乳がん内分泌療法に伴う血管運動神経症状にNK-1,3受容体拮抗薬elinzanetantが有効(OASIS-4)/ASCO2025

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 HR+乳がんの内分泌療法に伴うホットフラッシュなどの血管運動神経症状(VMS)はQOLに影響し、アドヒアランスを低下させ乳がんの転帰を悪化させるが、有効な治療法はほとんどなく承認された薬剤もない。今回、内分泌療法を受けているHR+乳がん治療中もしくは乳がん発症リスクが高い女性を対象に、ニューロキニン(NK)-1,3受容体拮抗薬elinzanetant(EZN)の有用性を検討した多施設無作為化二重盲検プラセボ対照第III相OASIS-4試験の結果を、ポルトガル・ABC Global AllianceのFatima Cardoso氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で報告した。本試験において、EZNが内分泌療法に伴うVMSの頻度と重症度を早期に減少させ、その効果は52週まで継続し、忍容性も良好であったという。この結果はNEJM誌オンライン版2025年6月2日号に同時掲載された。

・対象:HR+乳がんの治療中もしくは乳がん発症リスクが高い18~70歳の女性で、内分泌療法(タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬、GnRHアナログ併用/非併用)に伴う中等度~重度のVMSを週35回以上経験した女性
・試験群:1日1回EZN(120mg)を52週間投与(316例)
・対照群:プラセボを12週間投与、その後EZNを40週間投与(158例)
・評価項目:
[主要評価項目]1日の中等度~重度VMSの頻度の平均のベースラインから4週および12週までの平均変化
[重要な副次評価項目]Patient-Reported Outcomes Measurement Information System Sleep Disturbance Short Form(PROMIS SD SF)8b合計スコア、Menopause-Specific Quality of Life(MENQOL)質問票合計スコアのベースラインから12週までの平均変化
[副次評価項目]1日の中等度~重度VMSの頻度の平均のベースライン~1週の平均変化および経時変化、1日の中等度~重度VMSの重症度の平均のベースライン~4週および12週の平均変化、治療中に発現した有害事象(TEAE)

 主な結果は以下のとおり。

・1日の中等度~重度VMS頻度の平均(95%信頼区間[CI])は、ベースラインでEZN群11.4(10.7~12.2)、プラセボ群11.5(10.5~12.5)であった。ベースラインからの減少は1週から認められ、4週ではEZN群が-6.51、プラセボ群が-3.04で有意差が認められた(最小二乗平均差:-3.5、95%CI:-4.4~-2.6、p<0.0001)。12週においてもEZN群が-7.76、プラセボ群が-4.20で有意差が認められた(最小二乗平均差:-3.4、95%CI:-4.2~-2.5、p<0.0001)。
・1日の中等度~重度VMSの重症度の平均におけるベースラインからの低下は、4週ではEZN群で-0.73、プラセボ群で-0.43、12週ではENZ群で-0.98、プラセボ群で-0.53と、いずれもEZN群のほうが大きかった。
・プラセボ対照期間(12週まで)にTEAEが報告された患者はEZN群で220例(69.8%)、プラセボ群で98例(62.0%)であった。疲労、傾眠、下痢がEZN群のほうが多かった。

 なお、52週の試験期間後、患者意思による任意の2年間の延長が進行中であり、追加の安全性データが集積されている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Cardoso F, et al. N Engl J Med. 2025 Jun 2. [Epub ahead of print]

【参考文献・参考サイトはこちら】

OASIS-4試験(ClinicalTrials.gov)

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ESR1変異のER+/HER2-進行乳がん、vepdegestrantがフルベストラントよりPFS改善(VERITAC-2)/ASCO2025

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 CDK4/6阻害薬と内分泌療法で病勢が進行したエストロゲン受容体陽性(ER+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がん患者を対象に、vepdegestrantとフルベストラントの有効性と安全性を比較した第III相VERITAC-2試験の結果、ESR1変異を有する患者においてvepdegestrant群の無増悪生存期間(PFS)が有意に改善したことを、米国・Sarah Cannon Research InstituteのErika P. Hamilton氏が国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。本研究は、2025年5月31日のNEJM誌オンライン版に同時掲載された。

 vepdegestrantは、経口投与可能なタンパク質分解標的キメラ(PROTAC)型のER分解薬である。選択的ER分解薬(SERD)とは異なり、ERを直接分解することで腫瘍増殖の抑制や退縮作用が期待されている。

・試験デザイン:国際共同非盲検ランダム化第III相試験
・対象:CDK4/6阻害薬と内分泌療法による1ラインの前治療歴を有し(追加の内分泌療法は最大1ライン)、手術または放射線治療が適応ではないER+/HER2-の進行または転移を有する乳がん患者 624例
・試験群:vepdegestrant 200mg(1日1回経口投与) 313例
・対照群:フルベストラント500mg(28日を1サイクルとして1サイクル目の1・15日目、2サイクル目以降は1日目に筋肉内投与) 311例
・評価項目:
[主要評価項目]ESR1変異を有する集団および全体集団における盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)、BICRによる臨床的有用率(CBR)、BICRによる奏効率(ORR)、安全性
・層別化因子:ESR1変異、内臓疾患の有無
・データカットオフ:2025年1月31日

 主な結果は以下のとおり。

・年齢中央値はvepdegestrant群60歳(範囲:26~89)、フルベストラント群60歳(28~85)、ESR1変異を有していたのは両群ともに43%、進行・転移がんに対する前治療ライン数は1ラインが82%/76%であった。
・主要評価項目であるBICRによるPFS中央値は、ESR1変異集団において、vepdegestrant群5.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:3.7~7.4)、フルベストラント群2.1ヵ月(95%CI:1.9~3.5)であり、vepdegestrant群で有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.57[95%CI:0.42~0.77]、p<0.001)。6ヵ月PFS率は、45.2%および22.7%であった。
・全体集団では、vepdegestrant群における統計学的に有意なPFSの改善は認められなかった(3.7ヵ月vs.3.6ヵ月、HR:0.83[95%CI:0.68~1.02]、p=0.07)。
・治験担当医評価のPFSも同様の結果であった。
・OSデータは未成熟であった。
・CBRは、ESR1変異集団ではvepdegestrant群42.1%、フルベストラント群20.2%であった(オッズ比[OR]:2.88[95%CI:1.57~5.39]、p<0.001)。全体集団では34.3%および28.7%であった(OR:1.29[95%CI:0.89~1.91]、p=0.16)。
・ORRは、ESR1変異集団ではvepdegestrant群18.6%、フルベストラント群4.0%であった(OR:5.45[95%CI:1.69~22.73]、p=0.001)。全体集団では10.9%および3.6%であった(OR:3.23[95%CI:1.38~8.71]、p=0.003)。
・試験治療下における有害事象(TEAE)は主にGrade1/2であった。Grade3以上のTEAEはvepdegestrant群23%、フルベストラント群18%に発現した。vepdegestrant群で多く認められたTEAEは、疲労27%(うちGrade3以上:1%)、ALT上昇14%(同:1%)、AST上昇14%(同:1%)、悪心13%(同:0%)などであった。QT延長の発現は、vepdegestrant群10%、フルベストラント群1%であった。TEAEによりvepdegestrantの投与を中止した患者は3%であった(フルベストラントは1%)。

 Hamilton氏は「これらの結果は、vepdegestrantがESR1変異を有するER+/HER2-の進行乳がんに対する有望な治療選択肢となる可能性を支持するものである」とまとめた。

(ケアネット 森)


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AI+CDK4/6i療法中にESR1変異検出、camizestrantへの切り替えでPFS改善(SERENA-6)/ASCO2025

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 ER+/HER2-の進行または転移を有する乳がんと診断され、アロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬の併用療法中にESR1変異が検出された患者を対象に、camizestrant+CDK4/6阻害薬への切り替えまたはAI+CDK4/6阻害薬の継続の有用性を検討した第III相SERENA-6試験の中間解析の結果、camizestrant+CDK4/6阻害薬への切り替えによって無増悪生存期間(PFS)が統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことを英国・Royal Marsden HospitalのNicholas C. Turner氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。本研究は、2025年6月1日のNEJM誌オンライン版に同時掲載された。

 SERENA-6試験は、循環腫瘍DNA(ctDNA)によって内分泌療法抵抗性を検出し、病勢進行前に治療の切り替えを実施するアプローチを使用した初の第III相国際共同二重盲検試験。定期的な腫瘍の画像検査時にctDNA検査を行い、内分泌療法抵抗性の初期兆候およびESR1変異を有する患者を特定した。ESR1変異が検出され、病勢進行がない場合は、AI(アナストロゾール、レトロゾール)からcamizestrantに切り替えて、同じCDK4/6阻害薬(パルボシクリブ、アベマシクリブ、ribociclib)との併用を続けた。camizestrantは次世代経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)および完全ER拮抗薬である。これまでの試験において、ESR1変異が検出された患者と検出されなかった患者の両方で抗腫瘍活性を示している。

・試験デザイン:国際共同二重盲検ランダム化第III相試験
・対象:ER+/HER2-の進行または転移を有する乳がんと診断され、1次治療としてAI+CDK4/6阻害薬の併用療法を6ヵ月以上実施し、2~3ヵ月ごとのctDNA検査(Guardant360 CDx)でESR1変異が検出され、病勢進行は認められない患者 315例
・試験群:camizestrant(75mg、1日1回経口投与)+CDK4/6阻害薬へ切り替え※ 155例
・対照群:AI+CDK4/6阻害薬を継続※ 155例
※試験群にはAIのプラセボ、対照群にはcamizestrantのプラセボも投与
・評価項目:
[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく治験責任医師の評価によるPFS
[副次評価項目]治験責任医師の評価による無作為化から次の治療ライン開始後の増悪または死亡までの期間(PFS2)、全生存期間(OS)、安全性、患者報告アウトカム
・データカットオフ:2024年11月28日

 主な結果は以下のとおり。

・3,256例でctDNAを用いたESR1変異の観察が行われた。548例でESR1変異が検出され、315例がランダム化された。camizestrantへ切り替える群が157例(年齢中央値:61.0歳)、AIを継続する群が158例(同:60.5歳)であった。CDK4/6阻害薬は同じ薬剤を同じ投与量で継続した。
・主要評価項目であるPFS中央値は、camizestrant切替群16.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.7~18.2)、AI継続群9.2ヵ月(同:7.2~9.5)であり、camizestrant切替群で有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.44[95%CI:0.31~0.60]、p<0.00001)。24ヵ月PFS率は、29.7%および5.4%であった。
・PFSのベネフィットはサブグループ間で一貫していた。
・患者報告アウトカム(健康状態/生活の質)が悪化するまでの期間の中央値は、camizestrant切替群23.0ヵ月(95%CI:13.8~NC)、AI継続群6.4ヵ月(同:2.8~14.0)であった(HR:0.53[95%CI:0.33~0.82]、p<0.001)。
・PFS2データは未成熟であったが、camizestrant切替群において良好な傾向にあった(HR:0.52[95%CI:0.33~0.81]、p=0.0038)。
・OSデータも未成熟であった。
・Grade3以上の有害事象は、camizestrant切替群60%、AI継続群46%に発現した。camizestrant切替群で発現した主な有害事象は、好中球減少症55%(うちGrade3以上:45%)、光視症(photopsia:視野の周辺部における光の短い閃光)20%(同:1%)、貧血17%(同:5%)、白血球減少症17%(同:10%)などであった。新たな安全性シグナルは認められなかった。

 これらの結果より、Turner氏は「SERENA-6試験から得られた知見は、1次治療の患者の予後を最適化するための新たな治療戦略となる可能性を有している」とまとめた。

(ケアネット 森)


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HER2+進行乳がん1次治療のT-DXd+ペルツズマブ、進行/死亡リスクを44%減(DESTINY-Breast09)/ASCO2025

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 HER2+の進行または転移を有する乳がん患者の1次治療として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)+ペルツズマブ併用療法の有用性を評価した第III相DESTINY-Breast09試験の中間解析の結果、現在の標準治療よりも無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことを、米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

 DESTINY-Breast09試験は、HER2+の進行または転移を有する乳がん患者の1次治療として、T-DXd単独またはT-DXd+ペルツズマブ併用療法の有効性と安全性を、標準治療であるタキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法(THP療法)と比較評価することを目的として実施された。対象は、HER2+(IHC 3+またはISH+)の進行または転移を有する乳がんと診断され、進行・転移病変に対する化学療法またはHER2標的療法の治療歴がない、または内分泌療法歴が1ラインのみの患者であった。術前または術後補助療法として化学療法またはHER2標的療法の治療歴があっても、進行・転移までの期間が6ヵ月を超える場合は対象となった。

 主要評価項目はRECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、主要副次評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は治験責任医師によるPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、2次治療開始後のPFS(PFS2)、安全性であった。

 今回は、T-DXd+ペルツズマブ併用療法vs.THP療法の中間解析結果が報告された(データカットオフ:2025年2月26日)。

 主な結果は以下のとおり。

・T-DXd+ペルツズマブ群は383例、THP群は387例であった。年齢中央値は、54歳(範囲:27~85)/54歳(同:20~81)、アジア人が49.1%/49.4%、IHC 3+が83.0%/81.4%、HR+が54.0%/54.0%、de novoが52.2%/51.7%、PIK3CA変異陽性が30.3%/31.3%、脳転移ありが6.5%/5.7%、術前または術後補助療法歴ありが43.3%/43.7%であった。
・主要評価項目であるBICRによるPFS中央値は、T-DXd+ペルツズマブ群40.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:36.5~NC)、THP群26.9ヵ月(同:21.8~NC)であり、T-DXd+ペルツズマブ群において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比[HR]:0.56[95%CI:0.44~0.71]、p<0.00001)。24ヵ月PFS率は70.1%および52.1%であった。
・治験責任医師によるPFS中央値は、T-DXd+ペルツズマブ群40.7ヵ月(95%CI:36.5~NC)、THP群20.7ヵ月(同:17.3~23.5)であった(HR:0.49[95%CI:0.39~0.61]、p<0.00001)。24ヵ月PFS率は68.6%および43.7%であった。
・PFSのベネフィットはサブグループ間で一貫していた。
・BICRによるORRは、T-DXd+ペルツズマブ群85.1%(95%CI:81.2~88.5)、THP群78.6%(同:74.1~82.5)であった。完全奏効率は、15.1%および8.5%であった。
・BICRによるDOR中央値は、T-DXd+ペルツズマブ群39.2ヵ月(95%CI:35.1~NC)、THP群26.4ヵ月(同:22.3~NC)であった。
・OSデータおよびPFS2データは未成熟であったが、T-DXd+ペルツズマブ群で良好な傾向がみられた。
・Grade3以上の治療関連有害事象は、T-DXd+ペルツズマブ群54.9%、THP群52.4%に発現し、重篤な試験治療下における有害事象は27.0%および25.1%に発現した。間質性肺疾患/肺臓炎は、T-DXd+ペルツズマブ群46例(12.1%、Grade5が2例[0.5%])およびTHP群4例(1.0%、すべてGrade1/2)に発現した。T-DXd+ペルツズマブ群の安全性は既知のプロファイルと一致していた。

 これらの結果より、Tolaney氏は「DESTINY-Breast09試験において、T-DXd+ペルツズマブ併用療法は統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるPFSの改善をもたらした。HER2+進行乳がん患者の新たな第1選択の標準治療となる可能性がある」とまとめた。

(ケアネット 森)


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PD-L1陽性の未治療進行TN乳がん、SG+ペムブロリズマブがPFSを改善(ASCENT-04/KEYNOTE-D19)/ASCO2025

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 PD-L1を発現する未治療で手術不能の局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん患者を対象に、サシツズマブ ゴビテカン(SG)+ペムブロリズマブ併用療法の有効性と安全性を評価した第III相ASCENT-04/KEYNOTE-D19試験の結果、SG+ペムブロリズマブは化学療法+ペムブロリズマブよりも無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことを、米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

・試験デザイン:国際共同非盲検ランダム化第III相試験
・対象:PD-L1を発現する(CPS≧10、22C3アッセイ)、未治療(根治治療の完了から6ヵ月以上経過)で手術不能の局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん患者 443例
・試験群:サシツズマブ ゴビテカン(21日サイクルの1・8日目に10mg/kg)+ペムブロリズマブ(21日サイクルの1日目に200mg) 221例
・対照群:医師選択の化学療法(ゲムシタビン+カルボプラチン、パクリタキセル、nab-パクリタキセル)+ペムブロリズマブ※ 222例
 ※病勢進行時はSGへのクロスオーバーが許容
・評価項目:
[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)、BICRによる奏効率(ORR)、BICRによる奏効期間(DOR)、安全性、QOL
・データカットオフ:2025年3月3日

 主な結果は以下のとおり。

・443例が両群に1:1に無作為に割り付けられ、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで投与が継続された。追跡期間中央値は14.0ヵ月(範囲:0.1~28.6)であった。
・年齢中央値はSG+ペムブロリズマブ群54歳、化学療法+ペムブロリズマブ群55歳、両群ともにde novoが34%、6~12ヵ月以内の再発が18%、12ヵ月以上前の再発が48%であった。以前の治療歴は、タキサン系が52%/51%、ゲムシタビン+カルボプラチンが48%/49%、PD-(L)1阻害薬が4%/5%であった。
・主要評価項目であるBICRによるPFS中央値は、SG+ペムブロリズマブ群11.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.3~16.7)、化学療法+ペムブロリズマブ群7.8ヵ月(同:7.3~9.3)であり、SG+ペムブロリズマブ群において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比[HR]:0.65[95%CI:0.51~0.84]、p<0.001)。12ヵ月PFS率は、48%および33%であった。
・治験担当医評価のPFS中央値は、SG+ペムブロリズマブ群11.3ヵ月(95%CI:9.2~14.6)、化学療法+ペムブロリズマブ群8.3ヵ月(同:7.3~9.3)であった(HR:0.67[95%CI:0.52~0.87]、p=0.002)。12ヵ月PFS率は、48%および36%であった。
・ORRは、SG+ペムブロリズマブ群60%(95%CI:52.9~66.3)、化学療法+ペムブロリズマブ群53%(同:46.4~59.9)であった(オッズ比:1.3[95%CI:0.9~1.9])。完全奏効は13%および8%であった。
・DOR中央値は、SG+ペムブロリズマブ群16.5ヵ月(95%CI:12.7~19.5)、化学療法+ペムブロリズマブ群9.2ヵ月(同:7.6~11.3)であった。
・OSデータは未成熟(成熟度26%)であったが、SG+ペムブロリズマブ群において良好な傾向がみられた。
・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)は、SG+ペムブロリズマブ群71%、化学療法+ペムブロリズマブ群70%に発現した。10%以上に発現したGrade3以上のTEAEは、SG+ペムブロリズマブ群では好中球減少症(43%)と下痢(10%)で、化学療法+ペムブロリズマブ群では好中球減少症(45%)や貧血(16%)、血小板減少症(14%)であった。新たな安全性シグナルは認められなかった。
・SG+ペムブロリズマブ群では、TEAEによる治療中止が化学療法+ペムブロリズマブ群よりも少なかった(12%および31%)。

 これらの結果より、Tolaney氏は「ASCENT-04/KEYNOTE-D19試験の結果は、SG+ペムブロリズマブ併用療法がPD-L1陽性の未治療進行トリプルネガティブ乳がん患者に対する新たな標準治療となる可能性を支持するものである」とまとめた。

(ケアネット 森)


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乳がん家族歴のある女性の検診、3D vs.2D/JAMA Oncol

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 乳がんの家族歴のある女性を対象とした大規模コホート研究において、デジタル乳房トモシンセシス(DBT)を用いた乳がん検診が、従来のデジタルマンモグラフィ(DM)と比べ再検査率が大幅に低下し、特異度が向上したことをオーストラリア・シドニー大学のTong Li氏らが報告した。とくに、第1度近親者に乳がん患者がいる女性や乳腺散在乳房の女性でその効果が顕著で、きわめて高濃度乳房の女性では進行がん率を低下させることが示唆された。JAMA Oncology誌オンライン版2025年5月22日号に掲載。

 本研究では、2011~18年に米国・Breast Cancer Surveillance Consortiumの加盟施設でDBTまたはDMによる検診を受けた、18歳以上の乳がん家族歴のある女性20万8,945人、延べ50万2,357件の検診データを解析した。主要評価項目は、治療の逆確率重み付けを行った再検査率、がん発見率、中間期がん(検診と次回の検診の間に発見されるがん)率、進行がん率、生検率、陽性反応的中度、感度、特異度におけるDBTとDMの絶対リスク差(ARD)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・全体として、DBTはDMより再検査率が有意に低く(調整後ARD:-1.51%)、特異度が有意に高かった(同:1.56%)。とくに第1度近親者に1人の乳がん患者がいる女性では、DBTはDMより再検査率が有意に低く(同:-1.72%)、特異度が有意に高かった(同:1.75%)。
・乳腺密度別にみると、脂肪性乳房の女性ではDBTの非浸潤性乳管がん(DCIS)発見率はDMより有意に低かった(-0.71/1,000検査)。乳腺散在乳房の女性では、DBTの再検査率はDMより有意に低く(ARD:-1.90%)、特異度が有意に高かった(同:1.93%)。不均一高濃度乳房の女性では、DBTの再検査率はDMより有意に高かった(同:1.75%)。きわめて高濃度乳房の女性は、DBTの生検率はDMより有意に高く(同:0.48%)、進行がん率が有意に低かった(-0.61/1,000検査)。
・DBTによる検診ではDMよりも早期の浸潤がんで発見される割合が高かった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Li T, et al. JAMA Oncol. 2025 May 22. [Epub ahead of print]

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「がんと栄養」に正しい情報を!がん患者さんのための栄養治療ガイドライン発刊

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 日本栄養治療学会(JSPEN)は2025年2月、『がん患者さんのための栄養治療ガイドライン 2025年版』(金原出版)を刊行した。JSPENが患者向けガイドラインを作成するのは初めての試みだ。5月14日には刊行記念のプレスセミナーが開催され、比企 直樹氏(北里大学医学部 上部消化管外科学)と犬飼 道雄氏(岡山済生会総合病院 内科・がん化学療法センター)が登壇し、ガイドライン作成の経緯や狙いを解説した。

【比企氏】
 世の中には「〇〇を食べると健康に良い」といった根拠の乏しい情報があふれている。とくにがんに関しては、科学的根拠のない栄養療法や補助食品の情報があふれており、患者や家族が正しい情報を得ることに苦労している。一方で、最近ではがん治療と栄養療法に関連した研究が増え、「どの栄養素を、どれだけ摂取すれば、どんな効果があるか」に関するエビデンスが蓄積されてきた。実際、がんの薬物療法や手術治療において、栄養治療が副作用の軽減や合併症の予防に寄与することが明らかになっている。こうした背景から、患者さんが正しい情報を得られるよう、情報を整理するために作成されたのがこのガイドラインだ。

 JSPENは約2万4,000名の会員を抱える世界最大級の臨床栄養学の学会であり、会員の職種は医師、看護師、薬剤師、管理栄養士など多岐にわたる。実際、医療現場において栄養治療はNST(栄養サポートチーム)として多職種で担うことが多く、こうした医療者向けに昨年10月に『がん患者診療のための栄養治療ガイドライン 総論編』(金原出版)を刊行した。入院期間中はNSTが支援できるだろうが、外来治療中や退院後に不安になったときに、今回の患者向けガイドラインを使ってもらえればと考えている。患者さんの目に留まりやすいようポップな雰囲気の表紙にし、イラストを使うなどの工夫をした。全国のがん診療連携拠点病院を中心に1,000冊以上を寄付する取り組みも行っており、ぜひ手にとっていただきたい。

【犬飼氏】
 本ガイドライン作成に先立ち、がん患者へのアンケートを行った。334人から回答があり、Webアンケートだったこともあり、乳がんや血液がんの比較的若年層が多かった。「がん治療中の悩み」として多く挙がった項目としては、「リハビリテーションや運動療法、生活の仕方」が最多で29%、「食事のメニュー」が23%、「薬物療法の際の食事や栄養」が20%だった。口腔状態(9%)や手術後の栄養(5%)の項目は挙げる人が比較的少なかった。術後の栄養指導は診療報酬加算があり、医療機関が一般的に行っていることが不安解消につながったのではと分析している。

 栄養に関するアンケートのつもりが、「リハビリに関する悩み」が最多という結果を受け、ガイドラインでは46のQ&Aのうち、リハビリに関するものを9つ設定した。また、口腔に関する悩みは少なかったものの、口腔環境が食欲不振や味覚障害に影響することを知らない人も多いと考え、口腔関連で7つのQ&Aを設定した。その他が栄養に関するQ&Aという構成だ。

 がん薬物療法では、副作用の重症度を評価する指標であるCTCAEを使って、副作用の程度にかかわらず、それに応じた栄養治療の必要性が示されている。「がんになると体重が減って当たり前」と考える患者や家族も多いが、体重を維持することでQOL向上や副作用の軽減、治療の成績や予後の改善につながることがわかっている。こうした背景から、「がん治療中、体重は維持したほうがよいですか?」というQ&Aを設け、体重維持の重要性を強調している。がんによる体重減少には「食べられないで痩せる」と「食べていても痩せる」という2つの要因があり、前者はうつや吐き気、味覚障害、口内炎などが原因であることも多く、介入による改善が期待できる。ただし、「体重を減らすな、しっかり食べろ」と言うだけでは、食欲不振などで食べられず、ストレスを感じる患者・家族もいるだろう。そうした場合にお勧めの食品や調理法を提示し、栄養剤や点滴などの方法もあることを紹介した。

 がん治療前に口腔ケアをすることで、手術の合併症や口内炎の悪化を防ぐことも知ってほしい。体力低下には有酸素運動が有効で、患者には「栄養・運動・社会参加」のバランスが大切であることを伝えている。「がん治療のさまざまな場面で、多職種が適切に栄養治療をサポートする」というメッセージを込めた。このガイドラインが、患者や家族が医療者に悩みを相談するきっかけになればと考えている。

『がん患者さんのための栄養治療ガイドライン 2025年版』
定価:2,420円(税込)
判型:B5判
頁数:144頁(カラー図数:34枚)
発行:2025年2月
編集:日本栄養治療学会

目次
・1章 がんにならないために
・2章 がんになったら
・3章 薬物療法が始まったら
・4章 手術が決まったら・手術をしたら
・5章 がん治療後について
・6章 緩和医療において

書籍情報はこちら

(ケアネット 杉崎 真名)


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早期HER2+乳がん、術後化療+トラスツズマブへのペルツズマブ上乗せでOS改善(APHINITY)/ESMO BREAST 2025

提供元:CareNet.com

 HER2陽性乳がんに対する術後化学療法+トラスツズマブへのペルツズマブの上乗せを検証した第III相APHINITY試験の最終解析の結果、ペルツズマブの上乗せにより全生存期間(OS)が有意に改善したことを、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2025、5月14~17日)で報告した。

 APHINITY試験は、HER2陽性の手術可能な早期乳がん患者(4,804例)を対象に、術後療法として化学療法+トラスツズマブにペルツズマブを上乗せした際のプラセボに対する無浸潤疾患生存期間(iDFS)における優越性を検証したプラセボ対照無作為化比較試験。中間解析において、ペルツズマブ群では、プラセボ群よりもiDFSの有意な改善を示した。今回は、追跡期間中央値11.3年の最終解析結果が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・死亡はペルツズマブ群205例(8.5%)、プラセボ群247例(10.3%)に発生した(ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.69~1.00、p=0.0441[有意水準はp≦0.0496])。
・10年OS率は、ペルツズマブ群91.6%、プラセボ群89.8%であった。
・リンパ節転移陽性患者(HR:0.79、95%CI:0.64~0.97)ではペルツズマブ上乗せによるOSの有意な改善が認められたが、リンパ節転移陰性患者(HR:0.99、95%CI:0.66~1.49)では認められなかった。
・ホルモン受容体陽性患者(HR:0.76、95%CI:0.60~0.97)ではペルツズマブ上乗せによるOSの有意な改善が認められたが、ホルモン受容体陰性患者(HR:0.94、95%CI:0.70~1.26)では認められなかった。
・中間解析で認められたペルツズマブ上乗せによるiDFSの改善は11.3年時点でも維持されていた(HR:0.79、95%CI:0.68~0.92)。
・10年iDFS率は、ペルツズマブ群87.2%、プラセボ83.8%であった。
・リンパ節転移陽性患者ではペルツズマブ上乗せによるiDFSのベネフィットは引き続き臨床的に意義のあるものであったが、リンパ節転移陰性患者ではベネフィットは認められなかった。
・心臓に対する新たな安全性シグナルは特定されなかった。

 これらの結果より、Cortes氏は「リンパ節転移陰性の場合には化学療法+トラスツズマブを引き続き術後補助療法として選択すべきであるが、リンパ節転移陽性の場合にはペルツズマブも投与すべきである」とまとめた。

(ケアネット 森)


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HR+/HER2-進行乳がん、ESR1変異検査を行うタイミングは?(PADA-1)/ESMO BREAST 2025

提供元:CareNet.com

 第III相PADA-1試験では、ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんに対する1次治療としてアロマターゼ阻害薬とパルボシクリブの併用療法を受けた患者のうち、疾患進行前に血液中で検出されたESR1変異を有する患者において、フルベストラントとパルボシクリブ併用療法への早期切り替えの臨床的有用性が示されている。フランス・キュリー研究所のFrancois Clement Bidard氏は、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2025、5月15~17日)で同試験の2次解析結果を発表し、血中ESR1変異累積発現率は約40%で、その検出時期は一様でなく、治療開始後6ヵ月以内の検出例は少数であり、3年以降は減少することが確認された。

 本研究では、アロマターゼ阻害薬とパルボシクリブの併用による1次治療中の、転移を有するHR+/HER2-乳がん患者1,017例が対象とされた。組み入れ時、1ヵ月後、その後2ヵ月後おきにリキッドバイオプシーで採取した血中循環腫瘍DNA(ctDNA)からdroplet digital PCR(ddPCR)を用いてESR1変異の状況がモニタリングされ、以下の2群に分類された:
・疾患進行が認められたが血中ESR1変異を認めなかった395例
・画像診断による病勢進行の有無にかかわらず血中ESR1変異上昇が認められた283例
 ESR1変異発現の関連因子を評価するために、2項ロジスティック回帰分析を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・PADA-1試験における血中ESR1変異の累積発現率は、評価可能な患者の41.7%であった。
・血中ESR1変異の検出には経時的なばらつきがあり、アロマターゼ阻害薬とパルボシクリブの投与開始後6ヵ月間はほとんど検出されず、また投与開始後3年経過すると発現率は減少した。
・以下のベースライン因子は、疾患進行が認められたが血中ESR1変異を認めなかった症例との比較において、血中ESR1変異上昇と独立して関連が認められた:
骨転移あり(骨転移のみのオッズ比[OR]:2.7[95%信頼区間:1.5~4.8]、骨転移+他臓器転移のOR:2.1[1.3~3.4])
エストロゲン受容体発現の高さ([10%増加ごとに]OR:1.1[1.01~1.3])
年齢の若さ([10歳若いごとに]OR:1.3[1.1~1.45])
LDH高値(OR:1.6[1.1~2.3])

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

PADA-1試験(ClinicalTrials.gov)

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CT検査による将来のがんリスク、飲酒や過体重と同程度?

提供元:CareNet.com

 米国では、年間6,200万人の患者に対して約9,300万件のCT検査が行われている。CT検査は診断に役立つが、被曝によってがんリスクを高める可能性がある。2009年の分析では、2007年の米国におけるCTの使用により将来約2万9,000件のがんが発症するとの推定が報告されたが、2007年以降、年間に実施されるCT検査数は30%以上増加しているという。

 CT使用に関連する将来的ながん発症率の予測値を更新するため、カリフォルニア大学サンフランシスコ校疫学・生物統計学部のRebecca Smith-Bindman氏らは、2018年1月~2020年12月にカリフォルニア大学国際CT線量レジストリの検査データ12万1,212件を使用し、リスクモデルを用いた分析を実行した。放射線シミュレーションで18の臓器の線量を推定し、国立がん研究所の放射線リスク評価ツールを使用して将来的な放射線誘発がんリスクを予測した。データ解析は2023年10月~2024年10月に実施された。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2025年4月14日号掲載の報告。

 主な結果は以下のとおり。

・米国において2023年に推定6,151万人が9,300万件のCT検査を受けた。そのうち257万人(4.2%)が小児、5,894万人(95.8%)が成人、3,260万人(53.0%)が女性だった。
・これらの検査から、約10万3,000件の放射線誘発がんの発症が予測された。放射線誘発がんリスクは小児と青少年で高かったものの、成人におけるCT検査の活用率の高さによって、放射線誘発がん症例のほとんど(9万3,000件、91%)が成人によるものだった。
・がん種別で多かったがんは、肺がん(2万2,400件)、大腸がん(8,700件)、白血病(7,900件)、膀胱がん(7,100件)で、女性患者では乳がんが2番目に多かった(5,700件)。
・検査部位別では、成人では、腹部および骨盤CT検査によるものが最多(3万7,500件、37%)で、次いで胸部CT検査(2万1,500件、21%)が続いた。小児においては頭部CT検査が最多だった(53%)。
・CT検査1回当たりのがんリスクは1歳未満の小児で最も高く、たとえば15~17歳の女子のがんリスクは1,000回当たり2件だったのに対し、1歳未満の女子では1,000回当たり20件だった。
・小児は検査1回当たりのリスクが高かったものの、高齢者はCT検査の実施頻度が高く、全体では成人のリスクが高かった。たとえば、モデル予測では50~59歳の成人におけるCT検査の実施頻度ががん発生予測数(女性1万400件、男性9,300件)と最も高い相関関係にあったことが示された。

 研究者らは「本研究では、現在のCT利用状況と放射線線量レベルに基づいて、2023年のCT検査が被曝患者の生涯にわたって約10万3,000件の将来のがんを引き起こすと推定された。現在の診療慣行が継続された場合、CT関連がんは最終的に年間新規がん診断の5%を占める可能性があり、そうなるとCTはアルコール摂取(5.4%)や体重過多(7.6%)といったほかの重要なリスク要因と同等になるだろう」とした。

 一方、研究に関連しないほかの専門家からは「この研究は放射線被曝によるがんリスクの推定モデルであり、特定のCTスキャンと個々のがん症例との直接的な因果関係を示すものではないことに注意が必要だ」、「10万人のがん患者増という数字は憂慮すべきものだが、個人の生涯におけるがん発症リスクとしてはわずかな追加リスクに過ぎない」、「この結果は医師が必要と判断した場合にもCT検査を避けるべきだという意味ではない」といったコメントが寄せられている1)

(ケアネット 杉崎 真名)


【原著論文はこちら】

Smith-Bindman R, et al. JAMA Intern Med. 2025 Apr 14.[Epub ahead of print]

【参考文献・参考サイトはこちら】

1)As CT Use Rises, So Does Projected Risk for Future Cancers/Medscape

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