進行/転移TN乳がんの1次治療、PD-L1発現によらずDato-DXd+デュルバルマブが奏効(BEGONIA)/ESMO BREAST 2022

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 進行/転移トリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療として、トポイソメラーゼI阻害薬を含むTROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)が、PD-L1発現の有無によらず高い奏効率を示し、安全性プロファイルも管理可能であったことがBEGONIA試験で示された。英国・Queen Mary University of LondonのPeter Schmid氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で報告した。

 BEGONIA試験は、2つのPartで構成された非盲検プラットフォーム試験で、進行/転移TNBCの1次治療として、抗PD-L1抗体のデュルバルマブと他の薬剤との併用を評価している。Part1について、すでにパクリタキセル+デュルバルマブ群での客観的奏効率(ORR)が58.3%、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)+デュルバルマブ群でのORRが66.7%であったことを報告している。今回はDato-DXd+デュルバルマブ群における結果を報告した。

・対象:StageIVに対する治療歴のない切除不能な進行/転移TN乳がん
・方法:Dato-DXd 6mg/kg+デュルバルマブ1,120mg(3週ごと、静脈内投与)を病勢進行もしくは許容できない毒性発現まで投与
・評価項目:
[主要評価項目]安全性、忍容性
[副次評価項目]ORR(RECIST v1.1)、奏効期間、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)

 主な結果は以下のとおり。

・29例がDato-DXd+デュルバルマブを投与され(24例が投与継続中)で、27例がベースライン後に2回評価を受けた。追跡期間中央値は3.9ヵ月(範囲:2~6ヵ月)。
・ORRは74%(20/27例、95%CI:54~89)で、完全奏効は2例(7%)、部分奏効は18例(67%)だった。奏効はPD-L1発現の有無によらず認められた。
・奏効までの期間の中央値は1.4ヵ月(95%CI:1.35~1.58)で、奏効例すべてがデータカットオフ時(2021年11月15日)も奏効を維持し、奏効期間中央値未到達である。
・用量制限毒性は認められていない。
・Dato-DXdの減量が4例(14%、すべて口内炎による)、Dato-DXdの投与延期が1例(3%)、デュルバルマブの投与延期が4例(14%)にみられた。
・頻度が高い有害事象は、口内炎(69%)、脱毛症(66%)、悪心(66%)であった。下痢は4例(14%、すべてGrade1)と少なく、間質性肺疾患/肺炎や好中球減少は報告されなかった。

 現在、本試験のPart2の Dato-DXd +デュルバルマブ群への登録が進行中であり、奏効期間、PFS、OSの評価のためのフォローアップを継続している。

(ケアネット 金沢 浩子)


【参考文献・参考サイトはこちら】

BEGONIA試験(Clinical Trials.gov)

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イルミナ、包括的がんゲノムプロファイリングテストを申請

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 イルミナは、2022年5月10日、厚生労働省にTruSight Oncology Comprehensiveパネルシステムの製造販売承認申請を行った。

 同パネルシステムは、固形悪性腫瘍患者のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍サンプルから抽出した核酸を検体として、NextSeq 550Dxシステムを用いたターゲットシーケンスにより517遺伝子の変異を検出する包括的がんゲノムプロファイリング検査キット。

 DNAからは塩基変異、多塩基変異、挿入、欠失および遺伝子増幅を、RNAからは遺伝子融合およびスプライスバリアントを検出する。コンパニオン診断薬(CDx)についても、順次追加される予定。

  同ゲノムプロファイリング検査は2022年3月の欧州での最初の発売に続き、日本で製造販売承認申請を行った。

(ケアネット  細田 雅之)


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HR+/HER2-早期乳がんへの術前HER3-DXdが有望(SOLTI TOT-HER3)/ESMO BREAST 2022

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 未治療のホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)早期乳がん患者に対する、HER3を標的とした抗体薬物複合体(ADC)patritumab deruxtecan(HER3-DXd)の術前単回投与が、病理学的完全奏効(pCR)の予測スコアとして開発されたCelTILスコアの有意な増加と関連し、奏効率が45%であることが示された。スペイン・Hospital Clinic of BarcelonaのAleix Prat氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で多施設共同前向きSOLTI TOT-HER3試験(part A)1)の最終結果を報告した。

[SOLTI TOT-HER3試験(part A)]
・対象:未治療のHR+/HER2−、手術可能(超音波検査で腫瘍径≧1cm)、Ki67≧10%の閉経前/後女性および男性乳がん患者
・試験群:治療前のERBB3 mRNAレベルに基づき4分類され、HER3-DXd(6.4mg/kg)を単回投与(77例)
・評価項目:
[主要評価項目]治療前と治療後(サイクル1の21日目)のCelTILスコア(-0.8×tumor cellularity[%]+1.3×TILs[%]:pCRと相関)2)の変動
[副次評価項目]治療後(サイクル1の21日目)の奏効率(ORR)、治療前のERBB3 mRNAレベルおよびIHCでのHER3タンパク質発現状況とCelTILスコアの変化、PAM50サブタイプの変化、治療前後の67遺伝子の発現状況およびKi67の変化、安全性と忍容性

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン特性は、平均年齢53歳、腫瘍径中央値21mm、cN0:71%、平均Ki67:27%だった。
・治療前のERBB3 mRNAレベルは、high:21例、medium:21例、low:21例、ultralow:14例だった。
・治療前のIHCでのHER3タンパク質発現状況は、high:50例、low:10例、negative:1例だった(16例は測定中あるいは測定不可)。
・評価可能な62例において、治療後(サイクル1の21日目)のORRは45%(CR:23%、PR:23%)だった。
・CelTILスコアは治療前と比べ治療後有意に増加した(平均差+6.8、p<0.001)。この増加は、レスポンダーではみられたが(p<0.001)、非レスポンダーではみられなかった(p=0.135)。
・治療前のERBB3 mRNAレベルおよびIHCでのHER3タンパク質発現状況とCelTILスコアの変化に関連はみられなかった。
・PAM50サブタイプは、治療前がLuminal A:40例、Luminal B:32例、HER2-Enriched:2例、Basal-like:3例だったのに対し、治療後にはLuminal A:54例、Luminal B:13例、HER2-Enriched:1例、Basal-like:2例となり、Luminal Aの約10%がNormal-likeに、Luminal Bの50%超がLuminal Aに変化した。
・治療前の非Luminalサブタイプと高い再発リスクスコアは、CelTILスコア増加との関連がみられた。
・67遺伝子の発現状況は、治療前と比較して治療後にCD68やCD4といった免疫関連遺伝子が誘導され、MELKやMKI67などの細胞増殖関連遺伝子は抑制されていた。Ki67遺伝子の発現は治療後有意に減少した(平均差-8.9、p<0.001)。
・Grade3以上のTEAEは14%で発現し、主なTEAEは好中球減少症(8%)、ALT上昇(3%)、下痢(1%)だった。ILDおよび死亡例の報告はない。

 TOT-HER3試験ではpart Bとしてトリプルネガティブ乳がん患者の登録が進められているほか、SOLTI-VALENTINE試験ではHR+/HER2−乳がんに対する術前療法として、HER3-DXd単剤あるいは内分泌療法との併用が検証される予定。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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1)TOT-HER3試験(Clinical Trials.gov)

2)Nuciforo P, et al. Ann Oncol. 2018;29:170-177.

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T-DXdの効果、HER2発現だけでなく腫瘍内の空間的分布も影響(DAISY)/ESMO BREAST 2022

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 転移乳がんへのトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の有効性を評価したDAISY試験における探索的評価項目のトランスレーショナル解析から、T-DXdの抗腫瘍効果は腫瘍細胞のHER2発現量だけでなく、空間的分布にも影響されることが示唆された。フランス・Gustave RoussyのMaria Fernanda Mosele氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で報告した。

 DAISY試験は、転移乳がんを対象にT-DXdの有効性をHER2発現量(高発現、低発現、陰性の3群)で評価した多施設非盲検第II相試験。主要評価項目である最良客観的奏効率はすでに報告されており、HER2高発現群(IHC 3+またはIHC 2+/ISH+、68例)で71%、HER2低発現群(IHC 2+/ISH-またはIHC 1+、72例)で37.5%、HER2陰性群(IHC 0、37例)で30%と、T-DXdの抗腫瘍効果はHER2発現量と関連していた(p=0.0001)。今回はT-DXdの作用機序と耐性機序を解明するため、腫瘍細胞への取り込み、免疫細胞のモジュレーション、HER2の空間的分布、耐性機序について検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・HER2陰性細胞ではT-DXdの取り込みが少なく(p=0.053)、T-DXdの取り込みとHER2発現量には中程度の相関が認められた(r=0.75)。
・HER2高発現の乳がんでPD-L1発現の減少がみられたが、HER2低発現や陰性ではみられなかった(p=0.02)。
・T-DXdによるT細胞やマクロファージの量的モジュレーションはみられなかった。
・HER2陰性細胞の割合が高い空間的分布がT-DXd無効と関連(p=0.0008)していた。すなわち、HER2発現細胞が空間的に遠い場合は効果が小さいことが示唆された。
・T-DXdで病勢進行した20例中13例(65%)にHER2発現の減少がみられた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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DAISY試験(Clinical Trials.gov)

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高リスク早期乳がんへの術後アベマシクリブ、HR0.68でiDFS改善(monarchE Cohort 1)/ESMO BREAST 2022

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 日本および欧州(EMA)での承認の対象である、腋窩リンパ節転移個数や腫瘍径といった臨床現場で判定しやすい特徴により定義された再発リスクの高いホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2−)早期乳がん患者に対して、術後薬物療法としてのCDK4/6阻害薬アベマシクリブと内分泌療法併用のベネフィットが示された。ドイツ・Evang. Kliniken Essen-MitteのMattea Reinisch氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)でmonarchE試験Cohort 1の有効性データを報告した。

[monarchE試験 Cohort 1]
・対象:HR+/HER2−の初発乳がん、遠隔転移なし・腋窩リンパ節転移陽性の症例(閉経状況問わず)、術前/術後の化学療法は許容
・Cohort 1(全体の91%):腋窩リンパ節転移(pALN)が4個以上またはpALN1~3個かつGrade3の病変または腫瘍径≧5cm
・試験群:アベマシクリブ150mg×2/日+標準的術後内分泌療法。アベマシクリブは最長2年間投与(アベマシクリブ+ET群:2,555例)
・対照群:標準的術後内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬、LH-RHアゴニストなど。薬剤は主治医選択)(ET群:2,565例)
・評価項目:
[主要評価項目]無浸潤疾患生存期間(iDFS)
[副次評価項目]遠隔無転移生存期間(DRFS)、全生存期間(OS)、安全性、患者報告アウトカムなど

 Cohort 1における主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時の臨床病理学的特徴は両群でバランスがとれていた(pALN≧4個:アベマシクリブ+ET群65.6% vs.ET群65.1%、Grade3:41.6% vs.40.9%、腫瘍径≧5cm:23.5% vs.23.6%)。
・データカットオフは2021年4月1日、追跡期間中央値は28ヵ月。
・2年間に到達せず治療が中止されたのはアベマシクリブ+ET群17.8% vs. ET群17.0%だった。
・iDFSはアベマシクリブ+ET群で有意に改善し(ハザード比[HR]:0.680、95%信頼区間[CI]:0.572~0.808、Nominal p<0.0001)、2年iDFS率はアベマシクリブ+ET群92.6% vs.ET群89.6%、3年iDFS率は88.6% vs. 82.9%(3年後の絶対ベネフィット:5.7%)だった。
・DRFSも有意な改善が認められ(HR:0.669、95%CI:0.554~0.809、Nominal p<0.0001)、2年DRFS率は94.1% vs.91.2%、3年DRFS率は90.2% vs. 85.7%(3年後の絶対ベネフィット:4.5%)だった。
・主な再発部位は骨・肝臓・肺といった遠隔転移で、その発生率はアベマシクリブ+ET群で低かった(71.9% vs.75.6%)。
・安全性解析結果は、アベマシクリブの既知の安全性プロファイルと一致した。

 Reinisch氏は、ルーチンの乳がん診断の一環として特定可能な定義による再発高リスクのHR+/HER2−早期乳がん患者において、術後薬物療法としてのアベマシクリブと内分泌療法の併用が、遠隔転移のリスク低減を含む、浸潤性疾患リスクの臨床的に意義ある低減を示したとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


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monarchE試験(Clinical Trials.gov)

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HER2+乳がん脳転移例、T-DXdで高い頭蓋内奏効率(TUXEDO-1)/ESMO BREAST 2022

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 活動性の脳転移を有するHER2陽性乳がん患者において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)で73.3%と高い頭蓋内奏効率が得られたことが、前向き単群第II相試験(TUXEDO-1試験)で示された。オーストリア・ウイーン医科大学のRupert Bartsch氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2022、2022年5月3~5日)で報告した。

 HER2CLIMB試験では、活動性の脳転移を有するHER2陽性乳がんへのトラスツズマブ+カペシタビン+tucatinibの投与で、頭蓋内奏効率が47.3%、無増悪生存期間(PFS)中央値が9.5ヵ月だったことが報告されている。

 今回のTUXEDO-1試験の対象は、トラスツズマブまたはペルツズマブの投与歴があり、即時の局所治療の適応がないHER2陽性乳がん患者で、新たに診断された脳転移(未治療)または局所治療後に進行した脳転移を有する15例。T-DXd 5.4mg/kgを3週ごとに投与した。主要評価項目はResponse Assessment in Neuro-Oncology(RANO)-BM基準で中央判定された頭蓋内奏効率、副次評価項目は頭蓋外奏効率、PFS、全生存期間、安全性、QOLなどであった。Simonの2段階デザインに基づき15例が登録され(第1段階:6例、第2段階:9例)、15例全例でT-DXdが1回以上投与された。

 主な結果は以下のとおり。

・平均年齢は69歳(範囲:30~76)、ベースラインで神経症状があった患者は40%、脳転移について未治療が40%、局所治療後進行が60%だった。
・頭蓋内奏効率は、ITT集団(15例)で73.3%(95%CI:48.1~89.1)、PP集団(脳転移がなかった1例を除外)で78.6%だった。
・追跡期間中央値は11ヵ月(範囲:3~17)、PFS中央値は14ヵ月(95%CI:11.0~NR)だった。
・クリニカルベネフィット率は、ITT集団で86.7%、PP集団で92.9%だった。
・ベースラインで測定可能な頭蓋外病変を有していた8例のうち5例(62.5%)に部分奏効を認めた。
・主な非血液学的毒性として、Grade1/2の倦怠感(66.7%)、悪心(46.7%)がみられた。Grade3の左室駆出率低下が1例、Grade2の間質性肺疾患が1例にみられた。
・治療期間中、QOLは維持された。

 Bartsch氏は「本結果は、中枢神経系に転移のあるHER2+乳がんに全身治療が可能なことを示す一連のエビデンスに追加され、2次性中枢神経系腫瘍における抗体薬物複合体のさらなる研究を支持する」とまとめた。

(ケアネット 金沢 浩子)


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TUXEDO-1試験(Clinical Trials.gov)

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BRCA1/2病的バリアント、新たに3がん種との関連が明らかに/JAMA Oncol

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 BRCA1/2遺伝子の病的バリアントは、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵がんの発症リスク上昇に関与することが知られている。今回、日本人集団における世界最大規模のがん種横断的ゲノム解析が実施され、上記4がん種のほかに胃がん、食道がん、胆道がんの発症リスクも上昇させることが示唆された。理化学研究所生命医科学研究センターの桃沢 幸秀氏らによるJAMA Oncology誌オンライン版2022年4月14日号への報告。

 研究グループは、2003年4月~2018年3月にバイオバンク・ジャパンに登録されたデータを用いて、胆道がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、子宮体がん、食道がん、胃がん、肝がん、肺がん、リンパ腫、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、腎がんの14がん種における計10万3,261人(患者群6万5,108人、対照群3万8,153人)について、BRCA1/2遺伝子のゲノム解析を実施。データの解析は、2019年8月~2021年10月に行われた。

 ゲノム解析はターゲットシークエンス法を用いて、BRCA1/2遺伝子のタンパク質への翻訳に影響が大きいとされる翻訳領域およびその周辺2塩基の合計16,111塩基の配列を調査
。病的バリアントと各がん種との関連は、各がん種の患者と対照者との間の病的バリアント保持率を比較することで評価した。
 
 主な結果は以下のとおり。

・平均年齢は患者群(診断時)が64.1歳、対照群(登録時)が61.8歳。それぞれ女性が42.3%、46.9%だった。
・1,810個の遺伝的バリアントが同定され、さらに、ENIGMAコンソーシアムの手法を用いて、これらの遺伝的バリアントから315個の病的バリアントが同定された。
・オッズ比(OR)>4.0(本研究における統計学的基準:p<1×10-4)を満たしたのは、BRCA1遺伝子については、すでに疾患リスクとの関連が知られている女性乳がん(OR:16.1)、卵巣がん(OR:75.6)、膵がん(OR:12.6)に加えて、胃がん(OR:5.2、95%信頼区間[CI]:2.6~10.5)、胆道がん(OR:17.4、95%CI:5.8~51.9)で関連が認められた。BRCA2遺伝子については、女性乳がん(OR:10.9)、男性乳がん(OR:67.9)、卵巣がん(OR:11.3)、膵がん(OR:10.7)、前立腺がん(OR:4.0)に加えて、胃がん(OR:4.7、95%CI:3.1~7.1)、食道がん(OR:5.6、95%CI:2.9~11.0)で関連が認められた。
・なお、p<0.05の基準までみると、BRCA1遺伝子については肺がんとリンパ腫、BRCA2遺伝子については子宮頸がん、子宮体がん、肝がん、腎がんとの関連が認められた。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

Momozawa Y,et al. JAMA Oncol. 2022 Apr 14. [Epub ahead of print]

【参考文献・参考サイトはこちら】

日本医療研究開発機構(AMED)プレスリリース

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乳がん術後化学療法後、長期QOLが悪化しやすい患者の特徴/JCO

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 乳がん術後補助化学療法後のQOLの長期的経過は個人差が大きい。今回、フランス・Gustave RoussyのAntonio Di Meglio氏らが術後補助化学療法を受けた乳がん患者のQOLの長期的経過の特徴を調査し、関連する健康行動パターンを特定した結果、ほとんどの患者は経過が良好だったが、QOLが著しく悪化し、診断後4年間は治療前の値に回復しなかった集団が特定された。このグループでは、過体重、身体的不活動、喫煙がとくに多く、その他のリスク因子として、若年、併存疾患あり、低所得、内分泌療法ありが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年4月21日に掲載。

 本研究の対象は、CANTO(CANcer TOxicity)試験において化学療法を受けているStageI〜IIIの乳がん患者。QOL(European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire-C30 Summary Score)の経過と各グループの患者との関連は、それぞれ、グループを基にした経過モデルと多変量多項ロジスティック回帰の反復推定によって調べた。

 主な結果は以下のとおり。

・QOLの経過によって、大変良好(51.7%)、良好(31.7%)、悪化(10.0%)、悪い(6.6%)の4グループが特定された(4,131例)。
・QOLが悪化したグループは、ベースラインのQOL(平均:78.3/100、95%CI:76.2〜80.5)が良好で、1年目(平均:58.1/100、95%CI:56.4〜59.9)で著しく悪化し、診断後4年目(平均:61.1/100、95%CI:59.0~63.3)まで治療前の値に回復しなかった。
・健康的な行動は、より良い経過のグループの患者と関連していた。診断時における肥満(痩せに対する調整オッズ比[OR]:1.51、95%信頼区間[CI]:1.28〜1.79、p<0.0001)および現在喫煙(非喫煙に対する調整OR:1.52、95%CI:1.27〜1.82、p<0.0001)はQOLが悪化したグループの患者と関連しており、4年目まで過体重で身体活動が不十分な患者が多く、化学療法中にもしばしば喫煙していたことも特徴としてみられた。
・悪化したグループの患者に関連するその他の因子として、若年(1歳低下による調整OR:1.01、95%CI:1.01~1.02、p=0.043)、併存疾患あり(なしに対する調整OR:1.22、95%CI:1.06~1.40、p=0.005)、低所得(裕福な家計に対する調整OR:1.21、95%CI:1.07〜1.37、p=0.002)、内分泌療法あり(なしに対する調整OR:1.14、95%CI:1.01〜1.30、p=0.047)などがあった。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Meglio AD, et al. J Clin Oncol. 2022 Apr 21.[Epub ahead of print]

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日本人乳がん経験者、皮膚関連副作用で困っていること

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 がん治療後の皮膚関連症状の多くは生命予後にあまり影響しないことから軽視されがちであり、患者自身も治療から長期間経った場合に医療関係者に相談してよいものか悩んでいるケースがある。しかしその実態は十分に調査されていない。身原皮ふ科・形成外科クリニックの身原 京美氏らは国内の乳がん経験者約370人に対してアンケート調査を実施。その結果をProgress in Medicine誌2022年3月号に報告した。

 本研究では、日本国内の9つの乳がん患者会を通じて20歳以上の女性の乳がん生存者を対象にアンケート調査を実施した。調査票は、1)回答時点における主要な皮膚関連症状の有無と、Numerical Rating Scale(NRS)を用いた0~10の11段階で困っている程度を評価、2)症状の低減が期待できる治療(一般薬、医薬部外品などを含む)に対する1ヵ月当たりの自己負担での支出意欲の確認、3)皮膚関連の国際的なQOL評価尺度であるSkindex-29を用い、回答時点の直近1週間における皮膚関連症状に起因する現状のQOLの評価から構成された。

 主な結果は以下のとおり。

・369人の回答者の平均年齢は60.3歳で50代が最も多かった(33.9%)。
・乳がんと診断されてからの経過年数は最短が5ヵ月、最長が35年0ヵ月(平均8年10カ月)と広く分布しており、全体の7割は10年以内であった。
・乳がんの治療内容は、手術に関しては乳房温存手術が55.3%、乳房切除術が48.0%であった。放射線治療は62.1%が受けたと回答した.薬物療法に関しては、59.6%が化学療法、19.0%が分子標的薬による治療、78.0%がホルモン療法を受けていた。再発・転移について「ある」と回答したのは15.2%であった。
・乳房およびその周辺での乳がん治療薬あるいは放射線治療による皮膚関連症状の有無については、63.1%が「副作用がある」と回答した。
・症状として50%を超えたのは、カサカサ・乾燥(70.8%)、色素沈着(50.6%)、しびれ・感覚異常(50.6%)であった。
・困っている程度は、NRSスコアが高い順に、むくみ(4.78)、しびれ・感覚異常(4.65)、つっぱる・かたい(4.78)であった。
・脱毛や髪質の変化については58.3%が「ある」と回答し、困っている程度はNRSスコアが5.41と、今回確認した項目の中で最も高かった。
・手や足の爪については、3割前後が変色や変形、爪が折れやすいなどの症状の持続を自覚しており、困っている程度はNRSスコアが高い順に、爪が折れやすい(4.53)、爪の変形(4.26)、爪の変色(3.98)であった。
・症状軽減を目的とした治療費の支払い意思額は、「月額3,000円まで」が最も多かった(38.5%)。
・皮膚関連症状の有無を治療内容別に比較したところ、乳房温存手術と乳房切除術の比較において、カサカサ・乾燥、かゆみ、汗が出ないの3症状は乳房温存手術で有意に多く認められ、しびれ・感覚異常は乳房切除術で有意に多く認められた。
・放射線治療ありとなしの比較において、放射線治療ありで、カサカサ・乾燥、色素沈着、汗が出ないが有意に多く認められた.
・化学療法ありとなしの比較において、化学療法ありで、むくみ、爪の変色、爪の変形、爪が折れやすい、脱毛や髪質の変化が有意に多く認められた.
・ホルモン療法は、その有無で症状の頻度に有意な差を認めなかった.
・乳がん診断からの経過年数と、それぞれの皮膚関連症状のために困っている程度(NRSスコア)や支出意欲との相関をみると、脱毛や髪質の変化のみで時間経過に伴う有意な低減がみられたが、これ以外の項目で有意差はなかった。

 著者らは、個人差はあるものの、60%以上が何らかの皮膚関連症状を有しており、各皮膚関連症状の困りごとの程度や治療に対する支出意欲は、乳がんと診断されてからの期間による大きな変化はなく、乳がん経験者の多くは長期にわたり皮膚に関連する症状に悩み、負担を感じていることが示唆されたとしている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)


【原著論文はこちら】

身原 京美ほか. Progress in Medicine Vol.42 No.3 2022.3.

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浸潤性乳がんの検出率、乳房トモシンセシス+合成マンモグラフィvs.デジタルマンモグラフィ/Lancet Oncol

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 乳がん検診における浸潤性乳がんの検出率について、デジタル乳房トモシンセシス+合成2Dマンモグラフィと2Dフルフィールドデジタルマンモグラフィ単独で比較したところ、デジタル乳房トモシンセシス+合成2Dマンモグラフィで有意に高かったことが、ドイツで実施された非盲検無作為化優越性試験(TOSYMA)で示された。University Hospital MunsterのWalter Heindel氏らがLancet Oncology誌オンライン版2022年4月12日号に報告。

 本試験は、ドイツの2つの連邦州における17の検診施設で実施された。対象は品質管理されたマンモグラフィ集団検診プログラムに参加した50〜69歳の女性。地域ごとに層別化したブロック無作為化を用いて、デジタル乳房トモシンセシス+合成2Dマンモグラフィ、または2Dフルフィールドデジタルマンモグラフィに1対1に無作為に割り付けた。主要評価項目は、ITT集団での浸潤性乳がんの検出率と24ヵ月の浸潤性中間期がん率で、安全性はas-treated集団で評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・2018年7月5日~2020年12月30日に、9万9,689人の女性をデジタル乳房トモシンセシス+合成2Dマンモグラフィ群(4万9,804人)とデジタルマンモグラフィ群(4万9,830人)に割り付けた。
・主要評価項目が評価可能な参加者において、浸潤性乳がんが検出された女性は、デジタル乳房トモシンセシス+合成2Dマンモグラフィ群で4万9,715人中354人(1,000人当たり7.1例)、デジタルマンモグラフィ群で4万9,762人中240人(1,000人当たり4.8例)だった(オッズ比:1.48、95%CI:1.25~1.75、p<0.0001)。
・有害事象は各群6件報告で重篤な有害事象は報告されておらず、デバイスの不具合はデジタル乳房トモシンセシス+合成2Dマンモグラフィ群で23件、デジタルマンモグラフィ群で5件報告された。

(ケアネット 金沢 浩子)


【原著論文はこちら】

Heindel W, et al. Lancet Oncol. 2022 Apr 12.[Epub ahead of Print]

【参考文献・参考サイトはこちら】

TOSYMA試験(Clinical Trials.gov)

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