乳がん薬物療法の最新トピックス/日本癌治療学会

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 第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で企画されたシンポジウム「明日からの乳癌診療に使える!最新の薬剤の使いどころ」において、がん研究会有明病院の尾崎 由記範氏が、乳がん薬物療法の最新トピックスとして、KEYNOTE-522レジメンの使いどころ、HER2ゼロ/低発現/超低発現の課題、新たなPI3K阻害薬inavolisibを取り上げ、講演した。

高リスク早期TN乳がんへのKEYNOTE-522レジメンの使いどころ

 切除可能トリプルネガティブ(TN)乳がんの標準治療としては、術前に化学療法を行い術後にカペシタビンやオラパリブを投与する治療があるが、KEYNOTE-522試験の結果から術前・術後にペムブロリズマブを使えるようになった。

 KEYNOTE-522試験は、主にStageII/IIIのTN乳がんに対して、カルボプラチン+パクリタキセル → AC/ECの術前・術後にペムブロリズマブを併用し、予後改善を検討した第III相試験である。本試験で、病理学的完全奏効(pCR)割合、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間の改善が認められ、現在、ペムブロリズマブ併用レジメンが標準治療となっている。また、サブグループ解析において、StageやPD-L1の発現、pCR/non-pCRにかかわらず一貫した有効性が示され、StageII/IIIに広く使用できる。一方、免疫チェックポイント阻害薬は免疫関連有害事象(irAE)のリスクがある。術前治療においてGrade3以上のirAEが13%に認められており、5年EFSの9%のベネフィットとのバランスが議論になっているという。

 今回、尾崎氏はKEYNOTE-522レジメンの日常診療におけるクリニカルクエスチョン(CQ)のうち4つを取り上げ、自施設(がん研究会有明病院)の方針や考えを紹介した。

CQ:T2N0M0 cStageIIAのような比較的リスクの低い症例に対しても使用すべきか?
T2N0症例における5年EFSは10%の差があり、TN乳がんは再発すると予後が約2年であることから、使用するようにしている。

CQ:ホルモン受容体が弱陽性(ER 1~9%)の症例に使用すべきか?
KEYNOTE-522試験にはER 1~9%は含まれていないが、ER 1~9%はTN乳がんとして治療すべきという考えがあり、最近の論文ではThe Lancet Regional Health-Europe誌にもそのように記載されている。ESMO2024でER 1~9%に対するリアルワールドデータが報告され、pCR割合は75%とTN乳がんと同程度だった。がん研究会有明病院ではER 1~9%もTN乳がんと診断して使用している(必ずしも保険が適用されるとは限らないため、各施設での判断が必要)。

CQ:アントラサイクリンパートでG-CSF製剤の予防投与をするか?
KEYNOTE-522試験での発熱性好中球減少症の発現割合は18%と報告されている。がん研究会有明病院の青山 陽亮氏の発表では22.9%と報告されており(JSMO2024)、多くはアントラサイクリンパートで発現しているため、G-CSF製剤の1次予防投与を推奨している。

CQ:術後の最適な治療法は?
pCR/non-pCRにかかわらずペムブロリズマブの使用が標準治療になっているが、non-pCRの場合のカペシタビン、生殖細胞系列BRCA病的バリアントを有する場合のオラパリブも世界的に標準治療と位置付けられている。pCRの場合にペムブロリズマブを省略可能かどうかが世界中で議論されており、それを検討するためのOptimICE-pCR試験が2,000例規模で進行中である。また、non-pCRではより有効な治療選択肢が必要とされており、その1つとしてdatopotamab deruxtecan+デュルバルマブが検討されている(TROPION-Breast03試験)。また、周術期ペムブロリズマブ投与後の再発症例は非常に予後不良であることから、再発症例に対してペムブロリズマブ+パクリタキセル±ベバシズマブで比較する医師主導治験(WJOG16522B、PRELUDE試験)を開始予定である(治験調整事務局:尾崎氏)。

HER2ゼロ/低発現/超低発現の区別は喫緊の課題

 次に尾崎氏は、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の適応に関連するHER2ゼロ/低発現/超低発現について取り上げた。

 HR+HER2低発現/超低発現乳がんを対象としたDESTINY-Breast06試験において、T-DXdの有効性が示された。HER2超低発現の定義は、IHC0で10%以下の細胞に不完全な染色がある場合とされており、HER2-乳がんのうち20~25%とされている。この超低発現乳がんでも低発現乳がんと一貫した有効性が報告された。ESMO2024では、各施設でIHC0と判断された乳がんのうち、中央では24%がHER2低発現、40%が超低発現と判定されたとの報告があり、約6割がT-DXdのベネフィットが得られる可能性がある。T-DXdは今年8月、FDAからHER2低発現/超低発現の転移再発乳がん治療を対象として「画期的治療薬」として指定されており、日本でもすでに効能・効果追加の一部変更承認申請がなされていることから、尾崎氏は「HR+HER2ゼロとHER2低発現、超低発現の区別が喫緊の課題」と述べた。

新規PI3K阻害薬inavolisibがFDA承認、日本における課題

 尾崎氏は最後に、昨年末のサンアントニオ乳がんシンポジウム2023で初めて第III相INAVO120試験の主要評価項目である無増悪生存期間が発表され、そのわずか10ヵ月後の今年10月10日にFDAで承認されたPI3K阻害薬のinavolisibについて紹介した。

 INAVO120試験は、術後内分泌療法中に再発もしくは終了後12ヵ月以内に再発し、PIK3CA変異があるHR+HER2-乳がんを対象とした試験で、inavolisib+パルボシクリブ+フルベストラントの3剤併用の有効性が示された。

 現在、尾崎氏が考えるHR+HER2-乳がんに対する薬物療法は、アロマターゼ阻害薬+CDK4/6阻害薬を投与後、PIK3CA/AKT/PTEN変異の有無によって2次治療を選択、その後、ホルモン療法耐性、ホルモン感受性なし、visceral crisisの場合は抗体薬物複合体や化学療法、という流れである。inavolisibは再発診断時からPIK3CA変異を検出する必要があるため、尾崎氏は「米国では、再発1次治療としてinavolisib+パルボシクリブ+フルベストラントの併用がすでに承認され標準治療となるため、将来もしinavolisibが日本でも開発され承認されれば、日本でも同様に再発時点で遺伝子検査にてPIK3CA変異を確認する必要がある」と課題を提示した。

(ケアネット 金沢 浩子)


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乳がんにおけるADCの使いどころ、T-DXdとSGを中心に/日本癌治療学会

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 現在、わが国で乳がんに承認されている抗体薬物複合体(ADC)は、HER2を標的としたトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)とトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)、TROP2を標的としたサシツズマブ ゴビテカン(SG)の3剤があり、新たなADCも開発されている。これら3剤の臨床試験成績と使いどころについて、国立がんセンター東病院の内藤 陽一氏が第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)におけるシンポジウム「明日からの乳癌診療に使える!最新の薬剤の使いどころ」で講演した。

開発が進むADC、現在3剤が承認

 内藤氏はまず、「ADCは次々と開発が進んでおり、現在3剤が承認されているが、今後も新薬の登場や適応追加が予想される」と述べ、“明日から”というより“明日まで”使える内容と前置きした。

 現在承認されている3剤の適応は、T-DM1がHER2+乳がん、T-DXdがHER2+乳がんおよびHER2低発現乳がん、SGがトリプルネガティブ(TN)乳がんである。T-DXdはさらにHER2超低発現乳がんにおける有効性が示され、SGは海外でHR+乳がんにも有効性が示されていることから、今後適応が広がる可能性がある。

HER2+進行乳がん2次治療はT-DM1からT-DXdに

 HER2+進行乳がんに対するT-DM1の第III相試験には、トラスツズマブ+タキサンの治療歴のある患者に対してカペシタビン+ラパチニブと比較したEMILIA試験、3次治療以降で医師選択治療(TPC)と比較したTH3RESA試験が挙げられる。どちらも全生存期間(OS)の有意な改善が示されたことから、トラスツズマブ+タキサン後の2次治療以降の標準治療となったが、現在は以下のようにT-DXdに塗り替えられた。

 T-DXdは、トラスツズマブ+タキサンの治療歴がある患者に対してT-DM1と比較したDESTINY-Breast03試験、T-DM1治療歴のある患者に対してTPCと比較したDESTINY-Breast02試験があり、どちらもOSの有意な改善が認められた。一方、同じ2次治療として、トラスツズマブ+タキサンの治療歴のある患者に対してT-DM1+tucatinibをT-DM1と比較したHER2CLIMB-02試験があり、無増悪生存期間(PFS)の有意な改善が認められた。試験間での比較は適切ではないものの、ハザード比(HR)はHER2CLIMB-02試験では0.76(95%信頼区間[CI]:0.61~0.95)とDESTINY-Breast03試験の0.33(同:0.26~0.43)とは大きな差があり、脳転移症例に対してどちらも効果が認められること、tucatinibは現在日本では承認されていないこともあり、T-DXdがHER2+進行乳がんの2次治療の標準治療となっている。NCCNガイドラインでも2次治療にはT-DXdのみが記載されている。

HR+進行乳がんには現在T-DXdのみ、開発中の薬剤も

 HR+進行乳がんでは、HER2低発現乳がん(IHC2+/ISH-またはIHC1+)とHER2超低発現(IHC0で染色細胞が10%以下存在)にT-DXdの有効性が認められ、現在はHER2低発現乳がんに対してのみ、2次治療以降で承認されている。

 SGについても、2~4ラインの治療歴のあるHR+/HER2-進行乳がんを対象としたTROPICS-02試験において、TPCに比べてPFSおよびOSの改善が報告されている(日本ではHR+進行乳がんには未承認)。さらにTROP2を標的としたdatopotamab deruxtecan (Dato-DXd)が開発中である。すでにSGが承認されている米国のNCCNガイドラインでは、HR+進行乳がんの2次治療として、HER2低発現ではT-DXd、それ以外はSGと記載されている。

TN乳がんに対するT-DXdとSGの試験成績

 TN乳がんに対するADCとしては、T-DXdとSGが承認されている。T-DXdについては、HER2低発現進行乳がんに対するDESTINY-Breast04試験において、HR-症例のみの解析でPFS、OSとも良好な結果であったが、症例数は58例(T-DXd群40例、TPC群18例)と少ない。一方、SGのTN乳がんに対するASCENT試験は529例と症例数が十分に多く、PFSのHRは0.41(95%CI:0.32~0.52)、OSのHRは0.48(同:0.38~0.59)と良好な結果が示されている。NCCNガイドラインでは、TN乳がん2次治療においてSGが上に記載されており、生殖細胞系列BRCA1/2病的バリアントなしかつHER2低発現にはT-DXdと記載されている。

 内藤氏は、ADCにおけるもう1つの問題として、ADC後のADCは効果が低い可能性があるという報告がなされていることから、「ADC後に何を投与するかということが今後の課題」と述べた。

わが国における現時点のADCの使いどころは?

 最後に内藤氏は、日本における2024年10月時点のADCの使いどころについてまとめた。

 まず、HER2+進行乳がんでは2次治療にT-DXd、3次治療以降にT-DM1が入る。HR+進行乳がんでは2次治療にT-DXd(HER2低発現)のみ入っているが、「今後、SG、Dato-DXdが承認されたときにどれを使うかは今後の議論」とした。TN進行乳がんでは2次治療にSGとT-DXd(HER2低発現)が入るが、ベネフィットの大きさにはあまり遜色ないと述べた。また、これらの注意すべき有害事象のマネジメントについて、SGでは好中球減少が比較的多いためG-CSF投与などのマネジメント、T-DXdではILDのマネジメントを挙げ、講演を終えた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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TN乳がんに対する初のADCサシツズマブ ゴビテカン、有効性と注意すべき有害事象/ギリアド

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 2024年9月24日、全身療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性/HER2陰性(トリプルネガティブ)乳がん(TNBC)の治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)サシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)が本邦で承認された。10月29日にギリアド・サイエンシズ主催のメディアセミナーが開催され、岩田 広治氏(名古屋市立大学大学院医学研究科臨床研究戦略部)が「トリプルネガティブ乳がんに新薬の登場」と題した講演を行った。

ESMOガイドラインでは転移TNBCの2次治療として位置付け

 欧米では同患者に対するサシツズマブ ゴビテカンは約3年前に承認・使用されており、2021年のESMO Clinical Practice Guideline1)ではPD-L1陽性患者に対する免疫療法、gBRCA陽性患者に対するPARP阻害薬、PD-L1およびgBRCA陰性患者に対する化学療法などの次治療として位置付けられている。

 乳がん領域で承認されたADCとしてはトラスツズマブ エムタンシン(商品名:カドサイラ)、トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)に続き3剤目となるが標的となる抗体が異なり、TNBCに対しては初めて承認されたADCとなる。岩田氏は、「新しい作用機序の薬剤が使えるようになることは朗報。われわれはこの新しい武器を有効に使っていかなければならない」と話した。

ASCENT試験とASCENT-J02試験のポイント

 国際第III相ASCENT試験(日本不参加)では、2レジメン以上の化学療法歴のある(術前化学療法後12ヵ月以内に再発した場合は1レジメンで参加可能)転移TNBC患者(529例)を対象として、サシツズマブ ゴビテカンと主治医選択による化学療法の有効性が比較された。PD-L1陽性で免疫チェックポイント阻害薬治療歴のある患者が26~29%、gBRCA陽性でPARP阻害薬治療歴のある患者が7~8%含まれており、再発診断から登録までの中央値は約15ヵ月であった。

 最終解析の結果、無増悪生存期間(PFS)中央値はサシツズマブ ゴビテカン群4.8ヵ月vs.化学療法群1.7ヵ月(ハザード比[HR]:0.413、95%信頼区間[CI]:0.33~0.517)、全生存期間(OS)中央値は11.8ヵ月vs.6.9ヵ月(HR:0.514、95%CI:0.422~0.625)となり、サシツズマブ ゴビテカン群における改善が示されている2)。奏効率(ORR)は35% vs.5%であり、岩田氏はこの結果について「2レジメン以上の治療歴のある患者さんに対し、大きな治療効果といえる」と話した。

 日本で実施された第II相ASCENT-J02試験においても、サシツズマブ ゴビテカン投与患者(36例)におけるPFS中央値は5.6ヵ月、OS中央値はNR、ORRは25%で、ASCENT試験で報告された有効性との一貫性が示されている。

注意を払うべき有害事象と今後の展望

 岩田氏は、有害事象の中でとくに注意すべきものとして好中球減少症、下痢や悪心などの消化器症状、脱毛を挙げた。Grade3以上の好中球減少症はASCENT試験で34%、ASCENT-J02試験で58%、下痢はそれぞれ10%、8.3%に認められた。欧米では好中球減少症への対策として60~70%で予防的G-CSF投与が行われているといい、岩田氏は好中球減少症のマネジメントが課題となると指摘した。

 現在、転移・再発TNBCの1次治療におけるサシツズマブ ゴビテカンの有効性を評価する臨床試験がすでに進行中であるほか、同様の機序の薬剤の開発も進んでいる。岩田氏は今後はそれらの薬剤との組み合わせや使い分けが重要になってくるとして、講演を締めくくった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1)Gennari A, et al. Ann Oncol. 2021;32:1475-1495.

2)Bardia A, et al. J Clin Oncol. 2024;42:1738-1744.

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乳がんへのドセタキセルとパクリタキセル、眼科有害事象リスクに差/日本癌治療学会

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 乳がん周術期療法におけるドセタキセルとパクリタキセルの眼科有害事象のリスクを比較した結果、ドセタキセルはパクリタキセルと比較して流涙症のリスクが有意に高かった一方で、黄斑浮腫や視神経障害などのリスクは有意差を認めなかったことを、東京大学の祝 千佳子氏が第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。

 タキサン系薬剤は好中球減少症や末梢神経障害などさまざまな有害事象を来すことが広く知られているが、眼科有害事象についても報告がある。しかし、ドセタキセルとパクリタキセルの間で眼科有害事象を比較した研究は乏しい。そこで研究グループは、早期乳がんの周術期療法としてドセタキセルまたはパクリタキセルを使用した群で、眼科有害事象の発現リスクに差があるかどうかを比較するために研究を実施した。

 研究グループはDeSCのレセプトデータベースを用いて、2014年4月~2022年11月に周術期補助療法としてドセタキセルまたはパクリタキセルを使用した18歳以上の乳がん患者6,118例(ドセタキセル群3,950例、パクリタキセル群2,168例)を同定した。主要評価項目は流涙症、黄斑浮腫、視神経障害の発現、副次評価項目は眼科受診であった。主解析では、傾向スコアを用いたoverlap weighting法による生存時間分析を実施した。アウトカムの発生率は1万人年当たりで算出し、bootstrap法で信頼区間(CI)とp値を設定した。Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)を算出した。

 主な結果は以下のとおり。

●対象者の年齢中央値は65(四分位範囲:54~70)歳で、観察期間中央値は790(365~1,308)日であった。
●Overlap weighting後のドセタキセル群およびパクリタキセル群の流涙症の発現率はそれぞれ127および79/1万人年、黄斑浮腫は92および114/1万人年、視神経障害は53および78/1万人年、眼科受診は428および404/1万人年であった。
●ドセタキセル群はパクリタキセル群と比較して流涙症のリスクが有意に高かったが、黄斑浮腫、視神経障害、眼科受診のリスクは有意差を認めなかった。ドセタキセル群vs.パクリタキセル群のHRと95%CIは下記のとおり。
 【流涙症】
 ・主解析 HR:1.63、95%CI:1.13~2.37、p=0.010
 ・65歳未満 HR:1.82、95%CI:0.82~4.02、p=0.14
 ・65歳以上 HR:1.58、95%CI:1.04~2.42、p=0.033
 【黄斑浮腫】
 ・主解析 HR:0.81、95%CI:0.57~1.13、p=0.21
 ・65歳未満 HR:0.65、95%CI:0.32~1.33、p=0.24
 ・65歳以上 HR:0.86、95%CI:0.59~1.26、p=0.44
 【視神経障害】
 ・主解析 HR:0.67、95%CI:0.44~1.01、p=0.057
 ・65歳未満 HR:0.51、95%CI:0.24~1.09、p=0.082
 ・65歳以上 HR:0.73、95%CI:0.43~1.26、p=0.26
 【眼科受診】
 ・主解析 HR:1.09、95%CI:0.91~1.31、p=0.35
 ・65歳未満 HR:1.08、95%CI:0.81~1.45、p=0.60
 ・65歳以上 HR:1.09、95%CI:0.84~1.35、p=0.47

 これらの結果より、祝氏は「2群間で流涙症リスクに差が生じた理由として、薬剤特性の違いが涙液中の濃度や曝露時間に影響したり、添加物の違いが関係したりしている可能性がある」と示唆したうえで、「実臨床を反映した大規模診療データベースの解析の結果、乳がん患者において周術期療法としてのドセタキセル使用はパクリタキセル使用と比較して流涙症のリスクが有意に高く、とくに65歳以上で顕著であった。ドセタキセルまたはパクリタキセルの治療選択の際は、起こりうる眼科有害事象に留意する必要がある」とまとめた。

(ケアネット 森)


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HER2+乳がんが術前療法後に陰転、長期予後への影響は?/日本癌治療学会

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 術前薬物療法を行ったHER2陽性早期乳がん患者が手術検体を用いた術前薬物療法後の再検査でHER2陰性になった場合は、HER2陽性が保持されている場合と比べて長期予後が不良である可能性を、明治薬科大学/第一三共の中谷 駿介氏が第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。

 これまでの研究により、HER2陽性早期乳がんで、術前薬物療法を実施して残存病変が確認された症例の約8~47%でHER2が陽性から陰性に変化するHER2陰転化が報告されている。術前薬物療法後の手術検体を用いたHER2再評価は現時点で必須となっていないため、HER2陰転化症例に対しても術後薬物療法として抗HER2薬が投与されている実情がある。他方、HER2陰転化が予後に与える影響は研究によって結論が異なっている。HER2陰転化が予後に与える影響を明らかにすることで、術前薬物療法後の手術検体を用いたHER2再評価の必要性の再考、並びにHER2陰転化症例に対する最適な術後薬物療法の選択に寄与できる可能性がある。そこで、研究グループは、HER2陰転化が予後に与える影響を検討するために、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。

 研究グループは、2023年11月19日にPubMedとCochrane Libraryで対象となる研究を検索した。選択基準は、術前薬物療法を受けたHER2陽性早期乳がん症例を対象とし、術前薬物療法前後のHER2検査結果が報告されていて、再発リスクに関するアウトカムあるいは全生存期間(OS)の結果が報告されている観察研究あるいは介入研究で、2人の研究者がスクリーニングを実施した。主要評価項目は、HER2陽性早期乳がんにおける術前薬物療法後のHER2陰転化の予後予測因子としての有用性であった。

 主な結果・考察は以下のとおり。

・2013~22年に報告された8件の研究がシステマティックレビューおよびメタ解析に含まれた。再発リスクに関するアウトカムである無病生存期間(DFS)/無浸潤疾患生存期間(iDFS)/無再発生存期間(RFS)においては8件すべてが、OSにおいては8件のうち4件がメタ解析に含まれた。
・HER2保持群と比べ、HER2陰転化群ではDFS/iDFS/RFSが統計学的に有意に不良であった(ハザード比[HR]:1.85、95%信頼区間[CI]:1.31~2.61、p=0.0005)。
・ORにおいてもHER2陰転化群で統計学的に有意に不良であった(HR:2.37、95%CI:1.27~4.41、p=0.0065)。
・HER2陰転化はHER2陽性早期乳がんの予後に影響を与えるリスク因子であることが示唆された。
・HER2陰転化群がHER2保持群と比べて予後不良であった要因として、HER2陰転化症例に対して作用機序に基づいた適切な術後薬物療法が選択できていない可能性が考えられる。

 これらの結果より、中谷氏は「術前薬物療法後の手術検体を用いてHER2再検査を実施し、その結果に応じた薬物療法を選択することで、HER2陰転化症例に対して最適な治療法を提供できる可能性がある。HER2陰転化症例に対する最適な術後薬物療法に関するさらなる研究が期待される」とまとめた。

(ケアネット 森)


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早期乳がんの遠隔転移再発率、1990年代からどのくらい低下した?/Lancet

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 英国・Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)は同グループのデータベースを用いた統合解析を行い、エストロゲン受容体(ER)陽性およびER陰性乳がんの遠隔転移再発率が、1990年代に比べ2000年以降に診断された女性では約5分の1低下していることを報告した。この改善は、本研究に参加する低リスクの女性患者の割合が高くなったことと、補助療法の進歩により説明される。ER陽性乳がんの遠隔再発の長期リスクは、依然として存在するものの前回の報告よりも約10分の1低下した。ER陽性早期乳がん女性の遠隔転移再発率は診断後20年以上にわたって一定の割合で持続するが、ER陰性乳がんに関するデータはこれまでほとんどなかった。Lancet誌2024年10月12日号掲載の報告。

65万例を超えるEBCTCGデータベースから対象患者を抽出し解析

 研究グループは、早期乳がんの臨床試験に参加した65万例を超えるEBCTCGデータベースから、1990~2009年登録の新たにER陽性乳がんと診断され5年以上の内分泌療法が予定されていた患者またはER陰性と診断された患者で、診断時75歳未満、腫瘍径50mm以下、腋窩リンパ節転移10個未満、登録時遠隔転移のない女性患者を抽出し解析した。

 術前補助療法の臨床試験への参加者、術後補助療法の割り付けが不明な患者、ER陰性かつプロゲステロン受容体陽性の乳がん患者、結果またはベースライン時のデータが欠落している患者は除外した。

 主要評価項目は、各臨床試験で定義された最初の遠隔再発までの期間とし(局所再発または対側乳がんは除外)、患者および腫瘍の特性、試験、割り付けられた治療を補正したCox回帰を用いて、診断時期別の10年遠隔再発リスクを比較した。

遠隔再発率、2000年以降は1990年代に比べ約5分の1低下

 2023年1月17日時点のEBCTCGデータベースに登録されている早期乳がん女性患者65万2,258例のうち、151件の無作為化試験における15万5,746例(ER陽性かつ内分泌療法5年以上11万4,811例、ER陰性4万935例)が適格基準を満たした。

 遠隔再発率は、ER陽性例とER陰性例とも同様に改善した。ER陽性例の改善の80.5%ならびにER陰性例の改善の89.8%は、患者および腫瘍の特性の変化と治療の改善により説明されたが、依然として有意なままであった(p<0.0001)。最近診断された患者は、リンパ節転移陰性の割合が高かった。

 1990~99年と2000~09年の10年遠隔再発リスクを比較すると、リンパ節転移陰性の場合、ER陽性では10.1% vs.7.3%、ER陰性では18.3% vs.11.9%、リンパ節転移が1~3個の場合、それぞれ19.9% vs.14.7%、31.9% vs.22.1%、リンパ節転移が4~9個の場合、それぞれ39.6% vs.28.5%、47.8% vs.36.5%であった。

 治療について補正後、2000年以降は1990年代と比較して、遠隔再発率はER陽性例で25%、ER陰性例で19%減少し、ER陽性では5年を超えても同様の改善が認められた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group. Lancet. 2024;404:1407-1418.

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BRCA1/2変異保有者の避妊薬使用、乳がんリスクとの関連/JCO

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 生殖細胞系列BRCA1/2変異保有者において、ホルモン避妊薬が乳がんリスクを増加させるかどうかは不明である。今回、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのKelly-Anne Phillips氏らの研究で、ホルモン避妊薬は、とくに長期使用で、BRCA1変異保有者の乳がんリスク上昇と関連することが示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年10月2日号に掲載。

 本研究では、4つの前向きコホート研究からプールされた観察データを用いて、避妊薬使用とBRCA1/2変異保有女性の乳がんリスクとの関連についてCox回帰を用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

BRCA1変異保有者3,882人およびBRCA2変異保有者1,509人のうち、それぞれ53%および71%で1年以上の避妊薬使用歴があり、累積使用期間中央値はそれぞれ4.8年、5.7年だった。
BRCA1変異保有者488人とBRCA2変異保有者191人が、それぞれ追跡期間中央値5.9年と5.6年の間に乳がんを発症した。
BRCA1変異保有者では、現在/以前の使用とも1年以上の避妊薬使用歴は乳がんリスクと有意な関連はみられなかったが、使用歴ありは有意な関連がみられた。使用歴なしと比べたハザード比[HR](95%信頼区間[CI])は以下のとおり。
 現在使用:1.40(0.94~2.08)、p=0.10
 1~5年前に使用:1.16(0.80~1.69)、p=0.4
 6~10年前に使用:1.40(0.99~1.97)、p=0.05
 10年より前に使用:1.27(0.98~1.63)、p=0.07
 使用歴あり:1.29(1.04~1.60)、p=0.02
・避妊薬の累積使用期間が長いほど乳がんリスクが上昇し、1年増えるごとに3%(95%CI:1~5、p=0.002)のリスク上昇が推定された。
BRCA2変異保有者では、現在使用(HR:0.70、95%CI:0.33~1.47、p=0.3)および以前使用(HR:1.07、95%CI:0.73~1.57、p=0.7)とも乳がんリスクの上昇と関連していなかった。

 これらの結果から、著者らは「BRCA1変異を有する女性における避妊薬の使用については、個々人のリスクとベネフィットを慎重に検討する必要がある」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Phillips KA, et al. J Clin Oncol. 2024 Oct 2. [Epub ahead of print]

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転移を有する乳がん、ctDNA変化と生存率の関連~メタ解析

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 転移を有する乳がん患者の血中循環腫瘍DNA(ctDNA)における特定のゲノム変化の検出は、全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間(DFS)の悪化と関連していたことを、カナダ・Research Institute of the McGill University Health CentreのKyle Dickinson氏らがシステマティックレビューおよびメタ解析によって明らかにした。JAMA Network Open誌2024年9月5日号掲載の報告。

 これまでにも転移乳がんのctDNAと予後の関連を調査した報告は存在するが、研究デザインや分析方法などに不一致があり、矛盾する結論が得られている。そこで研究グループは、研究デザインの違いを考慮しながら特定のctDNAの変化を検出・評価することで、転移乳がんにおけるctDNAとOSやPFS、DFSの関連をより理解することができると考え、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。

 研究グループは、CINAHL、Cochrane Library、Embase、MedlineおよびWeb of Scienceをデータベースの開設から2023年10月23日まで検索した。メタ解析には、(1)転移/進行/StageIVの乳がんと診断された女性(18歳以上)が登録され、(2)ベースラインの血漿ctDNAデータがあり、(3)OSやPFS、DFSとそのハザード比(HR)の報告がある臨床研究を含めた。研究のスクリーニングおよびデータ抽出は2人の独立した研究者により実施され、データはランダム効果モデルを使用して統合された。

 主要評価項目はctDNAにおける特定のゲノム変化の検出と生存との関連で、副次評価項目は研究方法と生存との関連であった。

 主な結果は以下のとおり。

・20~94歳の女性患者4,264例を対象とした37件の研究が解析に含まれた。前向き研究が20件(54%)、後ろ向き研究が17件(46%)であった。
・ctDNAにおける特定のゲノム変化の検出と生存率低下の間に有意な関連が認められた(HR:1.40、95%信頼区間[CI]:1.22~1.58、p<0.001)。
・各生存転帰のサブグループ解析でも同様の結果が得られた。
 【OS】HR:1.44、95%CI:1.24~1.65、p<0.001
 【PFS】HR:1.31、95%CI:1.07~1.55、p<0.001
 【DFS】HR:1.56、95%CI:1.22~1.89、p<0.001
TP53およびESR1変異と生存率低下の間に有意な関連が認められた(それぞれのHR:1.58[95%CI:1.34~1.81]および1.28[95%CI:0.96~1.60]、いずれもp<0.001)。
PIK3CA変異は生存率低下との関連を示さなかった(HR:1.19、95%CI:0.85~1.53)。
・前向き研究でも後ろ向き研究でも同様に生存率の低下が認められた(それぞれのHR:1.48[95%CI:1.15~1.80]および1.37[95%CI:1.17~1.56]、いずれもp<0.001)。
・検出方法別に層別化すると、次世代シーケンシングとデジタルPCRのいずれかによるctDNA検出は生存率の低下と関連していた(それぞれのHR:1.48[95%CI:1.22~1.74]、1.28[95%CI:1.05~1.50]、いずれもp<0.001)。

 これらの結果より研究グループは、「ctDNAによる特定のゲノム変化の検出は、OSやPFS、DFSの悪化と関連しており、転移乳がんの予後バイオマーカーとしての可能性を示唆している。これらの結果は、ctDNAの実用性を判断する将来の研究デザインの指針となるだろう」とまとめた。

(ケアネット 森)

【原著論文はこちら】

Dickinson K, et al. JAMA Netw Open. 2024;7:e2431722.

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男性乳がんの病理学的特徴と生存期間

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 男性の乳がんは女性の乳がんと同様の治療戦略で管理されている。今回、中国・空軍軍医大学西京病院のMeiling Huang氏らは、自施設における男性乳がんの臨床病理学的特徴、治療、生存期間について後ろ向きに分析・報告した。American Journal of Men’s Health誌2024年9・10月号に掲載。

 本研究は2006年8月~2024年3月に西京病院に入院した男性乳がん患者66例を対象とした。データは病院記録と西京病院の乳がんデータベースから収集した。

 主な結果は以下のとおり。

・男性乳がんの罹患率は2018年から増加傾向にあり、女性乳がん患者よりも高齢であった。
・最も多い組織型は浸潤がんで、ホルモン受容体陽性であった。
・計62例(93.9%)に修正根治的乳房切除術が施行されていた。
・化学療法は39例(59.1%)、内分泌療法は14例(21.2%)、放射線療法は9例(13.6%)に施行されていた。
・全生存期間中央値は46.7ヵ月(0.9~184.8ヵ月)で、最新データでは58例(87.9%)が生存している。
・生存期間と有意に関連する因子は、年齢(χ2=3.856、p=0.050)、エストロゲン受容体(χ2=10.427、p=0.005)、分子タイプ(χ2=10.641、p=0.031)、p63(χ2=2.631、p<0.001)、内分泌療法(χ2=31.167、p<0.001)であった。

 著者らは「これらの結果は男性乳がんに関する貴重な知見を提供し、標準治療の参考となる」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Huang M, et al. Am J Mens Health. 2024;18:15579883241284981.

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乳がん術後放射線療法、最適な分割照射法は?/BMJ

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 乳がん術後放射線療法において、中等度寡分割照射(MHF)は通常分割照射(CF)と比較して腫瘍学的な治療アウトカムが同等でありながら安全性、美容およびQOLを改善し、超寡分割照射(UHF)はMHFやCFと比較した無作為化比較試験は少ないものの、短期間の追跡ではその安全性と腫瘍学的有効性は同程度であった。シンガポール国立大学のShing Fung Lee氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「治療期間の短縮、患者の利便性の向上ならびに費用対効果などを考慮すると、MHFおよびUHFは適切な臨床状況ではCFよりも好ましい選択肢とみなされなければならない。これらの知見を確かなものにするためにはさらなる研究が必要である」とまとめている。BMJ誌2024年9月11日号掲載の報告。

CF、MHF、UHFのRCTをメタ解析

 研究グループは、Ovid MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsを用い、2023年10月23日までに発表された乳がん術後放射線療法の有効性および安全性に関する文献について、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。

 対象試験の適格基準は、CF(総線量50~50.4Gy/25~28回[1日1.8~2Gy、5~6週間])、MHF(1回2.65~3.3Gyを13~16回[3~5週間])、またはUHF(5回のみ)について評価した無作為化比較試験であった。

 2人の研究者が独立してデータ抽出とチェックを行い、コクランバイアスリスクツール(バージョン2)およびGRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluations)を用いて、バイアスリスクおよびエビデンスの質、確実性を評価した。

 メタ解析では、ランダム効果モデルを用いてリスク比(RR)およびハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出し、コクランQ検定とI2統計量を用いて異質性を分析した。また、頻度論的(frequentist)ランダム効果モデルを用いてネットワークメタ解析も行った。

 主要アウトカムは、Grade2以上の急性放射線皮膚炎および晩期放射線障害、副次アウトカムは美容、QOL、局所再発、無病生存期間、全生存期間などであった。

MHFはCFより急性放射線皮膚炎のリスクが低い

 検索の結果、1,754本の文献が特定され、適格基準を満たした59本の文献に含まれる臨床試験35件(被験者計2万237例)が解析対象となった。全体として、評価項目の21.6%はバイアスリスクが低かったが、78.4%はバイアスリスクが中または高と評価された。

 MHFによるGrade2以上の急性放射線皮膚炎のCFに対するRRは、乳房温存術を受けた患者のみを対象とした8件の臨床試験で0.54(95%CI:0.49~0.61、p<0.001)、乳房切除術を受けた患者のみを対象とした10件の臨床試験で0.68(0.49~0.93、p=0.02)であった。

 乳房温存術と乳房切除術を合わせた場合、色素沈着およびGrade2以上の乳房縮小はCF後よりMHF後のほうが低頻度で、RRはそれぞれ0.77(0.62~0.95、p=0.02)および0.92(0.85~0.99、p=0.03)であった。しかし、乳房温存術のみの試験では、色素沈着(RR:0.79、95%CI:0.60~1.03、p=0.08)および乳房縮小(0.94、0.83~1.07、p=0.35)に関する差は統計学的に有意ではなかった。

 UHFのMHFに対するGrade2以上の急性放射線皮膚炎のRRは、乳房温存術と乳房切除術を合わせた場合0.85(0.47~1.55、p=0.60)であった。

 MHFはCFと比較して、美容およびQOLの改善と関連していたが、UHFとの比較では関連はみられなかった。再発および生存に関しては、UHF、MHF、CFで同様であった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Lee SF, et al. BMJ. 2024;386:e079089.

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