBRCAとsBRCAの両方変異ありより多くみられ、sBRCA変異はgBRCA変異の有無によって明確なゲノムパターンが示された。また、gBRCAのみ、変異ありがCDK4/6阻害薬の治療継続期間の短縮と関連していた。ESMO Open誌2026年7月23日号に掲載。

 本研究では、C-CATに登録された乳がん患者のうちgBRCA変異およびsBRCA変異の有無が判明している2,978例を解析対象とし、「両方変異あり」「gBRCAのみ変異あり」「sBRCAのみ変異あり」「両方変異なし」の4群に分けた。エストロゲン受容体陽性(ER+)/HER2陰性(HER2-)乳がんおよびトリプルネガティブ乳がん(TNBC)に焦点を当て、変異の全体像、相同組み換え欠損(HRD)に関連する変異、検体の由来、治療継続期間(TTD)を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・「sBRCAのみ変異あり」は「両方変異あり」よりも多かった。
・sBRCA変異は転移巣で多く検出された。
・ゲノム的には、「sBRCAのみ変異あり」ではPIK3CATP53を含む発がん性シグナル伝達経路の変異が多かったのに対し、「両方変異あり」ではBRCA変異が優勢なHRD関連の特徴を示した。
BRCA以外のHRD関連変異は、「sBRCAのみ変異あり」で最も頻度が高かった(52%、p=0.004)。
・ER+/HER2-乳がんに対するCDK4/6阻害薬治療における解析では、gBRCAに変異があるとTTDが短く、「両方変異あり」ではTTD短縮と独立して関連していた(ハザード比:1.3、p<0.001)。一方、「sBRCAのみ変異あり」は「両方変異なし」とTTDが同程度だった。
・TNBCにおいては、免疫チェックポイント阻害薬の治療成績はBRCA変異の有無と関連がみられなかった。

 著者らは「sBRCA変異は単独で解釈すべきではなく、gBRCA変異の有無やより広範なゲノム的文脈と統合して検討する必要がある」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Oshi M, et al. ESMO Open. 2026;11:108311.

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HER2+局所進行/転移乳がんへの二重HER2阻害療法と併用の1次化学療法、エリブリンvs.タキサンの最終OS解析(JBCRG-M06/EMERALD)/ESMO Open

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 HER2陽性(HER2+)局所進行/転移乳がんに対して、二重HER2阻害療法(トラスツズマブ+ペルツズマブ)と併用する1次化学療法として、エリブリンと医師選択のタキサンを比較した第III相JBCRG-M06/EMERALD試験の最終解析の結果、全生存期間(OS)中央値が6年を超え、2群間に有意差は認められなかったことが示された。福島県立医科大学の佐治 重衡氏らがESMO Open誌8月号に報告した。本試験ではすでに、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)においてエリブリンがタキサンに非劣性を示したことが報告されている。

 本試験では、HER2+局所進行/転移乳がん患者をエリブリン群または医師選択のタキサン(ドセタキセルまたはパクリタキセル)群に無作為に1:1の割合で割り付け、1次化学療法としてトラスツズマブ+ペルツズマブと併用した。PFSは2023年6月30日まで、OSは2024年12月31日まで評価した。生存アウトカムは、エリブリン群とタキサン群で比較し、循環腫瘍DNA(ctDNA)によるPIK3CA変異(E542K、E545K、H1047R、N345Kの単一ヌクレオチド変異)またはHER2増幅(ERBB2コピー数>2.5)の検出状況に応じて比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・OS中央値は、エリブリン群が78.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:64.3~未到達)、タキサン群が未到達で、ハザード比は1.25(95%CI:0.92~1.71、p=0.19)であった。
・60ヵ月OS率は、エリブリン群が59.7%、タキサン群が65.2%であった。
・患者全体および治療群ごとのいずれにおいても、ctDNA PIK3CA変異陽性例ではOS中央値および60ヵ月OS率が数値的に低く、ctDNA HER2増幅陽性例では高かった。
・治療群とctDNA PIK3CA変異またはctDNA HER2増幅の状態との間に統計学的に有意な相互作用は認められなかった。
・PFSについても同様の傾向が観察された。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Saji S, et al. ESMO Open. 2026;11:108325.

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高齢の転移TN乳がん患者におけるSGの有用性~国際共同リアルワールド研究

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 転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の高齢患者に対するサシツズマブ ゴビテカン(SG)の臨床成績を評価した国際共同リアルワールド研究の結果を、ポーランド・Maria Sklodowska-Curie National Research Institute of OncologyのAleksandra Konieczna氏らが報告した。このリアルワールド集団において、SGを投与された65歳以上の患者のアウトカムは若年患者と同等以上であり、重篤な有害事象の明らかな増加は認められなかった。Oncologist誌オンライン版2026年7月20日号に掲載。

 本研究は、2021年8月~2025年5月に中央ヨーロッパの18の腫瘍センターにおいて、SGを投与された転移TNBC患者を対象とした後ろ向き国際共同研究である。SG開始時年齢によって65歳未満と65歳以上に層別化した。主要評価項目は全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、治療変更、および安全性などであった。

 主な結果は以下のとおり。

・303例中76例(25.1%)が65歳以上であった。高齢患者では併存疾患や緩和治療ラインが多く、ECOG PS 1以上が多かった。
・調整前の解析では、65歳以上でOS中央値が長く(12.8ヵ月vs.10.9ヵ月、ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.49~0.99、p=0.045)、PFS中央値も長かった(5.4ヵ月vs.4.1ヵ月、HR:0.73、95%CI:0.54~0.97、p=0.031)。一方、多変量解析においては、年齢はOSまたはPFSと独立して関連していなかった。
・ORR、DCR、治療の変更、Grade3以上の好中球減少症については、両群間で差は認められなかった。

 著者らは「調整後の生存率については、年齢が独立した関連因子とはならなかったことから、治療方針の決定は暦年齢のみに基づいて行うべきではないことが示唆される。高齢患者におけるSGの使用はベースライン時の疾患特性、併存疾患、PS、患者の希望、可能であれば老年医学的評価を総合的に考慮すべき」とした。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Konieczna A, et al. The Oncologist. 2026 Jul 20. [Epub ahead of print]

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抗TROP-2 ADCはTROP-2発現レベルで効果が変わるか

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 抗TROP-2抗体薬物複合体(ADC)は、転移乳がんの治療薬として有効性を示しているが、患者のTROP-2の発現レベルによって効果がどの程度異なるかは明らかではなかった。今回、イタリア・Istituto Nazionale Tumori, IRCCS Fondazione G. PascaleのRoberto Buonaiuto氏らのシステマティックレビューおよびメタ解析により、抗TROP-2 ADCは転移乳がんの無増悪生存期間(PFS)を有意に改善するが、その治療効果はTROP-2発現レベルが高い患者でより顕著であることが示された。Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版2026年7月10日号掲載の報告。

 研究グループは、転移乳がん患者を対象に抗TROP-2 ADCによる治療を行った第II~III相試験(2015年1月~2025年9月)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、TROP-2発現レベルと抗TROP-2 ADCの有効性との関係を評価した。対象は、ASCENT試験(サシツズマブ ゴビテカン)、TROPiCS-02試験(サシツズマブ ゴビテカン)、EVER-132-002試験(サシツズマブ ゴビテカン)、OptiTROP-Breast01試験(sacituzumab tirumotecan)、TROPION-Breast01試験(ダトポタマブ デルクステカン)の5試験の参加者であった。

 各試験が独自に設定したTROP-2発現レベルごとに、PFSのハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)のデータを抽出した。さらに、試験間のデータの異質性を考慮したうえで、固定効果モデルあるいはランダム効果モデルを用いて統合ハザード比を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析には、抗TROP-2 ADCまたは化学療法が実施された1,879例が含まれた。
・抗TROP-2 ADCは、全体のサブグループとトリプルネガティブ乳がん(TNBC)のサブグループにおいて、TROP-2発現レベルにかかわらず化学療法と比較してPFSを有意に改善した。
 -全体集団のTROP-2高発現群 HR:0.34、95%CI:0.20~0.57
 -全体集団のTROP-2低発現群 HR:0.63、95%CI:0.50~0.79
 -TNBCのTROP-2高発現群 HR:0.27、95%CI:0.20~0.37
 -TNBCのTROP-2低発現群 HR:0.46、95%CI:0.33~0.64
・HR+/HER2-乳がんにおいては、PFSの有意な改善はTROP-2高発現群でのみ確認された(HR:0.56、95%CI:0.47~0.68)。
・すべてのサブタイプにおいて、PFSの改善はTROP-2高発現群でより顕著であった。

 研究グループは「これらの知見は、患者の選択と治療方針の決定を最適化するために、標準化され、臨床的に意義のあるTROP-2検査の重要性を浮き彫りにしている」とまとめた。

(ケアネット 森)


【原著論文はこちら】

Buonaiuto R, et al. J Natl Cancer Inst. 2026 Jul 10. [Epub ahead of print]

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患者説明に使う資料や情報源は?~がん専門医500人に聞く

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 情報過多の現代、医療情報も多種多様なレベルのものが世の中にあふれている。数十年前と比べ医師と患者の立場がフラットになりつつある昨今、患者自身の学習意欲もあいまって、診療時間中のコミュニケーションに費やす時間は増加傾向にある。診療の効率化が求められる中でも、医師にとっては患者に対し、患者自身の疾患に関する正しい知識を端的に提供したいというニーズは根強いのではないだろうか。

 患者の視点に立った情報発信については、若尾 文彦氏(国立がん研究センターがん対策情報センター本部)率いる研究班*や「がん情報の均てん化を目指す会」**をはじめとする多くの団体が検証を重ねている。後者の団体が2024年11月5日に公表したディスカッション・ペーパー『がん情報の均てん化に向けて~がん患者がオンライン上でがん情報を入手・活用する際の課題と提言~』では、がん患者がオンライン上で情報を入手・活用する際の課題が示された。とくに注目すべきは、患者が情報を入手・精査する際の相談先として、8割が「主治医」を挙げていた点である。
*「厚生労働科学研究費補助金 がん対策推進総合研究事業 _科学的根拠に基づくがん情報の提供及び均てん化に向けた 体制整備に資する研究」
**がん患者が適切なタイミングで適切な情報にアクセスすることで、治療や周辺情報に関する知識を高め、適切に治療を受け、がんと共生できる環境を目指すことを目的に2024年4月に発足

 そこでCareNet.comでは、患者から相談を受ける医師側が、日常診療でどのような情報源を案内しているかを明らかにするため、日常診療でがん患者の診察を行っている200床以上の施設に勤務する会員医師501人(呼吸器科、消化器科、外科、乳腺外科、血液内科、泌尿器科、腫瘍科)に対し、「医師のがん患者への情報提供方法」に関するアンケートを実施。患者への情報提供資料やその情報源、および活用理由について調査した。

告知時の相談内容と使用媒体

 まず、回答者の「勤務先施設の区分」(Q1)について、「地域がん診療連携拠点病院」所属の医師が最も多く、「都道府県がん診療連携拠点病院」「いずれも該当しない」と続いた。また、年代別では30~50代が多く、30~40代では「都道府県がん診療連携拠点病院」、その他の年代では「地域がん診療連携拠点病院」に所属する医師の割合が高かった。

 「患者や家族への告知時、またはその後の診察で受けることが多い質問・相談」(Q2)については、「病気に関する情報」「病期と治療の選択肢」「予後・余命」が上位を占め、次いで「副作用や対処法」「検査・診断方法」となった。これらは施設区分による大きな差異はみられなかった。なお、前述のディスカッション・ペーパーにおいても、患者側が「十分な情報があった」と回答した項目とほぼ一致しており、患者自身の検索行動だけでなく、医師からの情報提供が一定の影響を与えている可能性が示唆される。

 これらの相談に対し「利用する媒体やツール」(Q3)を尋ねたところ、「製薬企業が作成している患者向け資料説明」「自施設で作成している患者向け説明資料」「各学会発行のガイドライン(患者向け含む)」の利用率が高かった。一方で、回答者の約1/3が「手書きの図やメモ」を用いた説明を行っていると回答し、Web媒体系資料の活用頻度は総じて低い傾向にあった。診療科別では、血液内科において製薬企業作成資料の利用が突出しているほか、外科ではガイドラインの利用率が高いという特徴がみられた。

 なお、Q3で「患者向けWeb媒体の資料」と回答した医師が利用するサイト(Q4)については、国立がん研究センターの「がん情報サービス」が最多であり、厚生労働省のホームページ、がん関連学会のサイトがそれに続いた。

患者の情報収集への意識、医師による「相談支援センター」の活用実態

 「病態や治療内容を調べる方法について患者から尋ねられた経験」(Q5)については、全体の60%が「ある」と回答しており、患者側から能動的に調べ方を問うケースは、やはり一定数存在することが伺える。

 一方、無料・匿名で利用できる「がん相談支援センターの認知と活用」(Q6)については、ギャップが生じる結果となった。半数以上の医師が存在を認知しているものの、実際に自ら活用を促したことがある医師は2割弱にとどまった。この傾向は診療科や年代によってばらつきがみられ、とくに若年発症が多くサバイバー層も厚い血液内科において、医師からの利用勧奨が少ない結果となっている。これについては、医師による直接の勧奨ではなく、院内の医療連携を通じて看護師やメディカルソーシャルワーカーらが役割を担っている背景も推測される。また年代別では、20〜30代の若手医師の間で認知が浸透している一方、40代以降ではやや認知度が下がる傾向が確認された。

 今回の調査では、このほかに自由記入として「患者への説明時に不安を感じること」「説明時に困っていること」「説明時に意識していること」についても回答を得ている。臨床現場におけるコミュニケーションの標準化やリソースの最適化に向け、示唆に富む具体的な声が集まったため、詳細はぜひアンケート結果のデータを参照されたい。

アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。

がん患者への情報提供方法

(ケアネット 土井 舞子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

がん対策研究紹介サイト:正しいがん情報の提供

がん情報の均てん化を目指す会:ディスカッション・ペーパー_がん情報の均てん化に向けて~がん患者がオンライン上でがん情報を入手・活用する際の課題と提言~

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転移TN乳がんに対するSG、大規模リアルワールドの成績/ESMO Open

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 転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)に対するサシツズマブ ゴビテカン(SG)のリアルワールドにおける有効性および安全性に関するエビデンスは限られている。今回、イタリア・Istituto Nazionale Tumori, IRCCS Fondazione G. PascaleのRoberta Caputo氏らは、mTNBC患者を対象としたSG治療のリアルワールドコホートとしては欧州では最大規模、世界でも2番目に大きい規模の多施設共同研究を実施した。その結果、SGはmTNBC患者において持続的な臨床的効果と管理可能な毒性を示し、有害事象の最適な管理の重要性が示唆された。ESMO Open誌2026年7月号に掲載。

 本解析の対象は、イタリアの17の腫瘍センターでSG治療を受けたmTNBC女性256例で、217例は後ろ向きに特定され、39例は前向きに登録された。効果と安全性は、RECIST v1.1およびNCI-CTCAE v5.0に従って評価された。

 主な結果は以下のとおり。

・患者の年齢中央値は54歳(範囲:26~80歳)であり、70.7%が初回診断時にTNBCと診断されていた。転移の診断からSG開始までの期間の中央値は16ヵ月(範囲:0~115ヵ月)で、治療ライン数の中央値は2ライン(範囲:0~7ライン)であった。転移部位は多い順にリンパ節(60.9%)、骨(43.0%)、肺(42.6%)、肝臓(33.2%)、脳(26.2%)であった。
・全体として、37.5%が完全奏効または部分奏効を達成し、27.7%が安定、31.2%が進行を認めた。追跡期間中央値17.4ヵ月時点で、202例に病勢進行が認められ、139例が死亡した。
・無増悪生存期間中央値は6.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.3~7.3)、全生存期間中央値は13.6ヵ月(95%CI:11.5~15.5)であった。
・主な治療関連有害事象は、脱毛(69.1%)、好中球減少症(57.0%)、悪心(49.6%)、貧血(46.9%)、下痢(36.7%)であった。好中球減少症はGrade3が18.0%、Grade4が5.9%に認められた。減量が36.5%、治療中止が2.7%にみられた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Caputo R, et al. ESMO Open. 2026;11:108251.

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早期HR+/HER2-乳がん、術後アベマシクリブ初回用量漸増後24週時点での忍容性(TRADE)/ESMO Open

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 高リスクの早期ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)乳がんにおけるアベマシクリブ術後療法は再発率を低下させ、全生存期間を改善するが、毒性、とくに下痢で減量や早期の中止をせざるをえない場合がある。TRADE試験においてはすでに、アベマシクリブの早期用量漸増により12週までに目標用量である1日2回150mgに到達し、維持できることが報告されている。今回、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのIlana Schlam氏らが本試験の24週時点での臨床アウトカムに関する解析結果について、ESMO Open誌2026年7月6日号で報告した。

 TRADE試験は、アベマシクリブ術後療法の適応となる早期リンパ節転移陽性HR+/HER2-乳がんを対象とした医師主導の前向き単群第II相試験である。アベマシクリブを50mg1日2回で2週間投与後、100mg1日2回で2週間投与し、その後、計画された2年間にわたり150mg1日2回に増量した。主要評価項目は、12週時点での複合エンドポイント(あらゆる理由によるアベマシクリブの投与中止率および/または目標標準用量である150mg1日2回投与に到達または維持できなかった割合)で、今回は24週時点での主要評価項目を報告。

 主な結果は以下のとおり。

・評価可能な89例中、治療開始24週時点で16例(18.0%)がアベマシクリブの投与を中止しており、うち7例(7.9%)が有害事象により中止した。
・24週時点でアベマシクリブの投与を継続していた73例(82.0%)のうち、47例(64.4%)が150mg1日2回、18例(24.7%)が100mg1日2回、8例(11.0%)が50mg1日2回の投与を受けていた。
・89例中29例(32.6%)が少なくとも1回のアベマシクリブの減量が必要であり、そのうち22例(24.7%)は当初150mg1日2回の用量に達した後、減量された。
・患者報告アウトカムによると、治療開始時から5ヵ月目まで、QOLに臨床的に有意な変化は認められなかった。

 著者らは「24週の追跡調査における結果は、術後療法としてのアベマシクリブ開始時の早期用量漸増戦略が治療継続率および忍容性を最適化するうえで有用であることを引き続き示している。計画された2年間の治療期間にわたる治療アウトカムを評価するため、追跡調査を継続する」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Schlam I, et al. ESMO Open. 2026;11:108247.

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タモキシフェン治療中の乳がん患者のホットフラッシュ、ベンラファキシンが有望(HOFLA-V試験)/日本乳癌学会

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 内分泌療法治療中の乳がん患者において、発汗や動悸を伴う血管運動症状である「ホットフラッシュ」は、患者の約50~80%と高頻度に発生する。とくに閉経前患者や、LH-RHアゴニスト併用症例においては、その頻度や重症度が高い。更年期障害に伴うホットフラッシュに対しては、ホルモン補充療法が第一選択となるが、乳がん患者においては再発リスクを増加させる懸念があるため推奨されていない。非ホルモン療法の中では、抗うつ薬ベンラファキシン、抗けいれん薬ガバペンチンについて、NCCNガイドラインでは「preferred」とされ推奨度が高いが、日本人乳がん患者、とくに閉経前患者におけるエビデンスは不足している。こうした背景を踏まえ、日本人乳がん患者における内分泌療法中のホットフラッシュに対するベンラファキシンの有効性および安全性を検討した単施設前向き単群非盲検パイロット試験「HOFLA-V試験」が実施され、結果を筑波大学附属病院の佐藤 璃子氏が第34回日本乳癌学会学術総会で発表した。

<HOFLA-V試験>
・対象:18歳以上60歳以下、StageI~IIIC期の原発性乳がん患者。術後療法としてタモキシフェンを内服しており(LH-RHアゴニスト併用有無は問わない)、週に14回以上のホットフラッシュを認めるECOG PS 0~1の患者(大うつ病もしくはうつ病と診断されている患者、甲状腺疾患治療中の患者、重度の肝機能障害を有する患者、およびSSRI・SNRI・強力または中程度のCYP2D6阻害薬・CYP3A阻害薬およびCYP3A誘導薬・ガバペンチノイド・MAO阻害薬を使用している患者は除外)。
・試験群:ベンラファキシン37.5mg/日を4週間投与。投与2週目の診察時に効果不十分かつ患者自身が希望した場合に限り、75mg/日への増量を可能とした。
・評価項目:
[主要評価項目]投与開始4週目における投与前からの「ホットフラッシュスコア」変化率(患者が毎日記録する日誌に基づき、日々の症状を軽度[1点]~非常に重度[4点]の4段階で評価し、それぞれの発生回数を乗じた合計値を1日のスコアとした)
[副次評価項目]安全性(CTCAE v5.0を用い、投与2週目および4週目に評価)など

 主な結果は以下のとおり。

・2022年11月~2024年6月に20例が登録された。安全性解析集団は20例全例とし、主要解析集団については、Grade1の有害事象(めまいなど)により投与1週目で中止を希望した2例、および後日不適格が判明した1例を除く17例とした。
・主要解析集団17例のベースライン特性は、平均年齢45.5歳、全例がECOG PS 0および閉経前であった。治療法については、LH-RHアゴニスト+タモキシフェン併用が11例(65%)、LH-RHアゴニスト+タモキシフェン+アベマシクリブ併用が2例(12%)、タモキシフェン単独が4例(24%)であり、LH-RHアゴニスト併用例が全体の約76%を占めた。
・主要評価項目である投与4週目におけるホットフラッシュスコアの変化率は、平均で49.8%の減少(改善)を示した。個別の症例をみると、17例中16例でスコアの減少が認められた。
・ホットフラッシュスコア実測値の推移をみると、ベースライン時の中央値79(範囲:49~125)から、投与4週目には中央値33(範囲:11~75)へと有意に低下した。この改善効果は投与1週目から速やかに発現し、各評価ポイント(1~4週目)のすべてにおいてベースラインと比較して有意な改善(すべてp<0.001)が維持されていた。
・安全性に関して、認められた有害事象はすべてGrade1または2にとどまり、Grade3以上の有害事象は発生しなかった。全Gradeで報告された主な有害事象は、頭痛(35.0%)、悪心(35.0%)、不眠症(25.0%)、口内乾燥(20.0%)、浮動性めまい(20.0%)などであった。
・内服完遂率および継続状況について、主要解析対象の17例は全例が全4週間の内服を完遂し、服薬遵守率は96.4%であった。2週目の時点で75mg/日への増量を希望したのは5例(29.4%)であった。試験終了時および3ヵ月後において、15例(88%)がベンラファキシンの継続投与を希望した。

 佐藤氏は、単施設・単群のパイロット試験であることを研究の限界として挙げたうえで、ベンラファキシン投与によるホットフラッシュの約50%の改善効果は、これまでに海外で報告されている40~60%程度の改善率とおおむね一致していると説明した。特筆すべき点として、投与1週目という早期から症状緩和が得られること、そして、既存データが乏しかった「閉経前かつLH-RHアゴニスト併用例」を多く含む日本人集団において改善効果が示されたことを挙げ、非ホルモン療法の選択肢となりうるとした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


HOFLA-V試験(jRCT)

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転移・再発乳がんへのパルボシクリブ、1次治療vs.2次治療~日本人大規模RWデータで検証

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 HR+/HER2-転移・再発乳がん患者において、1次治療として内分泌療法とCDK4/6阻害薬の併用療法が推奨されている。一方で、1次治療の期間は長期にわたるため、CDK4/6阻害薬特有の有害事象や経済毒性は無視できない課題となっている。CDK4/6阻害薬の1次治療使用群と2次治療使用群を比較した第III相無作為化比較試験(SONIA試験)では、2次治療での使用の妥当性が示された。東京医科大学の石川 孝氏らは、パルボシクリブ治療に関する日本における大規模多施設共同前向き観察研究を実施。その結果、SONIA試験の知見をリアルワールドデータで支持する結果が得られ、パルボシクリブを2次治療で導入する治療戦略の妥当性が示された。Breast Cancer Research誌オンライン版2026年5月29日号掲載の報告。

 本研究では、1次、2次、または3次治療としてパルボシクリブを使用する閉経後HR+/HER2-転移・再発乳がん患者を対象に、その有効性と安全性を検証した。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS:パルボシクリブ投与開始から疾患進行または死亡まで)、副次評価項目は、PFS2(1次治療群ではパルボシクリブ投与開始から次治療で病勢進行が認められるまで、2次治療群では前治療のホルモン療法開始からパルボシクリブ投与後病勢進行が認められるまで)および有害事象などであった。

 主な結果は以下のとおり。

・2019年4月~2023年1月に593例(1次治療群246例、2次治療群282例、3次治療群65例)が組み入れられた。
・年齢中央値は1次治療群、2次治療群、3次治療群でそれぞれ68歳、66歳、68歳であった。術前または術後化学療法はそれぞれ25.6%、55.0%、46.2%で実施されていた。内臓転移を有する患者はそれぞれ38.3%、58.9%、58.1%、骨病変のみを有する患者は1.7%、8.1%、4.7%であった。
・PFS中央値は1次治療群、2次治療群、3次治療群でそれぞれ25.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:21.4~未到達)、18.0ヵ月(95%CI:14.0~22.7)、および12.0ヵ月(95%CI:7.7~17.4)であった。
・PFS2中央値は1次治療群、2次治療群でそれぞれ36.9ヵ月(95%CI:27.7~未到達)および57.9ヵ月(95%CI:43.4~65.3)であった。
・2次治療群のPFS2中央値が1次治療群を大きく上回った要因として、2次治療群では内分泌療法単独で治療開始後、急速な病勢進行のため化学療法が選択されるなどの理由で、パルボシクリブ療法に移行できなかった症例が除外されているためと考えられた。そのため、SONIA試験のデータを参考に、そのような症例を補正した感度解析を実施した結果、1次治療群と2次治療群のPFS2は近似した。
・Grade3以上の好中球減少症が70%で発現し、80%超でパルボシクリブ減量が行われていた。

 現在、副次評価項目の1つである全生存期間(OS)の追跡調査が行われており、患者報告アウトカム(PRO)の解析結果と合わせて、今後報告される予定となっている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Ishikawa T, et al. Breast Cancer Res. 2026 May 29. [Epub ahead of print]

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日本におけるがん薬剤費は10年で3倍に、総医療費最大は肺がん

提供元:CareNet.com

 日本の全国レセプトデータベース(NDB)を用いて、2011~22年にがん診療を受けた約2,320万人を対象とした大規模解析が実施された。その結果、がん診療に伴う医療費は日本の経済成長率を大きく上回るペースで増加しており、とくに免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を中心とする新規抗がん薬が医療費増加の主要因であることが明らかになった。京都大学の福山 啓太氏らによる研究はScientific Reports誌オンライン版2026年6月15日号に掲載された。

 本後ろ向きコホート研究では、2011年4月~2022年3月に悪性腫瘍と診断された患者をがん種別に分類し、月ごとの保険請求額と適用薬剤を分析した。対象は悪性腫瘍患者約2,320万人(男性:約1,203万人、女性:約1,118万人)で、95%以上の電子レセプトを網羅する全国データを利用し、がん種別、年齢別、薬剤別に医療費を評価した。また、薬価改定を反映した独自のマスターデータを構築し、薬剤価格の経年変化も考慮した。

 主な結果は以下のとおり。

・患者数では乳がんが最多で、胃がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんが続いた。
・総医療費が最も高額だったのは肺がんだった。肺がんの患者数は減少傾向にあるにもかかわらず、診療費は解析期間を通じて増加を続け、2022年には全がん種で最大となった。一方、患者1人当たりの月額医療費では多発性骨髄腫が最も高く、2022年3月時点で約40万9,000円に達した。
・研究期間中、がん患者の月当たり人数は612万人から544万人へ約68万人減少したにもかかわらず月額総請求額は5,590億円から7,100億円へ約1,510億円増加しており、1人当たり医療費の増加が認められた。
・薬剤費の解析では、ICIの増加が際立った。肺がんではPD-1/PD-L1阻害薬が急速に普及し、分子標的薬やVEGF阻害薬とともに薬剤費増加の主因となっていた。乳がんではHER2標的薬やCDK4/6阻害薬、胃がんではPD-1/PD-L1阻害薬およびVEGF阻害薬、前立腺がんでは新規ホルモン療法薬の使用増加が確認された。
・抗がん薬全体の薬剤費は、2011年の月347億円から2022年には1,090億円へと約3.1倍に増加した。なかでもICI関連薬剤は薬価改定により一部価格が引き下げられたものの、新規適応拡大や使用患者数の増加により、総薬剤費は増加を続けた。

 同期間における日本の実質GDPは約8.5%の増加にとどまった。これに対し、がん診療費は約1.27倍、抗がん薬剤費は約3.1倍に増加しており、研究者らは「がん診療費の伸びは経済成長を大きく上回っている」と指摘する。一方で研究者らは、「本研究は高額薬剤の使用抑制を提案するものではない。ICIや分子標的薬は臨床試験で有効性が示され、患者予後の改善に大きく寄与している。しかし、公的保険制度の持続可能性を考えると、個々の薬剤の増分費用効果比(ICER)のみでは十分とは言えず、国家経済や医療財政全体を踏まえた新たな評価指標の構築が必要だ」としている。さらに、がん検診による早期発見やワクチンによる予防は、高額な薬物療法を回避できる可能性があり、医療経済の観点からも重要な介入となる可能性が示唆された。

(ケアネット 杉崎 真名)


【原著論文はこちら】

Fukuyama K, et al. Sci Rep. 2026 Jun 15. [Epub ahead of print]

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