赤肉と鶏肉、乳がんリスクはどちらが高い?/Int J Cancer

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 肉を食べると乳がん発症リスクは上昇するのか。これまで因果関係が言われながらも、一貫性のあるエビデンスが示されていなかった肉と乳がんの関係について、米国・Columbia Mailman School of Public HealthのJamie J. Lo氏らが、4万2,000例超の女性を平均7.6年間追跡した調査結果を発表した。赤肉(red meat)の摂取量が最も多い群は最も少ない群に比べて浸潤性乳がんのリスクが1.23倍高く、一方で鶏肉は最も多く食べる群が最も少ない群に比べて同リスクは0.85倍と低く、赤肉の代わりに鶏肉を食べることで乳がんリスクが低下する可能性があることが示唆されたという。なお調理法についての関連性は観察されなかったとしている。International Journal of Cancer誌オンライン版2019年8月6日号掲載の報告。

 研究グループは、各種の肉摂取量、肉関連変異誘発物質と浸潤性乳がん発症との関連を調べるため、「Sister Study」に参加した4万2,012例から、各種の肉摂取量と調理方法の情報を入手し解析した。参加者は、2003~09年に登録されBlock 1998 Food Frequency Questionnaireを完了し適格基準を満たしていた。

 各種の肉曝露および肉関連変異誘発物質の曝露を算出し、浸潤性乳がんリスクを、多変量Cox比例ハザード回帰法にて推算した。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間平均7.6年間において、4万2,012例の被験者のうち、浸潤性乳がんと診断されたのは試験登録後1年以降の時点で1,536例であった。
・赤肉の摂取量増加は、浸潤性乳がんリスクの上昇と関連していた(最高四分位群vs.最小四分位群のHR:1.23、95%CI:1.02~1.48、傾向のp=0.01)。
・一方で、鶏肉の摂取量増加は、浸潤性乳がんリスクの低下と関連していた(同HR:0.85、95%CI:0.72~1.00、傾向のp=0.03)。
・赤肉摂取と鶏肉摂取を固定していた置換モデルにおいて、赤肉摂取を鶏肉摂取に切り替えると、浸潤性乳がんリスクは低下する関連が認められた(同HR:0.72、95%CI:0.58~0.89)。
・調理方法(ヘテロサイクリックアミンや赤肉摂取に由来するヘム鉄)と、乳がんとの関連は観察されなかった。

(ケアネット)


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Lo JJ, et al. Int J Cancer. 2019 Aug 6. [Epub ahead of print]

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BRCA変異に対する予防的卵巣摘出は骨にどのような影響を及ぼすか

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 BRCA遺伝子変異の保有者において、予防的卵巣摘出術は骨にどのような影響を及ぼすのか。カナダ・Women’s College Research InstituteのJoanne Kotsopoulos氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、とくに手術時に閉経前だった女性において卵巣摘出術と骨密度低下は関連していることが示された。著者は、「この患者集団に対しては、骨の健康を改善するため定期的な骨密度評価およびホルモン療法などの管理戦略を定めるべきである」と述べている。JAMA Network Open誌2019年8月号掲載の報告。

 研究グループは、BRCA遺伝子変異の保有者に対して強く推奨される予防的両側卵管卵巣摘出術と骨密度の関連を評価する検討を行った。2000年1月~2013年5月に、カナダ・オンタリオ州トロントにあるUniversity Health Networkを介し、卵巣摘出術を受けたBRCA変異を有する患者を登録した。手術前に少なくとも1つの卵巣は完全で乳がん以外のがんの既往がないことを適格基準とし、手術の前後にDXA法で骨密度を測定した患者について解析した。データの解析は2018年12月~2019年1月に行った。

 主要評価項目は、ベースラインから追跡調査までの骨密度の年間変化率で、腰椎、大腿骨頸部および全股関節に分けて算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・ベースラインと手術後追跡調査の双方の骨密度測定値があったのは計95例で、平均追跡期間は22.0ヵ月であった。
・卵巣摘出術を受けた時の平均年齢は48.0歳であった。
・手術時に閉経前であった50例(53%)で、追跡調査においてベースラインからの骨密度低下が認められた。
・骨密度低下の年間変化率は、腰椎-3.45%(95%CI:-4.61~-2.29)、大腿骨頸部-2.85%(-3.79~-1.91)、全股関節-2.24%(-3.11~-1.38)であった。
・ホルモン療法の受療者(自己申告)は非受療者と比べ、腰椎(-2.00% vs.-4.69%、p=0.02)および全股関節(-1.38% vs.-3.21%、p=0.04)で、骨密度低下が有意に少なかった。
・手術時に閉経後であった45例(47%)では、腰椎(年間変化率:-0.82%、95%CI:-1.42~-0.23)および大腿骨頸部(-0.68%、-1.33~-0.04)で骨密度の有意な低下がみられたが、全股関節(-0.18%、-0.82~0.46)ではみられなかった。

(ケアネット)


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Kotsopoulos J, et al. JAMA Netw Open. 2019;2:e198420.

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がん患者が言い出せない、認知機能障害への対応策/日本臨床腫瘍学会

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 がんそのもの、あるいはがん治療に伴う認知機能障害(cancer-related cognitive impairment;CRCI)は海外で研究が進みつつあるものの、国内での認識は医療者・患者ともに低い。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会では、「がんと関連した認知機能障害:病態解明・診断・治療/ケアはどこまで進んだか」と題したシンポジウムが開かれ、国内外の知見が紹介された。本稿では、橋本 淳氏(聖路加国際病院 腫瘍内科)、谷向 仁氏(京都大学大学院医学研究科)による発表内容を中心に紹介する。

治療前で2~3割、治療に伴い最大7割以上の患者で報告あり

 CRCIは、現時点で有効な評価方法や治療は確立されていないが、がんそのものによる肉体的・精神的影響によって治療前からみられるもの、化学療法や手術、内分泌療法などの治療に伴ってみられるものがあると考えられている。橋本氏は、乳がん、卵巣がん、消化器がんなどにおける海外の報告を紹介。治療前は20~30%の患者で1)、化学療法に伴うものとして17~75%の患者でみられたという報告がある(報告により認知機能の評価法が異なり、幅のある結果となっている)2~3)

 症状としては、記憶、集中力、処理速度や実施能力の低下が報告されている。“頭に霧がかかったよう”と表現する患者も多いという。リスクファクターとしては、化学療法と関連する因子(血液脳関門の透過性、用量、併用療法など)のほか、年齢、閉経状態、遺伝学的因子(ApoE、COMD、BDNF)、放射線療法歴、もともとの認知予備能などが報告されているが、メカニズムを示す明確なエビデンスは現状存在しない。

症状としては軽微で気づかれにくい、でも日常生活には支障

 谷向氏は、CRCIに着目するきっかけとなった症例を紹介。精神科医として緩和医療科で診察した乳がん患者(外来化学療法受療中)が、「ガスをつけっぱなしで外出してしまうことが何度かある」と話し、危機感を覚えたという。

 そこで同氏は、乳がん患者会の協力を得て化学療法受療の有無と7項目の認知機能障害との関連についてアンケート調査(n=173)を実施。作業スピードが遅くなった、ものごとに集中できなくなった、不注意が増えたなどの6項目で、化学療法の有無による有意差がみられた。さらに、これらの自覚する認知機能障害について、「他者から指摘された」ことは有意に少なく、認知機能障害の項目数が増えるほど抑うつスコア(HADS)が上昇した4)

 一方で、同氏は医師62人を含むがん診療に携わる医療者約400人対象のアンケート調査も実施した。その結果、診療/面接時に毎回あるいは時々のいずれかで症状の有無を患者に「確認する」と答えた割合は、痛み・だるさ・眠気といった身体症状については80%以上、気分の落ち込み・不安といった精神症状についても65%以上だったのに対し、物忘れ・不注意・集中力低下といった認知症状については20~30%に留まっていた。

MMSEやMOCA-Jでは“異常なし”、どうすれば?

 医療者の間で理解が進まない原因の1つに、MMSEやMOCA-Jといった一般的な認知機能のスクリーニング法では、ほぼ満点の例があるなど、CRCIへの感度が高くないという点がある。橋本氏は、がん患者用QOL尺度であるFACT-Cogや、作業効率や言葉の想起の低下などを検出しやすいTMT、COWA、HVLT-Rなどが推奨されていることを紹介した。

 谷向氏は、CRCIの症状が軽微で、非健忘症状として現れることが多いがゆえに、家族にも医療者にも気づかれにくく、二次的な不安や抑うつなどにつながる可能性を指摘。「もう半年くらい症状が続いているが、笑われてしまうかと思って相談できなかった」という患者の言葉を紹介した。予後が改善し、社会復帰を視野に入れるがん患者が増えていく中で、作業効率の低下などは大きな障壁となりうる。同氏は、医療者側が認知障害にも気をかけておくとともに、そのような症状があれば相談してほしいとあらかじめ患者や家族に伝えること、認知機能障害の背景を丁寧に鑑別することの重要性を強調した。

 谷向氏は連携する仲間と共同し、患者・家族に対してのCRCIに関する啓発用パンフレットを作成している。症状チェックリストなどを盛り込んだこのパンフレットはこちらからダウンロード可能となっている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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1)Olson B, et al. Cancers (Basel). 2019;11.
2)Ahles TA, et al. J Clin Oncol. 2012;30:3675-86.
3)Hess LM, et al. Gynecol Oncol. 2015;139:541-5.
4)谷向 仁. 精神神経学雑誌. 2015;117: 585-600.

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エヌトレクチニブ、NTRK固形がんとROS1肺がんでFDA承認

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 2019年8月15日、米国食品医薬品局(FDA)は、NTRK融合遺伝子陽性でほかの治療法がない固形がんに対して、ROS1/TRK阻害薬エヌトレクチニブを迅速承認した。同時に、転移のあるROS1陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対しても承認している。

 NTRK陽性がんの有効性は、ALKA、STARTRK-1、STARTRK-2の3つの多施設単群臨床試験のいずれかでエヌトレクチニブを投与された54例の成人患者で検討された。54例の独立評価委員による全奏効率(ORR)は57%(95%CI:43~71)であった。奏効期間(DOR)は、患者の68%が6ヵ月以上は、45%が12ヵ月以上であった。登録が多かったのは、肉腫、NSCLC、乳腺類似分泌がん、乳房、甲状腺、大腸であった。

 ROS1陽性NSCLCの有効性は、上記の3つの試験でエヌトレクチニブが投与された51例の成人患者で調査された。ORRは78%(95%CI:65~89)で、DORは患者の55%で12ヵ月以上であった。

 エヌトレクチニブの重篤な有害事象は、うっ血性心不全、中枢神経系への影響、骨格部骨折、肝毒性、高尿酸血症、QT間隔延長、視力障害であった。頻度の高い(発現率20%以上)有害事象は、疲労、便秘、味覚異常、浮腫、めまい、下痢、悪心、感覚異常、呼吸困難、筋肉痛、認知障害、体重増加、咳、嘔吐、発熱、関節痛、および視覚障害であった。

(ケアネット 細田 雅之)


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STARTRK-1(NCT02097810)
STARTRK-2(NCT02568267)

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非糖尿病者でHbA1cとがん発症にU字型の関連

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 HbA1cとがん発症との関連を経時的に評価するため、聖路加国際病院の小林 大輝氏らがHbA1cを複数回測定する縦断研究を実施した。その結果、非糖尿病者においてHbA1cレベルとがんリスクとの間にU字型の関連がみられたが、前糖尿病レベルで追加リスクは認められなかった。また、HbA1c低値が乳がんおよび女性性器がんの発症と関連することが示唆された。Acta Diabetologica誌オンライン版2019年8月9日号に掲載。

 本研究は、聖路加国際病院で実施された後ろ向き縦断研究で、2005~16年に同病院で自主的に健康診断を受けたすべての参加者を含む。アウトカムはがん発症で、HbA1cレベルのカテゴリー間で比較した。HbA1cの変動を考慮するために、HbA1cの経時的な測定を適用した混合効果モデルを使用し縦断的に分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・糖尿病ではない7万7,385人(平均年齢44.7歳、男性49.4%)が参加した。
・追跡期間中央値の1,588日(四分位範囲:730~2,946)で、4,506人(5.8%)の参加者にがんが発症した。
・HbA1cとがん発症の関係はU字型で、HbA1c 5.5~5.9%の群と比べたオッズ比(OR)は、HbA1c低値群(5.0%未満におけるOR:1.31、95%CI:1.17~1.46)、HbA1c高値群(7.5%以上におけるOR:1.87、95%CI:1.03~3.39)とも有意に高かった。
・最も低いHbA1cでは、乳がん(OR:1.5、95%CI:1.21~1.86)と女性性器がん(OR:1.57、95%CI:1.04~2.37)のオッズがより高かった。

(ケアネット 金沢 浩子)


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Kobayashi D, et al. Acta Diabetol. 2019 Aug 9. [Epub ahead of print]

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乳がんリンパ浮腫のセルフケア、Webとパンフレットどちらが効果的

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 乳がん治療関連リンパ浮腫(breast cancer-related lymphedema:BCRL)患者のケアに対するウェブベースのマルチメディアツールを用いた介入(Web Based Multimedia Intervention:WBMI)の結果が示された。米国・ヴァンダービルト大学のSheila H. Ridner氏らによる検討で、WBMIを受けた患者は、対照(パンフレットのみ)より生物行動症状(気分)が改善し、介入に対する知覚価値も高いことが示されたという。ただし、WBMI群は完遂率が低く、他の評価項目については大きな違いはみられなかったとしている。Journal of Women’s Health誌オンライン版2019年7月17日号掲載の報告。

 研究グループは、BCRLを有する女性患者の症状負荷、機能、心理面の健康、費用および腕の体積に対するWBMIの効果を評価する目的で、患者をWBMI群(80例)および対照群(80例)に無作為に割り付けた。WBMIは12項目から成り、それぞれ約30分を要した。対照群へは、パンフレットを提供するのみで、読むのに約2時間を要した。

 介入前および介入後1、3、6および12ヵ月時に症状負荷、心理面の健康、機能および経費に関するデータを収集し、45例のサブグループは介入前および介入後3、6および12ヵ月時に腕の細胞外液量を生体インピーダンス法で測定した。また、介入に対する知覚価値についても調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・介入の完遂率は、WBMI群58%、対照群77%で、統計学的に有意な差があった(p=0.011)。
・Lymphedema Symptom Intensity and Distress Scale-Arm(LSIDS-A)に基づく症状の評価では、生物行動症状(気分)数はWBMIで減少を示したが、その他の症状については2群間で統計学的な有意差がなかった(効果量:0.05~0.28、p>0.05)。
・他の変数の変化については、2群間で有意差は観察されなかった。
・WBMIは、パンフレットよりもセルフケア情報が優れていると認識されていた(p=0.001)。

 WBMIは生物行動症状を改善し、より質の高い情報と認識された。他の変数において統計的な有意に至らなかったのは、WBMI患者の介入完遂率の低さが影響している可能性があると筆者は結んでいる。

(ケアネット)


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Ridner SH, et al. J Womens Health (Larchmt). 2019 Jul 17. [Epub ahead of print]

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アントラサイクリンの心毒性、運動で予防できるか

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 アントラサイクリン系薬に関連した心毒性(anthracycline-related cardiotoxicity、以下ARC)への予防戦略として、運動介入の有効性を検討する無作為化試験が行われるようだ。アントラサイクリン系薬は乳がんの治療によく用いられるが、心毒性の累積リスクとも関連している。そのため心臓への影響を最小化する予防戦略が必要で、非薬理学的アプローチとして運動が提案されていた。しかし、これまで行われてきたのはほとんどが動物実験によるもので、患者において有効性が示された研究はわずかで限られていた。ポルトガル・Universidade da Beira InteriorのPedro Antunes氏らが、「ARCを軽減する運動の有効性をよりよく理解するためには、実臨床において正確かつ有用なバイオマーカーを用いた大規模な研究が必要である」として現在、バイオマーカーの連続測定と画像検査により心機能を調査する臨床研究を行っているという。そのプロトコルについて発表した。Trial誌2019年7月号掲載の報告。

 研究グループは、ARCを軽減する構造化運動プログラムの効果について明らかにし、乳がん治療をさらに改善する目的で、新しい臨床バイオマーカーを用いる研究を行っている。

 試験概要は以下のとおり。

・本研究は、アントラサイクリンを含む化学療法(anthracycline-containing chemotherapy、以下ACT)を施行中の乳がん患者において、構造化運動プログラムの心保護作用を比較する前向き無作為化臨床試験である。
・ACTを受ける早期乳がん成人患者90例を、介入群と対照群に1:1の割合で無作為に割り付ける。
・介入群では、ACT施行中、有酸素および筋力トレーニングを組み合わせた、段階的な運動強度と時間による監視下での運動プログラムを週に3回実施する。
・対照群では、標準的な乳がん治療を行う。
・心機能に関連する主要評価項目は、NT-proBNP値、安静時左室長軸方向ストレイン、縦および安静時左室駆出率、副次評価項目は、安静時の血圧、心拍数および心拍数変動、回復期の心拍数、身体機能転帰、自己申告による身体活動レベル、健康関連QOL、および疲労である。
・評価項目のデータは、ベースライン、アントラサイクリン治療終了時および治療終了後3ヵ月時に収集し、NT-proBNPについてはさらに各アントラサイクリン治療サイクルの投与前1~24時間にも測定する。

(ケアネット)


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Antunes P, et al. Trials. 2019;20:433.

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術前化学療法を受けた乳がん患者の術後上肢リンパ浮腫、リスク因子は?/JAMA Surgery

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 乳がん患者の術後リンパ浮腫に関して、従前にない知見が示された。これまでのリンパ浮腫に関する大部分の研究は、対象集団が不均一で術後補助化学療法を受けた患者に重点を置いているが、米国・ミズーリ大学コロンビア校のJane M. Armer氏らは、術前化学療法と乳がん手術+腋窩リンパ節郭清を受けた患者のリンパ浮腫について検討。ACSOG Z1071研究の登録患者について解析を行い、長期の術前補助化学療法と肥満がリンパ浮腫の発現と関連していることを明らかにした。著者は、「このようなリスク因子を有する患者では、リンパ浮腫のサーベイランスを強化することが有益であろう」とまとめている。JAMA Surgery誌オンライン版2019年7月17日号の掲載。

 研究グループは、リンパ節転移陽性乳がん患者で術前化学療法と腋窩リンパ節郭清後のリンパ浮腫に関連する因子を調べる目的でコホート研究を行った。

 対象は、2009年1月1日~2012年12月31日の間にACSOG Z1071研究に登録された、診断時にリンパ節転移を有する18歳以上のcT0-T4N1-2M0乳がん女性患者である。2018年1月11日~2018年11月9日にデータを分析した。全例、術前化学療法、乳房手術および腋窩リンパ節郭清を受け、術前化学療法完了時および術後36ヵ月まで6ヵ月間隔で、前向きにリンパ浮腫の測定および症状の評価が行われた。

 主要評価項目はリンパ浮腫で、自覚症状(上肢が重いまたは腫れている)、上肢体積10%以上増加および上肢体積20%以上増加の3つの定義で評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象は486例で、平均年齢は50.1歳であった。
・3年後のリンパ浮腫累積発現率は、自覚症状評価で37.8%、上肢体積10%以上増加で58.4%、上肢体積20%以上増加で36.9%であった。
・BMI増加(HR:1.04、95%CI:1.01~1.06)、および術前化学療法の期間が144日以上(HR:1.48、95%CI:1.01~2.17)が、リンパ浮腫の自覚症状と関連していた。
・上肢体積20%以上増加の発現率は、術前化学療法の期間が144日以上(HR:1.79、95%CI:1.19~2.68)の患者で高かった。 
・上肢体積10%以上増加の発現率は、リンパ節切除個数30個以上(HR:1.70、95%CI:1.15~2.52)で最も高く、転移陽性リンパ節の数とともに上昇した(HR:1.03、95%CI:1.00~1.06)。
・多変量解析の結果、肥満(HR:1.03、95%CI:1.01~1.06)がリンパ浮腫の自覚症状と、術前化学療法の期間(HR:1.74、95%CI:1.15~2.62)が上肢体積20%以上増加と、有意に関連することが示された。

(ケアネット)


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Armer JM, et al. JAMA Surg. 2019 Jul 17. [Epub ahead of print]

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本邦初、高齢者のがん薬物療法ガイドライン発行/日本臨床腫瘍学会

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 約3年をかけ、高齢者に特化して臓器横断的な視点から作成された「高齢者のがん薬物療法ガイドライン」が発行された。第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で概要が発表され、作成委員長を務めた名古屋大学医学部附属病院の安藤 雄一氏らが作成の経緯や要点について解説した。なお、本ガイドラインは日本臨床腫瘍学会と日本癌治療学会が共同で作成している。

 

高齢者を一律の年齢で区切ることはせず、年齢幅を持たせて評価

 本ガイドラインは「Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014」に準拠し、臨床試験のエビデンスとともに、益と害のバランス、高齢者特有の価値観など多面的な要因に基づいて推奨の強さが検討された。作成委員会からは独立のメンバーによるシステマティックレビュー、専門医のほか非専門医・看護師・薬剤師・患者からの委員を加えた推奨パネルでの投票により、エビデンスの強さ(4段階)と推奨の強さ(2段階+推奨なし)が決定されている。

 対象となる高齢者については、一部のCQを除き具体的な年齢で示すことはしていない。各薬物療法の適応になる基本的な条件を満たしており、PS 0または1、明らかな認知障害を認めず、主な臓器に機能異常を認めない患者が対象として想定されている。

“実臨床で迷うことが多い”という観点で12のCQを設定

 12のクリニカルクエスチョン(CQ)は、CQ1が総論、CQ2~3が造血器、CQ4~6が消化管、CQ7~9が呼吸器、CQ10~12が乳腺という構成となっている(下記参照)。各CQは実臨床で遭遇し判断に迷うもの、そして臨床アウトカムの改善が見込まれるものという観点で選定。例えば呼吸器のCQ7は、予防的全脳照射(PCI)を扱っており、薬物療法ではないが、実臨床で迷うことが多く重要、との判断から取り上げられた。

 推奨パネルでの投票で意見が割れ、最終的な決定にあたって再投票を実施したCQも複数あった。呼吸器のCQ8では、高齢者の早期肺がんに対する術後補助化学療法としてのシスプラチン併用について検討している。報告されている効果は5年生存率で+10%と小さく、1%の治療関連死が報告されている。判断について意見が分かれたが、最終的に、「実施することを明確に推奨することはできない(推奨なし)」とされている。

 本ガイドラインでは、関連のエビデンス解説や推奨決定までの経緯についての記述を充実させており、巻末には各CQについて一般向けサマリーを掲載している。患者ごとに適した判断をするために、また患者にリスクとベネフィットを正確に伝えるために、これらの情報を活用することが期待される。

独自のメタアナリシスを実施したCQも

 そもそも高齢者は臨床試験の選択基準から除外されることが多く、エビデンスは全体的に乏しい。評価できるエビデンスがサブグループ解析に限られ、直接高齢者を対象としたRCTは存在しないものが多かった。消化器のCQ5では、70歳以上の結腸がん患者に対する術後補助化学療法について検討しているが、70歳以上へのオキサリプラチン併用療法は、現状の報告から明確な上乗せ効果は確認できず、一方で末梢神経障害の増加が認められることから、「オキサリプラチン併用療法を行わないことを提案(弱く推奨)」している。

 独自のメタアナリシスを行ったCQもある。乳がん領域のCQ11では、高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法で、アントラサイクリン系抗がん剤の省略が可能かどうかを検討している。2つの前向き試験(CALGB49907とICE II-GBG52)のメタアナリシスを行い、アントラサイクリン系抗がん剤を省略することで生存期間と無再発生存期間が短縮する可能性が示唆された。その他心毒性についての観察研究結果などのエビデンスも併せて検討された結果、「アントラサイクリン系抗がん薬を省略しないことを提案(弱く推奨)」している。

各領域で取り上げられているCQ

[総論]
 CQ1 高齢がん患者において,高齢者機能評価の実施は,がん薬物療法の適応を判断する方法として推奨されるか?

[造血器]
 CQ2 高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療方針の判断に高齢者機能評価は有用か?
 CQ3 80才以上の高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してアントラサイクリン系薬剤を含む薬物療法は推奨されるか?

[消化器]
 CQ4 高齢者では切除不能進行再発胃がんに対して,経口フッ化ピリミジン製剤とシスプラチンまたはオキサリプラチンの併用は推奨されるか?
 CQ5 結腸がん術後(R0切除,ステージIII)の70才以上の高齢者に対して,術後補助化学療法を行うことは推奨されるか?行うことが推奨されるとすれば,どのような治療が推奨されるか?
 CQ6 切除不能進行再発大腸がんの高齢者の初回化学療法においてベバシズマブの使用は推奨されるか?

[呼吸器]
 CQ7 一次治療で完全奏効(CR)が得られた高齢者小細胞肺がんに対して,予防的全脳照射(PCI)は推奨されるか?
 CQ8 高齢者では完全切除後の早期肺がんに対してどのような術後補助薬物療法が推奨されるか?
 CQ9 高齢者非小細胞肺がんに対して,免疫チェックポイント阻害薬の治療は推奨されるか?

[乳腺]
 CQ10 高齢者ホルモン受容体陽性,HER2陰性乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬を投与すべきか?
 CQ11 高齢者トリプルネガティブ乳がんの術後化学療法でアントラサイクリン系抗がん薬の省略は可能か?
 CQ12 高齢者HER2陽性乳がん術後に対して,術後薬物療法にはどのような治療が推奨されるか?

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

日本臨床腫瘍学会/日本癌治療学会「高齢者のがん薬物療法ガイドライン」

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最もOSが良好な乳がんのサブタイプは?

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 乳がん治療について、ステージ分類に加えて腫瘍サブタイプの重要性を強調するエビデンスが報告された。現行の乳がん治療では、これまで各ステージにおける腫瘍サブタイプの寄与は明らかになっていなかったが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJose P. Leone氏らが、Surveillance Epidemiology and End Results(SEER)プログラムのデータを解析し、臨床病理学的特徴が良好であるのはホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)乳がんであること、しかしながら、ほとんどのステージで全生存(OS)が最も良好だったのはHR+/HER2+乳がんであることを報告した。乳がんの4つの各ステージにおいて、OSは腫瘍サブタイプにより有意に異なっており、多変量モデルにおいても有意なままであったことも明らかにした。American Journal of Clinical Oncology誌2019年7月号掲載の報告。

 研究グループは、各ステージでの腫瘍サブタイプ別によるOSの違いを分析する目的で、SEERプログラムに登録された乳がん患者のうち、2010~13年の間に診断され、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体(HR)ならびにHER2の状態が既知の患者を対象に、患者特性を腫瘍サブタイプ別に比較した。

 単変量および多変量解析により、OSに対する各変数の影響を明らかにするとともに、乳がん特異的生存についても解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象は16万6,054例で、腫瘍サブタイプの分布はHR+/HER2-が72.5%、HR+/HER2+が10.8%、HR-/HER2+が4.8%、トリプルネガティブ(TN)が12%であった。
・HR+/HER2-の患者は、年齢が高く、グレードが低く、ステージは早期であった(すべてp<0.0001)。
・OSは、各ステージにおいて、腫瘍サブタイプにより有意に異なっていた(交互作用のp<0.0001)。
・StageIで最もOSが高かったのは、HR+/HER2-で、3年OSは97.2%であった。
・StageII、StageIII、StageIVで最もOSが高かったのは、HR+/HER2+で、3年OSはそれぞれ94.5%、87.8%、54.8%であった。
・SageIVでは、TNとHR+/HER2+との間で3年OSに40.1%の差があった。
・これらの結果は年齢、人種、グレード、組織型および配偶者の有無について調整した多変量解析によって確認された。

(ケアネット)


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Leone JP, et al. Am J Clin Oncol. 2019;42:588-595.

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