第21回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2024

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 日本臨床腫瘍学会は2024年1月31日にプレスセミナーを開催し、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(2024年2月22日~24日)の注目演題などを紹介した。

 今回は、国・立場・専門分野・職種・治療手段などのあらゆる障壁をなくし、世界を1つにして皆で語り、議論をして、その先に続く未来を切り拓いていきたいという願いを込め、「Break the Borders and Beyond ~for our patients~」というテーマが設定された。演題数は1,258となり、そのうち海外演題数は511と過去最多になる予定である。

プレジデンシャルシンポジウムなどの注目演題

 能澤 一樹氏(愛知県がんセンター ゲノム医療センターがんゲノム医療室・乳腺科部 医長)が、本会で企画されているプレジデンシャルシンポジウムを紹介した。プレジデンシャルシンポジウムは8セッション、シンポジウムは30セッション企画されている。プレジデンシャルシンポジウムは以下のとおり。

【プレジデンシャルシンポジウム】
会長企画シンポジウム1:Real World Data(RWD)活用に向けた基盤整備
2月22日(木)9:00~10:20
会長企画シンポジウム2:ICIで変わる、周術期治療
2月22日(木)10:30~11:30
会長企画シンポジウム3:腫瘍内科医に知って欲しい外科治療の進歩
2月22日(木)15:30~17:00
会長企画シンポジウム4:多学際領域との協働で奏でる臨床腫瘍学の未来
2月23日(金)8:20~9:50
会長企画シンポジウム5:超高齢社会のがん医療、日本はどうすべきか
2月23日(金)9:50~11:20
会長企画シンポジウム6:臨床開発や日常診療のためのReal World Data活用を考える
2月24日(土)8:20~9:50
会長企画シンポジウム7:がん診療は集約化か均てん化か
2月24日(土)13:45~15:15
会長企画シンポジウム8:新規薬剤開発における新しいドラッグロス
2月24日(土)9:50~11:50

 また、岩田 広治氏(愛知県がんセンター副院長 兼 乳腺科部長)は、プレジデンシャルセッションが充実していることを強調した。プレジデンシャルセッションで発表されるデータは、過去に国際学会で発表されたものではなく、世界で初めて発表されるデータとなっている。紹介された演題は以下のとおり。

【プレジデンシャルセッション】
・肺がんグローバル試験の日本人サブセット解析:1演題
・肺がんグローバル試験のアジア人サブセット解析:1演題
・肺がんグローバル試験の全生存期間アップデート:1演題
・消化器がん大規模コホート研究からの新規データ(SCRUM-Japan MONSTAR SCREEN2、GALAXY Trial):3演題
・血液がんの新規薬剤第I相試験:1演題
・乳がん新規抗体薬物複合体のグローバル試験のアジア人サブセット解析:1演題
・乳がん新規グローバル試験のバイオマーカー解析:1演題
・日本での新規抗体薬物複合体の第I相試験データ:1演題
・消化器がんの日本での第III相試験のバイオマーカー解析:1演題
・消化器がんのグローバル試験の日本人サブセット解析:1演題
・肝胆膵領域でのJCOG試験の追加解析結果:1演題

新規薬剤のドラッグロスへの取り組み

 室 圭氏(愛知県がんセンター 薬物療法部 部長)がドラッグロスについて解説した。ドラッグロスは、欧米にて承認されている薬剤が日本では開発されず、使用できないという問題であり、ドラッグロスに該当する抗がん剤は2016年時点で21剤であったのに対し、2020年時点では44剤に増加している。この原因として、海外新興企業が開発する薬剤の増加、臨床試験に日本が組み入れられないことなどが挙げられる。

 そこで、わが国が直面する喫緊の問題の解決に向けて、以下のシンポジウムが企画されている。

会長企画シンポジウム8:新規薬剤開発における新しいドラッグロス
2月24日(土)9:50~11:50

リアルワールドデータの活用に向けた諸問題

 武藤 学氏(京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学講座 教授)がリアルワールドデータの活用法と現状の課題について紹介した。国際的には、リアルワールドデータを用いて薬剤の承認申請を行うことが検討されており、実際に活用され始めている。日本でもさまざまなデータベースが利用できるようになっているが、アウトカムのデータが存在しない、デジタル化が遅れている、電子カルテメーカーや施設によって情報のコードやデータ構造が異なる、医療者によって記載方法が異なるナラティブデータの取り扱い方が定まっていないなど、課題が山積している。

 そこで、リアルワールドデータの活用に向けて、以下のシンポジウムが企画されている。

会長企画シンポジウム1:Real World Data(RWD)活用に向けた基盤整備
2月22日(木)9:00~10:20
会長企画シンポジウム6:臨床開発や日常診療のためのReal World Data活用を考える
2月24日(土)8:20~9:50

(ケアネット 佐藤 亮)


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乳房温存術後の局所再発率、70遺伝子シグネチャーで予測可能か(MINDACT)/JCO

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 乳房温存手術を受けた早期乳がん患者の局所再発リスクは、70遺伝子シグネチャー(MammaPrint)によるリスクと独立して関連しないことが、EORTC 10041/BIG 03-04 MINDACT試験の探索的サブ解析で示された。また、術後8年間の局所再発率は3.2%と推定された。オランダ・Netherlands Cancer Institute-Antoni van Leeuwenhoek HospitalのSena Alaeikhanehshir氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年1月19日号で報告。

 本解析は、EORTC 10041/BIG 03-04 MINDACT試験において、乳房温存手術を受け、臨床的リスクおよび70遺伝子シグネチャーによるリスクが判明している女性を評価した。主要評価項目は累積発生率で推定した8年の局所再発率だった。

 主な結果は以下のとおり。

・登録患者6,693例中5,470例(81.7%)が乳房温存手術を受け、そのうち98%が放射線治療を受けていた。
・8年間で189例に局所再発が発生し、8年累積発生率は3.2%(95%信頼区間[CI]:2.7~3.7)であった。
・70遺伝子シグネチャーによる低リスク患者における8年累積発生率は2.7%(95%CI:2.1~3.3)であった。
・単変量解析では、化学療法で調整後、12変数のうち70遺伝子シグネチャーを含む5変数が局所再発と関連した。多変量解析では、術後内分泌療法、腫瘍径、悪性度と関連していた。

 著者らは「この探索的解析では、局所再発イベント数が少なかったためか、70遺伝子シグネチャーは独立して局所再発を予測するものではなく、現在のところ、局所再発に関する臨床的意思決定には使用できない」とした。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Alaeikhanehshir S, et al. J Clin Oncol. 2024 Jan 19. [Epub ahead of print]

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固形がん治療での制吐療法、オランザピン2.5mgが10mgに非劣性/Lancet Oncol

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 オランザピンは効果的な制吐薬であるが、日中の傾眠を引き起こす。インド・Tata Memorial CentreのJyoti Bajpai氏らは、固形がん患者における催吐性の高い化学療法後の低用量オランザピン(2.5mg)と標準用量オランザピン(10mg)の有効性を比較することを目的に、単施設無作為化対照非盲検非劣性試験を実施。結果をLancet Oncology誌2024年2月号に報告した。

 本試験はインドの3次医療施設で実施され、固形がんに対しドキソルビシン+シクロホスファミドまたは高用量シスプラチン投与を受けているECOG PS 0~2の13~75歳が対象。患者はブロックランダム化法(ブロックサイズ2または4)により2.5mg群(1日1回2.5mgを4日間経口投与)または10mg群(1日1回10mgを4日間経口投与)に1:1の割合で無作為に割り付けられ、性別、年齢(55歳以上または55歳未満)、および化学療法レジメンによって層別化された。研究スタッフは治療の割り当てを知らされていなかったが、患者は認識していた。

 主要評価項目は、修正intent-to-treat(mITT)集団における全期間中(0~120時間)の完全制御(催吐エピソードなし、制吐薬追加なし、悪心なしまたは軽度の悪心で定義)。日中の傾眠は関心のある安全性評価項目とされた。非劣性は治療群間における完全制御割合の差の片側95%信頼区間(CI)の上限値が非劣性マージン10%未満の場合と定義された。

 主な結果は以下のとおり。

・2021年2月9日~2023年5月30日に、356例が適格性について事前スクリーニングを受け、うち275例が登録され、両群に無作為に割り付けられた(2.5mg群:134例、10mg群:141例)。
・267例(2.5mg群:132例、10mg群:135例)がmITT集団に含まれ、うち252例(94%)が女性、242例(91%)が乳がん患者であった。
・2.5mg群では132例中59例(45%)、10mg群では135例中59例(44%)が全期間において完全制御を示した(群間差:-1.0%、片側95%CI:-100.0~9.0、p=0.87)。
・全期間において、2.5mg群では10mg群に比べ、Gradeを問わず日中の傾眠が認められた患者(65% vs.90%、p<0.0001)および1日目に重篤な傾眠が認められた患者(5% vs.40%、p<0.0001)が有意に少なかった。

 著者らは、催吐性の高い化学療法を受けている患者においてオランザピン2.5mgは10mgと比較して制吐効果が非劣性で、日中の傾眠を減少させることが示唆されたとし、新たな標準治療として考慮されるべきとしている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Bajpai J, et al. Lancet Oncol. 2024;25:246-254.

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TN乳がんの治療薬SG、日本での製造販売承認を申請/ギリアド

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 ギリアド・サイエンシズは、2024年1月30日付のプレスリリースで、全身療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性かつHER2陰性(HR-/HER2-)乳がん治療薬として開発を進めている抗体薬物複合体(ADC)sacituzumab govitecan(SG)について、同日に日本における製造販売承認申請を行ったと発表した。

 HR-/HER2-(IHCスコア0、IHCスコア1+またはIHCスコア2+/ISH陰性)乳がん(トリプルネガティブ乳がん)は、最も悪性度の高いタイプの乳がんで、乳がん全体の約10%を占めるといわれている。HR-/HER2-乳がんの細胞は、エストロゲンとプロゲステロンの受容体の発現がなく、HER2の発現も限定的もしくはまったく認められない。HR-/HER2-乳がんはその性質上、他の乳がんに比べて有効な治療法がきわめて限られており、再発や転移の可能性が高く、他の乳がんにおける転移・再発までの平均期間が5年であるのに対し、HR-/HER2-乳がんでは約2.6年、5年生存率は、一般的な再発乳がんの女性においては28%、HR-/HER2-再発乳がんにおいては12%とされている。

 SGは、90%以上の乳がんを含む複数のがん種で高発現する細胞表面抗原であるTrop-2蛋白を標的とするADCである。Trop-2が発現したがん細胞に取り込まれると、トポイソメラーゼI阻害薬であるSN-38を直接届けるとともに、バイスタンダー効果により周辺のがん細胞のDNAにも作用し、がん細胞を死滅させる。

 今回の承認申請は、2つ以上の化学療法レジメンによる前治療後に再発した切除不能な局所進行または転移・再発のHR-/HER2-乳がん患者を対象に海外で実施した第III相試験(ASCENT試験)および国内第II相臨床試験(ASCENT-J02試験)の結果に基づく。

(ケアネット)


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PD-L1陽性乳がん、nab-PTXにtoripalimab上乗せでPFS改善(TORCHLIGHT)

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 再発または転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療として、nab-パクリタキセルに抗PD-1抗体toripalimabを上乗せした第III相TORCHLIGHT試験の結果、PD-L1陽性集団において無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、安全性プロファイルは許容可能であったことを、中国・Fifth Medical Center of Chinese PLA General HospitalのZefei Jiang氏らが明らかにした。Nature Medicine誌2024年1月号掲載の報告。

 TORCHLIGHT試験は、再発または転移を有するTNBCで、全身療法を受けていない18~70歳の女性患者を対象に、1次治療としてnab-パクリタキセル+プラセボ群(178例)と比較して、nab-パクリタキセル+toripalimab群(353例)の有効性と安全性を評価することを目的とする多施設共同無作為化二重盲検試験。主要評価項目は、PD-L1陽性集団およびITT集団における盲検下独立中央判定(BICR)によるPFSで、副次評価項目は全生存期間(OS)と安全性であった。

 主な結果は以下のとおり。

・PD-L1陽性患者は、toripalimab群で200例、プラセボ群で100例であった。
・PD-L1陽性集団において、PFS中央値はtoripalimab群8.4ヵ月、プラセボ群5.6ヵ月であり、toripalimab群で統計学的に有意な改善が示された(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.47~0.906、p=0.0102)。
・OS中央値は、toripalimab群32.8ヵ月、プラセボ群19.5ヵ月であった(HR:0.62、95%CI:0.414~0.914、p=0.0148)。
・治療に起因する有害事象(AE)はtoripalimab群99.2% vs.プラセボ群98.9%に発現した。うちGrade3以上のAEは56.4% vs.54.3%、致死的AEは0.6% vs.3.4%であった。

(ケアネット 森 幸子)


【原著論文はこちら】

Jiang Z, et al. Nat Med. 2024;30:249-256.

【参考文献・参考サイトはこちら】

TORCHLIGHT試験(ClinicalTrials.gov)

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米国の乳がん死亡率の低下、治療の変化との関連は?/JAMA

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 米国の乳がん死亡率は、乳がんのスクリーニングと治療の改善によって、1975年から2019年までに58%低下したことが、米国・スタンフォード大学のJennifer L. Caswell-Jin氏らによるシミュレーションモデル研究で示された。シミュレーションでは、StageI~IIIの乳がんの治療が、47%の低下に寄与していることが示された一方で、転移のある乳がんについては、治療の寄与は29%、スクリーニングの寄与は25%であった。米国における乳がん死亡率は、1975年から2019年の間に減少したことが報告されていたが、転移のある乳がん治療の変化と乳がん死亡率低下との関連はわかっていなかった。JAMA誌2024年1月16日号掲載の報告。

CISNETの4つのモデルで乳がん死亡率をシミュレーション

 研究グループは、本研究のためにCancer Intervention and Surveillance Modeling Network (CISNET)が開発した4つのモデルを用い、マンモグラフィーによるスクリーニングと治療(StageI~IIIの乳がん治療、転移のある乳がん治療)の普及および効果に関する観察研究ならびに臨床試験のデータを集約し、1975~2019年の米国における30~79歳の女性の乳がん死亡率を、全体およびエストロゲン受容体(ER)およびERBB2(HER2)状態別にシミュレーションした。

 主要アウトカムは、乳がんの年齢調整死亡率で、スクリーニング、StageI~IIIの治療および転移のある乳がん治療の介入がない場合と比較した。また、乳がんの転移再発後の生存期間中央値についてもモデルで推定した。

1975年から2019年に乳がん死亡率は58%低下、転移治療の寄与は29%

 米国における乳がんの年齢調整死亡率は、1975年が女性10万人当たり48、2019年は同27であった。

 スクリーニング、StageI~IIIの乳がん治療および転移のある乳がん治療の3つすべての介入を反映したモデルでは、1975年に比べて2019年の乳がん死亡率は58%低下(モデル範囲:55~61)した。この低下について、転移のある乳がん治療の介入だけを反映したモデルでは29%(モデル範囲:19~33)、StageI~IIIの乳がん治療のみだけの場合は47%(35~60)、マンモグラフィー検査のみだけの場合は25%(21~33)の低下であった。

 シミュレーションに基づくと、転移再発後の生存の最も大きな変化は2000年から2019年の間に起きており、生存期間中央値は1.9年(モデル範囲:1.0~2.7)から3.2年(2.0~4.9)に延長していた。また、ER陽性/ERBB2陽性乳がんの生存期間中央値は2.5年(2.0~3.4)延長していた一方で、ER陰性/ERBB2陰性乳がんの生存期間中央値の延長は0.5年(0.3~0.8)であった。

 なお著者は、モデルの精度は実施された仮定に依存していること、モデルにはスクリーニングや治療の普及と有効性における年齢、人種、民族などによる潜在的な格差や、治療費やアウトカムとの関連性は組み込まれていないことなどを研究の限界として挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Caswell-Jin JL, et al. JAMA. 2024;331:233-241.

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PARP阻害薬タラゾパリブ、BRCA変異陽性乳がん、前立腺がんに承認/ファイザー

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 ファイザーは2024年1月18日、PARP阻害薬タラゾパリブ(商品名:ターゼナ)について、同剤の単剤療法による「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」、および同剤とエンザルタミドとの併用による「BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌」の治療薬として、国内における製造販売承認を取得した。

 今回の承認は、乳がんについての海外第III相試験(EMBRACA試験)および国内第I相試験の結果等、前立腺がんについては国際共同第III相試験(TALAPRO-2試験の結果等に基づいている。

 EMBRACA試験は、化学療法歴がある生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性の転移を有する乳がんを対象に、同剤と化学療法を比較する第III相非盲検無作為化並行2群多施設共同試験である。タラゾパリブ群は化学療法群と比較して、主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)の延長を示し、忍容性は良好であった。

 TALAPRO-2試験は、全身治療歴がない転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(相同組換え修復遺伝子変異の有無を問わず)を対象に、同剤とエンザルタミドの併用を評価する第III相二重盲検無作為化プラセボ対照多施設共同試験である。同剤とエンザルタミド併用群は、エンザルタミド群と比較して、主要評価項目の画像診断に基づくPFSの延長を示した。

(ケアネット 細田 雅之)


【参考文献・参考サイトはこちら】

EMBRACA試験(ClinicalTrials.gov)

TALAPRO-2試験(ClinicalTrials.gov)

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プラチナ治療歴のある進行TN乳がんの維持療法、オラパリブ±デュルバルマブが有効(DORA)

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 プラチナ製剤ベースの化学療法に感受性のある進行トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する維持療法として、オラパリブ±デュルバルマブの有効性を検討した第II相DORA試験において、デュルバルマブ併用/非併用のいずれの群も化学療法による維持療法のヒストリカルコントロールより無増悪生存期間(PFS)が長く、BRCA野生型プラチナ製剤感受性の進行TNBCの患者集団において、化学療法なしの維持療法で持続的な病勢コントロールが可能なことが示唆された。シンガポール・国立がんセンターのTira J. Tan氏らがClinical Cancer Research誌オンライン版2024年1月18日号で報告した。

 本試験は国際多施設第II相試験で、プラチナ製剤ベースの化学療法による1次治療もしくは2次治療で病勢安定(SD)持続または完全/部分奏効(CR/PR)が得られたTNBC(エストロゲン/プロゲステロン受容体発現率10%以下)患者を対象とし、オラパリブ単独群(オラパリブ300mg1日2回)とデュルバルマブ併用群(4週ごとにデュルバルマブ1,500mgを併用)に1:1で無作為に割り付けた。主要評価項目はPFSで、化学療法を継続するヒストリカルコントロールと比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・計45例をオラパリブ単独群23例、デュルバルマブ併用群22例に無作為に割り付けた。
・追跡期間中央値9.8ヵ月の時点で、無作為化からのPFS中央値はオラパリブ単独群で4.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:2.6~6.1)、デュルバルマブ併用群で6.1ヵ月(同:3.7~10.1)であり、いずれもヒストリカルコントロールより有意に長かった(順にp=0.0023、p<0.0001)。
・臨床的有用率(SDが24週以上またはCR/PR)は、オラパリブ単独群で44%(95%CI:23~66)、デュルバルマブ併用群で36%(同:17~59)であった。
・生殖細胞系列BRCA遺伝子変異やPD-L1発現にかかわらず、持続的な臨床的有用性が認められ、とくにオラパリブ単独群ではプラチナ製剤の前治療に対するCR/PRと関連する傾向がみられた。
・安全性に関する新たなシグナルは報告されなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Tan TJ, et al. Clin Cancer Res. 2024 Jan 18. [Epub ahead of print]

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HR+HER2-進行乳がん、パルボシクリブ+タモキシフェンが治療選択肢に/ファイザー

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 ファイザーは1月15日付のプレスリリースにて、パルボシクリブの添付文書が改訂されたことを発表した。ホルモン受容体(HR)陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)の進行または転移乳がん患者へのパルボシクリブとタモキシフェン併用投与の有効性と安全性を検討した第III相試験(PATHWAY試験)の結果に基づくもので、これにより、パルボシクリブとタモキシフェンとの併用が新たな治療選択肢となる。

 パルボシクリブはこれまで、レトロゾールまたはフルベストラントとの併用投与の成績に基づいて承認されており、タモキシフェンとの併用における有効性や安全性は確立されていなかった。またアジア地域では欧米に比べ、全乳がんのうち閉経前乳がんの占める割合が多く、治療選択肢が十分でない状況があった。

 PATHWAY試験は、HR+/HER2-の閉経前・閉経後の進行または転移乳がん患者を対象に、パルボシクリブとタモキシフェンの併用投与と、プラセボとタモキシフェンの併用投与を比較した国際多施設共同無作為化二重盲検試験で、国立がん研究センター中央病院が主導した医師主導治験。日本(12施設)、韓国(6施設)、台湾(3施設)、シンガポール(2施設)の4ヵ国が参加した。

 本試験において、パルボシクリブとタモキシフェンの併用投与は、プラセボとタモキシフェンの併用投与と比較し、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある無増悪生存期間(PFS)の延長を示し、試験の主要目的を達成した。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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黒砂糖、がん発症を抑制か~J-MICC研究

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 黒砂糖にはミネラル、ポリフェノール、ポリコサノールが多く含まれているが、黒砂糖が健康に役立つと評価した疫学研究はほとんどない。今回、鹿児島大学の宮本 楓氏らが、長寿者の割合が比較的高く黒砂糖をおやつにしている奄美群島の住民を対象としたコホート研究を実施したところ、黒砂糖摂取ががん全体、胃がん、乳がんの発症リスク低下と関連することが示された。Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition誌2023月12月号に掲載。

 本研究は日本多施設共同コホート研究(J-MICC研究)の一環で、黒砂糖摂取と死亡リスクおよびがん発症率の関連を明らかにするために実施された。奄美の一般住民から参加者を募集し、5,004人(男性2,057人、女性2,947人)が参加した。追跡期間中央値13.4年の間に274例が死亡、338例でがんが発症した。糖関連およびその他の変数を調整後、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間を推定した。黒砂糖の摂取頻度により低摂取群(週1回未満)、中摂取群(週1~6回)、高摂取群(1日1回以上)に分け、低摂取群を基準とした中摂取群、高摂取群の各HRとその傾向を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・交絡因子調整後、男女におけるがん全体と胃がん、女性における乳がんについて、黒砂糖の中摂取群と高摂取群のHRが低く、HRの低下傾向(がん全体:傾向のp=0.001、胃がん:傾向のp=0.017、乳がん:傾向のp=0.035)が認められた。
・肺がんは非喫煙者および元喫煙者のみHRの低下傾向がみられた(傾向のp=0.039)。
・全死亡、がん死亡、心血管疾患死亡におけるHRの低下は明らかではなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Miyamoto K, et al. Asia Pac J Clin Nutr. 2023;32:426-433.

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