高リスク早期乳がんへのテーラードdose-dense化学療法、10年時解析で無再発生存期間を改善(PANTHER)/ESMO BREAST 2024

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 高リスク早期乳がん患者において、テーラードdose-dense化学療法は標準化学療法と比較して10年間の乳がん無再発生存期間(BCRFS)を改善し、新たな安全性シグナルは確認されなかった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のTheodoros Foukakis氏が、第III相PANTHER試験の長期追跡調査結果を欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2024、5月15~17日)で報告した。

・対象:18~65歳、リンパ節転移陽性もしくは高リスクリンパ節転移陰性で、初回手術後の乳がん患者
・試験群(tdd群):白血球最下点を基にエピルビシン+シクロホスファミドを2週ごと4サイクル、その後ドセタキセルを2週ごと4サイクル(用量は前サイクルの血液毒性に応じて調整)
・対照群(標準化学療法群):フルオロウラシル+エピルビシン+シクロホスファミドを3週ごと3サイクル、その後ドセタキセルを3週ごと3サイクル
・評価項目:
[主要評価項目]BCRFS
[副次評価項目]5年無イベント生存期間(EFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)、Grade3/4の有害事象発現率

 主な結果は以下のとおり。

・2007年2月~2011年9月にスウェーデン、ドイツ、オーストリアの施設から2,017例を登録、2,003例が解析対象とされ、両群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。
・追跡期間中央値10.3年において、tdd群は標準化学療法群と比較して主要評価項目であるBCRFSを有意に改善した(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.65~0.98、log-rank検定のp=0.041、10年イベント率:18.6% vs.22.3%、絶対差:3.7%±1.9%)。
・BCRFSの改善は、ホルモン受容体やHER2の発現状況、病期、およびそのほかの人口統計学的・病理学的要因によらずサブグループ全体で認められたが、とくに50歳以上のホルモン受容体陽性患者でdose-denseスケジュールによる一貫したベネフィットがみられたほか、術後にトラスツズマブ投与を受けたHER2陽性患者では用量強化によるベネフィットがみられた。
・DDFSはtdd群で有意な改善がみられたが(HR:0.79、95%CI:0.64~0.98、log-rank検定のp=0.039)、OSについては有意な差はみられなかった(HR:0.82、95%CI:0.65~1.04、log-rank検定のp=0.095)。

 Foukakis氏は今回の結果を受けて、術後の高リスク早期乳がん患者において、dose-denseスケジュールは標準治療として考慮されるべきではないかとし、また毒性に応じた用量調整は化学療法を最適化するために有望な戦略であるとして、さらなる研究が必要と結んだ。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

PANTHER試験(ClinicalTrials.gov)

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AI耐性HR+進行乳がんへのカピバセルチブ上乗せ、長期的ベネフィット(CAPItello-291)/ESMO BREAST 2024

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 第III相CAPItello-291試験において、アロマターゼ阻害薬(AI)耐性のホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんに対するフルベストラントへのAKT阻害薬カピバセルチブの追加は、PIK3CAAKT1、またはPTEN遺伝子変異を有する患者および全体集団において無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが報告されている。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏は欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2024、5月15~17日)で、同試験のPFS2(無作為化から2次治療開始後の増悪または死亡までの期間)およびTFSC(無作為化から最初の化学療法開始または死亡までの期間)のデータを報告した。

・対象:閉経前/後の女性もしくは男性のHR+/HER2-の進行乳がん患者(AI投与中/後に再発・進行、進行がんに対して2ライン以下の内分泌療法・1ライン以下の化学療法、CDK4/6阻害薬治療歴ありも許容、SERD・mTOR阻害薬・PI3K阻害薬・AKT阻害薬の治療歴は不可、HbA1c 8.0%未満)
・試験群(capi群):カピバセルチブ(400mg1日2回、4日間投与、3日間休薬)+フルベストラント(500mg) 355例(AKT経路に変異あり:155例)
・対照群(プラセボ群):プラセボ+フルベストラント 353例(AKT経路に変異あり:134例)
・評価項目:
[主要評価項目]全体集団およびAKT経路(PIK3CAAKT1PTENのいずれか1つ以上)に変異のある患者集団におけるPFS
[主要な副次評価項目]全体集団およびAKT経路に変異のある患者集団における全生存期間(OS)、奏効率(ORR)
[副次評価項目]PFS2
[事前規定された探索的評価項目]TFSC

 主な結果は以下のとおり。

・PFS2およびTFSCについての解析のデータカットオフは2022年8月15日であった。
・試験薬の中止後何らかの治療を開始していたのは、全体集団でcapi群67.0% vs.プラセボ群74.8%、AKT経路に変異のある患者集団でcapi群69.0% vs.プラセボ群78.4%であった。化学療法が最も多く(43.1% vs.47.9%、43.2% vs.50.0%)、ホルモン療法(22.3% vs.23.5%、23.9% vs.25.4%)、分子標的治療薬(13.0% vs.18.1%、11.6% vs.21.6%)と続き、両群でバランスがとれていた。
・PFS2中央値は、全体集団でcapi群14.7ヵ月vs.プラセボ群12.5ヵ月(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.57~0.86)、AKT経路に変異のある患者集団でcapi群15.5ヵ月vs.プラセボ群10.8ヵ月(0.52、0.38~0.71)であった。
・TFSC中央値は、全体集団でcapi群11.0ヵ月vs.プラセボ群6.8ヵ月(HR:0.63、95%CI:0.52~0.75)、AKT経路に変異のある患者集団でcapi群11.0ヵ月vs.プラセボ群6.0ヵ月(0.56、0.42~0.74)であった。

 Rugo氏は、フルベストラントへのカピバセルチブの追加は、全体集団およびAKT経路に変異のある患者集団においてPFS2を改善し、後治療としての化学療法の開始を遅らせたとし、長期的なベネフィットを示したと結論付けている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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CAPItello-291試験(ClinicalTrials.gov)

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T-DM1既治療のHER2+進行乳がん、T-DXdの3年OS率は?(DESTINY-Breast02)/ESMO BREAST 2024

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 トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)治療歴のあるHER2+の切除不能または転移を有する乳がん患者に対する、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択の化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast02試験の全生存期間(OS)を含む最新の解析結果を、韓国・Asan Medical CenterのSung-Bae Kim氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2024、5月15~17日)で報告した。

 DESTINY-Breast02試験の一次解析(データカットオフ:2022年6月30日)において、T-DXd群(3週間間隔で5.4mg/kg、406例)では、TPC群(トラスツズマブ+カペシタビンまたはラパチニブ+カペシタビン、202例)と比較して、無増悪生存期間(PFS)およびOSを統計学的に有意に改善した。今回の発表では、2023年9月29日をデータカットオフ日とする追跡期間中央値26.8ヵ月における最新の有効性と安全性の結果が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・今回のデータカットオフ時点の追跡期間中央値は、T-DXd群30.2ヵ月(範囲:0.8~60.7)、TPC群20.5ヵ月(0.0~60.6)であった。
・OS中央値は、T-DXd群35.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:30.9~40.8)、TPC群25.0ヵ月(20.4~31.5)で、ハザード比(HR)は0.69(0.55~0.88)であった。24ヵ月OS率はそれぞれ64.6%(59.6~69.2)および51.9%(44.4~58.9)、36ヵ月OS率はそれぞれ49.2%(44.0~54.3)および36.6%(29.5~43.8)であった。
・治験医師判定によるPFS中央値は、T-DXd群16.7ヵ月(95%CI:14.7~19.6)、TPC群5.5ヵ月(4.4~6.8)で、HRは0.30(0.24~0.37)であった。
・治験医師判定による奏効率(ORR)は、T-DXd群74.1%(CRは8.6%)、TPC群27.2%(2.0%)であった。奏効期間中央値はそれぞれ19.1ヵ月(95%CI:15.2~25.1)、6.3ヵ月(5.1~8.1)であった。
・治療関連有害事象(TRAE)はT-DXd群99.8%(うちGrade3以上が55.4%)、TPC群94.9%(44.6%)に発現した。T-DXd群の主なTRAEは、悪心(72.5%)、倦怠感(62.4%)、嘔吐(38.1%)であった。
・T-DXdによる薬剤性間質性肺疾患/肺臓炎は404例中46例(11.4%)に発現し、一次解析のデータカットオフ以降の発現は4例(Grade1が2例、Grade2が2例)であった。

(ケアネット 森 幸子)


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DESTINY-Breast02(ClinicalTrials.gov)

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早期再発TN乳がんへのアテゾリズマブ上乗せ、予後を改善せず(IMpassion132)/ESMO BREAST 2024

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 切除不能な局所進行または転移を有する早期再発トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者を対象に、化学療法に抗PD-L1抗体アテゾリズマブを上乗せした第III相IMpassion132試験の結果、PD-L1陽性患者においても予後が改善しなかったことを、シンガポール・国立がんセンターのRebecca A. Dent氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2024、5月15~17日)で報告した。

 IMpassion130試験において、進行TNBCへの1次治療としてのアテゾリズマブ+nab-パクリタキセル併用療法は、PD-L1陽性患者の全生存期間(OS)を改善した。しかし、早期再発TNBCにおけるデータは限られている。そこで研究グループは、治験医師選択の化学療法にアテゾリズマブまたはプラセボを上乗せして、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで継続した場合の有効性と安全性を評価した。

・試験デザイン:第III相二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験
・対象:アントラサイクリンおよびタキサンを含む早期TNBCの治療完了後12ヵ月以内に再発した手術不能な局所進行または転移を有するTNBC患者※
・試験群(アテゾリズマブ群):治験医師選択の化学療法(カペシタビン1,000mg/m2を21日サイクルの1~14日目に1日2回経口投与、またはカルボプラチンAUC 2+ゲムシタビン1,000mg/m2を21日サイクルの1・8日目に静注)+アテゾリズマブ(1,200mgを21日ごとに静注)
・対照群(プラセボ群):上記の治験医師選択の化学療法+プラセボ
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性集団(SP142によるPD-L1発現状況が1%以上)におけるOS
[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性
・層別化因子:選択された化学療法、内臓転移(肺、肝臓)の有無、PD-L1発現状況
※2018年1月からPD-L1が陰性でも陽性でも登録されたが、IMpassion130試験の結果により、2019年8月からはPD-L1陽性患者に限定された。

 主な結果は以下のとおり。

・合計594例が登録され、うちPD-L1陽性は354例(アテゾリズマブ群177例、プラセボ群177例)であった。
・両群の患者特性はバランスがとれていた。アテゾリズマブ群は年齢中央値48歳(範囲:23~77)、無病期間が6ヵ月未満であったのは66%、肺および/または肝転移ありは60%であった。プラセボ群はそれぞれ48歳(範囲:25~83)、69%、62%であった。両群ともに治験医師選択の化学療法としてカルボプラチン+ゲムシタビンが選択されたのは73%であった。
・追跡期間中央値9.8ヵ月時点で、アテゾリズマブ上乗せによるPD-L1陽性患者のOSの有意な改善は認められなかった(ハザード比[HR]:0.93[95%信頼区間[CI]:0.73~1.20]、p=0.59)。
 -アテゾリズマブ群:OSイベント発生70%、OS中央値12.1ヵ月(95%CI:10.1~15.1)
 -プラセボ群:OSイベント発生72%、OS中央値11.2ヵ月(95%CI:9.0~13.3)
・PFS中央値は、アテゾリズマブ群4.2ヵ月(95%CI:3.7~5.6)、プラセボ群3.6ヵ月(95%CI:3.4~4.2)で有意差は認められなかった(HR:0.84[95%CI:0.67~1.06])。
・未確定のORRは、アテゾリズマブ群40%(95%CI:32~48)、プラセボ群28%(95%CI:21~36)であった(群間差11%[95%CI:>0~22])。
・奏効期間中央値は、アテゾリズマブ群6.6ヵ月(95%CI:4.6~8.0)、プラセボ群4.1ヵ月(95%CI:3.5~5.8)であった(HR:0.73[95%CI:0.48~1.11])。
・これらの結果は、PD-L1陰性集団を含む修正ITT集団でも同様の傾向にあった。
・安全性解析集団(587例)における有害事象の発現率は両群でおおむね同等で、新たな安全性シグナルは報告されなかった。

(ケアネット 森 幸子)


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乳がんの術後補助療法、アスピリンは予後を改善するか/JAMA

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 高リスクの転移のない乳がんの術後補助療法において、アスピリンの連日投与はプラセボと比較して、乳がんの再発リスクや生存率を改善しないことが、米国・ダナファーバーがん研究所のWendy Y. Chen氏らが実施した「Alliance A011502試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年4月29日号で報告された。

北米534施設の無作為化プラセボ対照第III相試験

 Alliance A011502試験は、アスピリンが乳がん生存者における浸潤がんのリスクを低減するかの検証を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2017年1月~2020年12月に米国とカナダの534施設で参加者を登録した(米国国防総省乳がん研究プログラムなどの助成を受けた)。

 対象は、年齢18~69歳、標準治療を受けたERBB2陰性乳がんで、局所療法と化学療法を終了しており、内分泌療法を継続している可能性のある患者であった。被験者を、アスピリン300mgを5年間、1日1回連日投与する群、またはプラセボ群に無作為化に割り付けた。

 主要評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)とし、無作為化の時点から遠隔再発、局所領域再発、同側または対側の乳がんの発生、2次がん(乳房以外の浸潤がん)、全死因死亡のいずれかが発生するまでの期間と定義した。

iDFSイベントに有意差はないもののアスピリン群で多い

 3,020例を登録した時点で、初回の中間解析においてプラセボ群と比較したアスピリン群のiDFSのハザード比(HR)は1.27(zスコア=-1.64)と、事前に規定された無効の境界値(HR:1.03[zスコア<-0.192])を超えていたため、データ・安全性監視委 員会により試験の無効中止が勧告された。

 アスピリン群が1,510例、プラセボ群も1,510例で、全体の年齢中央値は53歳、男性が16例(0.5%)含まれた。

 追跡期間中央値33.8ヵ月(範囲:0.1~72.6)の時点で、iDFSイベントはアスピリン群が141件、プラセボ群は112件で発生した(HR:1.27、95%信頼区間[CI]:0.99~1.63、p=0.06)。iDFSイベントのうち、対側乳がんを除き、死亡、浸潤性疾患(遠隔、局所領域)、新規の原発性イベントはアスピリン群で多かったが有意差は認めなかった。

乳がんアウトカムの改善を目的に常用を推奨すべきではない

 死亡は、プラセボ群の52例に比べアスピリン群は63例と多かったが、全生存率には有意な差はなかった(HR:1.19、95%CI:0.82~1.72、p=0.36)。81例(70.4%)は乳がんによる死亡だった(アスピリン群46例、プラセボ群35例)。

 Grade3以上の有害事象は275件発生し、アスピリン群が130件(9.3%)、プラセボ群は145件(10.2%)であった。このうちGrade4以上は35件で、それぞれ15件(1.1%)および20件(1.4%)だった。アスピリン群では、Grade4の血液毒性を1件(血小板減少)、Grade5の心イベントを2件(心筋梗塞、心停止)、Grade4の血管の有害事象を1件(血栓塞栓イベント)で認めたが、Grade4以上の消化器毒性は発現しなかった。

 著者は、「米国では、推定2,900万人がアスピリンを毎日服用しており、その半数は心血管疾患を有していない可能性がある。早期乳がんの病歴がある患者には、乳がんのアウトカムの改善を目的にアスピリンの常用を推奨すべきではない」としている。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】

Chen WY, et al. JAMA. 2024 Apr 29. [Epub ahead of print]

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術後の静脈血栓塞栓リスク、最も高いがんは?

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 がん手術後の静脈血栓塞栓のリスク増加を、がん種別に評価した研究結果が発表された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のJohan Bjorklund氏らによる本研究結果は、JAMA Network Open誌2024年2月2日号に掲載された。

 本試験は1998~2016年のスウェーデンの全人口データを用いた後ろ向きコホート研究であった。膀胱がん、乳がん、大腸がん、婦人科がん、腎臓・上部尿路上皮がん、肺がん、前立腺がん、胃・食道がんの8種のがんで手術を受けた全患者を、非がんの一般集団と1対10の割合でマッチさせた。データは2023年2月13日~12月5日に解析された。

 主要アウトカムは、術後1年以内の静脈血栓塞栓イベントの発生率であった。1年以内のイベントの絶対リスクおよびリスク差、退院後イベントの時間依存性変数を調整したハザード比(HR)を算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・がん手術群は計43万2,218例で、年齢中央値67歳(四分位範囲[IQR]:58~75歳)、女性68.7%だった。非がん対照群は400万9,343例で、年齢中央値66歳(IQR:57~74歳)、女性69.3%であった。
・静脈血栓塞栓症の1年累積リスクは、すべてのがん手術群で対照群よりも高かった。がん種別にみたリスク差は、膀胱がん2.69パーセントポイント(95%信頼区間[CI]:2.33~3.05)、乳がん0.59(0.55~0.63)、大腸がん1.57(1.50~1.65)、婦人科がん1.32(1.22~1.41)、腎臓・上部尿路がん1.38(1.21~1.55)、肺がん2.61(2.34~2.89)、前立腺がん0.57(0.49~0.66)、胃・食道がん2.13(1.89~2.38%)であった。
・1年HRは、肺がんで最も高かった(HR:8.89、95%CI:5.97~13.22)。
・がん手術群の静脈血栓塞栓リスクは、退院直後にピークに達し、60~90日後にはおおむねプラトーになった。術後30日時点では乳がんを除くすべてのがん手術群におけるHRは対照群の10~30倍だったが、30日を過ぎるとHRはプラトーに達した。しかしながら、前立腺がんを除いて対照群のレベルにまで達することはなかった。深部静脈血栓症についても同様の結果だった。

 研究者らは「がん手術群は静脈血栓塞栓症の1年累積リスクが統計学的に有意に増加しており、手術に伴う最初の増加がプラトーになるまでの期間はがん種によって異なることが示唆された。静脈血栓塞栓イベント予防における過剰治療と過小治療の両方を避けるために、手術外傷、疾患の重症度、および全身化学療法への曝露を考慮して、個別のリスク評価と予防策が必要である」としている。

(ケアネット 杉崎 真名)


【原著論文はこちら】

Bjorklund J, et al. JAMA Netw Open. 2024;7:e2354352.

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TN乳がんの長期アウトカム、BRCA1/2変異の影響は

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 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者はBRCA1/2遺伝子変異を有する割合が高く、約10〜20%とされている。今回、韓国・Sungkyunkwan University School of MedicineのWoong Ki Park氏らが、TNBC患者の長期アウトカムを後ろ向きに検討したところ、BRCA1/2遺伝子変異が対側乳がん発生のリスク因子であることがわかった。また、対側乳がん発生率は、BRCA1/2変異患者では5年を過ぎても大幅に高かったという。npj Precision Oncology誌オンライン版2024年4月30日号に掲載。

 本研究の対象は、2008年6月~2016年1月に原発性乳がんの手術を受けたTNBC患者953例。追跡期間中央値80.9ヵ月(範囲:3~152ヵ月)における対側乳がん発生率、再発パターン、生存率などの長期アウトカムを評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・122例(12.8%)がBRCA1/2遺伝子変異を有していた。
BRCA1/2遺伝子変異のある患者は診断時年齢が有意に若く、乳がん/卵巣がんの家族歴がある傾向が強かった。
・60ヵ月(5年)、120ヵ月(10年)、150ヵ月(12.5年)時点の対側乳がん発生率は、BRCA1/2遺伝子変異のある患者が変異のない患者に比べ有意に高かった(順にp=0.0250、0.0063、0.0184)。
・無病生存期間、全生存期間、乳がん特異的生存期間、無遠隔転移生存期間については、両群間に有意差は認められなかった。
BRCA1/2遺伝子変異は対側乳がん発生の有意なリスク因子であった(HR:6.242、p<0.0001)。
・対側乳がんが発生した29例中24例(82.8%)が再びTNBCと診断され、19例(65.5%)が再発後に化学療法を受けていた。

 これらの結果から、著者らは「TNBC患者において、リスク低減乳房切除術(RRM)のような外科的治療の決定には、適切な遺伝子検査とカウンセリングが重要」とし、さらに「BRCA1/2遺伝子変異のあるTNBC患者では、とくにRRMを受けていない患者において長期サーベイランスが必要」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Park WK, et al. NPJ Precis Oncol. 2024;8:96.

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若年乳がんサバイバーにおける2次原発性乳がんのリスク因子/JAMA Oncol

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 40歳以下の原発性乳がんの女性は、それ以降に発症した女性よりも2次原発性乳がんのリスクが高いことが、過去のデータから示唆されている。今回、米国・Harvard T. H. Chan School of Public HealthのKristen D. Brantley氏らが、片側乳房切除術または乳房温存術を受けた40歳以下の乳がん患者を対象に検討したところ、生殖細胞系列遺伝子に病的変異がない女性では2次原発性乳がんの10年発症リスクが約2%であったのに対し、病的変異がある女性では約9%と高かったことが示された。JAMA Oncology誌オンライン版2024年4月11日号に掲載。

 前向きコホート研究のYoung Women’s Breast Cancer Studyには、2006年8月~2015年6月にStage0~III乳がんと診断された40歳以下の女性1,297例が登録された。そのうち、片側乳房切除術または乳房温存術を受けた685例(初回診断時の平均年齢:36歳)について、2次原発性乳がんの累積発症率とそのリスク因子を検討した。人口統計学的データ、遺伝子検査データ、治療データ、転帰データは、患者調査および診療記録から収集した。主要評価項目は 2次原発性乳がんの5年および10年累積発症率だった。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値10.0年(四分位範囲:7.4~12.1)で17例(2.5%)が2次原発性乳がんを発症した。うち2例は乳房温存術後に同側乳房で発症した。
・原発性乳がんの診断から2次原発性乳がん発症までの期間の中央値は4.2年(四分位範囲:3.3~5.6)であった。
・遺伝子検査を受けた577例において、2次原発性乳がんの10年発症リスクは、生殖細胞系列遺伝子に病的変異のない女性では2.2%、病的変異がある女性では8.9%であった。
・多変量解析では、2次原発性乳がん発症リスクは病的変異がある患者はない患者に比べて高く(部分分布ハザード比[sHR]:5.27、95%信頼区間[CI]:1.43~19.43)、初発乳がんが非浸潤性乳がんの場合は浸潤性乳がんに比べて高かった(sHR:5.61、95%CI:1.52~20.70)。

 本研究の結果、生殖細胞系列遺伝子の病的変異のない若年乳がん患者は、診断後最初の10年間に2次原発性乳がんの発症リスクが低いことが示唆された。著者らは「若年乳がん患者において、生殖細胞系列遺伝子検査で2次原発性乳がん発症リスクが予測され、治療の意思決定やフォローアップケアに役立てるために重要であることを示している」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Brantley KD, et al. JAMA Oncol. 2024:e240286. [Epub ahead of print]

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がんスクリーニング試験の主要評価項目、StageIII/IVがん罹患で代替可能か/JAMA

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 がんスクリーニングに関する無作為化試験では一般的に、がん特異的死亡が主要評価項目として用いられている。その代替評価項目としてStageIII~IVのがん罹患を用いるのは、一部のがん種については適切ではないことが、フランス・国際がん研究機関(IARC)のXiaoshuang Feng氏らによる検討で示された。StageIII~IVのがん罹患を代替評価項目として用いると、がんスクリーニング無作為化試験をより早期に終了できる可能性が示唆されていた。著者は、「今回の結果は、多がんスクリーニング検査の臨床試験に影響を及ぼすだろう」と述べている。JAMA誌オンライン版2024年4月7日号掲載の報告。

介入群と比較群との間の減少率を評価

 研究グループは、メタ解析およびシステマティックレビューにて、がんスクリーニング無作為化試験の評価項目としてのがん特異的死亡とStageIII~IVのがん罹患を比較した。

 検討には、2024年2月19日までに出版された欧州、北米およびアジアで行われた41の無作為化試験の論文を包含した。介入群(がんスクリーニングに関する臨床試験でスクリーニング検査が実施された群)と比較群(がんスクリーニングに関する臨床試験の比較群)の参加者数、がん種、がん死者数のデータを抽出し、各臨床試験におけるスクリーニング効果について、がん特異的死亡およびStageIII~IVのがん罹患の介入群と比較群との間の減少率を算出して評価した。

 評価項目としてのがん特異的死亡とStageIII~IVのがん罹患を、ピアソン相関係数(95%信頼区間[CI])、線形回帰および固定効果メタ解析を用いて比較した。

減少率の相関関係、がん種によりばらつき

 解析対象は、乳がん(6件)、大腸がん(11件)、肺がん(12件)、卵巣がん(4件)、前立腺がん(4件)およびその他のがん(4件)のスクリーニングの有益性を検討した無作為化試験であった。

 がん特異的死亡とStageIII~IVがん罹患の減少率の相関関係は、がん種によってばらつきが認められた。

 相関関係は、卵巣がん(ピアソン相関係数p=0.99[95%CI:0.51~1.00])、肺がん(p=0.92[0.72~0.98])で最も強く認められたが、乳がん(p=0.70[-0.26~0.96])は中程度であり、大腸がん(p=0.39[-0.27~0.80])、前立腺がん(p=-0.69[-0.99~0.81])では弱かった。

 線形回帰スロープ(LRS)推定値は、卵巣がん1.15、肺がん0.75、大腸がん0.40、乳がん0.28、また前立腺がんは-3.58であり、StageIII~IVがん罹患の減少の大きさが、がん特異的死亡の発生に異なる大きさの変化をもたらすことが示唆された(不均一性のp=0.004)。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Feng X, et al. JAMA. 2024 Apr 7. [Epub ahead of print]

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乳がん患者のQOLと死亡リスクの関係

提供元:CareNet.com

 乳がん患者は生活の質(QOL)に悪影響を及ぼすさまざまな問題を抱えているが、乳がん患者のQOLと死亡リスクとの関連については議論の余地がある。静岡県立静岡がんセンターの鈴木 克喜氏らは、QOLが乳がん患者の予後に与える影響についてシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、結果をBreast Cancer誌オンライン版2024年4月9日号で報告した。

 本研究では、CINAHL、Scopus、PubMedのデータベースを用いて、2022年12月までに発表された乳がん患者のQOLと死亡リスクを評価した観察研究が検索された。

 主な結果は以下のとおり。

・11万9,061件の論文が検索され、6件の観察研究がメタ解析に含まれた。
・身体機能QOL(ハザード比[HR]:1.04、95%信頼区間[CI]:1.01~1.07、p=0.003)、情緒機能QOL(HR:1.01、95%CI:1.00~1.03、p=0.05)、および役割機能QOL(HR:1.01、95%CI:1.00~1.01、p=0.007)は、死亡リスクとの有意な関連が示された。
・一方で、全般的QOL、認知機能QOL、および社会機能QOLは、死亡リスクとの関連が示されなかった。
・治療時点に従い行われたサブグループ解析によると、治療後の身体機能QOLが死亡リスクと関連していた。

 著者らは、身体機能QOL、情緒機能QOL、および役割機能QOLが乳がん患者の死亡リスクと関連したとし、治療後の身体機能QOLは、治療前の身体機能QOLよりも生存期間延長とより有意な関連を示したとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Suzuki K, et al. Breast Cancer. 2024 Apr 9. [Epub ahead of print]

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