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日本人女性における乳がん罹患率は40歳以降に著しく増加する。マンモグラフィは死亡率の低下が証明されている唯一の乳がん検診の方法だが、高濃度乳房の女性では、病変が乳腺に隠れマンモグラフィの感度が低下するとされ、40~49歳の日本人女性の約60~70%が高濃度乳房組織を有するという。一方、補助的超音波検査は高濃度乳房でも病変を描出する可能性があり、検診の感度とがん検出率を向上させることが示されている。東北大学大学院の原田 成美氏らJ-START investigatorsは「J-START試験」において、マンモグラフィ単独と比較してマンモグラフィ+乳房超音波検査の併用による検診が、40~49歳の日本人女性における進行乳がんの累積罹患率を低下させることを示した。研究の成果は、Lancet誌2026年2月21日号に掲載された。
7万2,000例超の女性で超音波併用検診vs.マンモ単独、累積罹患率を評価
J-START試験は、日本の42施設で実施した無作為化対照比較試験であり、2007年8月~2011年3月に、年齢40~49歳で、過去5年間に乳がんの既往がなく、5年以上の余命が期待でき、症状がみられない女性7万2,661例(平均年齢44.0歳、閉経前75.6%)を登録した(厚生労働省および日本医療研究開発機構の助成を受けた)。
被験者を、マンモグラフィ+乳房超音波検査の併用による検診を受ける群(介入群:3万6,723例)、またはマンモグラフィ単独による検診を受ける群(対照群:3万5,938例)に無作為化した。これらの参加者は、初回検診から2年後に2回目の検診を受けるよう要請された。
今回の事前に規定された2回目の解析では、データカットオフ日(2024年10月4日)の時点における、進行乳がん(TNM分類のステージ2以上[リンパ節転移陽性、T2以上、またはこれら両方])の累積罹患率を評価した。ステージ0または1は早期がんと定義した。
進行乳がん罹患率、4年目ごろから有意な差
追跡期間中央値は、介入群で11.4年(範囲:0.0~16.1、四分位範囲[IQR]:9.3~12.9)、対照群で11.3年(0.0~16.1、8.9~12.9)であった。
初回検診からデータカットオフ日までに、介入群の894例で乳がんが検出され、このうち234例(26.2%)が進行乳がんであった。同様に、対照群の843例で乳がんが検出され、277例(32.9%)が進行乳がんだった。進行乳がんの累積罹患率は、対照群に比べ介入群で有意に低かった(ハザード比[HR]:0.83、95.6%信頼区間[CI]:0.70~0.98、p=0.026)。
Kaplan-Meier曲線を用いた解析では、進行乳がん罹患率の両群間の有意差は、初回検診後4年目(48ヵ月)ごろに現れ、8年目(96ヵ月)まで差の拡大が続き、それ以降はほぼ一定であった。
また、進行乳がんの10年累積罹患率は、介入群で0.64%(95%CI:0.56~0.73、イベント発生数:246件)、対照群で0.79%(0.69~0.89、286)だった。
乳がん全体では差がない
介入群では646/894例(72.3%)が早期乳がんであったのに対し、対照群では551/843例(65.4%)が早期乳がんと診断された。
1回目と2回目の検診の間に診断された中間期乳がんは、介入群で36例に認め、このうち19例(52.7%)が早期乳がんであった。対照群では、中間期乳がんの49例中32例(65.4%)が早期乳がんだった。
また、追跡期間中に、介入群で297例、対照群で280例の死亡が確認され、このうち各群21例ずつが乳がんによる死亡であった。
乳がん全体の累積罹患率については両群間に差を認めなかった(HR:1.02、95%CI:0.93~1.13)。介入群における乳がん全体の5年間累積罹患率は1.33%(95%CI:1.21~1.46、イベント発生数902件)、対照群では1.20%(1.09~1.33、848件)であった。
検診への超音波検査導入の価値を強調する知見
著者は、「初回検診後49~96ヵ月における介入群での進行がんの減少は、2年間隔の補助的超音波検査が、将来進行がん化する症例を検出したことを示唆する可能性がある」「これらの知見は、とくにアジア人集団において、高濃度乳房組織を有する女性の検診プログラムへの補助的超音波検査導入の潜在的価値を強調するものであり、将来の乳がん検診ガイドラインの策定に資する可能性がある」としている。
また、「がん検診の試験では死亡率低下の検証が重要となるが、本研究の知見は進行乳がん罹患率を死亡率の潜在的な代替指標として使用する一助となりうる。補助的超音波検査が乳がん死亡率を低下させるか否かを確認するには、継続的な追跡調査が必要である」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)
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