日本のがん死亡率低下も、大腸がん・膵がん・子宮頸がんは依然高水準

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 日本では全がんの年齢調整死亡率(ASR)が着実に低下している一方で、大腸がん、膵がん、子宮頸がんなど一部のがん種では依然として国際的に高い死亡率が続いていることが明らかになった。胃がんと肝がんでは大幅な改善が認められたものの、予防や検診による死亡率低下が期待されるがん種において十分な成果が得られていない実態が浮き彫りとなった。国立がん研究センターの片野田 耕太氏らによる本研究の結果はJapanese Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年3月5日号に掲載された。

 研究では、国際がん研究機関(IARC)のGlobal Cancer Observatoryデータベースおよび各国の人口動態統計を用い、日本、韓国、米国、英国、カナダ、オーストラリアなどの高所得国における1980~2024年のがん死亡率の推移を比較した。解析対象は全がんに加え、胃がん、大腸がん、肝がん、膵がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、子宮頸がん、子宮体がんだった。

肝がん・胃がんは日本の成功事例

 歴史的に日本で死亡率が高かった胃がんと肝がんについては、長期的に大幅な減少がみられ、欧米諸国との国際格差は大幅に縮小した。とくに女性の肝がん死亡率については、日本が欧米諸国を下回る水準にまで低下した。著者らはこの背景として、B型・C型肝炎ウイルス検査の全国的な実施、妊婦へのHBs抗原検査、さらには直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の普及といった一連の肝炎対策が有効に機能したと考えられ、WHOが掲げる2030年までのC型肝炎排除目標に向け、国際的なモデルケースになり得る、としている。

 一方、胃がんも日本における死亡率は低下し続けているものの、韓国の減少速度には及ばなかった。日本ではヘリコバクター・ピロリ除菌の保険適用拡大など1次予防が進む一方、韓国では内視鏡検診を中心とした2次予防が強力に推進されている。また、韓国では国家健康保険制度により検診データが一元管理されているのに対し、日本では職域検診の精度管理やデータ統合に課題が残ることが示唆された。

大腸がん・膵がん・子宮頸がんは深刻な高水準

 大腸がん死亡率は1980年代には欧米のほうが高かったが、その後減少が進んだ。これに対し日本では明確な低下傾向がみられず、近年では比較対象国の中でも高い水準となっている。韓国も近年減少傾向に転じており、日本との差が広がっている。

 膵がんは、日本において男女とも死亡率の上昇が続いており、国際的にみても高い水準が際立っている。早期発見が困難で予後不良な疾患であるが、喫煙や2型糖尿病が重要なリスク因子であり、禁煙や糖尿病管理といった1次予防の重要性が改めて示された。

 子宮頸がんにおいても、日本の相対的な立ち位置は悪化した。欧米諸国や韓国では死亡率が大幅に減少した一方、日本では高止まりが続いている。HPVワクチンの積極的勧奨の中止と再開の経緯もあって接種率はいまだ不十分であり、ワクチン接種と検診の双方を速やかに強化する必要性が示された。

乳がん・肺がんでも改善が緩やか

 女性の乳がん死亡率は欧米では着実に低下している一方、日本では増加傾向が続き、差は縮小している。男性の肺がんでも欧米に比べて死亡率低下が緩やかであり、近年では日本の死亡率が欧米を上回る状況となっている。

一部のがんでは予防を強化する必要性

 本研究により、日本の全がんのASRは他国と同様に引き続き低下していることが示された。とくに、かつて日本の死亡率の高さの要因となっていた胃がん、肝がんで持続的な低下がみられ、欧米諸国との差は縮小し、女性の肝がんでみられるように一部では逆転している。一方で、日本は大腸がん、膵がん、および子宮頸がんにおいて依然として最も高い死亡率を示している。女性の乳がんおよび男性の肺がんでは、日本における低下の遅れ、あるいは継続的な増加により、死亡率が欧米諸国の水準に近づいている。これらのがんの多くでは、1次予防および2次予防の方法が確立されており、胃がん、肝がんで達成された死亡率低下を再現するために、予防対策を強化する必要性が示唆される。

(ケアネット 杉崎 真名)


【原著論文はこちら】

Katanoda K, et al. Jpn J Clin Oncol. 2026 Mar 5. [Epub ahead of print]

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高リスクER+/HER2-早期乳がん、Prosignaで化学療法省略を判断できるか/ASCO2026

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 エストロゲン受容体陽性/HER2陰性(ER+/HER2-)でリンパ節転移陽性例を中心とした早期乳がんに対し、Prosigna(PAM50)による再発リスク(Risk of Recurrence:ROR)スコアを用いることで化学療法の必要性を判断できるかどうかを検討した第III相OPTIMA試験の結果を、英国・NIHR University College London Hospitals Biomedical Research CentreのRobert C. Stein氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。本試験により、RORスコアが低い患者では化学療法を安全に省略できる可能性が示された。

 化学療法の上乗せ効果を予測するために複数の多遺伝子アッセイが用いられているが、リンパ節転移陽性例や閉経前症例における最適な患者選択についてはなお議論がある。そこで研究グループは、Prosignaによる治療選択が、標準治療に対して5年時点における浸潤性乳がんのない生存期間(IBCFS)で非劣性を示すかどうかを検討した。

 対象は、ER+(IHC>10%)/HER2-の早期乳がんで、腋窩リンパ節転移が0~9個(リンパ節転移陰性の場合は腫瘍径が30mm超)の40歳以上の女性および男性で、標準化学療法の後に内分泌療法を受ける群(C+ET群[内分泌療法後にProsignaも実施])と、Prosignaにより化学療法の要否を判断する群(Prosigna群)に1対1で無作為に割り付けられた。Prosigna群では、RORスコア60超(高リスク)の場合は標準化学療法の後に内分泌療法を実施し、RORスコア60以下(低リスク)の場合は化学療法を省略して内分泌療法のみを実施した。閉経前女性に対する内分泌療法には卵巣機能抑制が含まれた。

 患者へのRORスコアは非開示とされ、化学療法が行われる理由(無作為化による割り付けかProsignaの結果に基づくものか)について、施設および患者は盲検化された。

 主な結果は以下のとおり。

・2017年1月~2025年12月に4,429例がランダム化された。非劣性解析は、事前に規定されたper-protocol集団で実施された(C+ET群の93.0%、Prosigna群の94.6%の患者が該当)。追跡期間中央値は4.0(IQR:2.0~6.0)年であった。
・患者特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値56歳、閉経後62%、閉経前37%、男性1%であった。リンパ節転移状況は、pN0/pN1miが8%、pN1/pN1snが73%、pN2が19%であった。
・RORスコア中央値は、C+ET群が50、Prosigna群が49であった。Prosigna群の67.8%がRORスコア60以下と判定され、化学療法を省略可能だった。C+ET群でRORスコア60以下だったのは66.0%であった。
・乳がん再発は、C+ET群5.7%(低RORスコア群3.7%)およびProsigna群5.9%(同:4.2%)に生じ、低RORスコア集団では低かった。大半は遠隔転移であった。
・全体における5年IBCFS率は、C+ET群91.8%(95%信頼区間[CI]:90.1~93.2)、Prosigna群90.3%(95%CI:88.5~91.8)であり、事前に設定された非劣性マージン3%に対して非劣性が示された(ハザード比[HR]:1.03[90%CI:0.85~1.25]、非劣性のp=0.006)。
・低RORスコア集団における5年IBCFS率は、C+ET群の低RORスコア群94.8%(95%CI:93.1~96.1)、Prosigna群の低RORスコア群93.6%(95%CI:91.7~95.0)であり、事前に設定された非劣性マージン3.5%に対して非劣性が示された(HR:1.06[90%CI:0.80~1.40]、非劣性のp=0.003)。
・全体における5年無遠隔再発率は、C+ET群94.1%(95%CI:92.7~95.3)、Prosigna群93.3%(95%CI:91.7~94.5)であった(HR:1.04[90%CI:0.83~1.30])。低RORスコア集団ではそれぞれ97.0%(95%CI:95.6~98.0)および96.0%(95%CI:94.5~97.1)であった(HR:1.17[90%CI:0.82~1.66])。
・閉経状態、腫瘍径やリンパ節転移状態を含むサブグループ間でも同様の結果が得られた。

 Stein氏は、「OPTIMA試験は、ER+/HER2-早期乳がんでRORスコアが60以下の患者では化学療法から得られるベネフィットがあったとしてもごくわずかであることを示した。結果は試験の全集団に適用されるが、卵巣機能抑制を受けた40歳以上の閉経前女性やリンパ節転移の多い患者、StageIIIAの患者において、Prosignaの結果に基づいた化学療法の決定を支援する可能性がある」とまとめた。

(ケアネット 森)


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HR+/HER2+早期乳がん、de-escalation術前療法でも良好な長期予後(WSG TP-II)/JCO

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 HR+/HER2+の早期乳がんにおいて、術前療法としてトラスツズマブ+ペルツズマブにパクリタキセルまたは内分泌療法(ET)を併用した第II相WSG TP-II試験の結果、ET併用群でも良好な長期生存アウトカムが得られたことが、ドイツ・Evangelisches Krankenhaus Bethesda KlinikのOleg Gluz氏らにより示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年5月18日号掲載の報告。

 本試験は、手術可能なHR+/HER2+乳がん患者を対象に、トラスツズマブ+ペルツズマブの術前療法(12週間)に加え、パクリタキセル(週1回)またはETの併用が、病理学的完全奏効(pCR)や全生存期間(OS)などに及ぼす影響を評価した第II相多施設共同無作為化非盲検試験。なお、術後療法として全例に抗HER2療法が行われるとともに、術前療法でpCRが得られなかった患者では術後化学療法を必須とした(pCR達成例では術後化学療法は任意)。

 主要評価項目はpCR、副次評価項目はOS、非浸潤性乳管がんを含む無イベント生存期間(EFS)、無浸潤疾患生存期間(iDFS)、健康関連QOLなどとした。これまでの主要評価項目の解析では、パクリタキセル併用群のpCR率はET併用群よりも優れていることが明らかになっている(56.4% vs.23.7%)。今回は、最終の5年OS解析結果などが報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・207例が2つの試験群に1対1で無作為に割り付けられた。
・5年OS率は、ET併用群100%(95%信頼区間[CI]:100.0~100.0)、パクリタキセル併用群97.9%(95%CI:95.0~100.0)であった。
・5年EFS率は、ET併用群92.1%(95%CI:86.6~97.9)、パクリタキセル併用群94.8%(95%CI:90.5~99.3)であった。
・5年iDFS率は、ET併用群97.7%(95%CI:94.5~100.0)、パクリタキセル併用群79.8%(95%CI:55.6~100.0)であった。

 研究グループは「WSG TP-II試験では、HR+/HER2+の早期乳がんにおいて、忍容性が良好なde-escalationの術前療法を行い、そのpCR達成の有無に応じて術後化学療法を調整するアプローチの安全性および有効性が示唆された」とまとめた。

(ケアネット 森)


【原著論文はこちら】

Gluz O, et al. J Clin Oncol. 2026 May 18. [Epub ahead of print]

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卵巣機能抑制、閉経前早期乳がんの再発と生存に及ぼす影響は?/Lancet

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 閉経前のエストロゲン受容体(ER)陽性早期乳がんの治療において、卵巣機能抑制(OFS)は、化学療法やタモキシフェンが投与された場合でも、15年再発リスクおよび死亡リスクを有意に低下させることが明らかとなった。英国・Bradford Royal InfirmaryのMuneera B. Masood氏らEarly Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)が、無作為化比較試験に参加した個々の患者データを用いたメタ解析の結果を報告した。閉経前のER陽性早期乳がん女性において、卵巣摘出または薬剤によるOFSの追加的な保護効果は、化学療法後の閉経状態やタモキシフェンの使用状況によって異なる可能性があった。Lancet誌2026年5月2日号掲載の報告。

23件の無作為化比較試験に参加した約1万5,000例の患者レベルのメタ解析

 研究グループは、無作為化時点で閉経前かつ55歳未満のER陽性またはER不明早期乳がん女性において、OFSの有無別に比較した無作為化試験(2010年より前に開始され、再発または死亡を主要評価項目とした試験)の個々の患者データを用いたメタ解析を実施した。

 試験は、化学療法(実施された場合)後の閉経前状態が確認されたか否か、およびタモキシフェン投与の有無によって分類された。

 主要評価項目は、浸潤性乳がんの再発、乳がん死、その他の死因による死亡、および全死因死亡とした。ER重み付けlog-rank法を用いて、ER陽性疾患のイベント発生率比(RR)を推定した。

 適格基準を満たし、個々の患者データセットが提供された23試験における、無作為化時に閉経前でER陽性またはER不明の腫瘍を有する女性1万5,075例について解析した。

OFS追加で、乳がんの再発率が有意に低下

 非OFS群と比較して、OFS群で再発率が有意に低下した(RR:0.82、95%信頼区間[CI]:0.77~0.87、p<0.00001)。その効果は、化学療法後に閉経前であることが確認された(または化学療法を受けなかった)女性において、化学療法後に閉経前であることが確認されなかった女性より、大きかった(異質性のp=0.0004)。

 化学療法後に閉経前であることが確認された(または化学療法を受けなかった)女性では、タモキシフェンを用いた(タモキシフェン単独投与とOFS+タモキシフェン併用療法を比較した)最近の試験(RR:0.79、95%CI:0.70~0.91、p=0.0008)より、タモキシフェンを用いない以前の試験(RR:0.61、95%CI:0.52~0.71、p<0.0001)のほうが、再発リスクの低下が大きかった。

 また、これら最近の試験では、OFSによる再発リスク低下は、45歳未満女性群が45~54歳女性群よりも大きい傾向がみられた(RR:0.73[95%CI:0.63~0.86]vs.RR:0.95[95%CI:0.75~1.21]、p=0.072)。45歳未満女性群では、乳がん死亡率も同様に改善した(RR:0.74、95%CI:0.58~0.94、p=0.012)。

 再発を伴わない死亡の増加は認められなかった。また、OFSの方法や、その他の患者特性、腫瘍特性により、結果が有意に異なることはなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group (EBCTCG). Lancet. 2026;407:1699-1711.

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TN乳がん1次治療のDato-DXd、QOL悪化までの期間を延長(TROPION-Breast02)/ESMO BREAST 2026

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 免疫チェックポイント阻害薬の適応とならない局所進行切除不能または転移を有する未治療のトリプルネガティブ乳がんを対象とした第III相TROPION-Breast02試験において、抗TROP2抗体薬物複合体であるダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)は、化学療法と比較してQOL悪化までの期間を延長したことを、英国・Barts Cancer InstituteのPeter Schmid氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2026、5月6~8日)で報告した。

 これまでの解析では、Dato-DXdが治験責任医師選択化学療法(パクリタキセル、nab-パクリタキセル、カペシタビン、エリブリン、カルボプラチン)と比較して、主要評価項目である全生存期間および無増悪生存期間において統計的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことが報告されている。今回報告された患者報告アウトカム(PRO)解析では、全般的健康状態/QOL(GHS/QoL)、身体機能、疼痛、乳房症状、上肢症状について、初回悪化までの期間(time to first deterioration:TTFD)および悪化が確認されるまでの期間(time to confirmed deterioration:TTCD)などを評価した。PROは主としてEORTC QLQ-C30、EORTC Item Library(IL146、IL116)を用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・合計644例がDato-DXd群または化学療法群に1対1で無作為に割り付けられた。
・GHS/QOL悪化までの期間は、Dato-DXd群のほうが化学療法群よりも有意に長かった。中央値とハザード比(HR)、95%信頼区間(CI)は以下のとおり。
 -TTFD 23.5ヵ月vs.8.3ヵ月(HR:0.64[95%CI:0.46~0.88])
 -TTCD 未到達vs.29.0ヵ月(HR:0.61[95%CI:0.41~0.91])
・身体機能についてもDato-DXd群で悪化リスクの有意な低下が認められた。
 -TTFD 10.4ヵ月vs.4.1ヵ月(HR:0.67[95%CI:0.51~0.90])
 -TTCD 24.9ヵ月vs.9.0ヵ月(HR:0.59[95%CI:0.42~0.83])
・上肢症状についてもDato-DXd群で悪化リスクの有意な低下が認められた。
 -TTFD 未到達vs.12.5ヵ月(HR:0.51[95%CI:0.35~0.75])
 -TTCD 両群とも未到達(HR:0.48[95%CI:0.30~0.76])
・疼痛および乳房症状についてもDato-DXd群で悪化リスクの低下傾向がみられたものの、統計学的有意差は認められなかった。
・患者報告による症候性有害事象および治療忍容性は、主解析における医師報告の安全性プロファイルとおおむね一致していた。

(ケアネット 森)


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AI耐性HR+進行乳がんへのカピバセルチブ上乗せ、最終OS結果(CAPItello-291)/ESMO BREAST 2026

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 アロマターゼ阻害薬(AI)治療中または治療後に再発または進行したホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんに対するフルベストラントへのカピバセルチブの上乗せ効果を検討した国際第III相CAPItello-291試験において、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)はPIK3CAAKT1PTENのいずれかの遺伝子変異を有する患者および全体集団で有意に改善したことが報告されている。今回、副次評価項目である全生存期間(OS)の最終解析で、PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子に変異を有する患者集団および全体集団のいずれにおいても統計学的に有意な改善は認められなかったことを、米国・City of Hope Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2026、5月6~8日)で発表した。しかしながら、PFS2および初回化学療法開始/死亡までの期間(TFSC)が延長し、臨床的に意義のある効果が示されたという。

・対象:男性もしくは閉経前/後の女性のHR+/HER2-の進行乳がん患者(AI投与中/後に再発・進行、進行がんに対して2ライン以下の内分泌療法・1ライン以下の化学療法、CDK4/6阻害薬治療歴ありも許容、SERD・mTOR阻害薬・PI3K阻害薬・AKT阻害薬の治療歴は不可、HbA1c 8.0%未満)
・試験群(C+F群):カピバセルチブ(400mg1日2回、4日間投与、3日間休薬)+フルベストラント(500mg)355例
・対照群(P+F群):プラセボ+フルベストラント 353例
・評価項目:
[主要評価項目]全体集団およびPIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子に変異を有する患者集団におけるPFS
[副次評価項目]全体集団およびPIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子に変異を有する患者集団におけるOS、PFS2など
[探索的評価項目]TFSC

 主な結果は以下のとおり。

PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子に変異を有する患者集団におけるOS中央値は、C+F群28.5ヵ月、P+F群30.4ヵ月で、P+F群のほうが長かった。一方、ハザード比(HR)は0.83(95%信頼区間[CI]:0.63~1.10、p=0.201)でC+F群で良好だったが、有意な差は認められなかった。
・全体集団におけるOS中央値は、C+F群29.4ヵ月、P+F群28.6ヵ月、HRは1.00(95%CI:0.83~1.19)で差は認められなかった。
・病勢進行後に3ライン以上の後治療を受けた割合はP+F群で多く、分子標的薬の使用割合はC+F群25.8%、P+F群42.5%であった。
・PFS2中央値は、PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子に変異を有する患者集団ではC+F群15.9ヵ月、P+F群11.1ヵ月(HR:0.68、95%CI:0.53~0.88)であり、全体集団ではC+F群15.4ヵ月、P+F群12.7ヵ月(HR:0.85、95%CI:0.72~1.00)であった。
・TFSC中央値は、PIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子に変異を有する患者集団ではC+F群11.0ヵ月、P+F群6.0ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.48~0.80)であり、全体集団ではC+F群11.0ヵ月、P+F群7.0ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.63~0.87)であった。
・追跡期間の延長によって、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。

 Rugo氏は、OSに有意な改善が認められなかったことについて、両群における後続治療や病勢進行後の治療の不均衡がOSの差の検出力を低下させた可能性を指摘した。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

CAPItello-291試験(ClinicalTrials.gov)

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中性脂肪、がんリスクマーカーに?~日本の全身がん検査プログラム

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 京都府立医科大学の手良向 聡氏らが行った後ろ向き観察研究から、ベースラインの血清トリグリセライド(TG)が、将来のがん発症リスクを予測する高感度なバイオマーカーとなる可能性が示唆された。Health Science Reports誌2026年3月29日号掲載の報告。

 日本において、メタボリックシンドローム(Mets)併存患者のがん死亡率は年々増加しており、これらの患者のがんの早期発見が喫緊の課題となっている。近年、Metsの構成要素が活性酸素種(ROS)の生成、ホルモン産生の変化などを通じて、がん発生を促進する可能性が指摘されている。

 そこで研究者らはがんの発症とさまざまな危険因子との関連性を調べるため、2009年11月~2019年10月の期間、浜松光医学財団の浜松PET診断センターで全身がん検査を受けた浜松ホトニクスおよび関連企業の従業員1,495人(男性69.9%、平均年齢48.8歳)を対象に検証を行った。検査内容はPET-CT、胸腹部CT、頭部・骨盤MRI/MRA、腹部超音波、包括的な血液検査、腫瘍マーカーなど。主要評価項目は初回検査からがん発症までの期間で、カプランマイヤー法で推定し、Cox比例ハザードモデルを用いて、年齢、ライフスタイル、血液検査値、既往歴など各種リスク因子との関連を解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中に59例(3.9%)ががんを発症し、診断時の年齢中央値は57歳であった。
・がん種は大腸がん(12例)が最も多く、次いで肺がん(8例)、乳がん(7例)、胃がん(7例)、前立腺がん(6例)と続いた。
・多変量解析において、TGの上昇はがん発症と統計学的に有意な関連を示した(ハザード比[HR]:1.004、95%信頼区間[CI]:1.001~1.008、p=0.02)。
・空腹時TGの正常上限である150mg/dLを境にした解析では、150mg/dL以上の群は150mg/dL未満の群に対し、がん発症のHRが1.99(95%CI:0.94~4.24)となり、臨床的に意義のある傾向が確認された。
・高血圧の既往がある場合、がん発症リスクが顕著に高いことが示された(HR:2.88、95%CI:1.49~5.53、p=0.002)。
・初回検査からの累積がん発症率は、2年で1.0%、4年で2.3%、6年で3.4%、8年で4.8%であった。

 研究者らは、「ベースラインTGががんリスクのバイオマーカーである可能性が示された。また、高血圧の既往も強力な予測因子であり、これら代謝関連因子を適切に管理することが、がん予防戦略において重要となる可能性がある」としている。

(ケアネット 土井 舞子)


【原著論文はこちら】

Terashima S, et al. Health Sci Rep. 2026;9:e72219.

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HER2+早期乳がん、特定の患者集団では術前化学療法を省略してもpCR率59.6%(PHERGain-2)/ESMO BREAST 2026

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 化学療法を併用せずトラスツズマブ・ペルツズマブ(HP)による術前療法を受けたHER2陽性・腫瘍径5~30mmの未治療早期乳がん患者において、59.6%が病理学的完全奏効(pCR)を達成し、同レジメンを術後も継続した場合に健康関連QOL(HRQoL)が良好であることが示された。スペイン・Hospital Arnau de VilanovaのAntonio Llombart Cussac氏が、pCRに基づくde-escalation戦略を評価する目的で実施されたPHERGain-2試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2026、5月6~8日)で発表した。

 PHERGain-2試験は、多施設共同の第II相非盲検単群試験。HER2陽性(IHCスコア3+)かつリンパ節転移陰性、腫瘍径5~30mmの未治療早期乳がん患者を登録対象とした。患者には術前療法として、HPの皮下投与を3週間ごと8サイクル実施。術後療法について、pCRの達成状況に応じて以下の3群に割り付けられた。
コホートA(pCR[ypT0/is、ypN0]を達成):HP投与を継続して計18サイクル
コホートB(乳房内に浸潤性残存病変ありおよび/またはypN0[i+/mol+]もしくはypN1mi):トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)を3週間ごと10サイクル
コホートC(ypN1~3):任意の術後化学療法+T-DM1を3週間ごと10サイクル
※ホルモン受容体(HR)陽性の場合は術前および術後に内分泌療法を併用
[主要評価項目]1年時点でHRQoLの平均スコア(EORTC-QLQ-C30による評価)が10%以上低下した患者の割合および3年無再発期間(3y-RFI)(STEEP基準による評価)
[主要な副次評価項目]pCR、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・2021年8月~2024年3月に、396例が登録された(年齢中央値:55歳[範囲:24~85]、閉経後:59.3%、腫瘍径中央値:18mm[範囲:7~30]、HR陽性:72.7%、T1:61.6%)。試験治療を完了したのは352例であった。
・データカットオフは2025年3月28日、追跡期間中央値は15.1ヵ月であった。
・術前HPによる治療後1年時点でpCRを達成した患者は236例(59.6%)であった(コホートA)。残存病変を有する患者のうち148例がコホートB、7例がコホートCに組み入れられた。
・pCR率について、HR陽性とHR陰性(58.3%vs.63.0%)、T1とT2(ともに59.6%)の間で有意差は認められなかった。
・ベースライン時点におけるHRQoLの平均スコアは78.6(95%信頼区間[CI]:76.8~80.5)、1年時点でHRQoLの平均スコアが10%以上低下した患者の割合は、コホートAで37.3%(95%CI:30.1~44.9%)、残存病変を有する患者(コホートB+C)では51.9%(95%CI:41.9~61.7%)であった。
・治療関連有害事象は86.6%で発現し(Grade 3以上は5.6%)、重篤な有害事象は6.1%で発現した。肺臓炎による死亡が1例(0.3%)報告され、T-DM1との因果関係が認められた。
 
 Cussac氏は、「本試験では、標準的な化学療法+HPレジメンに匹敵する優れたpCR率および臨床的に意義のあるHRQoLの維持が示された」とまとめている。なお、3y-RFIについては現在評価中とした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

PHERGain-2試験(ClinicalTrials.gov)

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HR+/HER2-乳がん、早期および晩期再発の関連因子は

提供元:CareNet.com

 ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)乳がんのリアルワールドコホートにおいて、早期(5年未満)および晩期(5~10年)再発の関連因子を特定することを目的とした後ろ向き研究の結果、臨床的に低リスクに分類される患者であっても晩期再発が生じる可能性がある一方、早期再発は高い腫瘍量および増殖活性を反映することが示唆された。チリ・Pontificia Universidad Catolica de ChileのBenjamin Walbaum氏らによるBMC Cancer誌オンライン版2026年4月10日号掲載の報告より。
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 本研究では、1981~2022年に診断されたStageI~IIIのHR+/HER2-乳がん症例について、後ろ向き解析を実施した。無浸潤疾患生存(iDFS)率がSTEEP 2.0基準に従い評価され、評価変数には転移部位や早期および晩期の浸潤性再発が含まれた。早期再発は診断後6~<60ヵ月に発生した浸潤性再発、晩期再発は≧60~<120ヵ月に発生した浸潤性再発と定義された。

 主な結果は以下のとおり。

・計4,367例のHR+/HER2-乳がんの女性患者が解析に組み入れられた。
・81.2%がStageI/IIであり、41.4%にリンパ節転移が認められた。また、42.0%が術前化学療法を、94.0%が術後内分泌療法を受けていた。
・5年および10年iDFS率は、それぞれ85.0%および70.0%であった。
・847件の浸潤性イベント(19.4%)のうち、54.3%が早期再発であり、45.7%が晩期再発であった。
・晩期再発例と比較して早期再発例では、StageI腫瘍の割合が低く、リンパ節転移の割合と組織学的グレードが高く、Ki-67高値と関連していた。
・多変量解析において、より進行した病期が早期再発および晩期再発の双方に関連する唯一の独立した因子であった。また、高齢であることは晩期再発と関連していた。
・再発例の70.2%で遠隔転移が認められ、高腫瘍量、グレード3、Ki-67高値と関連していた。また、47.5%で内臓転移が認められた。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Walbaum B, et al. BMC Cancer. 2026 Apr 10. [Epub ahead of print]

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医師でリスクの低いがんは?~日本人の職業とがんリスクの大規模研究

提供元:CareNet.com

 日本の労働者における職業とがん種別発症リスクの関連を全国規模で調査した、東海大学の深井 航太氏らによる大規模症例対照研究の結果、肉体労働や運輸関連の職業でがんリスクが高いなど、職業による違いがみられ、とくに男性で顕著であることがわかった。一方、医師などの専門職では肺がん、食道がん、胃がん、大腸がんのリスクが低いことが示された。Journal of Occupational and Environmental Medicine誌オンライン版2026年4月14日号に掲載。

 本研究は、労働者健康安全機構の有する病職歴データベース(ICOD-R、2005〜23年度)を活用した多施設共同、病院ベース症例対照研究である。14万6,994例のがん症例と、年齢・性別・入院年をマッチングした27万8,244例の対照群を対象に分析した。喫煙、飲酒、肥満、シフトワークなどの生活習慣・背景因子を調整したうえで、一般事務従事者を基準とした職業別の調整オッズ比を算出した。

 主な結果は以下のとおり。

<男性>
・がん全体では、医師、歯科医師、獣医師、薬剤師、教師などの専門職およびホワイトカラーの職業においてリスクが低い一方で、肉体労働、サービス業、輸送関連の職業ではリスクが高い職業が多かった。
・肺がん、食道がん、胃がん、大腸がんは、医師などの専門職でリスクが低かったが、販売、飲食物調理、接客サービス、自動車運転、建設、土木、金属製品、運搬の職業では、肺がん、大腸がん、肝がんのリスクが高かった。
・木製品製造従事者は胆道がんリスクが高かった。
・建築家、土木技術者、測量士、音楽家、化学製品製造従事者は膀胱がんリスクが高かった。
・前立腺がんは多くの職種で一般事務職よりもリスクが低かったが、これは潜在的な発症率の差というより、受診行動やPSA検査を含む検診受診率における職業間の差異を反映している可能性がある。

<女性>
・がん全体では、職業分類による差は男性ほど顕著ではないが、特定の部位で関連が認められた。
・電気機械組立従事者は、肺がん、胆道がん、胃がんのリスクが有意に高かった。
・胃がんは、事務機器操作、商品販売、家庭生活支援サービス、衣服・宝石製品製造の従事者の間でリスクが高かった。
・大腸がんは、教師、芸術家、デザイナー、写真家や、映像操作、販売類似職業、家庭支援サービス、介護サービス、農業の従事者でリスクが低かった。
・乳がんは、保健師、助産師、看護師、その他の医療従事者、介護サービス従事者が、一般事務職と比較して有意にリスクが低かった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Fukai K, et al. J Occup Environ Med. 2026 Apr 14. [Epub ahead of print]

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