進行/転移TN乳がん1次治療でのDato-DXd+デュルバルマブ、11.7ヵ月時点で奏効率79%(BEGONIA)/ESMO2023

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 進行/転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療として、抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)と抗PD-L1抗体デュルバルマブの併用を検討するBEGONIA試験のArm7では、追跡期間中央値7.2ヵ月で74%の奏効率(ORR)が得られている。今回、追跡期間中央値11.7ヵ月の解析でORRが79%であったことを、英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University of LondonのPeter Schmid氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。

 BEGONIA試験は、進行/転移TNBCの1次治療として、デュルバルマブと他の薬剤との併用による新たな治療を検討するために、2つのPartで構成された第Ib/II相試験である。

・対象:StageIVに対する治療歴のない切除不能な進行/転移TN乳がん
・方法:Dato-DXd 6mg/kg+デュルバルマブ1,120mg(3週ごと、静脈内投与)を病勢進行もしくは許容できない毒性発現まで投与
・評価項目:
[主要評価項目]安全性、忍容性
[副次評価項目]ORR、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間

 主な結果は以下のとおり。

・2023年2月2日のデータカットオフ時点で、Dato-DXd+デュルバルマブの治療を受けた62例中29例(47%)が治療継続中で、追跡期間中央値は11.7ヵ月(範囲:2~20ヵ月)であった。ベースライン時の年齢中央値は53歳、60%に内臓転移があり、PD-L1低値が87%であった。
・ORRは79%(95%信頼区間[CI]:66.8~88.3)で、完全奏効6例、部分奏効43例だった。抗腫瘍効果はPD-L1レベルにかかわらず認められた。
・DOR中央値は15.5ヵ月(95%CI:9.92~NC)、PFS中央値は13.8ヵ月(同:11.0~NC)であった。
・最も多くみられた有害事象(AE)は消化管系で概してGradeは低かった。
・Dato-DXd減量の原因となるAEは口内炎(65%)が最も多かった。
・治療関連間質性肺疾患/肺炎が3例(5%)に発現した(Grade2が2例、Grade1が1例)。
・下痢(13%)、好中球減少症(5%)の発現率は低かった。

 Schmid氏は「進行/転移TNBCの1次治療におけるDato-DXdとデュルバルマブの併用は、追跡期間中央値11.7ヵ月時点で、PD-L1発現にかかわらず引き続き強固で持続的な奏効を示した。新たな安全性シグナルはみられず、管理可能な安全性プロファイルを示した」と結論した。現在、PD-L1高値集団を対象としたArm8(Dato-DXd+デュルバルマブ)の登録を行っている。

(ケアネット 金沢 浩子)


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BEGONIA試験(Clinical Trials.gov)

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HER2低発現乳がんへのT-DXd、32ヵ月でのOS・PFS・安全性(DESTINY-Breast04)/ESMO2023

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 化学療法歴を有するHER2低発現の切除不能または転移のある乳がん患者に対して、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択による化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast04試験において、より長い追跡期間(中央値32ヵ月)で評価した全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、安全性を、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのShanu Modi氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。

・対象:HER2低発現(IHC 1+またはIHC 2+/ISH-)で、1~2ラインの化学療法歴のある切除不能および/または転移を有する乳がん患者(HR+の場合は内分泌療法抵抗性)557例
・試験群(T-DXd群):T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 373例
・対照群(TPC群):治験医師選択の化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ナブパクリタキセルのいずれか)184例
・評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるHR+例のPFS
[副次評価項目]BICRによる全例のPFS、治験医師によるHR+例および全例のPFS、HR+例および全例のOS、安全性など

 主な結果は以下のとおり。

・今回のデータカットオフ(2023年3月1日)時点での追跡期間中央値は32.0ヵ月だった。
・OS中央値は、HR+例でT-DXd群23.9ヵ月vs.TPC群17.6ヵ月でHRが0.69(95%信頼区間[CI]:0.55~0.87)、全例で22.9ヵ月vs.16.8ヵ月でHRは0.69(95%CI:0.55~0.86)と、共にT-Dxd群で有意に改善した。
・治験医師によるPFS中央値は、HR+例でT-DXd群9.6ヵ月vs.TPC群4.2ヵ月でHRが0.37(95%CI:0.30~0.46)、全例で8.8ヵ月vs.4.2ヵ月でHRは0.36(95%CI:0.29~0.45)と、共にT-DXd群で有意に改善した。
・HR-例におけるOS中央値は、T-DXd群17.1ヵ月vs.TPC群8.3ヵ月でHRが0.58(95%CI:0.31~1.08)、治験医師によるPFS中央値は6.3ヵ月vs.2.9ヵ月でHRは0.29(95%CI:0.15~0.57)だった(探索的解析)。
・Grade3以上の治療下での有害事象(TEAE)の発現率は、T-DXd群54.4%、TPC群67.4%だった。
・治療中止関連のTEAEで多くみられたのは、T-DXd群で間質性肺疾患/肺臓炎(10.2%)、TPC群で末梢感覚神経障害(2.3%)だった。
・減量関連のTEAEで多くみられたのは、T-DXd群では悪心(4.6%)および血小板数減少(3.0%)、TPC群で好中球数減少(10.5%)および手足症候群(5.2%)だった。
・全GradeのTEAEの曝露調整後発現率は、T-DXd群1.2%、TPC群2.6%だった。
・安全性プロファイルは初回解析結果と同様であり、薬物関連間質性肺疾患/肺臓炎は初回解析以降の新たな報告はなかった。

 Modi氏は「今回の結果から、HR発現の有無にかかわらず、これまでに示されているHER2低発現の転移乳がんに対するT-DXdの持続的で臨床的に意義のある改善が確認された。治療期間が長くなっても、全体的な安全性プロファイルは忍容可能でおおむね管理可能だった」とまとめた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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DESTINY-Breast04試験(Clinical Trials.gov)

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AYA世代ER+/HER2-乳がんの臨床学的・病理学的特徴/日本癌治療学会

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 15~39歳の思春期・若年成人(adolescent and young adult:AYA)世代のがんは、ほかの世代のがんと比べて予後不良であることが多く、異なる特性を有することが指摘されている。そこで、横浜市立大学附属病院の押 正徳氏は、AYA世代のER陽性HER2陰性乳がん患者の特徴を検討し、その結果を第61回日本癌治療学会学術集会(10月19~21日)で発表した。なお、本演題は同学会の優秀演題に選定されている。

 AYA世代の乳がんの特徴として、ホルモン受容体陰性やHER2陽性、トリプルネガティブの割合が高いこと、浸潤やリンパ節転移を伴っている場合が多いことなどが挙げられている。しかし、年齢別の臨床学的・病理学的特徴については依然として不明な点が多い。そこで押氏らは、乳がん患者をAYA世代(40歳未満)、閉経期世代(40~55歳未満)、更年期世代(55~65歳未満)、高齢世代(65歳以上)の4つの年齢群に分類し、その特徴を分析した。

 本研究では、独立した3つの大規模コホートを使用した。
・YCUコホート:横浜市立大学附属病院の2施設で2014~20年に手術を受けた4,562例(うちAYA世代316例[6.9%])
・METABRICコホート:1,903例(うちAYA世代116例[6.1%])
・GSE96058コホート:3,273例(うちAYA世代123例[4.0%])

 臨床病理学的因子の検討にはYCUコホートとMETABRICコホートを用い、生物学的特徴の解析にはMETABRICコホートとGSE96058コホートを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・臨床病理学的因子の検討において、AYA世代はプロゲステロン受容体(PgR)陽性、pN≧1の割合が高かった。
・AYA世代は、がん特異的生存率だけでなく全生存率も不良であった。YCUコホートにおいては、AYA世代のがん特異的生存率は、閉経期世代や更年期世代だけでなく、高齢世代よりも不良であった(p=0.012)。
・生物学的特徴の解析では、エストロゲンの活性度は高齢になるほど低くなった。
・AYA世代ではほかの世代に比べて有意にG2Mチェックポイント、E2Fターゲット、MYCターゲット、mTORC1、小胞体ストレス応答、PI3K/ACT/MTORシグナルなどの細胞増殖や発がんに関連するシグナル経路の活性度が高かった。そのほかの3群は同程度であった。
・AYA世代はDNA修復シグナルやBRCAnessスコアがほかの世代よりも有意に高かった。
・腫瘍微小環境における各免疫細胞の浸潤割合は、各年齢群で異なった。

 これらの結果より、押氏は「AYA世代のER陽性HER2陰性乳がんは、ほかの世代の乳がんと比較して生物学的特徴が異なり、それが予後に影響している可能性がある。その特徴を理解し、AYA世代に特化した治療戦略の開発・検討が必要である」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


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早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブによるEFS改善、5年後も持続(KEYNOTE-522)/ESMO2023

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高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前および術後補助療法としてペムブロリズマブの追加を検討したKEYNOTE-522試験では、ペムブロリズマブ追加により病理学的完全奏効率(pCR)および無イベント生存期間(EFS)が有意かつ臨床的に意味のある改善を示したことがすでに報告されている。今回、第6回中間解析(追跡期間中央値63.1ヵ月)でのEFSを解析した結果、pCRの結果にかかわらず、術前化学療法単独と比べて臨床的に意味のあるEFS改善が持続していたことを、英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。全生存期間(OS)の追跡調査は進行中である。

・対象:未治療の転移のないTNBC患者(AJCC/TNM分類でT1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0/1)
・試験群:術前に化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルを4サイクル後、ドキソルビシン/エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)、術後にペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を9サイクルあるいは再発または許容できない毒性発現まで投与(ペムブロリズマブ群、784例)
・対照群: 術前に化学療法(試験群と同様)+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群、390例)
・評価項目:
[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS
[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、OS、PD-L1陽性例におけるpCR・EFS・OS、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・今回の解析(データカットオフ:2023年3月23日)において、EFSイベントがペムブロリズマブ群で18.5%、プラセボ群で27.7%に認められた(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.49~0.81)。5年EFS率はペムブロリズマブ群81.3%、プラセボ群72.3%だった。
・ペムブロリズマブによるEFSベネフィットは、PD-L1発現やリンパ節転移の有無など、事前に規定したサブグループで一貫していた。
・事前に規定された非ランダム化探索的解析におけるpCRの結果別の5年EFS率は、pCR例でペムブロリズマブ群92.2% vs.プラセボ群88.2%、非pCR例でペムブロリズマブ群62.6% vs.プラセボ群52.3%であった。
・5年遠隔無増悪/遠隔無再発生存率は、ペムブロリズマブ群84.4%、プラセボ群76.8%であった(HR:0.64、95%CI:0.49~0.84)。

 Schmid氏は「これらの結果は、ペムブロリズマブとプラチナを含む術前補助療法後、pCRの結果によらずペムブロリズマブによる術後補助療法を行うレジメンを、高リスク早期TNBC患者に対する標準治療としてさらに支持する」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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KEYNOTE-522試験(Clinical Trials.gov)

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ER+/HER2-乳がんの術前ニボルマブ、pCRを有意に改善(CheckMate 7FL)/ESMO2023

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 高リスクのER陽性(+)/HER2陰性(-)早期乳がん患者を対象とした第III相CheckMate 7FL試験の結果、術前化学療法および術後内分泌療法にニボルマブを上乗せすることで、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善し、さらにPD-L1陽性集団ではより良好であったことを、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのSherene Loi氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。

・対象:ER+/HER2-、T1c~2 cN1~2またはT3~4 cN0~2、Grade2(かつER 1~10%)またはGrade3(かつER≧1%)の新たに診断された乳がん患者 510例
・試験群(ニボルマブ群):ニボルマブ(3週ごと)+パクリタキセル(毎週)→ニボルマブ+AC療法(隔週または3週ごと)→手術→ニボルマブ(4週ごと)+内分泌療法 257例
・対照群(プラセボ群):プラセボ+パクリタキセル→プラセボ+AC療法→手術→プラセボ+内分泌療法 253例
・評価項目:
[主要評価項目]pCR(ypT0/is ypN0)
[副次評価項目]PD-L1陽性集団のpCR、全体およびPD-L1陽性集団の腫瘍残存率(RCB)、安全性
・層別化因子:PD-L1発現状況、Grade、腋窩リンパ節転移、AC療法の投与スケジュール

 2022年4月に主要評価項目は修正ITT集団のpCR率のみに修正され、PD-L1陽性集団のpCR率は副次評価項目となった。今回がCheckMate 7FL試験結果の初報告で、全体およびPD-L1陽性集団のpCRとRCBが報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・ニボルマブ群およびプラセボ群の年齢中央値は50歳/51歳、Grade3が98%/99%以上、StageIII期が46%/42%、PD-L1 IC≧1%が34%/33%、腋窩リンパ節転移陽性が80%/79%で、両群でバランスがとれていた。
・修正ITT集団全体のpCR率は、ニボルマブ群24.5%、プラセボ群13.8%で、ニボルマブ群が有意に高かった(調整差10.5%[95%信頼区間[CI]:4.0~16.9]、オッズ比[OR]:2.05、p=0.0021)。
・PD-L1陽性集団におけるpCR率は、ニボルマブ群44.3%、プラセボ群20.2%(調整差:24.1%[95%CI:10.7~37.5]、OR:3.11)であった。なお、PD-L1陰性集団では14.2%/10.7%であった。
・リンパ節転移の有無、Stage、年齢、AC療法の治療スケジュールにかかわらずニボルマブ群のほうがpCR率は良好であった。
・全体におけるRCB 0~1の割合は、ニボルマブ群30.7%、プラセボ群21.3%(調整差:9.2%[95%CI:2.0~16.5]、OR:1.65)であった。
・PD-L1陽性集団におけるRCB 0~1の割合は、ニボルマブ群54.5%、プラセボ群26.2%(調整差:28.5%[95%CI:14.6~42.4]、OR:3.49)であった。
・Grade3以上の治療関連有害事象は、ニボルマブ群35%、プラセボ群32%に発現し、安全性プロファイルは既報と一致していた。免疫介在性有害事象はニボルマブ群のほうが多かった。ニボルマブ群では死亡が2例(肺炎、肝炎)認められた。

 これらの結果より、Loi氏は「高リスクのER+/HER2-早期乳がん患者の術前化学療法にニボルマブを追加することで、pCRは10.5%改善するとともにRCB 0~1率も9.2%改善した。この恩恵はPD-L1陽性集団でより大きかった。安全性プロファイルはこれまでと同様で、新たな有害事象は報告されなかった」としたうえで「バイオマーカーに関する追加データは今後の学会で発表する予定である」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


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CheckMate 7FL試験(ClinicalTrials.gov)

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転移乳がんへのDato-DXd、医師選択化療よりPFS延長(TROPION-Breast01)/ESMO2023

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 化学療法の前治療歴のある手術不能または転移を有するHR陽性(+)/HER2陰性(-)の乳がん患者を対象とした第III相TROPION-Breast01試験の結果、抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は、医師選択化学療法よりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長し、かつGrade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は半数以下であったことを、米国・Massachussetts General Hospital/Harvard Medical SchoolのAditya Bardia氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)のPresidentialで報告した。

・対象:HR+/HER2-、1~2ラインの全身化学療法歴、内分泌療法で進行または不適、ECOG PS 0~1の手術不能または転移を有する乳がん患者 732例
・試験群:Dato-DXd(6mg/kg、3週ごと)を進行または許容できない毒性が発現するまで継続(Dato-DXd群:365例)
・対照群:医師が選択した化学療法(エリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン)を進行または許容できない毒性が発現するまで継続(化学療法群:367例)
・評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、全生存期間(OS)
[副次評価項目]治験担当医評価によるPFS、安全性
・層別化因子:前治療のライン数、地域、CDK4/6阻害薬の治療歴の有無

 Dato-DXdは、第I相TROPION-PanTumor01試験において、手術不能または転移を有するHR+/HER2-の前治療歴のある乳がん患者において有望な活性を示している。今回は、グローバル第III相TROPION-Breast01試験の主要評価項目の1つであるPFSの結果が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・Dato-DXd群と化学療法群の年齢中央値は56歳(範囲:29~86)/54歳(28~86)、白人が49%/46%、アジア系が40%/41%、1ラインの前治療歴が63%/61%、CDK4/6阻害薬の治療歴ありが82%/78%、タキサン系and/orアントラサイクリン系の治療歴ありが90%/92%で、両群でバランスがとれていた。
・データカットオフ(2023年7月17日)時点の追跡期間中央値は10.8ヵ月で、Dato-DXdの93例と化学療法群の39例が治療を継続していた。
・主要評価項目であるBICRによるPFSは、Dato-DXd群6.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.7~7.4)、化学療法群4.9ヵ月(95%CI:4.2~5.5)であり、Dato-DXd群で有意にPFSが改善された(HR:0.63[95%CI:0.52~0.76]、p<0.0001)。
・年齢、人種、ECOG PS、地域、前治療歴など、すべてのサブグループでDato-DXdのほうが良好なPFSを示した。
・奏効率(ORR)はDato-DXd群36.4%、化学療法群22.9%であった。
・OSは追跡期間中央値9.7ヵ月時点で未成熟であったが、Dato-DXd群で良好な傾向がみられている(ハザード比:0.84[95%CI:0.62~1.14])。OSの結果は引き続き解析を行う予定。
・Grade3以上のTRAEの発現率は、Dato-DXd群21%、化学療法群45%であった。Dato-DXd群では化学療法群よりも減量や投与中断につながるTRAEは少なかった。間質性肺疾患はDato-DXd群で9例(3%)に認められ、うち2例(1%)はGrade3以上であった。死亡は化学療法群で1例認められた。

 これらの結果より、Bardia氏は「TROPION-Breast01試験は主要評価項目を満たし、HR+/HER2-乳がん患者へのDato-DXdはPFSの有意かつ臨床的に意義のある改善を示した。サブグループにおけるPFSの改善と高いORRも得られている。OSも良好な傾向にある。安全性は管理可能で新たな安全性シグナルは確認されなかった。Dato-DXd群ではGrade3以上のTRAEの発現は化学療法群の半分以下であり、減量や投与中断も少なかった」としたうえで、「これらの結果は、Dato-DXdが転移乳がん患者に対する新たな治療オプションとなりうることを支持するものである」とまとめた。


 ディスカッサントを務めた米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのSarat Chandarlapaty氏は下記のようにコメントした。
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 この研究は、HR+で内分泌療法で進行または不適となった患者、および1回以上の全身化学療法を受けた患者を対象としているため、化学療法を受けた転移乳がん患者に対して、新しい化学療法かDato-DXdのどちらが効果的かということである。主要評価項目であるPFSはハザード比0.63で、Dato-DXd群では明確な改善があった。また、全体的には毒性が少なく、Grade3以上のTRAE、とくに血液毒性が少なかったことが報告されている。悪心と口内炎は重症ではないものの増加し、患者にとっては臨床的に重要かもしれない。

 HR+/HER2-乳がんにおいて、化学療法を1~2ライン行ったあとにDato-DXdを処方するのと、さらに化学療法を追加するのとどちらがよいか? 答えはDato-DXdとなった。しかし、私たちにはさらなる未解決の疑問がある。
1.Dato-DXd、sacituzumab govitecan、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)のいずれがよいのか?
2.これら3つの抗HER2抗体薬物複合体のうち、別の薬剤で進行した後に有効性を示すものはあるか?
3.効くかもしれない分子標的薬よりも、Dato-DXdを処方したほうがよいのか?
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(ケアネット 森 幸子)


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ER+乳がんの術前化療にペムブロリズマブ追加、pCRを有意に改善(KEYNOTE-756)/ESMO2023

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 高リスクのER陽性(+)/HER2陰性(-)早期乳がん患者を対象とした第III相KEYNOTE-756試験の結果、術前化学療法にペムブロリズマブを上乗せすることで、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善したことを、ポルトガル・Champalimaud Clinical Centre/Champalimaud FoundationのFatima Cardoso氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。

・対象:T1c~2 cN1~2またはT3~4 cN0~2、ER+/HER2–、Grade3、未治療の浸潤性乳管がん患者 1,278例
・試験群(ペムブロリズマブ群):ペムブロリズマブ+パクリタキセル→ペムブロリズマブ+AC療法またはEC療法→手術→ペムブロリズマブ+内分泌療法 635例
・対照群(プラセボ群):プラセボ+パクリタキセル→プラセボ+AC療法またはEC療法→手術→プラセボ+内分泌療法 643例
・評価項目:
[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、無イベント生存期間(EFS)
[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、全生存期間、安全性など
・層別化因子:東ヨーロッパ:PD-L1発現状況、中国:なし、その他の国/地域:PD-L1発現状況、リンパ節転移、AC/EC療法の投与スケジュール、ER陽性率

 今回がKEYNOTE-756試験結果の初報告で、主要評価項目の1つであるpCRの結果が報告された。EFSについては引き続き評価が行われる予定。

 主な結果は以下のとおり。

・pCRの最終解析(データカットオフ:2023年5月25日)における追跡期間中央値は33.2ヵ月(範囲:9.7~51.8)であった。
・ペムブロリズマブ群およびプラセボ群の年齢中央値は49歳(範囲:24~82)/49歳(19~78)、PD-L1 CPS≧1%が75.9%/76.0%、T3/4が36.7%/35.8%、リンパ節転移陽性が89.8%/90.5%、ER≧10%が94.6%/93.3%で、両群でバランスがとれていた。
・主要評価項目のpCR(ypT0/Tis ypN0)は、ペムブロリズマブ群24.3%、プラセボ群15.6%であり、統計学的に有意な改善を示した(推定差8.5%[95%信頼区間[CI]:4.2~12.8]、p=0.00005)。
・副次評価項目のpCRは、ypT0 ypN0がペムブロリズマブ群21.3%、プラセボ群12.8%(推定差8.3%[95%CI:4.2~12.4])、ypT0/Tisはペムブロリズマブ群29.4%、プラセボ群18.2%(推定差11.0%[95%CI:6.5~15.7])であった。
・事前に規定したサブグループのpCRもペムブロリズマブ群のほうが良好であった。とくにER陽性率が10%以上の場合の推定差は8.0%であったが、10%未満の場合は25.6%であった。
・Grade3以上の治療関連有害事象発生率は、ペムブロリズマブ群52.5%、プラセボ群46.4%で、安全性プロファイルは既報と一致していた。Grade3以上の免疫関連有害事象はペムブロリズマブ群7.1%、プラセボ群1.2%であった。ペムブロリズマブ群では急性心筋梗塞による死亡が1例(0.2%)認められた。

 これらの結果より、Cardoso氏は「PD-L1発現状況にかかわらず、術前化学療法にペムブロリズマブを追加することで、pCR(ypT0/Tis ypN0)は8.5%改善し、ypT0 ypN0およびypT0/Tisでも同様であった。安全性プロファイルはこれまでのものと同様で、新たな有害事象は報告されなかった」としたうえで、「今回の結果は、もう1つの主要評価項目であるEFSの評価を行うに値する結果である。現時点ではまだ不十分であるが、引き続き評価が必要である」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)


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KEYNOTE-756試験(ClinicalTrials.gov)

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高リスク早期乳がんへの術後内分泌療法+アベマシクリブ、5年時解析結果(monarchE)/ESMO2023

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 再発リスクの高いHR+/HER2-リンパ節転移陽性の高リスク早期乳がんにおける術後内分泌療法へのアベマシクリブの追加を検討するmonarchE試験では、無浸潤疾患生存期間(iDFS)および無遠隔再発生存期間(DRFS)が有意に改善し、2年間の治療後も持続したことが報告されている。今回、事前に規定されていた中間解析における5年時の有効性について、ドイツ・ミュンヘン大学のNadia Harbeck氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。

・対象:再発リスクの高いHR+/HER2-の早期乳がん
[コホート1]リンパ節転移4個以上、リンパ節転移1~3個の場合はグレード3もしくは腫瘍径5cm以上(5,120例)
[コホート2]リンパ節転移1~3個かつKi-67値20%以上かつグレード1~2で腫瘍径5cm未満(517例)
・試験群:術後療法として、標準的内分泌療法(タモキシフェンもしくはアロマターゼ阻害薬)+アベマシクリブ150mg1日2回、アベマシクリブは最長2年投与(ET+アベマシクリブ群:2,808例)
・対照群:術後療法として、標準的内分泌療法を5年以上施行(ET群:2,829例)
・評価項目:
[主要評価項目]iDFS
[副次評価項目]Ki-67高値集団におけるiDFS、DRFS、全生存期間(OS)、安全性、薬物動態、患者報告アウトカム

 主な結果は以下のとおり。

・2023年7月3日のデータカットオフ時点で、追跡期間中央値4.5年(54ヵ月)、全患者がアベマシクリブ投与を終え、80%以上が2年以上追跡されていた。
・ITT集団でのiDFSのベネフィットは持続し、ハザード比(HR)は0.680(95%信頼区間[CI]:0.599~0.772、p<0.001)で、絶対的改善率は、3年時の4.8%、4年時の6.0%に比べ、5年時は7.6%に増加した。サブグループにおいても、iDFSのベネフィットは持続していた。
・ITT集団でのDRFSにおけるベネフィットも持続し、HRは0.675(95%CI:0.588~0.774、p<0.001)で、絶対的改善率は、3年時の4.1%、4年時の5.3%に比べ、5年時は6.7%に増加した。
・ITT集団での死亡例数は、ET+アベマシクリブ群で少なかった(HR:0.903、95%CI:0.749~1.088、p=0.284)。
・今回の解析においても、転移/再発例は引き続きET+アベマシクリブ群で少なかった。
・安全性は、monarchEのこれまでの解析やET+アベマシクリブにおける既知の安全性プロファイルと同様だった。

 Harbeck氏は「術後補助療法の試験で重要な5年時のデータにおいて、アベマシクリブのベネフィットが維持されていた。今回のデータは持ち越し効果と一致し、HR+/HER2-リンパ節転移陽性の高リスク早期乳がんにおける術後内分泌療法へのアベマシクリブの追加をさらに支持する」とした。なお、OSは最終解析まで追跡調査を継続中。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

monarchE試験(ClinicalTrials.gov)

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Stroke Oncology(脳卒中合併がん)の対策、学会の枠越え取り組み/日本腫瘍循環器学会

提供元:CareNet.com

 がん患者の脳梗塞合併の課題解決に向け、脳卒中医とがん診療医が共同で取り組んでいる。

 9月30日~10月1日の2日間、神戸で開催された第6回日本腫瘍循環器学会学術集会にて、NTT東日本関東病院の水上 拓郎氏が発表した。

 がん患者の脳梗塞リスクは非がん患者と比べ高く、そのリスクはステージが進行するごとに上昇する。がん患者の脳卒中合併には複数の因子が絡み、がん種や診断時期によってリスクは異なるため、予後予測は複雑である。

 そのような中、脳卒中とがん、それぞれの専門家が議論する場が必要とされてきた。日本脳卒中学会では2020年からStroke Oncology Project Teamを設立している。日本がんサポーティブケア学会では、腫瘍医側の主体として、Stroke Oncologyワーキンググループ(WG)を2022年に設立した。同WGでは、脳卒中医と連携し、Stroke Oncologyの各種課題について議論する。

 学術集会では最初の取り組みとして実施した日本国内の先行研究のレビューを発表した。脳卒中発症の予測因子として、D-ダイマー、CRP、脳転移の有無、がん診断からの期間の関連が高いと報告している。

(ケアネット 細田 雅之)


【参考文献・参考サイトはこちら】

日本がんサポーティブケア学会 Stroke Oncology ワーキンググループ

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腫瘍径の小さいER+/HER2-乳がんへの術後ホルモン療法は必要か

提供元:CareNet.com

 マンモグラフィ検査の普及により、腫瘍径の小さな乳がんの検出が増加した。エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)のT1a/bN0M0乳がんにおける術後内分泌療法(ET)の必要性は明らかでない。広島大学の笹田 伸介氏らは同患者における術後ETの有効性を評価、Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年9月9日号に報告した。

 本研究では、2008年1月~2012年12月にJCOG乳がん研究グループ42施設で手術を受けたER+/HER2-のT1a/bN0M0乳がん患者のデータを後ろ向きに収集した。術前補助全身療法を受けた患者とBRCA陽性患者は除外された。主要評価項目は遠隔転移の累積発生率で、両側検定が用いられた。

 主な結果は以下のとおり。

・適格患者4,758例(T1a:1,202例、T1b:3,556例)中3,991例(83%)に標準的な術後ETが実施された。
・追跡期間中央値は9.2年。遠隔転移の9年累積発生率はETありで1.5%、ETなしで2.6%だった(部分分布ハザード比[SHR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.32~0.93)。
・多変量解析の結果、遠隔転移の独立したリスク因子は、ET歴なし、乳房切除術、高悪性度、およびリンパ管侵襲だった。
・9年全生存率はETありで97.0%、ETなしで94.4%だった(調整ハザード比:0.57、95%CI:0.39~0.83)。
・術後ETは同側(9年発生率:1.1% vs.6.9%、SHR:0.17)および対側の乳がん発生率を減少させた(9年発生率:1.9% vs.5.2%、SHR:0.33)。

 ER+/HER2-のT1a/bN0M0乳がん患者の予後は良好であり、臨床リスクによって層別化されることが確認された。また術後ETは、小さな絶対リスク差で遠隔転移の発生率と全生存率を改善した。著者らは、とくに低悪性度でリンパ管侵襲のない患者において、術後ET省略の検討を支持する結果とまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Sasada S, et al. Breast Cancer Res Treat. 2023;202:473-483.

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