HER2-乳がん1次治療、S-1が標準治療に非劣性(SELECT BC-CONFIRM)/日本癌治療学会

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 HER2陰性の進行・再発乳がん(mBC)に対する1次治療として、S-1が標準治療(アンスラサイクリンを含むレジメンあるいはタキサン)と比較して非劣性であることが示された。第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で、大阪市立大学の高島 勉氏が第III相SELECT BC試験およびSELECT BC-CONFIRM試験の統合解析結果を発表した。

 はじめに実施されたSELECT BC試験は、化学療法歴のないHER2陰性mBC患者を対象とした、タキサンとS-1のランダム化比較試験。主要評価項目である全生存期間(OS)は、タキサン群の37.2ヵ月に対しS-1群35.0ヵ月と、S-1のタキサンに対する非劣性が証明された(ハザード比[HR]:1.05、95%信頼区間[CI]:0.86~1.27、non-inferiority test p=0.015)。またHRQoLの比較において、全般的健康(p=0.04)、身体機能(p<0.01)、認知機能(p=0.03)など、経済的困難、疼痛を除くすべての項目でS-1群が有意に優れていた。

 SELECT BC-CONFIRM試験は、同様の患者を対象としたアンスラサイクリンとS-1のランダム化比較試験。本試験はSELECT BC試験との統合解析を前提として組まれている。そのうえで、OSについては、アンスラサイクリン群33.7ヵ月に対してS-1群30.1ヵ月(HR:1.09、95%CI:0.80~1.48、ハザード比の非劣性マージン1.333を超えない確率=90.27%)と報告されている。HRQoLについては、両群で有意な差はみられなかった。今回の発表では、新たに両試験の統合解析結果(主要評価項目:OS、副次評価項目:安全性、HRQoL、PFSなど)が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・SELECT BC試験:618例、SELECT BC-CONFIRM試験:230例の計848例が組み入れられ、それぞれS-1群と標準治療群に無作為に割り付けられた。辞退者などを除き、最終的な解析はS-1群419例、タキサン群286例、アンスラサイクリン群109例について行われた。
・ベースライン時の患者特性は、年齢中央値がS-1群57.7歳/タキサン群57.6歳/アンスラサイクリン群59.9歳であった。各群3/4がホルモン受容体陽性、1/3が肝転移陽性の患者であった。周術期治療としては、ホルモン療法が約6割、タキサンが3割弱、経口FU剤が1割強で使われていた。無再発期間(DFI)は2~5年および5年以上の患者がそれぞれ約3割を占めていた。
・追跡期間中央値32.7ヵ月において、OS中央値はタキサンとアンスラサイクリンの標準治療群36.3ヵ月 に対しS-1群32.7ヵ月(HR:1.06、95%CI:0.90~1.25)となり、あらかじめ設定された非劣性マージン(1.333)を下回り、S-1の標準治療に対する非劣性が証明された(non-inferiority test p=0.0062)。
・無増悪生存期間(PFS)中央値は、両群ともに11.2ヵ月であった(HR:1.10、95%CI:0.95~1.27)。
・HRQoLについては、S-1とアンスラサイクリンで両群間に差異はなかった(p=0.257)が、S-1とタキサンでは有意差が確認された(p=0.0039)。
・有害事象による治療中止は、S-1群5.7%、標準治療群6.6%で発生した。
・血液毒性としては、アンスラサイクリン群で貧血や好中球減少のGrade3以上が若干多い傾向がみられた。S-1群ではトランスアミラーゼ上昇やビリルビン上昇が多い傾向がみられたものの、ほとんどがGrade1/2であった。
・非血液毒性としては、S-1群では脱毛が少ないことが特徴的であった。タキサン群では神経障害が多く、アンスラサイクリン群とS-1群では食欲不振、吐き気といった消化器毒性が多い傾向がみられた。

 高島氏は、アンスラサイクリン群との比較においてHRQoLについて有意な差がみられなかったことについては、制吐剤の進歩などによりアンスラサイクリン投与中のQoLは比較的良好なのではないかと考察。しかし、同薬は心毒性による用量制限があり、奏効しても長期間使用ができない場合があることを指摘した。経口薬であることによる投与の簡便さと、脱毛や末梢神経障害、浮腫や心機能障害などの苦痛を伴う有害事象が少ないという点にS-1の利点があるとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

SELECT BC試験(UMIN-CTR)
SELECT BC-CONFIRM試験(UMIN-CTR)

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[PR]「転移再発乳がん患者セミナー@鎌倉」開催のお知らせ<BCネットワーク>

「第一回 BCネットワーク 転移再発乳がん患者セミナー@鎌倉 < 乳がんの転移再発の最新の治療法と生活の取り組み方>」を開催致します。是非ご参加ください。


第一回 BCネットワーク
転移再発乳がん患者セミナー@鎌倉
乳がんの転移再発の最新の治療法と生活の取り組み方

日付:2019年12月1日(日)
時間:12:00~16:00(会場は11時にオープン)
会場:鎌倉芸術館(神奈川県鎌倉市大船6-1-2)JR大船駅から徒歩10分
会費:500円 
挨拶:吉田常考先生(外務省医務官)

[第1部:医師講演]
「乳がんの遠隔転移再発をみんなで考えませんか!
司会:土井卓子医師(湘南記念病院かまくら乳がんセンター長)

■転移乳がん患者として15年になりました
講師:患者ストーリー山本員基子(BCネットワーク代表)
■生活・治療を一緒に考え支援する~腫瘍内科の立場から
講師:堤千寿子医師(湘南記念病院・腫瘍内科)
■転移再発乳がんの治療法
講師:高野利実医師(虎の門病院臨床腫瘍内科部長)


参加申し込みは、BCネットワークホームページから
[ https://bcnetwork.org/ ]


オラパリブ+デュルバルマブ、BRCA変異乳がんに有望(MEDIOLA)/ESMO2019

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 BRCA遺伝子変異を有する転移のある乳がん(mBC)に対する、PARP阻害薬のオラパリブとPD-L1抗体のデュルバルマブとの併用療法の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Basser Center for BRCA University of PennsylvaniaのSusan R. Domchek氏より発表された。

 本試験(MEDIOLA試験)は、シングルアームのオープンラベルの国際共同第II相試験である。
・対象:HER2陰性で、生殖系列BRCA遺伝子変異陽性、2ライン以下の前治療歴を有するmBC患者(PARP阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の前治療は許容せず)
・試験群:オラパリブ300mg/回を1日2回投与し、その4週間後からデュルバルマブ1.5g/回を4週間ごとに投与
・評価項目:
[主要評価項目]12週時点での病勢コントロール率(DCR)、安全性
[副次評価項目]28週時点でのDCR、奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏功期間(DOR)、PD-L1発現状況
[探索的検討項目]遺伝子発現プロファイルや腫瘍内浸潤リンパ球(TILs)、BRCAの復帰変異などの予後に与える影響

 主な結果は以下のとおり。

・2016年6月~2017年5月に34例が登録され、安全性の解析には34例全例が、有効性の解析には30例(トリプルネガティブ乳がん[TNBC]:17例、ホルモン受容体陽性乳がん[HRBC]:13例)があてられた。
・Garde3以上の有害事象は32.4%、有害事象によるオラパリブの投与中止は3%で、デュルバルマブの投与中止は10%であった。免疫関連の有害事象は35%で、最も高頻度のものは甲状腺機能低下で15%であった。安全性プロファイルは両剤の既報と同様であり、新たなものは見られなかった。
・ORRは、全例では63.3%、TNBCでは58.8%、HRBCでは69.2%であり、前治療歴1ライン以下患者では70%、2ライン以上患者では50%であった。
・追跡期間中央値6.7ヵ月時点での、PFS中央値は全例では8.2ヵ月であり、TNBCでは4.9ヵ月、HRBCでは9.9ヵ月、前治療1ライン以下患者では11.7ヵ月、2ライン以上患者では6.5ヵ月であった。
・DOR中央値は全例では9.2ヵ月、TNBCでは12.9ヵ月、HRBCでは7.2ヵ月、前治療1ライン以下患者では12.9ヵ月、2ライン以上患者では5.5ヵ月であった。
・追跡期間中央値19.8ヵ月時点でのOS中央値は全例では21.5ヵ月であり、TNBCでは20.5ヵ月、HRBCでは22.4ヵ月、前治療1ライン以下患者では23.4ヵ月、2ライン以上患者では16.9ヵ月であった。
・腫瘍細胞(TC)と免疫細胞(IC)それぞれでのPD-L1発現を1%カットオフで見た場合、それぞれのOS中央値は、TC1%以上の患者では23.9ヵ月、TC1%未満では18.8ヵ月、IC1%以上では21.5ヵ月、IC1%未満では16.9ヵ月であった。

(ケアネット)


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がん患者におけるVTEとAF、わが国の実際/腫瘍循環器学会

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日本のがん患者の静脈血栓塞栓症合併率は欧米並み

 固形がん患者の2~8%に悪性腫瘍関連静脈血栓塞栓症(cancer-associated venous thromboembolism:CA-VTE)が合併すると欧米より報告されている。アジア人は白人と比較してCA-VTEの合併率が低いとの報告もあるが、日本人の固形腫場患者を対象としたCA-VTEの合併率の報告は少ない。神戸大学の能勢 拓氏らは、自施設における新規固形がん患者を対象として後方視的に情報を収集し、第2回日本腫瘍循環器学会で発表した。

 対象は2,735例で、観察期間中央値は103日であった。CA-VTEが認められ、合併率は3.3%(2,735例中92例)で、欧米の報告と同等であった。CA-VTE合併例の年齢中央値は70歳で、52%が女性であった。症候ありは47%で、Dダイマー正常値(<1.0μg/mL)は5.4%であった。

 がん種別のCA-VTE合併率は、肺がん12.0%、甲状腺がん5.0%、原発不明がん4.4%、肉腫4.2%、膵臓がん3.8%、乳がん3.8%、大腸がん3.7%、胆道がん3.3%、胃がん3.3%、食道がん2.3%などであった。

固形がん患者のAF並存は約10%、循環器医の介入で予後改善

 がん患者の予後は改善し、高齢化や治療による心血管疾患の予後への影響が無視できなくなっている。心房細動(AF)は頻度が高く、また脳梗塞のリスクなどがん治療へ悪影響を与える。しかし、進行がん患者におけるAFの併存頻度や、予後に与える影響については明らかでない。聖路加国際病院の佐藤 岳史氏らは、自施設における進行固形がん患者を対象に後方視的コホート研究を行い、AF併存の有無、循環器医の介入の有無による予後の違いを比較し、予後不良因子を検討した。

 対象は1,879例、年齢中央値は66歳であった。AF併存患者は、9.9%(186例)であった。がん種別の併存率は、肺・縦隔がん16%、消化器がん10.6%、泌尿器がん10.6%、肝胆膵がん8.1%、婦人科がん7.1%、乳がん3.9%であった。抗がん治療を受けた患者1,349例のうち、AF併存なし患者の生存期間中央値は1.8年、AF併存患者は1.5年で生存期間に統計学的な差はなかった。AF併存群を循環器医の介入の有無で分けたところ、循環器医介入群(75例)の生存期間は1.7年、循環器医非介入群(50例)は1.1年であった。AF併存なしとの3群の多変量解析において、循環器医非介入のAF併存は独立した予後不良因子であった(HR:1.40、95%CI:1.01~1.95、p=0.04)。

(ケアネット 細田 雅之)


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男性乳がん死亡率、女性乳がんより高い?/JAMA Oncol

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 乳がんは男性患者と女性患者で生存率に差があることが報告されているが、性差が関連する要因について、大規模なデータ解析に基づく知見が示された。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのFei Wang氏らは全米がん登録コホート研究にて、乳がん診断後の死亡率は、臨床的特徴、治療因子、治療を受ける機会を考慮しても、女性患者より男性患者で高いことを明らかにした。乳がん死の性差を理解することは、がん治療とサバイバーのケアに関する戦略を立てるうえで基本となる。結果を受けて著者は、「死亡率の性差をなくすためには、とくに生物学的属性、治療コンプライアンス、ライフスタイルなど他の要因を特定する必要があろう」と指摘している。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月19日号掲載の報告。

 研究グループは、乳がんの男性患者と女性患者の死亡率を比較し、死亡率の性差に関連する要因を定量的に評価する目的で、National Cancer Databaseを用い、2004年1月1日~2014年12月31日までに乳がんと診断された患者を特定しデータを収集した。解析対象集団は181万6,733例で、2018年9月1日~2019年1月15日に解析を行った。

 主要評価項目は全生存率、副次評価項目は3年および5年死亡率であった。

 主な結果は以下のとおり。

・全181万6,733例中、男性は1万6,025例(平均年齢63.3歳)、女性は180万708例(平均年齢59.9歳)であった。
・女性患者と比較し男性患者は、すべてのStageで死亡率が高かった。
・男性患者では、全生存率は45.8%(95%信頼区間[CI]:49.5~54.0)、3年生存率は86.4%(85.9~87.0)、5年生存率は77.6%(76.8~78.3)であった。
・女性患者では、全生存率は60.4%(95%CI:58.7~62.0)、3年生存率は91.7%(91.7~91.8)、5年生存率は86.4%(86.4~86.5)であった。
・男性患者の超過死亡率の63.3%は、臨床的特徴と過少治療が関連していた。
・性別は、臨床的特徴・治療因子・年齢・人種/民族・治療を受ける機会に関して補正後も、全死亡率(補正後ハザード比[aHR]:1.19、95%CI:1.16~1.23)、3年死亡率(aHR:1.15、1.10~1.21)、5年死亡率(aHR:1.19、1.14~1.23)と有意に関連した。

(ケアネット)


【原著論文はこちら】

Wang F, et al. JAMA Oncol. 2019 Sep 19. [Epub ahead of print]

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アテゾリズマブ+T-DM1、HER2+/PD-L1+乳がんでのOSの結果(KATE2)/ESMO2019

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 HER2陽性の進行・再発乳がん(mBC)に対する、PD-L1抗体のアテゾリズマブとT-DM1との併用療法の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・University of Pittsburgh Medical Center Hillman Cancer CenterのLeisha A. Emens氏より発表された。

 KATE2試験は、国際共同の二重盲検比較の第II相試験である。2017年12月データカットオフ時点での1回目の無増悪生存期間(PFS)に関する解析は、2018年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で両群間には有意差がないという発表がなされている。今回は2018年12月のデータカットオフ時点の最終解析としての全生存期間(OS)や安全性の発表となる。

・対象:HER2陽性mBC(mBCに対する治療中の病勢進行患者、または術後療法終了後6ヵ月以内の再発患者)202例、ぺルツズマブとタキサン系薬剤の投与は許容
・試験群:T-DM1 3.6mg/kg+アテゾリズマブ 1,200mg/回3週ごと(アテゾリズマブ群)
・対照群:T-DM1 3.6mg/kg+プラセボ3週ごと(プラセボ群)
・評価項目:
[主要評価項目]全症例対象(ITT)の主治医判定のPFS
[副次評価項目]OS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)
[探索的検討項目]PD-L1陽性集団のPFS、免疫関連バイオマーカーの予後に与える影響
[事後解析項目]PD-L1陽性集団のOS

 主な結果は以下のとおり。

・PD-L1陽性(免疫細胞1%以上の染色)集団におけるPFS中央値は、アテゾリズマブ群8.5ヵ月、プラセボ群4.1ヵ月、ハザード比(HR)は0.60(95%信頼区間[CI]:032~1.11)であった。
・ITTのOS中央値は、アテゾリズマブ群、プラセボ群ともに未到達でHRは0.74(95%CI:0.42~1.30)であった。
・PD-L1陽性集団におけるOS中央値も、両群とも未到達で、HRは0.55(95%CI:0.22~1.38)。1年生存率は94.3%対87.9%であった。また、PD-L1陰性集団におけるOS中央値も、両群とも未到達であり、HRは0.88(95%CI:0.43~1.80)であった。
・Grade3以上の有害事象は、アテゾリズマブ群で53%、プラセボ群で45%であり、重篤な有害事象は、36%と21%、有害事象による治療中止は29%と15%であった。アテゾリズマブ群におけるGrade3以上の主な有害事象は血小板減少13%、AST上昇9%、貧血8%などであった。これらは、既知の両剤の安全性プロファイルと違いはなかった。

(ケアネット)


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早期TN乳がんの術前化学療法にペムブロリズマブ追加でpCR改善(KEYNOTE-522)/ESMO2019

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 新規に診断された早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対して、術前化学療法にペムブロリズマブを追加することにより、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に上昇したことがKEYNOTE-522試験で示された。また、術前/術後のペムブロリズマブ投与により無イベント生存率(EFS)が改善する傾向もみられた。欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University LondonのPeter Schmid氏が発表した。

 本試験は、早期TNBCに対してペムブロリズマブの術前化学療法との併用および術後補助療法での投与について検討した、初のプラセボ対照無作為化比較第III相試験である。

・対象:新規に診断されたTNBC患者(AJCC/TNM分類でT1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0/1)
・試験群:術前に化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルを4サイクル後、ドキソルビシン/エピルビシン+シクロホスファミドを4サイクル)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)、術後にペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を9サイクルあるいは再発または許容できない毒性発現まで投与(ペムブロリズマブ群)
・対照群: 術前に化学療法(試験群と同様)+プラセボ、術後にプラセボを投与(プラセボ群)
・評価項目:
[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、EFS
[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、全生存期間(OS)、PD-L1陽性例におけるpCR・EFS・OS、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・1,174例が2:1に無作為化され、ペンブロリズマブ群に784例、プラセボ群に390例が割り付けられた。
・追跡期間中央値はペムブロリズマブ群15.3ヵ月、プラセボ群15.8ヵ月であった。
・主要評価項目のpCR(ypT0/Tis ypN0)は、ペムブロリズマブ群は64.8%とプラセボ群51.2%に対して有意な改善を示した(p=0.00055)。
・副次評価項目のpCR(ypT0 ypN0)およびpCR(ypT0/Tis)も、ペムブロリズマブ群vs.プラセボ群でそれぞれ59.9%vs.45.3%および68.6%vs.53.7%と同様であった。
・PD-L1発現の有無別のペムブロリズマブ群とプラセボ群におけるpCR(ypT0/Tis ypN0)は、PD-L1陽性で68.9%vs.54.9%、PD-L1陰性で45.3%vs.30.3%であり、PD-L1発現にかかわらず、ペムブロリズマブの改善効果が認められた。
・EFSの最初の中間解析でのイベント発生率は、ペムブロリズマブ群7.4%、プラセボ群11.8%で、ハザード比は0.63(95%信頼区間:0.43~0.93)であったが、事前に設定したp値の有意水準を達成しなかった。18ヵ月時のEFSはペムブロリズマブ群91.3%、プラセボ群85.3%であった。
・Grade3以上の治療関連有害事象の発現率は、術前療法期ではペムブロリズマブ群76.8%、プラセボ群72.2%、術後療法期では5.7%、1.9%であった。
・Grade3以上の免疫介在性有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ群14.1%、プラセボ群2.1%であった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

KEYNOTE-522(Clinical Trials.gov)

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21遺伝子再発スコアが高いHR+早期乳がんでの術後化学療法の併用効果(TAILORx 2次解析)/ESMO2019

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 リンパ節転移のないホルモン感受性(HR)陽性HER2陰性の早期乳がん患者で、21遺伝子アッセイによる再発スコアが高い(26〜100)場合、術後にタキサンとアントラサイクリン両方もしくはどちらかを含む化学療法と内分泌療法を併用したほうが、内分泌療法単独よりもアウトカムが良好であることが、TAILORx試験の2次解析で示唆された。スペインで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、米国・Albert Einstein College of MedicineのJoseph A. Sparano氏が発表した。この結果はJAMA Oncology誌オンライン版2019年9月30日号に同時掲載された。

 乳がん組織の21遺伝子アッセイによる再発スコアが高い場合、化学療法によるベネフィットが得られることが予測され、低い場合は内分泌療法のみでも再発リスクが低いことが予測されている。しかし、再発スコアの高い患者にタキサンやアントラサイクリンを含むレジメンで治療した場合のアウトカムについて、前向き試験でのデータはほとんどない。今回、多施設無作為化試験であるTAILORx試験より、腋窩リンパ節転移のないHR陽性HER2陰性の早期乳がんのうち、再発スコアが26~100の患者を対象に、術後補助療法として内分泌療法と化学療法(レジメンは主治医選択)を実施した患者の無遠隔再発生存率(DRFI)と無浸潤疾患生存率(IDFS)が検討された。

 主な結果は以下のとおり。

・適格患者9,719例のうち再発スコア26~100の患者は1,389例(14%)で、年齢中央値は56歳(範囲:23~74歳)であった。
・主な化学療法レジメンは、ドセタキセル+シクロホスファミド(TC)42%、アントラサイクリンのみ(A without T)24%、アントラサイクリン+タキサン(A and T)18%、シクロホスファミド/メトトレキサート/5-FU(CMF)4%で、その他 6%、化学療法なし 6%であった。
・化学療法と内分泌療法で治療された患者のDRFIは、5年で93.0%(標準誤差[SE]:0.8%)、9年で86.8%(SE:1.7%)であったのに対し、内分泌療法単独では、B20試験における化学療法の治療効果に基づいて予測されたDRFIは5年で78.8%(SE:14.0%)、9年で65.4%(SE:10.4%)であった。
・同様に、化学療法と内分泌療法で治療された患者のIDFSは、5年で88.1%(SE:0.8%)、9年76.28%(SE:1.7%)で、内分泌療法単独では、予測されたIDFSは5年で74.7%(SE:14.6%)、9年で55.3%(SE:8.9%)であった。
・レジメン別にみると、5年DRFIは、TC 92.7%、A without T 92.3%、A and T 95.1%、CMF 88.5%、その他 95.5%、また、5年IDFSは、TC 88.1%、A without T 87.4%、A and T 88.6%、CMF 84.0%、その他 91.3%であった。

 これらの結果から、Sparano氏は「術後化学療法の投与指針として21遺伝子アッセイの使用を支持するエビデンスが追加された」と述べた。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

TAILORx(Clinical Trials.gov)

Sparano JA, et al. JAMA Oncol. 2019 Sep 30. [Epub ahead of print]

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術前療法で残存病変のあるHER2+早期乳がん、術後T-DM1による末梢神経障害・血小板減少症・CNS再発(KATHERINE)/ESMO2019

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 トラスツズマブを含む術前化学療法で浸潤がんの残存がみられたHER2陽性早期乳がんに対する術後補助療法としてT-DM1(トラスツズマブ エムタンシン)の効果をトラスツズマブと比較したKATHERINE試験において、末梢神経障害、血小板減少症、中枢神経系(CNS)再発に関する詳細な分析結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)でドイツ・Helios Klinikum Berlin BuchのMichael Untch氏より報告された。T-DM1による末梢神経障害に関して、ベースライン時の末梢神経障害が持続期間と消失率に影響する可能性があるが発現率には影響せず、術前化学療法でのタキサン製剤の種類は発現率に影響しないことがわかった。

 KATHERINE試験は、HER2陽性早期乳がん1,486例を対象とした国際多施設無作為化オープンラベル第III相試験で、術後補助療法としてT-DM1(3.6mg/kg静注、3週ごと)またはトラスツズマブ(6mg/kg静注、3週ごと)を14サイクル投与した。本試験の結果は、2018年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS 2018)で、T-DM1がトラスツズマブに比べ無浸潤疾患生存期間(IDFS)を有意に改善したことが報告されているが、T-DM1群で末梢神経障害および血小板減少症が高率に発現し、最初のIDFSイベントとしてCNS再発率も高かった。

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時の末梢神経障害に関係なく、T-DM1群で末梢神経障害の発現率が高かった(ベースライン時に神経障害あり:T-DM1群36.3%、トラスツズマブ群17.5%、ベースライン時に神経障害なし:T-DM1群31.1%、トラスツズマブ群16.8%)。
・ベースライン時に末梢神経障害があると末梢神経障害発現期間の中央値が大きく、消失率が低かった(ベースライン時に神経障害あり:352~337日、66.0~63.6%、ベースライン時に神経障害なし:243~232日、81.2~82.5%)。
・術前化学療法でのタキサン製剤の種類により、末梢神経障害の発現率に差はなかった(ドセタキセル:T-DM1群32.1%、トラスツズマブ群17.8%、パクリタキセル:T-DM1群31.8%、トラスツズマブ群16.6%)。
・術前化学療法でプラチナ製剤が投与されていた場合、T-DM1群で血小板減少症の発現率が高かった(T-DM1群36%、トラスツズマブ群27%)が、Grade3~4の血小板減少症における発現期間中央値(33日、29日)と消失率(95%、96%)はプラチナ製剤の投与の有無で差はなかった。
・T-DM1群における最初のIDFSイベントとしてのCNS再発率は高かったが、全CNS再発率は同等であった。
・T-DM1群のほうがCNS無再発期間の中央値が大きく(T-DM1群17.5ヵ月、トラスツズマブ群11.9ヵ月)、CNS再発後の全生存期間は両群に差はなかった(ハザード比:1.07、95%信頼区間:0.60~1.91)

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

KATHERINE(Clinical Trials.gov)

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ペムブロリズマブ、既治療TN乳がんへの単剤投与は?(KEYNOTE-119)/ESMO2019

提供元:CareNet.com

 局所進行/転移を有するトリプルネガティブ乳がん(mTNBC)患者に対する、2~3次治療としてのペムブロリズマブ単剤療法は、化学療法単剤と比較して生存期間を有意に改善しなかった。しかし、PD-L1発現レベルが上昇するにつれてペムブロリズマブによる治療効果が高まる傾向が確認されている。スペインで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、スペイン・Vall d’Hebron Institute of OncologyのJavier Cortes氏が第III相無作為化非盲検試験KEYNOTE-119の結果を発表した。

・対象:1~2レジメンの全身化学療法(アントラサイクリン系および/またはタキサン系薬剤を含む)を受け、最新の治療でPDとなったmTNBC患者
・試験群:以下の2群に1対1の割合で無作為に割り付け
ペムブロリズマブ群:ペムブロリズマブ(200mgを3週ごと、最大35サイクル) 312例
化学療法群:治験担当医師が選択した化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、ビノレルビン) 310例
・評価項目:
[主要評価項目]PD-L1陽性患者(CPS ≧10およびCPS ≧1)における全生存期間(OS)、全患者におけるOS
[副次評価項目]全患者における無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性・忍容性。追加の副次評価項目として、全患者およびPD-L1陽性患者(CPS ≧10/CPS ≧1)における奏効持続期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)が加えられた
[探索的解析]PD-L1陽性患者におけるCPSの追加的なカットポイントでのOS、PFS、ORR、DOR

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時点での治療歴は、1ラインの患者がペムブロリズマブ群で59.9%、化学療法群で60.3%を占めた。PD-L1発現状況は、CPS ≧1が65.1% vs.65.2%、CPS ≧10が30.8% vs.31.6%、CPS ≧20が18.3% vs.16.8%であった。
・化学療法の内訳は、エリブリン53.9%、カペシタビン27.4%、ビノレルビン13.9%、ゲムシタビン4.8%であった。
・2019年4月11日のデータカットオフ時点で、追跡期間中央値はペムブロリズマブ群で9.9ヵ月、化学療法群で10.9ヵ月。
・OS中央値は、CPS≧1の患者でペムブロリズマブ群10.7ヵ月 vs. 化学療法群10.2ヵ月(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.69~1.06、p=0.073)、CPS≧10の患者で12.7ヵ月 vs. 11.6ヵ月(HR:0.78、95%CI:0.57~1.06、p=0.057)とペムブロリズマブ群での有意な改善はみられなかった。全患者では9.9ヵ月 vs. 10.8ヵ月(HR:0.97、95%CI:0.82~1.15)、探索的解析項目のCPS≧20の患者では、14.9ヵ月 vs. 12.5ヵ月(HR:0.58、95%CI:0.38~0.88)であった。
・PFS中央値は、全患者で2.1ヵ月 vs. 3.3ヵ月(HR:1.60、95%CI:1.33~1.92)、CPS≧1の患者で2.1ヵ月 vs. 3.1ヵ月(HR:1.35、95%CI:1.08~1.68)、CPS≧10の患者で2.1ヵ月 vs. 3.4ヵ月(HR:1.14、95%CI:0.82~1.59)、CPS≧20の患者で3.4ヵ月 vs. 2.4ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.49~1.18)であった。
・ORRは、CPS≧1の患者で12.3% vs. 9.4%、CPS≧10の患者で17.7% vs. 9.2%、CPS≧20の患者で26.3% vs. 11.5%であった。
・DOR中央値は、CPS≧1の患者で12.2ヵ月vs. 6.5ヵ月、CPS≧10の患者でNR vs. 7.1ヵ月、CPS≧20の患者でNR vs. 7.1ヵ月で、全体としてペムブロリズマブ群で長い傾向がみられた。
・Grade3以上の有害事象は、ペンブロリズマブ34.6% vs.化学療法群49.0%。治療中止や用量調整につながる有害事象の発生は、ペンブロリズマブ群で低かった。Grade3以上の免疫関連有害事象は3.2% vs.1.0%で、死亡例は確認されていない。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【参考文献・参考サイトはこちら】

KEYNOTE-119試験(Clinical Trials.gov)

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