がん薬物療法における皮下注射剤の可能性/日本臨床腫瘍学会

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 近年、がん薬物療法領域での皮下注射剤の活用が広がっている。2026年度診療報酬改定では外来腫瘍化学療法診療料への皮下注製剤の算定も認められる見通しとなった。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)では、腫瘍内科医、薬剤師、緩和ケア医、看護師、制度申請者の立場から、皮下注射の現状と課題が多角的に論じられた。

がん治療の時間毒性を改善できる皮下注射

 大阪大学の吉波 哲大氏は、腫瘍内科医の立場からがん薬物療法における「時間毒性」の概念を提示した。がん薬物療法においては、骨髄抑制や悪心などの薬剤毒性に加え、近年は経済毒性が注目されている。もう1つの側面として、吉波氏は時間毒性の重要性を訴える。

 時間毒性は経済毒性とも無関係ではない。たとえば、通院により仕事を休むことで、給与に影響が出る。このように、時間毒性は深刻化すると経済毒性につながる。「医療者は時間毒性に対する取り組みを強く認識しなければならない」と吉波氏は説明した。

 吉波氏が専門とする乳がん領域でも皮下注射は活用されている。HER2陽性乳がんでは、トラスツズマブとペルツズマブの併用療法が用いられるが、近年トラスツズマブとペルツズマブの配合皮下注製剤(商品名:フェスゴ)が登場した。フェスゴは2剤併用と同等の血中濃度と有効性を示す。投与時間に関しては、従来の2剤投与の90分超に対し、フェスゴでは最短5分と、1時間以上短縮ができる。患者に2剤投与とフェスゴ投与のどちらを選ぶかを聞いたところ、85%がフェスゴと回答している。その理由の多くは「診療における所要時間の短さ」であった。

 皮下注製剤について吉波氏は「がん治療の時間毒性を軽減する可能性を十分に秘めている」と結論付ける。

製剤技術の進化が皮下注射の可能性を広げる

 小牧市民病院の山本 泰大氏は、薬剤師の観点から皮下注製剤の特性と今後の展開を論じた。従来、皮下投与可能な薬液量は2mLが目安とされてきたが、ヒアルロン酸を配合することで皮下組織にスペースが確保される。そのため、薬液量が増えても投与が可能になった。同院では現時点で外来化学療法患者の約20%が皮下注射を受けている。「今後もさらに増えていくであろう」と山本氏は述べた。

 国内で承認されている皮下注射抗がん剤として、前述のフェスゴに加えてダラツズマブ、アミバンタマブ、モスネツズマブなどがある。海外でもいくつかの薬剤で臨床試験が進んでいるという。

 「皮下注射抗がん剤は、今後もさらに広がっていくことが予想され、医療コストや患者負担軽減につながることは間違いない。これからは臨床現場での運用や副作用のエビデンスを蓄積していくべき」と山本氏は述べる。

緩和ケア領域における皮下注射のメリット

 広島市立広島市民病院の余宮 きのみ氏は、緩和ケアにおける皮下注射の臨床的意義を紹介した。緩和ケア領域において持続皮下注はその簡便性と安全性から世界的に普及している。日本緩和医療学会の「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)」でも、経口困難な患者に対するオピオイドの持続皮下注が推奨される。

 緩和ケアにおける皮下注射の利点として余宮氏は、ルート確保の容易さ、シリンジポンプを小さくできる可能性、経口剤に比べた鎮痛達成の早さといった点などを挙げた。

 「皮下注射は緩和領域においても重要な選択肢になるであろう」と余宮氏は述べる。

安全な皮下注射投与のために

 国立がん研究センター東病院の市川 智里氏は、看護師の立場から発言。皮下注射は簡便ではあるものの必ずしも安全というわけではないと指摘した。抗体薬、G-CSF製剤、ホルモン薬と多岐にわたる薬剤が皮下注射として使用されており、薬剤ごとの特性と注意事項を把握しておくことの重要性を強調する。

 具体的には、6R(Right Patients・Right Drug・Right Dose・Right Time・Right Route・Right Purpose)と全身状態評価の徹底を挙げた。投与部位、硬結・疼痛予防、放射線照射部位・瘢痕部位の回避といった基本を押さえるとともに、皮下脂肪層が薄い高齢者や低栄養患者に対する工夫も重要だという。

 同院では薬剤別の早見表(投与間隔、使用針ゲージ、投与部位、投与前チェック項目など)を化学療法室に掲示し、スタッフが入れ替わっても一定の質を保てるよう工夫している。市川氏はまた、「投与観察時間を患者とのコミュニケーション機会として活用し、副作用や生活上の意見を聞き取ることで治療継続を支援していきたい」と話す。

外来腫瘍化学療法診療料への皮下注射の算定

 国立がん研究センター中央病院の下井 辰徳氏は、2026年度診療報酬改定における「外来腫瘍化学療法診療料」への皮下注射剤算定について解説した。従来、点滴・静注は外来腫瘍化学療法診療料として算定されるが、皮下注製剤は算定対象外とされていた。

 算定対象外であるため、医療機関は皮下注射を積極的に選択しにくいのが現状だ。フェスゴを例にとると、外来腫瘍化学療法診療料が算定できないという理由で、4割以上の患者で使用されていないという。

 こうした状況を受け、日本臨床腫瘍学会をはじめとする団体が合同で医療技術評価分科会に要望を提出した。要望で示したのは、皮下注も点滴と同様に専門的なケアと安全管理を伴う医療行為であること、算定されない現状が患者の時間毒性軽減という利益を阻害していること、財政影響が限定的であるといった点である。

 中医協での審議の結果、点数は点滴・静注よりも少ないが、2026年6月から皮下注製剤に対しても算定が認められる見通しだ。「次回診療報酬改定までの2年間で、算定の活用状況、点数設計などが検討されていくと予想される」と下井氏は述べる。

(ケアネット 細田 雅之)


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ツカチニブ、化学療法歴のあるHER2+手術不能/再発乳がんの適応で発売/ファイザー

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 ファイザーは2026年4月21日、「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌」の治療薬として、抗悪性腫瘍薬/HER2チロシンキナーゼ阻害薬ツカチニブ(商品名:ツカイザ)を発売した。本剤は2020年4月に米国食品医薬品局(FDA)、2021年2月に欧州医薬品庁(EMA)からすでに承認を取得している。

 本剤の製造販売承認は、海外第II相試験のHER2CLIMB試験および日本を中心とした国際共同第II相HER2CLIMB-03試験の結果に基づく。HER2CLIMB試験は、トラスツズマブ、ペルツズマブおよびトラスツズマブ エムタンシンの治療歴のある切除不能な局所進行または転移・再発乳がん患者を対象として、トラスツズマブおよびカペシタビンとの併用で、ツカチニブまたはプラセボを投与する二重盲検試験。ツカチニブ群はプラセボ群と比較して、主要評価項目である盲検下独立中央判定の評価に基づく無増悪生存期間、重要な副次評価項目である全生存期間、脳転移を有する患者集団における無増悪生存期間および奏効率を統計学的に有意に改善した。ツカチニブ群で認められた主な有害事象は、下痢、手掌・足底発赤知覚不全症候群、悪心、嘔吐、口内炎、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加、関節痛および血中クレアチニン増加であり、管理可能な安全性プロファイルであると判断された。

 HER2CLIMB-03試験では、HER2CLIMB試験と同様の患者集団において、ツカチニブ、トラスツズマブならびにカペシタビンの併用を単群で評価。全体および日本人部分集団において、HER2CLIMB試験と類似した有効性と安全性の結果が得られた。

【製品概要】
商品名:ツカイザ錠50mg、同150mg
一般名:ツカチニブ エタノール付加物
効能又は効果:化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌
用法及び用量:トラスツズマブ(遺伝子組換え)及びカペシタビンとの併用において、通常、成人にはツカチニブとして1回300mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
製造販売承認取得日:2026年2月19日
薬価収載日:2026年4月8日
発売年月日:2026年4月21日
製造販売元:ファイザー株式会社

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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乳がんサバイバー、個々に合わせた運動で10年死亡率が低下

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 乳がんサバイバーにおいて、個々の患者に合わせた運動がガイドラインで推奨されているが、長期的な死亡率への影響に関するデータは限られている。今回、米国・Kaiser Permanente Northern Californiaの研究グループがPathways Studyのデータを用いて検討したところ、個別に調整された運動戦略が乳がんサバイバーの10年全死亡率および乳がん死亡率を有意に低下させることが示唆された。米国国立衛生研究所のJinani Jayasekera氏らがJAMA Network Open誌2026年4月1日号で発表した。

 本研究は、2006~13年に登録された乳がんサバイバーを対象としたコホート研究である。既存の臨床試験を模倣するTarget Trial Emulationを用いて、個々の健康状態の変化に応じて運動内容を調整する戦略の効果を分析した。評価項目は、全死亡率および乳がん死亡率とした。

 主な結果は以下のとおり。

・1つ目の標的試験(959例)において、有酸素運動戦略が健康教育介入と比較して8年全死亡率が8.0パーセントポイント(95%信頼区間[CI]:3.4~13.3)低下した。
・2つ目の標的試験(2,107例)において、中等度の有酸素運動を週120分、または激しい有酸素運動を週60分まで段階的に増やす個別化戦略が、介入なしと比較して10年全死亡率が3.1パーセントポイント(95%CI:2.0〜4.6)有意に低下した。乳がん死亡率も2.4パーセントポイント(同:1.2〜3.5)低下した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Jayasekera J, et al. JAMA Netw Open. 2026;9:e265177.

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高齢者のがん薬物療法GLの改訂ポイント【乳腺】/日本臨床腫瘍学会

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 『高齢者のがん薬物療法ガイドライン 改訂第2版』が2026年3月25日に発刊され、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)のシンポジウムで全17項目のクリニカルクエスチョン(CQ)が解説された。乳腺領域からは、HER2陽性(CQ12)、トリプルネガティブ(CQ13)、ホルモン受容体陽性HER2陰性(CQ14)の高齢者の周術期乳がんの薬物療法に関する計3つのCQが設定された。

CQ12 高齢者HER2陽性乳がん周術期治療には、どのような治療が推奨されるか?
 HER2陽性乳がん術後の標準治療は、化学療法と抗HER2モノクローナル抗体トラスツズマブの併用療法である。しかし、高齢者では治療利益と化学療法やトラスツズマブの忍容性のバランスが問題となるため、化学療法とトラスツズマブの併用、化学療法のみ、トラスツズマブのみ、経過観察など治療選択が割れやすい。本CQでは、高齢者HER2陽性乳がん患者の周術期治療の実臨床における個別化治療と意思決定を支えるため、(1)トラスツズマブ+化学療法、(2)トラスツズマブ単剤、(3)トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法の3つに分けて評価を行った。

(1)トラスツズマブ+化学療法
推奨:高齢者HER2陽性乳がん周術期治療には、トラスツズマブ+化学療法を強く推奨する。
推奨のタイプ:当該介入の強い推奨
エビデンスの強さ:A
 4件のランダム化比較試験(RCT)(HERA、BCIRG006、NSABP B-31/N9831統合解析)で、トラスツズマブ+化学療法群は化学療法単独群に比べ、全生存期間(OS)および無病生存期間(DFS)が改善した。これらは高齢者のみを対象とした試験ではないが、60歳以上のサブグループにおいても良好であり、高齢者でも治療利益は大きいと考えられた。トラスツズマブの併用により心不全や心機能低下が有意に増加したが、その多くは可逆的であった。OS・DFSの延長について、トラスツズマブ+化学療法の益は大きく一貫していることから、化学療法単独よりも優れていると評価された。

(2)トラスツズマブ単剤
推奨:化学療法の忍容性がない場合には、トラスツズマブ単剤が選択肢となりうる。
推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨
エビデンスの強さ:B
 わが国で行われた70歳以上の高齢者HER2陽性乳がん患者を対象としたRCT(RESPECT)において、トラスツズマブ単剤群は化学療法併用群と比べ、OS・DFSの非劣性は統計学的に示されなかった。トラスツズマブ単剤群では治療開始12ヵ月においてQOL低下が少なかった。Grade3以上の有害事象は化学療法併用群において有意に多く生じていた。1件のRCTに限られるが日本人高齢者を対象として直接性が高く、結果に対する不確実性は少ないと評価された。

(3)トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法
推奨:再発リスクが高く、全身状態良好で化学療法に十分耐えうる状況に限り、トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法が選択肢となりうる。
推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨
エビデンスの強さ:C
 1件のRCT(APHINITY)において、トラスツズマブ+ペルツズマブ+化学療法群はトラスツズマブ+化学療法群と比べてOSの有意差は認められなかった一方、ペルツズマブ追加により無浸潤疾患生存期間(iDFS)は有意に改善し、とくにリンパ節転移陽性例ではハザード比0.72と良好な上乗せ効果が示された。Grade3以上の有害事象はペルツズマブ追加により6%増加した。下痢によるQOL低下もみられたが、永続的な有害事象ではなかった。1件のRCTに限られ、高齢者に特化した試験ではないが、ペルツズマブによる予後改善が期待でき、かつ十分な忍容性があると判断される患者では検討しうると評価された。

CQ13 高齢者の周術期トリプルネガティブ乳がんに対して、免疫チェックポイント阻害薬の使用は推奨されるか?
推奨:周術期トリプルネガティブ高齢者乳がんに対して、免疫チェックポイント阻害薬の併用を弱く推奨する。
推奨のタイプ:当該介入の条件付きの推奨
エビデンスの強さ:C
 トリプルネガティブ乳がんの周術期標準治療は化学療法であるが、近年では再発高リスク症例に対して免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を併用したレジメンも推奨されている。高齢者では、治療効果と有害事象のバランスが重視されるため、ICIの使用推奨を検討することは臨床的に重要である。そこで本CQでは、高齢者トリプルネガティブ乳がんで、ICIを含む薬物治療を実施した群(介入群)とICIを含まない薬物治療または経過観察の群(対照群)のアウトカムを評価した。OS・DFSを指標とした2件のRCT(KEYNOTE-522、IMpassion031)および関連サブ解析において、OSには有意差を認めなかったが(文献検索期間終了後にOS改善の報告あり)、DFSはKEYNOTE-522では介入群で有意な延長を認め、IMpassion031でも延長傾向が示された。Grade3以上の有害事象の頻度に差はなかった。免疫関連有害事象(irAE)は介入群で増加したが、AE of special interestの定義が異なったため、評価には限界があった。ICI併用による持続的なQOL低下は認めなかった。根拠となる試験には全身状態が良好な高齢者が一部含まれるのみで、高齢者におけるエビデンスは十分ではないと評価された。

CQ14 ホルモン受容体陽性HER2陰性高齢者乳がんの術後内分泌療法にアベマシクリブやS-1の併用は推奨されるか?
 ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がん術後の標準治療は内分泌療法であるが、再発リスクが高い場合は追加治療が検討される。近年では内分泌療法にアベマシクリブやS-1を併用する新たな治療戦略が登場している。これらの薬剤は作用機序ならびに治療効果、有害事象のプロファイルが異なることから、本CQでは(1)内分泌療法+アベマシクリブ、(2)内分泌療法+S-1に分けて、それぞれを内分泌療法単独と比較した。

(1)アベマシクリブ
推奨:ホルモン受容体陽性HER2陰性高齢者乳がんの術後内分泌療法として、再発リスクが高く治療に耐えうる状況に限り、アベマシクリブが選択肢となりうる。
推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨
エビデンスの強さ:C
 1件のRCT(monarchE)において、内分泌療法+アベマシクリブ群は内分泌療法のみの群と比べてOSの有意差は認められなかった(文献検索期間終了後にOS改善の報告あり)が、iDFSはアベマシクリブ追加により有意に改善した。Grade3以上の有害事象は併用群で増加した。下痢などは高齢者で問題となりやすく、休薬・減量を含めた管理を要した。本試験は高齢者に特化したものではないが、アベマシクリブ併用による再発抑制効果は示される一方、有害事象増加にも留意が必要であり、高齢者への適用は個別に判断すべきと評価された。

(2)S-1
推奨:再発高リスクホルモン受容体陽性HER2陰性高齢者乳がんの術後内分泌療法へのS-1併用は、患者の全身状態やリスク・ベネフィットを総合的に考慮したうえで行うことが望ましい。
推奨のタイプ:当該介入または比較対照のいずれかについての条件付きの推奨
エビデンスの強さ:C
 1件のRCT(POTENT)において、内分泌療法+S-1群は内分泌療法のみの群と比べてOSの有意差は認められなかったが、iDFSはS-1追加により有意に改善した。Grade3以上の有害事象は併用群で好中球減少(8%)、下痢(2%)などが報告された。1件のRCTに限られ、かつ高齢者に特化した試験ではないという限界を有するもののS-1併用による再発抑制効果は示唆されている一方、毒性増加のリスクもあることから高齢者に対する適用は個別に判断すべきと考えられた。

(ケアネット 森)


【参考文献・参考サイトはこちら】

日本臨床腫瘍学会/日本癌治療学会編. 高齢者のがん薬物療法ガイドライン改訂第2版. 南江堂;2026.

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少量〜中等量でも死亡リスクが高まるお酒の種類は?/ACC

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 過度な飲酒は健康に悪影響を及ぼすが、少量~中等量の飲酒と死亡率との関連については、飲料の種類によってリスク構造が大きく異なることがUKバイオバンクのデータを用いた大規模調査で明らかになった。本研究は米国心臓学会議(ACC2026、3月28~30日)のPoster Contributionsにおいて、中国・中南大学湘雅第二病院のZhangling Chen氏が発表し、Journal of the American College of Cardiology誌オンライン版2026年4月7日号(第87巻第13号増刊号)に掲載された。

 本研究は、アルコールの総摂取量ならびに種類別摂取量と、全死亡および原因別死亡率との関連を明らかにするため、2006〜22年にUKバイオバンクに参加した34万924人を解析。各参加者を1日および1週間あたりの純アルコール摂取量(g)に基づいて4つのカテゴリーに分類し、Cox回帰分析した。

(1)Never/Occasional(飲まない/たまに飲む)…男女共20g/週
(2)Low(少量)…男性:20g/週かつ20g/日、女性:20g/週かつ10g/日
(3)Moderate(中等量)…男性:20~40g/日、女性:10~20g/日
(4)High(多量)…男性:40g/日超、女性:20g/日超
純アルコール約14gは、ビール350mL、ワイン150mL、蒸留酒45mLに相当

 主な結果は以下のとおり。

・平均追跡期間13.4年に2万2,381例の死亡が記録された(心血管疾患[CVD]:4,288例、がん:1万1,063例、そのほか:7,030例)。
・総アルコール摂取量の多量群は飲まない/たまに飲む群と比較して全死亡が24%上昇(ハザード比[HR]:1.24、 95%信頼区間[CI]:1.17~1.31)、CVDによる死亡は14%(95%CI:1.01~1.28)、がんによる死亡は36%(同:1.26~1.47)、そのほかの原因別死亡は12%(同:1.02~1.22)高かった。
・中等量群でもがんによる死亡が11%上昇した(同:1.03~1.20)。
・アルコールの種類によるリスクの違いは、少量~中等量群で顕著で、蒸留酒、ビール、シードルの摂取が全死亡の有意な上昇と関連していた(HR:1.07〜1.83)。
・一方でワインの場合は、少量~中等量群では全死亡ならびに原因別死亡の低下と関連し(HR:0.79〜0.92)、多量群はがんによる死亡の上昇と関連していた(HR:1.10、95%CI:1.02~1.20)。
・多量群は、ビール、シードル、蒸留酒、ワインと種類を問わず、部位別がん死亡の上昇と関連していた。
*頭頸部、呼吸器、消化器、肝臓/胆嚢、神経系、血液、生殖器、女性乳がん

 研究者らは、「赤ワインに含まれるポリフェノールや抗酸化物質などの特定の化合物は、心血管の健康に良い影響を与える可能性がある。また、ワインは食事と一緒に飲まれることが多く、食生活の質が高く、全体的に健康的な生活習慣を送っている人に多く飲まれている。一方、蒸留酒、ビール、シードルは食事以外の場面で飲まれることが多く、食生活の質の低さやそのほかの生活習慣上のリスク要因と関連している」とし、「これらの要因を総合的に考え、アルコールの種類、摂取方法、そしてそれに伴う生活習慣のすべてが、観察された死亡リスクの差に寄与していることが示唆される」と述べている。

(ケアネット 土井 舞子)


【原著論文はこちら】

Li Z, et al. J Am Coll Cardiol. 2026;87:9249.

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日本の乳がん・子宮頸がん・卵巣がんの5年純生存率の推移:2000~14年(CONCORD-3)

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 日本の乳がん、子宮頸がん、卵巣がんの女性の5年純生存率は2000~14年に改善し、この期間を通じて世界的に高い水準を維持したことが世界的ながん生存率調査プログラムであるCONCORD-3の日本人データを用いた分析により示された。神奈川県立がんセンターの渡邉 要氏らがJapanese Journal of Clinical Oncology誌2026年3月号で報告した。

 本研究は、国内16の地域がん登録データから、2000~14年に乳房、子宮頸部、卵巣に原発する腫瘍と診断された15~99歳の女性のデータを分析した。追跡期間は診断後5年間、もしくは2014年12月31日までとした。上皮内がんや死亡診断書のみの登録は除外した。5年純生存率は、診断の暦年、形態、および病期別にPohar-Perme法を用いて推定し、International Cancer Survival Standard(ICSS)の重み付けを用いて年齢を調整した。

 主な結果は以下のとおり。

・2000年から2014年の間に、乳がんの5年純生存率は、85.9%(95%信頼区間:85.2~86.6)から89.4%(同:88.9~89.9)に、子宮頸がんの5年純生存率は67.5%(同:66.3~68.7%)から71.4%(同:70.4~72.3)に、卵巣がんの5年純生存率は35.5%(同:33.8~37.%)から46.3%(同:44.9~47.7)に改善した。
・局所のStageで診断された腫瘍の5年生存率は一貫して高く(乳がんは98%超、子宮頸がんは90%超)、卵巣がんの生存率は形態によって大きく異なった。

 著者らは「この改善は、乳がんおよび子宮頸がんの早期発見と、あらゆるがんに対する集学的治療の進歩によるものと考えられる。遠隔転移を伴う子宮頸がんおよび卵巣がんの生存率は依然として課題であり、検診と治療戦略の強化の必要性が改めて浮き彫りになった」と結論している。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Watanabe K, et al. Jpn J Clin Oncol. 2026;56:i73-i86.

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早期TN乳がん術前療法におけるペムブロリズマブ投与時刻とpCRの関連/日本臨床腫瘍学会

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 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の投与時刻が治療効果と関連する可能性が示唆されているが、乳がんにおけるエビデンスは限られている。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)では、早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の術前療法におけるペムブロリズマブの投与時刻と病理学的完全奏効(pCR)の関連について後ろ向きに検討した2つの単施設研究の結果を、国立がん研究センター中央病院の齋木 琢郎氏とがん研究会有明病院の久野 真弘氏がそれぞれ発表した。

投与が1時間早まるごとにpCR達成のオッズが1.5倍に~国立がん研究センター中央病院 齋木氏

 齋木氏らは、2022年8月~2025年8月に国立がん研究センター中央病院でKEYNOTE-522レジメンによる術前療法を受け、その後手術を受けたTNBC患者102例を後ろ向きに検討した。投与時刻はペムブロリズマブ投与完了時刻とした。主な結果は以下のとおり。

・投与時刻の中央値は午後12時48分(範囲:午前10時13分~午後3時40分)であった。
・102例中53例(52.0%)がpCRを達成した。
・単変量解析では、組織学的グレード3、核グレード3、ペムブロリズマブ投与時刻の中央値がpCRと有意な関連が認められた。
・多変量解析では、組織学的グレード3、投与時刻の中央値がpCRと有意な関連がみられた。調整オッズ比は1.007(1分早まるごと)であり、これは投与が1時間早まるごとにpCR達成のオッズが1.5倍(1.00760)高まることを示す。
・各薬剤(ペムブロリズマブ、カルボプラチン、パクリタキセル、AC)の相対用量強度と投与時刻に有意な関連はみられなかった。

 齋木氏は「本結果は、ペムブロリズマブを早い時刻に投与することが、pCRの達成率向上に関連する可能性を示唆しているが、カットオフ値は見いだせなかった」とまとめ、午後の投与が良好であった、あるいは差がなかったという結果を示した先行研究との違いについては、「先行研究のコホートでは主に午後に投与していたのに対し、われわれのコホートは主に午前中に投与していたことがこの違いを説明するかもしれない」と考察した。

適切なカットオフ時刻ならびに治療のどのフェーズに注目するかを後ろ向きに検討~がん研究会有明病院 久野氏

 久野氏らは、ペムブロリズマブの投与時刻とpCRの関連を、とくに治療フェーズの影響に注目して検討した。2022年10月~2024年12月にがん研究会有明病院でKEYNOTE-522レジメンによる術前療法を開始したTNBC患者99例を後ろ向きに検討した。ペムブロリズマブの投与開始時刻を電子カルテから抽出、4つのフェーズ(全サイクル、初回サイクル、カルボプラチン+パクリタキセルフェーズ、アントラサイクリンフェーズ)についてROC解析を行い、最適なカットオフ値を決定した。主な結果は以下のとおり。

・99例中65例がpCRを達成した。
・全サイクルにおける投与開始時刻の分布を見ると、pCR群とnon-pCR群の間で有意な差は認められなかった。ROC曲線から導き出された時刻(正午)をカットオフ値として適用しても両群間でpCR率に差はなかった。
・4つの治療フェーズで投与開始時刻とpCRの関連を調べたところ、カルボプラチン+パクリタキセルフェーズのみが午前11時のカットオフ値でpCR率と有意な関連を示し、午前11時より早い時刻で開始した群は95.2%(20/21例)、遅い時刻で開始した群は57.7%(45/78例)であった(p=0.0007)。内的妥当性に関してはMaxstat解析とBootstrap(1,000回)を施行し、安定性を確認した。早い時刻で開始した群と遅い時刻で開始した群の背景因子は、Ki-67値を除いてバランスが取れていた。
・多変量解析において、カルボプラチン+パクリタキセルフェーズにおける投与開始時刻とpCRの関連は、Ki-67値および生殖細胞系列BRCA病的バリアントの有無を調整後も維持された。腫瘍浸潤リンパ球データが利用可能なサブセット(63例)では関連が有意ではなくなったが、早い時刻で開始した群が8例と症例数は限られていた。

 久野氏は「全サイクルを通じたペムブロリズマブの投与開始時刻はpCRと関連していなかったが、カルボプラチン+パクリタキセルフェーズにおいて午前11時より早いペムブロリズマブ投与開始は高いpCR率と関連している可能性が示唆された。あくまで単施設後ろ向き研究のため、外的妥当性や前向き研究のデータが必要である」とまとめた。

2つの研究の違い

 2演題の発表後における質疑応答で、齋木氏は2つの研究の違いについて「久野先生の解析手法は先行研究の手法を踏襲し、科学的なアプローチだが、われわれの研究の目的は投与タイミングの重要性を結論付けることではなく、その重要性を探索することであった」と述べた。久野氏は「pCRに対する投与時刻の効果を評価する手法が異なっていた。われわれはROC曲線(Youden index)などの解析手法を用いて最適なカットオフ値を決定したのに対し、齋木先生は1時間ごとの変化がpCRのオッズ比に与える影響を解析していた」と説明し、「手法は異なるが共に後ろ向き研究を行っているので、今後ぜひ協力したい」と呼びかけた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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乳がんオリゴ転移、今わかっていること・いないこと/日本臨床腫瘍学会

提供元:CareNet.com

 乳がんオリゴ転移については、手術や放射線療法などの局所療法が検討されるが、その有効性についての報告は多くが後方視的検討であり、どのような患者にどの治療を選択すべきかについて明確なコンセンサスは得られていない。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において、東京科学大学病院の石場 俊之氏が「乳癌オリゴ転移の今とJCOG2110(OLIGAMI試験)の可能性」と題した講演を行い、近年の研究結果と現在患者登録中のOLIGAMI試験の概要について解説した。

オリゴ転移に局所療法を行うべきか?

 オリゴ転移とは、「転移巣の数が少なく腫瘍径が小さく(5個以下で同一臓器に必ずしも限定しない)、局所療法により完全奏効(CR:Complete Response)となる可能性がある状態」と定義され1)、新規に診断される転移乳がんの1~10%程度と考えられている2)

 オリゴ転移に対する局所療法としては、手術、ラジオ波焼灼療法(RFA)、放射線療法(寡分割照射、体幹部定位放射線治療[SBRT])などが考えられるが、「乳癌診療ガイドライン2022年版」3)では外科的切除は推奨されておらず、SBRTについては「症例を選択したうえで考慮してもよい」という記述となっている。
 一方で、2025年のSt. Gallen国際乳がんコンセンサス会議では乳がんオリゴ転移への局所療法介入に対して87.1%の専門家が「同意する」と回答し、日本のJCOG乳がんグループへのアンケートでも81%が「転移が限局していて初期薬物療法に感受性が高い場合に検討する」と答えるなど、実地臨床では局所療法の併用が広く模索されている。 

2つの臨床試験結果からみえてきたこと

 近年、乳がんオリゴ転移を対象とした前向き無作為化試験が世界中で実施されている。石場氏は2つの試験に着目し、その結果について解説した。4個以下の乳がんオリゴ転移を対象としたNRG-BR002試験では、標準的な全身薬物療法に局所療法(定位照射または手術)を追加しても、無増悪生存期間(PFS)の改善は認められなかった。この理由として、同氏は、無作為化前の薬剤の規定がなく全身薬物療法の強度に群間差があった可能性、患者選定について「登録時の60日以内のオリゴ転移」との規定のみでPETが必須でなく、もともと多発転移であったinducedオリゴ転移や全身療法中に一部の病変のみが増悪したoligoprogressionの症例が含まれていた可能性を指摘した。

 乳がんおよび肺がんのoligoprogressionを対象としたCURB試験では、肺がん患者においてはSBRTによりPFS改善が認められたが、乳がん患者では差がみられなかった。石場氏は、PDとなった症例の約6割で新規の病変が出現している点が、乳がん患者でベネフィットが得られない要因ではないかと述べた。

OLIGAMI試験のデザインとその意義

 上記のような乳がんオリゴ転移の特徴を踏まえ、現在進行中のJCOG2110(OLIGAMI試験)では、以下の基準が設けられている4)
・対象:3個以下のオリゴ転移、各オリゴ転移の大きさ≦5cm(脳転移≦2cm)
※de novoオリゴ転移に限定し、PETを必須とする
・12週間の全身薬物療法で、薬物への反応性のある症例のみを無作為化
・割付調整因子:施設、オリゴ転移個数、サブタイプ分類、転移時期
・試験群:全身薬物療法継続群、根治的局所療法(放射線療法または手術後に全身薬物療法を再開)群
・主要評価項目:全生存期間

 石場氏は、同試験を実施する意義として、ポジティブな結果が出た場合は、乳がんオリゴ転移に対する局所療法を積極的に推奨することができ、現在統一されていない患者選択基準、局所療法の選択に関するコンセンサスが得られることを挙げた。また、もしネガティブな結果となったとしても、無用な局所療法を避けることができ、特定の集団でのみ有効性が認められた場合はさらなる研究につなげることができるとした。

 さらに本試験の大きな特徴として、ctDNA(血中循環腫瘍DNA)を用いた微小残存病変(MRD)解析の附随研究が組み込まれている。局所療法介入前後のctDNA動態をモニタリングすることで、分子レベルでの微小転移の有無と局所療法の効果判定、さらには再発の早期検知に関する有用性が明らかになることが期待される。

 同試験は現在も患者登録中で、最後に石場氏は「対象の患者さんがいらっしゃれば、ぜひJCOG参加施設にご連絡いただきたい」として、講演を締めくくった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1)Cardoso F, et al. Ann Oncol. 2017;28:3111.

2)Pagani O, et al. J Natl Cancer Inst. 2010;102:456-463.

3)日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドライン2022年版. 金原出版:2022.

4)Sasaki K, et al. Jpn J Clin Oncol. 2026 Jan 30. [Epub ahead of print]

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HR+HER2-転移・再発乳がんへのSG、日本人での有効性と安全性(ASCENT-J02)/日本臨床腫瘍学会

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 日本人の既治療HR+HER2-転移・再発乳がんに対するサシツズマブ ゴビテカン(SG)の有効性・安全性を評価した非盲検第I/II相ブリッジング試験(ASCENT-J02試験)の結果、国際第III相TROPiCS-02試験における結果と同程度の効果が認められ、安全性についても既知の安全性プロファイルと同様であったことが報告された。国立国際医療センターの下村 昭彦氏が、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で同試験の第II相HR+HER2-転移・再発乳がんコホートの結果を発表した。

・対象:CDK4/6阻害薬、内分泌療法およびタキサン系薬剤による治療歴があり、かつ進行・転移病変に対する2ライン以上の全身化学療法歴のある、HR+HER2-乳がん患者(ECOG PS 0/1)42例
・方法:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静脈内投与
・評価項目:
[主要評価項目]独立判定委員会(IRC)評価による奏効率(ORR)
[副次評価項目]治験責任医師評価によるORR、無増悪生存期間(PFS)、奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・2024年11月26日のデータカットオフ時点で、16例(38%)が試験治療を継続していた(追跡期間中央値は7.5ヵ月)。
・年齢中央値は56歳(範囲:37~79歳)、がん薬物療法歴の中央値は6.0レジメン(同:3.0~11.0)、進行・転移病変に対する全身化学療法歴の中央値は2.0レジメン(同:1.0~3.0)、全例にCDK4/6阻害薬治療歴があった(治療期間は≦12ヵ月が43%)。
・主要評価項目であるIRC評価によるORRは16.7%(95%信頼区間[CI]:7.0~31.4、p=0.1214)で、本試験における統計学的基準(p>0.025)は満たさなかったものの、TROPiCS-02試験におけるIRC評価によるORR(21.0%)と同程度であった。
・治験責任医師評価によるORRは28.6%(95%CI:15.7~44.6)であった(TROPiCS-02試験では16.2%)。
・IRC評価によるTTR中央値は2.8ヵ月(範囲:1.2~3.0)、DOR中央値は未到達(同:2.7~未到達)であった。
・IRCによるPFS中央値は4.4ヵ月(95%CI:2.7~8.5)、治験責任医師評価によるPFS中央値は5.6ヵ月(95%CI:3.3~7.1)であった(TROPiCS-02試験ではそれぞれ5.5ヵ月[95%CI:4.2~7.0]、4.4ヵ月[95%CI:3.8~5.4])。
・OS中央値は13.0ヵ月(95%CI:11.0~未到達)であった(TROPiCS-02試験では14.4ヵ月[95%CI:13.0~15.7]、追跡期間中央値:12.5ヵ月)。
・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)が83%に認められた。10%以上で発現したのは好中球減少症(71%)と白血球減少症(40%)であった。G-CSF製剤の予防的投与は36%で実施された。

 下村氏は、本試験はブリッジング試験としてデザインされたもので、サンプルサイズが少なく、対照群との比較がなく、追跡期間が短いことなどを研究の限界として挙げたうえで、本試験とTROPiCS-02試験の結果は、内分泌療法抵抗性の日本人HR+HER2-転移・再発乳がん患者に対し、化学療法に続くSGの投与を支持するものとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

ASCENT-J02試験(Clinical Trials.gov)

1)Shimomura A, et al. Jpn J Clin Oncol. 2026 Mar 27. [Epub ahead of print]

進行乳がん1次治療中にESR1変異出現でcamizestrantに切り替え、SERENA-6試験の日本人解析/日本臨床腫瘍学会

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 SERENA-6試験は、ER+/HER2-の進行乳がんに対して1次治療のアロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬併用療法中、病勢進行する前にctDNA検査でESR1変異が検出された患者において、CDK4/6阻害薬を継続しAIを経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)camizestrantに切り替えることの有用性を検討した国際共同第III相二重盲検試験である。すでに中間解析(データカットオフ:2024年11月28日)で、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の有意な改善(ハザード比[HR]:0.44、p<0.0001)が報告されている。今回、日本人集団の結果(データカットオフ:2025年6月30日)について、名古屋市立大学の岩田 広治氏が第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で発表した。

 本試験では、1次治療としてAI+CDK4/6阻害薬を6ヵ月以上投与されたER+/HER2-進行乳がん患者に、定期的な画像検査に合わせて2~3ヵ月ごとにctDNA検査を行い、ESR1変異の有無を評価した。ESR1変異出現時に病勢進行が認められない患者を、camizestrant(75mg、1日1回経口投与)+CDK4/6阻害薬(種類・用量を継続)+AIのプラセボ、およびAI+CDK4/6阻害薬+camizestrantのプラセボの2群に1:1に無作為に割り付けた。主要評価項目は治験責任医師判定によるPFS、副次評価項目はPFS2と全生存期間(OS)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・315例中20例が日本人患者であった(camizestrant+CDK4/6阻害薬群:11例、AI+CDK4/6阻害薬群:9例)。患者の背景因子は全体集団ではバランスがとれていたが、日本人集団は少数のためバランスがとれておらず、初回検査でのESR1変異検出例は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が73%とAI+CDK4/6阻害薬群の33%より多く、早期進行例もcamizestrant+CDK4/6阻害薬群で多かった。
・PFS中央値は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が19.4ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が9.3ヵ月、HRは0.42(95%信頼区間[CI]:0.08~0.93)で有意な改善がみられた。
・PFS2中央値は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が35.5ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が19.4ヵ月、HRは0.38(95%CI:0.10~1.36)で全体集団と同様の傾向であった。
・最初の後続治療までの期間(TFST)の中央値は、camizestrant+CDK4/6阻害薬群が20.4ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が7.7ヵ月、HRは0.30(95%CI:0.09~0.92)で全体集団と同様の傾向であった。2回目の後治療までの期間(TSST)も同様の傾向であった。
・化学療法もしくはADC(抗体薬物複合体)フリー生存期間の中央値は、全体集団でcamizestrant+CDK4/6阻害薬群が22.7ヵ月、AI+CDK4/6阻害薬群が18.7ヵ月、HRは0.69(95%CI:0.49~0.97)であり、日本人集団でも同様の傾向であった。
・全体集団において、camizestrant+CDK4/6阻害薬群では8週以内にESR1変異のアレル頻度が大幅に減少したが、AI+CDK4/6阻害薬群ではほとんどの患者で増加した。
・camizestrant+CDK4/6阻害薬群は、日本人患者において良好な忍容性を示し、Grade3以上の有害事象は27.3%で、有害事象プロファイルは全体集団と同様であった。
・日本人集団では、camizestrant+CDK4/6阻害薬群での好中球数減少症は全Gradeが27.3%、Grade3以上が18.2%であり、曝露期間を調整した発現割合はcamizestrant+CDK4/6阻害薬群のほうが低かった。
・camizestrantによる光視症は全体集団では20.6%に報告されたが、日本人集団では2例のみでどちらもGrade1であった。

 これらの結果から、岩田氏は「1次治療の内分泌療法を、CDK4/6阻害薬を継続しながらcamizestrantに切り替えることは、病勢進行を遅らせ、化学療法/ADCフリー生存期間を延長させるだけでなく、ESR1変異のアレル頻度を大幅かつ迅速に減少させることにより、治療上のベネフィットを大幅に高める」とまとめた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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