BRCA1/2病的バリアント保持者における乳がん後の二次原発がんリスク/JCO

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 乳がんと診断された男女2万5千例以上を対象とした研究で、BRCA1/2病的バリアント保持者における二次原発がんリスクの高さが明らかになった。英国・ケンブリッジ大学のIsaac Allen氏らによるJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年10月29日号掲載の報告より。

 本研究では、1995~2019年に英国国民保健サービス(NHS)臨床遺伝学センターで乳がんと診断され、生殖細胞系列のBRCA遺伝子検査を受けた女性2万5,811例と男性480例について、二次原発がん診断、死亡、国外移住、対側乳房/卵巣手術の1年後または2020年12月31日まで追跡調査が行われた。

 英国の一般人口における罹患率を使用した標準化罹患比(SIR)、Cox回帰法によりBRCA1/2病的バリアント保持者と非保持者を比較したハザード比(HR)、およびKaplan-Meier法による10年累積リスクが推定された。

 主な結果は以下のとおり。

・女性のBRCA1病的バリアント保持者は1,840例、BRCA2病的バリアント保持者は1,750例であった。
・一般人口と比較すると、BRCA1病的バリアント保持者は対側乳房(SIR:15.6、95%信頼区間[CI]:11.8~20.2)、卵巣(44.0、31.4~59.9)、非乳房/卵巣の複合(2.18、1.59~2.92)、大腸(4.80、2.62~8.05)、および子宮内膜(2.92、1.07~6.35)における二次原発がんリスクが高かった。
BRCA2病的バリアント保持者は対側乳房(SIR:7.70、95%CI:5.45〜10.6)、卵巣(16.8、10.3〜26.0)、膵臓(5.42、2.09〜12.5)、および非乳房/卵巣の複合(1.68、1.24〜2.23)における二次原発がんリスクが高かった。
・検査でBRCA1/2病的バリアントが認められなかった女性と比較すると、BRCA1病的バリアント保持者は対側乳房(HR:3.60、95%CI:2.65〜4.90)、卵巣(33.0、19.1〜57.1)、非乳房/卵巣の複合(1.45、1.05〜2.01)、および大腸(2.93、1.53〜5.62)における二次原発がんリスクが高かった。
BRCA2病的バリアント保持者は、対側乳房(HR:2.40、95%CI:1.70〜3.40)、卵巣(12.0、6.70〜21.5)、および膵臓(3.56、1.34〜9.48)における二次原発がんリスクが高かった。
・10年累積リスクは、対側乳房、卵巣、および非乳房/卵巣の複合について、BRCA1病的バリアント保持者では16%/6.3%/7.8%であり、BRCA2病的バリアント保持者では12%/3.0%/6.2%、非保持者では3.6%/0.4%/4.9%であった。
・男性では、BRCA2病的バリアント保持者は非保持者と比較して、対側乳房(HR:13.1、95%CI:1.19〜146)、および前立腺(5.61、1.96〜16.0)における二次原発がんリスクが高かった。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Allen I, et al. J Clin Oncol. 2024 Oct 29. [Epub ahead of print]

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TN乳がんへのサシツズマブ ゴビテカン、販売開始/ギリアド

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 ギリアド・サイエンシズは2024年11月20日、化学療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性/HER2陰性(トリプルネガティブ)乳がんの治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるサシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)の日本における販売開始を発表した。

 サシツズマブ ゴビテカンは、2024年9月24日に国内製造販売承認を取得。この承認は、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象に、サシツズマブ ゴビテカンと医師が選択した治療の有効性と安全性を比較した海外での第III相臨床試験(ASCENT)と、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンの有効性と安全性を評価した国内の第II相臨床試験(ASCENT-J02)の結果に基づくものである。

<製品概要>
商品名:トロデルビ点滴静注用200mg
一般名:サシツズマブ ゴビテカン
剤形:注射剤(バイアル)
効能又は効果:化学療法歴のあるホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌
用法及び用量:通常、成人には、サシツズマブ ゴビテカン(遺伝子組換え)として1回10mg/kg(体重)を、21日間を1サイクルとし、各サイクルの1日目及び8日目に点滴静注する。投与時間は3時間とし、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降は1~2時間に短縮できる。なお、患者の状態により適宜減量する。
製造販売承認日:2024年9月24日
製造販売元:ギリアド・サイエンシズ株式会社

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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アジア人女性のBMIと乳がんの関連、欧米人との違い~32万人のデータ解析

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 BMIと乳がんリスクの関連は、アジア人女性と欧米人女性で異なることが示唆されている。アジア人においては、閉経後女性でBMIと乳がんの正の相関が線形か非線形か、また閉経前女性でBMIと乳がんの相関が正か負かについて、以前の研究で矛盾した結果が報告されている。今回、岐阜大学の和田 恵子氏らは、複数のコホート研究から集められた約32万人のデータを使用して、閉経前および閉経後の日本人を含む東アジア人女性におけるBMIと乳がん発症率との関連を調べた。その結果、閉経後女性ではBMIと乳がんリスクに正の相関がみられたが、BMIが高くなると傾きが緩やかになった。また、閉経前女性で逆相関はみられなかった。Breast Cancer Research誌2024年11月14日号に掲載。

 本研究は、日本、韓国、中国の13のコホート研究から得られた31万9,189人の女性のデータを用いたプール解析。 参加者の身長および体重はベースライン時に測定または自己申告によって得られた。 BMIにより7つのカテゴリー(18.5未満、18.5以上21未満、21以上23未満、23以上25未満、25以上27.5未満、27.5以上30未満、30以上)に分け、Cox比例ハザードモデルを用いて、21以上23未満を基準群とした乳がんのハザード比を推定した。またBMIが5上昇した場合のハザード比も算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・平均16.6年の追跡期間中に、4,819人が乳がんを発症した。
・閉経後女性では、欧米人と同様、BMI増加に伴う乳がんリスクの一定の増加がみられたが、26以上28未満からリスクの増加の傾きが緩やかになった。
・閉経前女性では、欧米人でみられた逆相関はみられず、50歳以上ではBMIの増加とともに乳がん発症リスクがわずかに増加し、高齢の出生コホートで顕著であった。50歳未満ではBMIと乳がん発症リスクに有意な関連は認められなかったが、出生コホートが若くなるにつれてリスク推定値が正から負に変化した。

 著者らは「東アジアでは、肥満と乳がんの増加に伴い、閉経前女性の乳がん発症におけるBMIの役割が変化している可能性がある」と考察している。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Wada K, et al. Breast Cancer Res. 2024;26:158.

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乳がんと肺がんの関連~双方向のメンデルランダム化解析

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 乳がんサバイバーの生存期間の延長に伴い、2次がん発症リスクが上昇している。2次がんの部位は、米国・Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベース(2010~15年)によると、乳房(30.0%)に次いで肺・気管支(13.4%)が多かった。今回、乳がんと肺がんの双方向の因果関係について、中国・The First Affiliated Hospital of Xi’an Jiaotong UniversityのXiaoqian Li氏らがメンデルランダム化(MR)解析で調査したところ、乳がんサバイバーにおいて2次肺腺がんリスクが上昇することが示唆された。Scientific Reports誌2024年11月6日号に掲載。

 本研究では、Breast Cancer Association Consortium(BCAC)における22万8,951例のゲノムワイド関連研究データと、Transdisciplinary Research in Cancer of the Lung(TRICL)における11万2,781例のゲノムワイド関連研究の要約統計を用いて、双方向2サンプルMR解析を実施した。MR解析は逆分散加重(IVW)法のほか、補完的に加重中央値法、MR-RAPS法、MR-Egger 法を用いた。乳がんはエストロゲン受容体発現の有無別、肺がんは肺腺がん、扁平上皮肺がん、小細胞肺がんに分け、関連を調べた。

 主な結果は以下のとおり。

・乳がん全体における肺腺がんとの因果関係がIVW法(オッズ比[OR]:1.060、95%信頼区間[CI]:1.008~1.116、p=0.024)およびMR-RAPS法(OR:1.059、95%CI:1.005~1.116、p=0.033)で認められ、乳がん患者において肺腺がんリスクが上昇することが示唆された。
・肺腺がんの乳がんに対する有意な因果関係は認められなかった。

 著者らは「乳がんサバイバーの死亡率を下げるために、2次肺がんのスクリーニングの強化、早期介入と治療が必要」としている。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Li X, et al. Sci Rep. 2024;14:26942.

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乳がん患者の妊娠・出産のためのタモキシフェン中断についてステートメント公表/日本がん・生殖医療学会

 日本がん・生殖医療学会では10月30日、「乳癌患者の妊娠・出産のためのタモキシフェン内服中断、そして最終投与からの望ましい避妊期間についてのステートメント」を公表した。2023年に初回報告されたPOSITIVE試験の結果に基づき、「一定期間タモキシフェンを内服したのちに、最長2年として内服を中断して妊娠・出産を試みる場合、短期的な予後への影響はないものと考えられる」とし、最終投与からの望ましい避妊期間について以下のように推奨をまとめている。

 「本学会としては、タモキシフェンの内服を中断し自然妊娠を試みたり採卵したりする場合、最終投与からの望ましい避妊期間を、添付文書に従い9ヵ月とすることを推奨する。しかし、タモキシフェン内服前に妊孕性温存療法として採卵され、体外で凍結保存された胚や未受精卵を用いて妊娠を試みる場合は、すでに遺伝毒性は回避されているため、最終投与からの望ましい避妊期間は発生毒性のみを考慮し、3ヵ月とすることは許容されると考える。また妊娠・出産後や中断が2年を超えた場合には、速やかにタモキシフェンの内服を再開することを強く推奨する」

 ステートメントでは、POSITIVE試験の主な結果および2023年3月に厚生労働省から発出された「医薬品投与に関する避妊の必要性等に関するガイダンス」、タモキシフェンの添付文書改訂についての概要も示されている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

日本がん・生殖医療学会「乳癌患者の妊娠・出産のためのタモキシフェン内服中断、そして最終投与からの望ましい避妊期間についてのステートメント」

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早期TN乳がん、多遺伝子シグネチャー活用で予後改善/BMJ

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 切除可能なトリプルネガティブ(TN)乳がんの予後は満足のいくものではなく、術後補助化学療法の最適化が必要とされている。中国・復旦大学上海がんセンターのMin He氏らは、開発した多遺伝子シグネチャーを用いてリスク層別化を行い、それに基づく高リスク患者に対してアントラサイクリン/タキサンベースの治療にゲムシタビン+シスプラチンを組み合わせた強化レジメンが、無病生存期間(DFS)を改善し毒性は管理可能であったことを示した。BMJ誌2024年10月23日号掲載の報告。

統合mRNA-lncRNAシグネチャーを用いてリスク層別化、DFSを評価

 研究グループは2016年1月3日~2023年7月17日に、中国の7つのがんセンターで、切除可能なTN乳がん患者に対して多遺伝子シグネチャーを用いることで、最適な個別化補助療法の提供が実現可能かを評価する多施設共同第III相無作為化試験を行った。

 被験者は、早期TN乳がんで根治手術を受けた18~70歳の女性。研究グループが開発した、統合されたmRNA-lncRNAシグネチャー(3つのmRNA[FCGR1ARSAD2CHRDL1]、2つのlncRNA[HIF1A-AS2AK124454])を用いてリスク層別化を行い、高リスク患者を強化補助化学療法(ドセタキセル+エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル後、ゲムシタビン+シスプラチンを4サイクル)を受ける群(A群)、または標準療法(エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル後、ドセタキセルを4サイクル)を受ける群(B群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。低リスクの患者はB群と同様の補助化学療法を受けた(C群)。

 主要評価項目は、A群vs.B群についてITT解析で評価したDFS。副次評価項目は、B群vs.C群のDFS、無再発生存期間(RFS)、全生存期間(OS)および安全性などであった。

強化補助化学療法vs.標準療法、3年DFS率のHRは0.51

 504例が登録され(A群166例、B群170例、C群168例)、498例が試験の治療を受けた。追跡期間中央値45.1ヵ月の時点で、3年DFS率はA群90.9%、B群80.6%であった(ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.28~0.95、p=0.03)。

 3年RFS率は、A群92.6%、B群83.2%(HR:0.50、95%CI:0.25~0.98、p=0.04)。3年OS率は、A群98.2%、B群91.3%(0.58、0.22~1.54、p=0.27)であった。

 同様の化学補助療法を受けたB群vs.C群の評価では、C群のほうがDFS率が有意に高率であり(3年DFS率:C群90.1% vs.B群80.6%、HR:0.57[95%CI:0.33~0.98]、p=0.04)、RFS率(3年RFS率:94.5% vs.83.2%、0.42[0.22~0.81]、p=0.007)、OS率(3年OS率:100% vs.91.3%、0.14[0.03~0.61]、p=0.002)もC群が有意に高率であった。

 Grade3/4の治療関連有害事象の発現率は、A群で64%(105/163例)、B群で51%(86/169例)、C群で54%(90/166例)であった。治療に関連した死亡は報告されなかった。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

He M, et al. BMJ. 2024;387:e079603.

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本邦初、がん患者の「気持ちのつらさ」のガイドライン/日本肺癌学会

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 2024年10月、日本がんサポーティブケア学会と日本サイコオンコロジー学会は『がん患者における気持ちのつらさガイドライン』(金原出版)を発刊した。本ガイドラインは、がん医療におけるこころのケアガイドラインシリーズの第4弾となる。第65回日本肺癌学会学術集会において、本ガイドラインの作成委員長の藤澤 大介氏(慶應義塾大学医学部)が本ガイドライン作成の背景、本ガイドラインで設定された重要臨床課題と臨床疑問(CQ:クリニカルクエスチョン)を紹介した。

気持ちのつらさはがん治療や生命予後に悪影響

 がん患者における気持ちのつらさは、QOLの低下や痛みの増強を招くだけでなく、がん治療のアドヒアランスの低下を招き、入院期間の延長や生命予後の悪化にもつながる。しかし、その多くは予防や治療が可能であると藤澤氏は強調する。そこで、本ガイドラインでは臨床における気持ちのつらさへの対応方法をアルゴリズムとして示した。

 まず、気持ちのつらさへの対応の大原則として「初めから精神心理の専門家が関わるのではなく、すべての医療従事者が温かく常識的な対応をすることが重要である」と藤澤氏は述べた。具体的には、(1)支持的なコミュニケーション、(2)気持ちのつらさの可能性への気付き、(3)ニーズの特定と対応、(4)気持ちのつらさに類似した医学的状況の除外、が必要である。これらの対応をしたうえで、気持ちのつらさが持続する場合や、症状の重い気持ちのつらさが存在する場合には、より精神・心理ケアに特化した介入を検討するという流れである。詳細はガイドラインを参照されたい(p.96~100)。

閾値以上の気持ちのつらさの緩和に関する9つのCQを設定

 本ガイドラインでは、気持ちのつらさを緩和するための介入について、6つの重要臨床課題と9つのCQを設定した。なお、介入の効果の指標としてはうつ、不安、両者を統合したdistressを用いた。また、気持ちのつらさは正常範囲のものではなく、臨床的介入が必要とされる一定の重症度以上(閾値以上)のものを対象としている。

 藤澤氏は、本発表では9つのCQのうち「薬物療法(CQ1、2)」「協働的ケア(CQ4)」「早期からの緩和ケア(CQ5)」「ピアサポート(CQ7)」について紹介した。

 9つのCQのなかで、唯一強い推奨となったのは、協働的ケアであった(CQ4、推奨の強さ1[強い]、エビデンスの確実性[強さ]:A[強い])。協働的ケアとは、プライマリ・ケア提供者と精神心理の専門家が協力体制を作って、系統的なケアを提供するというモデルである。海外では、プライマリ・ケア提供者はトレーニングを受けた看護師が担うことが多い。協働的ケアは、本ガイドラインでは強い推奨となったものの「本邦での現状を考えると、実施していない施設が多いのではないか」と藤澤氏は指摘した。そこで、解決策として「がん診療拠点病院には、認定専門看護師が在籍しており、がんカウンセリング料などが算定できる。また、緩和ケアチームが機能していることが多いと考えられるため、がん診療拠点病院にハブとして機能していただき、精神心理の専門家、精神科などと連携しながら系統的な介入の実施を検討していくのが良いのではないか」と述べた。

 続いて、藤澤氏は薬物療法について説明した。薬物療法で用いられるのは抗不安薬(CQ1)、抗うつ薬(CQ2)であるが、これらは本ガイドラインでは弱い推奨となった。この根拠として、対象をがん患者に限定すると、薬物療法のエビデンスはあまり確立していないことが挙げられた。ただし、抗不安薬や抗うつ薬は、がん患者に限定しなければ、不安やうつに対して十分なエビデンスを有しているため、有害事象について慎重に考慮したうえで使用することを提案するという形であると、藤澤氏は説明した。

 早期からの緩和ケア(CQ5)については、「気持ちのつらさの改善を目的とした場合、単独では推奨しない」という推奨となった。この根拠としては、閾値以上の気持ちのつらさを有する患者を対象とした研究がなかったこと、閾値を設定しない研究では良好な結果もあったものの有意差がない研究が多かったことが挙げられた。ただし、藤澤氏は「早期からの緩和ケアは、進行がんの患者における症状緩和やQOLの向上に有益であることがわかっており、すべてのがん患者に対して実施を考慮すべきという基本スタンスは変わっていない」と付け加えた。

 ピアサポート(CQ7)についても、早期からの緩和ケアと同様に「気持ちのつらさの改善を目的とした場合、単独では推奨しない」という推奨となった。こちらも、その根拠としてはエビデンス不足が挙げられた。ただし、うつ・不安以外のアウトカムの改善(例:自己効力感の向上)を認める研究はあり、「実施を否定するものではなく、より専門的な精神心理的介入と併用しながら実施することは十分に考えられる」と藤澤氏は述べた。

 本発表の結語として、藤澤氏は「気持ちのつらさに対する介入には、すべての医療者が行うべき対応と、より専門的な介入がある。すべての医療者が重要なプレイヤーであり、専門的な介入に関するエビデンスを踏まえながら協働的に実施する形を作っていきたい」と述べた。

(ケアネット 佐藤 亮)


【参考文献・参考サイトはこちら】

日本サイコオンコロジー学会/日本がんサポーティブケア学会 編. がん患者における気持ちのつらさガイドライン 2024年版. 金原出版;2024.

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固形がんにMRD検査は有用か?学会がガイダンスを作成/日本癌治療学会

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 日本癌治療学会は、固形がんを対象に、がん種横断的にMRD検査の最新エビデンスを集め、検査の適正利用・研究を目指すことを目的としたガイダンス「分子的残存病変(molecular residual disease:MRD)検査の適正臨床利用に関する見解書 第1版」(日本癌治療学会:編、日本臨床腫瘍学会・日本外科学会:協力)を作成し、2024年10月に学会サイト上で公開した。

※MRDの概念は複数あり、Pubmedでも以下の3つの名称が混在するが、今回のガイダンスにおけるMRDは2の概念に基づくもの。
 1.Minimally Residual Disease…血液腫瘍における定義(現在のMRD関連論文の4分の3を占める)
 2.Molecular Residual Disease…近年のctDNAに基づく、分子レベルの残存病変
 3.Measurable Residual Disease…定量的に測定可能な残存病変

 MRDは、抗がん剤の投与などにより一定の治療効果が確認された後も患者の体内に残る微小なレベルのがん病変を指す。もともとは造血器腫瘍における研究が先行しており、2024年4月には米国食品医薬品局(FDA)の委員会がMRDを多発性骨髄腫の臨床開発のエンドポイントとすることを認めるなど、研究・臨床への応用が進む。固形がんにおいても、血液を用いたリキッドバイオプシー検査の臨床導入を契機に、大腸がんなどを中心にMRD評価による再発リスク層別化を検証する臨床試験が多数行われ、臨床応用や保険承認を目指す流れができつつある。今回の見解書(ガイダンス)もこのような背景から作成されたものだ。

 ガイダンスは以下の構成となっている。
―――――――――――――――――――
・総論:ctDNA、MRDについて、MRD検査に関する国内外のガイドライン記載
・各論:各領域の臨床動向(消化管、肺、乳腺、泌尿器、肝胆膵、婦人科、頭頸部、皮膚)
・クリニカル・クエスチョン(CQ1~9)
・参考資料
―――――――――――――――――――
 ガイダンス公開と同時期に行われた第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)では、「MRDがもたらす切除可能固形がん周術期治療の近未来―切除可能固形がんにおけるMRD利用ガイダンス発刊に寄せて」と題したシンポジウムが行われ、ガイダンスの作成ワーキンググループの委員が、ガイダンスに収載されたエビデンスや各領域における検査実施や応用の現状を報告した。

 MRDに関するエビデンスが蓄積してきた造血器腫瘍領域と異なり、固形がん領域におけるMRD検査の臨床応用は道半ばだ。シンポジウムではMRD検査活用に対する「賛成派」「反対派」の立場に分かれ、ディスカッションを行った。賛成派がこれまで報告された研究結果を基に有用性を示す一方で、反対派は「がん種ごとに検出率が異なり、臓器横断的に利用できるのかは疑問」「複数のアッセイがあり、精度の検証や最適化がされていない」「膵がんのような予後の悪いがんでは、MRD陰性の中にも再発ハイリスク層が存在する。MRD陰性を理由とした治療中止に本当にベネフィットはあるか」「MRDの結果だけで患者を層別化するのは、個別化医療の流れに反するのでは」といった、現時点における疑問点や課題点を挙げた。

 また、各領域の報告では、がん種ごとに重要なサブタイプと判定すべき時期・検査が異なるためMRD検査の実施判定が難しい、すでに確立されたバイオマーカーがありMRD検査の必要性が薄いなど、MRD検査に対するスタンスに違いも見られた。

 最後にワーキンググループ委員長を務める小林 信氏(国立がん研究センター東病院)が、ガイダンスに掲載された9つのクリニカルクエスチョン(CQ)から5つを紹介した。

CQ1:術後MRD検査には、どのようなアッセイが推奨されるか?

推奨1-1:MRD検査として分析的妥当性及び臨床的妥当性が示された検査を強く推奨する。
→「臨床的妥当性」がキーワードで、これはMRD検査の感度・特異度や的中率、陽性患者と陰性患者の予後の比較、MRD検出から再発までの期間などにより評価される。これらの指標が適切な臨床試験で示されているアッセイの利用を「強く推奨する」。

CQ2:どのような症例を対象にMRD検査を行うことが推奨されるか?

推奨2-1:術後再発リスク評価を目的として、根治的切除が行われている症例を対象にMRD検査を行うことを強く推奨する。
→MRD検査は、がん患者を対象に低侵襲にctDNAを解析し、再発の証拠がある前に分子的再発を特定する検査である。従って、基本的に根治的切除が行われている症例が対象となる。具体的ながん種、Stageに関しては、適切な研究により臨床的妥当性を示すことが必要である。たとえば、大腸がんに関してはCIRCULATE-JapanによるGALAXY試験によってStageを問わず陽性例の再発リスクが高いことが示されているため、根治切除後の全症例が推奨の対象となる。一方、再発サーベイランスに関しては、がん種・Stageごとのリスクを考慮し、低リスク症例に高コストのMRD検査を続けることは望ましくないだろう。

CQ4:MRD検査はいつ行うことが勧められるか?

推奨4-2:術後再発リスクを目的とする場合、術後補助療法開始前且つ術後2~8週を目安としたMRD検査を推奨する。
→MRD検査は術後再発リスクを評価し、術後の補助療法の適用を判断することが主な目的であり、検査実施は術後2~8週間が妥当とした。この根拠は、手術直後は侵襲の影響でctDNAが高値となり、術後2週以降に標準化することだ。あとはがん種ごとのガイドラインにおける術後補助療法の開始時期から逆算し、検査を実施することになるだろう。

CQ6:術後MRD陽性の患者に対して、術後補助療法は推奨されるか?

術後MRD陽性の患者に対して、各がん種に応じた術後補助療法を行うことを推奨する。
→MRDが消失すると予後が良い、MRD陽性例に術後補助療法を行うと予後が良い、というエビデンスが、がん種横断的に示されている。ただ、こうしたデータは再発高リスク例を対象とした後ろ向き研究が多いことには注意が必要だ。MRD陽性・再発低リスク例に対する補助療法の有用性を示したエビデンスはなく、この点はがん種ごとにガイドラインの推奨も異なり、委員間で意見の相違もあった。

CQ8:術後MRD陰性の患者に対して、術後補助療法は推奨されるか?

術後MRD陰性の患者に対しても、各がん種に応じた術後補助療法を行うことを考慮する。ただし腫瘍因子・患者因子などを考慮して治療強度の低いレジメンの適用や術後補助療法を行わないことも選択肢となりうる。
→大腸がんを対象としたDYNAMIC試験では、MRD陰性例であっても病理学的因子の不良例は有意に予後が悪いという結果が示されるなど、MRD陰性の結果だけで術後補助療法の省略・簡略化を決めることは難しい。ただ、がん種によってはMRD陰性例における術後観察群の経過が良好という報告もあり、このような推奨となった。現在進行中の大腸がんを対象にMRD陰性例の術後補助療法の有無を比較したVEGA試験の結果などを見て、再度検討することになるだろう。

「MRD検査の適正臨床利用に関する見解書 第1版」/日本癌治療学会

(ケアネット 杉崎 真名)


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PIK3CA変異進行乳がん1次治療、inavolisib追加でPFS改善/NEJM

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 PIK3CA変異陽性、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の局所進行または転移を有する乳がん患者の治療において、パルボシクリブ+フルベストラントにプラセボを加えた場合と比較して、パルボシクリブ+フルベストラントにPI3Kα阻害薬inavolisibを追加すると、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長した一方で、一部の毒性作用の発生率が高いことが、英国・Royal Marsden Hospital and Institute of Cancer ResearchのNicholas C. Turner氏らが実施した「INAVO120試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年10月31日号に掲載された。

国際的な無作為化プラセボ対照第III相試験

 INAVO120試験は、進行乳がんにおけるinavolisib追加の有用性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年1月~2023年9月に28ヵ国で患者を登録した(F. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。

 対象は、PIK3CA変異陽性、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の局所進行または転移を有する乳がんの女性(閉経の前/中/後かは問わない)または男性で、術後補助内分泌療法中または終了後12ヵ月以内に再発した患者であった。

 被験者を、1次治療としてinavolisib(9mg、1日1回、経口投与)とパルボシクリブ+フルベストラントを併用投与する群(inavolisib群)、またはプラセボとパルボシクリブ+フルベストラントを併用投与する群(プラセボ群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。

 主要評価項目は、担当医の評価によるPFS(無作為化から病勢進行または全死因死亡までの期間)であった。

全生存率は有意差がない

 325例を登録し、inavolisib群に161例、プラセボ群に164例を割り付けた。全体の年齢中央値は54.0歳(範囲:27~79)、319例(98.2%)が女性、195例(60.0%)が閉経後女性であり、167例(51.4%)が3つ以上の臓器に転移を、260例(80.0%)が内臓(肺、肝、脳、胸膜、腹膜)転移を有し、269例(82.8%)が過去に術前または術後補助化学療法を受けていた。追跡期間中央値は、inavolisib群21.3ヵ月、プラセボ群21.5ヵ月だった。

 PFS中央値は、プラセボ群が7.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.6~9.3)であったのに対し、inavolisib群は15.0ヵ月(11.3~20.5)と有意に延長した(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.43、95%CI:0.32~0.59、p<0.001)。また、感度分析として盲検下独立中央判定による無増悪生存期間の評価を行ったところ、結果は担当医判定と一致していた(0.50、0.36~0.68、p<0.001)。

 一方、6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月時の全生存率は、inavolisib群がそれぞれ97.3%、85.9%、73.7%、プラセボ群は89.9%、74.9%、67.5%であり、両群間に有意差を認めなかった。死亡のHR(inavolisib群vs.プラセボ群)は0.64(95%CI:0.43~0.97、p=0.03)であり、事前に規定された有意差の境界値(p<0.0098)を満たさなかった。

 客観的奏効率はinavolisib群が58.4%、プラセボ群は25.0%(群間差:33.4%ポイント、95%CI:23.3~43.5)、奏効期間中央値はそれぞれ18.4ヵ月および9.6ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.33~0.99)であった。

重篤な有害事象inavolisib群24.1%、試験薬投与中止6.8%

 Grade3/4の有害事象は、inavolisib群が80.2%、プラセボ群は78.4%で発現した。このうちinavolisib群で多かったGrade3/4の有害事象として、高血糖(5.6% vs.0%)、口内炎/粘膜炎症(5.6% vs.0%)、下痢(3.7% vs.0%)を認め、Grade3/4の皮疹は両群とも観察されなかった。

 重篤な有害事象はinavolisib群24.1%、プラセボ群10.5%、Grade5(致死性)の有害事象はそれぞれ3.7%および1.2%で発現し、有害事象による試験薬の投与中止は6.8%(inavolisib 6.2%、パルボシクリブ4.9%、フルベストラント3.1%)および0.6%(有害事象によるパルボシクリブ、フルベストラントの投与中止はない)で発現した。

 著者は、「本研究では、これらの患者集団において、総投与量を用いたPI3Kα阻害薬(inavolisib)+CDK4/6阻害薬(パルボシクリブ)+内分泌療法(フルベストラント)の併用療法は、PFSを大幅に改善した。一部の有害事象の発現率が高いものの安全性プロファイルは良好であったことから、この治療法は新たな治療選択肢となる可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)


Turner NC, et al. N Engl J Med. 2024;391:1584-1596.

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乳がん薬物療法の最新トピックス/日本癌治療学会

提供元:CareNet.com

 第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で企画されたシンポジウム「明日からの乳癌診療に使える!最新の薬剤の使いどころ」において、がん研究会有明病院の尾崎 由記範氏が、乳がん薬物療法の最新トピックスとして、KEYNOTE-522レジメンの使いどころ、HER2ゼロ/低発現/超低発現の課題、新たなPI3K阻害薬inavolisibを取り上げ、講演した。

高リスク早期TN乳がんへのKEYNOTE-522レジメンの使いどころ

 切除可能トリプルネガティブ(TN)乳がんの標準治療としては、術前に化学療法を行い術後にカペシタビンやオラパリブを投与する治療があるが、KEYNOTE-522試験の結果から術前・術後にペムブロリズマブを使えるようになった。

 KEYNOTE-522試験は、主にStageII/IIIのTN乳がんに対して、カルボプラチン+パクリタキセル → AC/ECの術前・術後にペムブロリズマブを併用し、予後改善を検討した第III相試験である。本試験で、病理学的完全奏効(pCR)割合、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間の改善が認められ、現在、ペムブロリズマブ併用レジメンが標準治療となっている。また、サブグループ解析において、StageやPD-L1の発現、pCR/non-pCRにかかわらず一貫した有効性が示され、StageII/IIIに広く使用できる。一方、免疫チェックポイント阻害薬は免疫関連有害事象(irAE)のリスクがある。術前治療においてGrade3以上のirAEが13%に認められており、5年EFSの9%のベネフィットとのバランスが議論になっているという。

 今回、尾崎氏はKEYNOTE-522レジメンの日常診療におけるクリニカルクエスチョン(CQ)のうち4つを取り上げ、自施設(がん研究会有明病院)の方針や考えを紹介した。

CQ:T2N0M0 cStageIIAのような比較的リスクの低い症例に対しても使用すべきか?
T2N0症例における5年EFSは10%の差があり、TN乳がんは再発すると予後が約2年であることから、使用するようにしている。

CQ:ホルモン受容体が弱陽性(ER 1~9%)の症例に使用すべきか?
KEYNOTE-522試験にはER 1~9%は含まれていないが、ER 1~9%はTN乳がんとして治療すべきという考えがあり、最近の論文ではThe Lancet Regional Health-Europe誌にもそのように記載されている。ESMO2024でER 1~9%に対するリアルワールドデータが報告され、pCR割合は75%とTN乳がんと同程度だった。がん研究会有明病院ではER 1~9%もTN乳がんと診断して使用している(必ずしも保険が適用されるとは限らないため、各施設での判断が必要)。

CQ:アントラサイクリンパートでG-CSF製剤の予防投与をするか?
KEYNOTE-522試験での発熱性好中球減少症の発現割合は18%と報告されている。がん研究会有明病院の青山 陽亮氏の発表では22.9%と報告されており(JSMO2024)、多くはアントラサイクリンパートで発現しているため、G-CSF製剤の1次予防投与を推奨している。

CQ:術後の最適な治療法は?
pCR/non-pCRにかかわらずペムブロリズマブの使用が標準治療になっているが、non-pCRの場合のカペシタビン、生殖細胞系列BRCA病的バリアントを有する場合のオラパリブも世界的に標準治療と位置付けられている。pCRの場合にペムブロリズマブを省略可能かどうかが世界中で議論されており、それを検討するためのOptimICE-pCR試験が2,000例規模で進行中である。また、non-pCRではより有効な治療選択肢が必要とされており、その1つとしてdatopotamab deruxtecan+デュルバルマブが検討されている(TROPION-Breast03試験)。また、周術期ペムブロリズマブ投与後の再発症例は非常に予後不良であることから、再発症例に対してペムブロリズマブ+パクリタキセル±ベバシズマブで比較する医師主導治験(WJOG16522B、PRELUDE試験)を開始予定である(治験調整事務局:尾崎氏)。

HER2ゼロ/低発現/超低発現の区別は喫緊の課題

 次に尾崎氏は、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の適応に関連するHER2ゼロ/低発現/超低発現について取り上げた。

 HR+HER2低発現/超低発現乳がんを対象としたDESTINY-Breast06試験において、T-DXdの有効性が示された。HER2超低発現の定義は、IHC0で10%以下の細胞に不完全な染色がある場合とされており、HER2-乳がんのうち20~25%とされている。この超低発現乳がんでも低発現乳がんと一貫した有効性が報告された。ESMO2024では、各施設でIHC0と判断された乳がんのうち、中央では24%がHER2低発現、40%が超低発現と判定されたとの報告があり、約6割がT-DXdのベネフィットが得られる可能性がある。T-DXdは今年8月、FDAからHER2低発現/超低発現の転移再発乳がん治療を対象として「画期的治療薬」として指定されており、日本でもすでに効能・効果追加の一部変更承認申請がなされていることから、尾崎氏は「HR+HER2ゼロとHER2低発現、超低発現の区別が喫緊の課題」と述べた。

新規PI3K阻害薬inavolisibがFDA承認、日本における課題

 尾崎氏は最後に、昨年末のサンアントニオ乳がんシンポジウム2023で初めて第III相INAVO120試験の主要評価項目である無増悪生存期間が発表され、そのわずか10ヵ月後の今年10月10日にFDAで承認されたPI3K阻害薬のinavolisibについて紹介した。

 INAVO120試験は、術後内分泌療法中に再発もしくは終了後12ヵ月以内に再発し、PIK3CA変異があるHR+HER2-乳がんを対象とした試験で、inavolisib+パルボシクリブ+フルベストラントの3剤併用の有効性が示された。

 現在、尾崎氏が考えるHR+HER2-乳がんに対する薬物療法は、アロマターゼ阻害薬+CDK4/6阻害薬を投与後、PIK3CA/AKT/PTEN変異の有無によって2次治療を選択、その後、ホルモン療法耐性、ホルモン感受性なし、visceral crisisの場合は抗体薬物複合体や化学療法、という流れである。inavolisibは再発診断時からPIK3CA変異を検出する必要があるため、尾崎氏は「米国では、再発1次治療としてinavolisib+パルボシクリブ+フルベストラントの併用がすでに承認され標準治療となるため、将来もしinavolisibが日本でも開発され承認されれば、日本でも同様に再発時点で遺伝子検査にてPIK3CA変異を確認する必要がある」と課題を提示した。

(ケアネット 金沢 浩子)


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