制吐目的のオランザピン、糖尿病患者にも厳格管理下で投与可能へ/日本癌治療学会

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 2026年8月25日、日本癌治療学会制吐薬適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループ(以下、WG)は、「制吐目的としてのオランザピン投与時の血糖管理」について、ガイドライン速報版として公開した。同日に厚生労働省から添付文書の改訂指示が発出され、経口薬のオランザピンについては、警告が新設されると同時に禁忌の項が改訂された。

 同ワーキンググループの安部 正和氏(浜松医科大学医学部産婦人科)は、本公表に至る経緯や臨床現場への期待について、以下のように本稿へコメントを寄せている。

 「私と国立がん研究センター中央病院薬剤部の橋本 浩伸先生、矢内 貴子先生が中心となってシスプラチンレジメンを対象に行ったJ-FORCE試験、乳がんのAC療法を対象に日本で行われたJTOP-B試験、米国で行われたALLIANCE試験の3試験によって、オランザピンを含む4剤併用療法は、日本・米国・欧州のガイドラインにて、高度催吐性化学療法に対する標準制吐療法になりました。これまで日本でのみ糖尿病患者への投与が禁忌であったことから、国内の糖尿病患者さんだけがオランザピンを含む制吐療法を受けることができませんでした。

 この臨床課題について、私と橋本先生は2年前に、日本がんサポーティブケア学会のCINV部会のミッションとしてオランザピンの糖尿病患者への投与禁忌解除を掲げ、活動を開始しました。CINV部会および制吐薬適正使用ガイドラインの関係者からの協力もいただき、オランザピンの治験データ、国内で行われたオランザピン5mgを含む制吐療法を検証した第III相試験の血糖値データ、オランザピンを使用した国内外のランダム化比較試験の文献、海外のオランザピンの添付文書、教科書的記載などを調査し、厚生労働省医薬局医薬安全対策課と医薬品医療機器総合機構(PMDA)の方と安全な使用条件について検討を重ね、ようやく今回の添付文書に至りました。

 抗がん剤に伴う悪心・嘔吐は患者さんがつらいだけではなく、コントロールが悪いと生命予後が短くなることが示されています。日本の糖尿病患者さんの制吐療法においてオランザピンが使用できることになったことは非常に喜ばしいことである一方で、安全に使用できることが非常に重要です。がん治療に関わる医療者の皆さまにおかれましては、WGが発出したガイドライン速報版の内容を十分確認の上、安全かつ適正な使用をお願いいたします」

添付文書の改訂点

【警告】
<抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)>
糖尿病又はその既往のある患者へ本剤を投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合以外は投与しないこと。また、本剤投与前及び投与期間中は、毎日頻回に血糖値のモニタリングの管理を行い、本剤投与後も血糖値が安定するまではモニタリングを継続するなど患者の状態を継続的に観察するとともに、投与期間を通じて、緊急時に十分に対応できる体制を整えた上で投与すること。

【禁忌】
糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者

<統合失調症、双極性障害における躁症状及びうつ症状の改善>
糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者

厳格な血糖管理と入院管理の徹底

 今回示された臨床管理の主なポイントは以下のとおり。

・入院治療の適応:糖尿病またはその既往のある患者に制吐目的でオランザピンを投与する場合、血糖コントロールが安定していることを確認のうえ、入院管理で化学療法を行う。外来治療が可能な化学療法(AC療法や中等度催吐性化学療法など)であっても、高度催吐性リスクであるシスプラチンを含む化学療法と同様に入院管理で実施する。

・事前コンサルト:化学療法前の検査で糖尿病が判明した場合や血糖コントロール不良例では、あらかじめ内分泌内科・糖尿病内科へコンサルトを行い、十分なコントロールを得た上で治療を開始する。

・血糖管理:日常臨床で行われているスライディングスケール(毎食前±眠前の1日3〜4回の血糖測定)を用いた厳格な血糖管理を行う。

・入院(投与)期間と退院基準:標準制吐療法のオランザピン投与日数(1〜4日目の4日間)を遵守し、追加投与が必要な場合も入院管理を継続して必要最低限にとどめる。オランザピンおよび併用するデキサメタゾンの投与期間・投与量に留意し、食前血糖値200mg/dL未満など血糖値が安定した状態を確認して退院を計画する。

・退院後の外来管理・緊急対応:自己血糖測定(SMBG)患者での食前血糖値200mg/dL以上の継続・300mg/dL以上の高血糖時、SMBGが保険診療上できない患者での口渇・多尿・倦怠感などの発現時には、夜間・休日を問わず受診している医療機関に連絡・受診するよう指導を徹底する。カルテへの明確な記載や院内マニュアルを整備し、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の安全管理体制と同様に、多科・多職種による安全管理体制の構築を推奨する。

禁忌解除の要望が実現

 多元受容体拮抗薬(MARTA)で非定型抗精神病薬のオランザピンは、発売開始後の公知申請によって、2017年に抗悪性腫瘍剤(シスプラチンなど)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)に対する効果的な制吐薬として承認されている。また、2023年10月に改訂された『制吐薬適正使用ガイドライン第3版』では急性期・遅発期ともに有効な新たな制吐薬として使用可能になった点などが反映されたことで、現在では臨床で広く浸透している。その一方で、重大な副作用として著しい血糖値の上昇や糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等が報告されていたことから、「糖尿病またはその既往のある患者には投与禁忌」とされ、糖尿病歴のある患者が化学療法を行う際に、制吐対策が限定される状況であった。しかし、これまで報告されている本薬の有効性を検証した臨床試験において、「重篤な高血糖関連事象は報告されていない」「本薬を含む4剤併用の制吐療法は、国内外のガイドラインにおいて高度催吐性リスクの化学療法に対する標準制吐療法になっているが、本邦のみ本薬が糖尿病患者に対して禁忌」であることを踏まえ、WGにより禁忌解除の要望書を2026年4月9日付けで厚生労働省に提出。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の評価でも支持を受け、今回、「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)」の効能に対しては、禁忌を解除し、慎重投与可能と判断されるに至った。

 今回の速報版は、ガイドライン上の既存の推奨内容を変更するものではないが、糖尿病またはその既往のある患者であっても、適切な厳格管理体制を整えることでオランザピンを制吐目的で安全に投与・活用できるようにするための具体的な管理手順および留意点を取りまとめたものである。

薬物動態と臨床試験データ

 さらに速報版では、制吐目的での短期投与に関する薬理学的データや臨床試験成績も提示されている。オランザピンの半減期は約33時間であり、定常状態に達するには約1週間(約163時間)を要するため、標準的な4〜6日間の連続投与時点では血中濃度が上がり切っていない状態にある。また、日本国内で実施された各種ランダム化比較試験(J-FORCE試験、JTOP-B試験、肺がんカルボプラチン試験など)のデータにおいて、制吐薬としてオランザピンを短期間併用した群と対照群との間で、Grade3〜4の重篤な高血糖発現率に大きな差は認められていない。

 制吐目的での短期投与における高血糖関連有害事象のエビデンスがまだ十分に集積されていない現状を踏まえ、本速報版では臨床現場でより安全にオランザピンを使用するための慎重なリスク管理体制が提示された形だ。

(ケアネット 土井 舞子)

【参考文献・参考サイトはこちら】

日本癌治療学会:制吐目的としてのオランザピン投与時の血糖管理について(制吐薬適正使用ガイドライン速報版)

厚生労働省:オランザピンの「使用上の注意」の改訂について(令和8年7月29日 医薬安全対策課)

日本癌治療学会:がんちスタジオ

Hashimoto H, et al. Lancet Oncol. 2020;21:242-249.

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卵巣予備能がHR+/HER2-乳がんの術後化学療法ベネフィットを予測/Ann Oncol

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 21遺伝子アッセイ(オンコタイプDX)の再発スコアが25以下のHR+/HER2-乳がん患者を対象に、術後の内分泌療法と内分泌療法+化学療法(化学内分泌療法)を比較した第III相RxPONDER試験の55歳未満を対象とするバイオマーカー解析の結果、超高感度アッセイを用いて測定した卵巣予備能の指標である抗ミュラー管ホルモン(AMH)が化学療法追加のベネフィットを予測し、AMHが低値の患者では化学療法追加によるベネフィットが認められなかったことを、米国・エモリー大学のKevin Kalinsky氏らが示した。Annals of Oncology誌2026年9月号掲載の報告。

 RxPONDER試験では、リンパ節転移1~3個、再発スコアが25以下のHR+/HER2-乳がん患者を、術後に内分泌療法単独を受ける群または化学内分泌療法を受ける群に無作為に割り付けた。その結果、閉経後患者においては化学療法追加のベネフィットは認められなかった一方、閉経前患者ではベネフィットが示されている。しかし、同試験では閉経前患者における卵巣機能抑制の併用率が低く、化学療法によるベネフィットのかなりの部分が化学療法そのものの抗腫瘍作用ではなく、化学療法に伴う卵巣機能抑制を介した内分泌学的作用によるのではないかと示唆されている。そこで本解析では、化学療法追加によるベネフィットを予測する因子をさらに検討するため、卵巣予備能に関連するホルモンを評価した。

 解析対象は、55歳未満で治療前の血清検体が利用可能であった1,556例とした。治療前の血清エストラジオール、プロゲステロン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、AMH、インヒビンB(INHB)を盲検下で評価した。評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無遠隔再発生存期間(DRFS)とし、再発スコアで調整したCox回帰モデルを用いて、治療割り付けと各ホルモン指標の交互作用を検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象1,556例のうち、閉経前は1,221例、閉経後は335例であった。追跡期間中央値は8.0年。
・解析対象全体では、内分泌療法単独群と比較して、化学内分泌療法群ではiDFSが有意に改善した。年齢別では、50歳未満では化学内分泌療法の有意なベネフィットが認められたが、50~54歳では有意ではなかった。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。
 -解析対象全体 HR:0.65、95%CI:0.50~0.85、調整後のp=0.0066
 -50歳未満 HR:0.47、95%CI:0.33~0.67、調整後のp=0.0004
 -50~54歳 HR:1.02、95%CI:0.68~1.54、調整後のp=0.95
・閉経前患者では化学内分泌療法によるiDFSのベネフィットが認められたが、閉経後患者では認められなかった。
 -閉経前 HR:0.55、95%CI:0.41~0.75、調整後のp=0.0009
 -閉経後 HR:1.18、95%CI:0.67~2.07、調整後のp=0.72
・AMH値と治療割り付けの交互作用は有意であり(調整後のp=0.0034)、AMH値によって化学療法追加による治療効果が異なることが示された。
・AMH値10pg/mL以上の群では、化学内分泌療法によりiDFSが有意に改善し、5年iDFSの絶対利益は8.5%であった。AMH値10pg/mL未満の群では化学療法の追加による有意なベネフィットは認められなかった。
 -AMH値10pg/mL以上 HR:0.46、95%CI:0.33~0.65、調整後のp=0.00012
 -AMH値10pg/mL未満 HR:1.27、95%CI:0.81~1.99、調整後のp=0.47
・DRFSについても同様であり、AMH値10pg/mL以上の群では化学内分泌療法のベネフィットが認められ、AMH値10pg/mL未満の群では認められなかった。
・INHB値12pg/mL以上の群ではiDFSで化学療法追加のベネフィットが認められ、DRFSでも同様の傾向がみられた。一方、INHB値12pg/mL未満群ではiDFSのベネフィットは認められなかった。
・エストラジオール、プロゲステロン、FSH値は化学内分泌療法のベネフィットを予測する因子ではなく、LH値は弱い予測能を示すにとどまった。

 研究グループは「55歳未満の患者を対象とする本解析において、ベースラインのAMH値が10pg/mL未満の参加者は化学内分泌療法による恩恵を受けなかった。AMH値は、閉経状態、年齢、その他のホルモン値よりも、化学内分泌療法の有効性を示す有意に優れた指標であった。適切な超高感度アッセイを用いた卵巣予備能の測定は、閉経状態が不明確な患者において、化学療法を安全に省略できる患者の特定に役立つ可能性がある」とまとめた。

(ケアネット 森)


【原著論文はこちら】

Kalinsky K, et al. Ann Oncol. 2026;37:1220-1229.

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乳がん治療の変遷と今後【温故知新30年】

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2026年、ケアネットは創立30周年を迎えました。30年で医療はどう変わったのか。第一人者が振り返る各疾患領域の進歩と、今後への示唆。



講師紹介

岩田 広治 ( いわた ひろじ ) 氏
名古屋市立大学大学院医学研究科 臨床研究戦略部 特任教授


30年間における乳がん患者数の急増と社会現象

 30年前(1996年)、私は名古屋市立大学外科医局で乳腺内分泌外科の助手をしていた。その当時、大学の乳がん症例は年間30例ほどであり、着任したばかりの胸部外科の教授との面談で、「将来は乳腺診療一本でやっていきたい」と話をしたら、「乳腺を専門にするだけではやっていけないよ」と諭された。その後、乳がん患者数の急増により、生涯で女性の8人に1人が乳がんになり、年間の新規乳がん患者数は10万人を超える時代になった。

 乳がんに対する学会活動も、30年前は日本乳癌学会の黎明期であり(1993年が第1回学術総会)、日本臨床腫瘍学会はまだ産声を上げていなかった。対策型乳がん検診にマンモグラフィ(MMG)が導入されたのは2000年であり、30年前は視触診のみ行われていた。しかし、患者数の増加とともにさまざまな市民活動が始まった。MMG検診普及事業と連携して海外で行われていたピンクリボン運動が2002年に朝日新聞主催で開始された。

 MD Andersonなど米国のCancer Centerから導入されたチーム医療の考え方は瞬く間に日本中に広がり、今では常識的な体制になっている。2013年に女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)でリスク低減乳房切除(RRM)を受けたことをきっかけに、HBOCの認知度が高まり、それとともに学会活動(2016年 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構[JOHBOC]設立)も始まった。HBOC診断のためのBRCA遺伝学的検査、RRM、リスク低減卵巣卵管切除(RRSO)の保険適用などは日本独自の画期的な取り組みである。がん医療の進歩は治療だけでなく、取り巻く社会環境、医療環境も大きく変化したと感じる。

30年前の標準治療(架空症例)

症例
60歳女性、しこりを自覚して外科を受診
診断
視触診、MMG、超音波検査でしこりを認識し、摘出生検で乳がんと診断
治療(手術)
腋窩リンパ節腫大はないが、乳房全摘術+腋窩郭清術を施行
病理結果
浸潤径:2cm、腋窩リンパ節転移:1/25、ER陽性・PgR陽性(HER2測定は標準的に行われていなかった)
治療(薬物療法)
術後は再発予防のために、AC療法(アドリアマイシン+エンドキサン)4回点滴投与し、その後TAMを2年間内服。術後は1年ごとにCT、骨シンチなどで再発チェックを行う

30年間の局所治療の進歩

1)手術療法の進歩

 30年前は、乳がんであれば全例腋窩郭清術が行われ、多くの患者さんが術後上腕浮腫の合併によりQOLが低下した。革新的な進歩はセンチネルリンパ節生検(SLNB)の導入である。米国で開始されたSLNBの概念は1998年に日本へ紹介され、2003年に先進医療として開始、2010年に保険承認された。その後SLNBの適応が少しずつ広がり、一部の症例ではSLNB陽性でも郭清しないことが標準治療となっている。

 乳房に対する手術療法の変化は、1990年代後半から2000年代前半にかけて乳房温存療法が急速に広がったことだ。背景には乳房部分切除+放射線治療の有効性が国際的に確立したこと、ガイドラインの普及、検診MMGの導入で小さながんが発見されるようになったことが挙げられる。同時に、マスコミは温存率の高い病院を『いい病院』とするようなキャンペーンを打ち上げた。これにより各病院は温存率を上げるために、無理をして乳房を残し(温存率90%の病院もあった)、結果として断端陽性症例が増加し、乳房内再発例が増えたことは負の歴史である。その後は全摘+再建術の普及により、乳房温存率は適切な数字に落ち着いている。

 再建手術の普及により、治す時代から整容性も追求する時代になった。2013年に日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会(JOPBS)が設立され、同年乳房再建用シリコンインプラントが保険適用となった。2006年に保険適用になった自家組織(腹直筋皮弁、広背筋皮弁など)による乳房再建とともに、乳房再建術が標準治療として認知される時代である。

2)放射線治療の進歩

 乳がん患者への放射線治療は、温存術が広まると同時に全国に普及した。乳房を残す手術をした場合には、残存乳房に放射線照射をすることが標準治療である。またリンパ節転移が4個以上の再発ハイリスク患者では、胸壁+鎖骨上照射(PMRT)で生存率の改善が認められ、放射線照射を受ける患者数は増加した。30年間、放射線治療方法自体に大きなパラダイムチェンジはないが、術後照射回数が25回から16回への過分割照射のエビデンスが出て、回数を減らす方向に向かっている。転移・再発治療における放射線治療については、脳転移に対する体幹部定位放射線治療(SBRT)や、重要臓器を避けて照射する強度変調放射線治療(IMRT)など技術の進歩によって、痛みの緩和をベースにさまざまな場面で放射線治療が導入されることが多い。

3)全身薬物療法の進歩

 この30年で薬物療法の革新的な進歩には目を見張るものがある。30年前に使えた薬は抗がん剤が数種類、ホルモン剤はタモキシフェン、分子標的薬という概念はなく、乳がんをサブタイプで考えることもなかった。この30年で使用可能になった薬剤を示す

 周術期に全身薬物療法を行うタイミングも、2000年代前半から術前化学療法の臨床試験が国内外で活発に行われた。得られた多くの知見によって、より個別化した適応が現在の標準治療と位置付けられる。サブタイプに分けて考え、ER陽性HER2陰性のLuminal typeは原則手術先行であり、手術の結果で得られた臨床病理学的所見とともに、多遺伝子アッセイ(Oncotype DX)によって化学療法の必要性を判断する時代である。ER陰性HER2陽性のHER2 typeやtriple negative(TN)typeでは、術前化学療法が積極的に行われる。術前化学療法後の病理診断でpCRであった症例の予後はきわめて良好であり、non-pCR症例では予後の改善を目的に、術後追加治療(HER2 typeではT-DM1、TN typeではカペシタビン)を加えるのが標準治療である。

 転移再発乳がん治療では、新規薬剤開発と並行して生存期間の延長が顕著である。30年前、HER2 typeの再発後生存期間は2年に満たなかったのが、多くの抗HER2薬の導入により今では6年を超える生命予後が期待できる。なかには完治したのではないかと思われるケースも存在する。Luminal typeは長くホルモン治療単独の時代が続いたが、CDK4/6阻害薬が承認され、バイオマーカーによる薬剤選択が標準化したことで今後の生存期間延長が期待できる。TN typeでは免疫チェックポイント阻害薬、ADC(抗TROP-2 ADC、T-DXd)の開発で抗がん剤しか手段がない状態が改善した。

私にとってのパラダイムシフト・イノベーション

 2002年に始まったHERA study(術後トラスツズマブの有効性を評価する国際共同治験)へ参加したこと、患者登録とASCOでの発表(2005年)でスタンディングオベーションを現場で体験したこと、そしてNEJM誌への共著者として掲載されたことで人生が変わった。臨床研究(試験)による標準治療構築、新薬開発の道は今も続き、JCOG乳がんグループ代表を2010年から14年間務めた。その間、並行して多くの企業とともに日本に導入された数々の新薬開発にも携わり、たくさんの仲間とともに標準治療を変える臨床試験を立案、実行してきたことはかけがえのない財産である。

次の5年で乳がん診療はどう変わっていくか

 最も注目しているのはMRD(minimal residual disease)研究である。周術期薬物療法は、臨床病理学的因子やOncotype DXに基づき、再発リスクを鑑みて薬剤選択をしてきた。しかし、無治療でも再発しない方が多数存在することも事実である。残念ながら今まではそれを予測できないために、多くの患者さんに治療が行われてきた。今、高感度MRD assayにより、術後MRD陰性の方の予後はきわめて良好なことが判明しつつある。術前治療の効果判定、術後の予後予測、再発予防治療の選択などにMRD assayが導入される時代が、すぐそこまで来ている。

 もう一つの注目は人工知能(AI)の導入である。画像診断、病理診断ではAI導入による臨床試験の結果(positive)も報告され、一般診療に導入される夜明け前の状態だ。さまざまな場面での薬剤選択も、gene signatureで予測していた時代から、膨大な遺伝子情報から導き出されたアルゴリズムによるAI pathologyで、薬剤の必要性を判断する時代が来ると予想する。安価で簡便な方法であり、技術進歩による歩みは止まらないだろう。

最後に、世界の中での日本を俯瞰した時、東アジア各国の台頭により日本のプレゼンスが弱くなっている。新薬開発分野、標準治療構築のための国際協働の枠組みに日本がはじかれることのないように、医療体制・医学教育全体の見直しが急務だと考えている。

がんの既往歴/家族歴のある女性、原発性肺がんリスク高い

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 喫煙歴にかかわらず、がんの既往歴や家族歴を有する成人女性では、新規に原発性肺がんを発症するリスクが有意に高まることが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)East BayのCarissa A. Villanueva氏らによる大規模後ろ向き研究で明らかになった。JTCVS Open誌2026年8月号に掲載。

 本研究は、Kaiser Permanente Northern Californiaの2010年1月1日〜2022年12月31日の電子健康記録データを用いた。研究開始時点で肺がんの既往がない18歳以上の成人女性で、期間中に1年以上の加入歴を有する約280万例を抽出。喫煙状況、人種/民族、年齢、Charlson併存疾患指数、近隣困窮指数で調整したターゲット最大尤度推定法を用い、がん既往歴または家族歴を有する患者における新規原発性肺がんの有病率比(PR)を算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・選択基準を満たした成人女性280万例が解析に組み入れられた。
・何らかのがん既往歴がある女性では、原発性肺がんの有病率が88%増加した(PR:1.88、95%信頼区間[CI]:1.84〜1.92)。
・がんの家族歴がある女性においても、原発性肺がんの有病率増加が認められた(PR:1.23、95%CI:1.20〜1.26)。
・とくに、乳がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんの既往歴がある女性において、その後の原発性肺がん有病率増加と有意な関連が示された。

 著者らは、「がんの既往歴および家族歴は、将来の原発性肺がん発症リスク上昇と強い関連を示したことから、今回の対象集団においては、喫煙歴だけでは新規原発性肺がんの臨床的疑いを判断するには不十分であることが示唆される。肺がんスクリーニングツールの適用に関するガイドラインの再評価および拡充が賢明だろう」と提言している。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Villanueva CA, et al. JTCVS Open. 2026;32:101823.

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gBRCA病的バリアントを有する若年早期乳がん、周術期化学療法の種類と生存アウトカムの関係

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 生殖細胞系列BRCA1/2病的バリアントを有する40歳以下のHER2陰性(HER2-)早期乳がん患者において、周術期化学療法のレジメン間で生存アウトカムに統計学的な有意差はみられないことが、国際多施設共同後ろ向きコホート研究(BRCA BCY Collaboration研究)の結果で示された。イスラエル・Sheba Medical CenterのRinat Bernstein-Molho氏らが、European Journal of Cancer誌オンライン版2026年8月11日号に報告した。

 本研究では、2000~2020年にStageI~IIIのHER2-乳がんと診断された40歳以下のBRCA1/2病的バリアント保持者を対象に、アントラサイクリン+タキサン系、アントラサイクリン系(タキサンなし)、非アントラサイクリン系の各術前/術後化学療法による無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)を評価した。また、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)においてはプラチナ製剤の使用とアウトカムとの関連も評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・109施設から4,200例が解析対象となり、うち58.7%がTNBCであった。
・追跡期間中央値は8.1年(四分位範囲:4.7~12.6年)であった。
・使用された化学療法レジメンの割合は、アントラサイクリン+タキサン系が74.4%、アントラサイクリン系(タキサンなし)が19.3%、非アントラサイクリン系が6.3%であった。また、TNBCでは19.8%でプラチナ製剤が投与されていた。
・多変量調整後、アントラサイクリン系(タキサンなし)とアントラサイクリン+タキサン系との間で、DFS(調整ハザード比[aHR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.73~1.05)およびOS(aHR:1.20、95%CI:0.87~1.67)に有意差は認められなかった。
・同様に、アントラサイクリン系(タキサンなし)と非アントラサイクリン系の比較においても、DFS(aHR:1.07、95%CI:0.82~1.38)およびOS(aHR:1.16、95%CI:0.68~2.00)に有意差は認められなかった。
・TNBC症例において、プラチナ製剤の使用とアウトカム改善の間に関連はみられなかった。

 著者らは今回の結果について、同患者集団における化学療法のde-escalation戦略を評価する今後の前向き研究に有益な情報をもたらすものとしている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

Bernstein-Molho R, et al. Eur J Cancer. 2026 Aug 11. [Epub ahead of print]

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日本人の乳がん検診の障壁は「痛み・恐怖・予約」~Xの投稿を解析

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 乳がん検診の受診率が米国(70%超)と比較して日本(50%未満)で停滞している現状を背景に、SNS投稿の言葉から異文化間における検診の障壁を比較評価したインフォデミオロジー(情報疫学)研究のデータを、名古屋市立大学の寺田 満雄氏らが報告した。解析の結果、英語圏では主に制度的・経済的負担を反映している一方、日本では「痛み」「恐怖」「予約」が密接に関連する心理的・身体的障壁が支配的であることが示唆された。Journal of Medical Internet Research誌2026年7月31日号に掲載。

 本研究は、2025年にX(旧Twitter)から収集された4万6,823件の乳がん検診に関する投稿(日本語3万27件、英語1万6,796件)を対象とした。大規模言語モデルを用いた感情極性スコアリングや共起ネットワーク解析などを統合した自動化自然言語処理パイプラインを開発し、障壁のインフォマティクスプロファイルを比較・評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・全体的な感情の分布において、実質的に意味のある文化的な差異は認められなかった。
・英語コホートでは、制度的障壁に対する中等度のネガティブな感情が集中しており、「費用」が主な障壁(7.4%)であったのに対し、「痛み」への言及は比較的低かった(5.0%)。また、一般人の意識の高まりから「高濃度」乳房に関する話題が重要な臨床トピックとして浮上した。
・日本語コホートでは心身の障壁がボトルネックとなっており、「痛み」「恐怖」「予約」が密接に関連するネットワークを形成し、中でも「痛み」が圧倒的に支配的な障壁(19.3%)であった。
・日本のサブグループ解析では、検診前の心理的不安(「恐怖」19.4%)や物理的な懸念(「予約」40.9%)から、検診後は「痛み」という不快な記憶の強い持続(15.6%)へと経時的な移行が確認された。
・マンモグラフィに対する感情スコアは超音波検査単独よりも有意に低く(ネガティブ)、超音波検査における痛み言及は、マンモグラフィと同時施行された場合に5.0%から18.2%へと急増した。

 著者らは、「日本における受診率向上には、個別最適化した疼痛軽減の圧迫プロトコルとマンモグラフィの不快感を併用検査から切り離す動線設計が必要であり、それによって痛みに関連した防御的回避を防ぎ、さらにアクセス改善のために予約プロセスといったロジスティクス上の障害を減らす必要がある」と指摘している。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Terada M, et al. J Med Internet Res. 2026;28:e97772.

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乳がんのsBRCA変異とgBRCA変異、生物学的特徴と治療反応が異なる/ESMO Open

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 BRCA変異のうち、生殖細胞系列(g)BRCA変異は生物学的および臨床的な重要性が十分に確立されているが、体細胞(s)BRCA変異の意義については不明な点が多い。今回、横浜市立大学の押 正徳氏らが、日本全国のがんゲノム医療データベース(C-CAT)を用いて大規模な乳がんゲノム解析を実施した結果、sBRCAのみ変異ありは、gBRCAとsBRCAの両方変異ありより多くみられ、sBRCA変異はgBRCA変異の有無によって明確なゲノムパターンが示された。また、gBRCAのみ、変異ありがCDK4/6阻害薬の治療継続期間の短縮と関連していた。ESMO Open誌2026年7月23日号に掲載。

 本研究では、C-CATに登録された乳がん患者のうちgBRCA変異およびsBRCA変異の有無が判明している2,978例を解析対象とし、「両方変異あり」「gBRCAのみ変異あり」「sBRCAのみ変異あり」「両方変異なし」の4群に分けた。エストロゲン受容体陽性(ER+)/HER2陰性(HER2-)乳がんおよびトリプルネガティブ乳がん(TNBC)に焦点を当て、変異の全体像、相同組み換え欠損(HRD)に関連する変異、検体の由来、治療継続期間(TTD)を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・「sBRCAのみ変異あり」は「両方変異あり」よりも多かった。
・sBRCA変異は転移巣で多く検出された。
・ゲノム的には、「sBRCAのみ変異あり」ではPIK3CATP53を含む発がん性シグナル伝達経路の変異が多かったのに対し、「両方変異あり」ではBRCA変異が優勢なHRD関連の特徴を示した。
BRCA以外のHRD関連変異は、「sBRCAのみ変異あり」で最も頻度が高かった(52%、p=0.004)。
・ER+/HER2-乳がんに対するCDK4/6阻害薬治療における解析では、gBRCAに変異があるとTTDが短く、「両方変異あり」ではTTD短縮と独立して関連していた(ハザード比:1.3、p<0.001)。一方、「sBRCAのみ変異あり」は「両方変異なし」とTTDが同程度だった。
・TNBCにおいては、免疫チェックポイント阻害薬の治療成績はBRCA変異の有無と関連がみられなかった。

 著者らは「sBRCA変異は単独で解釈すべきではなく、gBRCA変異の有無やより広範なゲノム的文脈と統合して検討する必要がある」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Oshi M, et al. ESMO Open. 2026;11:108311.

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HER2+局所進行/転移乳がんへの二重HER2阻害療法と併用の1次化学療法、エリブリンvs.タキサンの最終OS解析(JBCRG-M06/EMERALD)/ESMO Open

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 HER2陽性(HER2+)局所進行/転移乳がんに対して、二重HER2阻害療法(トラスツズマブ+ペルツズマブ)と併用する1次化学療法として、エリブリンと医師選択のタキサンを比較した第III相JBCRG-M06/EMERALD試験の最終解析の結果、全生存期間(OS)中央値が6年を超え、2群間に有意差は認められなかったことが示された。福島県立医科大学の佐治 重衡氏らがESMO Open誌8月号に報告した。本試験ではすでに、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)においてエリブリンがタキサンに非劣性を示したことが報告されている。

 本試験では、HER2+局所進行/転移乳がん患者をエリブリン群または医師選択のタキサン(ドセタキセルまたはパクリタキセル)群に無作為に1:1の割合で割り付け、1次化学療法としてトラスツズマブ+ペルツズマブと併用した。PFSは2023年6月30日まで、OSは2024年12月31日まで評価した。生存アウトカムは、エリブリン群とタキサン群で比較し、循環腫瘍DNA(ctDNA)によるPIK3CA変異(E542K、E545K、H1047R、N345Kの単一ヌクレオチド変異)またはHER2増幅(ERBB2コピー数>2.5)の検出状況に応じて比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・OS中央値は、エリブリン群が78.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:64.3~未到達)、タキサン群が未到達で、ハザード比は1.25(95%CI:0.92~1.71、p=0.19)であった。
・60ヵ月OS率は、エリブリン群が59.7%、タキサン群が65.2%であった。
・患者全体および治療群ごとのいずれにおいても、ctDNA PIK3CA変異陽性例ではOS中央値および60ヵ月OS率が数値的に低く、ctDNA HER2増幅陽性例では高かった。
・治療群とctDNA PIK3CA変異またはctDNA HER2増幅の状態との間に統計学的に有意な相互作用は認められなかった。
・PFSについても同様の傾向が観察された。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Saji S, et al. ESMO Open. 2026;11:108325.

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高齢の転移TN乳がん患者におけるSGの有用性~国際共同リアルワールド研究

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 転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の高齢患者に対するサシツズマブ ゴビテカン(SG)の臨床成績を評価した国際共同リアルワールド研究の結果を、ポーランド・Maria Sklodowska-Curie National Research Institute of OncologyのAleksandra Konieczna氏らが報告した。このリアルワールド集団において、SGを投与された65歳以上の患者のアウトカムは若年患者と同等以上であり、重篤な有害事象の明らかな増加は認められなかった。Oncologist誌オンライン版2026年7月20日号に掲載。

 本研究は、2021年8月~2025年5月に中央ヨーロッパの18の腫瘍センターにおいて、SGを投与された転移TNBC患者を対象とした後ろ向き国際共同研究である。SG開始時年齢によって65歳未満と65歳以上に層別化した。主要評価項目は全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、治療変更、および安全性などであった。

 主な結果は以下のとおり。

・303例中76例(25.1%)が65歳以上であった。高齢患者では併存疾患や緩和治療ラインが多く、ECOG PS 1以上が多かった。
・調整前の解析では、65歳以上でOS中央値が長く(12.8ヵ月vs.10.9ヵ月、ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.49~0.99、p=0.045)、PFS中央値も長かった(5.4ヵ月vs.4.1ヵ月、HR:0.73、95%CI:0.54~0.97、p=0.031)。一方、多変量解析においては、年齢はOSまたはPFSと独立して関連していなかった。
・ORR、DCR、治療の変更、Grade3以上の好中球減少症については、両群間で差は認められなかった。

 著者らは「調整後の生存率については、年齢が独立した関連因子とはならなかったことから、治療方針の決定は暦年齢のみに基づいて行うべきではないことが示唆される。高齢患者におけるSGの使用はベースライン時の疾患特性、併存疾患、PS、患者の希望、可能であれば老年医学的評価を総合的に考慮すべき」とした。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Konieczna A, et al. The Oncologist. 2026 Jul 20. [Epub ahead of print]

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抗TROP-2 ADCはTROP-2発現レベルで効果が変わるか

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 抗TROP-2抗体薬物複合体(ADC)は、転移乳がんの治療薬として有効性を示しているが、患者のTROP-2の発現レベルによって効果がどの程度異なるかは明らかではなかった。今回、イタリア・Istituto Nazionale Tumori, IRCCS Fondazione G. PascaleのRoberto Buonaiuto氏らのシステマティックレビューおよびメタ解析により、抗TROP-2 ADCは転移乳がんの無増悪生存期間(PFS)を有意に改善するが、その治療効果はTROP-2発現レベルが高い患者でより顕著であることが示された。Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版2026年7月10日号掲載の報告。

 研究グループは、転移乳がん患者を対象に抗TROP-2 ADCによる治療を行った第II~III相試験(2015年1月~2025年9月)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、TROP-2発現レベルと抗TROP-2 ADCの有効性との関係を評価した。対象は、ASCENT試験(サシツズマブ ゴビテカン)、TROPiCS-02試験(サシツズマブ ゴビテカン)、EVER-132-002試験(サシツズマブ ゴビテカン)、OptiTROP-Breast01試験(sacituzumab tirumotecan)、TROPION-Breast01試験(ダトポタマブ デルクステカン)の5試験の参加者であった。

 各試験が独自に設定したTROP-2発現レベルごとに、PFSのハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)のデータを抽出した。さらに、試験間のデータの異質性を考慮したうえで、固定効果モデルあるいはランダム効果モデルを用いて統合ハザード比を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析には、抗TROP-2 ADCまたは化学療法が実施された1,879例が含まれた。
・抗TROP-2 ADCは、全体のサブグループとトリプルネガティブ乳がん(TNBC)のサブグループにおいて、TROP-2発現レベルにかかわらず化学療法と比較してPFSを有意に改善した。
 -全体集団のTROP-2高発現群 HR:0.34、95%CI:0.20~0.57
 -全体集団のTROP-2低発現群 HR:0.63、95%CI:0.50~0.79
 -TNBCのTROP-2高発現群 HR:0.27、95%CI:0.20~0.37
 -TNBCのTROP-2低発現群 HR:0.46、95%CI:0.33~0.64
・HR+/HER2-乳がんにおいては、PFSの有意な改善はTROP-2高発現群でのみ確認された(HR:0.56、95%CI:0.47~0.68)。
・すべてのサブタイプにおいて、PFSの改善はTROP-2高発現群でより顕著であった。

 研究グループは「これらの知見は、患者の選択と治療方針の決定を最適化するために、標準化され、臨床的に意義のあるTROP-2検査の重要性を浮き彫りにしている」とまとめた。

(ケアネット 森)


【原著論文はこちら】

Buonaiuto R, et al. J Natl Cancer Inst. 2026 Jul 10. [Epub ahead of print]

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