提供元:CareNet.com

PIK3CA変異陽性のホルモン受容体陽性/HER2陰性の局所進行または転移のある乳がんの治療において、パルボシクリブ+フルベストラントとの併用でinavolisib(PI3Kα阻害薬)はプラセボと比較し、全生存期間(OS)および奏効率を有意に改善することが、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのKomal L. Jhaveri氏らが実施した「INAVO120試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年5月31日号で報告された。
28ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験
INAVO120試験は、PIK3CA変異陽性乳がんの治療におけるinavolisib追加の有効性と安全性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年1月~2023年9月に世界28ヵ国で参加者を登録した(F. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。
PIK3CA変異陽性、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の局所進行または転移のある乳がんで、補助内分泌療法の施行中または終了後12ヵ月以内に再発または進行した患者を対象とした。女性は閉経状況を問わず、男性も対象に含めた。被験者を、inavolisib+パルボシクリブ+フルベストラントまたはプラセボ+パルボシクリブ+フルベストラントの投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。inavolisibは、28日を1サイクルとして9mgを1日1回経口投与した。
今回は、有効性と安全性の最新データと共に、OSの最終解析の結果が報告された。
無増悪生存期間の改善は維持された
325例を登録し、inavolisib群に161例、プラセボ群に164例を割り付けた。患者背景因子は全般に両群でバランスが取れていた。追跡期間中央値は、inavolisib群34.2ヵ月、プラセボ群32.3ヵ月だった。
OS中央値は、プラセボ群が27.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:22.8~38.7)であったのに対し、inavolisib群は34.0ヵ月(28.4~44.8)と有意に延長した(死亡のハザード比[HR]:0.67[95%CI:0.48~0.94]、p=0.02[事前に規定された統計学的有意差の境界値はp<0.0469])。
無増悪生存期間の最新の解析結果は、既報の主解析の結果と一致していた(inavolisib群17.2ヵ月vs.プラセボ群7.3ヵ月、病勢進行または死亡のHR:0.42[95%CI:0.32~0.55])。
奏効率も、inavolisib群で有意に優れた(62.7%[95%CI:54.8~70.2]vs.28.0%[21.3~35.6]、群間差:34.7%ポイント[95%CI:24.5~44.8]、p<0.001)。また、奏効期間中央値は、inavolisib群で長い状況が続いていた(19.2ヵ月vs.11.1ヵ月)。
高血糖、口内炎/粘膜炎が高頻度
プラセボ群に比べinavolisib群で頻度の高い有害事象として、高血糖(63.4%vs.13.5%)、口内炎または粘膜炎(55.3%vs.28.8%)、下痢(52.2%vs.16.0%)、皮疹(26.7%vs.19.6%)、眼毒性(ドライアイ、霧視など)(29.2%vs.16.0%)がみられた。
Grade3/4の有害事象(90.7%vs.84.7%)、重篤な有害事象(27.3%vs.13.5%)の頻度はinavolisib群で高く、inavolisibの投与中止に至った有害事象は6.8%、プラセボの投与中止に至った有害事象は0.6%で発現した。
著者は、「無増悪生存と全生存の双方のKaplan-Meier曲線が約2ヵ月後には乖離したことが示す早期の臨床的有益性と、奏効率の高さは、とくに予後不良な疾患特性を有し、長期の良好なアウトカムを得るには早期かつ迅速な病勢コントロールが重要となる患者において、inavolisibを含むこの治療の有効性が期待できることを支持するものである」としている。
(医学ライター 菅野 守)
【原著論文はこちら】
Jhaveri KL, et al. N Engl J Med. 2025 May 31. [Epub ahead of print]