HR+乳がんへの術後化療、ゲノム解析結果に年齢も加味すべきか(MINDACT)/SABCS2019

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 ホルモン受容体(HR)陽性乳がんにおいて、多重遺伝子解析を用いた術後化学療法の適応有無の判断に、年齢も考慮に入れる必要がある可能性が示唆された。サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で、ベルギー・ブリュッセル自由大学のMartine J. Piccart氏らによるMINDACT試験の計画外サブグループ解析の結果が発表された。

 多重遺伝子解析結果と年齢、化学療法の適応の関係については、TAILORx試験の2次分析からの報告がある1)。MINDACT試験で定義された臨床リスクとの統合に基づく解析が行われ、21遺伝子アッセイ(Oncotype DX)による高再発スコア(高RS;26〜100点)は、40〜50歳の女性における高臨床リスクおよびRS16~20、または臨床リスクとは独立してRS21~25に相当する可能性が示唆され、9年時の遠隔再発リスクにおける化学療法追加の無視できないベネフィットが示された。

 今回の報告は、上記の結果を受けて計画外に実施されたMINDACT試験のサブグループ解析による。MINDACT試験は、HR陽性HER2陰性乳がん患者を対象に、術後補助化学療法の対象の選択において、Adjuvant! Onlineに基づく臨床リスク(c)と70遺伝子アッセイ(Mammaprint)に基づくゲノムリスク(g)の臨床的有用性を前向きに評価する無作為化第III相試験。本解析は無作為化によって割り当てられた治療群(化学療法ありまたは化学療法なし)ごとに行われ、MINDACT試験の主要評価項目が使用された(5年時の無遠隔転移生存率[DMFS])。

 主な結果は以下のとおり。

・登録された乳がん患者6,693例のうち、HR陽性は5,402例(81.7%)。
・そのうち、臨床リスクが高く(cH)/ゲノムリスクが低い(gL)のは1,358例で、年齢別の内訳は40歳未満が53例、40~50歳が411例、50歳超が894例であった。
・40歳未満のグループはイベント発生が少なく(2例)、結果は示されなかった。
・40~50歳の399例、50歳超の865例が化学療法ありまたは化学療法なしの両群に無作為に割り付けられた。
・腫瘍サイズの中央値は、両年齢層で2.2cmであった(T1/T2は40~50歳:35.9%/58.4%、50歳超:41.2%/55.5%)。リンパ節転移の有無は、両年齢層の約半数で陰性であった(40~50歳:50.9%、50歳超:51.8%)。大多数の患者がグレード2またはグレード3の腫瘍を有していた(40〜50歳:グレード2が63.9%/グレード3が26.6%、50歳超:66.6%/26.9%)。
・40~50歳では、化学療法ありの203例中8例でイベントが発生し、Kaplan-Meier法による5年DMFSは96.2%(95%信頼区間[CI]:91.5~98.3)。化学療法なしの196例中16例でイベントが発生し、5年DMFSは92.6%(95%CI:87.7~95.7)であった。
・50歳超では、化学療法ありの425例中23例でイベントが発生し、5年DMFSは95.2%(95%CI:92.4~97.0)。化学療法なしの440例中23例でイベントが発生し、5年DMFSは95.4%(95%CI:92.8~97.1)であった。

 研究者らは、閉経後の患者は主にアロマターゼ阻害薬が投与されており、若い女性では補助内分泌療法として主にタモキシフェンが投与され、LHRHアナログが投与されていたのは7.0%のみであったことを明らかにした。本解析のイベント数の少なさと信頼区間の幅の広さ、計画外のサブグループ解析であることの限界に触れたうえで、それにもかかわらずTAILORx試験と同様の傾向が示され、(おそらく閉経前に分類される)40〜50歳およびcH/gLリスクの患者において、タモキシフェン単独では過小治療となる可能性が示唆されたと結論づけている。

 また、化学療法を追加することによるベネフィットが年齢依存性となる理由として、卵巣機能抑制(OFS)によるものである可能性を指摘。ただし、最適な内分泌療法(すなわち、OFS+タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬など)の場合の化学療法の付加価値は、MINDACTまたはTAILORx試験の結果で評価することはできず、さらなる研究が必要としている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

1) Sparano JA, et al. N Engl J Med. 2019 Jun 20;380:2395-2405.

2) MINDACT試験(Clinical Trials.gov)

3) SABCS 2019プレスリリース

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転移性脊髄圧迫への放射線療法、単回照射vs.分割照射/JAMA

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 固形がん患者のがん転移に伴う脊柱管圧迫に対する放射線療法において、単回照射は5日間分割照射と比較し、主要評価項目である8週時の歩行に関して非劣性基準を満たさなかった。ただし、信頼区間の下限が非劣性マージンと重なっており、単回照射の臨床的重要性の解釈には留意すべき点もあることが示された。英国・Mount Vernon Cancer CentreのPeter J. Hoskin氏らが、多施設共同非劣性無作為化臨床試験「The single-fraction radiotherapy compared to multifraction radiotherapy trial:SCORAD試験」の結果を報告した。がんの骨転移等による脊髄圧迫は、可動性の維持や痛みの軽減のため放射線療法で管理されるが、これまで標準照射レジメンはなかった。JAMA誌2019年12月3日号掲載の報告。

約690例を単回照射と5分割照射に無作為化、8週時の歩行状態を比較

 研究グループは、英国42施設およびオーストラリア5施設の放射線治療センターにおいて、脊髄または馬尾圧迫を有する転移のあるがん患者で平均余命が8週超あり同部位に放射線治療歴がない686例を、単回照射群(8Gy単回照射、345例)または分割照射群(20Gyを5分割連続5日間照射、341例)に無作為化した。登録期間は2008年2月~2016年4月、最終追跡調査は2017年9月であった。


 主要評価項目は、治療後8週時の歩行状態で、4段階のうちGrade1(補助具なしで歩行可能および筋力スケールが5段階のうちGrade5)またはGrade2(補助具ありで歩行可能または筋力スケールがGrade4)とし、群間差の非劣性マージンを-11%に設定した。また、副次評価項目として、1、4および12週時の歩行状態と全生存期間などを評価した。

8週時の歩行状態がGrade1/2の割合は69.3% vs.72.7%、非劣性基準を満たさず

 無作為化された686例(年齢中央値70歳[四分位範囲:64~77]、男性503例[73%]、前立腺がん44%、肺がん19%、乳がん12%)のうち、主要評価項目の解析対象は342例(49.8%)であった(255例が8週の評価前に死亡)。
 8週時に歩行状態がGrade1またはGrade2を達成した患者の割合は、単回照射群69.3%(115/166例)、分割照射群72.7%(128/176例)であった(群間差:-3.5%、片側95%信頼区間[CI]:-11.5~∞、非劣性のp=0.06)。

 一方、副次評価項目である各評価時の歩行状態がGrade1またはGrade2を達成した患者の割合は、単回照射群と分割照射群でそれぞれ、1週時63.9% vs.64.3%(群間差−0.4%、片側95%CI:-6.9~∞、非劣性のp=0.004)、4週時66.8% vs.67.6%(群間差−0.7%、片側95%CI:-8.1~∞、非劣性のp=0.01)、12週時71.8% vs.67.7%(群間差4.1%、片側95%CI:-4.6~∞、非劣性のp=0.002)であった。また、12週時の全生存率は単回照射群50%、分割照射群55%であった(層別化ハザード比:1.02、95%CI:0.74~1.41)。

 解析された他の副次評価項目は、群間差が有意差なしまたは非劣性基準を満たさなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Hoskin PJ, et al. JAMA. 2019;322:2084-2094.

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乳がん患者の肥満、化学療法のRDIに影響/JAMA Oncol

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 化学療法は体表面積や体重で投与量を決定することが多いが、筋肉や脂肪組織の量および分布といった体組成が耐性やアドヒアランスと関連すると考えられている。今回、米国Kaiser PermanenteのElizabeth M. Cespedes Feliciano氏らは、体組成がアントラサイクリンおよびタキサンベースの化学療法のRelative Dose Intensity(RDI)や血液毒性と関連しているかどうかを評価した。その結果、内臓や筋肉内の脂肪過多が低RDIと関連し、さらにRDIの低下が肥満と乳がん生存率低下との関連を一部媒介することが示唆された。JAMA Oncology誌オンライン版2019年12月5日号に掲載。

 著者らは、Kaiser Permanente Northern Californiaで電子医療記録データを前向きに収集して観察コホート研究を実施した。本研究の参加者は、2005年1月1日~2013年12月31日に乳がんと診断され、アントラサイクリンおよびタキサンベースの化学療法で治療された転移のない乳がん女性1,395例。データ解析は2019年2月25日~9月4日に行った。診断時にCTスキャンにより、筋肉内脂肪、内臓脂肪、皮下脂肪および骨格筋を調べた。主要評価項目は低RDI(0.85未満)で、RDIは点滴記録から化学療法のレジメン用量に対する実際の注入量の割合から算出した。血液毒性は臨床検査値から評価した。全死亡および乳がん死亡との関連は、年齢および体表面積で調整されたロジスティック回帰モデルと、年齢、人種/民族、肥満、チャールソン併存疾患指数スコア、腫瘍Stageとサブタイプで調整されたCox比例ハザードモデルを用いた。媒介割合は差分法で計算した。

 主な結果は以下のとおり。

・参加した乳がん女性1,395例の診断時の平均(SD)年齢は52.8(10.2)歳であった。
・内臓脂肪(SD当たりのオッズ比[OR]:1.19、95%CI:1.02~1.39)および筋肉内脂肪(SD当たりのOR:1.16、95%CI:1.01~1.34)が増加すると、低RDI(0.85未満)のオッズが上昇した。
・筋肉量が多いと血液毒性のオッズが低下した(SD当たりのOR:0.84、95%CI:0.71~0.98)。
・RDIが0.85未満の場合、死亡リスクが30%上昇した(HR:1.30、95%CI:1.02~1.65)。
・低RDIは、肥満と乳がん死亡率との関連を部分的に説明した(媒介割合:0.20、95%CI:0.05~0.55)。

 著者らは「化学療法の有効性を減少させうる血液毒性およびそれによる投与延期や投与量減少がおこりやすい患者の特定に、体組成が役立つかもしれない」と考察している。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Elizabeth M, et al. JAMA Oncol. 2019 Dec 5.[Epub ahead of print]

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乳がんになりやすい血液型

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 ABO/Rh式血液型と乳がんの関連について、これまでの研究では結果が分かれている。今回、ギリシャ・Democritus University of ThraceのAnastasia Bothou氏らが実施したギリシャ人女性における症例対照研究では、乳がんとA型の女性の間に有意な関連を示すことが報告された。Journal of B.U.ON.誌2019年9-10月号に掲載。

 本研究には、2016~19年にギリシャの2つの病院で診察を受けた女性341例が参加した。症例群は乳がん切除術後に病理学的に乳がんと確認された女性202例、対照群は臨床検査と超音波検査/デジタルマンモグラフィで乳がんではなかった女性139例。

 血液型の調査の結果、症例群ではA型61.9%、B型5.5%、O型26.7%、AB型5.9%、対照群ではA型31.6%、B型13.7%、O型47.5%、AB型7.2%であった。これらの結果をIBM SPSSソフトウェアを用いて解析したところ、カイ二乗検定とピアソンの相関係数の検定から、乳がんとA型に有意な相関が示され(p<0.01)、A型の女性はB、O、AB型の女性より乳がんリスクが高いことが示された。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Bothou A, et al. J BUON. 2019;24:1884-1888.

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飲酒と喫煙と家族性乳がんリスクの関連

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 飲酒および喫煙は乳がんリスクの増加と関連しているが、家族性乳がんのリスクによってその関連性は変わるのだろうか。今回、米国コロンビア大学のNur Zeinomar氏らが検討したところ、適度な飲酒は、とくにエストロゲン受容体(ER)陽性乳がんの女性において乳がんリスクの増加と関連するが、それは家族性乳がんリスクが低いと予測される女性においてのみであることがわかった。また、家族性乳がんリスクが高く、飲酒する女性では、現在の喫煙が乳がんリスク増加と関連することが示された。Breast Cancer Research誌2019年11月28日号に掲載。

 本研究は、Prospective Family Study Cohortを用いて、飲酒、喫煙、乳がんリスクの関連を評価した。多変量Cox比例ハザードモデルを使用して、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定し、家族性リスクプロファイル(familial risk profile:FRP)によって関連性が変わるかどうかを検討した。FRPは、家系ベースのアルゴリズムであるBreast Ovarian Analysis of Disease Incidence and Carrier Estimation Algorithm(BOADICEA)により予測される乳がんの1年発症率とした。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値10.4年の間に、1万7,435人の女性のうち1,009人が乳がんを発症した。
・喫煙または飲酒と乳がんリスクとの間に、全体として関連は認められなかった(非喫煙者に対する現在喫煙者のHR:1.02、95%CI:0.85~1.23、非常習飲酒者に対する週7杯以上の飲酒者のHR:1.10、95%CI:0.92~1.32)。
・FRPの低い女性では、週7杯以上の飲酒者は非常習飲酒者に比べてER陽性乳がんのリスクが増加したが、FRPの高い女性では関連がなかった。例として、FRPの10パーセンタイル(5年BOADICEA:0.15%)の女性の推定HRは1.46(95%CI:1.07~1.99)だが、90パーセンタイル(5年BOADICEA:4.2%)の女性では関連がなかった(HR:1.07、95%CI:0.80~1.44)。
・喫煙との関連はFRPによって変わらなかったが、飲酒する女性では喫煙状況についてFRPによる正の乗法的相互作用が認められた(相互作用のp=0.01)。ただし、非常習飲酒者については認められなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Zeinomar N, et al. Breast Cancer Res. 2019;21:128.

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高濃度乳房女性にはMRI検査の追加が有用/NEJM

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 きわめて高濃度乳房でマンモグラフィ検査が正常の女性において、MRIスクリーニングの追加はマンモグラフィ検査単独と比較し、2年間のスクリーニング中の中間期がんの診断件数が有意に減少することが、オランダ・ユトレヒト大学のMarije F. Bakker氏らによる多施設共同無作為化比較試験「Dense Tissue and Early Breast Neoplasm Screening trial:DENSE試験」の結果、示された。高濃度乳房は乳がんのリスク因子であるが、マンモグラフィ検査によるがん検出には限界があり、高濃度乳房の女性における早期発見率の改善と中間期乳がん減少のためのMRI追加に関するデータが必要とされていた。NEJM誌2019年11月28日号掲載の報告。

きわめて高濃度乳房の女性約4万例で、MRI追加と非追加の中間期がん発生を比較

 研究グループは、オランダで2年ごとに実施されているデジタルマンモグラフィ検診プログラムに参加し、マンモグラフィ検査で陰性と判定されたきわめて高濃度乳房の50~75歳の女性4万373例を、MRI追加実施招待(MRI追加)群と、マンモグラフィ検査のみのマンモグラフィ群に、1対4の割合で無作為に割り付け追跡評価した(MRI追加群8,061例、マンモグラフィ群3万2,312例)。

 主要評価項目は、2年間のスクリーニング期間における中間期がんの発生頻度の群間差であった。

MRI追加群でマンモグラフィ単独群より中間期乳がん発生頻度が有意に低下

 中間期がんの発生頻度(スクリーニング1,000件当たり)は、MRI追加群で2.5件、マンモグラフィ群で5.0件であり、群間差は2.5件(95%信頼区間[CI]:1.0~3.7、p<0.001)であった。

 MRI追加群のうち、実際にMRI検査を受けた女性は4,783例(59%)であり、MRI追加群で中間期がん診断された20例のうち、4例(スクリーニング1,000件当たり0.8)がMRI実施例、16例(同4.9)はMRI非実施例であった。したがって、MRI実施例におけるMRIによるがん検出率は、スクリーニング1,000件当たり16.5件(95%CI:13.3~20.5)であった。

 陽性適中率は、MRI検査陽性例(BI-RADSスコア3~5)で17.4%(95%CI:14.2~21.2)、MRI検査陽性生検実施例(BI-RADSスコアが4または5、フォローアップMRIでスコア4または5を含む)で26.3%(95%CI:21.7~31.6)であった。一方、偽陽性率は、スクリーニング1,000件当たり79.8件であった。

 MRI実施例において、検査中または検査直後の有害事象あるいは重篤な有害事象の発現率は0.1%で、血管迷走神経反応、造影剤反応、血管外漏出に関連していた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)


【原著論文はこちら】

Bakker MF, et al. N Engl J Med. 2019;381:2091-2102.

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飲酒と喫煙に対する健康政策はがん死を減らせるのか

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 長期の飲酒と喫煙はがんの危険因子として認識されているが、飲酒と喫煙に対する公衆衛生政策ががんの死亡率に与える影響は検討されていない。今回、オーストラリア・メルボルン大学のHeng Jiang氏らが、オーストラリアにおける1950年代~2013年の飲酒および喫煙に関する政策とがん死亡率の変化との関連を検討した結果、いくつかの政策変更が飲酒・喫煙の変化とその後20年間のがん死亡率の変化に関連することが示された。BMC Medicine誌2019年11月号に掲載。

 本研究では、アルコールとタバコの1人当たり消費量の1911~2013年における集団ベースの時系列データと、1950年代~2013年の頭頸部(口唇、口腔、咽頭、喉頭、食道)がん、肺がん、乳がん、大腸および肛門がん、肝臓がん、がん全体の死亡率を、オーストラリア統計局(Australian Bureau of Statistics)、ビクトリア州がん協会(Cancer Council Victoria)、WHOがん死亡データベース(WHO Cancer Mortality Database)、オーストラリア保健福祉研究所(Australian Institute of Health and Welfare)から収集した。アルコールとタバコの消費量の変化と重大な関係がある政策を初期モデルで特定後、主要な公衆衛生政策やイベントに基づいて推定遅延を伴う介入ダミーを作成し、時系列モデルに挿入して、政策変更とがん死亡率との関係を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・1960年代のアルコール販売免許の自由化は、飲酒人口の増加とその後の男性のがん死亡率の増加と有意に関連していた。
・1976年以降のオーストラリアにおける任意呼気検査の導入は、飲酒人口の減少とその後の男女両方のがん死亡率の減少に関連していた。
・1962年と1964年のタバコに関する英国と米国の公衆衛生報告書の発表と1976年のテレビとラジオでのタバコ広告禁止は、オーストラリアにおけるタバコ消費量の減少とその後のがん(肝臓がん除く)の死亡率の減少に関連していた。
・1960年代~1980年代の飲酒と喫煙に関する政策の変更は、女性より男性でより大きな変化と関連していた(とくに頭頸部がん、肺がん、大腸がん)。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Jiang H, et al. BMC Med. 2019;17:213.

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出産歴による乳がん検診開始年齢を検討/Eur J Cancer

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 乳がんリスクに出産歴が影響することは認識されているが、現在の乳がん検診ガイドラインはこの因子によるリスクの違いが考慮されていない。乳がんリスクが高い女性は早期の検診が必要であることから、ドイツ・German Cancer Research CenterのTrasias Mukama氏らは、生殖プロファイルに基づくリスクに合った検診開始年齢を検討した。European Journal of Cancer誌オンライン版2019年11月21日号に掲載。

 本研究は、1931年以降に生まれた509万9,172人のスウェーデン人女性の全国コホート研究。参加者におけるSwedish Cancer Registry、Multi-generation Register、Cause of Death Register、および国勢調査(1958~2015)の記録をリンクさせた。

 著者らは、一般集団における40、45、50歳(現在のガイドラインで推奨されている検診開始年齢)での10年累積乳がんリスクを算出し、生殖因子(出産歴および初産年齢)が異なる群ごとにそのリスクレベルに達成する年齢を調べた。

 その結果、リスクレベルに達成する年齢は、現在のガイドラインの推奨年齢と-3~+9歳の差が認められた。これらの結果は、検診開始年齢について新たな情報を提供し、個別化検診に向けて重要なステップとなる。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Mukama T, et al. Eur J Cancer. 2019 Nov 21. [Epub ahead of print]

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アテゾリズマブ 840mgを発売、トリプルネガティブ乳がん適応に対し/中外

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 中外製薬株式会社は、抗PD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)840mg製剤が、2019年11月27日、薬価収載および発売となった旨を発表。アテゾリズマブ 840mg製剤は、本年9月20日に承認を取得したPD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌の適応に対する用法・用量となる2週間間隔投与に対する至適用量製剤である。

 トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するアテゾリズマブの有効性および安全性は、全身薬物療法を受けていない切除不能な局所進行または転移のあるTNBCの患者を対象に、アテゾリズマブと化学療法の併用と、化学療法単独を比較し、有効性ならびに安全性、薬物動態を検討した多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検第III相臨床試験であるIMpassion130試験にて検討された。

(ケアネット 細田 雅之)


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血液1滴で13種のがん検出、2時間以内に99%の精度で―東芝

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 東芝は11月25日、血液中のマイクロRNAを使ったがん検出技術を開発したと発表した。同社によると、独自のマイクロRNA検出技術を使った健康診断などの血液検査により、生存率の高いStage 0の段階でがんの有無を識別することが期待できるという。早期の社会実装に向け、来年から実証試験を進めていく。

 リキッドバイオプシーの解析対象となるマイクロRNAを巡っては、2014年に「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」が始動。国立がん研究センターや国立長寿医療研究センターが保有するバイオバンクを活用し、膨大な患者血清などの検体を臨床情報と紐づけて解析。血中マイクロRNAをマーカーとした検査システムの開発が進んでいる。この研究成果をベースに、国内メーカー4社が、日本人に多い13種のがんについて、血液検体から全自動で検出するための機器や検査用試薬、測定器キットなどの開発に取り組んでいる最中だ。

 東芝も本プロジェクトに当初より参画。東京医科大学と国立がん研究センターとの共同研究において、このほど膵臓がんや乳がんなど13種類のがん患者と健常者について、独自の電気化学的なマイクロRNA検出技術を活用し、2時間以内に99%の精度で網羅的に識別することに成功した。この中には、Stage 0の検体も含まれていたという。本研究により、13がん種いずれかのがんの有無について、簡便かつ高精度に検出するスクリーニング検査の実現が期待される。独自のマイクロRNAチップと専用の小型検査装置を用いることで、検査時間を2時間以内に短縮し、即日検査も可能になるという。

 東芝は、本技術の詳細を12月3~8日に福岡で開催される日本分子生物学会で発表する。

(ケアネット 鄭 優子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

東芝:プレスリリース

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