乳がんリンパ浮腫のセルフケア、Webとパンフレットどちらが効果的

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 乳がん治療関連リンパ浮腫(breast cancer-related lymphedema:BCRL)患者のケアに対するウェブベースのマルチメディアツールを用いた介入(Web Based Multimedia Intervention:WBMI)の結果が示された。米国・ヴァンダービルト大学のSheila H. Ridner氏らによる検討で、WBMIを受けた患者は、対照(パンフレットのみ)より生物行動症状(気分)が改善し、介入に対する知覚価値も高いことが示されたという。ただし、WBMI群は完遂率が低く、他の評価項目については大きな違いはみられなかったとしている。Journal of Women’s Health誌オンライン版2019年7月17日号掲載の報告。

 研究グループは、BCRLを有する女性患者の症状負荷、機能、心理面の健康、費用および腕の体積に対するWBMIの効果を評価する目的で、患者をWBMI群(80例)および対照群(80例)に無作為に割り付けた。WBMIは12項目から成り、それぞれ約30分を要した。対照群へは、パンフレットを提供するのみで、読むのに約2時間を要した。

 介入前および介入後1、3、6および12ヵ月時に症状負荷、心理面の健康、機能および経費に関するデータを収集し、45例のサブグループは介入前および介入後3、6および12ヵ月時に腕の細胞外液量を生体インピーダンス法で測定した。また、介入に対する知覚価値についても調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・介入の完遂率は、WBMI群58%、対照群77%で、統計学的に有意な差があった(p=0.011)。
・Lymphedema Symptom Intensity and Distress Scale-Arm(LSIDS-A)に基づく症状の評価では、生物行動症状(気分)数はWBMIで減少を示したが、その他の症状については2群間で統計学的な有意差がなかった(効果量:0.05~0.28、p>0.05)。
・他の変数の変化については、2群間で有意差は観察されなかった。
・WBMIは、パンフレットよりもセルフケア情報が優れていると認識されていた(p=0.001)。

 WBMIは生物行動症状を改善し、より質の高い情報と認識された。他の変数において統計的な有意に至らなかったのは、WBMI患者の介入完遂率の低さが影響している可能性があると筆者は結んでいる。

(ケアネット)


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Ridner SH, et al. J Womens Health (Larchmt). 2019 Jul 17. [Epub ahead of print]

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アントラサイクリンの心毒性、運動で予防できるか

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 アントラサイクリン系薬に関連した心毒性(anthracycline-related cardiotoxicity、以下ARC)への予防戦略として、運動介入の有効性を検討する無作為化試験が行われるようだ。アントラサイクリン系薬は乳がんの治療によく用いられるが、心毒性の累積リスクとも関連している。そのため心臓への影響を最小化する予防戦略が必要で、非薬理学的アプローチとして運動が提案されていた。しかし、これまで行われてきたのはほとんどが動物実験によるもので、患者において有効性が示された研究はわずかで限られていた。ポルトガル・Universidade da Beira InteriorのPedro Antunes氏らが、「ARCを軽減する運動の有効性をよりよく理解するためには、実臨床において正確かつ有用なバイオマーカーを用いた大規模な研究が必要である」として現在、バイオマーカーの連続測定と画像検査により心機能を調査する臨床研究を行っているという。そのプロトコルについて発表した。Trial誌2019年7月号掲載の報告。

 研究グループは、ARCを軽減する構造化運動プログラムの効果について明らかにし、乳がん治療をさらに改善する目的で、新しい臨床バイオマーカーを用いる研究を行っている。

 試験概要は以下のとおり。

・本研究は、アントラサイクリンを含む化学療法(anthracycline-containing chemotherapy、以下ACT)を施行中の乳がん患者において、構造化運動プログラムの心保護作用を比較する前向き無作為化臨床試験である。
・ACTを受ける早期乳がん成人患者90例を、介入群と対照群に1:1の割合で無作為に割り付ける。
・介入群では、ACT施行中、有酸素および筋力トレーニングを組み合わせた、段階的な運動強度と時間による監視下での運動プログラムを週に3回実施する。
・対照群では、標準的な乳がん治療を行う。
・心機能に関連する主要評価項目は、NT-proBNP値、安静時左室長軸方向ストレイン、縦および安静時左室駆出率、副次評価項目は、安静時の血圧、心拍数および心拍数変動、回復期の心拍数、身体機能転帰、自己申告による身体活動レベル、健康関連QOL、および疲労である。
・評価項目のデータは、ベースライン、アントラサイクリン治療終了時および治療終了後3ヵ月時に収集し、NT-proBNPについてはさらに各アントラサイクリン治療サイクルの投与前1~24時間にも測定する。

(ケアネット)


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Antunes P, et al. Trials. 2019;20:433.

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術前化学療法を受けた乳がん患者の術後上肢リンパ浮腫、リスク因子は?/JAMA Surgery

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 乳がん患者の術後リンパ浮腫に関して、従前にない知見が示された。これまでのリンパ浮腫に関する大部分の研究は、対象集団が不均一で術後補助化学療法を受けた患者に重点を置いているが、米国・ミズーリ大学コロンビア校のJane M. Armer氏らは、術前化学療法と乳がん手術+腋窩リンパ節郭清を受けた患者のリンパ浮腫について検討。ACSOG Z1071研究の登録患者について解析を行い、長期の術前補助化学療法と肥満がリンパ浮腫の発現と関連していることを明らかにした。著者は、「このようなリスク因子を有する患者では、リンパ浮腫のサーベイランスを強化することが有益であろう」とまとめている。JAMA Surgery誌オンライン版2019年7月17日号の掲載。

 研究グループは、リンパ節転移陽性乳がん患者で術前化学療法と腋窩リンパ節郭清後のリンパ浮腫に関連する因子を調べる目的でコホート研究を行った。

 対象は、2009年1月1日~2012年12月31日の間にACSOG Z1071研究に登録された、診断時にリンパ節転移を有する18歳以上のcT0-T4N1-2M0乳がん女性患者である。2018年1月11日~2018年11月9日にデータを分析した。全例、術前化学療法、乳房手術および腋窩リンパ節郭清を受け、術前化学療法完了時および術後36ヵ月まで6ヵ月間隔で、前向きにリンパ浮腫の測定および症状の評価が行われた。

 主要評価項目はリンパ浮腫で、自覚症状(上肢が重いまたは腫れている)、上肢体積10%以上増加および上肢体積20%以上増加の3つの定義で評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象は486例で、平均年齢は50.1歳であった。
・3年後のリンパ浮腫累積発現率は、自覚症状評価で37.8%、上肢体積10%以上増加で58.4%、上肢体積20%以上増加で36.9%であった。
・BMI増加(HR:1.04、95%CI:1.01~1.06)、および術前化学療法の期間が144日以上(HR:1.48、95%CI:1.01~2.17)が、リンパ浮腫の自覚症状と関連していた。
・上肢体積20%以上増加の発現率は、術前化学療法の期間が144日以上(HR:1.79、95%CI:1.19~2.68)の患者で高かった。 
・上肢体積10%以上増加の発現率は、リンパ節切除個数30個以上(HR:1.70、95%CI:1.15~2.52)で最も高く、転移陽性リンパ節の数とともに上昇した(HR:1.03、95%CI:1.00~1.06)。
・多変量解析の結果、肥満(HR:1.03、95%CI:1.01~1.06)がリンパ浮腫の自覚症状と、術前化学療法の期間(HR:1.74、95%CI:1.15~2.62)が上肢体積20%以上増加と、有意に関連することが示された。

(ケアネット)


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Armer JM, et al. JAMA Surg. 2019 Jul 17. [Epub ahead of print]

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本邦初、高齢者のがん薬物療法ガイドライン発行/日本臨床腫瘍学会

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 約3年をかけ、高齢者に特化して臓器横断的な視点から作成された「高齢者のがん薬物療法ガイドライン」が発行された。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で概要が発表され、作成委員長を務めた名古屋大学医学部附属病院の安藤 雄一氏らが作成の経緯や要点について解説した。なお、本ガイドラインは日本臨床腫瘍学会と日本癌治療学会が共同で作成している。

 

高齢者を一律の年齢で区切ることはせず、年齢幅を持たせて評価

 本ガイドラインは「Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014」に準拠し、臨床試験のエビデンスとともに、益と害のバランス、高齢者特有の価値観など多面的な要因に基づいて推奨の強さが検討された。作成委員会からは独立のメンバーによるシステマティックレビュー、専門医のほか非専門医・看護師・薬剤師・患者からの委員を加えた推奨パネルでの投票により、エビデンスの強さ(4段階)と推奨の強さ(2段階+推奨なし)が決定されている。

 対象となる高齢者については、一部のCQを除き具体的な年齢で示すことはしていない。各薬物療法の適応になる基本的な条件を満たしており、PS 0または1、明らかな認知障害を認めず、主な臓器に機能異常を認めない患者が対象として想定されている。

“実臨床で迷うことが多い”という観点で12のCQを設定

 12のクリニカルクエスチョン(CQ)は、CQ1が総論、CQ2~3が造血器、CQ4~6が消化管、CQ7~9が呼吸器、CQ10~12が乳腺という構成となっている(下記参照)。各CQは実臨床で遭遇し判断に迷うもの、そして臨床アウトカムの改善が見込まれるものという観点で選定。例えば呼吸器のCQ7は、予防的全脳照射(PCI)を扱っており、薬物療法ではないが、実臨床で迷うことが多く重要、との判断から取り上げられた。

 推奨パネルでの投票で意見が割れ、最終的な決定にあたって再投票を実施したCQも複数あった。呼吸器のCQ8では、高齢者の早期肺がんに対する術後補助化学療法としてのシスプラチン併用について検討している。報告されている効果は5年生存率で+10%と小さく、1%の治療関連死が報告されている。判断について意見が分かれたが、最終的に、「実施することを明確に推奨することはできない(推奨なし)」とされている。

 本ガイドラインでは、関連のエビデンス解説や推奨決定までの経緯についての記述を充実させており、巻末には各CQについて一般向けサマリーを掲載している。患者ごとに適した判断をするために、また患者にリスクとベネフィットを正確に伝えるために、これらの情報を活用することが期待される。

独自のメタアナリシスを実施したCQも

 そもそも高齢者は臨床試験の選択基準から除外されることが多く、エビデンスは全体的に乏しい。評価できるエビデンスがサブグループ解析に限られ、直接高齢者を対象としたRCTは存在しないものが多かった。消化器のCQ5では、70歳以上の結腸がん患者に対する術後補助化学療法について検討しているが、70歳以上へのオキサリプラチン併用療法は、現状の報告から明確な上乗せ効果は確認できず、一方で末梢神経障害の増加が認められることから、「オキサリプラチン併用療法を行わないことを提案(弱く推奨)」している。

 独自のメタアナリシスを行ったCQもある。乳がん領域のCQ11では、高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法で、アントラサイクリン系抗がん剤の省略が可能かどうかを検討している。2つの前向き試験(CALGB49907とICE II-GBG52)のメタアナリシスを行い、アントラサイクリン系抗がん剤を省略することで生存期間と無再発生存期間が短縮する可能性が示唆された。その他心毒性についての観察研究結果などのエビデンスも併せて検討された結果、「アントラサイクリン系抗がん薬を省略しないことを提案(弱く推奨)」している。

各領域で取り上げられているCQ

[総論]
 CQ1 高齢がん患者において,高齢者機能評価の実施は,がん薬物療法の適応を判断する方法として推奨されるか?

[造血器]
 CQ2 高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療方針の判断に高齢者機能評価は有用か?
 CQ3 80才以上の高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してアントラサイクリン系薬剤を含む薬物療法は推奨されるか?

[消化器]
 CQ4 高齢者では切除不能進行再発胃がんに対して,経口フッ化ピリミジン製剤とシスプラチンまたはオキサリプラチンの併用は推奨されるか?
 CQ5 結腸がん術後(R0切除,ステージIII)の70才以上の高齢者に対して,術後補助化学療法を行うことは推奨されるか?行うことが推奨されるとすれば,どのような治療が推奨されるか?
 CQ6 切除不能進行再発大腸がんの高齢者の初回化学療法においてベバシズマブの使用は推奨されるか?

[呼吸器]
 CQ7 一次治療で完全奏効(CR)が得られた高齢者小細胞肺がんに対して,予防的全脳照射(PCI)は推奨されるか?
 CQ8 高齢者では完全切除後の早期肺がんに対してどのような術後補助薬物療法が推奨されるか?
 CQ9 高齢者非小細胞肺がんに対して,免疫チェックポイント阻害薬の治療は推奨されるか?

[乳腺]
 CQ10 高齢者ホルモン受容体陽性,HER2陰性乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬を投与すべきか?
 CQ11 高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬の省略は可能か?
 CQ12 高齢者HER2陽性乳がん術後に対して,術後薬物療法にはどのような治療が推奨されるか?

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

日本臨床腫瘍学会/日本癌治療学会「高齢者のがん薬物療法ガイドライン」

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最もOSが良好な乳がんのサブタイプは?

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 乳がん治療について、ステージ分類に加えて腫瘍サブタイプの重要性を強調するエビデンスが報告された。現行の乳がん治療では、これまで各ステージにおける腫瘍サブタイプの寄与は明らかになっていなかったが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJose P. Leone氏らが、Surveillance Epidemiology and End Results(SEER)プログラムのデータを解析し、臨床病理学的特徴が良好であるのはホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)乳がんであること、しかしながら、ほとんどのステージで全生存(OS)が最も良好だったのはHR+/HER2+乳がんであることを報告した。乳がんの4つの各ステージにおいて、OSは腫瘍サブタイプにより有意に異なっており、多変量モデルにおいても有意なままであったことも明らかにした。American Journal of Clinical Oncology誌2019年7月号掲載の報告。

 研究グループは、各ステージでの腫瘍サブタイプ別によるOSの違いを分析する目的で、SEERプログラムに登録された乳がん患者のうち、2010~13年の間に診断され、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体(HR)ならびにHER2の状態が既知の患者を対象に、患者特性を腫瘍サブタイプ別に比較した。

 単変量および多変量解析により、OSに対する各変数の影響を明らかにするとともに、乳がん特異的生存についても解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象は16万6,054例で、腫瘍サブタイプの分布はHR+/HER2-が72.5%、HR+/HER2+が10.8%、HR-/HER2+が4.8%、トリプルネガティブ(TN)が12%であった。
・HR+/HER2-の患者は、年齢が高く、グレードが低く、ステージは早期であった(すべてp<0.0001)。
・OSは、各ステージにおいて、腫瘍サブタイプにより有意に異なっていた(交互作用のp<0.0001)。
・StageIで最もOSが高かったのは、HR+/HER2-で、3年OSは97.2%であった。
・StageII、StageIII、StageIVで最もOSが高かったのは、HR+/HER2+で、3年OSはそれぞれ94.5%、87.8%、54.8%であった。
・SageIVでは、TNとHR+/HER2+との間で3年OSに40.1%の差があった。
・これらの結果は年齢、人種、グレード、組織型および配偶者の有無について調整した多変量解析によって確認された。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】
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Leone JP, et al. Am J Clin Oncol. 2019;42:588-595.

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毎週PTX療法の末梢神経障害、冷却療法による予防効果/日本乳癌学会

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 乳がんに対する毎週パクリタキセル(PTX)療法に伴う末梢神経障害に対する予防方法として、冷却方法が有用である可能性が報告されている。今回、呉医療センター中国がんセンターの尾﨑 慎治氏(4月より県立広島病院)らが無作為化比較第II相試験にて、frozen gloves/socksによる冷却療法を検証したところ、忍容性は良好であり、毎週PTX療法に伴う末梢神経障害の予防に有用と考えられた。第27回日本乳癌学会学術総会にて発表された。

 本試験では、毎週PTX療法を4サイクル施行予定の乳がん44症例を、毎週PTX療法開始時からfrozen gloves/socksによる予防的冷却療法を併用する試験群と、有意な末梢神経障害が発生した時点から併用開始するコントロール群の2群にランダム化した。併用群では治療開始前15分から治療中を含め、治療終了後15分までの90分間、frozen gloves/socksを装着し、治療中に2個目のfrozen gloves/socksに切り替えた。末梢神経障害の評価はPTX各コースの投与前と4コース終了後に、患者アンケートとしてFACT-NTx subscale日本語版とPNQ(patient neurotoxicity questionnaire)を、また主治医評価としてCTCAE(commonterminology criteria for adverse event)v4.0を用いて評価した。FACT-NTxでは6ポイント以上または10%以上を、PNQではGradeD以上を、CTCAEではGrade2以上を有意な末梢神経障害として評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・44症例を冷却療法群とコントロール群に22症例ずつ無作為化された。
・冷却療法の忍容性については、22症例中15症例(68%)が良好であり、冷却療法に関連した副作用(凍傷、末梢循環不全、悪寒)は認めなかった。
・FACT-NTxにおける有意な末梢神経障害の発生頻度は冷却療法群で有意に低かった(冷却療法群 vs.コントロール群: 41% vs.73%、p=0.03)。
・PNQにおけるGradeD以上の末梢性感覚神経障害の発生頻度は冷却療法群で有意に低かった(冷却療法群 vs.コントロール群:14% vs.42%、p=0.02)。
・CTCAEにおけるGrade2以上の末梢性感覚神経障害の発生頻度は冷却療法群で有意に低かった(冷却療法群 vs.コントロール群:9% vs.54%、p=0.001)。
・冷却療法の忍容性不良例や、コース数の増加とともに末梢神経障害が悪化する症例が存在した。

(ケアネット 金沢 浩子)


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TN乳がん1次治療でのアテゾリズマブ+nab-PTX、日本人サブ解析(IMpassion130)/日本臨床腫瘍学会

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 局所進行/転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療におけるアテゾリズマブとnab-パクリタキセル(nab-PTX)併用療法が、日本人においても有用であることが示された。国際共同無作為化二重盲検第III相試験(IMpassion130)の日本人65例のサブグループ解析結果について、埼玉県立がんセンターの井上 賢一氏が、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で発表した。

 本試験では、局所進行または転移を有するTNBC患者を、アテゾリズマブ併用群(28日を1サイクルとして、アテゾリズマブ840mgを1日目と15日目に投与+nab-PTX 100mg/m2を1日目、8日目、15日目に投与)と非併用群(プラセボ+nab-PTX)に1:1に無作為化し、有効性と安全性を評価した。主要評価項目は、ITT解析集団およびPD-L1陽性患者における無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、副次評価項目は、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性などであった。

 日本人サブグループにおける主な結果は以下のとおり。

・全体集団902例(各群451例)のうち日本人症例は65例で、アテゾリズマブ併用群34例(うちPD-L1陽性12例)、非併用群31例(うちPD-L1陽性13例)であった。
・PFS中央値は、ITT解析集団では併用群7.4ヵ月 vs.非併用群4.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.25~0.90)、PD-L1陽性患者(25例)では10.8ヵ月 vs.3.8ヵ月(HR:0.04、95%CI:<0.01~0.35)であった。
・OS中央値は、第2回中間解析(データカットオフ:2019年1月2日)において、ITT解析集団では21.1ヵ月 vs.21.8ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.32~1.37)、PD-L1陽性患者では21.1ヵ月 vs.17.7ヵ月(HR:0.31、95%CI:0.08~1.19)であった。
・ORRは、ITT解析集団では67.6% vs.51.6%、PD-L1陽性患者では75.0% vs.53.8%であった。
・DORは、ITT解析集団では5.6ヵ月 vs.3.7ヵ月、PD-L1陽性患者では9.1ヵ月 vs.3.7ヵ月であった。
・日本人集団における全Gradeの有害事象発現率は全体集団とほぼ同様であった。一方、日本人集団では全体集団に比べて、脱毛、末梢性感覚ニューロパチー、好中球数減少の発現率が高かった。免疫関連有害事象については日本人集団では検査値異常がほとんどであるが、肝炎の発現率が高かった(併用群20.6%、非併用群26.7%)。
・日本人集団において治療中止に至った有害事象発現率は、併用群5.9%、非併用群0%で、投与量減少または中断に至った有害事象は併用群64.7%、非併用群56.7%であった。重篤な有害事象発現率は両群でほぼ同様であった。

 この結果から井上氏は、「日本人集団におけるアテゾリズマブとnab-PTX併用の有効性・安全性が全体集団と一致しており、日本人TNBC患者における1次治療として臨床的に有用である」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)


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HR+/HER2-進行乳がんへのPI3K阻害薬alpelisib、日本人解析結果(SOLAR-1)/日本臨床腫瘍学会

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 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対する、α特異的PI3K阻害薬alpelisibとフルベストラント併用療法の有効性を評価する第III相SOLAR-1試験の日本人解析結果を、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で、愛知県がんセンターの岩田 広治氏が発表した。なお、同患者に対するalpelisib併用療法は、SOLAR-1試験の結果に基づき、2019年5月にPI3K阻害薬として初めてFDAの承認を受けている。

 SOLAR-1試験は、HR+/HER2-進行乳がん患者(ECOG PS≦1、1ライン以上のホルモン療法歴あり、進行後の化学療法歴なし)を対象とした国際第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験。登録患者はPIK3CA遺伝子変異陽性もしくは陰性コホートに分けられ、それぞれalpelisib併用群(alpelisib 300mg/日+フルベストラント500mg/1サイクル目のみ1日目、15日目に投与、以降28日を1サイクルとして1日目に投与)とプラセボ群(プラセボ+フルベストラント)に1:1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要評価項目は、PIK3CA陽性コホートにおける無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は、PIK3CA陰性コホートのPFS、両コホートの全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性などであった。

 主な結果は以下のとおり。

・全体で572例が登録され、うち日本人は68例(PIK3CA陽性が36例、陰性が32例)。両コホートでそれぞれ併用群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた(陽性:併用群17例 vs.プラセボ群19例、陰性:15例 vs.17例)。
・日本人集団の年齢中央値は両群とも67歳。BMI中央値は25kg/m2 vs.21.4kg/m2で全体集団(26.5kg/m2 vs.26.1kg/m2)よりも低く、PS 0の割合は88.2% vs.89.5%と全体集団(66.3% vs.65.7%)よりも高かった。その他のベースライン特性は全体集団と同様であった。
PIK3CA陽性コホートにおけるPFS中央値は、全体集団では併用群11.0ヵ月に対しプラセボ群5.7ヵ月と併用群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.50~0.85; p=0.00065)。これに対し日本人集団では、併用群9.6ヵ月に対しプラセボ群9.2ヵ月と両群で差はみられなかった(HR:0.78、95%CI:0.35~1.75)。
PIK3CA陽性コホートにおけるalpelisibの曝露期間は、全体集団で平均8.0ヵ月、中央値5.5ヵ月(0.0~29.0)、平均相対的用量強度(RDI)77.8%だったのに対し、日本人集団では曝露期間の平均4.2ヵ月、中央値1.4ヵ月(0.3~21.1)、平均RDI 58.8%であった。
・日本人集団において、全体集団と比較して併用群で多くみられたGrade3以上の有害事象は、皮疹(日本人集団:43.8%/ 全体集団:20.1%)、膵炎(15.6%/5.6%)、重度皮膚有害反応(9.4%/1.1%)であった。
・併用群の有害事象による治療中止は、日本人集団では全Gradeで56.3%、Grade3以上で25.0%と、全体集団(25.0%、13.0%)と比較して多く発生した。日本人集団で治療中止につながった有害事象は、高血糖症(18.8%)、皮疹(12.5%)、重度皮膚有害反応(9.4%)など。Grade3以上の皮疹は多くが14日以内に起きていた。
・投与開始後8日目におけるalpelisibの血中トラフ濃度を日本人と日本人以外で比較すると、平均値474ng/mL vs.454ng/mL、中央値410ng/mL vs.442ng/mLと差はみられなかった。

 ディスカッサントを務めた虎の門病院の尾崎 由記範氏は、他のPI3K阻害薬による臨床試験での重篤な皮疹の発生率は3.8~8.0%(全体集団)1)2)で、43.8%という数字は顕著に高いことを指摘。alpelisibの第I相試験で皮疹の発生は用量依存的に増加している点3)、今回のサブセット解析で最初の数週間で多く発生している点などに触れ、日本人集団での最適用量の再検討や、経口非鎮静性抗ヒスタミン薬の予防的使用の検討が必要ではないかとの考えを示した。

 岩田氏は発表後の質疑において、アジア人の他のポピュレーションでは全体集団と同様の結果が得られていることを明らかにし、日本人集団を対象とした追加試験を行う必要があるとした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】
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1)Baselga et al. 2018 ASCO Annual Meeting.
2)Baselga et al. Lancet Oncol. 2017;18:904-916.
3)Juric D et al. J Clin Oncol. 2018;36:1291-1299.

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乳がん検診への超音波併用のベネフィット、非高濃度乳房でも/日本乳癌学会

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 マンモグラフィ検査の限界として、高濃度乳房で腫瘍が発見されにくくなる“マスキング効果”が指摘されている。そのため、「高濃度であれば追加検査を推奨し、非高濃度であれば安心」という論調がある。しかし、少なくとも40代の女性においては、高濃度か非高濃度かによらず、超音波検査の追加によってベネフィットが得られる可能性が示唆されている。第27回日本乳癌学会学術総会にて、東北医科薬科大学医学部・乳腺内分泌外科の鈴木 昭彦氏が、「J-STARTからみたDense Breast対策」と題して講演した。

  米国では、2019年3月に乳がん検診に関する新たな方針案が示された。この方針案では、受診者への乳房構成の通知を義務付けることで、検診受診の判断を個人の裁量に委ねる方向性となっている。一方本邦では、40代後半から50代前半で最も乳がん罹患率が高いにもかかわらず、この年代でマンモグラフィの感度が低いため、いかに有効な検診を提供できるかが重要となる。

約1万人のデータを解析、非高濃度乳房でもがん発見率と感度上昇

 鈴木氏らは、J-START試験参加者のうち、乳房構成のデータのある一部(11,432人)の症例を対象に、高濃度乳房群と非高濃度乳房群における超音波検査の影響を解析した。マンモグラフィ+超音波検査の介入群と、マンモグラフィのみのコントロール群の人数はそれぞれ5,781人 、5,651人であった。

 全体の初回検診結果をみると、がん発見率:介入群0.74% vs.コントロール群0.42%、要精検率:14.1% vs.9.8%、感度:93.5%(95%信頼区間:0.86~1.01)vs.72.7%(0.58~0.88)でp=0.02、特異度:86.6%(85.7~87.5)vs.90.6%(89.8~91.4)でp<0.001と、J-START試験の全国集計値とほぼ同様の傾向であった。

 次に、高濃度乳房群(きわめて高濃度+不均一高濃度)と非高濃度乳房群(乳腺散在+脂肪性)で初回検診結果を比較すると、がん発見率は、高濃度乳房群で介入群0.74% vs.コントロール群0.40%と介入群で上昇した。一方の非高濃度乳房群でも、0.75% vs.0.46%と介入群で高く、非高濃度乳房であっても、超音波検査の追加によって一定数の乳がんが新たに発見されていることが明らかとなった。

 感度においても、高濃度乳房群で96.2%(88.8~103.2)vs. 72.2%(51.5~92.9)と介入群で約24%上昇し、非高濃度乳房群でも90.0%(95%CI:76.9~103.6)vs. 73.3%(51.0~95.7)と介入群で約17%上昇した。

40代女性、乳腺散在の場合もマンモグラフィの精度低い?

 鈴木氏らによる2008年発表の研究1)において、年齢別・乳房構成別にマンモグラフィのがん発見感度をみると、40代女性では高濃度乳房だけでなく、乳腺散在の場合も50代以上と比較して感度が低い傾向がみられている(40代:69.2%、50代:80.7%、60代:79.7%)。

 また、不要な要精検率の増加という“検診による不利益”についても検討。J-START試験参加者のうち、2007~08年の参加者6,731人をサンプル調査し、介入群とコントロール群の初回および2回目検診における要精検率の変化を調査した。その結果、介入群の要精検率は初回13.1%、2回目5.6%、コントロール群の要精検率は初回6.9%、2回目4.3%であった。しかし、陽性反応的中率(PPV)は介入群で初回3.6%、2回目6.4%と上昇しており、検診の精度は保たれていた。

 鈴木氏は、「検診の真の有効性を証明する指標は死亡率減少であり、現状で超音波検査を無条件で推奨できるエビデンスは存在しない。しかし、40代の日本人女性への超音波検査の上乗せは、乳がん発見率を大きく改善し、その効果は高濃度乳房でとくに顕著だが、非高濃度乳房でも明確にみられる。精度管理により不利益を最小化する努力が重要なのではないか」と締めくくった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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1)Suzuki A et al. Cancer Sci. 2008;99:2264-7.

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砂糖入り飲料、がんのリスク増大/BMJ

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 砂糖入り飲料の消費は、全がんおよび乳がんのリスクを増加させ、100%果物ジュースも全がんのリスクと関連することが、フランス・パリ第13大学のEloi Chazelas氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2019年7月10日号に掲載された。砂糖入り飲料の消費は最近10年で世界的に増加しているという。砂糖入り飲料と肥満リスクには明確な関連が認められ、肥満は多くのがんの強力なリスク因子とされる。

10万人以上の住民を対象とするフランスのコホート研究

 研究グループは、100%果物ジュースを含む砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料と、がんのリスクとの関連の評価を目的とする住民ベースの前向きコホート研究を行った(フランス保健省などの助成による)。

 解析には、フランスで2009年にWebベースで登録が開始されたNutriNet-Santeコホートの2018年までのデータ(10万1,257例)を用いた。

 砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料の消費の評価には、3,300項目の食品および飲料に関して、参加者の日常的な消費状況が記録されるようデザインされた反復的24時間食事記録法を用いた。飲料のタイプごとに、男女別の消費量をそれぞれ4段階に分けて解析した。

 主要アウトカムは、飲料の消費と全がん、乳がん、前立腺がん、大腸がんの関連とした。競合リスクを考慮し、多変量で補正したFineとGrayのハザードモデルを用いて評価を行い、部分分布のハザード比(HR)を算出した。

がん予防における修正可能なリスク因子である可能性

 10万1,257例(平均年齢42.2[SD 14.4]歳)のうち、女性が7万9,724例(78.7%)を占め、男性は2万1,533例(21.3%)であった。飲料のタイプ別の割合は、砂糖入り飲料(100%果物ジュースを除く)が36%、100%果物ジュースが45%で、人工甘味料入り飲料は19%だった。

 追跡期間中央値5.1年(49万3,884人年)の間に、2,193例が初発のがんを発症した。内訳は、乳がんが693例(閉経前283例、閉経後410例)、前立腺がんが291例、大腸がんは166例で、診断時の平均年齢は58.5±12.0歳だった。

 砂糖入り飲料の消費は、全がん(消費量100mL/日増加の部分分布HR:1.18、95%信頼区間[CI]:1.10~1.27、p<0.001)および乳がん(1.22、1.07~1.39、p=0.004)のリスクと有意な関連が認められた。乳がんは、閉経前(p=0.02)が閉経後(p=0.07)よりも関連性が明確であったが、砂糖入り飲料の消費量中央値は、閉経期(88.2mL/日)のほうが閉経前(43.2mL/日)に比べ多かった。

 砂糖入り飲料の消費は、前立腺がんおよび大腸がんとは関連がなかった。また、肺がんにも関連は認めなかったが(p=0.1)、統計学的検出力がきわめて低かった。

 人工甘味料入り飲料の消費は、がんのリスクとは関連しなかったが、全サンプルに占める消費の割合が相対的に低かったことから、統計学的検出力が不十分であった可能性がある。
 サブ解析では、100%果物ジュースの消費は全がん(消費量100mL/日増加の部分分布HR:1.12、95%CI:1.03~1.23、p=0.007)のリスクと有意な関連を示した。

 著者は、「これらの結果は、他の大規模な前向き研究で再現性を検証する必要がある」とし、「欧米諸国で広く消費されている砂糖入り飲料は、がん予防における修正可能なリスク因子である可能性が示唆される」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)


【原著論文はこちら】
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Chazelas E, et al. BMJ. 2019;366:l2408.

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