高齢者乳がん、カペシタビン術後療法の10年評価/JAMA Oncol

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 カペシタビンの早期高齢乳がん術後補助化学療法における標準療法に対する非劣性を検討した「CALGB 49907試験」の長期10年の追跡結果が、米国・ノースカロライナ大学Lineberger Comprehensive Cancer CenterのHyman B. Muss氏らにより発表された。Journal of Clinical Oncology誌2019年9月10日号掲載の報告。

 同試験の主要解析の結果は、追跡期間中央値2.4年後に報告されており、標準術後化学療法は、カペシタビンとの比較において有意に良好な無再発生存期間(RFS)および全生存期間(OS)を示していた。今回、同グループは、追跡期間中央値11.4年後の結果をアップデート報告した。

 CALGB 49907試験では、65歳以上の早期乳がん患者を、標準術後補助化学療法群(担当医がシクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル、もしくはシクロホスファミド+ドキソルビシンのいずれかを選択)またはカペシタビン群に無作為に割り付け追跡が行われた。ベイジアン・アダプティブ・デザインを用いて試験サンプルサイズを確認し、カペシタビンの非劣性検定を行った。主要評価項目はRFSであった。

 主な結果は以下のとおり。

・試験は、初回サンプルサイズ評価後、被験者633例に達した時点で終了となった。
・RFSは、標準化学療法群で有意に延長したままであった。
・10年時点で、RFSは標準化学療法群56%、カペシタビン群は50%であった(HR:0.80、p=0.03)。
・乳がん特異的生存率は、それぞれ88%、82%であった(HR:0.62、p=0.03)。
・より長期の追跡で、標準化学療法はホルモン受容体陰性の患者では依然としてカペシタビン群に対して優れていたが(HR:0.66、p=0.02)、ホルモン受容体陽性患者では有意差は認められなかった(HR:0.89、p=0.43)。
・集団全体の死亡率は43.9%で(乳がんによる死亡13.1%、乳がん以外による死亡16.4%、原因不明の死亡14.1%)、2次性非乳がんの発生は14.1%であった。

(ケアネット)


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Muss HB, et al. J Clin Oncol. 2019;37:2338-2348.

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閉経後ホルモン療法、5年以上で乳がんリスク増大/Lancet

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 先進国の平均体重の女性では、閉経後ホルモン療法(MHT)を50歳から5年間受けた場合の50~69歳における乳がんリスクの増加は、エストロゲン+プロゲスターゲン毎日投与では約50人に1人であり、エストロゲン+プロゲスターゲンの月に10~14日投与では70人に1人、エストロゲン単独では200人に1人であるとの調査結果が、英国・オックスフォード大学のValerie Beral氏らCollaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancerによって示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年8月29日号に掲載された。MHTの種類別の乳がんリスクに関する既報の知見には一貫性がなく、長期的な影響に関する情報は限定的だという。

MHTの種類別の乳がんリスク増加のメタ解析

 研究グループは、MHTの種類別の乳がんリスクに関するエビデンスを、公表・未公表を問わず収集し、関連する無作為化試験のエビデンスをレビューするとともに、メタ解析を行った(Cancer Research UKと英国医学研究会議[MRC]の助成による)。

 主解析には、MHTの種類と使用のタイミングを検討した前向き研究の個々の参加者のデータを用いた。この種類と使用時期に関する完全な情報のある参加者を中心に解析を行った。研究の特定は、1992年1月1日~2018年1月1日の期間に、公式・非公式の情報源を定期的に検索することで行った。

 現MHT使用者では、MHT使用の最終報告から最長5年(平均1.4年)までのデータを解析に含めた。ロジスティック回帰を用いて、特定のMHTの使用者の非使用者との比較における補正リスク比(RR)を算出した。

中止後も、ある程度の過度のリスクが10年以上持続

 フォローアップ期間中に10万8,647例の閉経後女性が乳がんを発症し、発症時の平均年齢は65歳(SD 7)であり、このうち5万5,575例(51%)がMHTを使用していた。完全な情報のある患者では、平均MHT使用期間は、現使用者が10年(6)、元使用者は7年(6)であり、閉経時の平均年齢は50歳(5)、MHT開始時の平均年齢は50歳(6)だった。

 MHTは、膣エストロゲンを除き、乳がんリスクの増加と関連しており、使用期間が長くなるほどリスクが増加し、エストロゲン/プロゲスターゲンはエストロゲン単独に比べリスクが高かった。

 現使用者では、このような過度の乳がんリスクは使用期間が1~4年と短くても明確に認められた(エストロゲン/プロゲスターゲンのRR:1.60、95%信頼区間[CI]:1.52~1.69、エストロゲン単独のRR:1.17、95%CI:1.10~1.26)。

 エストロゲン/プロゲスターゲンの使用期間5~14年の乳がんリスクは、エストロゲン+プロゲスターゲンの毎日使用が、エストロゲン+プロゲスターゲンの月に10~14日の使用よりも高かった(それぞれRR:2.30[95%CI:2.21~2.40]、1.93[1.84~2.01]、異質性のp<0.0001)。

 現使用者の使用期間5~14年における乳がんのRRは、エストロゲン受容体陽性腫瘍が陰性腫瘍よりも高く、MHT開始年齢が40~44歳、45~49歳、50~54歳、55~59歳の女性でほぼ同じであり、60歳以降に開始した女性や肥満の女性では低下した(肥満女性では、エストロゲン単独のMHTによる乳がんリスクの増加はほとんどなかった)。

 MHT中止後も、ある程度の過度のリスクが10年以上持続し、その強度は使用期間の長さに依存しており、使用期間が1年未満の場合はリスクがほとんど増加しなかった。

 著者は「MHTを10年間使用した場合の乳がんリスクの増加は、今回の5年使用のリスクの約2倍に達すると考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)


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Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer. Lancet. 2019 Aug 29. [Epub ahead of print]

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化学療法誘発性悪心嘔吐に対するオランザピン5mgの追加効果(J-FORCE)/日本がんサポーティブケア学会

化学療法誘発性悪心嘔吐に対するオランザピン5mgの追加効果(J-FORCE)/日本がんサポーティブケア学会

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 オランザピンは化学療法誘発性悪心嘔吐(CINV)に対して有効であるが、国際的に使用されている用量10mgでは過度の鎮静が懸念されている。NCCNやMASCC/ESMOの制吐療法ガイドラインでは、5mgへの減量について言及しているもののエビデンスはない。わが国では、標準制吐療法へのオランザピン5mgの上乗せ効果を検証した3つの第II相試験が行われ、その有効性が示唆されている。そこで、シスプラチン(CDDP)を含む化学療法に対する標準制吐療法へのオランザピン5mg上乗せの有用性の検証を目的としたプラセボ対照二重盲検無作為化第III相J-FORCE試験が行われた。その結果を第4回日本がんサポーティブケア学会学術集会において、静岡県立静岡がんセンターの安部 正和氏が発表した。

・対象:CDDP50mg/m2 以上を含む高度催吐性化学療法(HEC)を受ける固形がん患者
・試験群:オランザピン5mg(day1~4)+標準制吐療法(パロノセトロン0.75mg[day1]+アプレピタント125mg[day1]、80mg[day2~3]+デキサメタゾン12mg[day1]、8mg[day2~4])
・対照群:プラセボ(day1~4)+標準制吐療法(同上)
・評価項目:[主要評価項目]遅発期CR(Complete Response=嘔吐なし、救済治療なし)割合。[副次評価項目]急性期(CDDP開始~24時間)および全期間(CDDP開始~120時間)のCR割合、各期間のCC(Complete Control=CRかつ悪心なしまたは軽度)割合とTC(Total Control=CRかつ悪心なし)割合、治療成功期間、眠気と食欲不振割合、患者満足度など

 主な結果は以下のとおり。

・710例の患者が登録され、オランザピン群356例、プラセボ群354例に無作為に割り付けられた。安全性解析は706例、有効性解析は705例で行われた。
・遅発期CR割合はオランザピン群79%、プラセボ群66%とオランザピン群で有意に良好であった(p<0.001)。また、その差は13.5%と国際的コンセンサスで有効とされる10%を満たした。
・副次評価項目である急性期および全期間のCR割合、各期間のCC割合はいずれも有意にオランザピン群で良好であった。各期間のTC割合は、急性期を除き有意にオランザピン群で良好であった。
・治療関連有害事象である眠気、口喝、浮遊性めまいはオランザピン群で多くみられた。
・「日中の眠気あり」の頻度は両群で大きな差はなく、「不眠なし」と「食欲低下あり」の頻度はオランザピン群で良好であった。
・患者満足度は、「とても満足・満足」の割合は有意にオランザピン群で良好であった(p<0.001)。

(ケアネット 細田 雅之)


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日本人NAFLD患者の種々のがん予測に亜鉛測定が有用

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 血清亜鉛(Zn)濃度の低下は肝性脳症や味覚異常など、さまざまな疾患に影響することが報告されている。しかしながら、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)患者における関連はほとんど報告されていない。今回、名古屋大学消化器内科学の伊藤 隆徳氏らは、血清中のZn濃度と総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比(BTR:molar ratio of total branched-chain amino acid to tyrosine)が、NAFLD患者の予後と関係することを明らかにした。著者らは、「血清中のBTRおよびZn濃度が、それぞれNAFLD患者の肝細胞がん(HCC)および他臓器がんの発生予測に有用」とコメントしている。Nutrition&Cancer誌オンライン版2019年8月21日号掲載の報告。

 本研究では、名古屋大学と大垣市民病院において1999年1月~2014年12月の期間に肝生検を受け、NAFLDと診断された363例のうち、基準を満たした179例を登録。NAFLD患者の悪性腫瘍の発生率に対する血清中のBTRとZn濃度の影響を調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・被験者179例の内訳は、NAFLが71例、NASHが108例だった。
・平均年齢は53歳(四分位:40~62歳)、女性82例(45.8%)、男性97例(54.2%)だった。
・被験者の各中央値はBTR:6.7、Zn:78.0μg/dLだった。
・フォローアップ期間(中央値7.9年)中にHCCは7例(3.9%)、他臓器がんは10例(5.6%)発生し、他臓器がんの内訳として乳がん・婦人科がん・大腸がんが多くを占めていた。
・Bruntの分類による活動性は、Grade1が107例(59.8%)、Grade2が64例(35.8%)、Grade3が8例(4.5%)であり、線維化は、Stage0が49例(27.4%)、Stage1が72例(40.2%)、Stage2が29例(16.2%)、Stage3が25例(14.0%)、そしてStage4が4例(2.2%)だった。
・Cox比例ハザードモデルによる多変量解析により明らかとなったHCCのリスク因子は、肝線維化(F3~4、ハザード比[HR]:24.292、95%信頼区間[CI]:2.802~210.621、p=0.004)、BTR 5.0未満(HR:5.462、95%CI:1.095~27.253、p=0.038)であった。一方で、他臓器がんのリスク因子としては、血清Zn濃度70μg/dL未満(HR:3.504、95%CI:1.010~12.157、p=0.048)と病理学的肝内炎症(A2~3、HR:3.445、95%CI:0.886~13.395、p=0.074)が選択された。
・血清中のBTR低値(5.0未満)およびZn欠乏(70μg/dL未満)の患者では、HCC(p<0.001)と他臓器がん(p=0.026)の発生率がそれぞれ有意に高かった。

(ケアネット 土井 舞子)


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Ito T, et al. Nutr Cancer. 2019 Aug 21. [Epub ahead of print]

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卵巣がんに対するBRCA1/2遺伝子検査、日本初の大規模研究~JAPAN CHARLOTTE STUDY~

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 遺伝性乳がん・卵巣がんの発症には、乳がん感受性遺伝子(BRCA遺伝子)の変異が大きく関わっている。アストラゼネカ株式会社が開催したメディアセミナー(共催)にて、吉原 弘祐氏(新潟大学 医学部産婦人科学教室 助教)が、生殖細胞系列BRCA(gBRCA1/2>遺伝子変異の保有率に関する日本初の大規模調査であるJAPAN CHARLOTTE STUDY(以下、本研究とする)に関して、解説した。

認定遺伝カウンセラー不足とその弊害

BRCA1BRCA2はDNAの組み換え修復などの機能を有し、両親のどちらかがBRCA1あるいは2に病的変異がある場合、50%の確率で子に受け継がれる。その変異は卵巣がんなどの発症率を増加させるため、患者本人だけでなくその家族にも影響を与えうる。そのため遺伝子検査にあたっては、認定遺伝カウンセラー等によるカウンセリングが重要となる。

 欧米ではガイドラインで、BRCA1/2遺伝子検査の実施を推奨しているが、日本では日常的に遺伝子検査を行う環境が整っていない。実際に、検査結果の説明などを担当する認定遺伝カウンセラーの数は全国で243人(2018年12月時点)にとどまっており、著しく不足している。また、カウンセラー不在の県もあるなど、地域にも偏りがある。

 環境が整っていない日本では、卵巣がん患者におけるgBRCA1/2変異頻度に関するまとまったデータがきわめて少なかった。このような状況の中で行われた本研究は、日本初のBRCA1/2遺伝子変異に関する大規模調査である。

日本初の大規模研究(JAPAN CHARLOTTE STUDY)

 本研究では、日本人新規卵巣がん患者、約600例のgBRCA1/2変異陽性率とgBRCA1/2遺伝子検査前のカウンセリングに対する満足度を評価した。

 gBRCA1/2変異陽性率は14.7%であり、欧米人を対象とした過去の研究報告と同程度であった。これまで、日本人のgBRCA1/2変異率は欧米人よりも低いという見方もある中で、注目すべき結果といえよう。また、gBRCA1/2変異は進行期のがんで見られることが多い。本試験においても進行卵巣がんの患者ではgBRCA1/2変異陽性率が24.1%と、早期卵巣がんよりも変異陽性率が高かった。

 検査前のカウンセリングに対する満足度は、実施者の職種にかかわらず同等だったものの、検査結果がgBRCA1/2変異陽性もしくはVUSの場合、検査後のカウンセリングは全例、認定遺伝カウンセラーもしくは認定遺伝専門医が担当していた。認定遺伝カウンセラーの「ホスピタリティー」は、デリケートな内容を患者に告知する際にとても重要であるという。現状、臨床現場では遺伝子検査の結果を医師が患者に説明するケースが多いが、他の業務に追われる中で、医師がホスピタリティーにまで気を配ることは難しいケースが多々あるのではないだろうか。

遺伝子検査が実施できる環境の整備

BRCA1/2陽性例にリスク低減卵管卵巣摘出術を実施した場合、実施していない場合と比べて、卵巣がんの発症率が80%低下し、全生存期間が有意に延長する。そのためBRCA1/2遺伝子検査を実施することでがんを予防できたり、治療の選択肢が増えたりするケースもあると考えられる。

 卵巣がんを克服するために、治療の進歩は非常に重要であるが、それだけでなく、認定遺伝カウンセラーの育成など、遺伝子検査が実施できる環境を整えることも重要になってくるのではないだろうか。

(ケアネット 門脇 剛)


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赤肉と鶏肉、乳がんリスクはどちらが高い?/Int J Cancer

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 肉を食べると乳がん発症リスクは上昇するのか。これまで因果関係が言われながらも、一貫性のあるエビデンスが示されていなかった肉と乳がんの関係について、米国・Columbia Mailman School of Public HealthのJamie J. Lo氏らが、4万2,000例超の女性を平均7.6年間追跡した調査結果を発表した。赤肉(red meat)の摂取量が最も多い群は最も少ない群に比べて浸潤性乳がんのリスクが1.23倍高く、一方で鶏肉は最も多く食べる群が最も少ない群に比べて同リスクは0.85倍と低く、赤肉の代わりに鶏肉を食べることで乳がんリスクが低下する可能性があることが示唆されたという。なお調理法についての関連性は観察されなかったとしている。International Journal of Cancer誌オンライン版2019年8月6日号掲載の報告。

 研究グループは、各種の肉摂取量、肉関連変異誘発物質と浸潤性乳がん発症との関連を調べるため、「Sister Study」に参加した4万2,012例から、各種の肉摂取量と調理方法の情報を入手し解析した。参加者は、2003~09年に登録されBlock 1998 Food Frequency Questionnaireを完了し適格基準を満たしていた。

 各種の肉曝露および肉関連変異誘発物質の曝露を算出し、浸潤性乳がんリスクを、多変量Cox比例ハザード回帰法にて推算した。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間平均7.6年間において、4万2,012例の被験者のうち、浸潤性乳がんと診断されたのは試験登録後1年以降の時点で1,536例であった。
・赤肉の摂取量増加は、浸潤性乳がんリスクの上昇と関連していた(最高四分位群vs.最小四分位群のHR:1.23、95%CI:1.02~1.48、傾向のp=0.01)。
・一方で、鶏肉の摂取量増加は、浸潤性乳がんリスクの低下と関連していた(同HR:0.85、95%CI:0.72~1.00、傾向のp=0.03)。
・赤肉摂取と鶏肉摂取を固定していた置換モデルにおいて、赤肉摂取を鶏肉摂取に切り替えると、浸潤性乳がんリスクは低下する関連が認められた(同HR:0.72、95%CI:0.58~0.89)。
・調理方法(ヘテロサイクリックアミンや赤肉摂取に由来するヘム鉄)と、乳がんとの関連は観察されなかった。

(ケアネット)


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Lo JJ, et al. Int J Cancer. 2019 Aug 6. [Epub ahead of print]

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BRCA変異に対する予防的卵巣摘出は骨にどのような影響を及ぼすか

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 BRCA遺伝子変異の保有者において、予防的卵巣摘出術は骨にどのような影響を及ぼすのか。カナダ・Women’s College Research InstituteのJoanne Kotsopoulos氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、とくに手術時に閉経前だった女性において卵巣摘出術と骨密度低下は関連していることが示された。著者は、「この患者集団に対しては、骨の健康を改善するため定期的な骨密度評価およびホルモン療法などの管理戦略を定めるべきである」と述べている。JAMA Network Open誌2019年8月号掲載の報告。

 研究グループは、BRCA遺伝子変異の保有者に対して強く推奨される予防的両側卵管卵巣摘出術と骨密度の関連を評価する検討を行った。2000年1月~2013年5月に、カナダ・オンタリオ州トロントにあるUniversity Health Networkを介し、卵巣摘出術を受けたBRCA変異を有する患者を登録した。手術前に少なくとも1つの卵巣は完全で乳がん以外のがんの既往がないことを適格基準とし、手術の前後にDXA法で骨密度を測定した患者について解析した。データの解析は2018年12月~2019年1月に行った。

 主要評価項目は、ベースラインから追跡調査までの骨密度の年間変化率で、腰椎、大腿骨頸部および全股関節に分けて算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・ベースラインと手術後追跡調査の双方の骨密度測定値があったのは計95例で、平均追跡期間は22.0ヵ月であった。
・卵巣摘出術を受けた時の平均年齢は48.0歳であった。
・手術時に閉経前であった50例(53%)で、追跡調査においてベースラインからの骨密度低下が認められた。
・骨密度低下の年間変化率は、腰椎-3.45%(95%CI:-4.61~-2.29)、大腿骨頸部-2.85%(-3.79~-1.91)、全股関節-2.24%(-3.11~-1.38)であった。
・ホルモン療法の受療者(自己申告)は非受療者と比べ、腰椎(-2.00% vs.-4.69%、p=0.02)および全股関節(-1.38% vs.-3.21%、p=0.04)で、骨密度低下が有意に少なかった。
・手術時に閉経後であった45例(47%)では、腰椎(年間変化率:-0.82%、95%CI:-1.42~-0.23)および大腿骨頸部(-0.68%、-1.33~-0.04)で骨密度の有意な低下がみられたが、全股関節(-0.18%、-0.82~0.46)ではみられなかった。

(ケアネット)


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Kotsopoulos J, et al. JAMA Netw Open. 2019;2:e198420.

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がん患者が言い出せない、認知機能障害への対応策/日本臨床腫瘍学会

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 がんそのもの、あるいはがん治療に伴う認知機能障害(cancer-related cognitive impairment;CRCI)は海外で研究が進みつつあるものの、国内での認識は医療者・患者ともに低い。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会では、「がんと関連した認知機能障害:病態解明・診断・治療/ケアはどこまで進んだか」と題したシンポジウムが開かれ、国内外の知見が紹介された。本稿では、橋本 淳氏(聖路加国際病院 腫瘍内科)、谷向 仁氏(京都大学大学院医学研究科)による発表内容を中心に紹介する。

治療前で2~3割、治療に伴い最大7割以上の患者で報告あり

 CRCIは、現時点で有効な評価方法や治療は確立されていないが、がんそのものによる肉体的・精神的影響によって治療前からみられるもの、化学療法や手術、内分泌療法などの治療に伴ってみられるものがあると考えられている。橋本氏は、乳がん、卵巣がん、消化器がんなどにおける海外の報告を紹介。治療前は20~30%の患者で1)、化学療法に伴うものとして17~75%の患者でみられたという報告がある(報告により認知機能の評価法が異なり、幅のある結果となっている)2~3)

 症状としては、記憶、集中力、処理速度や実施能力の低下が報告されている。“頭に霧がかかったよう”と表現する患者も多いという。リスクファクターとしては、化学療法と関連する因子(血液脳関門の透過性、用量、併用療法など)のほか、年齢、閉経状態、遺伝学的因子(ApoE、COMD、BDNF)、放射線療法歴、もともとの認知予備能などが報告されているが、メカニズムを示す明確なエビデンスは現状存在しない。

症状としては軽微で気づかれにくい、でも日常生活には支障

 谷向氏は、CRCIに着目するきっかけとなった症例を紹介。精神科医として緩和医療科で診察した乳がん患者(外来化学療法受療中)が、「ガスをつけっぱなしで外出してしまうことが何度かある」と話し、危機感を覚えたという。

 そこで同氏は、乳がん患者会の協力を得て化学療法受療の有無と7項目の認知機能障害との関連についてアンケート調査(n=173)を実施。作業スピードが遅くなった、ものごとに集中できなくなった、不注意が増えたなどの6項目で、化学療法の有無による有意差がみられた。さらに、これらの自覚する認知機能障害について、「他者から指摘された」ことは有意に少なく、認知機能障害の項目数が増えるほど抑うつスコア(HADS)が上昇した4)

 一方で、同氏は医師62人を含むがん診療に携わる医療者約400人対象のアンケート調査も実施した。その結果、診療/面接時に毎回あるいは時々のいずれかで症状の有無を患者に「確認する」と答えた割合は、痛み・だるさ・眠気といった身体症状については80%以上、気分の落ち込み・不安といった精神症状についても65%以上だったのに対し、物忘れ・不注意・集中力低下といった認知症状については20~30%に留まっていた。

MMSEやMOCA-Jでは“異常なし”、どうすれば?

 医療者の間で理解が進まない原因の1つに、MMSEやMOCA-Jといった一般的な認知機能のスクリーニング法では、ほぼ満点の例があるなど、CRCIへの感度が高くないという点がある。橋本氏は、がん患者用QOL尺度であるFACT-Cogや、作業効率や言葉の想起の低下などを検出しやすいTMT、COWA、HVLT-Rなどが推奨されていることを紹介した。

 谷向氏は、CRCIの症状が軽微で、非健忘症状として現れることが多いがゆえに、家族にも医療者にも気づかれにくく、二次的な不安や抑うつなどにつながる可能性を指摘。「もう半年くらい症状が続いているが、笑われてしまうかと思って相談できなかった」という患者の言葉を紹介した。予後が改善し、社会復帰を視野に入れるがん患者が増えていく中で、作業効率の低下などは大きな障壁となりうる。同氏は、医療者側が認知障害にも気をかけておくとともに、そのような症状があれば相談してほしいとあらかじめ患者や家族に伝えること、認知機能障害の背景を丁寧に鑑別することの重要性を強調した。

 谷向氏は連携する仲間と共同し、患者・家族に対してのCRCIに関する啓発用パンフレットを作成している。症状チェックリストなどを盛り込んだこのパンフレットはこちらからダウンロード可能となっている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】
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1)Olson B, et al. Cancers (Basel). 2019;11.
2)Ahles TA, et al. J Clin Oncol. 2012;30:3675-86.
3)Hess LM, et al. Gynecol Oncol. 2015;139:541-5.
4)谷向 仁. 精神神経学雑誌. 2015;117: 585-600.

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エヌトレクチニブ、NTRK固形がんとROS1肺がんでFDA承認

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 2019年8月15日、米国食品医薬品局(FDA)は、NTRK融合遺伝子陽性でほかの治療法がない固形がんに対して、ROS1/TRK阻害薬エヌトレクチニブを迅速承認した。同時に、転移のあるROS1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対しても承認している。

 NTRK陽性がんの有効性は、ALKA、STARTRK-1、STARTRK-2の3つの多施設単群臨床試験のいずれかでエヌトレクチニブを投与された54例の成人患者で検討された。54例の独立評価委員による全奏効率(ORR)は57%(95%CI:43~71)であった。奏効期間(DOR)は、患者の68%が6ヵ月以上は、45%が12ヵ月以上であった。登録が多かったのは、肉腫、NSCLC、乳腺類似分泌がん、乳房、甲状腺、大腸であった。

 ROS1陽性NSCLCの有効性は、上記の3つの試験でエヌトレクチニブが投与された51例の成人患者で調査された。ORRは78%(95%CI:65~89)で、DORは患者の55%で12ヵ月以上であった。

 エヌトレクチニブの重篤な有害事象は、うっ血性心不全、中枢神経系への影響、骨格部骨折、肝毒性、高尿酸血症、QT間隔延長、視力障害であった。頻度の高い(発現率20%以上)有害事象は、疲労、便秘、味覚異常、浮腫、めまい、下痢、悪心、感覚異常、呼吸困難、筋肉痛、認知障害、体重増加、咳、嘔吐、発熱、関節痛、および視覚障害であった。

(ケアネット 細田 雅之)


【参考文献・参考サイトはこちら】
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STARTRK-1(NCT02097810)
STARTRK-2(NCT02568267)

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非糖尿病者でHbA1cとがん発症にU字型の関連

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 HbA1cとがん発症との関連を経時的に評価するため、聖路加国際病院の小林 大輝氏らがHbA1cを複数回測定する縦断研究を実施した。その結果、非糖尿病者においてHbA1cレベルとがんリスクとの間にU字型の関連がみられたが、前糖尿病レベルで追加リスクは認められなかった。また、HbA1c低値が乳がんおよび女性性器がんの発症と関連することが示唆された。Acta Diabetologica誌オンライン版2019年8月9日号に掲載。

 本研究は、聖路加国際病院で実施された後ろ向き縦断研究で、2005~16年に同病院で自主的に健康診断を受けたすべての参加者を含む。アウトカムはがん発症で、HbA1cレベルのカテゴリー間で比較した。HbA1cの変動を考慮するために、HbA1cの経時的な測定を適用した混合効果モデルを使用し縦断的に分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・糖尿病ではない7万7,385人(平均年齢44.7歳、男性49.4%)が参加した。
・追跡期間中央値の1,588日(四分位範囲:730~2,946)で、4,506人(5.8%)の参加者にがんが発症した。
・HbA1cとがん発症の関係はU字型で、HbA1c 5.5~5.9%の群と比べたオッズ比(OR)は、HbA1c低値群(5.0%未満におけるOR:1.31、95%CI:1.17~1.46)、HbA1c高値群(7.5%以上におけるOR:1.87、95%CI:1.03~3.39)とも有意に高かった。
・最も低いHbA1cでは、乳がん(OR:1.5、95%CI:1.21~1.86)と女性性器がん(OR:1.57、95%CI:1.04~2.37)のオッズがより高かった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Kobayashi D, et al. Acta Diabetol. 2019 Aug 9. [Epub ahead of print]

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